特許第5894443号(P5894443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5894443-重荷重用タイヤ 図000004
  • 特許5894443-重荷重用タイヤ 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5894443
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】重荷重用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20160317BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20160317BHJP
   B60C 11/01 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
   B60C11/00 F
   B60C11/03 100A
   B60C11/01 B
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-7426(P2012-7426)
(22)【出願日】2012年1月17日
(65)【公開番号】特開2013-147076(P2013-147076A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2014年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】棚田 健一郎
【審査官】 八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−254246(JP,A)
【文献】 特開2006−248391(JP,A)
【文献】 特開2010−120538(JP,A)
【文献】 特表2002−512575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00−19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部からサイドウォール部をへてビード部に至るカーカスと、該カーカスのタイヤ半径方向外側かつトレッド部内部に配されたベルト層とを有する重荷重用タイヤであって、
前記トレッド部には、最もトレッド端側をタイヤ周方向に連続してのびる一対のショルダー補助溝と、該ショルダー補助溝のタイヤ軸方向の内側かつタイヤ赤道のタイヤ軸方向の両外側に配されタイヤ周方向に連続してのびる一対のショルダー主溝とが設けられることにより、
前記一対のショルダー主溝間のクラウン陸部と、
前記ショルダー主溝と前記ショルダー補助溝との間の一対のショルダー陸部と、
前記ショルダー補助溝の外側のショルダー補助リブとが区分され、
正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷である正規状態のタイヤ回転軸を含む子午線断面において、
タイヤ赤道から前記ショルダー陸部のタイヤ軸方向の外縁までのタイヤ軸方向距離であるトレッド本体半幅TWと、タイヤ赤道から前記ベルト層のタイヤ軸方向の外端までのタイヤ軸方向の距離であるベルト半幅BWとの比BW/TWが、0.95〜1.00であり、
前記ショルダー陸部の接地面の輪郭線の曲率半径TR2と、前記クラウン陸部の接地面の輪郭線の曲率半径TR1との比TR2/TR1が、1.25以上かつ2.00以下であり、
前記ショルダー補助リブのタイヤ軸方向の接地幅である補助リブ接地幅R1Wと、前記ショルダー陸部のタイヤ軸方向の接地幅であるショルダー接地幅R2Wとの比R1W/R2Wが、0.1〜0.2であり、
前記ショルダー補助リブの接地面から前記ショルダー補助溝の溝底までの溝深さd1と、前記ショルダー主溝の溝深さd2との比d1/d2が、0.6以上1.0以下であり、
しかも、前記ショルダー補助リブの接地面は、前記ショルダー陸部の接地面をタイヤ軸方向外側に延長した仮想面よりもタイヤ半径方向内側に位置し、かつ、そのタイヤ半径方向の距離t1が、1.5〜3.5mmであることを特徴とする重荷重用タイヤ。
【請求項2】
前記ベルト層のタイヤ軸方向の前記外端は、前記ショルダー補助溝の溝中心線が溝底と交わる溝中心点よりもタイヤ軸方向内側にある請求項1記載の重荷重用タイヤ。
【請求項3】
