特許第5894274号(P5894274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5894274
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】電気モータ・クランピング・システム
(51)【国際特許分類】
   H02P 3/18 20060101AFI20160310BHJP
【FI】
   H02P3/18 C
【請求項の数】63
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-522795(P2014-522795)
(86)(22)【出願日】2011年7月26日
(65)【公表番号】特表2014-522224(P2014-522224A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】US2011045371
(87)【国際公開番号】WO2013015791
(87)【国際公開日】20130131
【審査請求日】2014年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】501188177
【氏名又は名称】ムーグ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュライヴァー、マイケル、エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンス、ジョン、ダブリュ.
【審査官】 高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−111768(JP,U)
【文献】 特開2001−218476(JP,A)
【文献】 特開昭63−003667(JP,A)
【文献】 特開2000−324605(JP,A)
【文献】 特開2007−104869(JP,A)
【文献】 特開2005−263408(JP,A)
【文献】 特開昭58−078897(JP,A)
【文献】 特開2007−291976(JP,A)
【文献】 特開2007−068311(JP,A)
【文献】 特開平10−127092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と、
前記電源に接続された電気モータと、
可動域及び前記可動域内の実質的中立位置を有する、前記モータによって駆動される対象物と、
前記電源からの電力を検知するように構成された電力センサと、
前記可動域の少なくとも一部分において前記対象物の位置を検知するように構成された位置センサと、
エネルギー蓄積器と、
前記電源及び前記エネルギー蓄積器に接続された制御装置と
を有し、
前記制御装置が、前記位置センサ、前記中立位置、及び前記電力センサに応じて、前記モータを制動するように構成及び配置されている
電気モータ・システム。
【請求項2】
前記制御装置が、前記モータを発電制動するように構成された、請求項1に記載の電気モータ・システム。
【請求項3】
散逸抵抗器と直列に存在する散逸スイッチをさらに有し、前記制御装置が前記散逸スイッチを動作させるように構成され、それにより前記モータからのエネルギーが前記散逸抵抗器によって散逸される、請求項2に記載の電気モータ・システム。
【請求項4】
前記制御装置が、前記モータを回生制動するように構成された、請求項1に記載の電気モータ・システム。
【請求項5】
スイッチング回路網をさらに有し、前記制御装置が前記スイッチング回路網を動作させるように構成され、それにより、前記エネルギー蓄積器が完全に充電されていないときには前記モータからのエネルギーが前記エネルギー蓄積器を充電するために使用される、請求項4に記載の電気モータ・システム。
【請求項6】
前記エネルギー蓄積器が、コンデンサ又はバッテリを含む、請求項5に記載の電気モータ・システム。
【請求項7】
前記スイッチング回路網が、Hブリッジ構成内に6つのスイッチ素子を含む、請求項5に記載の電気モータ・システム。
【請求項8】
前記制御装置が、前記モータを能動制動するように構成された、請求項1に記載の電気モータ・システム。
【請求項9】
制動装置アクチュエータをさらに有する、請求項8に記載の電気モータ・システム。
【請求項10】
スイッチング回路網をさらに有し、前記制御装置が前記スイッチング回路網を動作させるように構成され、それにより、エネルギー蓄積器からのエネルギーが前記モータを制動するために使用される、請求項9に記載の電気モータ・システム。
【請求項11】
前記スイッチング回路網が、Hブリッジ構成内に6つのスイッチ素子を含む、請求項10に記載の電気モータ・システム。
【請求項12】
前記スイッチ素子が、IGBT又はMOSFETを含む、請求項11に記載の電気モータ・システム。
【請求項13】
前記制御装置が、前記モータを選択的に能動制動、発電制動、又は回生制動するように構成された、請求項1に記載の電気モータ・システム。
【請求項14】
スイッチング回路網及び散逸抵抗器をさらに有し、前記制御装置が前記スイッチング回路網を動作させるように構成され、それにより、前記モータからのエネルギーが、選択的に前記散逸抵抗器によって散逸されるか、又は前記エネルギー蓄積器が完全に充電されていないときには前記エネルギー蓄積器を充電するために使用される、請求項13に記載の電気モータ・システム。
【請求項15】
電力整流器をさらに有する、請求項1に記載の電気モータ・システム。
【請求項16】
前記電力整流器が、全波ダイオード整流器を含む、請求項15に記載の電気モータ・システム。
【請求項17】
前記対象物が、航空機翼上の航空機スポイラ・パネルを含む、請求項1に記載の電気モータ・システム。
【請求項18】
前記中立位置が、前記航空機翼から約4度の位置である、請求項17に記載の電気モータ・システム。
【請求項19】
前記対象物が、発電タービン上のタービン・ブレードを含む、請求項1に記載の電気モータ・システム。
【請求項20】
前記中立位置が、フェザー位置である、請求項19に記載の電気モータ・システム。
【請求項21】
前記位置センサが、エンコーダ、レゾルバ、又はLVDTを含む、請求項1に記載の電気モータ・システム。
【請求項22】
前記電力センサが、電圧センサ、又はFPGA妥当性センサを含む、請求項1に記載の電気モータ・システム。
【請求項23】
前記電源が、3相AC電源を含む、請求項1に記載の電気モータ・システム。
【請求項24】
出力フィルタをさらに有する、請求項1に記載の電気モータ・システム。
【請求項25】
前記出力フィルタが、コモン・モード・フィルタ、又はディファレンシャル・モード・フィルタを含む、請求項24に記載の電気モータ・システム。
【請求項26】
入力フィルタをさらに有する、請求項1に記載の電気モータ・システム。
【請求項27】
前記入力フィルタが、コモン・モード・フィルタ、又はディファレンシャル・モード・フィルタを含む、請求項26に記載の電気モータ・システム。
【請求項28】
ソフト・スタート・スイッチをさらに有する、請求項1に記載の電気モータ・システム。
【請求項29】
電気モータ・インターフェイスを駆動する方法であって、
外部電源入力を提供するステップと、
位置センサ信号入力を提供するステップと、
スイッチ・ゲートを有するスイッチング回路網を提供するステップと、
電気モータに接続するための電気モータ・インターフェイスを提供するステップと、
制御装置を提供するステップと、
エネルギー蓄積器インターフェイスを提供するステップと、
前記外部電源入力を監視するステップと、
前記位置センサ入力及び前記外部電源入力に応じて、前記電気モータ・インターフェイスから電力を吸収するように前記スイッチ・ゲートを動作させるステップと
を含む方法。
【請求項30】
前記スイッチ・ゲートを動作させる前記ステップは、前記電源入力が電圧閾値より下がり、かつ前記位置センサ信号入力が位置閾値を下回るときに、前記電気モータ・インターフェイスから電力を吸収するように前記スイッチ・ゲートを動作させることを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
散逸抵抗器インターフェイスを提供するステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記エネルギー蓄積器インターフェイスが完全に充電されているかどうかに応じて、前記吸収電力を前記エネルギー蓄積器インターフェイス又は前記散逸抵抗器インターフェイスに選択的に送るステップをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記位置センサ入力及び前記外部電源入力に応じて、前記エネルギー蓄積器インターフェイスからの電力を使用して前記電気モータを能動制動するステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記エネルギー蓄積器インターフェイスからの電力を使用して前記電気モータを能動制動する前記ステップは、前記位置センサ入力信号の変化率が速度閾値を下回り、前記電源入力が電圧閾値よりも下がり、かつ前記位置センサ信号入力が位置閾値を下回るときに、前記電気モータを能動制動することを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記スイッチ・ゲートを動作させる前記ステップは、前記位置センサ入力信号の変化率が速度閾値を上回り、前記電源入力が電圧閾値よりも下がり、かつ前記位置センサ入力が位置閾値を下回るときに、前記電気モータ・インターフェイスから電力を吸収するように前記スイッチ・ゲートを動作させることを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
