(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
錠剤を充填する容器本体に取り付けられる固定部と、固定部に対して上下動可能に案内される可動部とから構成され、固定部と可動部によって錠剤を1個ずつ通過させる通路を形成し、
固定部は、容器本体の口部に取り付けられる外周壁と、外周壁の上端内周部を部分的に塞ぐ天壁と、天壁に設けられる通路固定壁とを備え、
外周壁の上端内周部のうち天壁以外の部分が外周壁の上端開口部であると共に、上端開口部は、可動部を上下動させる案内開口部と、通路の出口部の内側に形成される錠剤排出口となり、
可動部は、外周側が外周壁で囲まれ内周側が通路固定壁を囲む誘導壁と、誘導壁に設けられる通路可動壁とを備え、
誘導壁は、外周壁に沿って上下動可能に案内されると共に、その天井面には通路の入口部に錠剤を導く傾斜面を有し、
通路は、横断面コの字状の通路固定壁と、通路可動壁の横断面を塞ぐ方向に対向する通路可動壁とから構成され、入口部と錠剤を1個収容する定量室部と出口部とを錠剤の通過方向に沿って形成し、
通路固定壁は、入口部と出口部の通行幅を定量室部よりも狭く形成し、
通路可動壁は、誘導壁の内周部に設けられ通路の通行幅を狭めるストッパ部と、誘導壁の上に設けられ錠剤排出操作をするための操作部とを備え、
中栓を上下逆にした場合には、固定部に対して可動部が下がることにより、操作部については天壁よりも下方に配置され、ストッパ部については通路の出口部に配置されて出口部の通行幅が錠剤幅よりも狭くなると共に入口部の通行幅が錠剤幅よりも広くなり、誘導壁についてはその内周部が通路可動壁に沿って下降し、
中栓を上下逆にしながら操作部を上方に押し込んだ場合には、ストッパ部については通路の入口部に配置されて入口部の通行幅が錠剤幅よりも狭くなると共に、操作部については通路の出口部に配置されて出口部の通行幅が錠剤幅よりも広くなり、誘導壁についてはその内周部が通路可動壁に沿って上昇することを特徴とする錠剤定量容器用中栓。
中栓を上下逆にしながら操作部を上方に押し込んだ場合には、誘導壁の傾斜面についてはその内周部が、通路固定壁の入口部と同等の高さ又はそれよりも高い段違い位置に配置されることを特徴とする請求項1記載の錠剤定量容器用中栓。
通路可動壁の操作部は、通路固定壁から離れる方向に凹むポケットであって、錠剤を複数個収容可能としていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の錠剤定量容器用中栓。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の錠剤定量容器から錠剤を排出しようとして押込部を操作しても、錠剤が導入部の入口で重なり合って、入口に入ってこない、いわゆる「ブリッジ現象」が発生して、錠剤が排出されない場合があった。この原因は、押込部を操作しても、可動係止部が変形するのみで、導入部の入口は全く変形しないことにあるものと推測される。
【0005】
また、上述の錠剤定量容器は、初めて使用する場合には、説明を受けないと、どのようにして錠剤を排出するのか分かり難いものであった。より詳しく言えば、錠剤定量容器を単に引っ繰り返しても錠剤は排出されないし、全体の形態も変わらないので、何をすれば良いのかが直感的に理解できない。つまり、押込部が操作部であることが理解しづらいものであった。
【0006】
