(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
再生側の空気流を形成する再生側ファンと、処理側の空気流を形成する処理側ファンと、前記再生側の空気の流路および前記処理側の空気の流路に跨って配設され処理側の空気からの吸湿と再生側の空気への放湿とを回転しながら連続的に行うデシカントロータと、前記デシカントロータによる吸湿前の処理側の空気を冷却する予冷装置と、前記デシカントロータによる放湿前の再生側の空気を加熱する加熱装置とを備え、前記デシカントロータによって吸湿された処理側の乾燥した空気を被空調空間に供給するデシカント空調システムにおいて、
前記処理側の乾燥した空気が流れる流路中に定められた所定の位置における水分量を常時検出する水分量検出手段と、
前記再生側の空気の流量、前記デシカントロータの回転数および前記加熱装置の加熱能力の少なくとも1つを水分量の制御対象とし、前記水分量検出手段によって検出される水分量が目標とする水分量となるように、前記水分量の制御対象に対する制御値を一定周期ごとに決定する制御値決定手段と、
前記制御値決定手段によって決定された今回の制御値と前回の制御値とからフィードフォワード量を演算するフィードフォワード量演算手段と、
前記水分量の制御対象の制御値が前回の制御値から今回の制御値へと変更するのに関連して計測値が変化する他の制御対象を関連制御対象とし、前記フィードフォワード量演算手段によって演算されたフィードフォワード量を補償量として、前記関連制御対象の制御の遅れを改善するフィードフォワード補償手段とを備え、
前記関連制御対象は、
前記再生側の空気の流量、前記デシカントロータの回転数および前記加熱装置の加熱能力のうち前記水分量の制御対象として選択されなかったものおよび前記処理側の空気の流量ならびに前記予冷装置の冷却能力からなる他の制御対象の中から選択された制御対象である
ことを特徴とするデシカント空調システム。
再生側の空気流を形成する再生側ファンと、処理側の空気流を形成する処理側ファンと、前記再生側の空気の流路および前記処理側の空気の流路に跨って配設され処理側の空気からの吸湿と再生側の空気への放湿とを回転しながら連続的に行うデシカントロータと、前記デシカントロータによる吸湿前の処理側の空気を冷却する予冷装置と、前記デシカントロータによる放湿前の再生側の空気を加熱する加熱装置とを備え、前記デシカントロータによって吸湿された処理側の乾燥した空気を被空調空間に供給するデシカント空調システムに適用されるデシカント空調システムの運転方法において、
前記処理側の乾燥した空気が流れる流路中に定められた所定の位置における水分量を常時検出する水分量検出ステップと、
前記再生側の空気の流量、前記デシカントロータの回転数および前記加熱装置の加熱能力の少なくとも1つを水分量の制御対象とし、前記水分量検出ステップによって検出される水分量が目標とする水分量となるように、前記水分量の制御対象に対する制御値を一定周期ごとに決定する制御値決定ステップと、
前記制御値決定ステップによって決定された今回の制御値と前回の制御値とからフィードフォワード量を演算するフィードフォワード量演算ステップと、
前記水分量の制御対象の制御値が前回の制御値から今回の制御値へと変更するのに関連して計測値が変化する他の制御対象を関連制御対象とし、前記フィードフォワード量演算ステップによって演算されたフィードフォワード量を補償量として、前記関連制御対象の制御の遅れを改善するフィードフォワード補償ステップとを備え、
前記関連制御対象は、
前記再生側の空気の流量、前記デシカントロータの回転数および前記加熱装置の加熱能力のうち前記水分量の制御対象として選択されなかったものおよび前記処理側の空気の流量ならびに前記予冷装置の冷却能力からなる他の制御対象の中から選択された制御対象である
ことを特徴とするデシカント空調システムの運転方法。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷凍倉庫,電池工場など湿度を低く保つための空調として、デシカントロータを用いたデシカント空調システムが採用されている。
【0003】
デシカントロータは、円板状に形成され、その厚さ方向に空気が貫通できるような構造とされている。デシカントロータの表面には、多孔性の無機化合物を主成分とする固体吸着物が設けられている。この多孔性の無機化合物としては、細孔径が0.1〜20nm程度で水分を吸着するもの、例えばシリカゲルやゼオライト、高分子吸着剤等の固体吸着剤が使用される。また、デシカントロータは、モータによって駆動されて、中心軸回りに回転し、処理側の空気からの吸湿と再生側の空気への放湿とを連続的に行う。
【0004】
従来、このデシカントロータを用いたデシカント空調システムでは、被空調空間の湿度(露点温度)を確実に目標湿度(目標露点温度)に維持するために、湿度負荷が最大となる条件を基準とした運転条件(最高性能を発揮できる運転条件)でデシカントロータを稼働させている。このため、冬期や中間期には性能が優りすぎて、過除湿になる場合がある。そこで、このような過除湿を防ぐために、デシカントロータによって除湿された空気を出口付近で改めて加湿するなどの方法が採られているが、加湿するための余分の装置が必要となるなどの問題が生じる。
【0005】
このような問題に対して、例えば特許文献1では、デシカントロータによって除湿された空気の露点温度を検出する露点温度センサを設け、この露点温度センサによって検出される露点温度が目標露点温度となるように、再生側の空気の流量、デシカントロータの回転数、再生側の空気を加熱する加熱装置の加熱能力の少なくとも1つを制御するようにしている。このような露点温度制御を実施することで、余分な装置を用いることなく、過除湿となることを防ぐことができる。
【0006】
図13にデシカントロータを用いた従来のデシカント空調システムの概略を示す。同図において、100は低湿度の空気を生成する空気調和装置(デシカント空調機)、200はこのデシカント空調機100からの低湿度の空気の供給を受けるドライエリア(被空調空間)、300はデシカント空調機100の運転を制御するコントローラである。
