(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5894020
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】バイアス保護回路及び増幅装置
(51)【国際特許分類】
H03F 1/52 20060101AFI20160310BHJP
H03F 3/21 20060101ALI20160310BHJP
H03F 3/193 20060101ALI20160310BHJP
【FI】
H03F1/52 Z
H03F3/21
H03F3/193
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-142065(P2012-142065)
(22)【出願日】2012年6月25日
(65)【公開番号】特開2014-7577(P2014-7577A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】高田 謙一
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 稔
(72)【発明者】
【氏名】東 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】三浦 由克
(72)【発明者】
【氏名】館森 正樹
【審査官】
柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−225014(JP,A)
【文献】
特開昭51−060141(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0309663(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0086530(US,A1)
【文献】
特開2010−206844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00−3/45
H03F 3/50−3/52
H03F 3/62−3/64
H03F 3/68−3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
増幅回路のゲート端子に接続される増幅回路接続端子と、
前記増幅回路のゲート端子にバイアス電圧を供給するバイアス回路の出力端子に接続されるバイアス回路接続端子と、
ソース端子を前記増幅回路接続端子及び前記バイアス回路接続端子のいずれか一方に接続され、ドレイン端子を前記増幅回路接続端子及び前記バイアス回路接続端子のいずれか他方に接続され、ゲート端子に印加される電圧に基づいて、前記増幅回路接続端子及び前記バイアス回路接続端子の間の導通のオン/オフを制御する第1トランジスタと、
前記増幅回路接続端子に印加される電圧が分圧された電圧をゲート端子に印加され、
前記増幅回路接続端子に印加される電圧が、前記増幅回路の電源及びゲート端子の間のショートに起因する電圧であるときには、ソース端子及びドレイン端子の間の導通をオンにすることにより、前記増幅回路接続端子及び前記バイアス回路接続端子の間の導通をオフにするように、前記第1トランジスタのゲート端子に印加する電圧を調整し、
前記増幅回路接続端子に印加される電圧が、前記バイアス回路からの出力に起因する電圧であるときには、ソース端子及びドレイン端子の間の導通をオフにすることにより、前記増幅回路接続端子及び前記バイアス回路接続端子の間の導通をオンにするように、前記第1トランジスタのゲート端子に印加する電圧を調整する第2トランジスタと、
を備えることを特徴とするバイアス保護回路。
【請求項2】
前記増幅回路接続端子に印加される電圧に対する前記第2トランジスタのゲート端子に印加される電圧の分圧比は、前記第2トランジスタが前記第1トランジスタのゲート端子に印加する電圧を調整可能であるように、前記増幅回路の電源の出力電圧に応じて可変であることを特徴とする請求項1に記載のバイアス保護回路。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のバイアス保護回路と、
前記バイアス保護回路の増幅回路接続端子に接続される増幅回路と、
前記バイアス保護回路のバイアス回路接続端子に接続されるバイアス回路と、
前記増幅回路に電源電圧を供給する電源回路と、
を備えることを特徴とする増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅回路にバイアス電圧を供給する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
増幅回路が入力信号を出力信号に増幅するにあたり、バイアス回路が増幅回路にバイアス電圧を供給する。増幅回路がMOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect−Transistor)であるとき、MOSFETのドレイン端子に電源回路から電源電圧が供給されるとともに、MOSFETのゲート端子にバイアス回路からバイアス電圧が供給される。
【0003】
MOSFETのドレイン端子及びゲート端子の間のショートが発生したとき、MOSFETのドレイン端子及びゲート端子を介して電源回路からバイアス回路にリターン電流が流入するため、バイアス回路が故障することがある。
【0004】
