特許第5894076号(P5894076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5894076
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】水晶体嚢サイズ推定方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20160310BHJP
   A61F 2/16 20060101ALI20160310BHJP
   A61B 3/14 20060101ALI20160310BHJP
【FI】
   A61B3/10 Z
   A61F2/16
   A61B3/14 Z
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-527081(P2012-527081)
(86)(22)【出願日】2010年8月31日
(65)【公表番号】特表2013-503020(P2013-503020A)
(43)【公表日】2013年1月31日
(86)【国際出願番号】US2010047228
(87)【国際公開番号】WO2011026068
(87)【国際公開日】20110303
【審査請求日】2013年8月29日
(31)【優先権主張番号】61/238,606
(32)【優先日】2009年8月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507132237
【氏名又は名称】パワーヴィジョン・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ヒルデブランド
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・ジョン・スミス
(72)【発明者】
【氏名】クラウディオ・アルジェント
【審査官】 石井 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−341094(JP,A)
【文献】 特開2003−144387(JP,A)
【文献】 特開2009−034451(JP,A)
【文献】 特表2008−531069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 − 3/18
A61F 2/16
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶体嚢のサイズを推定する方法であって、
対象の患者データを得るステップと、
眼水晶体の前面および前記眼水晶体の後面をイメージ化するステップと、
前記眼水晶体の屈折率を推定するステップと、
前記眼水晶体の前面の曲率半径を決定するために前記眼水晶体の前面のイメージの歪みを補正するステップと、
前記眼水晶体の後面の曲率半径を決定するために前記眼水晶体の後面のイメージの歪みを補正するステップと、
前記前面の補正済イメージおよび前記後面の補正済イメージを用いて、前記眼水晶体の厚みを決定するステップと、
前記推定された屈折率、前記患者データおよび前記眼水晶体の前面の曲率半径を用いて、前記眼水晶体の後面の推定曲率半径および眼水晶体の推定厚みを推定するステップと、
決定された後面曲率半径と後の推定曲率半径との差を決定し、かつ前記眼水晶体の厚みと眼水晶体の前記推定厚みとの差を決定するステップと、
推定された屈折率を変えながら前記眼水晶体の後面の推定曲率半径および眼水晶体の推定厚みを推定する前記ステップならびに前記決定するステップを繰り返すことにより、前記差のうちの少なくとも一つを最小化するステップと、
前記前面の曲率半径、前記後面の曲率半径および前記眼水晶体の厚みを用いて前記水晶体嚢の幾何学モデルを作るステップと、
を備える水晶体嚢のサイズを推定する方法。
【請求項2】
コンピュータベースのシステムが、計算された前記幾何学モデルに基づき移植する眼内レンズを選択するステップをさらに備える請求項1に記載の水晶体嚢のサイズを推定する方法。
【請求項3】
前記幾何学モデルから嚢袋径を計算するステップをさらに備える請求項1に記載の水晶体嚢のサイズを推定する方法。
【請求項4】
前記屈折率を推定するステップが、前記患者データを用いて前記眼水晶体の屈折率を推定するステップを備える請求項1に記載の水晶体嚢のサイズを推定する方法。
【請求項5】
エンドキャップを前記幾何学モデルにフィットさせて嚢袋径を計算するステップをさらに備える請求項1に記載の水晶体嚢のサイズを推定する方法。
【請求項6】
推定されたレンズの弾力を用いて嚢袋径を計算するステップをさらに備える請求項1に記載の水晶体嚢のサイズを推定する方法。