散逸抵抗器インターフェイスを提供するステップをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記エネルギー蓄積器インターフェイスが完全に充電されているかどうかに応じて、前記吸収電力を前記エネルギー蓄積器インターフェイス又は前記散逸抵抗器インターフェイスに選択的に送るステップをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ローカル・エネルギー蓄積器インターフェイスが、コンデンサ又はバッテリに接続するように構成された、請求項29に記載の方法。
【請求項39】
電力整流器を提供し、かつ前記電源入力上のAC電圧をDC電圧に変換するステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項40】
前記電力整流器が、全波ダイオード整流器である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
ソフト・スタート・スイッチを提供するステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項42】
前記位置センサ信号入力が、エンコーダ、レゾルバ、又はLVDTに接続するように構成された、請求項29に記載の方法。
【請求項43】
前記電気モータ・インターフェイスが、航空機翼スポイラ・アクチュエータに接続するように構成された、請求項29に記載の方法。
【請求項44】
前記電気モータ・インターフェイスが、発電タービン・ブレード・ピッチ制御アクチュエータに接続するように構成された、請求項29に記載の方法。
【請求項45】
前記外部電源入力が、3相AC電源用に構成された、請求項29に記載の方法。
【請求項46】
前記外部電源入力において入って来る信号をフィルタリングするステップ、又は前記電気モータ・インターフェイスにおいて出て行く信号をフィルタリングするステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項47】
制動装置アクチュエータ・インターフェイスを提供するステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項48】
電気モータのためのドライバであって、
外部電源入力と、
出力を有し、また前記外部電源入力を監視するように構成された電力センサと、
出力を有する位置センサと、
AC/DC電力整流器と、
スイッチ・ゲートを有するスイッチング回路網と、
電気モータに接続するための電気モータ・インターフェイスと、
前記電力センサ出力及び前記位置センサ出力を監視するように構成され、前記スイッチ・ゲートを動作させるように構成された制御部と、
一時的に電力を供給するためのローカル・エネルギー蓄積器インターフェイスと
を有し、
前記制御部が、前記電力センサ出力及び前記位置センサ出力に応じて、前記電気モータ・インターフェイスから回収電力が引き出されるように、前記スイッチ・ゲートを動作させるように構成された
ドライバ。
【請求項49】
散逸抵抗器インターフェイスをさらに有する、請求項48に記載のドライバ。
【請求項50】
前記制御部が、前記電気モータ・インターフェイスからの電力を前記散逸抵抗器インターフェイスに向けるように構成された、請求項49に記載のドライバ。
【請求項51】
前記制御部が前記スイッチング回路網を動作させるように構成され、それにより、前記モータ・インターフェイスからのエネルギーが、前記散逸抵抗器インターフェイスへ、又は前記ローカル・エネルギー蓄積器インターフェイスに接続されているローカル・エネルギー蓄積器が完全に充電されていないときには前記ローカル・エネルギー蓄積器インターフェイスへ、選択的に向けられる、請求項49に記載のドライバ。
【請求項52】
前記制御部が、前記電気モータ・インターフェイスからの電力を前記ローカル・エネルギー蓄積器インターフェイスに向けるように構成された、請求項48に記載のドライバ。
【請求項53】
制動装置アクチュエータ・インターフェイスをさらに有する、請求項48に記載のドライバ。
【請求項54】
前記制御部が前記スイッチング回路網を動作させるように構成され、それにより前記ローカル・エネルギー蓄積器インターフェイスからのエネルギーが前記制動装置アクチュエータ・インターフェイスに向けられる、請求項53に記載のドライバ。
【請求項55】
前記スイッチング回路網が、Hブリッジ構成内に6つのスイッチ素子を含む、請求項48に記載のドライバ。
【請求項56】
前記スイッチ素子が、IGBT又はMOSFETを含む、請求項55に記載のドライバ。
【請求項57】
前記制御部が、前記電気モータ・インターフェイスに接続されたモータを選択的に能動制動、発電制動、又は回生制動するように構成された、請求項48に記載のドライバ。
【請求項58】
前記電力整流器が、全波ダイオード整流器を含む、請求項48に記載のドライバ。
【請求項59】
出力フィルタをさらに有する、請求項48に記載のドライバ。
【請求項60】
前記出力フィルタが、コモン・モード・フィルタ、又はディファレンシャル・モード・フィルタを含む、請求項59に記載の電気モータ・システム。
【請求項61】
入力フィルタをさらに有する、請求項48に記載のドライバ。
【請求項62】
前記入力フィルタが、コモン・モード・フィルタ、又はディファレンシャル・モード・フィルタを含む、請求項61に記載のドライバ。
【請求項63】
ソフト・スタート・スイッチをさらに有する、請求項48に記載のドライバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野は、発電式及び回生式の電気モータ制動システムに関し、より詳細には、改良された電気モータ制動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
幾つかの電気機械式制動システムが知られている。例えば、米国特許出願公開第2006/0108867号は、航空機の制動システムに使用されうる、電気エネルギー・バックアップ手段及び回生エネルギー回収手段を有する電気機械式制動装置を対象としている。この公開によれば、電源電圧が蓄積エネルギー・ポテンシャルより下がったとき、制御装置のためにエネルギーを蓄積するようにコンデンサが使用され、蓄積エネルギー源のためのアクチュエータから、回生エネルギーが回収されうる。
【0003】
米国特許第3,975,668号は、3相モータでの発電制動の使用法を教示しており、ここでは、モータのコイルが6巻線デルタ構成に接続され、直流制動電流がこの構成の2つの中央タップ間に印加される。
【0004】
米国特許第4,831,469号は、電力を蓄積するためのコンデンサを有し、電力損失に応じてモータを後退させ制動する、ディスク・ドライブ・ヘッドのための制動方法を対象としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0108867号
【特許文献2】米国特許第3,975,668号
【特許文献3】米国特許第4,831,469号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
単に例示の目的のためにすぎず、限定することを目的としたものではないが、開示された実施例の対応する部品、部分、又は表面に対して括弧付き参照を付すと、電気モータ・システム(110、210、310)が提供され、この電気モータ・システムは、電源(112、212)と、電源に接続された電気モータ(111、211、311)と、可動域及びこの可動域内の実質的中立位置(134)を有する、モータによって駆動される対象物(116、216、316)と、電源からの電力を検知するように構成された電力センサ(114)と、少なくとも対象物の可動域の一部において対象物の位置を検知するように構成された位置センサ(115)と、エネルギー蓄積器(123、223)と、電源及びエネルギー蓄積器に接続された制御装置(122、222)とを含み、制御装置は、位置センサ、中立位置、及び電力センサに応じて、モータを制動するように構成され配置されている。
【0007】
制御装置は、モータを発電制動するように構成することができる。システムは、散逸抵抗器(R2)と直列に存在する散逸スイッチ(SW2)をさらに含むことができ、制御装置は、モータからのエネルギーが散逸抵抗器で散逸されるように散逸スイッチを動作させるように構成されている。
【0008】
制御装置は、モータを回生制動するように構成することができる。電気モータ・システムは、スイッチング回路網(219)をさらに含むことができ、制御装置は、エネルギー蓄積器が完全に充電されていないときには、モータからのエネルギーがエネルギー蓄積器を充電するために使用されるように、スイッチング回路網を動作させるように構成されている。スイッチング回路網は、Hブリッジ構成内に6つのスイッチ素子を含むことができる。スイッチング回路網内のスイッチ素子は、IGBT、又はMOSFETを含むことができる。エネルギー蓄積器は、コンデンサ(C1)、又はバッテリとすることができる。