【0007】
デシカント空調機100は、再生側の空気流を形成する再生側ファン(以下、再生ファンと呼ぶ)1と、処理側の空気流を形成する処理側ファン(以下、給気ファンと呼ぶ)2と、
再生側の空気の流路L1および処理側の空気の流路L2に跨って配設されたデシカントロータ3と、デシカントロータ3による吸湿前の処理側の空気を冷却する冷水コイル(以下、予冷コイルと呼ぶ)4と、デシカントロータ3による放湿前の再生側の空気を加熱する温水コイル(以下、再生コイルと呼ぶ)5とを備えている。
【0008】
このデシカント空調機100において、デシカントロータ3のパージ領域を通過した処理側の空気は、デシカントロータ3への再生側の放湿前の空気流に戻されるようになっている。このパージの空気流は成り行きで決定される。このようなタイプのデシカント空調機100を循環型デシカント空調機と呼んでいる。
【0009】
なお、S1はデシカント空調機100からのドライエリア200への給気(デシカントロータ3によって吸湿された処理側の空気)SAの露点温度(給気露点温度)tdpvを検出する露点温度センサ、S2は予冷コイル4が冷却する空気の出口温度を予冷コイル出口温度tspvとして計測する温度センサ、S3は再生コイル5が加熱する空気の出口温度を再生コイル出口温度tr1pvとして計測する温度センサ、S4はデシカントロータ3によって放湿された再生側の空気の出口温度をロータ再生側出口温度tr2pvとして計測する温度センサ、S5はデシカント空調機100からのドライエリア200への給気SAの圧力を給気ダクト圧Pspvとして計測する圧力センサ、INV1はデシカントロータ3の回転数を調整するためのインバータ、INV2は再生ファン1の回転数を調整するためのインバータ、INV3は給気ファン2の回転数を調整するためのインバータ、VL1は予冷コイル4への冷水CWの供給通路に設けられた冷水弁、VL2は再生コイル5への温水HWの供給通路に設けられた温水弁である。
【0010】
このデシカント空調システムにおいて、コントローラ300は、露点温度制御、再生コイル出口温度制御、ロータ再生側出口温度制御、予冷コイル出口温度制御、圧力一定制御の各機能を備えている。
【0011】
〔露点温度制御〕
コントローラ300は、露点温度制御として、温度センサS1が検出する露点温度tdpvを目標露点温度tdspに一致させるように、再生ファン1の回転数、デシカントロータ3の回転数および再生コイル5の加熱能力の少なくとも1つを制御する。この例では、露点温度制御として、再生ファン1の回転数、すなわち再生側の空気の流量を制御するものとする。
【0012】
〔再生コイル出口温度制御〕
コントローラ300は、再生コイル出口温度制御として、温度センサS3が検出する再生コイル出口温度tr1pvを設定温度(再生コイル出口温度設定値)tr1spに一致させるように、温水弁VL2の開度を制御する。すなわち、再生コイル出口温度制御として、再生コイル(加熱装置)5の加熱能力を制御する。
【0013】
〔ロータ再生側出口温度制御〕
コントローラ300は、ロータ再生側出口温度制御として、温度センサS4が検出するロータ再生側出口温度tr2pvを設定温度(ロータ再生側出口温度設定値)tr2spに一致させるように、デシカントロータ3の回転数を制御する。
【0014】
〔予冷コイル出口温度制御〕
コントローラ300は、温度センサS2が検出する予冷コイル出口温度tspvを設定温度(予冷コイル出口温度設定値)tsspに一致させるように、冷水弁VL1の開度を制御する。すなわち、予冷コイル出口温度制御として、予冷コイル(予冷装置)4の冷却能力を制御する。
【0015】
〔圧力一定制御〕
コントローラ300は、圧力センサS5が計測する給気ダクト圧Pspvを設定値(給気ダクト圧設定値)Psspに一致させるように、給気ファン2の回転数を制御する。すなわち、圧力一定制御として、処理側の空気の流量を制御する。
【0016】
〔処理側〕
このデシカント空調システムにおいて、処理側の空気として取り込まれた外気OAは、予冷コイル4により冷却されてデシカントロータ3へ送られる。この空気は、デシカントロータ3を通過する際、その空気中に含まれる水分がデシカントロータ3の固体吸着剤に吸着(吸湿)される。そして、このデシカントロータ3による吸湿後の空気、すなわちデシカントロータ3によって除湿された空気が、デシカント空調機100からの給気SAとしてドライエリア200へ供給される。
【0017】
〔再生側〕
一方、再生側では、再生側の空気として外気OA或いはドライエリア200からの還気RAが取り込まれ、再生コイル5に送られて加熱される。これによって、外気OA或いは還気RAの温度が上昇し、相対湿度が下げられる。この場合、外気OA或いは還気RAは100℃を超える高温とされる。そして、この相対湿度が下げられた高温の外気OA或いは還気RAが、再生用空気としてデシカントロータ3へ送られる。なお、外気OA或いは還気RAをなしとし、デシカントロータ3からのパージの空気流のみを再生側の空気としてもよい。
【0018】
デシカントロータ3は回転しており、処理側の空気から水分を吸着した固体吸着剤を相対湿度が低い再生用空気が通過することで、固体吸着剤から水分が脱着され、再生用空気へ放湿される。この固体吸着剤からの水分を吸収した再生用空気は排気EAとして排出される。
【0019】
この処理側、再生側での空気の処理中、露点温度tdpvが目標露点温度tdspに一致するように再生ファン1の回転数が制御され、再生コイル出口温度tr1pvが再生コイル出口温度設定値tr1spに一致するように温水弁VL2の開度が制御され、ロータ再生側出口温度tr2pvがロータ再生側出口温度設定値tr2spに一致するようにデシカントロータ3の回転数が制御され、予冷コイル出口温度tspvが予冷コイル出口温度設定値tsspに一致させるように冷水弁VL1の開度が制御され、給気ダクト圧Pspvが給気ダクト圧設定値Psspに一致するように給気ファン2の回転数が制御される。
