(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5893976
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】ヒートシンク及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20160310BHJP
H01L 23/473 20060101ALI20160310BHJP
H01L 23/467 20060101ALI20160310BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20160310BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
H01L23/46 Z
H01L23/46 C
H05K7/20 N
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-65082(P2012-65082)
(22)【出願日】2012年3月22日
(65)【公開番号】特開2013-197453(P2013-197453A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】大高 幹雄
【審査官】
豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/016221(WO,A1)
【文献】
特開2009−146948(JP,A)
【文献】
特開2002−141164(JP,A)
【文献】
特開2009−12023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F1/00−1/44
H01L23/29
23/34−23/36
23/373−23/427
23/44
23/467−23/473
H05K7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1の壁面と第2の壁面を有し、冷却用流体が流通する流通経路を構成する経路部材と、
前記経路部材の内部に配設される熱交換部材と、を備え、
前記熱交換部材は、
前記第1の壁面及び前記第2の壁面に沿った板面を有し前記冷却用流体の流通経路方向に垂直な方向に長い板状に各々に形成され、該第1の壁面と該第2の壁面とに交互に接触するように前記冷却用流体の流通経路方向に互いに間隔を空けて配置される桟部と、
前記経路部材の第1の壁面及び第2の壁面に対して傾斜するとともに前記冷却用流体の流通経路方向に沿った板面を有し、前記複数の桟部のうち隣り合う桟部を架橋する複数のルーバーと、
を有することを特徴とするヒートシンク。
【請求項2】
前記複数のルーバーは、前記隣り合う桟部の間毎に複数ずつ形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項3】
前記熱交換部材は、アルミニウムで形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のヒートシンク。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のヒートシンクを製造する方法であって、
前記経路部材を用意する工程と、
一枚の金属板の一部を切り起こすことによって前記複数のルーバーを形成し、該一枚の金属板から前記熱交換部材を形成する工程と、
前記経路部材の内部に前記熱交換部材を配設する工程と、
を含むことを特徴とするヒートシンクの製造方法。
【請求項5】
前記熱交換部材を形成する工程は、前記経路部材の壁面の形状に合わせて前記
複数の桟部の長さを調整する工程を含む、
ことを特徴とする請求項4に記載のヒートシンクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンク及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CPU、集積回路、半導体素子などの電子部品、電子機器及び各種電子機器といった発熱体においては、放熱のために冷却器が設けられる場合がある(例えば、特許文献1、2参照)。従来では、これらの発熱体の放熱には空冷冷却器が使われていたが、近年、発熱体の発熱量、発熱密度が増大する傾向にあることから水冷冷却器も使われるようになってきた。
【0003】
例えば、省エネルギの観点などからハイブリッド車が多く生産されるようになってきたが、このハイブリッド車の駆動モータの制御を行っているインバータにはIGBT素子などの発熱体が実装されており、この発熱体の冷却のために水冷冷却器が設けられている。