前記ショルダー陸部の前記外縁と、前記クラウン陸部の接地面の輪郭線の仮想延長線とのタイヤ半径方向の距離t2が1.5mm以下である請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項4】
前記ショルダー接地幅R2Wと、前記トレッド本体半幅TWとの比R2W/TWが、0.32〜0.48である請求項1乃至3のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
【請求項5】
前記ショルダー補助溝の溝深さd1と、前記ショルダー主溝の溝深さd2との比d1/d2が1.0未満である請求項1乃至4のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショルダー部の肩落ち摩耗及び段付き摩耗を抑制しうる重荷重用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
重荷重用タイヤ、特に車両の操舵輪に装着されるタイヤは、トレッド部のショルダー部に摩耗が集中し易く、肩落ち摩耗と呼ばれる偏摩耗が生じやすい。この肩落ち摩耗は、ショルダー部に作用する接地圧がトレッド端側に近付く程小さくなるために、ショルダー部の接地面が路面から浮き上がり、それに伴い路面とショルダー部の接地面との間に滑りが生じて、摩耗が発生すると考えられている。
【0003】
上述のような肩落ち摩耗を抑制するために、トレッド部の内部に配置されているベルト層の幅を大きくする方法や、ショルダー部に配されるリブ又はブロックの剛性を高める方法が提案されている。また、例えば下記特許文献1では、ショルダー部の接地面形状を改善することにより、肩落ち摩耗を抑制した重荷重用タイヤが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−182099号公報
【0005】
しかしながら、これらの重荷重用タイヤは、トレッド端付近の接地圧が大きくなるため、該トレッド端近傍が段差状に摩耗する段付き摩耗が発生し易い。この段付き摩耗は、トレッド端近傍に作用する大きな接地圧が原因であると考えられている。即ち、ショルダー部の肩落ち摩耗及び段付き摩耗は、発生原因が二律背反の関係にある。このため、これら二つの偏摩耗を同時に抑制することは困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、ショルダー部に、摩耗犠牲成分としてショルダー補助リブを設け、さらにベルト層のタイヤ軸方向幅、トレッド部の輪郭線の曲率半径、ショルダー補助リブの接地幅、ショルダー補助溝の溝深さ、及びショルダー補助リブの外面の位置等を一定範囲に規定することを基本として、ショルダー部の肩落ち摩耗及び段付き摩耗をともに抑制しうる重荷重用タイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のうち、請求項1記載の発明は、トレッド部からサイドウォール部をへてビード部に至るカーカスと、該カーカスのタイヤ半径方向外側かつトレッド部内部に配されたベルト層とを有する重荷重用タイヤであって、前記トレッド部には、最もトレッド端側をタイヤ周方向に連続してのびる一対のショルダー補助溝と、該ショルダー補助溝のタイヤ軸方向の内側かつタイヤ赤道のタイヤ軸方向の両外側に配されタイヤ周方向に連続してのびる一対のショルダー主溝とが設けられることにより、前記一対のショルダー主溝間のクラウン陸部と、前記ショルダー主溝と前記ショルダー補助溝との間の一対のショルダー陸部と、前記ショルダー補助溝の外側のショルダー補助リブとが区分され、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷である正規状態のタイヤ回転軸を含む子午線断面において、タイヤ赤道から前記ショルダー陸部のタイヤ軸方向の外縁までのタイヤ軸方向距離であるトレッド本体半幅TWと、タイヤ赤道から前記ベルト層のタイヤ軸方向の外端までのタイヤ軸方向の距離であるベルト半幅BWとの比BW/TWが、0.95〜1.00であり、前記ショルダー陸部の接地面の輪郭線の曲率半径TR2と、前記クラウン陸部の接地面の輪郭線の曲率半径TR1との比TR2/TR1が、1.25以上かつ2.00以下であり、前記ショルダー補助リブのタイヤ軸方向の接地幅である補助リブ接地幅R1Wと、前記ショルダー陸部のタイヤ軸方向の接地幅であるショルダー接地幅R2Wとの比R1W/R2Wが、0.1〜0.2であり、前記ショルダー補助リブの接地面から前記ショルダー補助溝の溝底までの溝深さd1と、前記ショルダー主溝の溝深さd2との比d1/d2が、0.6以上1.0以下であり、しかも、前記ショルダー補助リブの接地面は、前記ショルダー陸部の接地面をタイヤ軸方向外側に延長した仮想面よりもタイヤ半径方向内側に位置し、かつ、そのタイヤ半径方向の距離t1が、1.5〜3.5mmであることを特徴とする。


