(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5894446
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 8/10 20060101AFI20160317BHJP
F21V 29/70 20150101ALI20160317BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20160317BHJP
【FI】
F21S8/10 550
F21V29/70
F21Y101:02
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-13793(P2012-13793)
(22)【出願日】2012年1月26日
(65)【公開番号】特開2013-152893(P2013-152893A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2014年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092853
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮一
(72)【発明者】
【氏名】久保田 潤一
(72)【発明者】
【氏名】守屋 大
【審査官】
宮崎 光治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−222295(JP,A)
【文献】
特開2009−076323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S8/10
F21V29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングとその開口部を覆うアウタレンズによって画成された灯室内に光源、該光源を搭載するヒートシンク、リフレクタ及びエクステンションを収容して成る車両用灯具において、
前記ヒートシンクからの熱を前記アウタレンズに導く融雪ガイドブラケットを前記ヒートシンクの上方に配置し、
前記融雪ガイドブラケットは、その水平部が前記ハウジングに取り付けられており、該水平部から前方に向かって斜め上方に傾斜するガイド部を備え、該ガイド部が前記ヒートシンクの上方を覆っており、
前記ガイド部の先端と該ガイド部の延長方向前方の前記アウタレンズとの間には、前記ガイド部の先端と離間し、且つ、前記光源の上方に位置する吹出口下側部材を備え、
前記吹出口下側部材の斜め上後方には、前記アウタレンズに沿った上部エクステンションを備え、
前記上部エクステンションは、前記アウタレンズとの隙間を第1距離とした上部分と、該上部分から内側に屈曲した屈曲部を有し、
前記吹出口下側部材の上面と前記上部エクステンションの屈曲部の下面との間が、前記ヒートシンクからの熱がアウタレンズ側に向かって吹き出す吹出口とされ、
前記融雪ガイドブラケットのガイド部の先端と前記吹出口下側部材との間には隙間が形成され、
前記吹出口の下側には下部エクステンションのアウタレンズ対向面が位置しており、
前記アウタレンズと前記下部エクステンションのアウタレンズ対向面との隙間を第2距離としたとき、前記第1距離が前記第2距離よりも狭いこと
を特徴とする車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融雪対策を施したヘッドランプ等の車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
降雪時に車両が雪道を走行している場合等においては、例えばヘッドランプのアウタレンズ表面に雪が付着して夜間走行時の前方への照明に支障を来たす可能性がある。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、アウタレンズよりも熱伝導率が高くて配光と明るさへの影響を生じない形状に成形された熱伝導体でアウタレンズを外側から覆い、該熱伝導体を放熱部であるヒートシンクに接続することによって、ヒートシンクの熱を融雪に直接利用する構成が提案されている。
【0004】
又、特許文献2には、作動流体が封入された環状の熱輸送部をヒートシンクの放熱フィンに接続し、この熱輸送部をLEDの光出射路を囲繞する大きさとしてアウタレンズの内側面付近に配置する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−187707号公報
【特許文献2】特開2008−047384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2において提案された構成によれば、熱伝導体や熱輸送部を必要とするため、構造の複雑化やコストアップを招くという問題がある。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、大幅なコストアップを招くことなく簡単な構成で融雪が可能な車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ハウジングとその開口部を覆うアウタレンズによって画成された灯室内に光源、
