【実施例】
【0058】
実施例1:グルカゴンの溶解性に対する界面活性剤の効果
実験の目的
グルカゴンは、pH<3および>9で水溶液に可溶性であることが公知である。pH3〜9の間の可溶性は非常に低い。この実験の目的は、pH約6でのグルカゴンの溶解性に対する種々の賦形剤、特に界面活性剤の効果を評価することであった。賦形剤は、示されるような選択された濃度で試験され、この段階では、グルカゴンの溶解性に対する賦形剤の濃度の効果を調べるための実験は行わなかった。試験した賦形剤の濃度は、グルカゴンの濃度よりも高かった。
【0059】
実験手順
約2mgのグルカゴンをガラスバイアルに量りとって、賦形剤の溶液を添加して、1mg/mlの最終グルカゴン濃度を得た。1時間まで目視による観察を行った。デオキシコール酸ナトリウム以外の全ての賦形剤は、10mMヒスチジンバッファ(pH6)を含んだ。デオキシコール酸ナトリウムは、デオキシコール酸自体がpH<7でゲルを形成するので、10mM TRIS(pH7.5)中に調製した。
【0060】
結果
グルカゴンの溶解性を以下の表に示す。
【0061】
【表1-1】
【表1-2】
【0062】
上記の表から、中性pH付近でグルカゴンを溶解し得るいくつかの賦形剤が存在することが見られ得る。これらは:
・セトリミド(陽イオン性界面活性剤)
・塩化ベンゼトニウム(陽イオン性界面活性剤)
・塩化ベンザルコニウム(陽イオン性界面活性剤)
・CHAPS(両イオン性界面活性剤)
・Tween 20(非イオン性界面活性剤)
・デオキシコール酸ナトリウム(陰イオン性界面活性剤)、pH>7.5のみ
である。
【0063】
これらの界面活性剤中のグルカゴンの安定性をRP-HPLCにより評価した。室温で5日間のインキュベーション後、陽イオン性界面活性剤(セトリミド、ベンゼトニウム、ベンザルコニウム)の存在下およびデオキシコール酸の存在下では天然形態のグルカゴンの有意な変化は観察されなかったことが示された。対照的に、天然のピークのサイズは、CHAPS(<10%まで)の場合およびTween 20(約60%まで)の場合に減少した。
【0064】
デオキシコール酸に溶解されたグルカゴンは、試料はpH7.5での調製直後は液体であったが、室温でのインキュベーション後にゲルを形成する傾向を有することも示された。pH>8での調製は、ゲル形成を最小限にした。
【0065】
この情報に基づいて、本発明者らは、さらなる評価のためにベンザルコニウム塩およびベンゼトニウム塩を選択した。
【0066】
実施例2:グルカゴンの溶解性および溶解したグルカゴンの外観に対していくつかのパラメーターの効果を調べるためのマトリックスアプローチ
実験の目的
この実験において、溶解性および外観に対する以下のパラメーター:
・界面活性剤(ベンゼトニウム塩、ベンザルコニウム塩)の性質
・界面活性剤の濃度
・pH
・イオン性種の濃度
を合わせた効果を調べた。
【0067】
実験手順
所定の濃度のグルカゴンおよび所定の濃度の陽イオン性界面活性剤を含む40個の溶液を調製した。全ての溶液は2mM酢酸塩を含み、pH5に調整された。さらなる賦形剤は存在しなかった。グルカゴンおよび陽イオン性界面活性剤の濃度を、24時間のインキュベーション後のグルカゴンの溶解性の提示と共に以下の表に示す:
【0068】
【表2】
【表2-2】
【0069】
また、以下の6個の水溶液を調製した:
【0070】
【表3】
【0071】
溶液A〜Fのそれぞれを、ステップワイズ様式で、以下のようにグルカゴン/界面活性剤溶液のそれぞれに添加した:80μlのグルカゴン/界面活性剤溶液を96ウェルプレートのウェルに入れて、A〜Fから選択した溶液を5個の別々の5μlアリコートで添加した(すなわち、25μlの全てを添加)。それぞれの5μlの添加により得られた溶液を混合して10分間平衡化させた。次いで目視での評価を行い、405nmで濁度を測定した。
【0072】
そこで、それぞれ5μlのA〜Fから選択された溶液のグルカゴン/界面活性剤溶液への添加後、特定のpHおよび濃度のさまざまな種の組成物を生成した。このように行った観察により、ある範囲の界面活性剤濃度、pHおよびイオン種の濃度を含む多くの水性組成物において、グルカゴンの溶解性および目視による外観が示される。最後の5μlの添加後、組成物は、ほぼ等浸透圧であった。それぞれ5μlの添加後の溶液成分の濃度を以下の表に示す:
