特許第5894473号(P5894473)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5894473
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】光学ユニット
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/12 20060101AFI20160317BHJP
   B60Q 1/14 20060101ALI20160317BHJP
   F21W 101/10 20060101ALN20160317BHJP
【FI】
   F21S8/12 295
   F21S8/12 210
   B60Q1/14 E
   F21W101:10
【請求項の数】1
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-57597(P2012-57597)
(22)【出願日】2012年3月14日
(65)【公開番号】特開2013-191446(P2013-191446A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2015年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】望月 一磨
【審査官】 當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−009264(JP,A)
【文献】 国際公開第97/040568(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10 − 8/12
B60Q 1/00 − 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用灯具に用いられる光学ユニットであって、
光源光の一部を遮光する進出位置と光源光の当該一部を非遮光とする退避位置とに変位可能なシェードと、
前記シェードを保持するベース部と、
出力軸の回転により前記シェードを前記進出位置及び前記退避位置の一方から他方へ変位させるモータと、
前記出力軸に設けられ、前記シェードに当接して前記出力軸からの力を前記シェードに伝達する接続部と、
前記モータの収容空間を形成する壁部、及び前記収容空間へモータを挿入するための開口部を有し、前記ベース部に固定されるケースと、
前記一方の位置から前記他方の位置へ向けて変位する前記シェードを前記他方の位置で停止させるストッパと、を備え、
前記ストッパに当接した前記シェードを前記接続部が押圧し続けることで、前記モータにかかる力により、前記モータが変位する方向の先端側に、前記壁部の少なくとも一部が延在し、
前記モータは、前記ベース部の前記ケースが当接する面に対して前記出力軸が略垂直となるように配置され、
前記ケースの前記開口部は、前記出力軸の軸方向に対して略平行に配置されることを特徴とする光学ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ユニットに関し、特に車両用灯具に用いられる光学ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源からの光をシェードにより遮光することによりロービーム用配光パターンを形成し、シェードにより遮光しない場合にハイビーム用配光パターンを形成する配光可変タイプの車両用前照灯装置がある。また、近年の車両の高性能化に伴い前照灯も周囲の状況に応じて標準的なロービームやハイビームとは形状の異なる特殊配光パターンを形成する車両用前照灯装置が提案されている。特にハイビームの場合、運転者の視界を向上させる一方で、対向車や歩行者へのグレアを考慮する必要がある。そこで、例えば、特許文献1に開示される車両用灯具は、歩行者、先行車、あるいは対向車の有無に応じてハイビームの照射領域を最適に設定できる構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−179969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況において、本発明者は以下の課題を認識するに至った。すなわち、車両用灯具における上述した配光パターンの切り替えを実現する光学ユニットとしては、例えば、光源光の一部を遮光する進出位置と光源光の当該一部を非遮光とする退避位置とに変位可能なシェードを複数設け、各シェードの位置を切り替えることで配光パターンを切り替える構成が考えられる。具体的には、例えば第1シェードを遮光位置に配置してロービーム用配光パターンを形成し、第2シェードを遮光位置に配置し、且つ第1シェードを非遮光位置に配置して特殊配光パターンを形成し、第1シェード及び第2シェードを非遮光位置に配置してハイビーム用配光パターンを形成する。シェードの変位にはDCモータ等のモータを用いることが考えられる。
【0005】
このような構成を有する光学ユニットにおいて、光学ユニットの動作信頼性を向上させるためには、定められたモータの取付姿勢が維持されることが望ましい。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、光学ユニットの動作信頼性の向上を図るための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は光学ユニットである。当該光学ユニットは、車両用灯具に用いられる光学ユニットであって、光源光の一部を遮光する進出位置と光源光の当該一部を非遮光とする退避位置とに変位可能なシェードと、前記シェードを保持するベース部と、出力軸の回転により前記シェードを前記進出位置及び前記退避位置の一方から他方へ変位させるモータと、前記出力軸に設けられ、前記シェードに当接して前記出力軸からの力を前記シェードに伝達する接続部と、前記モータの収容空間を形成する壁部、及び前記収容空間へモータを挿入するための開口部を有し、前記ベース部に固定されるケースと、前記一方の位置から前記他方の位置へ向けて変位する前記シェードを前記他方の位置で停止させるストッパと、を備える。光学ユニットは、前記ストッパに当接した前記シェードを前記接続部が押圧し続けることで、前記モータにかかる力により、前記モータが変位する方向の先端側に、前記壁部の少なくとも一部が延在する。