【請求項7】
前記眼水晶体の前面および眼水晶体レンズの後面をイメージ化するステップが、シャインフルーグイメージングシステムを用いて眼水晶体の前面および眼水晶体の後面をイメージ化するステップを備える請求項1に記載の水晶体嚢のサイズを推定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、米国特許法第119条の下で、2009年8月31日に出願された米国仮特許出願第61/238,606号に基づく優先権を主張し、これは、参照することにより本明細書に援用される。
[参照による援用]
【0002】
本明細書において説明されたすべての文献および特許出願は、個々の文献又は特許出願が本明細書に参照により援用されるように個別的かつ具体的に示されるのと同じ様に、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
眼内レンズ(「IOL」)は、生来のレンズが白内障により濁った場合又は生来のレンズがその調節能力の一部又は全部を失う場合、眼の生来のレンズを置換するために用いることができる。固定単焦点IOLおよび多焦点IOLを含む、非調節型のIOLsが説明されている。調節型IOLがまた説明され、これは生来のレンズと同様の調節能力を有する。
【0004】
生来のレンズをIOLと置換するため、生来のレンズはまず、眼の中に嚢袋を残して(一般的に乳化により)嚢袋(capsular bag)から取り出される。IOLはその後、嚢袋内に埋め込まれる。それは通常、移植されるIOLが、患者の嚢袋サイズに基づき適切にサイズ化されるということを確かなものにするために役立つ。調節型(accommodating)IOLは、適切にサイズ化されることを、確かなものにすることを、さらに重要なものとすることができる。すなわち、非調節型(non−accommodating)IOLとは異なり、調節型IOLは、嚢袋の形状の変化に反応して、遠近調節をするからである。したがって、調節型IOLの調節反応は、IOLと嚢袋との間のフィットの適切性に依存することがある。IOLを移植する前に、嚢袋のサイズを決定するまたは推定することは、したがって通常、有益であり、かつ調節型IOLの調節反応さえも、大幅に改善することがある。
【0005】
嚢袋サイズを推定する技術が記載されている。しかしながら、それらは、改良された嚢袋サイズ推定方法に対する必要性につながるという欠点を有する。例えば、磁気共鳴映像法(MRI)は、嚢袋の寸法を非侵襲的に測定するために用いることができる。しかしながら、画像解像度は通常、約±0.1mm以上である。さらに、MRIスライス厚は通常、水晶体嚢の真の水平方向直径の正確な推定値を得るには厚すぎる。なぜなら、一般的に、水晶体を横切って得られた3つから5つのイメージのみがあるからである。スライス厚を薄くすることを試みることは、より長いスキャン時間を生じさせるとともに、これは患者の眼がスキャンコースの間に少し動く場合、より多くのモーションノイズ(motion noise)を有するイメージを生じさせる。さらに、MRIスキャンへのアクセス、MRIスキャンのコスト、およびMRIスキャンの分析は、この技術を、IOL利用に関して、手を出せないものとする。
【0006】
光コヒーレンストモグラフィ(OCT)は、前部の水晶体半径を非侵襲的に測定するために用いることができるが、現在の臨床OCT装置は、虹彩のために水晶体半径のかなりの部分をイメージ化する機能は有していない。現在、OCT測定は、眼の光軸に沿って又は眼の光軸と平行に、なされている。したがって、イメージ化することのできるレンズ表面のエリアは、虹彩によって制限されている。レンズ半径を正確に計算することは、イメージ化することのできるレンズ表面(アーク長)の割合および真のレンズ中心がイメージ化されるように軸アライメントを確実にすることに大きく依存している。理解されるように、OCT測定は、シャインフルーグ測定とは異なり、レンズの真の形状を再構成するために必要とされるレンズを、現在、回転「スキャン」しない。すなわち、非対称が存在することがあるからである。シャインフルーグイメージ同様、OCTイメージはまた、光が通る屈折率が異なるため、歪み補正を必要とする。OCTは、前記問題が解決されれば、可能性のある方法になる。
【0007】