【0073】
【表4-1】
【表4-2】
【0074】
結果
全ての元のグルカゴン/界面活性剤溶液は、完全に溶解して、ゲル形成の兆候を示さなかった。溶液A〜Fのステップワイズ添加の後、いくつかの組成物は、沈殿および/またはゲル形成の兆候を示した。結果を表1〜8および
図1〜8に示す。
【0075】
以下に示す表は、目視による評価の結果を示す:
【0076】
【表5-1】
【表5-2】
【0077】
表1に示す実験のまとめ:表1に示す目視による観察は、塩化ベンゼトニウムの存在下(実験の間にカバーされた0.038〜0.050%w/vの濃度)のグルカゴンの溶解性は、pH7.4で損なわれる(compromised)ことを示す。この観察は、高イオン強度および低イオン強度の両方の組成物で行い、より高いイオン強度の組成物が、より高い沈殿の傾向を示した。pH6、特にpH4で組成物は、かなり低い沈殿の傾向を示した。しかしながら、最良の組成物は、中心的な張度改変剤として、荷電していない成分を含み、これらは、この実験において調べられた濃度範囲を通じて透明のままであった。中心的な張度改変剤としてNaClに対応する組成物は、特に高濃度のグルカゴンの存在下でかなり高い沈殿の傾向を示した。グルカゴン沈殿は、通常、特により高いイオン強度組成物において、試料の粘度の明確な増加(ゲル形成)を伴った。
【0078】
【表6-1】
【表6-2】
【0079】
表2に記載される実験のまとめ:(ベンザルコニウムを使用した)表2から引き出され得る結論は、同じ濃度のベンゼトニウムを含む同様の組成物について上述でなされたものと非常に類似している。広い濃度範囲を通じて透明で、非粘性のグルカゴンの組成物は、pH4およびpH6で調製され得、最良の組成物では、荷電していない張度改変剤を使用した。pHおよびイオン強度の増加は、ベンザルコニウム系組成物中のグルカゴンの溶解性を減ずる。沈殿した試料の多くでゲル形成も観察され得た。
【0080】
【表7-1】
【表7-2】
【0081】
【表8-1】
【表8-2】
【0082】
【表9-1】
【表9-2】
【0083】
【表10-1】
【0084】
【表11-1】
【表11-2】
【0085】
【表12-1】
【表12-2】
【0086】
表3〜8に記載される実験のまとめ:表3〜8は、異なる開始濃度の陽イオン性界面活性剤を使用した、表1および2に記載されるものと同じ型の実験の結果を示す。これらのさらなる結果から引き出され得る結論を、上述の表1および2でなされた結論、すなわちグルカゴンの溶解性が試験した全ての陽イオン性界面活性剤の存在下のpHおよびイオン強度に依存したという結論と整列させる。pH6、特にpH4(すなわち、一般的にわずかに酸性のpH)は、pH7.4(すなわちほぼ中性のpH)より好ましい。また、荷電していない張度改変剤(例えば1,2-プロパンジオール)の使用は、特により高いグルカゴン濃度での荷電した張度改変剤(例えばNaCl)の使用よりも好ましい。陽イオン性界面活性剤の濃度の低減は、グルカゴンの溶解性の低下を生じる(例えば、表1と表7を比較してベンゼトニウム濃度の限界を理解する)。しかしながら、最も低いベンゼトニウム濃度およびベンザルコニウム濃度(0.005%w/v)を使用しても、組成物に、荷電した張度改変剤よりもむしろ荷電していない張度改変剤を使用した場合には、高い濃度においても、試験した<7.4のpH値で、透明でほぼ等浸透圧のグルカゴンの溶液を作製することが可能である(表10および11参照)。
【0087】
図面は濁度測定の結果を示す。一般的な結論は、組成物の目視による評価から引き出される結論(表1〜8)に沿っている。
【0088】
図1から、より低いpH(4および6)および荷電していない張度改変剤を使用することにより、0.05%w/vの塩化ベンゼトニウムの存在下で、より高いpH(7.4)での製剤および張度改変剤として塩化ナトリウムを含む製剤よりも良好なグルカゴンの溶解性が可能になることが結論付けられ得る。
【0089】
図2から、より低いpH(4および6)および荷電していない張度改変剤を使用することにより、0.05%w/vの塩化ベンザルコニウムの存在下で、より高いpH(7.4)での製剤および張度改変剤として塩化ナトリウムを含む製剤よりも良好なグルカゴンの溶解性が可能になることが結論付けられ得る。