該光源を搭載するヒートシンク、リフレクタ及びエクステンションを収容して成る車両用灯具において、
前記ヒートシンクからの熱を前記アウタレンズに導く融雪ガイドブラケットを前記ヒートシンクの上方に配置し
、
前記融雪ガイドブラケットは、その水平部が前記ハウジングに取り付けられており、該水平部から前方に向かって斜め上方に傾斜するガイド部を備え、該ガイド部が前記ヒートシンクの上方を覆っており、
前記ガイド部の先端と該ガイド部の延長方向前方の前記アウタレンズとの間には、前記ガイド部の先端と離間し、且つ、前記光源の上方に位置する吹出口下側部材を備え、
前記吹出口下側部材の斜め上後方には、前記アウタレンズに沿った上部エクステンションを備え、
前記上部エクステンションは、前記アウタレンズとの隙間を第1距離とした上部分と、該上部分から内側に屈曲した屈曲部を有し、
前記吹出口下側部材の上面と前記上部エクステンションの屈曲部の下面との間が、前記ヒートシンクからの熱がアウタレンズ側に向かって吹き出す吹出口とされ、
前記融雪ガイドブラケットのガイド部の先端と前記吹出口下側部材との間には隙間が形成され、
前記吹出口の下側には下部エクステンションのアウタレンズ対向面が位置しており、
前記アウタレンズと前記下部エクステンションのアウタレンズ対向面との隙間を第2距離としたとき、前記第1距離が前記第2距離よりも狭いこと
を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、ヒートシンクから放熱される光源の熱によって暖められた空気は、融雪ガイドブラケットに沿ってアウタレンズへと流れて該アウタレンズを内面から加熱するため、アウタレンズに付着した雪が熱によって融け、車両の夜間での照明に支障を来たす事態の発生が防がれる。そして、このような効果は、融雪ガイドブラケットを設けるだけの簡単な構成によって得られるため、大幅なコストアップを招くことがない。
【0011】
そして、上部エクステンションとアウタレンズとの隙間である第1距離をアウタレンズと下部エクステンションのアウタレンズ対向面との隙間である第2距離よりも狭くしたため、融雪ガイドブラケットによってアウタレンズへと導かれて吹出口から流出する空気(熱気)は、アウタレンズの内面の上部から下方に向かって広い範囲を流れてアウタレンズの広い範囲を加熱することとなり、アウタレンズに付着した雪の大部分を効果的に融かすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】本発明に係る車両用灯具のアウタレンズを外した状態を示す斜視図である。
【
図4】本発明に係る車両用灯具のハイビーム用ランプとロービーム用ランプの斜視図である。
【
図5】本発明に係る車両用灯具のハイビーム用ランプとロービーム用ランプの正面側分解斜視図である。
【
図6】本発明に係る車両用灯具のハイビーム用ランプとロービーム用ランプの背面側分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は本発明に係る車両用灯具の平面図、
図2は同車両用灯具のアウタレンズを外した状態を示す斜視図、
図3は
図2のA−A線断面図、
図4は同車両用灯具のハイビーム用ランプとロービーム用ランプの斜視図、
図5は同ハイビーム用ランプとロービーム用ランプの正面側分解斜視図、
図6は同ハイビーム用ランプとロービーム用ランプの背面側分解斜視図である。
【0015】
本実施の形態に係る車両用灯具1は、車両の前部左右に配置されるコンビネーションヘッドランプであって、このコンビネーションヘッドランプ1は、
図3に示すようにハウジング2とその前面開口部を覆う透明なアウタレンズ3によって画成された灯室4内に、
図2に示すハイビーム用ランプ(走行ビーム用ランプ)5とロービーム用ランプ(すれ違いビーム用ランプ)6の他、不図示のポジションランプやターンシグナルランプを収容して構成されている。尚、左右のコンビネーションヘッドランプ1は左右対称であって、その基本構成は同じであるため、以下、一方についてのみ図示及び説明する。
【0016】
上記ハイビーム用ランプ5は、光源として不図示のLEDを使用するものであって、
図4〜
図6に示すように、LEDからの光を車両前方に向けて反射させるリフレクタ7と、該リフレクタ7の背面に配置されたヒートシンク8を備えている。尚、ヒートシンク8は、LEDにおいて発生した熱を放熱させてLEDを冷却するためのものであって、これは熱伝導率の高いアルミダイキャストによって一体成形されており、その背面には
図6に示すように縦方向の複数の冷却フィン8aが横方向に適当な間隔で形成されている。
【0017】
又、前記ロービーム用ランプ6も不図示のLEDを光源とするものであって、
図3〜
図6に示すようにハイビーム用ランプ5と同様に構成されている。即ち、ロービーム用ランプ6は、LEDの他、リフレクタ9とヒートシンク10を備えており、リフレクタ9とヒートシンク10の背面には
