(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
直方体の段ボール箱であって、連接した4枚の側板からなる胴部、各側板の上端縁から延出した4枚の蓋部フラップおよび各側板の下端縁から延出した4枚の底部フラップを有し、上記胴部を形成する側板の1枚が、その側端縁から延出する糊代用フラップを有し、上記1枚の側板が上記糊代用フラップを介して他の1枚の側板と接着により接続して胴部が形成されているところの段ボール箱において、上記胴部をその周方向に引裂くことができるように各側板の略中央部に周方向に正弦波形状のミシン目または罫線を1本のみ有し、上記他の1枚の側板の、上記糊代用フラップとの接着部分に引裂き開始のためのミシン目または罫線を有し、上記引裂き開始のためのミシン目または罫線は、それを割ることにより開始片が形成されそして該開始片を掴んで引裂きが行われるように構成されており、ただし各側板は、上記引裂き開始部を除いて、側板同士の連接部およびその近接部にミシン目および罫線を有しない、ことを特徴とする段ボール箱。
【背景技術】
【0002】
従来から、小巻にした食品包装用ラップフィルムを収納した化粧箱、小分けした菓子等の食品を収納した化粧箱、飲料等を詰めた容器等の比較的小さな物品を集積包装し、運搬するために、紙製の、典型的には段ボール製の箱が使用されている。また、紙箱に集積包装された物品を小売店頭において陳列するとき、物品を箱から取り出すことなく陳列することができるように、紙箱に引裂帯を設けることが広く行われている。引裂帯とは、例えば
図7に示されるように、紙箱側面の中腹などを一周に亘って帯状に引裂いて箱を開封することができるように紙箱の側板に周方向にミシン目などを設けたものである。従来の引裂帯では、引裂き開始部(A)が、
図7に示されるように、ある一枚の側板のミシン目の長手方向の中央部分に設けられている。このような引裂帯は、引裂き作業の容易性は良好であるものの、引裂き作業の確実さや安全性および、陳列時のための引裂き面のきれいさの点では十分とは言えない。
【0003】
さらに、上記紙箱には十分な強度が必要である。搬送時においては、配送方面毎に仕分けするために、傾斜面を通って移送させたりすることが行われるので、これに耐える強度が要求される。また、搬送時や保管時においては、紙箱は段積みされるため、これにより紙箱が座屈したりしないだけの耐荷重が要求される。
【0004】
引裂帯を利用する開封を容易かつ確実に行うための技術として、例えば、段ボールの裏側原紙に罫線を入れ、その同一直線上に切れ目が断続するライナカット線を設けることが提案されている(例えば特許文献1)。また、ミシン目又は罫線を直線状ではなく、曲線状にすることも知られている(例えば特許文献2)。しかし、これらの技術では、開封は容易になるものの、開封面(引裂き面)のきれいさと箱の強度とを併せて満足することは難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、引裂帯を有する段ボール箱であって、十分な耐荷重および強度を有し、引裂きが容易で、かつ引裂き後の引裂き面がきれいであるところの段ボール箱を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究した結果、引裂帯の引裂き開始部を特定の箇所に設け、ミシン目又は罫線を正弦波形状にし、かつ特定の箇所にはミシン目又は罫線を設けないことにより、上記目的を達成できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、直方体の段ボール箱であって、連接した4枚の側板からなる胴部、各側板の上端縁から延出した4枚の蓋部フラップおよび各側板の下端縁から延出した4枚の底部フラップを有し、上記胴部を形成する側板の1枚が、その側端縁から延出する糊代用フラップを有し、上記1枚の側板が上記糊代用フラップを介して他の1枚の側板と接着により接続して胴部が形成されているところの段ボール箱において、上記胴部をその周方向に引裂くことができるように各側板の略中央部に周方向に正弦波形状のミシン目または罫線を