【0008】
この態様によれば、モータの取付姿勢をより確実に維持することができるため、光学ユニットの動作信頼性の向上を図ることができる。
【0009】
上記態様において、前記モータは、前記ベース部の前記ケースが当接する面に対して前記出力軸が略垂直となるように配置され、前記ケースの前記開口部は、前記出力軸の軸方向に対して略平行に配置されてもよい。これによっても、光学ユニットの動作信頼性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光学ユニットの動作信頼性の向上を図るための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る光学ユニットを有する灯具ユニットが搭載された車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図である。
図2】灯具ユニットの概略構造を示す斜視図である。
図3】灯具ユニットの分解斜視図である。
図4】実施の形態に係る光学ユニットの分解斜視図である。
図5】モータ及びケースの概略構造を示す斜視図である。
図6】モータ及びケースの概略断面図である。
図7図7(A)及び図7(B)は、モータと給電端子との接続を説明するための斜視図である。
図8図8(A)〜図8(C)は、モータがケースへ収容される際の第1壁部の形状変化を説明するための図である。
図9図9(A)〜図9(C)は、第1シェード及び第2シェードの状態と形成される配光パターンとを説明するための図である。
図10図10(A)は、第1シェードの歯車部近傍の拡大図である。図10(B)は、第2シェードの歯車部近傍の拡大図である。
図11】灯具後方から見た光学ユニットの概略構造を示す図である。
図12図12(A)は、モータの概略構造を示す分解斜視図である。図12(B)は、モータの内部構造の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
図1は、実施の形態に係る光学ユニットを有する灯具ユニットが搭載された車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図である。図2は、灯具ユニットの概略構造を示す斜視図である。図3は、灯具ユニットの分解斜視図である。本実施の形態において説明する車両用灯具1は、車両前方の左右に配置される一対の前照灯ユニットを有する車両用前照灯装置である。一対の前照灯ユニットは左右対称の構造を有する点以外は実質的に同一の構成であるため、図1には車両用灯具1として車両右側に配置される前照灯ユニットの構造を示す。
【0014】
図1に示すように、車両用灯具1は、車両前方側に開口部を有するランプボディ2と、ランプボディ2の開口部を覆うように取り付けられた透光カバー4とを備える。透光カバー4は、透光性を有する樹脂やガラス等で形成されている。ランプボディ2と透光カバー4とにより形成される灯室3内には、灯具ユニット10及び制御部12が収容されている。灯具ユニット10の上部には、灯具ユニット10の揺動中心となるスイブル軸14が突出している。スイブル軸14は、略矩形状の枠体であるブラケット16の上部フレームに対して、軸回りに回動可能に取り付けられている。ブラケット16は、支持機構(図示せず)によりランプボディ2に固定されている。
【0015】
ブラケット16の下部には、スイブルアクチュエータ18が設けられている。スイブルアクチュエータ18には、上方に突出する回動出力軸(図示せず)が設けられている。灯具ユニット10は、ブラケット16の枠内に配置され、灯具ユニット10の下面が回動出力軸に連結されている。スイブルアクチュエータ18は、例えばステアリング操作に応じて駆動され、これにより灯具ユニット10がスイブル軸14を中心として左右方向にスイブルすることができる。
【0016】
灯室3の下部には、灯具ユニット10の点消灯や後述するシェードの変位等を制御する制御部12が配置されている。制御部12には、灯具ユニット10の光源バルブに電力を供給するための給電ソケット20がコード22を介して接続されている。なお、制御部12が設けられる位置は、特に限定されない。
【0017】
灯室3内には、エクステンション部材24が設けられている。エクステンション部材24は、灯具ユニット10よりも灯具前方側に配置され、ランプボディ2に固定されている。エクステンション部材24は、灯具ユニット10の存在領域に開口部24aを有し、灯具前方から見てランプボディ2の前面開口部と灯具ユニット10との間の領域を覆っている。
【0018】
図1図3に示すように、灯具ユニット10は、光源バルブ26、バルブ保持部28、リフレクタ部30、レンズホルダ32、投影レンズ34、及び光学ユニット100を備える。光源バルブ26は、例えば白熱球やハロゲンランプ、放電球等である。光源バルブ26には、給電ソケット20が取り付けられている。これにより、制御部12から光源バルブ26への電力供給が可能となる。なお、光源は発光素子であってもよい。
【0019】
バルブ保持部28は、環状の部材であり、灯具ユニット10の光軸を中心軸とする筒状のバルブ挿入口(図示せず)を有する。リフレクタ部30は、回転楕円面の一部で構成される反射面(図示せず)を有する。また、リフレクタ部30の後部中央には、灯具ユニット10の光軸を中心軸とする筒状のバルブ挿入口(図示せず)が形成されている。リフレクタ部30の前方開口部31の周縁には、灯具前方を向く主表面及び灯具後方を向く主表面を有するフランジ部30aが設けられている。フランジ部30aの灯具前方側主表面における所定位置には、灯具前方側に突出する複数の位置決め凸部30bが設けられている。また、フランジ部30aの所定位置には、フランジ部30aを灯具前後方向に貫通する複数の貫通孔30cが設けられている。また、フランジ部30aの上部にはスイブル軸14が設けられている。