【0008】
また請求項2記載の発明は、前記ベルト層のタイヤ軸方向の前記外端は、前記ショルダー補助溝の溝中心線が溝底と交わる溝中心点よりもタイヤ軸方向内側にある請求項1記載の重荷重用タイヤである。
【0009】
また請求項3記載の発明は、前記ショルダー陸部の前記外縁と、前記クラウン陸部の接地面の輪郭線の仮想延長線とのタイヤ半径方向の距離t2が1.5mm以下である請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤである。
【0010】
また請求項4記載の発明は、前記ショルダー接地幅R2Wと、前記トレッド本体半幅TWとの比R2W/TWが、0.32〜0.48である請求項1乃至3のいずれかに記載の重荷重用タイヤである。
【0011】
また請求項5記載の発明は、前記ショルダー補助溝の溝深さd1と、前記ショルダー主溝の溝深さd2との比d1/d2が1.0未満である請求項1乃至4のいずれかに記載の重荷重用タイヤである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の重荷重用タイヤは、トレッド端側に、特定形状のショルダー補助リブが設けられる。このショルダー補助リブは、ショルダー陸部に作用する接地圧の上昇を抑えて段付き摩耗を抑制する。また、ショルダー補助リブは、自らに摩耗を集中させるいわゆる摩耗犠牲成分となり、ショルダー陸部に肩落ち摩耗が生じるのを防止できる。
【0013】
さらに、本発明の重荷重用タイヤは、ベルト層のタイヤ軸方向幅、トレッド部の輪郭線の曲率半径、ショルダー補助リブの接地幅、ショルダー補助溝の溝深さ、及びショルダー補助リブの外面の位置が一定範囲に規定されている。これにより、ショルダー陸部に作用する接地圧がより一層適正化され、ショルダー部の肩落ち摩耗及び段付き摩耗がより効果的に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の重荷重用タイヤの一実施形態を示す断面図である。
図2図1のトレッド部の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は本実施形態の重荷重用タイヤ1の正規状態におけるタイヤ軸を含むタイヤ子午線断面図である。ここで、正規状態とは、タイヤを正規リムにリム組みし、かつ、正規内圧を充填した無負荷の状態とする。以下、特に言及しない場合、タイヤの各部の寸法はこの正規状態で測定された値とする。
【0016】
また前記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、或いはETRTOであれば "Measuring Rim"を意味する。さらに、前記「正規内圧」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE"を意味する。
【0017】
また、本明細書中の「接地面」とは、前記正規状態のタイヤ1に、正規荷重を付加しキャンバー角0度で平面に接地させた際、路面と接触するトレッド部2の外面2Sのことを意味する。さらに、前記正規荷重とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば"最大負荷能力"、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY"とする。
【0018】
図1に示されるように、本実施形態の重荷重用タイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、このカーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内部に配されたベルト層7と、このベルト層7のタイヤ軸方向の両外端部と前記カーカス6との間の隔たりを埋めるベルトクッションゴム9と、前記ビードコア5からタイヤ半径方向外方に向かって先細状にのびるビードエーペックスゴム8とを具え、本実施形態ではトラック用の重荷重用タイヤが示されている。
【0019】
前記カーカス6は、本実施形態では1枚のカーカスプライ6Aにより構成される。このカーカスプライ6Aは、前記ビードコア5、5間を跨る本体部6aと、該本体部6aに連なりかつビードコア5の周りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返された折返し部6bとを具える。また、カーカスプライ6Aのカーカスコードとしては、スチールコードが好適に採用される。前記カーカスコードは、例えば、タイヤ赤道Cに対して例えば70〜90°の角度で配列される。