嚢テンションリング(例えば参照により本明細書に援用される非特許文献1を参照)、嚢測定リング(例えば参照により本明細書に援用される非特許文献2を参照)およびなどの非侵襲的な測定は、嚢サイズを推定するために用いられている。これらの方法は、フレキシブルな不完全(360度未満)のリングの移植を含み、該リングは、嚢袋の直径よりも大の自由直径を有する。水晶体が取り除かれた後に、リングが嚢袋内に配置された場合、前記リングは低剛性バネのように嚢を広げる。移植の前後にリングの特徴部間の距離を測定することにより、拡張された嚢直径を測定することができる。これらの測定は、非侵襲的でありかつ嚢袋を変形しているので、シャインフルーグイメージング(および場合により、薄いスライス厚MRI(small−slice thickness MRI)および回転スキャンOCT(rotationally scanning OCT)とは異なり、等価直径の測定値のみを得ることができるものであり、嚢袋の真の容量測定値を得ることができない。さらに、侵襲的方法は、外科医に、適切なデバイスを得るための時間又は治療方針を修正するための時間を与える非侵襲的方法とは対照的に、正確なサイズは測定時点で利用可能でなければならないので、理想的ではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】バス・シー(Vass, C.)ら、「Prediction of pseudophakic capsular bag diameter based on biometric variables」、J Cataract Refract Surg、1999年、25、p.1376−1381
【非特許文献2】テヘラニ・エム(Tehrani, M.)ら、「Capsule measuring ring to predict capsular bag diameter and follow its course after foldable intraocular lens implantation」、J Cataract Refract Surg、2003年、29、p.2127−2134
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示の一態様は、眼の水晶体嚢サイズを推定する方法である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記方法は、対象の患者データを得るステップと、眼水晶体(ocular lens)の前面および前記眼水晶体の後面をイメージ化するステップと、前記眼水晶体の屈折率を推定するステップと、前記眼水晶体前面の曲率半径を決定するために前記眼水晶体前面のイメージの歪みを補正するステップと、前記眼水晶体後面の曲率半径を決定するために前記眼水晶体後面のイメージの歪みを補正するステップと、前記前面の補正済イメージおよび前記後面の補正済イメージを用いて前記眼水晶体の厚みを決定するステップと、前記推定された屈折率、前記患者データおよび前記眼水晶体前面の曲率半径を用いて前記眼水晶体後面の推定された曲率半径および推定された眼水晶体の厚みを評価するステップと、決定された後面曲率半径と推定された後面曲率半径との差を決定しかつ前記眼水晶体厚みと前記推定された眼水晶体厚みとの差を決定するステップと、調整された推定済み屈折率を用いて前記推定するステップおよび前記決定するステップを繰り返すことにより、前記差のうちの少なくとも一つを最小化するステップと、前記前面の曲率半径、前記後面の曲率半径および前記眼水晶体の厚みを用いて前記眼の幾何学モデルを作るステップと、前記計算された幾何学モデルに基づき移植する眼内レンズを選択するステップと、を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記方法は、前記幾何学モデルから嚢袋径を計算するステップをさらに備える。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記屈折率を推定するステップは、前記患者データを用いて、眼水晶体の屈折率を推定するステップを備える。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記方法は、エンドキャップを幾何学モデルにフィットさせて嚢袋径を計算するステップをさらに備える。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記方法は、推定された眼水晶体の弾力を用いて嚢袋径を計算するステップをさらに備える。
【0015】
いくつかの実施形態において、眼水晶体の前面および前記眼水晶体の後面をイメージ化するステップは、シャインフルーグイメージングを用いて眼水晶体の前面および眼水晶体の後面をイメージ化するステップを備える。
【0016】
