【実施例】
【0037】
以下、本発明を具体的な実施例により説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
<アラゴナイト型炭酸カルシウムの合成>
水酸化カルシウムと塩化マグネシウムのスラリー(Ca/Mgの存在モル比0.6)を80℃に加温し、炭酸ガス(炭酸ガス濃度:30vol%)を導入し、アラゴナイト型炭酸カルシウムを生成させた。
【0039】
(調製例1)
上記のようにして得られたアラゴナイト型炭酸カルシウム100質量部に対し、0.5質量部となるようにコハク酸を乾式処理方法で処理した。具体的には、平均長径が25μm、アスペクト比が15であるアラゴナイト型炭酸カルシウムを混合撹拌しながら、水に溶解させたコハク酸0.5質量部を添加し、10分間撹拌混合し、表面処理炭酸カルシウムを調製した。
【0040】
(調製例2)
コハク酸の処理量を1.0質量部とする以外は、調製例1と同様にして表面処理炭酸カルシウムを調製した。
【0041】
(調製例3)
コハク酸の処理量を2.0質量部とする以外は、調製例1と同様にして表面処理炭酸カルシウムを調製した。
【0042】
(調製例4)
コハク酸の処理量を5.0質量部とする以外は、調製例1と同様にして表面処理炭酸カルシウムを調製した。
【0043】
(調製例5)
上記で得られたアラゴナイト型炭酸カルシウムに、表面処理量が1.0質量部となるようにコハク酸を湿式処理方法で処理した。具体的には、アラゴナイト型炭酸カルシウムスラリーに水に溶解させたコハク酸1.0質量部を添加し、10分間撹拌し、脱水、乾燥、解砕して、表面処理炭酸カルシウムを調製した。
【0044】
(調製例6)
有機酸として、コハク酸に代えて、安息香酸を用いる以外は、調製例1と同様にして表面処理炭酸カルシウムを調製した。
【0045】
(調製例7)
有機酸として、コハク酸に代えて、安息香酸を用いる以外は、調製例2と同様にして表面処理炭酸カルシウムを調製した。
【0046】
(調製例8)
有機酸として、コハク酸に代えて、安息香酸を用いる以外は、調製例3と同様にして表面処理炭酸カルシウムを調製した。
【0047】
(調製例9)
有機酸として、コハク酸に代えて、安息香酸を用いる以外は、調製例4と同様にして表面処理炭酸カルシウムを調製した。
【0048】
(調製例10)
有機酸として、コハク酸に代えて、安息香酸を用いる以外は、調製例5と同様にして、湿式処理方法により処理して表面処理炭酸カルシウムを調製した。
【0049】
〔ポリプロピレン系樹脂組成物の調製〕
(実施例1〜10)
調製例1〜10で得られた表面処理炭酸カルシウム(20質量%)を、ポリプロピレン系樹脂(80質量%)と配合した。
【0050】
ポリプロピレン系樹脂としては、日本ポリプロ株式会社製ノバテック、BC02GA(MFR:25g/10分、密度0.9、エチレンプロピレンランダム共重合体22%のプロピレンブロック共重合体)を用い、以下のようにしてポリプロピレン系樹脂に表面処理炭酸カルシウムを配合した。
【0051】
神戸製鋼社製「KTX44」型2軸押出機、温度=210℃、スクリュー回転数=300rpmにて、押出機初段にポリプロピレン系樹脂を投入し溶融させ、次いで押出機中段
にて溶融したポリプロピレン系樹脂に表面処理炭酸カルシウムを所定の量となるようサイドフィーダーにて投入し混合、混練し、ペレットを得た。
【0052】
以上のようにして調製したポリプロピレン系樹脂組成物について、曲げ弾性率及び荷重たわみ温度を測定した。
【0053】
曲げ弾性率は、ISO−178に準拠して23℃で測定した。荷重たわみ温度は、ISO−75に準拠して測定した。
【0054】
(比較例1)
表面処理炭酸カルシウムの代わりに、無処理のアラゴナイト型炭酸カルシウムを用いる以外は、上記と同様にしてポリプロピレン系樹脂に配合してポリプロピレン系樹脂組成物を調製し、曲げ弾性率及び荷重たわみ温度を測定した。
【0055】
(比較例2)