【0009】
制御装置は、モータを能動制動するように構成することができる。制御装置は、独立した制動装置アクチュエータ(229)をさらに含むことができる。電気モータ・システムは、スイッチング回路網をさらに含むことができる。スイッチング回路網は、Hブリッジ構成内に6つのスイッチ素子を含むことができる。スイッチング回路網内のスイッチ素子は、IGBT、又はMOSFETを含むことができる。
【0010】
制御装置は、モータを選択的に能動制動、発電制動、又は回生制動するように構成することができる。電気モータ・システムは、スイッチング回路網、及び散逸抵抗器をさらに含むことができ、ここでは、制御装置は、モータからのエネルギーが、選択的に散逸抵抗器によって散逸されるか、又はエネルギー蓄積器が完全に充電されていないときにはエネルギー蓄積器を充電するために使用されるように、スイッチング回路網を動作させるように構成されている。スイッチング回路網は、Hブリッジ構成内に配置された6つのスイッチ素子を含むことができる。スイッチ素子は、IGBT、又はMOSFETを含むことができる。
【0011】
電気モータ・システムは、電力整流器(218)をさらに含むことができる。電力整流器は、全波ダイオード整流器を含むことができる。
【0012】
被駆動対象物は、航空機翼(265)上の航空機スポイラ・パネル(216)を含むことができる。中立位置(234)は、スポイラ・パネル(216)が翼面(227)から約4度にある位置とすることができる。被駆動対象物は、発電タービン(310)上のピッチ軸(396)の周りで駆動されるタービン・ブレード(316)を含むことができる。モータは、タービン・ブレード・ピッチ制御モータを含むことができる。中立位置は、タービン・ブレード・フェザー位置とすることができる。
【0013】
位置センサは、エンコーダ、レゾルバ、又はLVDTを含むことができる。電力センサは、電圧センサ、又はFPGA妥当性センサを含むことができる。電源は、3相AC電源を含むことができる。
【0014】
電気モータ・システムは、出力フィルタ(272)をさらに含むことができる。出力フィルタは、コモン・モード・フィルタ(273)、又はディファレンシャル・モード・フィルタ(274)を含むことができる。電気モータ・システムは、入力フィルタ(252)をさらに含むことができる。入力フィルタは、コモン・モード・フィルタ(253)、又はディファレンシャル・モード・フィルタ(254)を含むことができる。電気モータ・システムは、ソフト・スタート・スイッチ(SW1)をさらに含むことができる。
【0015】
別の観点では、電気モータ・インターフェイスの駆動方法が提供され、この方法は、外部電源入力を設けるステップと、位置センサ信号入力を設けるステップと、スイッチ・ゲートを有するスイッチング回路網を設けるステップと、電気モータに接続するための電気モータ・インターフェイスを設けるステップと、制御装置を設けるステップと、エネルギー蓄積器インターフェイスを設けるステップと、外部電源入力を監視するステップと、位置センサ入力及び外部電源入力に応じて、電気モータ・インターフェイスから電力を吸収するようにスイッチ・ゲートを動作させるステップとを含む。
【0016】
スイッチ・ゲートを動作させるステップは、電源入力が電圧閾値よりも下がり、かつ位置センサ信号入力が位置閾値を下回るときに、電気モータ・インターフェイスから電力(power)を吸収するように、スイッチ・ゲートを動作させることを含むことができる。
【0017】
方法は、散逸抵抗器インターフェイスを設けるステップをさらに含むことができる。方法は、エネルギー蓄積器インターフェイスが完全に充電されているかどうかに応じて、吸収電力をエネルギー蓄積器インターフェイスか又は散逸抵抗器インターフェイスに選択的に送るステップをさらに含むことができる。
【0018】
方法は、位置センサ入力及び外部電源入力に応じて、エネルギー蓄積器インターフェイスからの電力を使用して電気モータを能動制動するステップをさらに含むことができる。エネルギー蓄積器インターフェイスからの電力を使用して電気モータを能動制動するステップは、位置センサ入力信号の変化率が速度閾値を下回り、電源入力が電圧閾値よりも下がり、位置センサ信号入力が位置閾値を下回るときに、電気モータを能動制動することを含むことができる。前述のスイッチ・ゲートを動作させるステップは、位置センサ入力信号の変化率が速度閾値を上回り、電源入力が電圧閾値よりも下がり、位置センサ信号入力が位置閾値を下回るときに、電気モータ・インターフェイスから電力を吸収するようにスイッチ・ゲートを動作させることを含むことができる。方法は、散逸抵抗器インターフェイスを設けるステップをさらに含むことができる。方法は、エネルギー蓄積器インターフェイスが完全に充電されているかどうかに応じて、吸収電力をエネルギー蓄積器インターフェイスか又は散逸抵抗器インターフェイスに選択的に送るステップをさらに含むことができる。
【0019】
ローカル・エネルギー蓄積器インターフェイスは、コンデンサ又はバッテリに接続するように構成することができる。方法は、電力整流器を設けるステップと、電源上のAC電圧をDC電圧に変換するステップとをさらに含むことができる。電力整流器は、全波ダイオード整流器とすることができる。方法は、ソフト・スタート・スイッチを設けるステップをさらに含むことができる。位置センサ信号入力は、エンコーダ、レゾルバ、又はLVDTに接続するように構成することができる。
【0020】
電気モータ・インターフェイスは、航空機翼スポイラ・アクチュエータに接続するように構成することができる。電気モータ・インターフェイスは、風力タービン・ピッチ制御モータに接続するように構成することができる。
【0021】
外部電源入力は、3相AC電源用に構成することができる。方法は、外部電源入力において入って来る信号をフィルタリングするステップ、又は電気モータ・インターフェイスにおいて出て行く信号をフィルタリングするステップをさらに含むことができる。方法は、制動装置アクチュエータ・インターフェイスを設けるステップをさらに含むことができる。
【0022】
別の観点では、電気モータのためのドライバが提供され、このドライバは、外部電源入力と、出力を有し外部電源入力を監視するように構成された電力センサと、出力を有する位置センサと、AC/DC電力整流器と、スイッチ・ゲートを有するスイッチング回路網と、電気モータに接続するための電気モータ・インターフェイスと、電力センサ出力及び位置センサ出力を監視するように構成され、スイッチ・ゲートを動作させるように構成された、制御部と、一時的に電力を供給するためのローカル・エネルギー蓄積器インターフェイスとを含み、制御部は、電力センサ出力及び位置センサ出力に応じて、電気モータ・インターフェイスから回収電力が引き出されるように、スイッチ・ゲートを動作させるように構成されている。
【0023】
ドライバは、散逸抵抗器インターフェイスをさらに含むことができる。制御部は、電気モータ・インターフェイスからの電力を散逸抵抗器インターフェイスに向けるように構成することができる。制御部は、モータ・インターフェイスからのエネルギーが、散逸抵抗器インターフェイスへ、又はローカル・エネルギー蓄積器インターフェイスに接続されたローカル・エネルギー蓄積器が完全に充電されていないときにはローカル・エネルギー蓄積器インターフェイスへ選択的に向けられるように、スイッチング回路網を動作させるように構成することができる。
【0024】
制御部は、電気モータ・インターフェイスからの電力をローカル・エネルギー蓄積器インターフェイスに向けるように構成することができる。ドライバは、制動装置アクチュエータ・インターフェイスをさらに含むことができる。制御部は、ローカル・エネルギー蓄積器インターフェイスからのエネルギーが制動装置アクチュエータ・インターフェイスに向けられるようにスイッチング回路網を動作させるように構成することができる。
【0025】
スイッチング回路網は、Hブリッジ構成内に6つのスイッチ素子を含むことができる。スイッチ素子は、IGBT、又はMOSFETを含むことができる。
【0026】
制御部は、電気モータ・インターフェイスに接続されたモータを選択的に能動制動、発電制動、又は回生制動するように構成することができる。制御部は、モータ・インターフェイスからのエネルギーが、散逸抵抗器インターフェイスへか、又はローカル・エネルギー蓄積器インターフェイスに接続されたローカル・エネルギー蓄積器が完全には充電されていないときには、ローカル・エネルギー蓄積器インターフェイスへと選択的に向けられるようにスイッチング回路網を動作させるように構成することができる。
【0027】
ドライバ電力整流器は、全波ダイオード整流器を含むことができる。ドライバは、出力フィルタをさらに含むことができる。出力フィルタは、コモン・モード・フィルタ、又はディファレンシャル・モード・フィルタを含むことができる。ドライバは、入力フィルタをさらに含むことができる。入力フィルタは、コモン・モード・フィルタ、又はディファレンシャル・モード・フィルタを含むことができる。ドライバは、ソフト・スタート・スイッチをさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】モータ・システムの第1の概括的実施例の高レベル・オブジェクト図である。
