(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
支持体とインク受理層を有する校正用インクジェット記録用紙において、支持体が、日本の経済産業省・生産動態統計調査・紙月報における品目「印刷・情報用紙/塗工印刷用紙/コート紙」に分類されるコート紙であり、インク受理層がアルミナ水和物とバインダーを含有し、インク受理層の片面あたり乾燥固形分の塗工量が10g/m2以上25g/m2以下であり、支持体とインク受理層の間に遮蔽層を有し、遮蔽層が、カオリン、炭酸カルシウム、バインダーおよびインク受理層中のバインダーに対する架橋剤を含有し、遮蔽層の片面あたり乾燥固形分の塗工量が3g/m2以上8g/m2以下であり、遮蔽層における、カオリンおよび炭酸カルシウムの含有量(A)とバインダーの含有量(B)との含有質量比(B/A)が、3/5以上9/10以下の範囲であることを特徴とする校正用インクジェット記録用紙。
【背景技術】
【0002】
印刷原稿のデジタル化に伴い、デザイン・制作段階、プリプレス段階、プレス段階の各工程で、最終的な印刷物の仕上がりをシミュレーションする必要がある。カラーマネージメントされた各種データを、プリンタを使って印刷し、仕上がりをシミュレーションするプリンタプルーフが知られている(例えば、非特許文献1参照)。特に、インクジェットプリンタが、筐体のコンパクトさ、価格、インク色増加に伴う色域の広さなどの理由によりプリンタプルーフに使用されている。
【0003】
日本の経済産業省・生産動態統計調査・紙月報における品目「印刷・情報用紙/塗工印刷用紙/コート紙・軽量コート紙」に分類されるコート紙がある。コート紙は、カタログ、パンフレット、雑誌や冊子、ポスター、広告、POPなど多くの商業印刷物に使用されている。これら商業印刷物は、有効期間が短く、掲示の交換頻度が高い。これら商業印刷物は、絵画作品やアート作品の印刷物のように印刷実機によるシミュレーションをする時間的およびコスト的に余裕がない。また、企業やクライアントの印刷物に対する要望から、これら商業印刷物は、品質に拘らない安価なチラシのようにシミュレーションを必要としない印刷物でもない。従って、これら商業印刷物は、プリンタプルーフに好適である。
【0004】
インクジェットプリンタを用いるプリンタプルーフのためのインクジェット記録用紙が公知である。支持体上に少なくとも1層以上のインク受理層を有するインクジェット記録シートにおいて、インク受理層の何れか1層に少なくとも2種類以上の着色剤と1種類以上の蛍光増白剤を含有し、且つ記録シートの校正対象印刷用紙に対するJIS Z8730で規定される明度指数(L
*)および知覚色度指数(a
*、b
*)の差の絶対値が、それぞれ1.5以下である校正用インクジェット記録シートが開示されている(例えば、特許文献1参照)。支持体上に吸水性無機顔料、ラテックス、ホウ酸またはその塩からなる下層と、サブミクロン顔料、ポリビニルアルコールからなる上層を塗工されてなる校正用インクジェット記録媒体が開示されている(例えば、特許文献2参照)。本印刷を行う製版印刷用紙、またはこれと白色度および光沢度が実質上同一の紙の表面に、顔料とバインダーを含むインク受容層を形成した紙のインク受容層にインクジェット印刷して製版印刷用プルーフの作成方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
一方、インクジェットプリンタによる印刷中または印刷後における用紙のコックリングを抑制し、インク吸収性に優れるインクジェット記録体として、支持体の少なくとも片面に、インク溶媒吸収遅延層及び記録層を有するインクジェット記録体であって、支持体と記録層の間に設けられるインク溶媒吸収遅延層は、平均粒子径が1.5μm以下である平板状顔料と水分散性ラテックスバインダーを、平板状顔料100質量部に対して水分散性ラテックスバインダー100〜2000質量部の比率で含有するインクジェット記録体が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1および特許文献2に記載されるが如くの用紙はインクジェットプリンタ専用紙である。従って、これらの用紙は、印刷色を再現するものの、色相や面質などのA2コート紙の質感を再現するまでに至っていない。特許文献3に記載されるが如くの用紙は、本印刷を行う製版印刷用紙の表面に顔料とバインダーを含むインク受容層を形成するために、印刷色やA2コート紙の質感を再現することが可能であるものの、インクジェットインクの溶媒によって製版印刷用紙がコックリングを発生し、印刷物の見栄えが悪くなる場合がある。また、コックリングが著しい場合は、印刷中にプリンタのインクヘッドに接触し、印刷不良をもたらす場合がある。