本発明の新規の特徴は、特に添付のクレームと共に説明される。本発明の特徴および効果のさらなる理解は、本発明の原理が用いられる例示的な実施形態を示す以下の詳細な説明および以下の添付図面を参照することにより得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】例示的な嚢袋サイズ推定方法を示す。
図2】レンズ屈折率の推定値、屈折データおよびバイオメトリクスデータを用いてレンズ後面曲率半径、並びにシャインフルーグイメージングから計算されたレンズ前面の曲率半径の推定値を決定するためのレイトレースを行うステップを示す。
図3】嚢袋径を計算する幾何学モデルを示す。
図4】嚢袋径測定を改善するための任意のエンドキャップフィットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は概して、眼の嚢袋のサイズを推定する方法に関する。本明細書の方法は、推定の後に、対象に移植される、適切にサイズ化されたIOLを決定するために用いることができるが、前記方法は、この使用に限定されない。本明細書において用いられる場合、嚢袋の「サイズ」は、限定的ではなく、嚢袋の任意の寸法、嚢袋又は嚢袋の一部の一般的な形状、容量などを含む。
【0019】
本明細書に記載された推定方法は、嚢が対象内(体内)にある場合は嚢袋に、人工的に作られた眼の一部である人工的嚢袋に、又は対象から取り出された(例えば動物などの)対象に由来する眼の一部である生来の嚢袋に、行うことができる。前記方法は、前記レンズがまだ嚢内に存在している間に行われるが、場合によっては、いくつかの測定が、前記レンズが嚢から取り出された後に行われる。
【0020】
図1は、嚢袋サイズ推定方法の例示的な実施形態を示す。方法5は、複数のステップを備えるが、嚢サイズを推定する代替的な実施形態において、方法5に含まれる全てのステップが、嚢サイズの推定において含まれることが必要とされるものではないことが理解される。また代替的実施形態において、方法5における各ステップの順序は、必ずしも嚢サイズを推定することにおいて、固定されることを要しないことが理解される。いくつかの実施形態において、方法5からの全てのステップが行われる必要がないばかりでなく、それらが行われる順序は、図1に示された順序と異なるものとすることができる。
【0021】
方法5はステップ10を含み、該ステップ10は、対象から、例えば限定されるものではないが、Aスキャン、OCT、又は他の臨床的方法を用いて、屈折および/又はバイオメトリクス測定値を得るステップを備える。ステップ10において得られる情報は、限定されるものではないが、顕性屈折(正視を達成するための眼鏡矯正)、角膜屈折力、角膜厚、角膜曲率測定(角膜曲率半径に変換することができるk値)、軸長、前房深度、レンズの厚み、角膜径、水晶体収差又はその組合せ、白内障密度、年齢、性別、および民族性から角膜収差を分離するのに役立つウェイブフロントマップを含むことができる。ステップ10において得られる情報は、概括的に考えられた患者データとすることができる。
【0022】
方法5は、ステップ20を含み、該ステップ20は、生来の水晶体の前面の曲率半径のイメージ、及びできれば、シャインフルーグイメージングシステムを用いて、生来の水晶体の後面の曲率半径のイメージを得るステップを備える。水晶体後面の測定の正確さは、視覚化される水晶体の割合、虹彩の拡張の要因に基づいている。
【0023】
前面および後面の曲率半径をイメージ化するために用いることができるシャインフルーグイメージングシステムは、限定するものではないが、ニデック製EAS−1000(株式会社ニデック、蒲郡市、日本国)、トプコン製SL−45(トプコンメディカルシステムズインク、パラマス、ニュージャージー州)、ペンタカム(オクルス、オプティゲレート株式会社、ヴェッツラー、ドイツ)、およびガリレイ・デュアル・シャインプフルーク・アナライザー(ツィーマー・オプサルモロジー、ポート、スイス)とすることができる。これらのおよび他のシャインフルーグイメージングシステムは、Dubbelman M,van der Heijde GL, Weeber HA著、「The thickness of the aging human lens obtained from corrected Scheimpflug images」、Optom Vis Sci、2001年、78、p.411−416、およびRosales P, Marcos S著、「Pentacam Scheimpflug quantitative imaging of the native lens and intraocular lens」、J Refractive Surgery、2009年、25、p.422−428に記載され、これらの文献を含むその全体の開示が参照により本明細書に援用される。