図2】モータ・システムの第2の航空機翼スポイラ制御実施例の高レベル・オブジェクト図である。
図3図2に示された航空機翼スポイラ・システムの概略図である。
図4図2に示された翼スポイラ・システムの側面図である。
図5】中立位置にある図2に示された翼スポイラ・システムの側面図である。
図6図2に示された航空機翼スポイラ・システムの内部物理的構成のオブジェクト図である。
図7】モータ・システムの第3の風力タービン・ピッチ制御実施例の透視図である。
図8図7に示された風力タービン・ピッチ制御システムの内部物理的構成の部分的な透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
最初に明確に理解すべきことは、同様の参照番号が、幾つかの図面全体にわたって一貫して同じ構造要素、部分、又は表面を特定するように意図されていることであり、そのような要素、部分、又は表面は、本明細書全体によってさらに記述又は説明することができ、この詳細な説明は、本明細書の不可欠な要素をなす。特に別の指示がない限り、各図面は、本明細書と一緒に読まれることが意図されており(例えば、斜線、各部品の配置、比率、角度等)、本明細書の全体のうちの一部と見なされるべきものである。以下の説明において、「水平」、「垂直」、「左」、「右」、「上」、及び「下」という用語、並びにそれらの形容詞的派生語及び副詞的派生語(例えば、「水平に」、「右方に」、「上方に」等)は、特定の図面が読者に面したときの、図示されている構造の配向を意味するものにすぎない。同様に、「内方に」及び「外方に」という用語は、概括的に、表面の延長軸線、又は必要に応じて、回転軸線に対する表面の配向を意味するものである。
【0030】
以下の定義は、本明細書で説明される実施例の解釈のために提供されるものである。発電制動(dynamic braking)とは、例えば散逸抵抗器を用いるなどして、電気モータの入力端子を接続又は「短絡」することにより、モータの運動エネルギーを熱に変換させ、それによりモータを減速するプロセスである。
【0031】
回生制動(regenerative braking)とは、電流がモータによってエネルギー蓄積デバイスに戻されることを可能にすることにより、電気モータからのエネルギー(通常、モータ又はシステムの運動エネルギー)をエネルギー蓄積デバイスに送るプロセスである。
【0032】
能動制動(active braking)とは、電源を使用して、電気モータをその回転の電流方向の反対に駆動するか、又は、モータに結合された、独立した制動装置アクチュエータを駆動するプロセスである。
【0033】
惰性運転とは、電気モータの入力端子を電気的に切断することによりそれらの電圧の浮遊を可能にして、電気エネルギーが入力端子を通じてモータに入る又はモータから出て行くのを防止するプロセスである。
【0034】
スイッチ回路網は、少なくとも2つの端子間の電流の流れを制御するための一連の電気的又は機械的なデバイスであって、その例には、IGBT Hブリッジ、MOSFET Hブリッジ、リレー・ブリッジ、又は他の類似のデバイスが含まれる。
【0035】
制御部又は制御装置は、その入力線の論理関数である出力線を有するデジタル・デバイスであり、その例には、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、現場プログラム可能ゲート・アレイ、プログラム可能論理デバイス、特定用途向け集積回路、又は他の類似のデバイスが含まれる。
【0036】
電力センサは、電気システムの電力を測定するための電気的又は機械的なデバイスであり、その例には、電圧センサ、電流センサ、電圧及び電流の両方のセンサを有するデバイス、又は他の類似のデバイスが含まれる。
【0037】
制動スイッチは、制動機構への電気の流れを制御するデバイスであり、その例には、汎用トランジスタ、IGBT、MOSFET、リレー、又は他の類似の機械的な若しくは半導体によるデバイスが含まれる。
【0038】
電源は、AC又はDCの電力の供給源である。
【0039】
位置センサは、位置、又は位置の導関数、又は対象物からの距離を測定するための電気的デバイスであり、その例には、エンコーダ、レゾルバ、線形可変差動変圧器、可変抵抗器、可変コンデンサ、レーザ測距器、超音波距離測定器、赤外線距離測定器、又は他の類似のデバイスが含まれる。
【0040】
エネルギー蓄積器は、エネルギーを蓄積するためのデバイス又はシステムであり、その例には、コンデンサ、バッテリ、誘導子、フライホイール、又は他の類似のデバイスが含まれる。
【0041】
次に各図面を、より具体的には図1を参照すると、本発明はモータ・システムを提供し、その第1の実施例が110で示されている。図示のように、モータ・システム110は概して、電源112、電力センサ114、エネルギー蓄積器123、制御装置122、スイッチ回路網119、電気モータ111、被駆動対象物116、及び物理的境界127を含む。
【0042】
電源112は、システムに電力を供給する。この実施例では、電源112は、DC電源である。しかし、別法として、AC電源を使用することもできる。電源112は、ローカル・エネルギー蓄積器123に接続される。
【0043】
この実施例では、エネルギー蓄積器123は、コンデンサである。或いは、バッテリ又は誘導子を使用することもできる。電源112によって伝達される電力は、電力センサ114によって測定される。この実施例では、電力センサ112は、電圧センサである。しかし、別法として、電流センサを使用することもできる。
【0044】
エネルギー蓄積器123は、共通電力線133を通じてスイッチ回路網119に接続する。スイッチ回路網119は、電気モータ111の端子に出入りする電力の流れ、及び電気モータ111の端子間の電力の流れを制御する。スイッチ回路網119の動作は、制御装置122に接続された制御入力によって管理される。スイッチ回路網119は、電気モータ111を発電制動するために、電気モータ111の端子を互いに接続するように構成されている。この実施例では、スイッチ回路網119は、IGBTで構成されている。しかし、別法として、リレー又はMOSFETを使用してスイッチ回路網119を構成することもできる。
【0045】
電気モータ111は、アクチュエータ113を通じて被駆動対象物116に機械的に結合されている。アクチュエータ113は、歯車、ねじ駆動部、又は他の類似のデバイスを含むことができる。対象物116は、物理的境界127によって制限されうる可動域を有する。また、対象物116の可動域内に、実質的に中立の範囲又は位置134が存在する。対象物116が中立範囲134内で静止している場合、対象物116が動く傾向が少なくなる。対象物116は、その位置が中立範囲134の外側であるときに、対象物116に作用する外力をより受けやすくなる。
【0046】
位置センサ115は、対象物116と物理的境界127との間の距離125を測定する。この実施例では、位置センサ115は、線形可変差動変圧器(LVDT:Linear Variable Differential Transformer)である。しかし、別法として、エンコーダ、レゾルバ、レーザ測距器、超音波距離測定器、可変抵抗器、赤外線距離測定器、又は他の類似のデバイスを使用することもできる。
【0047】
位置センサ115が制御装置122に接続される。この実施例では、制御装置122は、現場プログラム可能ゲート・アレイ(FPGA:Field Programmable Gate Array)である。しかし、別法として、プログラム可能論理デバイス(PLD:programmable logic device)、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、又は他の類似のデバイスを使用することもできる。制御装置122は、位置センサ115の出力信号を受信するための入力と、電力センサ114の出力信号を受信するための入力とを有する。制御装置122はまた、スイッチ回路網119に接続された制御線を制御する。スイッチ回路網119への制御線は、単線式、複線式、又は無線式とすることができる。さらに、制御装置122には、コマンド・インターフェイス132が接続される。メモリ128が、中立範囲上限値124、電源閾値135、中立位置閾値136、及びエネルギー蓄積器閾値137を含めて、幾つかの動作変数のための値を記憶する。制御装置122は、下記のように動作するようにプログラムされる。
【0048】
電源が機能を停止した場合、システム110は、被駆動対象物116がより安全な位置にあるときにそれを制動する。より具体的には、スイッチ回路網119は、電源112の機能停止が発生した場合に、被駆動対象物116が中立範囲134の近く又は中立範囲134内にあるときに電気モータ111を発電制動するように構成されている。エネルギー蓄積器123は、スイッチ回路網119を一時的に制御するだけのエネルギーしか持てないので、制御装置122は、電源の機能停止が発生し被駆動対象物116が中立範囲134の近く又は中立範囲134内にあるときにだけ、発電制動するようにスイッチ回路網119を制御するように構成されている。