本発明は、上記実情を考慮したもので、これら不具合のうち少なくとも一つを解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、錠剤を充填する容器本体に取り付けられる固定部と、固定部に対して上下動可能に案内される可動部とから構成され、固定部と可動部によって錠剤を1個ずつ通過させる通路を形成し、固定部は、容器本体の口部に取り付けられる外周壁と、外周壁の上端内周部を部分的に塞ぐ天壁と、天壁に設けられる通路固定壁とを備え、外周壁の上端内周部のうち天壁以外の部分が外周壁の上端開口部であると共に、上端開口部は、可動部を上下動させる案内開口部と、通路の出口部の内側に形成される錠剤排出口となり、可動部は、外周側が外周壁で囲まれ内周側が通路固定壁を囲む誘導壁と、誘導壁に設けられる通路可動壁とを備え、誘導壁は、外周壁に沿って上下動可能に案内されると共に、その天井面には通路の入口部に錠剤を導く傾斜面を有し、通路は、横断面コの字状の通路固定壁と、通路可動壁の横断面を塞ぐ方向に対向する通路可動壁とから構成され、入口部と錠剤を1個収容する定量室部と出口部とを錠剤の通過方向に沿って形成し、通路固定壁は、入口部と出口部の通行幅を定量室部よりも狭く形成し、通路可動壁は、誘導壁の内周部に設けられ通路の通行幅を狭めるストッパ部と、誘導壁の上に設けられ錠剤排出操作をするための操作部とを備え、中栓を上下逆にした場合には、固定部に対して可動部が下がることにより、操作部については天壁よりも下方に配置され、ストッパ部については通路の出口部に配置されて出口部の通行幅が錠剤幅よりも狭くなると共に入口部の通行幅が錠剤幅よりも広くなり、誘導壁についてはその内周部が通路可動壁に沿って下降し、中栓を上下逆にしながら操作部を上方に押し込んだ場合には、ストッパ部については通路の入口部に配置されて入口部の通行幅が錠剤幅よりも狭くなると共に、操作部については通路の出口部に配置されて出口部の通行幅が錠剤幅よりも広くなり、誘導壁についてはその内周部が通路可動壁に沿って上昇することを特徴とする錠剤定量容器用中栓である。
【0008】
このような可動部の上下動に伴って誘導壁が通路可動壁に対して上下動することにより、通路可動壁の上に位置する錠剤が強制的に動かされるので、いわゆる「ブリッジ現象」が発生し難い。また、通路固定壁に対する誘導壁の内周部の高さ位置は、問わない。しかし、容器本体内の錠剤を全て排出させながら、いわゆる「ブリッジ現象」が発生しないようにするには、次のようにすることが望ましい。
すなわち、中栓を上下逆にしながら操作部を上方に押し込んだ場合には、誘導壁の傾斜面についてはその内周部が、通路固定壁の入口部と同等の高さ又はそれよりも高い段違い位置に配置されることである。
【0009】
さらに、通路固定壁の入口端部の形状は、問わない。しかし、「ブリッジ現象」を一段と発生し難くするには、次のようにすることが望ましい。すなわち、通路固定壁の入口端部を通路の入口部の中央に向かって錠剤を導く傾斜面としてあることを特徴とする。
【0010】
また、通路可動部の操作部は、中栓を上下逆にした場合に天壁よりも下方に垂下するものであれば良い。しかし、操作部が押し込み操作をするパーツであることをより認識させ易くするには、次のようにすることが望ましい。
すなわち、通路可動壁の操作部は、通路固定壁から離れる方向に凹むポケットであって、錠剤を複数個収容可能としていることである。
【0011】
また、定量室部の通行幅は、錠剤を一つのみ通行させる幅であれば良い。従って、たとえば、定量室部の通行幅を入口側から出口側まで同一幅としても良い。しかし、定量室部に収容された錠剤をポケットに排出し易くするには、次のようにすることが望ましい。
すなわち、通路可動壁の定量室部は入口側に比べて出口側の通行幅を狭くする斜面を備えることである。
【0012】
さらに、天壁の形状は、問わない。しかし、中栓を容器本体の口部に取り付けた場合に、天壁が容器本体の口部よりも上方に突出する特殊な形状であれば、中栓の特殊形状に対応させた専用の蓋が必要となる。そこで、上板が平らで上板の外周部から筒状の側壁が垂下する汎用の蓋を、中栓の付いた容器本体の口部に取り付けられるようにするには、次のようにすることが望ましい。
すなわち、外周壁の上端部外周側に突出し且つ容器本体の口部に載置されるフランジを備え、天壁の高さをフランジに対してほぼ同じか、それよりも低く形成してあることである。
【0013】