特許文献1では、増幅回路及びバイアス回路の間にバイアス保護回路を配置することにより、バイアス回路の故障を防止することができる。バイアス保護回路は、電圧制限用バリスタ及び過電流保護ヒューズから構成される。電圧制限用バリスタは、電源回路による過電圧をバイアス保護回路の増幅回路接続端子に印加されたとき、電源回路による過電圧分の過電流をバイアス保護回路のバイアス回路接続端子ではなく接地端子に放電する。過電流保護ヒューズは、電源回路による過電圧分の過電流を検出したとき、バイアス保護回路の増幅回路接続端子及びバイアス回路接続端子の間の導通をオフにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−206844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、バイアス保護回路は、過電流保護ヒューズから構成される。しかし、過電流保護ヒューズは、電源回路による過電圧分の過電流の検出/非検出を繰り返すたび、ヒューズエレメントの膨張/収縮を繰り返すため、ヒューズエレメントの破断を起こしてしまう。つまり、バイアス保護回路は、機械的応力により故障してしまう。
【0007】
ここで、バイアス保護回路が故障したとき、増幅回路がショートを発生させると、バイアス回路も故障してしまう。すると、増幅回路が新たに交換されても、増幅回路に適切なバイアス電圧が供給されないため、増幅回路が再び故障してしまう。これは、船舶において予備品の増幅回路を準備する必要がある場合には、特に問題となる。
【0008】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、増幅装置にバイアス電圧を供給するバイアス回路を増幅装置の電源からの電源電圧から保護するバイアス保護回路の寿命を延ばすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、機械的な構成ではなく電気的な構成を備えるトランジスタを用いて、増幅回路接続端子に印加される電圧に応じて、増幅回路接続端子及びバイアス回路接続端子の間の導通のオン/オフを制御することとした。
【0010】
具体的には、本発明は、増幅回路のゲート端子に接続される増幅回路接続端子と、前記増幅回路のゲート端子にバイアス電圧を供給するバイアス回路の出力端子に接続されるバイアス回路接続端子と、ソース端子を前記増幅回路接続端子及び前記バイアス回路接続端子のいずれか一方に接続され、ドレイン端子を前記増幅回路接続端子及び前記バイアス回路接続端子のいずれか他方に接続され、ゲート端子に印加される電圧に基づいて、前記増幅回路接続端子及び前記バイアス回路接続端子の間の導通のオン/オフを制御する第1トランジスタと、前記増幅回路接続端子に印加される電圧が分圧された電圧をゲート端子に印加され、前記増幅回路接続端子に印加される電圧が、前記増幅回路の電源及びゲート端子の間のショートに起因する電圧であるときには、ソース端子及びドレイン端子の間の導通をオンにすることにより、前記増幅回路接続端子及び前記バイアス回路接続端子の間の導通をオフにするように、前記第1トランジスタのゲート端子に印加する電圧を調整し、前記増幅回路接続端子に印加される電圧が、前記バイアス回路からの出力に起因する電圧であるときには、ソース端子及びドレイン端子の間の導通をオフにすることにより、前記増幅回路接続端子及び前記バイアス回路接続端子の間の導通をオンにするように、前記第1トランジスタのゲート端子に印加する電圧を調整する第2トランジスタと、を備えることを特徴とするバイアス保護回路である。
【0011】
この構成によれば、トランジスタは機械的な構成ではなく電気的な構成を備えるため、バイアス保護回路の寿命を延ばすことができる。
【0012】
また、本発明は、前記増幅回路接続端子に印加される電圧に対する前記第2トランジスタのゲート端子に印加される電圧の分圧比は、前記第2トランジスタが前記第1トランジスタのゲート端子に印加する電圧を調整可能であるように、前記増幅回路の電源の出力電圧に応じて可変であることを特徴とするバイアス保護回路である。
【0013】
この構成によれば、増幅回路の電源の出力電圧が様々な電圧に設定されても、同一のバイアス保護回路を繰り返し適用することができる。
【0014】
また、本発明は、バイアス保護回路と、前記バイアス保護回路の増幅回路接続端子に接続される増幅回路と、前記バイアス保護回路のバイアス回路接続端子に接続されるバイアス回路と、前記増幅回路に電源電圧を供給する電源回路と、を備えることを特徴とする増幅装置である。
【0015】
この構成によれば、トランジスタは機械的な構成ではなく電気的な構成を備えるため、バイアス保護回路の寿命を延ばすことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、増幅装置にバイアス電圧を供給するバイアス回路を増幅装置の電源からの電源電圧から保護するバイアス保護回路の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】本発明のバイアス保護回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0019】
本発明の増幅装置の構成を
図1に示す。本発明の増幅装置Aは、増幅回路1、電源回路2、バイアス回路3及びバイアス保護回路4から構成される。
【0020】
増幅回路1は、入力信号を出力信号に増幅する。電源回路2は、増幅回路1に電源電圧を供給する。バイアス回路3は、増幅回路1にバイアス電圧を供給する。バイアス保護回路4は、増幅回路1及びバイアス回路3の間に配置され、後述のように、電源回路2からの過電圧からバイアス回路3を保護する。増幅回路1がMOSFETであるとき、増幅回路1のドレイン端子に電源回路2から電源電圧が供給されるとともに、増幅回路1のゲート端子にバイアス回路3からバイアス電圧が供給される。
【0021】
本発明のバイアス保護回路の構成を
図2に示す。本発明のバイアス保護回路4は、増幅回路接続端子41、バイアス回路接続端子42、第1トランジスタ43、第2トランジスタ44、抵抗45、抵抗46、電源接続端子47及び抵抗48から構成される。
【0022】
増幅回路接続端子41は、増幅回路1のゲート端子に接続される。バイアス回路接続端子42は、バイアス回路3の出力端子に接続される。第1トランジスタ43及び第2トランジスタ44は、機械的なスイッチング素子でなく、電気的なスイッチング素子であり、例えばMOSFETを利用することができる。