【0049】
上記のように、対象物116は、物理的境界127によって制限されうる可動域を有する。対象物116が過剰な力を伴って物理的境界127に接触した場合、物理的境界127及び被駆動対象物116は、損傷を受ける可能性がある。そのような衝突は、モータ111又はアクチュエータ113をも損傷させる可能性がある。被駆動対象物116が動いている間に電気モータ111への電力が遮断されると、被駆動対象物116は惰性で進むことになり、物理的境界127と衝突する可能性がある。また、たとえモータ111への電力が失われたときに被駆動対象物116が動いていなかったとしても、対象物116が中立範囲134内に位置していないのであれば、対象物116は、結局は、外力によって加速されて、過度の力を伴って境界127と接触する可能性がある。
【0050】
図1に示されるように、エネルギー蓄積器123は、共通電力線133に沿って電源112に接続されている。電源112が適切に機能している限り、エネルギー蓄積器123は、電源112の電圧まで充電される。電源が機能停止した場合、エネルギー蓄積器123が共通電力線133上の電圧を一時的に維持しつつ、エネルギーが制御装置122とスイッチ回路網119とによって引き出される。
【0051】
制御装置122は、動作するのに必要な電力を共通電力線133から受け取る。制御装置122は、共通電力線133上の電圧レベルを監視するための内部センサを有する。共通電力線133は、スイッチ回路網119にも電力を供給する。電気モータ111のための電力は、共通電力線133によりスイッチ回路網119を経て間接的に供給される。
【0052】
電源112の電圧は、電力センサ114によって測定され、電力センサ114からの出力は、制御装置122によって読み取られる。位置センサ115は、対象物116と境界127との間の距離125を測定し、位置センサ115の出力は、制御装置122によって読み取られる。
【0053】
制御装置122は、スイッチ回路網119に制御信号を送る。例えば、順方向制御信号により、スイッチ回路網119がモータ111を順方向に動かす形でモータ111を電力線133に接続することになる。同様に、逆方向制御信号により、スイッチ回路網119がモータ111を逆方向に動かすような形でモータ111を電力線133に接続することになる。回生信号により、電気モータからエネルギーが吸収されて電源123に蓄積されるように、電気モータ111の駆動端子が接続されることになる。惰性運転信号により、スイッチ回路網119がモータ111の駆動端子を断絡し、それらの電圧が浮遊可能とされることになる。発電制動信号により、モータの運動エネルギーが熱として散逸されるように、電気モータ111の駆動端子が互いに接続されることになる。惰性運転信号と、順方向信号、逆方向信号、又は回生信号とを迅速に切り替えることにより、制御装置122は、モータ111の時間平均の駆動レベル又は回生レベルを調整することができる。別法として、(例えば、環流ダイオードを含むIGBTブリッジが使用される場合)スイッチ回路網119に特定の回路を実装することで惰性運転モードと回生モードとを組み合わせて単一のモードにすることが有益となりうる。モータ111は、エネルギー蓄積器123内にエネルギーを回生するようにモータ111を構成することによる方法、モータ111をその回転方向の反対に(必要に応じて、順方向にも逆方向にも)駆動することによる方法、又は発電制動を通じた方法を含めて、多様な方法で制動することができる。
【0054】
位置センサ115と、制御装置122と、スイッチ回路網119と、モータ111と、被駆動対象物116との間に、フィードバック・ループが構築される。通常の動作の下では、制御装置122は、位置センサ115の出力を所望の設定値に合わせるために、スイッチ回路網119への制御信号を調整する。或いは、モータ111に接続されたレゾルバなどの位置センサ115から独立したセンサをフィードバック・ループのために使用することができる。
【0055】
コマンド・インターフェイス132は、制御装置122に高レベルの位置又は運動のコマンドを提供する。例えば、コマンド・インターフェイスは、制御装置122に被駆動対象物116を特定の位置まで移動させるように命令することができる。インターフェイス132でのコマンドが変化するにつれて、制御装置122は、所望の設定値を調整することになり、この設定値が、スイッチ回路網119に送られる制御信号を変更する。
【0056】
制御装置122は、電力センサ114の読取り値を電力閾値135と比較することにより、電源の機能停止がいつ発生するかを判定する。電力センサ114の出力が電力閾値135未満である場合、電源の機能停止が判定される。電源が機能を停止した場合、エネルギー蓄積器123内の限られた供給量の電力しか利用することができず、この電力は、制御装置122への電力供給、スイッチ回路網119の動作、又はモータ111の始動のために使用されうる。エネルギー蓄積器123のエネルギーが使い果たされると、共通電力線133上の電圧が降下することになり、モータ111、スイッチ回路網119、及び制御装置122は、機能することができない。
【0057】
電力センサ114の読取り値が電力閾値135を下回る場合、制御装置122は、インターフェイス132からの命令に応答するのを止めて、モータ111がエネルギーを少しも消費しないように、及びスイッチ回路網119が最小限のエネルギーを消費するように、スイッチ回路網119に惰性運転信号を送る。
【0058】
制御装置は、次に、境界127に対象物116がぶつかる可能性を最小限に抑えられるように、モータ111をいつ制動するかを高度に判定する。より具体的には、電源112が閾値電圧未満の電圧を有し、位置センサ115が中立範囲134の閾値136内に対象物116があることを示すときにのみ、制動が始動される。制御装置122は、位置センサ115の出力と中立範囲の上限値124とを比較し、対象物116の位置が中立範囲134の閾値136内であるかどうかを判定する。これは、位置センサ115の出力と中立範囲上限値124との差の絶対値(ABS:absolute value)が位置閾値136よりも大きいかどうかを判定することによって達成される。制御装置122はまた、共通電力線133上の電圧を測定し、共通電力線133の電圧がエネルギー蓄積閾値137を下回るのであれば、発電制動の始動を回避する。要約すると、制御装置122は、
もし(電力センサ114の出力<電源閾値135)であり、
且つ(共通電力線133の電圧>エネルギー蓄積閾値137)であり、
且つ(ABS(位置センサ115の出力−中立範囲上限値124)<位置閾値136))である
ならば、スイッチ回路網119に制動信号を送る
という論理関数を評価する。
【0059】
この実施例で使用される制動信号は、発電制動信号である。システム110の運用の第1の実例として、対象物116が中立範囲134から遠くにあるときの電源112の機能停止について考察する。この場合、制御装置122は、電力センサ114の出力が電源閾値135を下回ったことを検出することになる。しかし、位置センサ115の出力は、対象物116と中立範囲上限値124との間の距離125が中立位置閾値136よりも大きいことを示すので、制御装置122は発電制動信号をスイッチ回路網119に送らない。したがってこの時点では、エネルギー蓄積器123内のエネルギーは、スイッチ回路網119によって使い果たされない。ここで対象物116は、外力により境界127に向かって加速し始める可能性がある。制動スイッチ131は、対象物116が中間位置134の位置閾値136内に入るまでは、作動されない。制動スイッチ131が作動された後、エネルギー蓄積器123が、制動装置129を作動させるための電力を供給し、この制動装置129は、対象物116の動きを迅速に止め、エネルギー蓄積器123内のエネルギーを迅速に使い果たし始める。
【0060】
対象物116が中立範囲134に近づくのを待ってから制動を作動させるように制御装置122を構成することにより、対象物116が危険な(中立でない)位置にあるときには、エネルギー蓄積器は使い果たされない。対象物116が中立範囲134の近傍にあるときに制動装置が作動されるので、対象物116は、停止されたときには実質的に静止し続けるべきであり、対象物116を制動するのにさらなる電力は必要とされないことになる。
【0061】
システム110の動作方法に反して、対象物116が中立範囲134から遠くにあるときに電力損失直後に制動が作動された場合、対象物116は、範囲134の外側で停止するはずである。しかし、いったんエネルギー蓄積器123が使い果たされると、制御装置122及びスイッチ回路網119はもはや機能せず、制動はもはや適用されず、対象物116は中立範囲134内にはないので、対象物116は外力によって加速され始めて、過度の力を伴って境界127に接触する恐れがある。
【0062】
より具体的な実例として、システム110は、電気トロリー車の制動を制御するために利用することができる。この実例では、電気車両は、被駆動対象物116であり、位置センサ115は、水平に対するトロリー車の傾き又は傾斜を示すジャイロスコープである。中立範囲134は、トロリー車がほぼ傾斜のない(−3度から+3度の角度の傾きの)軌道上にあるときのことである。電源112は、トロリー軌道の上に延びている電気トロリー線である。電気トロリー車は、エネルギー蓄積器123として小型の緊急バッテリを有する。
