特許第5893978号(P5893978)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5893978
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】潤滑油供給装置
(51)【国際特許分類】
   F16N 7/38 20060101AFI20160310BHJP
   B63H 23/36 20060101ALI20160310BHJP
   F16N 7/02 20060101ALI20160310BHJP
   F16N 29/02 20060101ALI20160310BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20160310BHJP
   F16C 33/10 20060101ALI20160310BHJP
【FI】
   F16N7/38 G
   B63H23/36
   F16N7/02
   F16N29/02
   F16C17/02 Z
   F16C33/10 Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-65944(P2012-65944)
(22)【出願日】2012年3月22日
(65)【公開番号】特開2013-194892(P2013-194892A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年9月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085006
【弁理士】
【氏名又は名称】世良 和信
(74)【代理人】
【識別番号】100096873
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 廣泰
(74)【代理人】
【識別番号】100106622
【弁理士】
【氏名又は名称】和久田 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100131532
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 健一
【審査官】 中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−014492(JP,A)
【文献】 特表平08−505458(JP,A)
【文献】 特開昭62−279194(JP,A)
【文献】 特開2003−083499(JP,A)
【文献】 特開2006−265345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16N 7/38
B63H 23/36
F16C 17/02
F16C 33/10
F16N 7/02
F16N 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の船尾管である潤滑対象部に水溶性を有する潤滑油を供給する潤滑油供給装置において、
前記潤滑対象部を通って前記潤滑油が循環する潤滑系と、
前記潤滑系中の前記潤滑油にドライガスを供給するドライガス供給装置と、
を備える潤滑油供給装置。
【請求項2】
記潤滑系が、前記潤滑油を貯留する貯留部と、前記船尾管と該貯留部とを連通する潤滑油通路と、を有し、
前記貯留部又は前記潤滑油通路に一端が接続され、他端が空気中に位置している空気管をさらに備え、
前記ドライガス供給装置が、前記貯留部又は前記潤滑油通路内の前記潤滑油にドライガスを供給する請求項1に記載の潤滑油供給装置。
【請求項3】
前記ドライガス供給装置が、前記空気管を介して、前記貯留部又は前記潤滑油通路内の前記潤滑油にドライガスを供給する請求項2に記載の潤滑油供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑対象部に潤滑油を供給する潤滑油供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、潤滑油が機械装置の外部に漏れた場合の自然環境への影響を低減するために、水溶性グリコールを基油とし、水溶性増粘剤と、水溶性防錆剤等からなる、スラッジ等が沈殿しない生分解性を有する水溶性の潤滑油が開発されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、水溶性潤滑油は、外気(空気)と接触すると、空気中の水分を吸収する。その結果、潤滑油中の水分量が過剰に増加すると、潤滑性能の低下を招くこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−265345号公報
