【実施例】
【0012】
以下に、図面を参照しながら、本発明の面実装インダクタの製造方法を説明する。
【0013】
図1〜
図5を参照しながら、本発明の第1の実施例の面実装インダクタの製造方法について説明する。
図1に本発明の第1の実施例で用いる空心コイルの斜視図を示す。
図2に本発明の第1の実施例の面実装インダクタのコア部の斜視図を示す。
図3に第1の実施例のコア部を加工した状態のコア部の斜視図を示す。
図4に第1の実施例の導電性ペーストを塗布した状態のコア部の斜視図を示す。
図5に本発明の第1の実施例の方法で作成した面実装インダクタの斜視図を示す。
【0014】
まず、自己融着性の被膜を有する断面が平角形状の導線を用いてコイルを形成する。
図1に示すように、導線をその両端部1aが最外周となるように渦巻き状に2段の外外巻きに巻回してコイル1を作成する。本実施例で用いる導線は自己融着性の被膜としてイミド変成ポリウレタン層を有するものを用いた。自己融着性の被膜は、ポリアミド系やポリエステル系などでもよく、耐熱温度が高いものの方が好ましい。また、本実施例では断面が平角形状のものを用いるが、丸線や断面が多角形状のものを用いてもよい。
【0015】
次に、封止材として鉄系金属磁性粉末とエポキシ樹脂とを混合して粉末状に造粒したものを用い、圧縮成形法にて、
図2に示すようなコイルを内包するコア部2を成形する。このとき、コイルの端部1aはコア部2の表面上に露出するようにする。本実施例では圧縮成形法でコア部を作成したが、圧粉成形法などの成形方法でコア部を作成してもよい。
【0016】
次に、露出する両端部1aの表面の被膜を機械剥離によって除去した後、
図3に示す様に、コア部2の外部電極を形成する部分全体をレーザ、ブラスト処理、研磨等を用いてその表面に存在する樹脂成分等を除去して表面を荒らし、コア部2の外部電極を形成する部分全体の表面粗さをその周囲よりも大きくする。これにより、コア部2の外部電極を形成する部分全体の表面の平滑度がその周囲の表面の平滑度よりも低下する。
【0017】
次に、
図4に示す様にこのコア部2の外部電極を形成する部分に導電性ペースト3をディップ法で塗布する。本実施例では導電性ペーストとして、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂とAgなどの金属粒子を分散させたものを用いた。また、本実施例では導電性ペーストの塗布方法としてディップ法を用いたが印刷法やポッティング法などの方法を用いてもよい。
【0018】
導電性ペースト3を塗布したコア部2を200℃で熱処理し、コア部2を硬化させるとともに、導電性ペースト中の熱硬化性樹脂を硬化させる。これにより、導電性ペーストの樹脂中に分散している金属粒子同士または金属粒子と導線とを熱硬化性樹脂の硬化による収縮応力を利用して接触させて導通させる。また、導電性ペースト中の熱硬化性樹脂と金属粒子が、コア部2の表面を荒らした部分に形成されたコア部表面の凹みに侵入した状態で、導電性ペースト3がコア部2に固着される。
【0019】
最後に、めっき処理を行い導電性ペーストの表面上に外部電極4を形成し、
図5に示すような面実装インダクタを得る。なお、めっき処理によって形成される電極は、Ni、Sn、Cu、Au、Pdなどから1つもしくは複数を適宜選択して形成すれば良い。
【0020】
(第2の実施例)
図6〜
図9を参照しながら、本発明の第2の実施例の面実装インダクタの製造方法について説明する。
図6に本発明の第2の実施例の面実装インダクタのコア部の斜視図を示す。
図7に第2の実施例のコア部を加工した状態のコア部の斜視図を示す。
図8に第2の実施例の導電性ペーストを塗布した状態のコア部の斜視図を示す。
図9に本発明の第2の実施例の方法で作成した面実装インダクタの斜視図を示す。
【0021】
まず、第1の実施例で用いた導線をその両端部11aが最外周となるように渦巻き状に2段の外外巻きに巻回してコイル11を作成する。本実施例ではコイル11の端部11aは、コイル11の巻回部を挟んで対向するように引き出す。次に、第1の実施例で用いた封止材と同一組成の封止材を用い、圧縮成形法にて、
図6に示すようなコイル11を内包するコア部12を成形する。このとき、コイルの端部11aはコア部12の対向する側面上に露出するようにする。
【0022】
次に、露出する両端部11aの表面の被膜を機械剥離によって除去した後、
図7に示す様に、コア部12の外部電極を形成する部分全体をレーザ、ブラスト処理、研磨等を用いてその表面に存在する樹脂成分等を除去して表面を荒らし、コア部12の外部電極を形成する部分全体の表面粗さをその周囲よりも大きくする。これにより、コア部12の外部電極を形成する部分全体の表面の平滑度がその周囲の表面の平滑度よりも低下する。