【0020】
バルブ保持部28は、バルブ保持部28が有するバルブ挿入口の中心軸とリフレクタ部30が有するバルブ挿入口の中心軸とが同一直線上に位置するように配置されて、リフレクタ部30のバルブ挿入口の入口に固定されている。本実施の形態では、バルブ保持部28とリフレクタ部30とは一体的に形成されているが、両者は別体であってもよい。光源バルブ26は、灯具後方からバルブ保持部28のバルブ挿入口及びリフレクタ部30のバルブ挿入口に挿通されて、リフレクタ部30に対して着脱可能に取り付けられている。バルブ保持部28により、光源バルブ26は、その発光部がリフレクタ部30の反射面の第1焦点と略一致する位置に固定される。
【0021】
リフレクタ部30の灯具前方側には、光学ユニット100を挟んでレンズホルダ32が配置されている。レンズホルダ32は、筒状部32aと、筒状部32aから灯具後方側に突出する複数の脚部32bとを有する。各脚部32bは、先端が略直角に折り返されて形成された接続部32b1を有する。各接続部32b1には、灯具前後方向に延在する貫通孔32cが設けられている。筒状部32aには、投影レンズ34が嵌め込まれている。投影レンズ34は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズからなり、その後方焦点を含む後方焦点面上に形成される光源像を、反転像として灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。投影レンズ34は、レンズホルダ32により灯具ユニット10の光軸上に、且つ後方焦点がリフレクタ部30の反射面の第2焦点と略一致する位置に配置されている。
【0022】
光学ユニット100は、主表面が灯具前後方向を向くように配置された略板状のベース部110を有する。ベース部110は、灯具前方から見て環状の枠部112と、枠部112の内側で略水平方向に延在するシェード連結部114とを有する。また、ベース部110は、シェード連結部114の上縁と、シェード連結部114よりも上側の枠部112の内周縁とで構成される、開口部116を有する。開口部116により、光源光の投影レンズ34への入光が許容される。
【0023】
枠部112の所定位置には、灯具前後方向に延在する複数の貫通孔118が設けられている。シェード連結部114には、第1シェード130及び第2シェード140が連結されている。第1シェード130及び第2シェード140は、シェード連結部114に対してそれぞれ独立に揺動可能に設けられており、開口部116の周縁の一部を塞ぐ位置と、開口部116の周縁の外側に延在する位置とに変位可能である。光学ユニット100は、各シェードが開口部116の周縁の一部を塞ぐ位置に変位した際に、各シェードの上縁がリフレクタ部30の反射面の第2焦点と重なるように配置されている。光学ユニット100の構造については後に詳細に説明する。
【0024】
リフレクタ部30と光学ユニット100とは、各位置決め凸部30bが所定の貫通孔118に挿通されることで、互いの位置関係が定められている。また、レンズホルダ32は、光学ユニット100の貫通孔118から突出する所定の位置決め凸部30bが所定の貫通孔32cに挿通されることで、リフレクタ部30及び光学ユニット100に対する位置関係が定められている。この状態で、リフレクタ部30の所定の貫通孔30cと、光学ユニット100の所定の貫通孔118と、レンズホルダ32の所定の貫通孔32cとが灯具前方から見て重なり、これらにネジ等の締結部材36が挿通されて、リフレクタ部30、光学ユニット100及びレンズホルダ32が連結されている。
【0025】
続いて、実施の形態に係る光学ユニット100の構造について詳細に説明する。図4は、実施の形態に係る光学ユニットの分解斜視図である。図4に示すように、本実施の形態に係る光学ユニット100は、車両用灯具に用いられる光学ユニットであり、ベース部110、第1シェード130、第2シェード140、第1モータ150A、第2モータ150B、第1ケース170A及び第2ケース170Bを有する。以下、第1モータ150A及び第2モータ150Bを特に区別しない場合は、これらをモータ150と総称する。また、第1ケース170A及び第2ケース170Bを特に区別しない場合は、これらをケース170と総称する。
【0026】
ベース部110は、上述のように枠部112、シェード連結部114、開口部116及び貫通孔118を有する。さらに、ベース部110は、灯具前方から見て、シェード連結部114の右側(車幅方向内側)の端部に、灯具前方に突出する第1シェード支持軸120Aを有し、シェード連結部114の左側(車幅方向外側)の端部に、灯具前方に突出する第2シェード支持軸120Bを有する。また、ベース部110は、灯具前方から見て枠部112の右側の領域に、複数のケース固定用貫通孔121A、複数の嵌合部122A、及び出力軸用貫通孔123Aを有し、枠部112の左側の領域に、複数のケース固定用貫通孔121B、複数の嵌合部122B、及び出力軸用貫通孔123Bを有する。本実施の形態において、嵌合部122A,122Bは貫通孔である。
【0027】
また、ベース部110は、枠部112の内周縁部側の領域に第1シェード用第1ストッパ124A及び第2シェード用第1ストッパ124Bを有し、枠部112の外周縁部側の領域に第1シェード用第2ストッパ125A及び第2シェード用第2ストッパ125Bを有する。灯具前方から見て、第1シェード用第1ストッパ124A及び第1シェード用第2ストッパ125Aはベース部110の右側領域に配置され、第2シェード用第1ストッパ124B及び第2シェード用第2ストッパ125Bはベース部110の左側領域に配置される。各ストッパは、灯具前方に突出している。さらに、ベース部110は、枠部112の所定位置に、復帰ばね係止孔126及び復帰ばね係止孔127(図9(A)〜図9(C)、図10(B)参照)を有する。
【0028】