【0020】
前記ベルト層7は、タイヤ半径方向内外に配される合計4枚のベルトプライ7A〜7Dで構成され、例えば最もタイヤ軸方向幅が大きいベルトプライ7Bが、タイヤ半径方向内側から2層目に配置されている。各ベルトプライ7A〜7Dは、タイヤ赤道Cに対して15〜45°の角度で傾けられた例えばスチールコード等の高弾性のベルトコードを含む。また、各ベルトプライ7A〜7Dは、ベルトコードが互いに交差する向きに重ねられている。これにより、ベルト層7は、トレッド部2の略全幅に亘ってカーカス6をタガ締めし、トレッド部2の剛性が高められる。
【0021】
前記ベルトクッションゴム9は、ベルト層7のタイヤ軸方向の外端7eの位置で最大厚さを有し、この最大厚さ位置からタイヤ軸方向内外に向かって、厚さを漸減させる断面略三角形状をなす。これにより、前記外端7eでの応力集中が緩和され、ベルト層7及びカーカス6のプライ剥離が抑制される。
【0022】
前記ビードエーペックスゴム8は、硬質のゴムからなり、前記本体部6aと折返し部6bとの間に配され、かつビードコア5からタイヤ半径方向外方に向かって先細状にのびる。これにより、ビード部4及びサイドウォール部3が補強される。
【0023】
図2には、図1のトレッド部2の部分拡大図が示される。図2に示されるように、トレッド部2には、一対のショルダー補助溝10、一対のショルダー主溝11、及び一対のクラウン主溝12が設けられる。これにより、トレッド部2には、一対のショルダー主溝11間のクラウン陸部13、ショルダー主溝11とショルダー補助溝10との間のショルダー陸部14、及び、ショルダー補助溝10のタイヤ軸方向外側に配されたショルダー補助リブ15が区分される。
【0024】
前記クラウン主溝12は、タイヤ赤道Cの両側に配された一対からなる。また、前記ショルダー主溝11は、クラウン主溝12の外側に配された一対からなる。これらの各主溝11、12は、直線状又はジグザグ状に形成される。各主溝11、12は、十分な排水性を得るために、好ましくは、溝幅GWが6mm以上、かつ、溝深さd2が8mm以上であるのが望ましい。
【0025】
前記ショルダー補助溝10は、ショルダー主溝11の外側かつトレッド端Teの内側に配されている。これにより、ショルダー補助溝10とトレッド端Teとの間で、剛性の小さい小幅のショルダー補助リブ15が区分される。
【0026】
本発明では、先ず、タイヤ赤道Cからショルダー陸部14のタイヤ軸方向の外縁14eまでのタイヤ軸方向距離であるトレッド本体半幅TWと、タイヤ赤道Cからベルト層7のタイヤ軸方向の外端7eまでのタイヤ軸方向の距離であるベルト半幅BWとの比BW/TWが、0.95〜1.00に規制される。
【0027】
発明者らの種々の実験の結果、前記比BW/TWが0.95を下回ると、ショルダー陸部14の外縁14e付近の剛性が小さくなって接地圧が低下するため、肩落ち摩耗が発生するおそれがあることが判明した。このため、前記比BW/TWは0.95以上に設定されるが、より好ましくは0.96以上、さらに好ましくは0.97以上に設定されるのが望ましい。
【0028】
他方、前記比BW/TWが1.00を超えると、ベルト層7の外端7eがショルダー補助溝10又はショルダー補助リブ15のタイヤ半径方向内方に至る。このような態様では、ショルダー補助リブ15に接地荷重が作用した場合、ベルト層7の外端7eに大きな剪段荷重が作用し、プライ剥離やコードルースが発生するおそれがあるため好ましくない。このような観点から、前記比BW/TWは1.00以下に設定されるが、より好ましくは0.99以下に設定されるのが望ましい。
【0029】
特に、トレッド部2のトレッド幅方向の剛性は、ショルダー補助溝10の溝中心線L1が溝底と交わる溝中心点P1を基準として、大きく変化する傾向がある。従って、トレッド剛性の大きな変化を防止するために、ベルト層7の外端7eは、ショルダー補助溝10の前記溝中心点P1よりもタイヤ軸方向内側に位置させるのが望ましい。
【0030】
なお、ショルダー陸部14のタイヤ軸方向の接地幅であるショルダー接地幅R2Wは、小さくなると、ショルダー陸部14の剛性が小さくなるため、他の陸部と比較して摩耗が早く進行し、肩落ち摩耗の原因となるおそれがある。逆に、ショルダー接地幅R2Wが大きくなると、最も大きな接地圧が作用するクラウン陸部13の接地幅が相対的に小さくなり、直進時の操縦安定性が低下するおそれがある。このような観点から、前記ショルダー接地幅R2Wと、前記トレッド本体半幅TWとの比R2W/TWは、好ましくは0.32以上、より好ましくは0.36以上が望ましく、また好ましくは0.48以下、より好ましくは0.44以下が望ましい。