【0090】
図3から、より低いpH(4および6)および荷電していない張度改変剤を使用することにより、0.025%w/vの塩化ベンゼトニウムの存在下で、より高いpH(7.4)での製剤および張度改変剤として塩化ナトリウムを含む製剤よりも良好なグルカゴンの溶解性が可能になることが結論付けられ得る。
【0091】
図4から、より低いpH(4および6)および荷電していない張度改変剤を使用することにより、0.025%w/vの塩化ベンザルコニウムの存在下で、より高いpH(7.4)での製剤および張度改変剤として塩化ナトリウムを含む製剤よりも良好なグルカゴンの溶解性が可能になることが結論付けられ得る。
【0092】
図5から、より低いpH(4および6、特に4)および荷電していない張度改変剤を使用することにより、0.01%w/vの塩化ベンゼトニウムの存在下で、より高いpH(7.4)での製剤および張度改変剤として塩化ナトリウムを含む製剤よりも良好なグルカゴンの溶解性が可能になることが結論付けられ得る。
【0093】
図6から、より低いpH(4および6)および荷電していない張度改変剤を使用することにより、0.01%w/vの塩化ベンザルコニウムの存在下で、より高いpH(7.4)での製剤および張度改変剤として塩化ナトリウムを含む製剤よりも良好なグルカゴンの溶解性が可能になることが結論付けられ得る。
【0094】
図7から、より低いpH(4および6)および荷電していない張度改変剤を使用することにより、0.005%w/vの塩化ベンゼトニウムの存在下で、より高いpH(7.4)での製剤および張度改変剤として塩化ナトリウムを含む製剤よりも良好なグルカゴンの溶解性が可能になることが結論付けられ得る。このように低い濃度の塩化ベンゼトニウムであっても、透明で非粘性のほぼ等浸透圧のグルカゴンの組成物を、最適なpHおよびイオン強度(すなわち、わずかに酸性のpHおよび低いイオン強度)下で調製し得る。
【0095】
図8から、より低いpH(4および6)および荷電していない張度改変剤を使用することにより、0.005%w/vの塩化ベンザルコニウムの存在下で、より高いpH(7.4)での製剤および張度改変剤として塩化ナトリウムを含む製剤よりも良好なグルカゴンの溶解性が可能になることが結論付けられ得る。この濃度の塩化ベンザルコニウムであっても、透明で非粘性のほぼ等浸透圧のグルカゴンの組成物を、最適なpHおよびイオン強度(すなわち、わずかに酸性のpHおよび低いイオン強度)下で調製し得る。
【0096】
結果のまとめ
陽イオン性界面活性剤、塩化ベンザルコニウムおよび塩化ベンゼトニウムの存在下のグルカゴンの溶解性は、pHに依存することが示された。別の考えは、荷電した種の存在である。溶解性は、試験した陽イオン性界面活性剤の全ての濃度(0.005%〜0.05%w/v)で、pH7.4よりもpH4〜6でかなり高い。この結論は、pH7.4での組成物とpH4および6での組成物を比較することにより、全ての表(1〜8)および全ての図(1〜8)から下すことができる。また、グルカゴンの溶解性は、荷電した種の存在下で損なわれ、この効果は特に、より高いグルカゴンの濃度で顕著である。この結論は、中心的な張度改変剤として1,2-プロパンジオールを含む組成物と、中心的な張度改変剤としてNaClに頼る組成物を比較することにより、全ての表(1〜8)および全ての図(1〜8)から下すことができる。
【0097】
実施例3:グルカゴンの溶解性に対する界面活性剤の効果のさらなる調査。
実験の目的
pH3〜9の水溶液中のグルカゴン溶解性は非常に低い。この実験の目的は、調製時および保存後の目視での評価によるpH4.5およびpH5.5でのグルカゴンの溶解性に対する界面活性剤、塩化ベンゼトニウムおよび塩化ベンザルコニウムの濃度の効果を評価することであった。単一のバッファ(5mM酢酸塩)および張度改変剤(250mMマンニトール)を含む基本的な製剤を、pH4.5またはpH5.5のいずれかで使用した。界面活性剤賦形剤は、示されるように、選択された濃度の範囲で試験した。
【0098】
実験手順