第1シェード130及び第2シェード140は、それぞれ略L字形状をしており、略水平方向に延在し、光源光を遮るために用いられる水平部132,142と、水平部132,142の一端から略垂直方向下方に延在し、モータ150の回転力を受けるための垂直部134,144とを有する。第1シェード130の水平部132の縁部132aは、第1シェード130が後述する進出位置にあるときロービーム用配光パターンのカットオフラインを形成するように加工されている。第2シェード140の水平部142の縁部142aは、第2シェード140が後述する進出位置にあるとき片ハイ用配光パターンのカットオフラインを形成するように加工されている。垂直部134,144の下端には、モータ150の出力軸に設けられた後述する接続部と噛み合う歯車部135,145が設けられている。
【0029】
第1シェード130及び第2シェード140は、それぞれ水平部132,142と垂直部134,144との接合部近傍に灯具前方に突出する筒部136,146を有する。また、第1シェード130及び第2シェード140は、それぞれ所定位置に復帰ばね係止溝138,148を有する。第1シェード130は、第1シェード支持軸120Aが筒部136に挿通されて、ベース部110に保持される。したがって、第1シェード130は車幅方向内側に配置される。水平部132は、第2シェード支持軸120Bに向けて延在する。垂直部134は、第1シェード用第1ストッパ124Aと第1シェード用第2ストッパ125Aとの間に延在し、歯車部135が出力軸用貫通孔123Aの近傍に配置される。
【0030】
第2シェード140は、第2シェード支持軸120Bが筒部146に挿通されてベース部110に保持される。したがって、第2シェード140は、車幅方向外側に配置される。水平部142は、第1シェード支持軸120Aに向けて延在する。垂直部144は、第2シェード用第1ストッパ124Bと第2シェード用第2ストッパ125Bとの間に延在し、歯車部145が出力軸用貫通孔123Bの近傍に配置される。
【0031】
筒部136,146の外周には、それぞれ止め輪102及び復帰ばね104A,104Bがこの順に嵌め合わされる。復帰ばね104A,104Bは、例えばねじりコイルばねで構成され、両端部がアーム状に延びるコイル部を有する。第1シェード130がベース部110に保持された状態で、復帰ばね104Aは、一端が復帰ばね係止孔126に挿通され、他端が復帰ばね係止溝138により係止される。また、第2シェード140がベース部110に保持された状態で、復帰ばね104Bは、一端が復帰ばね係止孔127に挿通され、他端が復帰ばね係止溝148により係止される。
【0032】
モータ150は、ケース170に収容され、ケース170を介してベース部110に固定される。図5は、モータ及びケースの概略構造を示す斜視図である。図6は、モータ及びケースの概略断面図である。図7(A)及び図7(B)は、モータと給電端子との接続を説明するための斜視図である。なお、図6は、モータ150がケース170に収容された状態を示し、またモータ150の出力軸152に沿った断面を示している。
【0033】
図5図7(B)に示すように、モータ150は、例えばDCモータで構成され、ハウジング151、出力軸152、及び端子接続部153A,153Bを有する。ハウジング151は、出力軸152が突出する上面151aと、上面151aと対向する底面151bと、互いに対向する略平坦な第1側面151c及び第2側面151dと、互いに対向する湾曲した第3側面151e及び第4側面151fとを有する。上面151a及び底面151bには、それぞれ外方にやや突出し、内部に軸受を収容するボス部154a,154bが設けられている。
【0034】
出力軸152には、平歯車等のギヤで構成される接続部160が設けられている。出力軸152は、接続部160を介して第1シェード130又は第2シェード140に接続される。給電用の端子接続部153A,153Bは、ハウジング151の第1側面151cにおける底面151bの近傍に設けられている。端子接続部153Aは、陽極及び陰極の一方に対応し、端子接続部153Bは、陽極及び陰極の他方に対応する。
【0035】
ケース170は、壁部172、収容空間174、開口部176、コネクタ178、給電端子180A,180B、及び配線部182A,182Bを有する。壁部172は、略長方形状の底壁部172aと、第1壁部172bと、第2壁部172cと、第3壁部172dと、第4壁部172eとを含む。第1壁部172bと第4壁部172eとは互いに対向している。第2壁部172c及び第3壁部172dは、互いに対向するとともに第1壁部172b及び第4壁部172eに対して略垂直に延在する。第1壁部172b、第2壁部172c、第3壁部172d及び第4壁部172eは側壁部を構成し、この4つの側壁部と底壁部172aとによりモータ150を収容するための収容空間174が形成されている。4つの側壁部は、下端が底壁部172aの周縁部に連結されているが、上端側には壁部172が設けられていない。すなわち、4つの側壁部の上端側に、収容空間174へモータ150を挿入するための開口部176が設けられている。
【0036】
コネクタ178は、外部電源の端子が挿入される挿入口178mと、挿入口178m内に配置されたコネクタ端子178A,178Bを有し、第4壁部172eの外側面に設けられている。給電端子180A,180Bは、収容空間174において露出している。配線部182Aは、一端がコネクタ端子178Aに接続され、コネクタ178内から収容空間174まで引き回されて、他端が給電端子180Aに接続されている。配線部182Bは、一端がコネクタ端子178Bに接続され、コネクタ178内から収容空間174まで引き回されて、他端が給電端子180Bに接続されている。これにより、給電端子180A,180Bは、コネクタ178に電気的に接続される。外部電源の端子は、挿入口178aに挿入され、挿入口178a内のコネクタ端子178A,178Bに接続される。これにより、コネクタ178が外部電源に接続される(図1参照)。そして、外部電源から送り出された電力は、コネクタ端子178A,178B、配線部182A,182B及び給電端子180A,180Bを介して、モータ150に供給される。
【0037】