【0020】
このようにして、
図13に示されたデシカント空調システムでは、目標露点温度tdsp、再生コイル出口温度設定値tr1sp,ロータ再生側出口温度設定値tr2sp、予冷コイル出口温度設定値tssp、給気ダクト圧設定値Psspを一定として、処理側の空気からの吸湿と再生側の空気への放湿とがデシカントロータ3において連続的に行われ、デシカント空調機100からのドライエリア200への給気(低湿度の空気)SAの供給が続けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、
図13に示したデシカント空調システムでは、除湿負荷が低く制御が安定している状態で、すなわち再生側の空気の流量が少風量の状態(再生ファン1の回転数が低い状態)で、除湿負荷が急上昇した場合、露点温度制御によって再生側の空気の流量が増加するが、この露点温度制御に関連してその設定値に対する計測値が変化する他の制御に遅れが生じるため、デシカント空調機100の除湿能力の増加が遅れ、露点温度が長時間に渡り目標露点温度を超えてしまうという問題があった。以下、この問題について、具体的に説明する。
【0023】
〔露点温度制御〕
図14に露点温度制御によって変化するコントローラ300からの再生ファン1に対する回転数の調整出力(再生ファンINV出力)を示す。なお、
図14には、再生ファンINV出力と合わせて、目標露点温度tdspに対する露点温度tdpvの変化も示している。
【0024】
再生ファン1の回転数が低い状態で、除湿負荷が急上昇し、目標露点温度tdspに対して露点温度tdpvが急上昇すると(
図14に示すt1点)、露点温度制御のフィードバックによって、再生ファンINV出力が上昇する。これにより、再生側の空気の流量が増加し始める。
【0025】
〔再生コイル出口温度制御〕
再生側の空気の流量が増加し始めると、再生コイル出口温度設定値tr1spに対して再生コイル出口温度tr1pvが低下し(
図15に示すt2点)、再生コイル出口温度制御のフィードバックによって、コントローラ300からの再生コイル5に対する温水の調整出力(再生コイルバルブ開度出力)が増加し、再生コイル5の加熱能力が増加する。この場合、再生ファンINV出力が上昇し始めてから(
図15に示すt1点)、再生コイルバルブ開度出力が増加し始めるまでには(
図15に示すt2点)、タイムラグτ1があるため、再生コイル5の加熱能力が増加するまでの時間T1が長くなる。
【0026】
〔ロータ再生側出口温度制御〕
再生側の空気の流量が増加し始めると、ロータ再生側出口温度設定値tr2spに対してロータ再生側出口温度tr2pvが上昇し(
図16に示すt2点)、ロータ再生側出口温度制御のフィードバックによって、コントローラ300からのデシカントロータ3に対する回転数の調整出力(ロータINV出力)が上昇する。これにより、デシカントロータ3の除湿能力が最適化される。この場合、再生ファンINV出力が上昇し始めてから(
図16に示すt1点)、ロータINV出力が上昇し始めるまでには(
図16に示すt2点)、タイムラグτ2があるため、デシカントロータ3の除湿能力が最適化されるまでの時間T2が長くなる。
【0027】
〔圧力一定制御〕
再生側の空気の流量が増加し始めると、給気ダクト圧設定値Psspに対して給気ダクト圧Pspvが低下し(
図17に示すt2点)、圧力一定制御のフィードバックによって、コントローラ300からの給気ファン2に対する回転数の調整出力(給気ファンINV出力)が上昇する。これにより、処理側の空気の流量が増加する。この場合、再生ファンINV出力が上昇し始めてから(
図17に示すt1点)、給気ファンINV出力が上昇し始めるまでには(
図17に示すt2点)、タイムラグτ3があるため、処理側の空気の流量(外気の取入量)が増加するまでの時間T3が長くなる。
【0028】
〔予冷コイル出口温度制御〕
再生側の空気の流量の増加によって、処理側の空気の流量が増加し始めると、予冷コイル出口温度設定値tsspに対して予冷コイル出口温度tspvが上昇し(
図18に示すt2点)、予冷コイル出口温度制御によって、コントローラ300からの予冷コイル4に対する冷水CWの調整出力(予冷コイルバルブ開度出力)が増加し、予冷コイル4の冷却能力が増加する。この場合、再生ファンINV出力が上昇し始めてから(
図18に示すt1点)、予冷コイルバルブ開度出力が増加し始めるまでには(
図18に示すt2点)、タイムラグτ4があるため、予冷コイル4の冷却能力が増加するまでの時間T4が長くなる。
【0029】
このようにして、露点温度制御によって再生側の空気の流量が増加した場合、この露点温度制御に関連してその設定値に対する計測値が変化する再生コイル出口温度制御,ロータ再生側出口温度制御,圧力一定制御,予冷コイル出口温度制御などの他の制御に遅れが生じ、
図14に示されるように、上昇した露点温度tdpvが目標露点温度tdspに追従するまでの時間Tが長くなり、デシカント空調機100の除湿能力の増加が遅れる。
【0030】
オフィスを対象とした一般空調とは異なり、デシカント空調機が使われる施設としてはリチウムイオン電池工場などであり、厳密な露点温度管理が必須とされる。これは、室内の露点温度が高い状況では、リチウムと水分が化学反応を起こし、発火する虞があるという理由による。このため、デシカント空調機の除湿能力の増加が遅れることによって、露点温度が長時間に渡り目標露点温度を超えてしまうということは重要な問題であると言える。
【0031】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、除湿負荷が変化した場合、露点温度を目標露点温度へ短時間で追従させることが可能なデシカント空調システムおよびその運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0032】