また、中栓を取り付ける容器本体は、剛性を有するか、弾性を有するかを問わない。容器本体が弾性を有する場合であれば、その弾性を利用して錠剤を排出する構造を中栓の設計に採用することが可能である。しかし、容器本体が弾性を有さない場合には、その分だけ中栓の設計に制約が出来る。このような場合にでも、上述した本発明の中栓を採用することで、錠剤を排出することが可能となる。
すなわち、本発明の錠剤定量容器用中栓と、その中栓が取り付けられる容器本体とを備える錠剤定量容器であって、容器本体が剛性を有することである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、中栓を上下逆にすると、可動部が自然と下降し、固定部の天壁から可動部の操作部が突出して全体の形態が変化するので、操作部が使用者の注意を引く。従って、突出した操作部を元通り押し戻そうという気が使用者に働くので、操作部を操作することが容易に把握できる。しかも、操作部を押し上げると、通路固定壁に沿って誘導壁が上昇し、誘導壁の傾斜面自体又は傾斜面の上に載った錠剤によって、通路固定壁の入口端部の上に乗った錠剤が、強制的に移動させられることから、いわゆる「ブリッジ現象」が発生し難く、錠剤が排出される確率が向上する。その上、可動部の押し込み操作により、錠剤を1個ずつ排出することができる。
【0015】
また、中栓を上下逆にしながら操作部を上方に押し込んだ場合に、誘導壁の傾斜面の内周部が、通路固定壁の入口部と同等の高さ又はそれよりも高い段違い位置に配置される構成であれば、通路固定壁の入口端部の上に載った錠剤が傾斜面によって確実に移動させられるので、一段と「ブリッジ現象」が解消され易くなり、しかも、容器本体に収容された錠剤を最後の1個まで排出できるようになる。
【0016】
更に、通路固定壁の入口端部を通路の入口部の中央に向かって錠剤を導く傾斜面としてあれば、通路固定壁の入口端部の上に錠剤が乗り難くなり、一段と「ブリッジ現象」が解消され易くなる。
【0017】
また、通路可動壁の操作部が通路固定壁から離れる方向に凹むポケットであれば、使用者はポケットを見た瞬間に、ポケットが錠剤を収容するものであることが容易に把握でき、ポケットを操作部であると一段と認識し易くなる。しかも、ポケットに錠剤を複数個収容することができる。
【0018】
更に、通路可動壁の定量室部が入口側に比べて出口側の通行幅を狭くする斜面を備えるものであれば、中栓を上下逆にして操作部を押し込んだ場合に、錠剤がポケットに移動しやすくなる。
【0019】
また、外周壁の上端部外周側にフランジを突出させ、容器本体の口部に載置されるフランジに対して天壁の高さをほぼ同じか、それよりも低く形成してあれば、汎用の蓋を、中栓の付いた容器本体の口部に取り付けられる。
【0020】
更に、上述した中栓は、容器本体に関係なく、それだけで錠剤を排出する構造とすることができるので、容器本体が剛性を有するものに採用することに適している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】(イ)(ロ)図は、錠剤定量容器の第1実施形態を上下逆にした状態、操作部を上方に押し込んだ状態を示す縦断面図である。
【
図2】錠剤定量容器の第1実施形態を示す平面図、正面図、A−A線断面図図である。
【
図3】錠剤定量容器の第1実施形態を使用する手順を示した説明図である。
【
図4】中栓の固定部を示す平面図、正面図、右側面図、背面図、左側面図、底面図、A−A線断面図である。
【
図5】中栓の可動部を示す平面図、正面図、右側面図、背面図、左側面図、底面図、A−A線断面図である。
【
図6】(イ)(ロ)図は、第2実施形態の錠剤定量容器における通常の状態、上下逆にした状態を示す斜視図である。
【
図7】錠剤定量容器の第2実施形態を使用する手順を示した説明図である。
【
図8】(イ)〜(チ)図は、中栓の固定部を示す平面図、正面図、右側面図、背面図、左側面図、底面図、A−A線断面図、B−B線断面図である。
【
図9】(イ)〜(ト)図は、中栓の可動部を示す平面図、正面図、右側面図、背面図、左側面図、底面図、A−A線断面図である。
【