約2mgのグルカゴンをガラスバイアルに量りとり、基礎製剤の1つのうちの賦形剤の溶液を添加して、1mg/mlの最終グルカゴン濃度を得た。使用した界面活性剤の濃度は、0.01%〜0.6%w/vの範囲、具体的には0.01、0.025、0.05、0.075、0.1、0.15、0.2、0.4および0.6%w/vであった。目視による観察を時間0および14週で行った。
【0099】
結果
以下に示す表は、調製した製剤および目視による評価の結果を示す:
【0100】
【表13】
【0101】
表9に記載される実験のまとめ:表9に示される目視による観察は、全ての製剤の調製時に透明な水溶液が形成されることを示す。40℃で14週間の保存後に、0.15〜0.6%w/vの範囲の濃度の塩化ベンゼトニウムを含む調製物は、透明な水溶液のままである。この範囲の低い方の端の濃度(例えば0.15〜0.2%w/v)は、生体適合性の理由のために好ましく思われる。pHに依存して、0.01〜0.025%w/vの塩化ベンゼトニウムはまた、透明な水性ゲルの形態の有用な調製物を提供し得る。
【0102】
【表14】
【0103】
表10に記載される実験のまとめ:表10に示される目視での観察により、全ての製剤の調製時に、透明な水溶液が形成されることが示される。40℃で14週間の保存後に、0.1〜0.6%w/vの濃度範囲の塩化ベンザルコニウムを含む調製物は、透明な水溶液のままである。この範囲の低い方の端の濃度(例えば0.10〜0.2%w/v)は、生体適合性の理由のために好ましく思われる。pHに依存して、0.01〜0.05%w/vの塩化ベンザルコニウムはまた、透明な水性ゲルの形態の有用な調製物を提供し得る。
【0104】
実施例4:グルカゴン脱アミド化の速度に対する塩化ベンゼトニウム濃度の効果
実験の目的
この実験の目的は、4℃および40℃でのインキュベーション後のグルカゴンの脱アミド化に対する塩化ベンゼトニウム濃度の効果を評価することであった。ゲル化および脱アミド化のレベルの間の相関を可能にするために、同じ時間に目視による評価を行った。
【0105】
実験手順
グルカゴンの液体製剤(1mg/ml)を調製して、4℃および40℃でインキュベートした。特定の温度で4ヶ月のインキュベーション後に脱アミド化および目視による評価を決定した。調製時と保存後の両方で、逆相クロマトグラフィーにより脱アミド化を決定した。バッファ(5mM酢酸塩)、張度改変剤(250mMマンニトール)および特定の濃度の塩化ベンゼトニウムを含む基礎製剤を、pH5.5で使用した。塩化ベンゼトニウムの濃度は0.01%〜0.6%w/vの範囲;具体的に、0.01、0.025、0.05、0.075、0.1、0.15、0.2、0.4および0.6%w/vであった。逆相HPLC法では、C18、4.6x150mm、5μmカラムを45℃、1mL/分の流速で使用し、注入体積は30μLであり、214nmで検出した。バッファAは、20%アセトニトリル中200mM KPO4、pH2.5であり、バッファBは、(時間(分):バッファB(%)、0:5、5:5、30:45、32:90、35:90、40:5および50:5)で60:40のアセトニトリル:水であった。
【0106】
結果および結論
表11に実験結果を示す。塩化ベンゼトニウム濃度は、グルカゴンの物理的安定性(すなわちゲル形成および/または沈殿)ならびにグルカゴンの脱アミド化の速度に強い影響を有することが示された。高いレベルのベンゼトニウム(≧0.15%w/v)は、両方の温度で、液体の非粘性製剤の維持をもたらした。しかしながら、脱アミド化速度は、これらのベンゼトニウム濃度で比較的高かった。最も低いレベルの塩化ベンゼトニウム(0.01%および0.025%w/v)では、脱アミド化の低減が観察され、保存期間の終わりには、製剤は透明な水性ゲルの形態を有した。これらの組成物は低い脱アミド化速度のために好ましくあり得る。
【0107】
【表15-1】
【表15-2】
【0108】
実施例5:グルカゴンの安定性に対する張度改変剤の性質の効果
実験の目的
この実験の目的は、塩化ベンゼトニウムの存在下、pH5.5での、調製時および保存後の目視での評価によるグルカゴンの溶解性に対する選択された張度改変剤の効果を評価することであった。
【0109】
実験手順
バッファ(5mM酢酸塩)、塩化ベンゼトニウム(特定の濃度)および張度改変剤(特定の濃度)を含むグルカゴンの液体製剤(1mg/ml)をpH5.5で調製した。いくつかの場合では、組成物は、特定の濃度の酸化防止剤を含んだ。物理的安定性(すなわちゲル形成および/または凝集)に対する張度改変剤の性質および濃度の効果を、保存後に目視での評価により決定した。