無処理のアラゴナイト型炭酸カルシウムを用い、添加するアラゴナイト型炭酸カルシウム100質量部に対し1.0質量部となる量のコハク酸を、炭酸カルシウムとポリプロピレン系樹脂の混練時に添加し、ポリプロピレン系樹脂組成物を調製し、上記と同様にして曲げ弾性率及び荷重たわみ温度を測定した。なお、炭酸カルシウムとコハク酸の合計量が、20質量%となるようにポリプロピレン系樹脂に配合した。
【0056】
(比較例3)
コハク酸に代えて安息香酸を使用した以外は、比較例2と同様にポリプロピレン系樹脂組成物を調製し、曲げ弾性率及び荷重たわみ温度を測定した。
【0057】
(比較例4)
フィラーを添加していないポリプロピレン系樹脂について、上記と同様にして曲げ弾性率及び荷重たわみ温度を測定した。
【0058】
(参考例)
表面処理炭酸カルシウムに代えて、タルク(平均粒子径5μm)をポリプロピレン系樹脂に配合する以外は、上記と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物を調製し、曲げ弾性率及び荷重たわみ温度を測定した。
【0059】
曲げ弾性率及び荷重たわみ温度の測定結果を表1に示す。なお、表1に示す炭酸カルシウム配合量は、表面処理炭酸カルシウムの配合量または炭酸カルシウムと有機酸の合計の配合量を示している。
【0060】
【表1】
【0061】
表1に示すように、本発明に従う実施例1〜10のポリプロピレン系樹脂組成物は、無処理のアラゴナイト型炭酸カルシウムを配合した比較例1に比べ、高い曲げ弾性率及び荷重たわみ温度を示している。
【0062】
また、コハク酸または安息香酸を炭酸カルシウムに表面処理せずに、混練時に添加した比較例2及び比較例3と比べても、本発明に従う実施例1〜10のポリプロピレン系樹脂組成物は、高い曲げ弾性率及び荷重たわみ温度を示している。また、実施例2および実施例7のポリプロピレン系樹脂組成物は、タルクを配合した参考例と同程度以上の曲げ弾性率を示している。前述の通り、タルクは天然からの産物であり、現在使用されているような良質なタルクは何れ枯渇するであろうと懸念されているが、本発明の表面処理炭酸カルシウムが、タルクに代わる新たな無機充填剤として使用可能であることが確認できた。
【0063】
〔表面処理炭酸カルシウムの配合量の検討〕
調製例2で得られた表面処理炭酸カルシウムについて、ポリプロピレン系樹脂への配合量を変化させ、配合量と曲げ弾性率との関係を検討した。
【0064】
(実施例11)
表面処理炭酸カルシウム(10質量%)とポリプロピレン系樹脂(90質量%)を配合する以外は、実施例2と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物を調製し、曲げ弾性率及び荷重たわみ温度を測定した。
【0065】
(実施例12)
表面処理炭酸カルシウム(30質量%)とポリプロピレン系樹脂(70質量%)を配合
する以外は、実施例2と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物を調製し、曲げ弾性率及び荷重たわみ温度を測定した。
【0066】
(比較例5)
炭酸カルシウムとコハク酸の合計量が、10質量%となるようにポリプロピレン系樹脂に配合した以外は、比較例2と同様にポリプロピレン系樹脂組成物を調製し、曲げ弾性率及び荷重たわみ温度を測定した。
【0067】
(比較例6)
炭酸カルシウムとコハク酸の合計量が、30質量%となるようにポリプロピレン系樹脂に配合した以外は、比較例2と同様にポリプロピレン系樹脂組成物を調製し、曲げ弾性率及び荷重たわみ温度を測定した。
【0068】
曲げ弾性率及び荷重たわみ温度の測定結果を表2に示す。なお、表1に示す炭酸カルシウム配合量は、表面処理炭酸カルシウムの配合量または炭酸カルシウムと有機酸の合計の配合量を示している。
【0069】
【表2】
【0070】
表2に示すように、表面処理炭酸カルシウムの配合量を10質量%とした実施例11は、比較例5に比べ、高い曲げ弾性率及び荷重たわみ温度を示している。また、表面処理炭酸カルシウムの配合量を30質量%とした実施例12も、比較例6に比べ、高い曲げ弾性率及び荷重たわみ温度を示している。