モータ150は、第1側面151cが底壁部172aと対向するように配置さる。したがって、開口部176は、出力軸152の軸方向に対して略平行に配置される。そして、モータ150は、出力軸152の軸方向に対して略垂直の方向であって、第1側面151cと底壁部172aとの距離が近づく方向に押圧されて、開口部176を介して収容空間174に挿入される。モータ150がケース170に収容された状態で、上面151aと第1壁部172b、底面151bと第4壁部172e、第1側面151cと底壁部172a、第3側面151eと第2壁部172c、第4側面151fと第3壁部172dが、それぞれ対向する。
【0038】
ここで、給電端子180A,180Bは、モータ150を収容空間174に挿入した際に、端子接続部153A,153Bと給電端子180A,180Bとが物理的に接触するように収容空間174に配置されている。本実施の形態では、第1側面151cにおける底面151bの近傍に端子接続部153A,153Bが設けられている。そのため、モータ150が収容空間174に収容された状態で第1側面151cと対向する底壁部172aにおける、第4壁部172eの近傍に、給電端子180A,180Bが突設されている。したがって、モータ150がケース170に挿入された際に、モータ150がケース170に収容されると同時に、端子接続部153A,153Bに給電端子180A,180Bが挿入される。よって、本実施の形態の光学ユニット100によれば、モータ150のケース170への収容と、モータ150とコネクタ178との電気的接続とを同時に行うことができるため、光学ユニット100の製造工程の簡略化を図ることができる。
【0039】
ケース170の第4壁部172eには、モータ150のボス部154bが挿入されるスリット172e1が設けられている。また、第4壁部172eとコネクタ178との間には、スリット172e1に向けて突出する固定用フック部184が設けられている。モータ150がケース170に挿入される際、固定用フック部184は、モータ150のボス部154bにより押圧されて弾性変形し、スリット172e1の外側に向けて変位する。モータ150が完全にケース170に収容されると、固定用フック部184がボス部154bを乗り越えた状態となり、ボス部154bによる固定用フック部184の押圧が解除されて、固定用フック部184は弾性により変位前の状態に戻る。これにより、モータ150のボス部154bと固定用フック部184とがランス係合し、モータ150の底面151b側部分が収容空間174から抜け出ることが抑制される。
【0040】
また、開口部176に接する第1壁部172bは、開口部176から延びるスリット172b1により第1部分172b2及び第2部分172b3に分割されている。また、スリット172b1内には、底壁部172a側から突出するボス受部172b4が設けられている。ボス受部172b4は、第1壁部172bの一部を構成する。また、第1部分172b2及び第2部分172b3は、それぞれスリット172b1に接する面に、スリット172b1側に突出する突出部172b5,172b6を有する。突出部172b5及び突出部172b6により、スリット172b1に、スリット幅が他の領域よりも小さい括れ部が形成されている。この括れ部におけるスリット幅は、ボス部154aの直径よりも小さく設定されている。
【0041】
モータ150がケース170に挿入される際、モータ150のボス部154aにより第1壁部172bが変形してモータ150のケース170への進入が許容される。モータ150がケース170に収容された状態で、出力軸152は、スリット172b1を介して収容空間174から外部に突出する。
【0042】
図8(A)〜図8(C)は、モータがケースへ収容される際の第1壁部の形状変化を説明するための図である。まず、図8(A)に示すように、モータ150がケース170に挿入される際、ボス部154aがスリット172b1の開放端からスリット内に進入する。そして、ボス部154aは、突出部172b5及び突出部172b6(図5参照)で形成されるスリット172b1の括れ部に向けて押し進められる。
【0043】
図8(B)に示すように、ボス部154aが括れ部に近づいていくと、ボス部154aによって、括れ部のスリット幅が拡がる方向に突出部172b5,172b6が押圧される。これにより、第1壁部172bが弾性変形し、第1部分172b2と第2部分172b3とが互いに離れる方向(図8(B)において矢印で示す方向)に変位する。その結果、モータ150の収容空間174(図5参照)への進入が許容される。
【0044】
図8(C)に示すように、ボス部154aがスリット172b1内をさらに押し進められると、ボス部154aが括れ部を通過して突出部172b5,172b6を乗り越える。そして、ボス部154aの下端がボス受部172b4に突き当たり、モータ150が収容空間174内に収容される。この状態で、ボス部154aによる突出部172b5,172b6の押圧が解除され、弾性により第1部分172b2及び第2部分172b3が変位した位置(図8(B)に示す位置)から互いに近づく方向(図8(C)において矢印で示す方向)に変位する。これにより、スリット172b1の開放端に向かう方向へのボス部154aの変位が突出部172b5,172b6により規制される。その結果、モータ150の収容空間174からの離脱が抑制される。
【0045】
このように、本実施の形態に係る光学ユニット100は、いわゆるスナップフィットによりモータ150をケース170に固定している。そのため、光学ユニット100の製造工程を簡略化することができる。また、ケース170からのモータ150の抜け落ちを防ぐために開口部176を塞ぐカバーが必要とされないため、光学ユニット100の部品点数の削減による低コスト化及び軽量化を実現できる。
【0046】