図10】(イ)(ロ)図は、錠剤定量容器の第3実施形態における通常の状態、上下逆にした状態を示す斜視図である。
【
図11】錠剤定量容器の第3実施形態を使用する手順を示した説明図である。
【
図12】(イ)〜(ト)図は、中栓の固定部を示す平面図、正面図、右側面図、背面図、左側面図、底面図、縦断面図である。
【
図13】(イ)〜(ト)図は、中栓の可動部を示す平面図、正面図、右側面図、背面図、左側面図、底面図、縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図2は、本発明の錠剤定量容器の第1実施形態を示している。本発明の錠剤定量容器は、錠剤Tを充填する容器本体9と、中栓1と、図示しない蓋とを備えるものである。容器本体9は、剛性のある、つまり変形不能な入れ物である。また、容器本体9は、いわゆる瓶形状(胴部91に比べて口部92の口径が狭い形状)であって、その口部92の外周部には、図示しない蓋を着脱可能に取り付けるものである。図示の例では、容器本体9の口部92の外周部に沿って雄ネジ部92aが形成されており、この雄ネジ部92aに嵌り込む雌ネジ部が蓋の内周部に形成され、蓋の内周部を捩じ込んで嵌め込む構成が採用されている。蓋は、汎用のものであって、水平な上板の外周部に沿って筒状の側壁が垂下する簡素な構造である。また、この容器本体9には、錠剤Tが多数充填される。錠剤Tは、粒状のビタミン剤や薬剤等であって、図示の例では、円盤状、より詳しく言えば円盤の中央部が外側にふくらんでいる碁石状のものが用いられている。
【0023】
また、中栓1は、容器本体9の口部92に取り付けるものであって、容器本体9に固定する固定部2と、固定部2に対して上下動可能に案内される可動部3の2部品から構成される。また、固定部2と可動部3とによって、錠剤Tを1個ずつ通過させる通路4が開閉可能に形成されている。なお、固定部2と可動部3は、合成樹脂製品である。以下、固定部2、可動部3、及び通路4について詳述する。
【0024】
固定部2は
図2のほか、
図4の六面図及び断面図に示されている。固定部2は、容器本体9の口部92内に嵌め込まれる(圧入される)外周壁21と、容器本体9の口部92の開口を狭める天壁22と、容器本体9の口部92に載置するフランジ23と、通路4の一部を構成する通路固定壁24を備えている。なお、通路4の他部を構成する通路可動壁32は、可動部3に設けられている。以下、外周壁21から順に詳述する。
【0025】
外周壁21は、容器本体9の口部92の形状に嵌り込むように筒状、より詳しくは円筒状に形成されている。外周壁21の上端内周部は、円形状であり、この内周部を部分的に天壁22が塞いでいる。
【0026】
天壁22は、外周壁21の上端部から内側に突出しており、外周壁21の上端内周部のうち天壁22によって覆われていない部分が、外周壁21の上端開口部となる。また、上端開口部は、可動部3の上下動を可能とする案内開口部25と、通路4の出口部41の内側に形成される錠剤排出口26とを構成している。図示の例では、天壁22と外周壁21の上端開口部とは互いに半円状に形成され、この上端開口部の外周部が案内開口部25となり、上端開口部の内周部が錠剤排出口26となっている。
【0027】
フランジ23は、外周壁21の上端部から外側に突出し、図示の例では天壁22に対して面一に形成されている。
なお、通路固定壁24は、天壁22から垂下しており、詳細については後で述べる。
【0028】
可動部3は
図2のほか、
図5の六面図及び断面図に示されている。可動部3は、外周壁21の内側に沿って上下動可能に案内される誘導壁31と、誘導壁31に設けられる通路可動壁32とを備えている。
【0029】
誘導壁31は、環状に形成され、その外周部が外周壁21の内周部に沿って取り囲まれる。また、誘導壁31は、天井面を山形状の傾斜面31aにしてある。中栓1を上下逆にした場合に、山形状がすり鉢形状となり、すり鉢形状の底部、つまり誘導壁31の内周部に錠剤Tが集まるようになっている。さらに、誘導壁31の内周部は、通路固定壁24を通路可動壁32の周りを囲むようになっており、通路固定壁24に沿って上下動可能に設けられている。