【0063】
トロリー車が移動しているときに軌道の上に延びているトロリー線が突然切れた場合について考察する。緊急バッテリは、トロリー車を1回制動するだけのエネルギーしか持っていない。この場合、システムは、軌道の傾きを監視して、傾きがゼロに近いときにのみ制動する。トロリー車が軌道の平坦な区間に到達すると、バッテリからの電力を使用して制動が行われて、トロリー車は停止される。トロリー車は軌道の平坦な区間上で停止されるので、バッテリが使い果たされたとしても、トロリー車は静止し続けることになる。
【0064】
トロリー車が坂上にいるときに制動が行われた場合、トロリー車は坂上で停止することになる。いったんバッテリが使い果たされると、制動は機能を停止することになる。トロリー車はなおも坂上にいるので、加速し始め、軌道の平坦な区間を通り越して、物理的な障壁にぶつかる恐れがある。
【0065】
システム110は、発電制動以外の制動方式を使用するように修正することができる。例えば、高回転速度時に回生制動を使用して、システムの運動エネルギーをエネルギー蓄積器123に送ることができる。しかし、回生制動は、モータ速度が低いときにはうまく機能しない可能性がある。低速時には、モータ111は、必要に応じて、スイッチ回路網119に提供される順方向又は逆方向の信号により回転の反対方向にモータ111を駆動することによって、能動制動されうる。そのようにモータ111を反対方向に駆動することは、発電制動及び回生制動が有効に機能しない低回転速度に対して適切である。さらに、独立した制動システムをモータ111に連結することができ、制動が望まれたときに能動的にオンにすることができる。
【0066】
さらに、発電制動の際、単にモータ111の端子を互いに短絡させてモータ111の内部抵抗中に熱を散逸させる代わりに、散逸抵抗器を使用することができる。そのような構成では、発電制動が望まれると、モータ111の端子は、システムの運動エネルギーを熱に変換するように構成された散逸抵抗器に接続される。散逸抵抗器は、モータ111のコイルよりもより迅速にエネルギーを散逸させるように構成することができる。
【0067】
図2は、航空機翼スポイラ・システムで使用するために特に構成された電気モータ・システムの第2の実施例210を示す高レベル・オブジェクト図である。図2に示されるように、システム210は、システム110には示されていない幾つかの特徴を有する。AC電源212は、入力フィルタ252に接続する。電流センサ214が、AC電源212から移動する電流を測定するために配置される。入力フィルタ252は、ダイオード整流器218に接続し、ダイオード整流器218は、エネルギー蓄積器223に接続する。スイッチング回路網219に、電力散逸器259が結合される。エネルギー蓄積器223から来るDC線は、線257a及び257bで例示されているが、これらは制御装置222に接続する。電力散逸器259は、エネルギー蓄積器223とスイッチング回路網219との間でDC線にまたがって配置される。スイッチング回路網219は、3つの相221a、221b、及び221cを提供し、これらは出力フィルタ272を通過してから電気モータ211に行く。スイッチング回路網219は、図示のように、制御装置222から、そのゲート信号を受信する。相線221a、221b、及び221cを通過する電流は、電流センサ264によって測定される。レゾルバ275が、モータ211に結合される。モータ211は、アクチュエータ228(図4に示される)を通じて翼スポイラ216に接続する。位置センサ215が、翼スポイラ216上に設置される。レゾルバ275及び位置センサ215は、それらの出力信号を制御装置222に提供する。メモリ217が、制御装置222のための幾つかのパラメータを記憶する。記憶されるパラメータには、DC閾値291、最低回生速度292、発電制動電流閾値293、中立位置値224、電力閾値235、及び中立位置閾値236が含まれる。
【0068】
図4は、航空機翼265におけるシステム210の物理的配置を示す。電気モータ211は、アクチュエータ228を通じて翼スポイラ216に機械的に結合されて、位置225を制御する。後述のように、システム210は、スポイラ216が過度の力を伴って翼面227又はアクチュエータ228の物理的限界に接触するのを防止するように構成されている。図5は、翼スポイラ216が中立位置234内にあるときのシステム210を示す。
【0069】
図3は、図2のブロック図のより多くの実施詳細を示す、システム210の電気的なブロック図である。AC電源212は、3線式電力線に接続している3相AC電源である。電源スイッチ251が電力線と直列に配置されて、電源212からの各相(線)をシステムの他の部分との間で接続又は切断する。電力線上に配置された電流センサ214は、ホール効果電流センサとして実装されている。電流センサ214はそれぞれ、そのそれぞれの電力線の相内の電流の大きさを提供する、制御装置222に接続された出力信号を有する。図3に示されるように、電力線は、入力フィルタ252に接続する。フィルタ252は、コモン・モード・フィルタ・ステージ253と、ディファレンシャル・モード・フィルタ・ステージ254とを有する。電力線は、次いで整流器218に接続する。
【0070】
図3に示されるように、整流器218は、6つのダイオードを含む全波ダイオード整流器として実装されている。しかし、当業者には認識されるように、能動又は受動のどちらの電圧整流器の実装も使用することができる。整流器218は、3相AC電力を正のレール255a及び負のレール255bを含む2つのDCレールを有するDC信号に変換する。DCレール255a及び255bは、エネルギー蓄積器223に接続する。図示のように、エネルギー蓄積器223は、DCレール255a及び255bにまたがってソフト・スタート・スイッチSW1と直列に接続されたコンデンサC1を含んで、実装されている。正のDC母線257aが、正のDCレール255aに接続される。負の母線257bが、コンデンサC1とスイッチSW1との間の端子に接続される。図示のように、DC母線257a及び257bの電圧は、電圧検知線258a及び258bを通じて制御装置222によって監視される。
【0071】
電力散逸器259が、DC母線257a及び257bにまたがって接続される。電力散逸器259は、DC母線257a及び257bにまたがってスイッチSW2と直列に接続された、電力散逸抵抗器R1を含む。電力散逸器259と並列に、スイッチ回路網219が接続される。
【0072】
図示のように、この実施例では、スイッチ回路網219は、3つのコンデンサを含む6IGBT Hブリッジとして実装されている。しかし、様々なスイッチ回路網の実装を示された実装と容易に置き換えられることが、当業者には認識されるであろう。各スイッチ・ゲートが、制御装置222に接続されて、制御装置222によって制御される。スイッチ回路網219は、出力フィルタ272に接続される3相出力を提供する。出力フィルタ272は、ディファレンシャル・モード・フィルタ・ステージ274と、それに続くコモン・モード・フィルタ・ステージ273とを有する。
【0073】
図3に示されるように、電流センサ264が、出力フィルタ272から来る出力電力線に接続されている。電流センサ264は、ホール効果電流センサとして実装されており、それらの信号を制御装置222に提供する。出力電力線は、電気モータ211の3つの端子に接続される。電気モータ211は、3相DCモータである。電気モータ211は、機械的なリンク機構及び伝動機構を有するアクチュエータを通じて、翼スポイラ216に機械的に結合される。
【0074】
図6は、モータ211がどのようにしてスポイラ216のパネル表面に結合されるかを別の図で示す。モータ211の出力シャフト上に配置されたレゾルバ275が、モータ211の回転子の回転角を測定する。モータ211とスポイラ216との間の機械的なリンク機構上に配置されたLVDT215が、航空機翼265に対するスポイラ216の位置を効率的に測定する。図4に示されるように、LVDT215は、スポイラ216と翼面227との間の距離225を測定する。図3に戻り参照すると、制御装置222は、LVDT215及びレゾルバ275からの入力信号を受信する。制御装置222は、下記のように動作するようにプログラムされる。
【0075】
概して、システム210は、スポイラ216が過度の力を伴って翼面227又はシステムの機械的止め具に接触する可能性を最小限に抑えるために、電源の機能停止の際には電気モータ211を知的に発電制動する。より具体的には、エネルギー蓄積器223は、システムを一時的に発電制動するだけのエネルギーしか持つことができないので、制御装置222は、電源が機能を停止しスポイラ216が翼面227の近くにある場合にのみ、システムを発電制動するように構成される。スポイラ216が翼面227の近くで停止された場合、スポイラ216は、通常、中立位置内にあり、飛行中に翼265の全域にわたる風の力によって加速されることが少なくなる。いったんエネルギー蓄積器223が使い果たされると、制御装置222及びスイッチ回路網219は、もはや作動することができず、したがって、モータ211は発電制動され得ない。スポイラ216が翼面227に近づくのを待ってから発電制動することにより、ローカル電源が使い果たされたときにスポイラ216が危険な非中立位置に残される恐れが少なくなる。