【0004】
また、ハイブリッド車等に搭載されるリチウムイオン電池などに対しても、動作時の温度上昇による性能の低下をふせぐために、冷却器が設けられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−108683号公報
【特許文献2】国際公開第2011/016221号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年では、インバータや電池などの発熱体は、より一層の高効率化、小型化が求められており、その結果、発熱体を冷却する冷却器の冷却性能をより一層向上させることが求められている。しかし、冷却性能を向上させるために冷却器の構成を複雑なものとすると、冷却器の製造が困難となるとともに製造コストが向上してしまう。
【0007】
本発明は、容易に製造することができ且つ冷却性能に優れたヒートシンク及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点に係るヒートシンクは、
互いに対向する第1の壁面と第2の壁面を有し、冷却用流体が流通する流通経路を構成する経路部材と、
前記経路部材の内部に配設される熱交換部材と、を備え、
前記熱交換部材は、
前記第1の壁面及び前記第2の壁面に沿った板面を有し前記冷却用流体の流通経路方向に垂直な方向に長い板状に各々に形成され、該第1の壁面と該第2の壁面とに交互に接触するように前記冷却用流体の流通経路方向に互いに間隔を空けて配置される桟部と、
前記経路部材の第1の壁面及び第2の壁面に対して傾斜するとともに前記冷却用流体の流通経路方向に沿った板面を有し、前記複数の桟部のうち隣り合う桟部を架橋する複数のルーバーと、
を有することを特徴とする。
【0009】
また、前記複数のルーバーは、前記隣り合う桟部の間毎に複数ずつ形成されていてもよい。
【0010】
また、前記熱交換部材は、アルミニウムで形成されていてもよい。
ここで、本明細書において「アルミニウム」は、純アルミニウムだけではなく、アルミニウムを含有する合金も含むものとする。
【0011】
本発明の第2の観点に係るヒートシンクの製造方法は、
上記のヒートシンクを製造する方法であって、
前記経路部材を用意する工程と、
一枚の金属板の一部を切り起こすことによって前記複数のルーバーを形成し、該一枚の金属板から前記熱交換部材を形成する工程と、
前記経路部材の内部に前記熱交換部材を配設する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0012】
また、前記熱交換部材を形成する工程は、前記経路部材の壁面の形状に合わせて前記複数の桟部の長さを調整する工程を含んでもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、容易に製造することができ且つ冷却性能に優れたヒートシンク及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係るヒートシンクの構成の概要を示す分解斜視図である。
【
図2】この実施の形態に係るフィンユニットを拡大して示す斜視図である。
【
図3】この実施の形態に係るフィンユニットを冷却用流体の流通経路方向に沿って見た図である。
【
図4】この実施の形態に係るフィンユニットの製造を説明する図である。
【
図5】この実施の形態に係るフィンユニットの製造を説明する図である。
【
図6】この実施の形態に係るヒートシンクにおける冷却用流体の流れを模式的に示す図である。
【
図7】変形例に係るフィンユニットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の実施の形態に係るヒートシンク10の構成の概略を示す分解斜視図である。ヒートシンク10は、例えばIGBT素子やリアクトルなどの図示しない発熱体を、冷却用流体を用いて冷却できるように構成されている。ヒートシンク10は、
図1に示すように、冷却用流体の出入口部11a、11bと、ケース(経路部材)12と、フィンユニット(熱交換体)16と、を備える。この実施の形態では、冷却用流体は、水や不凍液などの液体を用いるものとした。冷却用流体は、例えばモータなどで駆動される図示しないポンプによって圧送されて、出入口部11a、11bやケース12の内部を流通する。
【0017】