図4図5及び図8に示すように、第1壁部172bの第1部分172b2は、第1壁部172bの面方向に突出する第1フランジ部186を含み、第2部分172b3は、第1壁部172bの面方向に突出する第2フランジ部187を含む。そして、第1フランジ部186及び第2フランジ部187にはそれぞれ、ベース部110にケース170を固定するための固定機構188が設けられている。本実施形態において、固定機構188は、ねじ等の締結部材が挿通される挿通孔である。また、第1部分172b2及び第2部分172b3はそれぞれ、位置決め凸部189を有する。位置決め凸部189は、ケース170をベース部110に固定した状態でベース部110に接する面に設けられ、出力軸152の軸方向と略平行に突出している。
【0047】
図4に示すように、ケース170は、ベース部110の枠部112における灯具後方側の主表面に、第1壁部172bが当接するようにして、ベース部110に取り付けられる。したがって、モータ150は、ケース170が当接するベース部110の面に対して出力軸152が略垂直となるように配置される。
【0048】
第1ケース170Aは、貫通孔である固定機構188がベース部110のケース固定用貫通孔121Aと位置合わせされて、ベース部110に取り付けられる。第1ケース170Aがベース部110に取り付けられる際、第1モータ150Aの出力軸152及び接続部160がベース部110の出力軸用貫通孔123Aに挿通され、歯車である接続部160の歯が第1シェード130の歯車部135と噛み合わされる(図3参照)。また、位置決め凸部189がベース部110の嵌合部122Aに嵌め込まれ、これによりベース部110に対する第1ケース170Aの高精度な位置決めがなされる。第1ケース170Aは、ねじ等の締結部材200が第1ケース170Aの固定機構188及びベース部110のケース固定用貫通孔121Aに挿通されることで、ベース部110に固定される。
【0049】
第2ケース170Bは、貫通孔である固定機構188がベース部110のケース固定用貫通孔121Bと位置合わせされて、ベース部110に取り付けられる。第2ケース170Bがベース部110に取り付けられる際、第2モータ150Bの出力軸152及び接続部160がベース部110の出力軸用貫通孔123Bに挿通され、歯車である接続部160の歯が第2シェード140の歯車部145と噛み合わされる(図3参照)。また、位置決め凸部189がベース部110の嵌合部122Bに嵌め込まれ、これによりベース部110に対する第2ケース170Bの高精度な位置決めがなされる。第2ケース170Bは、ねじ等の締結部材200が第2ケース170Bの固定機構188及びベース部110のケース固定用貫通孔121Bに挿通されることで、ベース部110に固定される。
【0050】
本実施の形態では、ケース170が第1部分172b2の第1フランジ部186と第2部分172b3第2フランジ部187とに固定機構188を有し、第1部分172b2及び第2部分172b3がそれぞれベース部110に対して固定される。そのため、ケース170がベース部110に固定された状態で、第1部分172b2及び第2部分172b3の互いに離れる方向の変位が抑制される。したがって、ケース170のベース部110への取付機構を利用して、モータ150のケース170からの脱落を抑制することができる。また、位置決め凸部189も第1部分172b2と第2部分172b3とに設けられているため、位置決め凸部189によっても第1部分172b2及び第2部分172b3の互いに離れる方向の変位を抑制することができる。したがって、ケース170のベース部110への位置決め機構を利用して、モータ150のケース170からの脱落を抑制することができる。
【0051】
なお、ケース固定用貫通孔121A,121B及び固定機構188の寸法精度等を高めて、ケース固定用貫通孔121A,121B、固定機構188及び締結部材200によって、ベース部110に対するケース170の高精度な位置決めを行ってもよい。この場合、位置決め凸部189を省略することができる。また、本実施の形態では、ケース固定用貫通孔121A及び固定機構188を貫通孔とし、締結部材200を用いてベース部110にケース170を固定しているが、従来公知の他の固定様式を採用してもよい。
【0052】
続いて、第1シェード130及び第2シェード140の変位と、光学ユニット100により形成可能な配光パターンとについて説明する。図9(A)〜図9(C)は、第1シェード及び第2シェードの状態と形成される配光パターンとを説明するための図である。なお、図9(A)〜図9(C)は、灯具前方から見た光学ユニット100を示している。
【0053】
第1シェード130及び第2シェード140は、それぞれ第1シェード支持軸120A、第2シェード支持軸120Bを回動軸として、光源光の一部を遮光する進出位置と光源光の当該一部を非遮光とする退避位置とに変位可能である。各シェードは、モータ150の出力軸152の回転により、進出位置及び退避位置の一方から他方へ変位される。また、各シェードは、モータ150がオフにされると、復帰ばね104A,104Bの付勢力により前記他方から前記一方へ変位される。
【0054】
本実施の形態において、第1シェード130は、第1モータ150Aの出力軸152からの力が接続部160を介して伝達され、出力軸152の回転により進出位置から退避位置へ変位する。退避位置に向けて変位する第1シェード130は、第1シェード用第2ストッパ125Aに突き当たって退避位置で停止する。また、第1シェード130は、第1モータ150Aがオフになると、復帰ばね104Aの付勢力により退避位置から進出位置へ変位する。進出位置に向けて変位する第1シェード130は、第1シェード用第1ストッパ124Aに突き当たって進出位置で停止する。このように、ロービーム用配光パターンを形成するための第1シェード130が復帰ばね104Aにより進出位置へ戻るよう構成することで、光学ユニット100がハイビーム用配光パターン又は片ハイ用配光パターンの形成姿勢で固定されてしまうことを確実に回避してフェールセーフ機能を実現できる。
【0055】
一方、第2シェード140は、第2モータ150Bの出力軸152の回転が接続部160を介して伝達され、出力軸152の回転により退避位置から進出位置へ変位する。進出位置に向けて変位する第2シェード140は、第2シェード用第1ストッパ124Bに突き当たって進出位置で停止する。また、第2シェード140は、第2モータ150Bがオフになると、復帰ばね104Bの付勢力により進出位置から退避位置へ変位する。退避位置に向けて変位する第2シェード140は、第2シェード用第2ストッパ125Bに突き当たって退避位置で停止する。