【0009】
特許文献4に記載されるが如くの用紙は、コックリングが抑制されるものの、校正に使用されるインクジェット記録用紙を示唆するものではなく、コート紙を支持体とし、校正用途における質感を再現するという課題を解決していない。
【0010】
本発明の目的は、カタログ、パンフレット、雑誌や冊子、ポスター、広告、POPなど多くの商業印刷物に使用されているコート紙の商業印刷物に対して、校正用途のインクジェット記録用紙を提供することである。さらに本発明の課題は、コックリングの発生が抑制され、コート紙の色相、面質および印刷色を再現することができ、インク吸収性に優れる校正用インクジェット記録用紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記の目的は、支持体とインク受理層を有する校正用インクジェット記録用紙において、支持体が、日本の経済産業省・生産動態統計調査・紙月報における品目「印刷・情報用紙/塗工印刷用紙/コート紙・軽量コート紙」に分類されるコート紙であり、インク受理層がアルミナ水和物とバインダーを含有し、インク受理層の片面あたり乾燥固形分の塗工量が10g/m
2以上25g/m
2以下であり、支持体とインク受理層の間に遮蔽層を有し、遮蔽層が、カオリン、炭酸カルシウム、バインダーおよびインク受理層中のバインダーに対する架橋剤を含有し、遮蔽層の片面あたり乾燥固形分の塗工量が3g/m
2以上8g/m
2以下であり、遮蔽層における、カオリンおよび炭酸カルシウムの含有量(A)とバインダーの含有量(B)との含有質量比(B/A)が、3/5以上9/10以下の範囲であることを特徴とする校正用インクジェット記録用紙によって達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、カタログ、パンフレット、雑誌や冊子、ポスター、広告、POPなど多くの商業印刷物に使用されているコート紙の印刷物に対して、校正用途のインクジェット記録用紙を提供することができる。さらに、コックリングの発生が抑制され、コート紙の色相、面質および印刷色を再現することができ、インク吸収性に優れる校正用インクジェット記録用紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の校正用インクジェット記録用紙について、詳細に説明する。
【0014】
本発明において、支持体は、日本の経済産業省・生産動態統計調査・紙月報における品目「印刷・情報用紙/塗工印刷用紙/コート紙・軽量コート紙」に分類されるコート紙である。かかるコート紙は、上質紙に対して両面合わせて塗工量が15g/m
2以上40g/m
2未満の範囲である塗工紙であって、所謂紙卸商分野において「A2コート紙」に称される塗工紙である。
【0015】
本発明において、校正用インクジェット記録用紙は、支持体の少なくとも片面にインク受理層を有する。インク受理層の片面あたりの乾燥固形分の塗工量が10g/m
2以上25g/m
2以下の範囲である。塗工量が10g/m
2未満であるとインク吸収性が不足し、校正用途に適する十分な印刷画質が得られない。塗工量が25g/m
2を超えるとインク受理層の透明性が低下し、支持体の色相や面質を再現できない。
【0016】
本発明において、インク受理層は、アルミナ水和物とバインダーを有する。これにより、インク受理層は支持体の色相や面質を再現できる。アルミナ水和物以外の顔料、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、アルミナ、サチンホワイト、クレー、タルク、酸化チタン、非晶質合成シリカ、気相法シリカ、コロイダルシリカ、カオリン、焼成カオリン、酸化亜鉛、活性白土、珪藻土、レーキ、プラスチックピグメントなどを多用すると、支持体の色相や面質を再現できない。インク受理層の塗工量を減少させることで支持体の色相や面質は再現可能になるが、インク吸収性が得られない。アルミナ水和物は、インク受理層に含まれる総顔料の80質量%以上の範囲が好ましい。これにより、一層良好に、支持体の色相や面質を再現でき且つインク吸収性を得ることができる。
【0017】
アルミナ水和物は、一般式Al
2O
3・nH
2Oとして表すことができる。アルミナ水和物は、組成や結晶形態の違いにより、ジプサイト、バイアライト、ノルストランダイト、ベーマイト、ベーマイトゲル(擬ベーマイト)、ジアスポア、無定形非晶質等に分類される。上記の式中、nの値が1である場合はベーマイト構造のアルミナ水和物を表し、nが1超3未満である場合は擬ベーマイト構造のアルミナ水和物を表し、nが3以上では非晶質構造のアルミナ水和物を表す。本発明において、アルミナ水和物は、少なくともnが1超3未満である擬ベーマイト構造のアルミナ水和物が好ましい。