【特許文献2】特開平11−153294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、水溶性を有する潤滑油を用いる潤滑油供給装置において、潤滑油中の水分量の増加を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る潤滑油供給装置は、
船舶の船尾管である潤滑対象部に水溶性を有する潤滑油を供給する潤滑油供給装置において、
前記潤滑対象部を通って前記潤滑油が循環する潤滑系と、
前記潤滑系中の前記潤滑油にドライガスを供給するドライガス供給装置と、
を備える。
【0006】
本発明に係る潤滑油供給装置では、水溶性を有する潤滑油が潤滑系の少なくとも一部において外部の空気と接触すると、該潤滑油が空気中の水分を吸収することとなる。
【0007】
ここで、本発明に係るドライガスとは、本発明に係る潤滑油供給装置が使用されることが想定される環境中の空気よりも乾燥度が高いガスである。このドライガスが潤滑系中の潤滑油に供給されると、該潤滑油中の水分が該ドライガスに吸収される。そして、潤滑油中の水分を吸収したガスが潤滑系の外部に放出される。これにより、潤滑油中の水分が潤滑系の外部に排出されることとなる。従って、本発明によれば、潤滑油中の水分量の増加を抑制することができる。
【0008】
本発明は、船舶の船尾管に潤滑油を供給する潤滑油供給装置に適用され、潤滑対象部は船舶の船尾管である。そして、前記潤滑系は、前記潤滑油を貯留する貯留部と、前記船尾管と該貯留部とを連通する潤滑油通路と、を有してもよい。このとき、潤滑油供給装置は、前記貯留部又は前記潤滑油通路に一端が接続され、他端が空気中に位置している空気管をさらに備える。そして、前記ドライガス供給装置は、前記貯留部又は前記潤滑油通路内の前記潤滑油にドライガスを供給する。
【0009】
上記のような構成では、空気管内の空気、又は、空気管を通して貯留部若しくは潤滑油通路内に入り込んだ空気と潤滑油とが接触することで、該潤滑油が空気中の水分を吸収することとなる。或いは、船尾管シール装置の損傷等による海水の流入により、該潤滑油中
に水分が混入する。しかし、貯留部又は潤滑油通路において、ドライガス供給装置からドライガスが供給されると、該ドライガスに潤滑油中の水分が吸収される。そして、潤滑油中の水分を吸収したガスが空気管から空気中に放出される。これにより、潤滑油中の水分が空気中に排出されることとなる。従って、船尾管に供給される潤滑油中の水分量の増加を抑制することができる。
【0010】
また、空気管の一端が貯留部に接続されており、且つ、ドライガス供給装置から該貯留部内の潤滑油にドライガスが供給される構成の場合、該貯留部内に貯留された潤滑油から水分を排出させることができる。そのため、より水分量の少ない潤滑油を船尾管に供給することが可能となる。
【0011】
また、上記構成の場合、前記ドライガス供給装置は、前記空気管を介して、前記貯留部又は前記潤滑油通路内の前記潤滑油にドライガスを供給してもよい。これによれば、ドライガスによって、空気管における空気と潤滑油との直接の接触を抑制することができる。そのため、ドライガスによって、潤滑油中の水分を吸収することができることに加えて、潤滑油が空気から吸水すること自体を抑制することもできる。従って、潤滑油中の水分量の増加をさらに抑制することができる。
【0012】
また、潤滑油供給装置に複数の空気管が設けられている場合、一部の空気管のみを介して潤滑油にドライガスを供給してもよい。この場合、潤滑油中の水分を吸収したガスが、ドライガスが供給されない空気管から空気中に放出されることで、該ガスの空気中への放出を促進させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水溶性を有する潤滑油を用いる潤滑油供給装置において、潤滑油中の水分量の増加を抑制することができる。その結果、潤滑油の潤滑性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態に係る潤滑油供給装置の概略構成を示す図である。
図2】実施例に係る船尾管及び潤滑油供給装置の概略構成を示す図である。
図3】実施例に係るドライガス供給装置本体の概略構成を示す図である。
図4】実施例に係る、第二潤滑油供給装置において、第二オイルタンクに第二ドライガス供給管が挿入された場合における第二オイルタンク周囲の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係る潤滑油供給装置の概略構成を示す図である。本発明の実施の形態に係る潤滑油供給装置100は、船舶に適用することができる。この潤滑油供給装置100は、機械装置における潤滑対象部400に水溶性を有する潤滑油を供給する装置である。尚、潤滑対象部400は、機械装置における摺動部又は回転部等、潤滑油を供給すべき部分であればどのようなものであってもよい。
【0017】