1本のみ有し、上記他の1枚の側板の、上記糊代用フラップとの接着部分に引裂き開始のためのミシン目または罫線を有
し、上記引裂き開始のためのミシン目または罫線は、それを割ることにより開始片が形成されそして該開始片を掴んで引裂きが行われるように構成されており、ただし各側板は、上記引裂き開始部を除いて、側板同士の連接部およびその近接部にミシン目および罫線を有しない、ことを特徴とする段ボール箱である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の段ボール箱は、十分な耐荷重および強度を有するとともに、引裂きが容易である。また、引裂き後の引裂き面がきれいであるので、段ボール箱の中に集積包装された物品を小売店頭で陳列するに際し、箱から物品を取り出すことなく、そのまま陳列することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の段ボール箱を、図を参照して説明する。
図1は、本発明の段ボール箱の展開図の一例を示す図であり、
図2は、本発明の段ボール箱の一例を示す斜視図である。本発明の段ボール箱は直方体であり、連接した4枚の側板からなる胴部、各側板の上端縁から延出した蓋部フラップ(6)および各側板の下端縁から延出した底部フラップ(7)を有する。上記段ボール箱は、
図1に示すように、胴部を形成する側板の1枚(
図1では(4))がその側端縁から延出する糊代用フラップ(5)を有し、上記1枚の側板が、この糊代用フラップを介して他の1枚の側板(
図1では(1))と接着して接続することにより胴部が形成される。
図1では、側板(4)の側端縁に糊代用フラップが設けられているが、側板(1)の側端縁に設けてもよい。本発明の段ボール箱は、蓋部フラップ(6)および底部フラップ(7)をそれぞれ、側板との境界線で折りたたむことにより、上面および下面が閉じられて箱として完成される。4枚の側板の大きさは、直方体の胴部を形成することができるかぎり、互いに同じでも異なっていてもよい。
【0012】
図2は、
図1と同様に側板(4)の側端縁に設けられた糊代用フラップ(5)を介して側板(4)と側板(1)が接続されて胴部が形成されている、本発明の段ボール箱の一例を示す斜視図である。
【0013】
本発明の段ボール箱は、
図1および2に示されるように、各側板の略中央部に周方向にミシン目または罫線(8)が設けられており、上記ミシン目または罫線に沿って段ボール箱を引裂くことができるようになっている。なお、段ボール原紙は、表側原紙と裏側原紙との間に波状の中芯を挟んで接着したものである。段ボール箱を容易かつきれいに引裂くことができるように、上記ミシン目または罫線は、表側原紙と裏側原紙の両方に設けられる。
【0014】
図3は、
図2の段ボール箱をミシン目(8)に沿って引裂いたときの状態を示す斜視図であり、
図4は、
図3において上下2つに引裂かれた段ボール箱の上方部分を取り除いた状態を示す斜視図である。本明細書において、「引裂き面」は、ミシン目(8)に沿って上下2つに引裂かれた段ボール箱の上方部分を取り除いて残った下方部分の上端面を意味し、
図4の番号9で示される部分である。
【0015】
上記ミシン目または罫線の形状は、
図1および2に示されるように、正弦波形状である。段ボール箱を単に引裂くだけならば、ミシン目または罫線は直線状であってもよい。しかし、箱の中に収納されるものが重量物であるときに要求される耐荷重や段ボール箱の搬送時や保管時に要求される強度を考慮すると、上記形状は正弦波形状であるのが好ましい。上記形状が直線状であると、引裂き方向も直線状であり、搬送時や保管時にその方向に大きな力が作用すると、段ボール箱が座屈するなどの問題を生じ得る。この問題を解決するためには、引裂き方向を直線状ではなく、適宜違えるようにすればよく、そのためには、鋸歯状が考えられる。しかし、この場合には、引裂き方向が不連続に変化するので、きれいに引裂くことが困難である。上記形状が正弦波形状であれば、容易かつきれいに引裂くことができるとともに、強度も確保され、座屈等のトラブルが軽減される。