【0031】
次に、本発明では、ショルダー陸部14の接地面の輪郭線の曲率半径TR2と、クラウン陸部13の接地面の輪郭線の曲率半径TR1との比TR2/TR1が1.0よりも大きくかつ2.0以下に規制される。前記各輪郭線は、いずれもタイヤ半径方向外側に滑らかに凸となる円弧からなる。このような規定により、ショルダー陸部14の接地面の曲率半径TR2がクラウン陸部13のそれに比して大きくなり、平坦化される。これにより、クラウン陸部13及びショルダー陸部14の各接地面の輪郭線が共通の単一の円弧で形成される場合に比して、ショルダー陸部14のタイヤ軸方向外側の接地圧が適度に大きくなる。このため、ショルダー陸部14と路面との滑りが小さくなり、肩落ち摩耗が抑制される。前記比TR2/TR1は、とりわけ1.3以上が望ましい。逆に、前記比TR2/TR1が大きくなると、ショルダー陸部14のタイヤ軸方向外側の接地圧が大きくなり過ぎ、ショルダー陸部14に段付き摩耗が発生するおそれがある。このような観点から、前記比TR2/TR1は2.0以下に設定されるが、より好ましくは1.5以下に設定されるのが望ましい。
【0032】
ここで、上記ショルダー陸部14の接地面の輪郭線が複合円弧からなる場合、ショルダー陸部14の前記曲率半径TR2は、外縁14e、内縁14i及びこれらの中間点(溝のある位置を除く)の3点を通る3点円弧が用いられる。同様に、クラウン陸部13の接地面の輪郭線が複合円弧からなる場合、クラウン陸部13の前記曲率半径TR1は、クラウン陸部13の外縁13e、13eと、タイヤ赤道Cの位置(溝がある場合はこれを避けて最もタイヤ赤道Cに近い位置)の3点を通る3点円弧が用いられる。
【0033】
なお、本実施形態のクラウン陸部13は、前記クラウン主溝12によって、タイヤ赤道Cを含むセンタークラウン陸部13Aと、クラウン主溝12とショルダー主溝11との間のサイドクラウン陸部13Bとに区分されているが、このような態様に限定されるものではない。
【0034】
上述のように、クラウン陸部13とショルダー陸部14とで接地面の曲率半径を異ならせた場合、ショルダー陸部14の外縁14eが、クラウン陸部13の接地面の輪郭線の仮想延長線13Lよりもタイヤ半径方向外側に大きくステップアップすると、前記外縁14eに作用する接地圧が大きくなり、段付き摩耗が発生するおそれがある。逆に前記外縁14eが、前記仮想延長線13Lよりもタイヤ半径方向内側に大きくステップダウンすると、前記外縁14eに作用する接地圧が小さくなり、肩落ち摩耗が発生するおそれがある。このような観点から、ショルダー陸部14の外縁14eと、クラウン陸部13の接地面の輪郭線の仮想延長線13Lとのタイヤ半径方向の距離t2は、1.5mm以下が望ましく、より好ましくは1.0mm以下が望ましい。
【0035】
上述のように、ショルダー陸部14を規制することにより、正規荷重が付加された状態において、ショルダー陸部14のタイヤ軸方向内側半分に作用する接地圧と、タイヤ軸方向外側半分に作用する接地圧との差が小さくなる。これによって、ショルダー陸部14の偏摩耗が抑制される。好適な実施形態では、ショルダー陸部14の中心線L2で隔てられた内側ショルダー陸部14Aの平均接地圧P1と、外側ショルダー陸部14Bの平均接地圧P2との比P2/P1は、好ましくは0.90以上、より好ましくは0.93以上が望ましく、また、好ましくは1.00以下、より好ましくは0.97以下が望ましい。
【0036】
次に、前記ショルダー補助リブ15は、ショルダー陸部14に作用する接地圧の上昇を抑えるとともに、段付き摩耗に関して摩耗犠牲成分として働く。例えば、直進時のように、ショルダー陸部14に作用する接地圧が小さい場合、肩落ち摩耗が剛性の小さいショルダー補助リブ15に集中し、ショルダー陸部14への肩落ち摩耗の発生が抑制される。また、旋回時等のように、トレッド部2のタイヤ軸方向外側の接地圧が大きくなる場合、ショルダー補助リブ15が荷重の一部を負担し、自らに段付き摩耗を集中させる一方、ショルダー陸部14に作用する接地圧を緩和してショルダー陸部14の段付き摩耗の発生を抑制する。
【0037】