このような目的を達成するために本発明は、再生側の空気流を形成する再生側ファンと、処理側の空気流を形成する処理側ファンと、再生側の空気の流路および処理側の空気の流路に跨って配設され処理側の空気からの吸湿と再生側の空気への放湿とを回転しながら連続的に行うデシカントロータと、デシカントロータによる吸湿前の処理側の空気を冷却する予冷装置と、デシカントロータによる放湿前の再生側の空気を加熱する加熱装置とを備え、デシカントロータによって吸湿された処理側の乾燥した空気を被空調空間に供給するデシカント空調システムにおいて、処理側の乾燥した空気が流れる流路中に定められた所定の位置における水分量を常時検出する水分量検出手段と、再生側の空気の流量、デシカントロータの回転数および加熱装置の加熱能力の少なくとも1つを水分量の制御対象とし、水分量検出手段によって検出される水分量が目標とする水分量となるように、水分量の制御対象に対する制御値を一定周期ごとに決定する制御値決定手段と、制御値決定手段によって決定された今回の制御値と前回の制御値とからフィードフォワード量を演算するフィードフォワード量演算手段と、水分量の制御対象の
制御値が前回の制御値から今回の制御値へと変更するのに関連して計測値が変化する他の制御対象を関連制御対象とし、フィードフォワード量演算手段によって演算されたフィードフォワード量を補償量として、関連制御対象の制御の遅れを改善するフィードフォワード補償手段とを備え、関連制御対象は、再生側の空気の流量、デシカントロータの回転数および加熱装置の加熱能力のうち水分量の制御対象として選択されなかったもの
および処理側の空気の流量ならびに予冷装置の冷却能力からなる他の制御対象の中から選択された制御対象であることを特徴とする。
【0033】
本発明では、処理側の乾燥した空気が流れる流路中に定められた所定の位置における水分量が常時検出され、この検出された水分量が目標とする水分量となるように水分量の制御対象に対する制御値が一定周期ごとに決定される。そして、この決定された今回の制御値と前回の制御値とからフィードフォワード量が演算され、この演算されたフィードフォワード量を補償量として、水分量の制御対象の
制御値が前回の制御値から今回の制御値へと変更するのに関連して計測値が変化する関連制御対象の制御の遅れが改善される。
【0034】
本発明では、再生側の空気の流量、デシカントロータの回転数および加熱装置の加熱能力の少なくとも1つを水分量の制御対象とする。例えば、再生側の空気の流量を水分量の制御対象とした場合、処理側の乾燥した空気が流れる流路中に定められた所定の位置における水分量が常時検出され、この検出された水分量が目標とする水分量となるように、再生側の空気の流量に対する制御値が一定周期ごとに決定される。そして、この決定された今回の制御値と前回の制御値とからフィードフォワード量が演算され、この演算されたフィードフォワード量を補償量として、再生側の空気の流量の
制御値が前回の制御値から今回の制御値へと変更するのに関連して計測値が変化する関連制御対象の制御の遅れが改善される。
【0035】
本発明において、再生側の空気の流量を
水分量の制御対象とした場合、関連制御対象は処理側の空気の流量、デシカントロータの回転数、加熱装置の加熱能力、予冷装置の冷却能力などが考えられる。例えば、関連制御対象を処理側の空気の流量、デシカントロータの回転数、加熱装置の加熱能力および予冷装置の冷却能力とした場合、処理側の空気の流量、デシカントロータの回転数、加熱装置の加熱能力および予冷装置の冷却能力のそれぞれについてフィードフォワード量が演算され、その演算されたフィードフォワード量を補償量として処理側の空気の流量、デシカントロータの回転数、加熱装置の加熱能力および予冷装置の冷却能力の制御の遅れが改善される。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、再生側の空気の流量、デシカントロータの回転数および加熱装置の加熱能力の少なくとも1つを水分量の制御対象とし、常時検出される水分量が目標とする水分量となるように制御対象に対する制御値を一定周期ごとに決定し、この決定された今回の制御値と前回の制御値とからフィードフォワード量を演算し、この演算されたフィードフォワード量を補償量として水分量の制御対象の
制御値が前回の制御値から今回の制御値へと変更するのに関連して計測値が変化する関連制御対象の制御の遅れを改善するようにしたので、除湿負荷が変化した場合、関連制御対象の制御を速めるようにして、露点温度を目標露点温度へ短時間で追従させるようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明に係るデシカント空調システムの一実施の形態(実施の形態1)の概略を示す図である。
【
図2】実施の形態1のデシカント空調システムのコントローラにおける制御対象制御値決定機能部、フィードフォワード量演算機能部、フィードフォワード補償機能部および関連制御対象制御値決定機能部の要部の構成を示す図である。
【
図3】実施の形態1のデシカント空調システムにおける露点温度制御によって変化する再生ファンINV出力を露点温度tdpvの変化と合わせて示す図である。
【
図4】実施の形態1のデシカント空調システムにおける再生コイル出口温度制御によって変化する再生コイルバルブ開度出力を再生ファンINV出力および再生コイル出口温度tr1pvの変化と合わせて示す図である。
【
図5】実施の形態1のデシカント空調システムにおけるロータ再生側出口温度制御によって変化するロータINV出力を再生ファンINV出力およびロータ再生側出口温度tr2pvの変化と合わせて示す図である。
【
図6】実施の形態1のデシカント空調システムにおける圧力一定制御によって変化する給気ファンINV出力を再生ファンINV出力および給気ダクト圧Pspvの変化と合わせて示す図である。
【
図7】実施の形態1のデシカント空調システムにおける予冷コイル出口温度制御によって変化する予冷コイルバルブ開度出力を再生ファンINV出力、給気ファンINV出力および予冷コイル出口温度tspvの変化と合わせて示す図である。