【0016】
図5は、ミシン目又は罫線(8)の形状を説明する図である。正弦波の波長をL、波高をHとするとき、Hは、要求される耐荷重や強度および使用する段ボール原紙の質にもよるが、5mm以上が好ましく、より好ましくは10mm以上である。また、強度の確保の点から、波高Hに対する波長Lの比(L/H)が小さい方が好ましく、一方、引裂き易さの点から、上記比は大きい方が好ましい。両者のバランスを考慮すると、波長Lが波高Hの3〜6倍であるのが好ましい。具体的には、例えば、波高Hが10mmであり、波長Lが40mmである。
【0017】
本発明の段ボール箱は、
図1および2に示されるように、引裂き開始部(A)が、側板(1)の、糊代用フラップ(5)と接着している部分にある。一般に、引裂帯を利用した箱の開封では、引裂帯の引裂き開始部にあるミシン目を割って開始片を形成し、開始片を掴んで箱の引裂きが行われるので、箱の開始片周辺には大きな力がかかる。したがって、引裂き開始部周辺の強度が弱いと、引裂き後の引裂き面のきれいさに欠ける。本発明の段ボール箱は、引裂き開始部が、側板の、糊代用フラップ(5)との接着部分にある。この部分は段ボール紙が二重になっているので、強度を確保することができ、したがって、引裂き後の引裂き面がきれいである。なお、糊代用フラップ(5)の幅Wは特に制限されないが、通常、25〜50mm程度である。
【0018】
また、引裂帯を利用して開封する作業中に引裂帯が千切れてしまうことを防止するために、段ボール箱の内側においてミシン目又は罫線(8)の上方にカットテープを設けてもよい。
【0019】
さらに、段ボール箱の強度を確保するためには、隣接する2つの側板間の連接部の強度が重要である。上記連接部付近にミシン目または罫線があると、強度の確保が困難である。本発明の段ボール箱は、各側板が、上記引裂き開始部を除いて、側板同士の連接部およびその近接部にミシン目および罫線を有しないので、強度を確保することができる。各側板における、ミシン目および罫線を有しない範囲を、各側板のミシン目又は罫線の長さ方向の先端と側板同士の連接部との最短距離αで表わすとき(
図1参照)、αは、段ボール原紙の質にもよるが、各々独立して、10mm以上であるのが好ましく、より好ましくは20mm以上である。一方、ミシン目および罫線がない部分は、引裂きの容易性や引裂いた後の引裂き面のきれいさを低下させるため、この部分の大きさ(α)は、できるだけ小さい方が好ましい。具体的には、段ボール原紙の質にもよるが、αは、各々独立して、40mm以下であるのが好ましく、より好ましくは38mm以下である。
【0020】
段ボール原紙は、通常のものを使用することができるが、強度の点から、表側原紙および裏側原紙の坪量が各々、120〜469g/m
2であるものが好ましい。
【0021】
段ボール箱の大きさは、その中に収納される物の大きさや重さ及び収納個数を考慮して適宜選択される。このとき、収納物込みの段ボール箱の重さ(以下、「梱包質量」と言うことがある。)は、人力で運搬可能な範囲に抑える必要から、上限30Kg程度、好ましくは上限15Kg程度にすべきことを考慮する。例えば、小巻したラップフィルムを収納した化粧箱(52mm×2mm×314mm)を30本収納する場合には、段ボール箱の大きさが276mm×330mm×315mmであり、梱包質量が12.5Kgであり得る。
【0022】
段ボール箱の製函は、人力で行ってもよく、公知の製函機を使用して行ってもよい。
【0023】
段ボール箱の糊代用フラップ(5)に使用される接着剤または粘着剤は、糊代用フラップ(5)と側板との接着部分を剥したときに、段ボール箱が材破するような接着または粘着強度を有するものであればどのようなものでも良い。例えば、アクリル系、エチレン酢酸ビニル系、酢酸ビニル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、澱粉系、天然ゴム系、エポキシ樹脂系、酢酸セルロース系、ポリイソブチレン系、クロロプレンゴム系、スチレンブタジエンゴム系、ポリビニルアルコール系およびポリビニルピロリドン系などの慣用の粘着剤や接着剤が使用可能である。