【0018】
本発明において、インク受理層の塗工液を調製する際に、あらかじめアルミナ水和物と種々の酸類とを水中に混合する分散液を用いてアルミナ水和物を分散安定化することができる。このような酸類としては、硝酸、塩酸、臭化水素酸、アミド硫酸、酢酸、蟻酸、塩化第二鉄、塩化アルミニウム等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
本発明に用いられるアルミナ水和物は、アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等公知の方法によって製造することができる。また、アルミナ水和物の粒子径、細孔径、細孔容積、比表面積等の物性は、析出温度、熟成温度、熟成時間、液のpH、液の濃度、共存化合物等の条件によって制御することができる。
【0020】
アルコキシドからアルミナ水和物を製造する方法としては、例えば、特開昭57−88074号公報、同62−56321号公報、特開平4−275917号公報、同6−64918号公報、同7−10535号公報、同7−267633号公報、米国特許第2,656,321号明細書等に記載されるアルミニウムアルコキシドを加水分解する方法がある。これらのアルミニウムアルコキシドとしてはイソプロポキシド、2−ブトキシド等を挙げることができる。
【0021】
インク受理層のバインダーは、従来公知の水分散性バインダーまたは水溶性バインダーを用いることができる。水分散性バインダーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体またはアクリロニトリル−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの重合体あるいはメチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などのアクリル系共重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体ラテックス、ポリウレタン樹脂ラテックス、アルキド樹脂ラテックス、不飽和ポリエステル樹脂ラテックス、またはこれらの各種共重合体のカルボキシル基などの官能基含有単量体による官能基変性共重合体ラテックス、あるいはメラミン樹脂、尿素樹脂などの熱硬化合成樹脂を挙げることができる。水溶性バインダーとしては、例えば、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉などの澱粉誘導体、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコールまたはシラノール変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール誘導体、カゼイン、ゼラチンまたはそれらの変性物、大豆蛋白、プルラン、アラビアゴム、カラヤゴム、アルブミンなどの天然高分子樹脂またはこれらの誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどのビニルポリマー、アルギン酸ソーダ、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、無水マレイン酸またはその共重合体などを挙げることができる。これらを水分散性バインダーまたは水溶性バインダーから単独または2種以上を併用してインク受理層に含有することができる。インク受理層のバインダーは、後述の遮蔽層の架橋剤との反応性やバインダー被膜の透明性の点から、ポリビニルアルコールまたはその誘導体が好ましい。
【0022】
インク受理層における総顔料100質量部に対してバインダーは、インク吸収性の点で、3質量部以上20質量部以下の範囲が好ましい。
【0023】
本発明において、校正用インクジェット記録用紙は、支持体とインク受理層との間に遮蔽層を有する。遮蔽層は、ある程度インク吸収性を有しつつ、印刷中または印刷後にインクジェットインクのインク溶媒が支持体に到着時間および量を緩和する機能(以下、「遮蔽」という)を有する層であり、且つ支持体の色相や面質の再現を阻害しない層である。本発明において、遮蔽層は、片面あたり乾燥固形分の塗工量が3g/m
2以上8g/m
2以下の範囲である。3g/m
2未満であると遮蔽が不十分となり、8g/m
2を超えると支持体の色相や面質の再現が悪くなる。