【0023】
次に、
図8に示す様にこのコア部12の外部電極を形成する部分に、第1の実施例で用いた導電性ペースト13を印刷法でL字状に塗布する。この導電性ペースト13を塗布したコア部12を200℃で熱処理し、コア部12を硬化させるとともに、導電性ペースト中の熱硬化性樹脂を硬化させる。これにより、導電性ペーストの樹脂中に分散している金属粒子同士または金属粒子と導線とを熱硬化性樹脂の硬化による収縮応力を利用して接触させて導通させる。また、導電性ペースト中の熱硬化性樹脂と金属粒子がコア部12の表面を荒らした部分に形成されたコア部表面の凹みに侵入した状態で、導電性ペースト13がコア部12に固着される。
【0024】
最後に、めっき処理を行い導電性ペーストの表面上に外部電極14を形成し、
図9に示すようなL字状の外部電極14を有する面実装インダクタを得る。
【0025】
(第3の実施例)
図10〜
図13を参照しながら、本発明の第3の実施例の面実装インダクタの製造方法について説明する。
図10に本発明の第3の実施例の面実装インダクタのコア部の斜視図を示す。
図11に第3の実施例のコア部を加工した状態のコア部の斜視図を示す。
図12に第3の実施例の導電性ペーストを塗布した状態のコア部の斜視図を示す。
図13に本発明の第3の実施例の方法で作成した面実装インダクタの斜視図を示す。
【0026】
まず、自己融着性の被膜を有する断面が平角形状の導線をその両端部21aが最外周となるように渦巻き状に2段の外外巻きに巻回してコイル21を作成する。次に、封止材として鉄系金属磁性粉末とエポキシ樹脂とを混合して粉末状に造粒したものを用い、圧縮成形法にて、
図10に示すようなコイルを内包するコア部22を成形する。このとき、コイルの端部21aはコア部22の表面上に露出するようにする。
【0027】
次に、露出する両端部21aの表面の被膜を機械剥離によって除去した後、
図11に示す様にコア部22の外部電極を形成する部分全体をレーザ、ブラスト処理、研磨等を用いてその表面に存在する樹脂成分等を除去して表面を荒らし、コア部22の外部電極を形成する部分全体の表面粗さをその周囲よりも大きくする。これにより、コア部22の外部電極を形成する部分全体の表面の平滑度がその周囲の表面の平滑度よりも低下する。
【0028】
次に、
図12に示す様にこのコア部22の外部電極を形成する部分に導電性ペースト23をディップ法で塗布する。本実施例では導電性ペーストとして、粒径が10nm以下のAg微粒子と有機溶剤などを混合してペースト化したものを用いた。金属はその粒径を100nmよりも小さくすると、サイズ効果によって焼結温度や融点などが降下する。特に10nm以下のサイズになると著しく焼結温度や融点は降下する。本実施例ではAg微粒子を用いるが、AuまたはCuを用いてもよい。そして、本実施例では導電性ペーストの塗布方法としてディップ法を用いたが印刷法やポッティング法などの方法を用いてもよい。
【0029】
次に、導電性ペースト23を塗布したコア部22を200℃で熱処理し、コア部22を硬化させると共に導電性ペースト23中のAg微粒子を焼結させる。Ag微粒子は10nm以下の粒径であるため、この程度の温度でも容易に焼結することが可能となる。金属微粒子を焼結させることで、第1の実施例や第2の実施例の様に金属粒子同士または金属粒子と導線の接触の場合よりも強固な金属間の結合となるため、接続信頼性の高いコイルと導電性ペーストとの導通を得られる。100nmよりも大きい粒径の金属粉末を混合した場合でも、金属微粒子が焼結もしくは溶融状態となるため、金属微粒子を単に接触したものよりも強固な金属間の結合を得ることができる。そして、250℃以下の熱処理でよいので、コア部や導線の被膜へのダメージが少ない。また、導電ペースト中のAg微粒子がコア部22の表面を荒らした部分に形成されたコア部表面の凹みに侵入した状態で、導電性ペースト23が焼結され、導電性ペーストがコア部22に固着される。このコア部22に固着された導電性ペーストの金属の含有量は85〜98%となった。
【0030】
最後に、めっき処理を行い導電性ペーストの表面上に外部電極24を形成し、
図13に示すような面実装インダクタを得る。なお、めっき処理によって形成される電極は、Ni、Sn、Cu、Au、Pdなどから1つもしくは複数を適宜選択して形成すれば良い。
【0031】
(第4の実施例)
図14〜
図17を参照しながら、本発明の第4の実施例の面実装インダクタの製造方法について説明する。
図14に本発明の第4の実施例の面実装インダクタのコア部の斜視図を示す。