【0024】
また方法5はステップ30を含み、該ステップ30は、ステップ10(例えば、白内障密度、年齢、性別、民族性など)において得られたバイオメトリクスおよび患者データの任意の組合せから水晶体の屈折率(「RT」)を推定するステップを備える。
【0025】
また方法5はステップ40を含み、該ステップ40は、角膜、前房を通してかつ水晶体を通してイメージ化することに起因する、ステップ20からのシャインフルーグイメージの歪みを補正するステップを備える。前面および後面の曲率半径を測定するために、生来の水晶体の前面および後面を撮影する場合、シャインフルーグイメージングシステムは現在、前記イメージ化プロセスにおいて、一又は二以上の種類の歪みを考慮していない。ステップ40において補正される歪みの一つのタイプは、異なる眼の表面からの屈折によって生じる光学的歪みである。水晶体の前面の曲率半径は、角膜の前面および後面の両方によって生じる歪みについて補正される必要がある。一方、水晶体の後面の曲率半径は、角膜の前面および後面について、並びに、生来の水晶体の前面および生来の水晶体の屈折率(等価又は勾配屈折率)について補正される必要がある。
【0026】
水晶体前面(「Ras」)の曲率半径、水晶体後面(「Rps」)の曲率半径および水晶体の厚み(LTs)を決定するために、イメージは、補正される。添字「s」は、本明細書において、これらの測定値がシャインフルーグイメージングから計算されたことを示すために用いられる。
【0027】
ステップ40で、シャインフルーグイメージを補正するステップは、推定された屈折率を用いてレイレーシング法によって達成される。例えば、光学的歪みの補正方法は、ダブルマン(Dubbleman)およびロサレス(Rosales)で説明されており、これらは、共に本明細書に参照により援用される。例えば、ロサレスは、レイトレーシングを用いることにより、光学的歪みを補正して、水晶体の前面および後面を再構成するステップを記載している(例えばロサレスの図2参照)。注目すべきは、用いられる補正アルゴリズムは(機器内の光路のために)水晶体をイメージ化するために用いられる特定タイプのシャインフルーグ写真システムに固有のものとすることができること、又は補正アルゴリズムは二つ以上の特定イメージングシステムに適用することができることである。
【0028】
方法5はまた、(ステップ40において行われたレイトレースとは異なる)レイトレースを行うステップ50を含んで、ステップ55で、(ステップ30からの)水晶体のRIの推定値、患者の屈折およびバイオメトリクスデータ、並びにRasを用いて、水晶体後面(「Rp」)の曲率半径および水晶体の厚み(「LT」)の推定値を決定する。図2は、ステップ50からレイトレースを行うための例示的モデル示す。図2は、スペクタクル(眼鏡)、角膜、水晶体、および網膜を規定する半径を示す。図2のグラフのy軸は、近軸レイトレースからの光線の高さであると共に、モデルのパラメータが正しく調整された場合、前記光線の高さは、イメージの焦点を合わせることを確実にするため、網膜に対応するファイナルポイントでゼロとするべきである。
【0029】
方法5はまたステップ60を含み、該ステップ60は、二つのモデルから、得られたレンズ厚みとレンズ後面の曲率半径とを比較するステップ(すなわち、ステップ45およびステップ55からの結果を比較するステップ)を備える。ステップ60はさらに、屈折率を繰り返して変えながらモデル化を繰り返すことにより、一又は二以上の測定値の差を最小化するステップを含む。
【0030】
屈折率を繰り返して修正した後に、一旦、満足のゆくモデル間の一致が見つけられると、(図1には示されていないが、方法5において、ステップ60に続いてステップ80の前に発生する)ステップ70が実行され、これは、前面の半径、後面の半径およびレンズ厚みを、簡単な幾何学モデルに合わせて、嚢袋直径(「CBD」)を計算する。図3は、CBDを計算する方法を示す。これは、図3に示されるように、半径RpおよびRaを有する円の中心が軸上に位置合せされることを仮定することにより、なされる。中心間の距離、すなわちAPは、方程式150を用いて計算され、かつ円の交点間の距離(CBD)は、方程式160を用いて計算される。
【0031】
方法5はまた、さらにCBD測定を改良するために、エンドキャップ170(図4参照)をフィットする任意のステップ80を含む。エンドキャップは、第一の微分係数が水晶体赤道でゼロとなりかつ両方の面がこの位置で交わるように、レンズの前面および後面を調節することにより、数学的に計算される。それは、前記面が水晶体赤道にまで及ぶ場合、主要項が分数指数を有する多項式近似である。
【0032】