上述の機能を確実に発揮させるために、ショルダー補助リブ15のタイヤ軸方向の接地幅である補助リブ接地幅R1Wと、ショルダー陸部14のタイヤ軸方向の接地幅であるショルダー接地幅R2Wとの比R1W/R2Wが0.1〜0.2の範囲に規制される。即ち、前記比R1W/R2Wが0.1未満の場合、摩耗犠牲成分としての効果が小さくなるおそれがある他、ショルダー補助リブ15の剛性が低下して早期に欠損するおそれがある。とりわけ、前記比R1W/R2Wは、0.13以上が望ましい。逆に、前記比R1W/R2Wが0.2を超える場合、相対的に前記ショルダー接地幅R2Wが小さくなり、特に旋回時の操縦安定性が低下するおそれがある。とりわけ、前記比R1W/R2Wは、より好ましくは0.17以下に設定されるのが望ましい。
【0038】
また、本発明では、ショルダー補助リブ15のタイヤ軸方向の剛性を適正化するために、ショルダー補助溝10の溝深さを一定範囲に限定する。即ち、ショルダー補助リブ15の接地面からショルダー補助溝10の溝底までの溝深さd1と、ショルダー主溝11の溝深さd2との比d1/d2が0.6以上1.0以下に限定される。
【0039】
前記比d1/d2が小さくなると、応力緩衝効果が小さくなってショルダー陸部14の接地圧が上昇するおそれがある。このような観点から、前記比d1/d2は、0.6以上に設定され、より好ましくは0.7以上に設定されるのが望ましい。逆に前記比d1/d2が大きくなると、ショルダー補助リブ15のタイヤ軸方向の剛性が低下して早期に欠損するおそれがある。このような観点から、前記比d1/d2は、1.0以下に設定され、より好ましくは1.0未満、さらに好ましくは0.9以下に設定されるのが望ましい。
【0040】
さらに、ショルダー補助リブ15の接地面は、ショルダー陸部14の接地面をタイヤ軸方向外側に仮想延長した仮想面14Lよりもタイヤ半径方向内側に位置するが、本発明では、ショルダー補助リブ15の接地面と仮想面14Lとのタイヤ半径方向の距離t1が1.5〜3.5mmに限定される。
【0041】
正規状態から正規荷重が負荷された場合、ショルダー補助リブ15は、ショルダー陸部14よりも小さい接地圧が接地し、ショルダー陸部14に作用する接地圧を緩和するが、前記距離t1が1.5mm未満になると、ショルダー陸部14の接地圧が小さくなり、ショルダー陸部14に肩落ち摩耗が発生するおそれがある。逆に、前記距離t1が3.5mmを超えると、ショルダー陸部14の接地圧の上昇を抑えることができず、ショルダー陸部14に段付き摩耗が発生するおそれがある他、ショルダー補助リブ15が接地せずに摩耗犠牲成分として機能しないおそれがある。このような観点から、前記タイヤ軸方向距離tは、より好ましくは1.5mm以上、さらに好ましくは2.0mm以上が望ましく、また、好ましくは3.0mm以下が望ましい。
【0042】
以上、本発明の重荷重用タイヤについて詳細に説明したが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施しうるのはいうまでもない。
【実施例】
【0043】
図1の基本構造をなすサイズ12R22.5の重荷重用タイヤが表1の仕様に基づき試作されるとともに、肩落ち摩耗、段付き摩耗、ショルダー補助リブの欠けの有無について評価された。また、従来例として、ショルダー補助リブを有しない重荷重用タイヤについても、同様の評価がされた。評価方法は以下の通りである。
【0044】
<耐肩落ち摩耗性、耐段付き摩耗性>
各試供タイヤをリム8.25×22.5に装着し、内圧800kPa、10tトラックの前輪に装着し、10t積載の状態にて、クラウン陸部が30%摩耗するまで走行させ、走行後のショルダー陸部の肩落ち摩耗、段付き摩耗が肉眼で検査された。評価は最高点を5点とする5段階評価であり、4点以上が合格レベルである。
【0045】
<ショルダー補助リブ及びショルダー補助溝の損傷>
前記条件にてテスト車両を走行させた後、ショルダー補助リブ及びショルダー補助溝の損傷の有無について、肉眼で検査された。評価は以下の通りである。
○:欠けが無く良好
×1:ショルダー補助リブに欠けが発生している
×2:ショルダー補助溝にクラックが発生している

テストの結果は表1に示される。
【0046】
【表1】
【0047】
表1から明らかなように、実施例の重荷重用タイヤは、耐肩落ち摩耗性及び耐段付き摩耗性が比較例に比べて有意に向上していることが確認できる。
【符号の説明】
【0048】
6 カーカス
7 ベルト層
8 ビードエーペックスゴム
9 ベルトクッションゴム
10 ショルダー補助溝
11 ショルダー主溝
12 クラウン主溝
13 クラウン陸部
14 ショルダー陸部
15 ショルダー補助リブ
図1
図2