【
図8】本発明に係るデシカント空調システムの他の実施の形態(実施の形態2)の概略を示す図である。
【
図9】実施の形態2のデシカント空調システムのコントローラにおける制御対象制御値決定機能部、フィードフォワード量演算機能部、フィードフォワード補償機能部および関連制御対象制御値決定機能部の要部の構成を示す図である。
【
図10】本発明に係るデシカント空調システムの別の実施の形態(実施の形態3)の概略を示す図である。
【
図11】実施の形態3のデシカント空調システムのコントローラにおける制御対象制御値決定機能部、フィードフォワード量演算機能部、フィードフォワード補償機能部および関連制御対象制御値決定機能部の要部の構成を示す図である。
【
図13】デシカントロータを用いた従来のデシカント空調システムの概略を示す図である。
【
図14】従来のデシカント空調システムにおける露点温度制御によって変化する再生ファンINV出力を露点温度tdpvの変化と合わせて示す図である。
【
図15】従来のデシカント空調システムにおける再生コイル出口温度制御によって変化する再生コイルバルブ開度出力を再生ファンINV出力および再生コイル出口温度tr1pvの変化と合わせて示す図である。
【
図16】従来のデシカント空調システムにおけるロータ再生側出口温度制御によって変化するロータINV出力を再生ファンINV出力およびロータ再生側出口温度tr2pvの変化と合わせて示す図である。
【
図17】従来のデシカント空調システムにおける圧力一定制御によって変化する給気ファンINV出力を再生ファンINV出力および給気ダクト圧Pspvの変化と合わせて示す図である。
【
図18】従来のデシカント空調システムにおける予冷コイル出口温度制御によって変化する予冷コイルバルブ開度出力を再生ファンINV出力、給気ファンINV出力および予冷コイル出口温度tspvの変化と合わせて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
〔実施の形態1:循環型デシカント空調機〕
図1はこの発明に係るデシカント空調システムの一実施の形態(実施の形態1)の概略を示す図である。同図において、
図13と同一符号は
図13を参照して説明した構成要素と同一或いは同等構成要素を示し、その説明は省略する。
【0039】
なお、この実施の形態において、コントローラは
図13に示した従来のデシカント空調システムにおけるコントローラと区別するために、符号300Aで示す。このコントローラ300Aは、プロセッサや記憶装置からなるハードウェアと、これらのハードウェアと協働して各種機能を実現させるプログラムとによって実現される。
【0040】
この実施の形態1において、コントローラ300Aは、再生側の空気の流量を制御対象(水分量の制御対象)とし、露点温度tdpvが目標露点温度tdspとなるように、制御対象に対する制御値を一定周期ごとに決定する制御対象制御値決定機能部301と、制御対象制御値決定機能部301によって決定された今回の制御値と前回の制御値とからフィードフォワード量を演算するフィードフォワード量演算機能部302と、制御対象の制御に関連してその設定値に対する計測値が変化する他の制御対象
(制御対象の制御値が前回の制御値から今回の制御値へと変更するのに関連して計測値が変化する他の制御対象)を関連制御対象とし、フィードフォワード量演算機能部302によって演算されたフィードフォワード量を補償量として、関連制御対象の制御の遅れを改善するフィードフォワード補償機能部303と、関連制御対象に対する制御値を決定する関連制御対象制御値決定機能部304とを備えている。
【0041】
図2にコントローラ300Aにおける制御対象制御値決定機能部301、フィードフォワード量演算機能部302、フィードフォワード補償機能部303および関連制御対象制御値決定機能部304の要部の構成を示す。
【0042】
制御対象制御値決定機能部301はフィードバック制御部(FB制御部)FB0を有している。フィードバック制御部FB0は、温度センサS1が検出する露点温度tdpvと予め定められている目標露点温度tdspとを入力とし、露点温度tdpvを目標露点温度tdspに一致させるような制御値(制御対象に対する制御値)を生成する。この場合、制御対象に対する制御値として、再生ファン1に対する再生ファンINV出力を生成する。
【0043】
関連制御対象制御値決定機能部304はフィードバック制御部(FB制御部)FB1〜FB4を有している。フィードバック制御部FB1は、温度センサS2が検出する予冷コイル出口温度tspvと予め定められている予冷コイル出口温度設定値tsspとを入力とし、予冷コイル出口温度tspvを予冷コイル出口温度設定値tsspに一致させるような制御値(関連制御対象に対する制御値)を生成する。この場合、関連制御対象に対する制御値として、予冷コイル4に対する予冷コイルバルブ開度出力を生成する。
【0044】
フィードバック制御部FB2は、温度センサS3が検出する再生コイル出口温度tr1pvと予め定められている再生コイル出口温度設定値tr1spとを入力とし、再生コイル出口温度tr1pvを再生コイル出口温度設定値tr1spに一致させるような制御値(関連制御対象に対する制御値)を生成する。この場合、関連制御対象に対する制御値として、再生コイル5に対する再生コイルバルブ開度出力を生成する。
【0045】
フィードバック制御部FB3は、温度センサS4が検出するロータ再生側出口温度tr2pvと予め定められているロータ再生側出口温度設定値tr2spとを入力とし、ロータ再生側出口温度tr2pvをロータ再生側出口温度設定値tr2spに一致させるような制御値(関連制御対象に対する制御値)を生成する。この場合、関連制御対象に対する制御値として、デシカントロータ3に対するロータINV出力を生成する。
【0046】