潤滑油供給装置100は、潤滑系200とドライガス供給装置300とを備えている。潤滑系200は、オイル貯留部201とオイル流路202とを有している。オイル貯留部
201には、潤滑対象部400に供給するための水溶性を有する潤滑油が貯留されている。また、オイル貯留部201には、オイル流路202の一端と他端とが接続されている。そして、オイル流路202の途中に潤滑対象部400が配置されている。
【0018】
この潤滑系200では、オイル貯留部201からオイル流路202を介して潤滑対象部400に潤滑油が供給され、潤滑対象部400からオイル流路202を介してオイル貯留部201に潤滑油が戻される。これにより、潤滑対象部400を通って潤滑油が潤滑系200を循環する。尚、図1において、実線の矢印は、潤滑油の流れ方向を表している。
【0019】
ここで、潤滑系200においては、オイル流路202の少なくともいずれかの部分において潤滑油が外部の空気と接触する。水溶性を有する潤滑油は、空気と接触すると該空気中の水分を吸収する。その結果、潤滑油中の水分量が過剰に増加すると、潤滑性能の低下を招くこととなる。
【0020】
そこで、本実施の形態に係る潤滑油供給装置100では、オイル流路202内の潤滑油にドライガス供給装置300からドライガスを供給する。このドライガスは、潤滑油供給装置100の周囲の空気よりも乾燥度が高いガスである。尚、図1において、破線の矢印はドライガスの流れを表している。また、ドライガスは、オイル貯留部201内に貯留された潤滑油に供給してもよい。
【0021】
ドライガスがオイル流路202内の潤滑油に供給されると、ドライガスの湿度と潤滑油の湿度とが均衡するようにこれらの間を水分が移動する作用により、該潤滑油中の水分が該ドライガスに吸収される。そして、潤滑油中の水分を吸収したガスが、オイル流路202における潤滑油が外部の空気と接触する部分において潤滑系200の空気中に放出される。これにより、潤滑油中の水分が潤滑系200の外部に排出されることとなる。従って、本実施の形態に係る潤滑油供給装置100によれば、潤滑油中の水分量の増加を抑制することができる。その結果、潤滑油の潤滑性能の低下を抑制することができる。
【0022】
<実施例>
以下、本発明を、船舶の船尾管に潤滑油を供給するための潤滑油供給装置に適用した場合の実施例について、図2から4に基づいて説明する。船尾管に供給される潤滑油は船外に漏れる可能性がある。潤滑油が船尾管から船外へ漏れると、海洋や河川等を汚染する虞がある。本実施例に係る潤滑油供給装置では、このような潤滑油が船外へ漏れた場合の自然環境への影響を低減するために、水溶性を有する潤滑油が用いられている。
【0023】
[船尾管及び潤滑油供給装置の概略構成]
図2は、本実施例に係る船尾管及び潤滑油供給装置の概略構成を示す図である。船尾管1には推進軸2が挿通されている。推進軸2の船外に突出した部分にはプロペラ(図示略)が設けられている。また、船尾管1においては、軸受3によって推進軸2が回転自在に支持されている。
【0024】
船尾管1の船外側には、推進軸2まわりにスリーブ5が外装されている。このスリーブ5には、船外側から水侵入防止用の水シールリング7,8と潤滑油漏出防止用の油シールリング9とが軸方向に並設されている。水シールリング7,8のリップ正面は船外側へ向けられている。油シールリング9のリップ正面は船内側へ向けられている。そして、各シールリング7,8,9がスリーブ5に外嵌状に摺接することで水密状態が保持されている。
【0025】
また、水シールリング8と油シールリング9との間には、漏水や漏油を船内に回収するための回収室10が形成されている。この回収室10には、その内部の圧力が船外の水圧
よりも所定の圧力差(例えば、0.3kg/cm程度)分低い圧力となるように潤滑油が供給される。これにより、各シールリング7,8,9のシール機能が低下した場合、漏水や漏油は回収室10に収容される。そして、回収室10に収容された漏水や漏油が、ドレイン管(図示略)等を通して船内に収容される。
【0026】
本実施例においては、船尾管1に潤滑油を供給する装置として第一潤滑油供給装置20及び第二潤滑油供給装置30が設けられている。第一潤滑油供給装置20は、船尾管1の軸受3に潤滑油を供給するための装置である。第二潤滑油供給装置30は、船尾管1の回収室10に潤滑油を供給するための装置である。
【0027】
第一潤滑油供給装置20は、第一オイルタンク21、ポンプ34、第一オイル管22a、第二オイル管22b、第一エアベント23a、及び第二エアベント23bを備えている。第一オイルタンク21には、軸受3に供給するための水溶性を有する潤滑油が貯留されている。第一オイルタンク21には第一オイル管22aの一端が接続されている。第一オイル管22aの他端は軸受3に接続されている。そして、第一オイル管22aに潤滑油を圧送するポンプ34が設けられ、第一オイルタンク21から軸受3に潤滑油が供給される。