【0024】
本発明において、遮蔽層は、カオリン、炭酸カルシウムおよびバインダーを含有する。また、遮蔽層における、カオリンおよび炭酸カルシウムの含有量(A)とバインダーの含有量(B)との含有質量比(B/A)が、3/5以上9/10以下の範囲である。顔料がカオリンおよび炭酸カルシウム以外であると、遮蔽が不十分となるかあるいは支持体の色相や面質の再現が悪くなる。また、カオリンおよび炭酸カルシウムの含有量(A)とバインダーの含有量(B)との含有質量比(B/A)が上記範囲外であると、遮蔽が不十分となるかあるいは支持体の色相や面質の再現が悪くなる。
【0025】
遮蔽層におけるカオリン/炭酸カルシウムの質量比は、遮蔽とインク吸収性の点から、2/3〜3/1の範囲が好ましい。さらに、カオリンおよび炭酸カルシウムは、遮蔽層中の総顔料の80質量%以上の範囲が好ましい。
【0026】
遮蔽層のバインダーは、従来公知の水分散性バインダーまたは水溶性バインダーを用いることができる。水分散性バインダーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体またはアクリロニトリル−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの重合体あるいはメチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などのアクリル系共重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体ラテックス、ポリウレタン樹脂ラテックス、アルキド樹脂ラテックス、不飽和ポリエステル樹脂ラテックス、またはこれらの各種共重合体のカルボキシル基などの官能基含有単量体による官能基変性共重合体ラテックス、あるいはメラミン樹脂、尿素樹脂などの熱硬化合成樹脂を挙げることができる。水溶性バインダーとしては、例えば、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉などの澱粉誘導体、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコールまたはシラノール変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール誘導体、カゼイン、ゼラチンまたはそれらの変性物、大豆蛋白、プルラン、アラビアゴム、カラヤゴム、アルブミンなどの天然高分子樹脂またはこれらの誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどのビニルポリマー、アルギン酸ソーダ、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、無水マレイン酸またはその共重合体などを挙げることができる。これらを水分散性バインダーまたは水溶性バインダーから単独または2種以上を併用して遮蔽層に含有することができる。バインダーは、インク溶媒の遮蔽の点から、水分散性バインダーが好ましい。特に、スチレン−ブタジエン共重合体が好ましい。
【0027】
本発明において、遮蔽層は、インク受理層中のバインダーに対する架橋剤を含有する。遮蔽層が架橋剤を含有すると、その上に塗工されるインク受理層のバインダーを架橋し、インク受理層に発生する亀裂を抑制することができる。亀裂発生を抑制することで、光散乱を軽減し、支持体の色相や面質の再現を高めることができる。
【0028】
架橋剤は、例えば、ホウ素化合物、ホルムアルデヒド、グリオキザール、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、ジアルデヒドスターチ、植物ガムのジアルデヒド誘導体等のアルデヒド化合物、ジアセチル、1,2−シクロペンタンジオン、3−ヘキセン−2,5−ジオン等のケトン化合物、ビス(2−クロロエチル)尿素、ビス(2−クロロエチル)スルホン、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物、ジビニルスルホン、1,3−ビス(ビニルスルホニル)−2−プロパノール、N,N′−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、ジビニルケトン、1,3−ビス(アクリロイル)尿素、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン等の活性ビニル化合物、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、スピログリコールジグリシジルエーテル、フェノール樹脂のポリグリシジルエーテル等のエポキシ化合物、ジメチロール尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物、トリメチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン、ベンゾグアナミン、メラミン等のメラミン化合物、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、1,6−ヘキサメチレン−N,N′−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ化合物、ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド化合物、2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン化合物、乳酸チタン、硫酸アルミ、ポリ塩化アルミニウム、クロム明ばん、カリ明ばん、酢酸ジルコニル、酢酸クロム等の金属含有化合物、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、オキサゾリン基を2個以上含有する低分子またはポリマー、多価酸の無水物、酸クロリド、ビススルホナート化合物、活性エステル化合物等を挙げることができる。これらを単独あるいは2種以上を組合せて用いることができる。架橋剤は、反応性の点からホウ素化合物が好ましい。
【0029】
ホウ素化合物は、ホウ酸化合物またはホウ酸塩化合物が好ましく、例えば、硼砂、硼酸、硼酸塩(例えば、オルト硼酸塩、InBO
3、ScBO
3、YBO
3、LaBO
3、Mg
3(BO
3)
2、Co
3(BO
3)
2、二硼酸塩、例えば、Mg
2B
2O
5、Co
2B
2O
5、メタ硼酸塩、例えば、LiBO
2、Ca(BO
2)
2、NaBO
2、KBO
2、四硼酸塩、例えば、Na
2B
4O
7・10H
2O、五硼酸塩、例えば、KB
5O
8・4H
2O)等である。中でも、インク受理層塗工時の亀裂発生を抑制する点から、硼砂、硼酸、オルト硼酸塩が好ましい。
【0030】
本発明において、インク受理層および遮蔽層は、支持体の片面に設けることまたは両面に設けることのいずれでもよい。インク受理層は単層または2層以上であってもよい。本発明において、支持体の色相や面質の再現の点から、単層が好ましい。
【0031】
本発明のインク受理層または遮蔽層は、必要に応じて、製紙分野で一般的に用いられる各種添加剤、例えば、染料定着剤、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤などを適宜含有させることができる。
【0032】
本発明において、インク受理層または遮蔽層を設ける方法は、各層の塗工液をコーターによって塗工する方法であって、オンマシンコーター、オフマシンコーターのいずれでもよい。例えば、従来公知のエアナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、ロールコーター、ビルブレードコーター、ショートドエルブレードコーター、キャストコーター、サイズプレスなどの各種装置をオンマシンあるいはオフマシンで用いることができる。また、塗工後には、マシンカレンダー、TGカレンダー、スーパカレンダー、ソフトカレンダーなどのカレンダー装置を用いて仕上げることも可能である。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、実施例において示す質量部、質量%および体積%は、乾燥固形分あるいは実質成分の値を示す。
【0034】
<コックリングの評価>
セイコーエプソン社製インクジェットプリンタ「SureColor PX−H8000」でブラックベタを印刷し、印刷部分のコックリングの度合いを目視により官能評価する。本発明において、3または4の評価であれば、コックリングが抑制されているとする。
4:コックリングの発生がなく、良好なレベル。
3:コックリングの発生が僅かであり、実用上問題とならないレベル。
2:コックリングの発生が見られ、実用上問題となるレベル。
1:コックリングが著しく、上手く印刷できないレベル。
【0035】
<色相、面質および印刷色の評価>