【0056】
図9(A)に示すように、第1シェード130が進出位置、第2シェード140が退避位置にある状態で、灯具ユニット10は、ロービーム用配光パターンを形成することができる。また、図9(B)に示すように、第1シェード130及び第2シェード140が退避位置にある状態で、灯具ユニット10は、ハイビーム用配光パターンを形成することができる。また、図9(C)に示すように、第1シェード130が退避位置、第2シェード140が進出位置にある状態で、灯具ユニット10は、左側通行時に対向車線側のみにハイビーム領域を有する、いわゆる右片ハイ用配光パターンを形成することができる。なお、車両左側に配置される前照灯ユニットの灯具ユニットでは、灯具前方から見て第1シェード130が左側(車幅方向内側)に配置され、第2シェード140が右側(車幅方向外側)に配置される。そして、当該灯具ユニットは、ロービーム用配光パターンと、ハイビーム用配光パターンと、左側通行時に自車線側のみにハイビーム領域を有する、いわゆる左片ハイ用配光パターンとを形成することができる。上述した各配光パターンの形状は公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0057】
ここで、ケース170のベース部110への取付姿勢について説明する。図10(A)は、第1シェードの歯車部近傍の拡大図である。図10(B)は、第2シェードの歯車部近傍の拡大図である。図11は、灯具後方から見た光学ユニットの概略構造を示す図である。図10(A)に示すように、第1モータ150Aの出力軸152が矢印Sの方向に回転すると、第1シェード130は、復帰ばね104Aの付勢力に逆らって進出位置から退避位置へ向けて変位する。そして、第1シェード用第2ストッパ125Aに当接して退避位置で停止する。第1シェード130が退避位置で停止した後も、第1モータ150Aの出力軸152の回転力が第1シェード130に伝達され、接続部160により第1シェード130が押圧され続けて、第1シェード130が退避位置に維持される。
【0058】
第1シェード130が退避位置に維持されている間、接続部160と歯車部135との接点Tには、第1シェード130を第1シェード用第2ストッパ125Aに押し付ける方向の力F1がかかり続ける。一方、第1シェード130は第1シェード用第2ストッパ125Aにより変位が規制されている。そのため、第1モータ150Aは、力F1の反力を受け、接点Tを支点として、第1シェード130の垂直部134が付勢される方向と略逆の方向X1(接点Tと出力軸152とを結ぶ直線に対して略垂直の方向)に変位しようとする。
【0059】
また、図10(B)に示すように、第2モータ150Bの出力軸152が矢印Sの方向に回転すると、第2シェード140は、復帰ばね104Bの付勢力に逆らって退避位置から進出位置へ向けて変位する。そして、第2シェード用第1ストッパ124Bに当接して進出位置で停止する。第2シェード140が進出位置で停止した後も、第2モータ150Bの出力軸152の回転力が第2シェード140に伝達され、接続部160により第2シェード140が押圧され続けて、第2シェード140が進出位置に維持される。
【0060】
第2シェード140が進出位置に維持されている間、接続部160と歯車部145との接点Tには、第2シェード140を第2シェード用第1ストッパ124Bに押し付ける方向の力F1がかかり続ける。一方、第2シェード140は第2シェード用第1ストッパ124Bにより変位が規制されている。そのため、第2モータ150Bは、力F1の反力を受け、接点Tを支点として、第2シェード140の垂直部144が付勢される方向と略逆の方向X2(接点Tと出力軸152とを結ぶ直線に対して略垂直の方向)に変位しようとする。
【0061】
そこで、図11に示すように、ケース170は、ストッパに当接したシェードを接続部160が押圧し続けることでモータ150にかかる力により、モータ150が変位する方向X1,X2の先端側に、壁部172の少なくとも一部が延在するように、ベース部110に対する姿勢が定められてベース部110に固定される。本実施の形態では、第1シェード用第2ストッパ125Aに当接した第1シェード130が押圧され続けることで、第1モータ150Aは、灯具後方から見て右下の方向X1に変位しようとする。これに対し、第1モータ150Aが変位する方向X1の先端側に、第1ケース170Aの底壁部172aが延在している。
【0062】
また、第2シェード用第1ストッパ124Bに当接した第2シェード140が押圧され続けることで、第2モータ150Bは、灯具後方から見て略右上の方向X2に変位しようとする。これに対し、第2モータ150Bが変位する方向X2の先端側に、第2ケース170Bの底壁部172aが延在している。
【0063】
これにより、モータ150の変位をケース170の壁部172で規制することができるため、モータ150がケース170から脱落することをより確実に抑制することができる。したがって、本実施の形態の光学ユニット100によれば、定められたモータの取付姿勢を維持することができるため、光学ユニット100の動作信頼性の向上を図ることができる。
【0064】
続いて、第1シェード130及び第2シェード140の進出位置と退避位置の配置について説明する。図12(A)は、モータの概略構造を示す分解斜視図である。図12(B)は、モータの内部構造の模式図である。
【0065】
図12(A)及び図12(B)に示すように、モータ150は、上述したハウジング151、出力軸152及び端子接続部153A,153B(図7(A)参照)に加え、整流子155(コミテータ)、一対のブラシ156、ブラシアーム157、コア158、巻線159及び複数のマグネット162を備える。整流子155は、円筒形状を有し、出力軸152に圧入されている。したがって、整流子155は、出力軸152とともに回転する。また、整流子155は、出力軸152の軸周りに間隔をおいて配列された複数の整流子片155aを有する。本実施の形態では、整流子片155aは3つである。