【0028】
また、軸受3には第二オイル管22bの一端が接続されている。第二オイル管22bの他端は第一オイルタンク21に接続されている。そして、第二オイル管22bを通して軸受3から第一オイルタンク21に潤滑油が戻される。つまり、第一潤滑油供給装置20においては、第一オイルタンク21→第一オイル管22a→軸受3→第二オイル管22b→第一オイルタンク21の順に潤滑油が循環する。
【0029】
エアベント23a、23bは、第一潤滑油供給装置20を循環する潤滑油に混入した空気を空気中に排出するための管状の装置である。第一エアベント23aは、その一端が第一オイルタンク21に接続されている。そして、第一エアベント23aは、第一オイルタンク21から上方に向って延び、その他端が空気中に突出している。第二エアベント23bは、その一端が第二オイル管22bに接続されている。そして、第二エアベント23bは、第二オイル管22bから上方に向って延び、その他端が空気中に突出している。
【0030】
第二潤滑油供給装置30は、第二オイルタンク31、第三オイル管32a、第四オイル管32b、及び第三エアベント33を備えている。第二オイルタンク31には、回収室10に供給するための水溶性を有する潤滑油が貯留されている。第二オイルタンク31には第三オイル管32aの一端が接続されている。第三オイル管32aの他端は回収室10に接続されている。そして、重力により、第三オイル管32aを通して第二オイルタンク31から回収室10に潤滑油が供給される。
【0031】
また、回収室10には第四オイル管32bの一端が接続されている。第四オイル管32bの他端は第二オイルタンク31に接続されている。そして、第四オイル管32bを通して回収室10から第二オイルタンク31に潤滑油が戻される。つまり、第二潤滑油供給装置30においては、第二オイルタンク31→第三オイル管32a→回収室10→第四オイル管32b→第二オイルタンク31の順に潤滑油が循環する。
【0032】
第三エアベント33は、第二潤滑油供給装置30を循環する潤滑油に混入した空気を空気中に排出するための管状の装置である。第三エアベント33は、その一端が第二オイルタンク31に接続されている。そして、第三エアベント33は、第二オイルタンク31から上方に向って延び、その他端が空気中に突出している。
【0033】
本実施例に係る第一及び第二潤滑油供給装置20,30は、潤滑油にドライガスを供給
するドライガス供給装置40を備えている。ドライガス供給装置40は、ドライガス供給装置本体41、第一ドライガス供給管42、及び第二ドライガス供給管43を備えている。ドライガス供給装置本体41には、第一及び第二ドライガス供給管の一端が接続されている。第一ドライガス供給管42の他端は、第一潤滑油供給装置20の第二エアベント23bに接続されている。第二ドライガス供給管43の他端は、第二潤滑油供給装置30の第三エアベント33に接続されている。
【0034】
図3は、ドライガス供給装置本体41の概略構成を示す図である。ドライガス供給装置本体41には、ガス入口410から船内の空気が送り込まれる。ドライガス供給装置本体41内では、エアフィルタ411→レギュレータ412→エアドライヤ413→湿度計414→エア流量コントローラ415の順に空気が流れる。
【0035】
エアフィルタ411では、ガス入口410から送り込まれた空気中の不純物が取り除かれる。レギュレータ412は、エアドライヤ413に供給される空気の圧力を所定の圧力に調整する。エアドライヤ413では、湿度計414によって検出される空気の湿度が所定の湿度まで低下するように、供給された空気を乾燥させる。エア流量コントローラ415は、ガス出口416から排出される空気(ドライガス)の流量を所定の流量に調整する。
【0036】
ガス出口416には、第一及び第二ドライガス供給管42,43の一端が接続されている。これにより、ドライガス供給装置本体41において乾燥させた空気が、ドライガスとして、第一ドライガス供給管42を介して第二エアベント23bに供給され、第二ドライガス供給管43を介して第三エアベント33に供給される。そして、第二エアベント23bに供給されたドライガスが、該第二エアベント23bを介して、第二オイル管22b内の潤滑油に供給される。また、第三エアベント33に供給されたドライガスが、該第三エアベント33を介して、第二オイルタンク31内の潤滑油に供給される。
【0037】
[本実施例に係る構成の優れた点]
上記のような構成の各潤滑油供給装置20,30では、エアベント23a,23b,33内の空気、又は、これらのエアベント23a,23b,33を通してオイルタンク21,31若しくは第二オイル管22b内に入り込んだ空気と潤滑油とが接触する。これにより、水溶性を有する潤滑油が空気中の水分を吸収することとなる。
【0038】