フィードバック制御部FB4は、圧力センサS5が計測する給気ダクト圧Pspvと予め定められている給気ダクト圧設定値Psspとを入力とし、給気ダクト圧Pspvを給気ダクト圧設定値Psspに一致させるような制御値(関連制御対象に対する制御値)を生成する。この場合、関連制御対象に対する制御値として、給気ファン2に対する給気ファンINV出力を生成する。
【0047】
フィードフォワード量演算機能部302はフィードフォワード量演算部(FF演算部)FFCを有している。フィードフォワード量演算部FFCは、制御対象制御値決定機能部301からの今回の再生ファンINV出力と前回の再生ファンINV出力とからフィードフォワード量を演算する。
【0048】
例えば、例aとして、フィードフォワード量演算部FFCが演算するフィードフォワード量をFF_aとした場合、FF_a=今回の再生ファンINV出力/前回の再生ファンINV出力として、フィードフォワード量FF_aを求める。また、例bとして、フィードフォワード量演算部FFCが演算するフィードフォワード量をFF_bとした場合、FF_b=(今回の再生ファンINV出力−前回の再生ファンINV出力)÷前回の再生ファンINV出力×100%として、フィードフォワード量FF_bを求める。
【0049】
フィードフォワード補償機能部303はフィードフォワード補償部(FF補償部)FF1〜FF4を有している。フィードフォワード補償部FF1は、フィードフォワード量演算機能部302からのフィードフォワード量を補償量として、関連制御対象制御値決定機能部304におけるフィードバック制御部FB1からの予冷コイル4に対する予冷コイルバルブ開度出力(%)を補償する。例えば、上記例aの場合、予冷コイルバルブ開度出力(FF補償後)=予冷コイルバルブ開度出力(FF補償前)×FF_aとし、上記例bの場合、予冷コイルバルブ開度出力(FF補償後)=予冷コイルバルブ開度出力(FF補償前)+FF_bとする。
【0050】
フィードフォワード補償部FF2は、フィードフォワード量演算機能部302からのフィードフォワード量を補償量として、関連制御対象制御値決定機能部304におけるフィードバック制御部FB2からの再生コイル5に対する再生コイルバルブ開度出力(%)を補償する。例えば、上記例aの場合、再生コイルバルブ開度出力(FF補償後)=再生コイルバルブ開度出力(FF補償前)×FF_aとし、上記例bの場合、再生コイルバルブ開度出力(FF補償後)=予冷コイルバルブ開度出力(FF補償前)+FF_bとする。
【0051】
フィードフォワード補償部FF3は、フィードフォワード量演算機能部302からのフィードフォワード量を補償量として、関連制御対象制御値決定機能部304におけるフィードバック制御部FB3からのデシカントロータ3に対するロータINV出力(%)を補償する。例えば、上記例aの場合、ロータINV出力(FF補償後)=ロータINV出力(FF補償前)×FF_aとし、上記例bの場合、ロータINV出力(FF補償後)=ロータINV出力(FF補償前)+FF_bとする。
【0052】
フィードフォワード補償部FF4は、フィードフォワード量演算機能部302からのフィードフォワード量を補償量として、関連制御対象制御値決定機能部304におけるフィードバック制御部FB4からの給気ファン2に対する給気ファンINV出力(%)を補償する。例えば、上記例aの場合、給気ファンINV出力(FF補償後)=給気ファンINV出力(FF補償前)×FF_aとし、上記例bの場合、給気ファンINV出力(FF補償後)=給気ファンINV出力(FF補償前)+FF_bとする。
【0053】
〔除湿負荷が急上昇した場合の動作〕
このデシカント空調システムにおいて、除湿負荷が低く制御が安定している状態(再生ファン1の回転数が低い状態)で、除湿負荷が急上昇した場合、露点温度制御によって再生側の空気の流量が増加する。
【0054】
この場合、コントローラ300Aは、露点温度tdpvと目標露点温度tdspとが一致するように再生ファンINV出力を決定するが、この決定した今回の再生ファンINV出力と前回の再生ファンINV出力とからフィードフォワード量を演算し、この演算したフィードフォワード量を補償量として、再生コイルバルブ開度出力、ロータINV出力、給気ファンINV出力、予冷コイルバルブ開度出力を制御値とする関連制御対象の制御の遅れを改善する。これにより、関連制御対象の制御(再生コイル出口温度制御,ロータ再生側出口温度制御,圧力一定制御,予冷コイル出口温度制御)が速まり、露点温度tdpvが目標露点温度tdspへ短時間で追従するようになる。以下、この点について、具体的に説明する。
【0055】
〔露点温度制御〕
再生ファン1の回転数が低い状態で、除湿負荷が急上昇し、目標露点温度tdspに対して露点温度tdpvが急上昇すると(
図3に示すt1点)、露点温度制御のフィードバックによって、再生ファンINV出力が上昇する。これにより、再生側の空気の流量が増加し始める。
【0056】
〔再生コイル出口温度制御〕
再生ファンINV出力が上昇し始めると、今回の再生ファンINV出力と前回の再生ファンINV出力とからフィードフォワード量が演算され(FF演算部FFC)、この演算されたフィードフォワード量によって再生コイル5に対する再生コイルバルブ開度出力が補償される(FF補償部FF2)。
【0057】
これにより、再生ファンINV出力が上昇し始めてから(
図4に示すt1点)、再生コイルバルブ開度出力が増加し始めるまで(
図4に示すt2点)のタイムラグτ1がτ1≒0となる。このため、再生コイルバルブ開度出力の増加開始が早くなり、再生コイル出口温度tr1pvの上昇開始が早くなり、再生コイル5の加熱能力が増加するまでの時間T1が短くなる。
【0058】
〔ロータ再生側出口温度制御〕
再生ファンINV出力が上昇し始めると、今回の再生ファンINV出力と前回の再生ファンINV出力とからフィードフォワード量が演算され(FF演算部FFC)、この演算されたフィードフォワード量によってデシカントロータ3に対するロータINV出力が補償される(FF補償部FF3)。
【0059】