図15に第4の実施例のコア部を加工した状態のコア部の斜視図を示す。
図16に第4の実施例の導電性ペーストを塗布した状態のコア部の斜視図を示す。
図17に本発明の第4の実施例の方法で作成した面実装インダクタの斜視図を示す。
【0032】
まず、第3の実施例で用いた導線をその両端部31aが最外周となるように渦巻き状に2段の外外巻きに巻回してコイル31を作成する。本実施例ではコイル31の端部31aは、コイル31の巻回部を挟んで対向するように引き出す。次に、第3の実施例で用いた封止材と同一組成の封止材を用い、圧縮成形法にて、
図14に示すようなコイル31を内包するコア部32を成形する。このとき、コイルの端部31aはコア部32の対向する側面上に露出するようにする。
【0033】
次に、露出する両端部31aの表面の被膜を機械剥離によって除去した後、
図15に示す様に、コア部32の外部電極を形成する部分全体をレーザ、ブラスト処理、研磨等を用いてその表面に存在する樹脂成分等を除去して表面を荒らし、コア部32の外部電極を形成する部分全体の表面粗さをその周囲よりも大きくする。これにより、コア部32の外部電極を形成する部分全体の表面の平滑度がその周囲の表面の平滑度よりも低下する。
【0034】
次に、
図16に示す様にこのコア部32の外部電極を形成する部分に導電ペースト33を印刷法でL字状に塗布する。本実施例では導電性ペーストとして、粒径が10nm以下のAg微粒子と、粒径が0.1〜10μmのAg粒子と、エポキシ樹脂を混合してペースト化したものを用いた。導電性ペースト中に含まれる粒径が0.1〜10μmのAg微粒子の割合は、粒径が10nm以下のAg微粒子と、粒径が0.1〜10μmのAg微粒子との総和に対して30wt%となるように導電性ペーストを調製した。粒径が0.1〜10μmの金属粒子を30〜50wt%含有することで、100nmよりも小さい粒径の金属微粒子のみの場合と比べて、熱硬化時の熱収縮を低減する効果を奏する。さらに、金属微粒子の量が少ないため、材料コストの低減にも期待できる。
【0035】
次に、この導電性ペースト33を塗布したコア部32を200℃で熱処理し、コア部32を硬化させると共に導電ペースト33中のAg微粒子を焼結させる。この時、導電ペースト中のAg微粒子がコア部32の表面を荒らした部分に形成されたコア部表面の凹みに侵入した状態で、導電性ペースト33が焼結され、導電性ペーストがコア部32に固着される。また、このコア部32に固着された導電性ペーストの金属の含有量は85〜98%となった。
【0036】
最後に、めっき処理を行い導電性ペーストの表面上に外部電極34を形成し、
図17に示すような面実装インダクタを得る。
【0037】
上記実施例では、封止材として磁性粉末に鉄系金属磁性粉末、樹脂にエポキシ樹脂を混合したものを用いた。しかしながら、これに限らず例えば、磁性粉末としてフェライト系磁性粉末などや、絶縁被膜形成や表面酸化などの表面改質を行った磁性粉末を用いても良い。また、ガラス粉末などの無機物を加えても良い。そして、樹脂としてポリイミド樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂やポリエチレン樹脂やポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂を用いても良い。
【0038】
上記実施例では、コイルとして2段の渦巻き状に巻回したものを用いたが、これに限らず例えば、エッジワイズ巻きや整列巻きに巻回したものや、楕円形だけでなく円形や矩形や台形、半円状、それらを組み合わせた形状に巻回したものでもよい。
【0039】
上記実施例では、コイルの端部表面の被膜を剥離する方法として機械剥離を用いたが、これに限らず他の剥離方法を用いても可能である。また、コア部を形成する前に予め端部の被膜を剥離してもよい。
【0040】
上記実施例では、コア部の外部電極を形成する部分全体をレーザ、ブラスト処理、研磨等を用いてその表面に存在する樹脂成分等を除去して表面を荒らし、コア部の外部電極を形成する部分全体の表面の平滑度をその周囲の表面の平滑度よりも低下させたが、例えば、第1の実施例と第3の実施例において、
図18に示す様にコア部の上下面のみ外部電極を形成する部分の表面の平滑度をその周囲の表面の平滑度よりも低下させてもよい。また、第1乃至第4の実施例において、
図19に示す様にコア部の底面の外部電極を形成する部分の一部の表面の平滑度をその周囲の表面の平滑度よりも低下させてもよい。さらに、コア部の底面全体の平滑度を他の面の平滑度よりも低下させ、このコア部に外部電極を形成してもよい。