【0030】
また、外周壁21に対して誘導壁31の上下動する範囲を規制する規制部が設けられている。
図4、
図5に示すように、規制部は、誘導壁31の外周側から突出する第1規制凸部31bと、外周壁21に形成された孔である第1規制凹部21bとから構成される。第1規制凹部21bの孔は、外周壁21を内外方向に貫通すると共に、上下方向に延長する長孔である。そして、第1規制凸部31bが第1規制凹部21bの上下方向に沿って上下動可能となる。ちなみに、第1規制凹部21bの下端部に第1規制凸部31bが配置されている場合には、可動部3の上下動する範囲の下方位置が定まり、このとき、天壁22と誘導壁31との間には、誘導壁31(可動部3)が上下方向に移動可能なスペースが形成されている。一方、第1規制凹部21bの上端部に第1規制凸部31bが配置されている場合には、可動部3の上下動する範囲の上方位置が定まり、このとき、天壁22に誘導壁31が衝突するようになる。また、この規制部や通路固定壁24の周りを囲む誘導壁31の内周部の形状によって、誘導壁31が外周壁21の円周方向に対して位置決めされる。
【0031】
更に、誘導壁31の内周部や外周部には、上下方向に貫通するガイド溝31c、31dが形成されており、これらガイド溝31c、31dに沿うレール24c、21dが通路固定壁24の外周部や外周壁21の内周部に上下方向に沿って形成されている。
【0032】
固定部2に対して可動部3を取り付ける場合は、これらガイド溝31c、31dとレール24c、21dの位置が合うようにしてから、固定部2の外周壁21の下方から可動部3を上方に押し込む。そうすると、外周壁21が樹脂の弾力性によって瞬間的に広がって、誘導壁31の第1規制凸部31bが外周壁21の第1規制凹部21bに嵌まり込む。これによって、可動部3が固定部2に対して取り付けられる。
なお、通路可動壁32の詳細についてはこの後で述べる。
【0033】
通路4は、
図2に示すように、前述の通路固定壁24と通路可動壁32から構成され、上下方向に貫通する状態に設けられる。また、通路4は、上から下に向かって出口部41、定量室部42、入口部43を構成している。通路固定壁24は、
図4に示すように、底から視ると横断面「コ」の字状となっている。横断面「コ」の字状の開口幅24Wは、錠剤Tの横幅よりも僅かに大きく形成してある。また、出口部41を構成する通路固定壁24の上部は、天壁22の一部でもあり、通路4の通行幅を狭める方向に突出している。通路4の通行幅は、1個分の錠剤幅TW、この例では錠剤縦幅=錠剤厚み幅に基づいて決定されている。更に、定量室部42を構成する通路固定壁24の中間部は、上方に向かって断面「コ」の字状の奥行きが浅くなる斜面が形成されている。また、入口部43を構成する通路固定壁24の下部は、横断面「コ」の字状の奥行きが定量室部42よりも狭くなっており、具体的には定量室部42から下に向かうにつれて徐々に奥行きが浅くなり、その後、徐々に奥行きが広くなる傾斜が付いている。
【0034】
通路可動壁32は
図2又は
図5に示すように、通路固定壁24の横断面(横断面「コ」の字の開口)を塞ぐ方向に対向する壁である。そして、通路可動壁32の下部内側には、誘導壁31の内周部に設けられるストッパ部33を備え、通路可動壁32の上部を操作部34としても利用している。
【0035】
ストッパ部33は、通路4の通行幅を狭めるもので、可動部3の上下方向への移動に伴って通路可動壁32の入口部と出口部との間を移動するものである。
【0036】
操作部34は、錠剤排出操作時に用いられ、通路固定壁24から離れる方向に凹むことにより、複数個の錠剤Tを収容可能なポケット34aを形成している。また、操作部34は、誘導壁31から上向きに延長する操作部本体34bと、操作部本体34bの上端部に設けられ外周壁21の上端開口部を塞ぐ封止壁34cとを備えている。封止壁34cが外周壁21の上端開口部を塞ぐと、封止壁34cと天壁22によって、外部からは、通路4が視認できないことから、この状態では埃等が通路4内に落ち込むことがなく、衛生的である。