A2コート紙とこのA2コート紙を支持体とする校正用インクジェット記録用紙とを色相、面質および光沢感について観察する。また、A2コート紙と校正用インクジェット記録用紙とに対して所定の評価画像を印刷し、これら印刷物について印刷色を観察する。校正用インクジェット記録用紙がA2コート紙を再現しているか否かを、下記の基準により総合的に官能評価する。印刷物は、A2コート紙に対してJapanColor2011標準色に準拠し4色オフセット印刷し、校正用インクジェット記録用紙に対してはセイコーエプソン社製インクジェットプリンタ「SureColor PX−H8000」を使用する。なお、インクジェットプリンタによる印刷では、ICCプロファイルによるカラーマネージメント処理を行う。本発明において、4または5の評価であれば、校正用インクジェット記録用紙はA2コート紙を再現しているとする。
5:再現する。
4:少なくとも色相、面質、印刷色のいずれかで評価「5」に劣るが、ほぼ再現する。
3:A2コート紙と校正用インクジェット記録用紙とが主に色相の点で再現に劣る。
2:A2コート紙と校正用インクジェット記録用紙とが主に面質の点で再現に劣る。
1:A2コート紙と校正用インクジェット記録用紙とが主に印刷色の点で再現に劣る。
【0036】
<インク吸収性の評価>
セイコーエプソン社製インクジェットプリンタ「SureColor PX−H8000」により所定の評価画像を印刷し、校正用インクジェット記録用紙のインク吸収性を、画像の細部の判読性を基準とし次の4段階にて官能評価する。本発明において、3または4の評価であれば、インク吸収性が良好であるとする。
4:印刷部にムラや滲みがなく、良好なレベル。
3:印刷部に若干滲みが確認されるものの、実用上問題ないレベル。
2:印刷部に滲みが認められ、実用上問題となるレベル。
1:印刷部全般に滲みが認められ、上手く印刷できないレベル。
【0037】
<校正用インクジェット記録用紙の作製>
支持体上の片面の表面に、遮蔽層塗工液をバーコーターで塗工・乾燥する。続いて、遮蔽層上に、インク受理層塗工液をエアナイフコーターで塗工・乾燥し、インクジェット記録用紙を作製する。
【0038】
<遮蔽層塗工液の調製>
遮蔽層塗工液は、下記の内容により調製する。
顔料 種類と配合部数は表1に記載
バインダー 種類と配合部数は表1に記載
架橋剤(硼砂) H
3BO
3換算で1部
上記の内容で配合し、水で混合・分散して、固形分濃度40質量%に調整する。
【0039】
<インク受理層塗工液の調製>
インク受理層塗工液は、下記の内容により調製する。
顔料 種類と配合部数は表1に記載
ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA235) 配合部数は表1に記載
上記の内容で配合し、水で混合・分散して、固形分濃度20質量%に調整する。なお、顔料がアルミナ水和物の場合、アルミナ水和物100部に対し酢酸1部を配合する分散液を調製し、分散液を使用して塗工液を調製する。
【0040】
【表1】
【0041】
表1において、支持体1はA2コート紙グロスである三菱製紙社製のパールコートN(坪量127.9g/m
2)、支持体2はA2コート紙マットである三菱製紙社製のニューVマット(坪量127.9g/m
2)、支持体3はA2コート紙グロスである王子製紙社製のOKトップコート+(坪量127.9g/m
2)、支持体4はA2コート紙マットである王子製紙社製のニューエイジ(坪量127.9g/m
2)である。
また、表1における、カオリンは白石カルシウム社製のカオブライト、炭酸カルシウムは奥多摩工業社製のタマパールTP−121、アルミナ水和物はサソール社製のDisperal HP14、非晶質シリカはトクヤマ社製のファインシールX37B、コロイダルシリカはグレースジャパン社製のルドックスCL−Pである。
また、表1における、PVAはポリビニルアルコール、PAEはポリアクリル酸エステルであって日信化学工業社製の2641であり、SBRはスチレン−ブタジエン共重合体であってJSR社製の0623Nである。
【0042】
また、表1に記載する実施例1において、遮蔽層塗工液に架橋剤を配合しない以外は実施例1と同様に行い、比較例12とする。
【0043】
各実施例および各比較例の各評価結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
表1から、本発明に相当する実施例1〜13は、コックリングの発生が抑制され、支持体として用いられるA2コート紙の色相、面質および印刷色を再現することができ、インク吸収性に優れる校正用インクジェット記録用紙であることが分かる。
【0046】
本発明の構成を満足しない比較例1〜12は、本発明の効果が得られない。比較例12は、インク受理層に多数の亀裂が存在する。亀裂のために、インク吸収性に優れるものの、A2コート紙と面質が異なり、インク溶媒が直ぐに記録用紙の内部まで浸透することでコックリングの発生が認められる。