図6に示すように複数の冷却フィン9a,10aがそれぞれ形成されている。
【0018】
而して、以上のように構成されたハイビーム用ランプ5とロービーム用ランプ6は、
図4に示すように取付ステー11に横方向に並んで一体的に組み付けられており、ロービーム用ランプ6はハイビーム用ランプ5よりも若干高い位置に取り付けられている。
【0019】
ここで、上記取付ステー11は、熱伝導率の高いアルミダイキャストによって成形されており、これには
図5及び
図6に示すように矩形枠状の本体部11Aと該本体部11Aから横方向に延びるL字状のブラケット部11Bが設けられており、これらの前面には複数の取付ボス11aが水平に突設されている。そして、
図5に示すように、この取付ステー11の本体部11Aにはロービーム用ランプ6が取り付けられており、L字状のブラケット部11Bにはハイビーム用ランプ5が取り付けられている。
【0020】
ところで、
図3に示すように、本実施の形態に係るコンビネーションヘッドランプ1の灯室4内には、ハイビーム用ランプ5及びロービーム用ランプ6とハウジング2との隙間を覆うための黒色のエクステンション12とアルミ蒸着が施されたエクステンション13及び両エクステンション12,13の間に配されたベゼル14が収容されている。
【0021】
而して、本実施の形態に係るコンビネーションヘッドランプ1においては、
図3に示すように、灯室4内に、側面視くの字状に屈曲した融雪ガイドブラケット15がロービーム用ランプ6の上方を覆うように配設されている。この融雪ガイドブラケット15は、その水平部15Aがハウジング2に取り付けられており、該水平部15Aから前方(
図3の左方)に向かって斜め上方に傾斜するガイド部15Bはロービーム用ランプ6のヒートシンク10の上方を覆っている。
【0022】
そして、
図3に示すように、灯室4内の前記エクステンション12の上部の内側に屈曲した屈曲部12aと前記ベゼル14との間には、ヒートシンク10の熱によって暖められた空気(熱気)の吹出口16がアウタレンズ3の内面に向かって開口しており、前記融雪ガイドブラケット15のガイド部15Bは、吹出口16に向けて斜めに延びている。
【0023】
ここで、本実施の形態では、
図3に示すように、吹出口16よりも上方におけるエクステンション12とアウタレンズ3との隙間δ1を吹出口16よりも下方におけるエクステンション13とアウタレンズ3との隙間δ2よりも狭く設定している(δ1<δ2)。
【0024】
而して、例えば夜間の降雪時に車両が走行しているときには、ロービーム用ランプ6の点灯によってLEDに発生する熱はヒートシンク10へと伝導し、該ヒートシンク10から放熱されるが、このヒートシンク10からの放熱によって暖められた温度の高い空気(熱気)は灯室4内を上昇する。そして、この熱気は、
図3に矢印にて示すように融雪ガイドブラケット15のガイド部15Bによって流れ方向を変えられ、該ガイド部15Bに沿って前方のアウレンズ3に向かって流れる。そして、この熱気(熱の流れ)は、融雪ガイドブラケット15とベゼル14との間の隙間δを通過して吹出口16からアウタレンズ3に向かって吹き出す。このとき、前述のように吹出口16よりも上方におけるエクステンション12とアウタレンズ3との隙間δ1を吹出口16よりも下方におけるエクステンション13とアウタレンズ3との隙間δ2よりも狭く設定しているため(δ1<δ2)、熱気は吹出口16よりも上方へは流れにくく、その大部分は
図3に矢印にて示すようにアウタレンズ3の内面の上部から下方に向かって広い範囲を流れてアウタレンズ3の広い範囲を加熱する。このため、アウタレンズ3の表面に付着した雪の大部分が熱によって効果的に融かされ、降雪時における車両の夜間走行においてコンビネーションヘッドランプ1の光量不足等の問題が発生することがない。そして、このような効果は、融雪ガイドブラケット15を設けるだけの簡単な構成によって得られるため、大幅なコストアップを招くことがない。
【0025】
尚、以上は本発明をコンビネーションヘッドランプに適用した形態について説明したが、本発明は、その他の任意の車両用灯具に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0026】
1 コンビネーションヘッドランプ(車両用灯具)
2 ハウジング
3 アウタレンズ
4 灯室
5 ハイビーム用ランプ
6 ロービーム用ランプ
7 ハイビーム用ランプのリフレクタ
8 ハイビーム用ランプのヒートシンク
8a ヒートシンクの冷却フィン
9 ロービーム用ランプのリフレクタ
9a リフレクタの冷却フィン
10 ハイビーム用ランプのヒートシンク
10a ヒートシンクの冷却フィン
11 取付ステー
11A 取付ステーの本体部
11B 取付ステーのブラケット部
11a 取付ステーの取付ボス
12,13 エクステンション
12a エクステンションの屈曲部
14 ベゼル
15 融雪ガイドブラケット
15A 融雪ガイドブラケットの水平部
15B 融雪ガイドブラケットのガイド部
16 吹出口
δ 融雪ガイドブラケットとベゼルとの隙間
δ1,δ2 アウタレンズとエクステンションとの隙間