【0037】
操作部本体34bは、外周壁21の上端開口部の外周部に沿って形成された凹溝形状であり、具体的には断面半円状に凹んでいる。また、封止壁34cも、凹溝形状の操作部本体34bの先端を塞ぐように半円形状となっている。そして、操作部本体34bと封止壁34cによって、ポケット34aが形成される。
【0038】
上述した中栓1を上下逆にした状態が
図1に示されており、この
図1を用いて、主に錠剤Tが通路4を通過する作用を説明する。
図1(イ)に示すように、可動部3が自重で下降することにより、誘導壁31が外周壁21及び通路固定壁24に沿って下降し、誘導壁31の内周部だけでなく全体が通路固定壁24の入口部よりも下の段違い位置に配置される。また、操作部34は、天壁22よりも下側に配置され、ストッパ部33が通路固定壁24の出口部に対向して配置される。それによって、通路4の入口部43の通行幅については錠剤幅TWよりも広くなって、定量室部42への錠剤Tの落下を可能とする。また、通路4の定量室部42の通行幅については、錠剤幅TWよりも広くなっているが、通路固定壁24の定量室部には、錠剤Tを1個のみ収容する。さらに、通路4の出口部41の通行幅については、錠剤幅TWよりも狭くなって、錠剤Tの落下を防いでいる。
【0039】
図1(イ)の状態から操作部34を押し込んでいく過程で、可動部3が上昇することにより、誘導壁31が通路固定壁24に沿って上昇し、通路固定壁24の定量室部にストッパ部33が配置される。このときに通路4の定量室部42は、ストッパ部33と通路固定壁24によって構成されており、両者の間には錠剤Tを1個のみ通過可能な通行幅が形成される。それゆえ、両者の間に錠剤Tを1個のみ収容し、それ以外の錠剤Tをストッパ部33や誘導壁31の傾斜面31aに載せたまま押し上げていくことになる。
【0040】
操作部34を指で上方に押し込んだ状態が
図1(ロ)に示されている。このとき、誘導壁31の傾斜面31aが通路固定壁24の入口部よりも高い段違い位置に配置される。また、ストッパ部33が通路固定壁24の入口部に対向して配置され、操作部34が通路固定壁24の出口部に対向して配置される。それによって、通路4の入口部43の通行幅については、錠剤幅TWよりも狭くなって、定量室部42への錠剤Tの落下を阻止する。また、通路4の定量室部42の通行幅については、錠剤幅TWよりも広くなり、定量室部42から錠剤Tがポケット34aに移動する。なお、通路固定壁24の定量室部が出口側に向かって通行幅を狭くする斜面としていることから、錠剤Tがポケット34aに移動しやすくなっている。更に、通路4の出口部41は、通路固定壁24の下端部と、操作部本体34bの下端部とで形成されることから、この内側に形成される錠剤排出口26は、錠剤幅TWよりも広くなっている。封止壁34cがない構造であれば、そのまま錠剤Tが落下して排出されるが、封止壁34cが錠剤排出口26を塞いでいるので、錠剤Tは、ポケット34aに収容されたままの状態となる。
【0041】
図3には、上述した錠剤定量容器の使用手順が示されており、この
図3を用いて主にブリッジ現象を解消する作用について説明する。以下の(1)〜(5)が、その使用手順である。
(1)錠剤定量容器は、普通通り、容器本体9の口部92が上を向いている。
(2)錠剤定量容器を上下逆にしつつポケット34aが下側になるように斜めに傾けると、可動部3が下降する(操作部34が飛び出してくる)。このとき、誘導壁31の内周部が通路固定壁24の入口部よりも下の段違い位置に配置され、錠剤Tが誘導壁31の傾斜面31a及び通路固定壁24の入口部に乗っている。また、錠剤Tが1個、通路4の定量室部42に収容される。