【0023】
第1トランジスタ43のソース端子は、バイアス回路接続端子42に接続される。第1トランジスタ43のドレイン端子は、増幅回路接続端子41に接続される。ただし、第1トランジスタ43のソース端子は、増幅回路接続端子41に接続されてもよく、第1トランジスタ43のドレイン端子は、バイアス回路接続端子42に接続されてもよい。第1トランジスタ43のゲート端子は、第2トランジスタ44のドレイン端子に接続されるとともに、後述の抵抗48を介して後述のバイアス保護回路4用の電源接続端子47に接続される。第1トランジスタ43は、ゲート端子に印加される電圧に基づいて、増幅回路接続端子41及びバイアス回路接続端子42の間の導通のオン/オフを制御する。
【0024】
第2トランジスタ44のゲート端子は、増幅回路接続端子41に印加される電圧が分圧された電圧を印加される。具体的には、抵抗45が、増幅回路接続端子41及び第2トランジスタ44のゲート端子に接続され、抵抗46が、接地端子及び第2トランジスタ44のゲート端子に接続され、抵抗45及び抵抗46は、増幅回路接続端子41に印加される電圧を、抵抗45及び抵抗46の接続点において分圧する、分圧回路として機能する。第2トランジスタ44のソース端子は、接地端子に接続される。第2トランジスタ44のドレイン端子は、第1トランジスタ43のゲート端子に接続されるとともに、後述の抵抗48を介して後述のバイアス保護回路4用の電源接続端子47に接続される。ただし、第2トランジスタ44のソース端子は、第1トランジスタ43のゲート端子に接続されるとともに、後述の抵抗48を介して後述のバイアス保護回路4用の電源接続端子47に接続されてもよく、第2トランジスタ44のドレイン端子は、接地端子に接続されてもよい。
【0025】
まず、増幅回路1のドレイン端子及びゲート端子の間で、ショートが発生していないときについて説明する。増幅回路接続端子41に印加される電圧は、バイアス回路3からの出力に起因する低電圧である。第2トランジスタ44のゲート端子は、バイアス回路3からの出力に起因する低電圧が、抵抗45及び抵抗46により分圧された、低電圧を印加される。第2トランジスタ44は、ソース端子及びドレイン端子の間の導通をオフにする。
【0026】
第2トランジスタ44のソース端子及びドレイン端子の間の導通がオフにされるため、抵抗48による電圧降下が発生せず、第1トランジスタ43のゲート端子に印加される電圧は、電源接続端子47における電源電圧に等しくなる。よって、増幅回路接続端子41及びバイアス回路接続端子42の間の導通がオンにされて、バイアス回路3からの出力電圧が増幅回路1のゲート端子に向けて出力される。
【0027】
次に、増幅回路1のドレイン端子及びゲート端子の間で、ショートが発生しているときについて説明する。増幅回路接続端子41に印加される電圧は、増幅回路1のドレイン端子及びゲート端子の間のショートに起因する高電圧である。第2トランジスタ44のゲート端子は、増幅回路1のドレイン端子及びゲート端子の間のショートに起因する高電圧が、抵抗45及び抵抗46により分圧された、高電圧を印加される。第2トランジスタ44は、ソース端子及びドレイン端子の間の導通をオンにする。
【0028】
第2トランジスタ44のソース端子及びドレイン端子の間の導通がオンにされるため、抵抗48による電圧降下が発生して、第1トランジスタ43のゲート端子に印加される電圧は、接地端子における接地電圧に等しくなる。よって、増幅回路接続端子41及びバイアス回路接続端子42の間の導通がオフにされて、バイアス回路3からの出力電圧が増幅回路1のゲート端子に向けて出力されないとともに、電源回路2からの電源電圧がバイアス回路3の出力端子に向けて出力されなくて済む。
【0029】
このように、機械的な構成ではなく電気的な構成を備える第1トランジスタ43及び第2トランジスタ44を用いて、増幅回路接続端子41に印加される電圧に応じて、増幅回路接続端子41及びバイアス回路接続端子42の間の導通のオン/オフを制御する。よって、バイアス保護回路4の寿命を延ばすことができる。
【0030】
すると、増幅回路1がショートを発生させても、バイアス保護回路4が故障しにくいため、バイアス回路3も故障しにくい。よって、増幅回路1が新たに交換されると、増幅回路1に適切なバイアス電圧が供給されるため、増幅回路1が再び故障しにくい。これは、船舶において予備品の増幅回路を準備する必要がある場合には、特に有利である。
【0031】
増幅回路1が様々な回路に交換されるにあたり、増幅回路1の電源の出力電圧が様々な電圧に設定されることがある。このとき、増幅回路接続端子41に印加される電圧に対する第2トランジスタ44のゲート端子に印加される電圧の分圧比を、第2トランジスタ44が第1トランジスタ43のゲート端子に印加する電圧を上述のように調整可能であるように、増幅回路1の電源の出力電圧に応じて可変としてもよい。具体的には、抵抗45及び抵抗46の間の抵抗比を可変としてもよい。よって、増幅回路1が様々な回路に交換されるにあたり、増幅回路1の電源の出力電圧が様々な電圧に設定されても、同一のバイアス保護回路4を繰り返し適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係るバイアス保護回路及び増幅装置は、船舶において予備品の増幅回路を準備する必要がある場合や、増幅回路の電源からの電源電圧がバイアス回路からの出力電圧より高い場合に、特に有利に適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
A:増幅装置
1:増幅回路
2:電源回路
3:バイアス回路
4:バイアス保護回路
41:増幅回路接続端子
42:バイアス回路接続端子
43:第1トランジスタ
44:第2トランジスタ
45:抵抗
46:抵抗
47:電源接続端子
48:抵抗