【実施例】
【0024】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0025】
実施例1
短辺276mm×長辺330mm×高さ315mmの大きさの段ボール箱(坪量280g/m
2のK7ライナー、Aフルート)であって、
図2に示すように、正弦波形状のミシン目を各側板の略中央部分に設け、引裂き開始のためのミシン目(A)を
図2に示すように設けたものに、小巻したラップフィルムを収納した化粧箱(高さ52mm×横52mm×長さ314mm)を30本梱包した。ミシン目の波高Hおよび波長L、ならびに長さαは表1に示す通りであり、梱包質量は12.5Kgであった。また、糊代用フラップ(5)の幅Wは35mmであった。この梱包体について、下記の試験を行った。結果を表1に示す。
【0026】
試験
(1)耐荷重試験
東洋精機株式会社の圧縮試験機を使用し、JIS Z 0212 方法Aに準拠して、上記梱包体(収納物有)の耐荷重試験を行い、段ボール箱および収納物のそれぞれについて、以下の基準で評価した。
段ボール箱:
○:箱の変形を目視で確認できるのは1250Kgfを超える荷重をかけたときである。
△:750〜1250Kgfの荷重をかけると、箱の変形が目視で確認される。
×:750Kgf未満の荷重において、箱の変形が目視で確認される。
収納物:
○:収納物に目視で変形が認められるのは、1500Kgfを超える荷重をかけたときである。
△:1000〜1500Kgfの荷重をかけると、収納物の変形が目視で認められる。
×:1000Kgf未満の荷重において、収納物の変形が目視で認められる。
【0027】
(2)搬送試験
物流時の集配を想定し、
図6に示すように、φ38スチールローラーコンベアとポータブルストッパー万能型1(いずれもトラスコ中山株式会社製)を用いて長さ5メートル、斜度4%の試験コースを作製した。コンベアの幅は400mmであった。梱包体をコースの上部から自重により流し、ストッパーにより受止めた後、梱包体の変形および破壊等の異常の有無を確認する作業を1サイクルとして繰返し、以下の基準で評価した。
◎:20サイクル後まで異常なし
〇:16サイクル〜20サイクルの間に異常発生
△:11サイクル〜15サイクルの間に異常発生
×:10サイクル以内に異常発生
【0028】
(3)引裂き開封試験
梱包体をミシン目を利用して引裂き開封した後、引裂き面を目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:表層剥離がなく、また引裂き面の形状がミシン目に沿っていてきれいである。
△:表層剥離はないが、引裂き面の形状がきれいでない。
×:表層剥離がある。
【0029】
比較例1
ミシン目を直線状にしたこと以外は実施例1と同様にして梱包体を用意し、試験を行った。結果を表1に示す。
【0030】
比較例2
ミシン目を途切れることなく設けた(すなわちα=0)こと以外は実施例1と同様にして梱包体を用意し、試験を行った。結果を表1に示す。
【0031】
比較例3
引裂帯の引裂き開始部(A)を、
図7に示すように、側板のミシン目の長手方向の中央部分に設けたこと以外は実施例1と同様にして梱包体を用意し、試験を行った。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
本発明の段ボール箱は、十分な強度を有し、かつ引裂き後の引裂き面がきれいである。一方、ミシン目を直線状にした比較例1および、ミシン目を側板同士の連接部およびその近接部でも途切れることなく設けた比較例2では、強度が不十分であった。引裂帯の引裂き開始部の位置が本発明と異なる比較例3では、引裂き途中で引裂帯が千切れ、きれいに引裂くことができなかった。