(3)飛び出した操作部34を指で元通りに押し込む。すると、誘導壁31が通路固定壁24に沿って上昇し、誘導壁31の傾斜面31aが通路固定壁24の入口部よりも高い段違い位置に配置され、通路固定壁24の入口部に乗っていた錠剤Tを動かす。これによって、いわゆる「ブリッジ現象」が解消される。また、錠剤Tがポケット34aに移動する。
(4)指を離すと、可動部3が再度下降する。このとき、錠剤Tは1個、ポケット34aに収容されたままである。
(5)指を押し込んで離す一連の操作を繰り返すと、錠剤Tは、その繰り返した回数に見合った数量分だけ、ポケット34aに錠剤Tを収容する。図示の例では、3個の錠剤Tがポケット34aに収容されている。そのまま容器本体9を傾ければ、ポケット34aに収容されている錠剤Tが排出される。以上で第1実施形態の説明を終わる。
【0042】
図6、
図7は、本発明の錠剤定量容器の第2実施形態、及びその使用状態を示している。また、
図8、
図9は、第2実施形態の中栓1に用いる固定部2、可動部3をそれぞれ示している。以下、これら図面を参照しながら、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に述べる。第2実施形態の中栓1では、ポケット34aが無い構造、つまり錠剤Tを収容することなく、操作部34に対する上方への押し込み操作だけで、そのまま錠剤Tを排出する構造を採用している。従って、通路可動壁32の操作部34については、封止壁34cがなく、操作部本体34bのみで構成され、誘導壁31から上方に突出しており、全体として角棒状に形成されている。また、外周壁21の上端内周部については、第1実施形態と同様に円形であり、その円形の中央部から外周部まで延長する短冊状の部分が、外周壁21の上端開口部となり、それ以外の部分を天壁22が覆っている。なお、天壁22の高さは、フランジ23よりも段差上に低く形成されている。
【0043】
また、第2実施形態では、通路固定壁24の横断面「コ」の字状の開口幅24Wを、錠剤縦幅(錠剤Tの厚み幅)よりも僅かに大きく形成している。そして、錠剤横幅(錠剤直径)を、通路4の通行幅を決定する錠剤幅TWとしている。従って、中栓1を上下逆にして可動部3を下降させた場合、
図7に示すように通路固定壁24の出口部とストッパ部33とで構成される通路4の出口部の通行幅は、錠剤横幅よりも狭くなって、錠剤Tの落下を防いでいる。
【0044】
更に、第2実施形態では、可動部3が上下動する範囲を規制する規制部として、誘導壁31の上端部には第2規制凸部31eが、外周壁21の下端部には第3規制凸部21cがそれぞれ設けられている。誘導壁31の中間部から下部については、その円周方向に間隔をあけて対向する箇所を窪ませて薄肉形状にしてあり、窪んだ上側に位置する誘導壁31の上端部がその下側に対して突出し、第2規制凸部31eを構成する。また、外周壁21の下端部については、内側に突出する第3規制凸部21cが円周方向に間隔をあけて対向して形成されている。第3規制凸部21cの円周方向両側には、上向きに延長するスリット21eが形成され、2つのスリット21eの間には第3規制凸部21cを含む小片21fが円周方向に分離して形成され、小片21fを樹脂の弾性によって変形可能としてある。従って、可動部3を固定部2の外周壁21の下方から挿入すると、第3規制凸部21cが第2規制凸部31eによって外側に押し込まれ、第3規制凸部21cを含む小片21fが外周側に瞬間的に広がって、第3規制凸部21cの上側に第2規制凸部31eが配置され、上下動可能な可動部3の下降位置が定められる。一方、可動部3の上昇位置は、第2規制凸部31eがその下側部分(薄肉に窪んだ部分)を利用して、第3規制凸部21cから離れていき、誘導壁31の上面が固定部2の天壁22に衝突することによって定められる。以上で第2実施形態の説明を終わる。
【0045】
図10、
図11は、本発明の錠剤定量容器の第3実施形態、及びその使用状態を示している。また、
図12、