出入口部11a、11bとケース12のそれぞれは、例えば、銅やアルミニウム、鉄などの熱伝導性の高い材料で形成され、冷却用流体の流通経路の一部を構成する。この実施の形態では、出入口部11a、11bは、パイプ状に形成されており、ケース12は、上ケース13aと下ケース13bとの2部材で構成されている。上ケース13aと下ケース13bとのそれぞれには、出入口部11と接続するための半円柱状の凹部14a、14bと、フィンユニット15を収納するための直方体状の凹部15a、15bとが形成されている。フィンユニット15を収納するための凹部15a、15bは、それぞれの底面(第1の壁面、第2の壁面)が対向するように形成されている。こうした上ケース13aや下ケース13bは、例えば金属板にプレス処理を施すことによって形成(用意)することができる。以下、出入口部11a、11bを結ぶ方向である流通経路方向を「X方向」とし、ケース12の幅方向(フィンユニット16の板面に沿った方向であってX方向に垂直な方向)を「Y方向」とし、ケース12の高さ方向(フィンユニット16の板面に垂直な方向)を「Z方向」とする。
【0018】
フィンユニット16は、例えば銅やアルミニウム、鉄などの熱伝導性の高い材料で形成される。フィンユニット16は、
図1及び
図2に示すように、冷却用流体の流通経路方向(X方向)に沿って、桟部17a、17bと、ルーバー18とが交互に形成されて構成されている。
【0019】
桟部17a、17bのそれぞれは、ケース12の凹部15a、15bの底面(X方向及びY方向)に沿った板面を有し、冷却用流体の流通経路方向に垂直な方向(Y方向)に長い直方体状の板状に形成されている。桟部17a、17bは、冷却用流体の流通経路方向(X方向)に沿って互いに間隔を空けて複数配置され、上ケース13aの凹部15aの底面に上面が接触する桟部17aと、下ケース13bの凹部15bの底面に下面が接触する桟部17bとが、X方向に交互に並ぶように配置されている。つまり、桟部17a、17bは、上ケース13aの底面と下ケース13bの底面とに、交互に接触するように冷却用流体の流通経路方向(X方向)に沿って互いに間隔を空けて配置されている。
【0020】
ルーバー18は、隣り合う桟部17a、17bを接続(架橋)するように、隣り合う桟部17a、17bの間毎に複数ずつ形成されている。一例として、この実施の形態のヒートシンク15では、冷却用流体の流通経路方向(X方向)に沿って桟部17aと桟部17bが交互に計13個形成されており、桟部17a、17bの間毎にルーバー18が15個ずつ形成されている。複数のルーバー18のそれぞれは、ケース12の凹部15a、15bの底面に対して傾斜するとともに冷却用流体の流通経路方向(X方向)に沿った板面を有する直方体状の板状に形成されており、隣り合う桟部17a、17bのルーバー18同士の間には、それぞれに隙間が形成されている。複数のルーバー18のそれぞれは、この実施の形態では、ケース12の凹部15a、15bの底面に対して同じ角度で傾斜している。ルーバー18とケース12の底面との傾斜角度は、例えば20°から70°の範囲内で適宜定めることができ、好ましくは30°から45°の範囲内で適宜定めることができる。
【0021】
フィンユニット16を製造するには、例えば、まず、
図4に示すように、一枚の金属板20に対してプレス処理を施すことにより、金属板20から複数のルーバー18を切り起こして形成する。なお、
図4では、複数のルーバー18を形成するための金属板20の切れ目を図示しているが、こうした切れ目は、プレス処理とは別に形成してもよいし、プレス処理とともに形成してもよい。そして、
図5に示すように、ケース12の凹部15a、15bの底面の形状に合わせて、桟部17a、17bの端部をトリミングして長さを調整することによって、フィンユニット16が製造される。このときには、例えば、Z方向から見て、桟部17a、17bの端部の位置が等しくなるように、桟部17a、17bの端部をトリミングしてもよい。なお、プレス処理の前に、予め金属板20から不要となる部分を除去しておいてもよい。また、金属板20として、アルミニウムを使うことで、ケース12の壁面からルーバー18に十分に熱が伝わり、熱交換の効率が上がる。また、他の熱伝導度の高い銅などと比較して、低コスト、軽量にすることができる。
【0022】
ヒートシンク10を組み立てる際には、出入口部11a、11bと上ケース13a、下ケース13bは、ろう材や接着材を用いたりビス止めなどによって互いに接続される。特にビス止めによって接続するときには、弾性樹脂などを用いて水漏れを防止するようにしてもよい。また、フィンユニット16は、桟部17aが上ケース13aに接触するとともに桟部17bが下ケース13bに接触するように、ケース12の内部に収納される。フィンユニット16とケース12についても、ろう材や熱伝導性の高い接着材を用いたりビス止めなどによって互いに接合面を固着させてもよい。このときには、桟部17a、17bだけではなく、ルーバー18の端部についてもケース12と固着させることが好ましい。このようにして構成されるヒートシンク10では、出入口部11a、11bからケース12内部に冷却用流体が流通され、フィンユニット16の隙間を冷却用流体が流通する。そして、上ケース13aと下ケース13bの一方または双方に、例えばIGBT素子やリアクトルなどの図示しない発熱体が熱的に接続され、発熱体からケース12やフィンユニット17に熱が伝えられるとともに、ケース12やフィンユニット16から冷却用流体に熱が拡散されて発熱体が冷却される。