その一方、第一潤滑油供給装置20においては、第二エアベント23bを介して第二オイル管22b内の潤滑油にドライガスが供給される。また、第二潤滑油供給装置30においては、第三エアベント33を介して第二オイルタンク31内の潤滑油にドライガスが供給される。
【0039】
この場合、第二オイル管22b内の潤滑油に供給されたドライガスによって、該第二オイル管22bを通って循環する潤滑油中の水分が吸収される。また、第二オイルタンク31内の潤滑油に供給されたドライガスによって、該オイルタンク31を通って循環する潤滑油中の水分が吸収される。
【0040】
そして、第一潤滑油供給装置20において、潤滑油中の水分を吸収したガスは、第一又は第二エアベント23a,23bから空気中に放出される。また、第二潤滑油供給装置30において、潤滑油中の水分を吸収したガスは、第三エアベント33から空気中に放出される。これにより、潤滑油中の水分が空気中に排出されることとなる。従って、本実施例に係る構成によれば、船尾管1における軸受3及び回収室10のそれぞれに供給される潤滑油中の水分量の増加を抑制することができる。その結果、潤滑油の潤滑性能の低下を抑制することができる。
【0041】
尚、本実施例に係る構成においては、エアベント23b,33を介して潤滑油にドライガスが供給されているが、ドライガス供給管42,43をオイルタンク21,31又はオイル管22a,22b,32a,32bに直接接続し、エアベントを介さずに潤滑油にドライガスを供給することもできる。しかしながら、エアベントを介して潤滑油にドライガスを供給することで、該ドライガスによって、エアベントにおける空気と潤滑油との直接の接触を抑制することができる。そのため、ドライガスによって、潤滑油中の水分を吸収することができることに加えて、潤滑油が空気から吸水すること自体を抑制することもできる。従って、潤滑油中の水分量の増加をさらに抑制することができる。
【0042】
また、第一潤滑油供給装置20においては、第一エアベント23a及び第二エアベント23bが設けられており、第二エアベント23bのみから潤滑油にドライガスが供給されているが、二つのエアベント23a,23bの両方から潤滑油にドライガスを供給することもできる。しかしながら、第二エアベント23bのみから潤滑油にドライガスを供給することで、潤滑油中の水分を吸収したガスが、ドライガスが供給されない第一エアベント23aから放出され易くなる。そのため、潤滑油中の水分を吸収したガスの空気中への放出を促進させることができる。
【0043】
尚、このように一つの潤滑系において複数のエアベントが設けられている場合、空気を吸い込み易いことが予測されるエアベント、即ち、空気と潤滑油とが接触し易く、潤滑油の空気からの吸水が生じ易いことが予測されるエアベントを選択し、該エアベントを介して潤滑油にドライガスを供給してもよい。これによれば、空気と潤滑油とが接触し易いエアベントにおけるこれらの接触をドライガスによって抑制することができる。
【0044】
また、第二潤滑油供給装置30において、第三エアベント33は第二オイルタンク31に接続されており、且つ、該第三エアベント33を介して第二オイルタンク31内の潤滑油にドライガスが供給される。これによれば、ドライガスは第二オイルタンク31内に貯留された潤滑油から水分を吸収し、該水分を吸収したガスが第二オイルタンク31から空気中に放出される。つまり、第二オイルタンク31内に貯留された潤滑油から水分を排出させることができる。そして、その潤滑油が、途中で空気と接触することなく船尾管1の回収室10に供給される。そのため、より水分量の少ない潤滑油を回収室10に供給することが可能となる。
【0045】
尚、図4に示すように、第二ドライガス供給管43の端部を第二オイルタンク31に挿入し、その端部が第二オイルタンク31に貯留されている潤滑油中に位置するような構成とすることで、該潤滑油にドライガスを直接供給してもよい。
【0046】
潤滑油供給装置20,30におけるエアベント及びドライガス供給管の接続位置は上記に限られるものではない。潤滑油にドライガスが供給でき、且つ、潤滑油中の水分を吸収したガスをエアベントから空気中に放出できれば、これらの接続位置は適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0047】
1・・・船尾管
2・・・推進軸
3・・・軸受
10・・回収室
20・・第一潤滑油供給装置
21・・第一オイルタンク
22a・・第一オイル管
22b・・第二オイル管
23a・・第一エアベント
23b・・第二エアベント
30・・第二潤滑油供給装置
31・・第二オイルタンク
32a・・第三オイル管
32b・・第四オイル管
33・・第三エアベント
100・・潤滑油供給装置
200・・潤滑系
201・・オイル貯留部
202・・オイル流路
300・・ドライガス供給装置
400・・潤滑対象部
図1
図2
図3
図4