図13は、第3実施形態の中栓1に用いる固定部2、可動部3をそれぞれ示している。以下、これら図面を参照しながら、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に述べる。第3実施形態では、第2実施形態と同様に、ポケット34aが無い構造を採用している。また、天壁22が水平ではなく、ドーム状に膨らむ形状である。より詳しく言えば、図示の例では、外周壁21の上端内周部は円形であり、この円形の中央部が錠剤排出口26である。また、錠剤排出口26の外側に位置する半円状の扇状部分が可動部3の上下動を可能とする案内開口部25であり、それ以外の半円状の扇状部分が天壁22によって覆われる部分である。そして、天壁22が外周壁21の上端部からその扇状部分の中心部に向かってドーム状に膨らんでいる。また、このドーム状に膨らむ天壁22の形状に合わせて、誘導壁31を形成してある。
【0046】
更に、第3実施形態では、通路固定壁24が天壁22の下方だけでなく上方に突出する構造を採用している。通路固定壁24の上部が横断面コの字状をしており、その横断面を塞ぐように通路可動壁32もほぼ対称的な一回り大きな横断面コの字状に形成してある。また、固定部2に対して可動部3を上下動可能に保持するためのレール24eとガイド溝32eが、通路固定壁24の先端部と通路可動壁32の先端部とに形成されている。より詳しく言えば、通路固定壁24の先端部の上部には、後方に向かって張り出す楔状のレール24eが形成されている。一方、通路可動壁32の先端部は、内向きに凹むガイド溝32eを備えている。
【0047】
また、このガイド溝32eにレール24eを嵌め合わせるために、第3実施形態では、固定部2に対して可動部3を水平方向から挿入する組立構造を採用している。前述したように天壁22がドーム状に形成されており、また、天壁22から通路固定壁24の下部が垂下していることから、天壁22と外周壁21との上下間には、通路固定壁24の両側に一対の挿入空間22sが形成される。これら一対の挿入空間22sに誘導壁31を差し込むために、誘導壁31が環状の一部を切除したC字状に形成され、C字状の二又に分岐した二又部31sを備えている。誘導壁31の二又部31sを一対の挿入空間22sに差し込むと、ガイド溝32eにレール24eが嵌り合い、レール24eに沿ってガイド溝32eが移動可能、つまり固定部2に対して可動部3が上下動可能となる。また、可動部3の上下動する範囲を規制する規制部として、通路可動壁32の外周部には誘導壁31の上端に相当する高さに第4規制凸部31gが鍔状に突出しており、この第4規制凸部31gによって、可動部3の上下動する範囲の下方位置が定められる。また、このとき、誘導壁31と天壁22との間には誘導壁31(可動部3)が上下方向に移動可能なスペースが形成されており、誘導壁31と天壁22とが衝突することによって、可動部3の上下動する範囲の上方位置が定められる。
【0048】
また、誘導壁31の天井面は、第1実施形態と同様、山形状の傾斜面31aとなっており、排出操作の際に錠剤Tを誘導壁31の内周部に導くようになっている。但し、誘導壁31は、C字状であり、不連続部分がある。このC字状の不連続部分から錠剤Tが天壁22に落ち込まない構造を採用している。具体的には、通路固定壁24の横断面コの字状の奥部と外周壁21の内周部と間に仲介片27が掛け渡すように形成されており、この仲介片27が外周壁21の下端部に向かって垂下している。仲介片27は、錠剤Tの厚み幅や横幅に比べて十分に幅狭に形成してあり、錠剤Tが安定して載らないようになっている。以上で第3実施形態の説明を終わる。
【0049】
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、容器本体9の口部92の形状は円筒形状に限らず、角筒形状等のその他の形状であっても良いし、この場合、口部92の形状に中栓1の外周壁21の形状を対応させれば良い。また、容器本体9には蓋の内周部を捩じ込み式に連結する構成が採用されているが、他の構成、例えばスナップ式に嵌め込んで連結する構成であっても良い。更に、錠剤Tは碁石状のものに限らず、他の形状、例えば球状であっても良い。