【0076】
図3に示されるように、外部電源212は、3相AC電源である。電源212とシステムの他の部分との接続は、電源スイッチ251によって制御される。スイッチ251がオンになると、これまでゼロ電流を検知していた電流センサ214は、システムの他の部分への電流の流れを検知し始める。フィルタ252が、電磁インターフェイス又は他の雑音源から電力線によって入って来るコモン・モード及びディファレンシャル・モードの雑音を除去する。
【0077】
整流器218は、フィルタ252から出てくるAC電力をDC電源に変換する。R1と並列したスイッチSW1は、ソフト・スタート機構として機能する。スイッチSW1は、システムの電源が切れているときは、初期設定のオフ(非導電)状態である。SW1がオフであるので、電流はR1を通過して、C1をゆっくりと充電する。延引後、C1が十分に充電されてから、SW1がオンに切り替えられて電流にR1を迂回させ、R1はもはやエネルギーを散逸させることはない。スイッチSW1は、通常の動作中はオンのままでいる。スイッチSW1をオンにするのを遅らせることにより、電源オン時の過電流が最小限に抑えられる。
【0078】
スイッチ回路網219は、DC母線257a及び257bから電力を引き出す。スイッチ回路網219は、制御装置222によって制御されて、少なくとも3つの異なるモード、即ち回生モード、能動駆動モード、及び発電クランピング・モードで動作する。能動駆動中、制御装置222は、パルス幅変調を利用する。即ち、制御装置222は、モータ211の3つの端子のそれぞれに対する所望の駆動電流信号を生成するために、スイッチ回路網219内のスイッチを律動的にオン及びオフにする。このようにして、モータ211は、制御されたトルク又は速度で順方向又は逆方向に駆動されうる。
【0079】
回生モード中、制御装置222は、スイッチ回路網219内のそれぞれのスイッチをオフにさせる。スイッチ回路網219内のダイオードの配向により、このモードの間、電流は、モータ・コイルから回生充電するためにDC母線257aに流れて、負のDC母線257bから戻ることしかできない。逆起電力がDC母線電圧未満であるのに十分なほどにモータ211の速度が遅い場合、回生電流は、どのような程度であれ、モータ211のコイルとスイッチ回路網219との間には流れない。しかし、逆起電力がDC母線電圧を超えるような速度まで、モータの速度が上昇した場合、モータ211とスイッチ回路網219とDC母線との間に電流が流れることになる。逆起電力がDC母線電圧を上回っている間、システムは回生制動されることになり、モータ211の運動エネルギーがDC母線に送られ、そこで運動エネルギーは、エネルギー蓄積器223により電気エネルギーとして捕獲される。この自動的な回生制動は、逆起電力がもはやDC母線電圧を超えなくなるまで継続する。
【0080】
制御装置222は、電圧検知線258a及び258bを通じてDC母線電圧を能動的に監視する。DC母線電圧が設定閾値を超える場合、通常はオフであるスイッチSW2がオンに切り替えられることにより、電流が、正のDC母線257aから、散逸抵抗器R2、スイッチSW2を通過して、負のDC母線257bへと流されて、DC母線の電圧ポテンシャルが減少される。この閾値は、DC母線電圧がさもなければエネルギー蓄積器223又は他のシステム構成要素に損傷を与えうる安全限界を超えないように、設定される。スイッチSW2をオンにすることにより、エネルギーが抵抗器R2において熱としてDC母線から散逸される。R2において散逸されるエネルギーは、エネルギー蓄積器223、モータ211、又はこれら2つの組合せから生じうる。
【0081】
発電クランピング・モード中、制御装置222は、スイッチ回路網219内の上部スイッチの全て(或いは、下部スイッチの全て)をオンにして、3つのモータ・コイル211を効果的に互いに短絡させる。スイッチ回路網が発電クランピング・モードに配置されたときにモータ222が回転している場合、逆起電力により、短絡されたコイルを通じて急速な電流の流れがもたらされる。この電流の流れは、回転の反対方向にモータ・トルクを生成し、このモータ・トルクがモータを迅速に減速する。エネルギーは、主として、モータ211のコイルの内部抵抗及び電流経路の抵抗において熱として散逸される。発電クランピング中、モータ211がDC母線から電力を引き出していなくとも、制御装置222はDC母線から電力を引き出している。スイッチ回路網219内のスイッチを切り替え、それらのスイッチを開に保つための電力もまた、DC母線によって供給される。発電クランピング中、AC電源212からの電力が損失すると、制御装置222及びスイッチ回路網219がDC母線から電力を引き出すので、エネルギー蓄積器223が使い果たされる。したがって、エネルギー蓄積器223のサイズを考慮すると、発電クランピングは、外部AC電源212の損失に続いてこの蓄積されたエネルギーが使い果たされるまでしか、持続され得ない。
【0082】
電源212が機能を停止した際、この機能停止は、制御装置222によって読み取られる電流センサ214の出力信号で検知される。AC電源212の機能停止を検知すると、制御装置222は、スイッチ回路網219内の全てのスイッチをオフにすることにより、スイッチ回路網219に回生モードに入るように命令する。これにより、DC母線からの電力の引き出しが最小限に抑えられ、また、モータの回生エネルギーをエネルギー蓄積器223に供給することが可能になる。ここで制御装置222は、モータ211を発電制動すべきかどうかを判定するために、位置センサ215を監視する。より具体的には、制御装置222は、
もし(電流センサ214の出力<電源閾値235)であり、
かつ(ABS(位置センサ215の出力−中立位置値224)<位置閾値236))である
ならば、スイッチ回路網219を発電制動モードに配置する
という論理関数に従う。このようにして、エネルギー蓄積器223の消耗を増大させる発電制動は、翼スポイラ216が中立位置にあること(例えば、スポイラの展開が4度未満であるとき)を位置センサ215が示すまで延引される。上記の論理関数は、約2kHzのサンプル・レートで評価される。
【0083】
一例として、スポイラ216が40度展開されているときの外部AC電源機能停止の発生について考察する。4度の中立位置閾値236が使用されるが、これは、制動時にスポイラ216を中立位置値224(ゼロ度)に十分近接して停止させることができ、中立位置値224と大差なく、スポイラ216がこの範囲内にあるときは風力によって加速されることがないためである。制御装置222は、外部AC電源の損失を検知して、直ちにスイッチ回路網219内の全てのスイッチをオフに切り替えることにより、スイッチ回路網219を回生モードに配置する。次いで制御装置222は、スポイラ位置センサ215を繰り返し監視し始める。位置センサ215はまず、スポイラ216が40度展開されていることを制御装置222に示すので、制御装置は、位置センサ出力215(40度)が中立位置値224(ゼロ度)どころか位置センサ閾値224(4度)をも上回っていることを算出する。制御装置222は、この比較を続けて、位置センサ215の出力が4度を上回っている限り、スイッチ回路網219を惰性運転モードのままにする。一方、スイッチ回路網219は回生モードであり、モータ211の惰性運転を可能にするので、スポイラ216は風力により翼面227に向かって加速される。その間、エネルギー蓄積器223は、回生電流の流れによって増加される。このモードでは、スイッチ回路網219及びモータ211のどちらも、エネルギー蓄積器223からの電力を消費しない。
【0084】
スポイラ216が翼面227から4度の範囲内に来ると、制御装置222は、位置センサ215の出力からこのことを検出して、スイッチ回路網219を発電制動モードに配置する。スイッチ回路網219内の上側スイッチが全て閉じられてモータ211のコイルが短絡されることにより、運動エネルギーがコイルにおいて熱として散逸されるので、モータ211は低速まで迅速に減速される。スイッチ回路網219は、発電クランピング・モードにおいてその上側スイッチをオンにしているので、DC母線から電力を引き出し、エネルギー蓄積器223の消費速度を増大させる。最低限必要な内部電力を提供する能力を越えてエネルギー蓄積器223が使い果たされたときには、スポイラ216は、より安全な位置にある(即ち、スポイラ216は翼面227と接触しておらず、アクチュエータは機械的停止限界を越えていない)。システムは、あまり安全ではない状態(スポイラが非中立位置にあるときの外部AC電源損失)から、より安全な状態(スポイラが実質的に中立状態にある)となされている。
【0085】