【0066】
一対のブラシ156は、整流子155を挟んで配置されている。2つのブラシ156は、それぞれブラシアーム157の先端に取り付けられて、先端面が整流子155の外周面に摺接するように保持されている。2つのブラシアーム157は、一方が端子接続部153Aに、他方が端子接続部153Bにそれぞれ接続されている。コア158は、巻線159が巻回された状態で出力軸152に圧入されている。複数のマグネット162は、ハウジング151の内面に沿って設けられ、周方向に間隔をおいて配置されている。コア158は、外周面がマグネット162の内周面と所定のクリアランス(磁気ギャップ)を空けて対向配置されている。モータ150の構造は公知であるため、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0067】
ここで、第1シェード130及び第2シェード140の進出位置及び退避位置は、モータ150によるシェードの変位時に出力軸152が回転する角度θが、以下の式(1)を満たすように設定されている。
式(1):θ≧360°/n (nは整流子片数)
【0068】
また、本実施の形態では、第1シェード用第1ストッパ124Aと第1シェード用第2ストッパ125Aとの位置関係、及び第2シェード用第1ストッパ124Bと第2シェード用第2ストッパ125Bとの位置関係が、それぞれ角度θが上記式(1)を満たすように定められている。
【0069】
モータ150は、出力軸152の回転が繰り返されると、ブラシ156の先端が摩耗して金属粉が発生する。モータ150は、この金属粉が隣接する整流子片155a間の隙間155bに入り込むと、整流子片155a間でショートしてしまう可能性がある。これに対し、進出位置及び退避位置は、シェード変位時の出力軸152の回転角度θが上記式(1)を満たすように互いの位置関係が設定されている。出力軸152の回転角度θが上記式(1)を満たす場合、シェードの変位時に出力軸152が回転する角度θは、隙間155bが配置される角度間隔以上となる。そのため、より確実にブラシ156を、整流子片155a間の隙間155b上を通過させることができる。
【0070】
本実施の形態では、モータ150が3つの整流子片155aを有し、3つの整流子片155aが出力軸152の軸回りに等間隔に配置されている。そのため、隙間155bは略120°の間隔で配置される。そして、進出位置及び退避位置は、シェードの変位持に出力軸152が回転する角度θが120°以上となるように設定される。したがって、シェードの変位時に、ブラシ156はほぼ確実に隙間155bを跨ぐ。
【0071】
ブラシ156が整流子片155a間の隙間155bを跨ぐとき、ブラシ156と整流子155との間にはスパークが発生する。金属粉は、このスパークにより酸化されて導電性が失われる。そのため、シェード変位時の出力軸152の回転角度θを上記式(1)を満たすように設計することで、スパークをより確実に発生させることができ、金属粉による整流子片155a間のショートをより確実に回避することができる。その結果、モータ150をより長期間正常に動作させることができ、光学ユニット100の動作信頼性を向上させることができる。
【0072】
以上説明したように、本実施の形態に係る光学ユニット100は、第1シェード130及び第2シェード140が進出位置から退避位置、又は退避位置から進出位置まで変位する際に出力軸152の回転する角度θが、上記式(1)を満たすように、第1シェード130及び第2シェード140の進出位置及び退避位置が設定されている。これにより、モータ150をより長期間正常に動作させることができるため、光学ユニットの動作信頼性の向上を図ることができる。
【0073】
また、本実施の形態の光学ユニット100では、ストッパに当接したシェードを接続部160が押圧し続けることでモータ150にかかる力により、モータ150が変位する方向の先端側に、壁部172の少なくとも一部が延在するように、ベース部110に対するケース170の取付姿勢が定められている。これにより、ケース170からのモータ150の脱落をより確実に抑制することができるため、光学ユニット100の動作信頼性の向上を図ることができる。
【0074】
さらに、本実施の形態の光学ユニット100では、モータ150が収容空間174に挿入された際に、端子接続部153A,153Bと給電端子180A、180Bとが物理的に接触するように、給電端子180A,180Bが収容空間174に配置されている。これにより、モータ150のケース170への収容と、モータ150とコネクタ178との電気的接続とを同時に行うことができるため、光学ユニット100の製造工程の簡略化を図ることができる。
【0075】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることが可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれる。上述の実施の形態に変形が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態及び変形それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0076】
1 車両用灯具、 100 光学ユニット、 150 モータ、 152 出力軸、 155 整流子、 155a 整流子片、 156 ブラシ、 160 接続部、 170 ケース、 170A 第1ケース、 170B 第2ケース、 172 壁部、 172b1 スリット、 172b2 第1部分、 172b3 第2部分、 174 収容空間、 176 開口部、 178 コネクタ、 180A,180B 給電端子、 186 第1フランジ部、 187 第2フランジ部、 188 固定機構、 189 位置決め凸部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12