一旦、嚢形状が前記の方法によってエンドキャップを用いて再構成されると、嚢袋容量又は嚢形状に関する任意の他の測定値を決定することができる。
【0033】
また方法10は、任意ステップ90を含み、該任意ステップ90は、推定されたレンズ弾力を補正するステップを備える。十分な嚢テンションリング又は類似データが補正された場合、この補正は、先のCBD結果を用いて、ステップ95からのデータを比較することにより、嚢弾力割合に関して適用することができる。
【0034】
一旦、嚢サイズがステップ100で推定されると、IOLsのキットから、適切にサイズ化されたIOLを選択することができて、嚢サイズ推定に基づき移植される。例えば、嚢容量が前記方法の間に推定された場合、移植されるIOLを、嚢の推定された容量に基づき少なくとも一部において選択することができる。代替的に、嚢サイズ推定方法は、患者固有のIOLを製造又は設計するために用いることができる。
【0035】
嚢サイズ推定方法に基づき嚢内に移植することのできる例示的なIOLは、これらを限定するものではないが、米国特許第7,122,053号明細書、米国特許第7,261,737号明細書、米国特許第7,247,168号明細書、米国特許第7,217,288号明細書、米国特許第6,935,743号明細書、米国特許出願公開第2007/0203578号明細書、米国特許出願公開第2007/0106377号明細書、米国特許出願公開第2005/0149183号明細書、米国特許出願公開第2007/0088433号明細書、米国特許出願公開および米国特許出願公開第2008/0306588号明細書に記載されたものを含み、それらの全てが参照することにより本明細書に援用される。
【0036】
本開示はまた、2009年1月9日に出願された「Lenses and Methods of Accounting for Different Lens Capsule Sizes and Changes to a Lens Capsule Post−Implantation」という名称の、米国仮出願第61/143,559号に関するものであり、これは、参照することにより、本明細書に援用される。
【0037】
本明細書に記載された方法における一つ又は二つ以上のステップを、コンピュータベースのシステム、プロセッサ内蔵システム、又は指示実行システム、装置、又はデバイスからの指示を取り出すことができるとともに指示を実行することができる任意のシステムなどの、指示実行システムにより使用するため又は指示実行システムと接続して使用するため、任意のコンピュータ可読媒体上の指示により、実行することができる。本明細書において用いられるようなコンピュータ可読媒体は、任意の媒体とすることができ、該媒体は、指示実行システム、装置、又はデバイスにより或いは該指示実行システム、装置、又はデバイスと接続して、使用するプログラムを、含む、格納する、交信する、伝える、移動することができる。コンピュータ可読媒体は、例えば限定されるものではないが、電気的、磁気的、光学的、電磁気的、赤外、又は半導体のシステム、装置、デバイス、或いは伝播媒体とすることができる。コンピュータ可読媒体の、より具体的な実施形態は以下、すなわち、配線を有する一又は二以上の電気的接続(電子)、ポータブルフロッピー(登録商標)ディスク(磁気)、ランダムアクセスメモリ(RAM)(磁気)、読取専用メモリ(ROM)(磁気)、消去可能読取専用メモリ(EPROM)、光ファイバ(光学)、CD,CD−R,CD−RW,DVD,DVD−R,DVD−R又はDVD−RWなどのポータブル光ディスク、或いは、コンパクトフラッシュ(登録商標)カード,固定デジタルカード,USBメモリデバイス,メモリスティックなどのフラッシュメモリを含む。注意すべきは、コンピュータ可読媒体は、プログラムテキストを、紙又は他の媒体の光学スキャンによって、電気的に捕捉できる場合、必要であればその後、コンパイルされ、解釈され、又はそうでなければ、適切な手法で処理され、その後、コンピュータメモリに格納することができる場合、プログラムが印刷された紙又は他の適切な媒体とすることができることである。
【0038】
本開示の好適な実施形態が本明細書に示されると共に説明されたが、当業者にとって前記各実施形態は、例示の目的のために提供されたことは明らかである。多くのバリエーション、変更、および置換は、本開示を逸脱することなく、当業者は考えるだろう。本明細書に記載された本開示の実施形態に対し種々の代替は、本開示を実施する際に、適用することができることを、理解されるべきである。
【符号の説明】
【0039】
170 エンドキャップ
LT 水晶体厚み
CBD 嚢袋直径
図1
図2
図3
図4