【0023】
この実施の形態のヒートシンク10では、フィンユニット16の桟部17a、17bが上ケース13aと下ケース13bとに交互に接触するように形成されており、
図6に示すように、ケース12内部の冷却用流体の流通経路が桟部17a、17bによって蛇行する。なお、
図6では、太線矢印は冷却用流体の流れを示しており、ルーバー18の図示は省略している。このように冷却用流体の流通経路が蛇行することによって、ケース12内部で冷却用流体を撹拌させることができ、冷却用流体に温度境界層が形成されるのを抑制して冷却用流体とフィンユニット16やケース12との熱交換効率を向上させることができる。また、このようにフィンユニット16の桟部17a、17bが上ケース13aと下ケース13bとに交互に接触することによって、上ケース13a及び下ケース13bのそれぞれに対して直接にフィンユニット16が熱を授受することができ、ヒートシンク10の冷却性能を向上させることができる。
【0024】
さらに、この実施の形態のヒートシンク10では、フィンユニット16の桟部17a、17bが上ケース13aと下ケース13bとに交互に接触することによって、ケース12とフィンユニット16との接合面が確保されて、ケース12とフィンユニット16とを確実に接触させることができる。また、ルーバー18の寸法が僅かに外れて、ルーバー18の一部がケース12と接触していない場合であっても、桟部17a、17bからロウ材や接着材が表面張力でルーバー18にも伝わるので、ケース12とフィンユニット16との接合の歩留まりを向上させることができる。さらに、桟部17aと桟部17bとのZ方向の距離を上ケース13aと下ケース13bとの底面同士の距離よりも大きくなるようにフィンユニット17を設計することによって、ケース12とフィンユニット16とをより確実に接触させることができ、ケース12とフィンユニット16との接合の歩留まりを向上させたり、ケース12とフィンユニット16との熱伝導性を向上させてヒートシンク10の冷却性能を向上させることができる。また、上ケース13a、下ケース13b、フィンユニット16の材料を全てアルミニウムとし、各部品をろう付けすると、上ケース13aとフィンユニット16との間、および、下ケース13bとフィンユニット16の間が金属的に接合されるため、熱が伝わりやすくなり、熱交換の効率が上がる。
【0025】
この発明は、上述した実施の形態に限定されず、様々な変形及び応用が可能である。例えば、上述した実施の形態では、フィンユニット16は、冷却用流体の流通経路方向(X方向)に沿って、上ケース13aに接触する桟部17aと下ケース13bに接触する桟部17bとが1つ置きに交互に形成されるものとしたが、こうした例に限定されず、例えば
図7の変形例のフィンユニット116に示すように、桟部17aと桟部17bとが2つ置きに交互に形成されてもよいし、桟部17aと桟部17bとが3つ以上置きに交互に形成されてもよい。
【0026】
上述した実施の形態では、凹部14a、14b、15a、15bが形成された上ケース13aと下ケース13bの2部材からケース12が構成されるものとしたが、ケース12は、フィンユニット16の桟部17a、17bとの接合面を有するように互いに対向する壁面を有して冷却用流体が流通する流通経路を構成するものであればよく、例えば、断面コの字状の部材に蓋がされてケース12が構成されてもよいし、四角筒状の一部材からケース12が構成されるなどとしてもよい。
【0027】
上述した実施の形態では、冷却用流体として、水や不凍液などの液体を用いるものとしたが、空気や二酸化炭素などの気体を用いてもよい。
【0028】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、様々な変更(構成要素の削除等を含む)をなし得ることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0029】
10、110 ヒートシンク
11a、11b 出入口部
12 ケース
13a 上ケース
13b 下ケース
14a、14b、15a、15b 凹部
16、116 フィンユニット
17a、17b 桟部
18 ルーバー