これにより、再生ファンINV出力が上昇し始めてから(
図5に示すt1点)、ロータINV出力が上昇し始めるまで(
図5に示すt2点)のタイムラグτ2がτ2≒0となる。このため、ロータINV出力の上昇開始が早くなり、ロータ再生側出口温度tr2pvの下降開始が早くなり、デシカントロータ3の除湿能力が最適化されるまでの時間T2が短くなる。
【0060】
〔圧力一定制御〕
再生ファンINV出力が上昇し始めると、今回の再生ファンINV出力と前回の再生ファンINV出力とからフィードフォワード量が演算され(FF演算部FFC)、この演算されたフィードフォワード量によって給気ファン2に対する給気ファンINV出力が補償される(FF補償部FF4)。
【0061】
これにより、再生ファンINV出力が上昇し始めてから(
図6に示すt1点)、給気ファンINV出力が上昇し始めるまで(
図6に示すt2点)のタイムラグτ3がτ3≒0となる。このため、給気ファンINV出力の上昇開始が早くなり、給気ダクト圧Pspvの上昇開始が早くなり、処理側の空気の流量(外気の取入量)が増加するまでの時間T3が短くなる。
【0062】
〔予冷コイル出口温度制御〕
再生ファンINV出力が上昇し始めると、今回の再生ファンINV出力と前回の再生ファンINV出力とからフィードフォワード量が演算され(FF演算部FFC)、この演算されたフィードフォワード量によって予冷コイル4に対する予冷コイルバルブ開度出力が補償される(FF補償部FF1)。
【0063】
これにより、再生ファンINV出力が上昇し始めてから(
図7に示すt1点)、予冷コイルバルブ開度出力が増加し始めるまで(
図7に示すt2点)のタイムラグτ4がτ4≒0となる。このため、予冷コイルバルブ開度出力の増加開始が早くなり、予冷コイル出口温度tspvの下降開始が早くなり、予冷コイル4の能力が増加するまでの時間T4が短くなる。
【0064】
このようにして、本実施の形態では、露点温度制御によって再生側の空気の流量が増加した場合、この再生側の空気の流量の増加分をフィードフォワード量として、関連制御対象の制御値である再生コイルバルブ開度出力、ロータINV出力、給気ファンINV出力、予冷コイルバルブ開度出力を補償することによって、再生コイル5の加熱能力、デシカントロータ3の除湿能力、処理側の空気の流量(外気の取入量)、予冷コイル4の冷却能力が素早く調整されるものとなり、
図3に示されるように、上昇した露点温度tdpvが目標露点温度tdspに追従するまでの時間Tが短くなる。
【0065】
なお、この実施の形態1では、圧力一定制御において、ドライエリア200への給気SAの圧力を給気ダクト圧Pspvとして計測し、この給気ダクト圧Pspvを給気ダクト圧設定値Psspに一致させるようにしたが、例えばデシカント空調機100内の圧力(空調機内圧)を計測し、その計測圧を一定に制御するようにしたり、ドライエリア200内の圧力(室圧)を計測し、その計測圧を一定に制御するようにしたりしてもよい。
【0066】
〔実施の形態2:ワンウェイ型デシカント空調機〕
実施の形態1では、デシカント空調機を循環型デシカント空調機とした場合を例にとって説明したが、実施の形態2ではデシカント空調機をワンウェイ型デシカント空調機とする。
図8に実施の形態2のデシカント空調システムを示す。
【0067】
この実施の形態2のデシカント空調システムでは、デシカント空調機(ワンウェイ型デシカント空調機)を符号101で示し、実施の形態1におけるデシカント空調機(循環型デシカント空調機)100と区別する。また、この実施の形態2のデシカント空調システムにおいて、コントローラを符号300Bで示し、実施の形態1におけるコントローラ300Aと区別する。
【0068】
コントローラ300Bは、実施の形態1におけるコントローラ300Aと同様、制御対象制御値決定機能部301、フィードフォワード量演算機能部302、フィードフォワード補償機能部303および関連制御対象制御値決定機能部304を備えているが、
図9に示すように、フィードフォワード補償機能部303はフィードフォワード補償部FF2のみとされ、関連制御対象制御値決定機能部304はフィードバック制御部FB1およびFB2のみとされている。
【0069】
すなわち、露点温度制御および予冷コイル出口温度制御はフィードバック制御によって行われ、再生コイル出口温度制御はフィードフォワード補償を施して行われるものとされている。また、デシカントロータ3に対してはロータINV出力が固定値(定格値)として与えられ、給気ファン2に対しては給気ファンINV出力が固定値(定格値)として与えられ、ロータ回転数一定制御、外気取入量一定制御が行われるものとされている。
【0070】
この実施の形態2のデシカント空調システムでは、再生コイル出口温度制御がフィードフォワード補償を施して行われるので、
図4に示されるように、再生ファンINV出力が上昇し始めてから(
図4に示すt1点)、再生コイルバルブ開度出力が増加し始めるまで(
図4に示すt2点)のタイムラグτ1がτ1≒0となる。このため、再生コイルバルブ開度出力の増加開始が早くなり、再生コイル出口温度tr1pvの上昇開始が早くなり、再生コイル5の加熱能力が増加するまでの時間T1が短くなる。
【0071】
これにより、再生ファン1の回転数が低い状態で、除湿負荷が急上昇した場合、再生コイル5の加熱能力が素早く調整されるものとなり、
図3に示されるように、上昇した露点温度tdpvが目標露点温度tdspに追従するまでの時間Tが短くなる。
【0072】
〔実施の形態3〕
実施の形態3でも、デシカント空調機をワンウェイ型デシカント空調機とする。
図10にデシカント空調機をワンウェイ型デシカント空調機とした場合の実施の形態3のデシカント空調システムを示す。この例において、デシカント空調機は符号102で示し、実施の形態2におけるデシカント空調機101と区別する。また、コントローラを符号300Cで示し、実施の形態2におけるコントローラ300Bと区別する。
【0073】