【0110】
結果および結論
第1の実験において、張度改変剤としてのマンニトールおよび1,2-プロパンジオールの効果を50℃で比較した。バックグラウンド製剤は5mM酢酸塩および0.075%塩化ベンゼトニウムを含み、pH5.5に調整した。結果を表12に示す。張度改変剤としてマンニトールは1,2-プロパンジオールよりも好ましいことが示された。1,2-プロパンジオールの使用は、マンニトールの使用と比較して、かなり容易な凝集およびゲル形成の開始をもたらした。より高い濃度の1,2-プロパンジオールの使用では、グルカゴンの安定性を向上することは見られなかった。
【0111】
【表16-1】
【表16-2】
【0112】
別の実験において、張度改変剤としてのマンニトールおよびグリセロールの効果を50℃で比較した。バックグラウンド製剤は、5mM酢酸塩、0.075%塩化ベンゼトニウムおよび1.3mMブチル化ヒドロキシトルエンを含み、pH5.5に調整した。結果を表13に示す。グリセロールの存在下の組成物が50℃で6週間のインキュベーション後に沈殿の兆候を示したので、張度改変剤として、マンニトールはグリセロールよりも好ましいことが示された。
【0113】
【表17】
【0114】
別の実験において、張度改変剤としてのマンニトールおよびトレハロースの効果を50℃で比較した。バックグラウンド製剤は、5mM酢酸塩、5mMメチオニンおよび0.075%塩化ベンゼトニウムを含み、pH5.5に調整した。結果を表14に示す。マンニトール(250および500mM)の存在下およびトレハロース(250および500mM)の存在下の両方で、50℃で6週間までのインキュベーションについて、グルカゴン組成物は透明な液体のままであった。
【0115】
【表18】
【0116】
実施例6:グルカゴンの溶解性に対するさらなる賦形剤としてのフェノールの効果の調査
実験の目的
この実験の目的は、塩化ベンゼトニウムおよび他の選択された製剤成分の存在下でのグルカゴンの溶解性およびその後の安定性に対するさらなる賦形剤としてのフェノールの効果を評価することであった。
【0117】
実験手順
5mM酢酸塩(バッファ)、0.075%(w/v)塩化ベンゼトニウム、250mMマンニトール(張度改変剤)、1.3mMブチル化ヒドロキシトルエン(酸化防止剤)を含む製剤中、30mMのフェノールの存在下および非存在下の両方で、グルカゴンの溶液(1mg/ml)を調製した。両方の製剤のpHを5.5に調整した。比較のために、現在販売されているグルカゴン製品の再構成された形態を示す水性組成物も調製した。この組成物は、1mg/mlグルカゴン、130mMグリセロール、143mMラクトース(pH2.5)を含んだ。全ての製剤の外観を、調製の少し後および50℃で特定の時間の保存後に注意した。
【0118】
結果および結論
現在販売されているグルカゴン製品の再構成された形態を示すグルカゴン水性組成物は、50℃でのインキュベーション時に迅速なゲル形成を示した。ゲル形成および/または凝集は、両方のベンゼトニウム系製剤(すなわちフェノール有りおよび無しの両方)で遅れた。しかしながら、塩化ベンゼトニウムを含むグルカゴン液体組成物中のフェノールの存在は、フェノール非存在下の同じ製剤とさらに比較して、凝集およびゲル形成をかなり遅らせることが示された(表15)。
【0119】
【表19】
【0120】
文脈においてそうでないことが求められなければ、明細書および以下の特許請求の範囲を通じて、単語「含む(comprise)」、ならびに「含む(comprises)」および「含む(comprising)」などの変形は、述べられた整数、工程、整数の群または工程の群を包含することを意味するが、任意の他の整数、工程、整数の群または工程の群を排除することは意味しないことが理解されよう。
【0121】
本発明の明細書を通じて言及される全ての特許および特許出願は、その全体において参照により本明細書に援用される。
【0122】
本発明は、好ましい群およびより好ましい群および適切な群およびより適切な群ならびに上述の群の態様の全ての組み合わせを包含する。
【0123】
配列表
【化1】