電力損失時にすぐにはシステムを発電制動しないことにより、システムがより安全な状態で停止する可能性が著しく高められる。上記の筋書きでは、スポイラ216が40度を越えたときにAC電力が失われた。最初に電力が失われたときに発電制動が開始された場合、エネルギー蓄積器223はより高い速度で使い果たされることになり、モータの回生によるエネルギー蓄積器223の増加は起こらない。一方で、スポイラ216は、すぐさま制動され、静止されたときにはなおも約40度の非中立位置に展開されていることになる。スポイラ216は、発電制動されている間、エネルギー蓄積器223が使い果たされるまで、この40度位置の近くに留まることになる。エネルギー蓄積器223が使い果たされると、制御装置222及びスイッチ回路網219は、もはや機能しない。したがって、モータ211は、もはや発電クランピングされない。次いでスポイラ216は、空力負荷により、その約40度の位置から下方に加速することを余儀なくされる。比較的遠い距離を加速されることにより、スポイラ216が過度の力を伴って翼面227に接触する可能性があり、それにより、翼面227、スポイラ216、モータ211、及び/又は機械的止め具、並びにこれらの部品間のリンク機構が損傷する。
【0086】
また、電源損失の直後には制動しないことにより、電力損失時にシステムが有するいかなる運動量も、システムを中立位置により近づけるために利用することができる。例えば、電力損失中にスポイラ216が能動的に後退している場合、スポイラ216は後退し続けて、制御装置222の発電制動論理が満たされるまで、中立位置に近づく。
【0087】
説明したような発電制動に加えて、図6に示されるように、システム210は、発電制動が行われるのと同時に制動装置229を作動させるように修正することができる。しかし、制動装置229は、発電制動が必要とするよりもかなり多くのエネルギーを必要とする場合があるので、この動作モードを利用するのならば、それに応じて、エネルギー蓄積器223の容量を調整しなければならない。
【0088】
図7は、風力タービン・ブレードのピッチ制御での使用のために特に構成された、第3の実施例310を示す。図7に示されるように、風力タービン310は概して、タワー350、タワー351の頂部に回転的に支持された本体又はナセル351、及びナセル351に回転的に結合されたロータ352を含む。タワー350は、地面に固着され、また、条件及び所望の性能に応じて、様々な高さ及びサイズを有する。或いは、タワー設置型風力発電タービンの代わりに、発電機は、地面に隣接して配置されるか、又は、水流若しくは潮流からの力を利用するように構成された発電タービンとされる場合もある。したがって、発電タービンという用語は、そのエネルギーを生成するのが風流であろうと水流であろうと他の運動であろうと回転エネルギーから電力を生成する、いかなるタービンをも含むように意図されている。ナセル351は、タワー350の上縁端部上に設置され、概して垂直軸yyの周りで回転するように構成されている。ナセル351は、方位制御装置によりタワー350上で軸yyの周りで回転され、この方位制御装置は、それ自体を風向又は気流に対して向けるようにして、ナセル351をタワー350の頂部上で回転させるように構成されている。したがって、方位制御装置は、ナセル351を回転させて、ハブ352が面する方向と風向との間の角度を調整することができる。ナセル351は、タービン制御システムと一緒に発電機を収容し、当技術分野で知られている他のコンポーネントやセンサ、制御システムを含むことができる。風力タービン310は、タービン310とその発電機とによって生成された電力を送るための送電網(図示せず)に結合される。ナセル351は、ハブ352を回転的に支持し、ハブ352は、概して水平軸395の周りで回転するようにナセル351に取り付けられている。下記のように、風力エネルギーを回転エネルギーに変換するために、複数のブレード又はエーロフォイル316が、ハブ352から放射方向外方に延在する。ロータ352は、典型的には3枚のブレードを有するが、任意の枚数のブレード又はエーロフォイルを使用することができる。ブレード316は、条件に応じて、様々な長さ、形状、及び構造を有しうる。ブレード316のそれぞれは、ピッチ制御され、ころ軸受上でブレードの長手軸の周りでハブ352に対して回転して、ブレードが配置されたところの風に対してブレードのピッチ又は角度を変更する。ハブ352は、ブレード316とハブ352の回転とによって生じる回転エネルギーから電力が生成されるように、ロータ・シャフト及びギヤ・ボックスにより発電機に回転的に結合される。ハブ352の回転エネルギーから電力を生成するための発電機の動作は、当技術分野で知られている。
【0089】
ハブ352は、ピッチ制御アクチュエータ353を含む。ピッチ制御アクチュエータ353は、ブレード316のピッチ角を選択的に制御するように構成され、制御システムに結合されている。この実施例では、ブレード316のそれぞれのピッチ角が、個々のピッチ制御アクチュエータ353によって個別に制御される。ピッチ制御アクチュエータ353は、ブレード316をその長手軸396の周りでハブ352に対して回転させる。軸受が設けられて、ハブ352に対するブレード316のその長手軸周りでの回転を可能とし、ピッチ制御アクチュエータ353は、その軸受を越えて作動する。ピッチ制御アクチュエータ353は概して、モータ311及びギヤ付きインターフェイスを含む。
【0090】
したがって、風力タービン・システム310は、主回転軸395、及び3枚のブレードを有する。各ブレード316は、ピッチ回転軸396を有する。さらに、各ブレードは、角度センサ、及びピッチ・モータ311を有する。各ブレード316はまた、それ自体のピッチ制御ボックスを有する。各ピッチ制御ボックス内には、システム210における構成要素と同様の、電源接続部、エネルギー蓄積器、スイッチ回路網、電力センサ、及び制御装置が存在する。電源接続部は、外部ACグリッド電源に取り付けられる。
【0091】
図7は、中立ピッチ角におけるブレード316を示す。ブレード316上に風によってもたらされる全ての力の和は、風力の中心で表される。ブレード316が中立位置にある場合、風力の中心は、ピッチ回転軸396を通り抜けるように位置合わせされる。したがって、風力の中心は概して、ピッチ回転軸396の周りでブレード316上にトルクを生じさせない。
【0092】
風力タービン・ピッチ制御システム310は、軽微な変更を幾つか伴って、航空機スポイラ・システム210とほぼ同じ態様で作動する。航空機スポイラ・システム210が、電源が機能停止した際に翼265にスポイラ216が衝突するのを防ぐように試みるのに対して、風力タービン・ピッチ制御システム310は、電源が機能停止した際にタービン・ブレード316をフェザー位置まで移動させて停止させられるように試みる。航空機スポイラ・システム210がスポイラ216と翼265との近さに基づいて制動モードを動作させる方法と同様に、ピッチ制御システム310は、各ブレードのフェザー位置に対する各ブレードのピッチ角に基づいて制動モードを動作させる。
【0093】
説明された電気モータ制御システムは、従来技術に勝る幾つかの驚くべき利点をもたらした。対象物が実質的に中立位置に接近するのを待ってから制動を適用することにより、蓄積された電力は、より安全な位置に、即ち制動電力が損失又は使い果たされたときに対象物が外力によって加速される恐れが少ない位置に、対象物が停止させられそうなときにのみ、制動のために効果的に使用される。より具体的には、被駆動対象物が中立位置の近くにあるときにのみ制動を開始することにより、システムが対象物を中立位置に停止させる可能性が大いに高められる。電源の機能停止の際に自動的に制動をかける他のシステム(被駆動対象物が非中立位置にあるときにローカル電力を使い果たしてそれを再開させる可能性がある)とは異なり、本実施例は、被駆動対象物が制動電力無しに静止し続けることができる中立位置の近くにあるときにのみ、蓄積された電力を使い果たす。
【0094】
さらに、本実施例は、中立位置に向かう被駆動対象物の運動に由来する有益な運動量が無駄にされないという利点をもたらす。例えば、被駆動対象物が中立位置に向かって移動している間に外部電力が失われた場合、システムは自動的には制動されないので、対象物を中立位置まで至らせる運動量が早すぎる制動によって失われることがない。
【0095】
さらに、回生制動、発電制動、及び能動制動の、複数の制動モードを利用することにより、各制動方式の利点が組み合わされる。例えば、回生制動することにより、運動エネルギーが、蓄積された電力の供給を延長するために使用される。発電制動オプションを有することにより、システムは、純粋に回生的なシステムを制限しうる過速度状態から保護される。さらに、能動制動を有することにより、システムは、発電制動又は回生制動を効率的に行うための最低限度をモータ速度が下回るときに、停止することができる。さらに、複数の制動システムが用いられるので、システムの安全率が高められる。制動システムのうちの1つが故障しても、別のシステムを利用して被駆動対象物を停止させることができる。
【0096】
さらに、電力は重大なときにのみ消耗され、電力は回生的に回収されるので、本実施例は、別の方法で使用可能とされるのよりもより小型のエネルギー蓄積デバイスを使用することができるとき、そのためコストを抑えることができる。
【0097】
電気モータ・システムの目下好ましい形態をここまで図示し説明し、その幾つかの修正について論じたが、以下の特許請求の範囲によって定義され区別されるように、本発明の範囲から逸脱することなく様々な追加の変更がなされうることは、当業者には容易に理解されよう。
図4
図5
図7
図8
図1
図2
図3
図6