コントローラ300Cは、実施の形態1におけるコントローラ300Aと同様、制御対象制御値決定機能部301、フィードフォワード量演算機能部302、フィードフォワード補償機能部303および関連制御対象制御値決定機能部304を備えているが、
図11に示すように、フィードフォワード補償機能部303はフィードフォワード補償部FF2,FF3のみとされ、関連制御対象制御値決定機能部304はフィードバック制御部FB1,FB2およびFB3のみとされているも。
【0074】
すなわち、露点温度制御および予冷コイル出口温度制御はフィードバック制御によって行われ、再生コイル出口温度制御およびロータ再生側出口温度制御はフィードフォワード補償を施して行われるものとされている。また、給気ファン2に対しては給気ファンINV出力が固定値(定格値)として与えられ、外気取入量一定制御が行われるものとされている。
【0075】
この実施の形態3のデシカント空調システムでは、再生コイル出口温度制御がフィードフォワード補償を施して行われるので、
図4に示されるように、再生ファンINV出力が上昇し始めてから(
図4に示すt1点)、再生コイルバルブ開度出力が増加し始めるまで(
図4に示すt2点)のタイムラグτ1がτ1≒0となる。このため、再生コイルバルブ開度出力の増加開始が早くなり、再生コイル出口温度tr1pvの上昇開始が早くなり、再生コイル5の能力が増加するまでの時間T1が短くなる。
【0076】
また、ロータ再生側出口温度制御がフィードフォワード補償を施して行われるので、
図5に示されるように、再生ファンINV出力が上昇し始めてから(
図5に示すt1点)、ロータINV出力が上昇し始めるまで(
図5に示すt2点)のタイムラグτ2がτ2≒0となる。このため、ロータINV出力の上昇開始が早くなり、ロータ再生側出口温度tr2pvの下降開始が早くなり、デシカントロータ3の除湿能力が最適化されるまでの時間T2が短くなる。
【0077】
これにより、再生ファン1の回転数が低い状態で、除湿負荷が急上昇した場合、再生コイル5の加熱能力およびデシカントロータ3の除湿能力が素早く調整されるものとなり、
図3に示されるように、上昇した露点温度tdpvが目標露点温度tdspに追従するまでの時間Tが短くなる。
【0078】
なお、上述した各実施の形態では、露点温度tdpvを目標露点温度tdspに一致させるように再生ファン1の回転数を制御するようにしたが、デシカントロータ3の回転数や再生コイル5の加熱能力を制御するようにしてもよい。この場合、デシカントロータ3の回転数や再生コイル5の加熱能力が本発明でいう制御対象となり、この制御対象の制御に関連してその設定値に対する計測値が変化する他の制御対象が関連制御対象となる。
【0079】
また、上述した各実施の形態では、除湿負荷が急上昇した場合の動作について説明したが、除湿負荷が急低下した場合にも、上述と同様にして、今回の再生ファンINV出力と前回の再生ファンINV出力とからフィードフォワード量が演算され、この演算されたフィードフォワード量を補償量として関連制御対象の制御の遅れが改善されるので、露点温度tdpvが目標露点温度tdspへ短時間で追従するようになる。
【0080】
また、上述した各実施の形態において、給気ファン2は、必ずしもデシカントロータ3の前段(処理側の空気の入口側)に設けなくてもよく、デシカントロータ3の後段(処理側の空気の出口側)に設けるようにしてもよい。同様に、再生ファン1についても、必ずしもデシカントロータ3の後段(再生側の空気の出口側)に設けなくてもよく、デシカントロータ3の前段(再生側の空気の入口側)に設けるようにしてもよい。
【0081】
また、上述した各実施の形態では、デシカント空調機とコントローラとを分離したタイプとしたが、コントローラをデシカント空調機に組み込んでもよい。本発明のデシカント空調システムは、デシカント空調機とコントローラとドライエリアとを合わせたシステムとして構成されていてもよいし、デシカント空調機とコントローラと合わせシステムとして構成されていてもよい。また、コントローラを組み込んだデシカント空調機として構成されていてもよい。
【0082】
また、上述した各実施の形態では、再生側の空気を加熱する加熱装置を温水コイルとし、処理側の乾燥した空気を冷却する冷却装置を冷水コイルとしたが、加熱装置や冷却装置は温水コイルや冷水コイルに限られるものではない。また、
図12に実施の形態1(
図1)の変形例を示すように、ドライエリア200からの還気RAを処理側の空気に混合するようにしてもよい。
【0083】
また、上述し各実施の形態では、給気SAの露点温度を検出するようにしたが、この露点温度の検出点は必ずしも給気SAとしなくてもよく、還気RAとするなどしてもよい。すなわち、吸湿後の処理側の乾燥した空気(乾燥空気)が流れる流路中であれば、どの点の露点温度を検出するようにしてもよい。また、必ずしも露点温度を検出するようにしなくてもよく、湿度を検出するようにしてもよい。湿度を検出する場合、相対湿度を検出するようにしてもよく、絶対湿度を検出するようにしてもよい。
【0084】
また、上述した各実施の形態では、デシカントロータを1段としたが、デシカントロータを複数段配置し、この複数段配置したデシカントロータによって空気を連続的に処理するようにしてもよい。例えば、デシカントロータを2段構成とした場合、処理側では第1の冷水コイル、第1のデシカントロータ、第2の冷水コイル、第2のデシカントロータの順に、再生側では第1の温水コイル、第2のデシカントロータ、第2の温水コイル、第1のデシカントロータの順に、空気を連続的に通過させるようにする。
【0085】
また、上述した各実施の形態において、再生側の空気として、デシカントロータ通過後の処理側の空気の一部を利用してもよいし、デシカントロータ通過後の処理側の空気の一部を外気または還気と混合したものを利用してもよい。また、再生側の空気として、デシカントロータ通過後の再生側の空気の一部を利用してもよいし、デシカントロータ通過後の再生側の空気を外気または還気と混合したものを利用してもよい。