【実施例】
【0013】
以下、図面と共に本発明によるプラスチックの押出方法及びプラスチックの押出用シリンダの好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。
また、本発明と従来例との違いは、輸送部シリンダ3の内孔2Aの上流側3Aの横断面上半分40に、ざぐり、切削等による
図2及び図6で示すように断面弧状をなす各1個のみの溝からなる左上側除去部41,
右上側除去部42を形成することにより、プラスチック原料の内孔内への安定した食い込み及び送り込みを得ることである。
【0014】
図1において、符号1で示されるものは二軸押出機であり、この二軸押出機1のシリンダ2は、上流Aから下流Bへ向けて配設された輸送部シリンダ3、混練部シリンダ4及び放出部シリンダ5から構成されている。
【0015】
前記シリンダ2の上流Aには、プラスチック原料Pをシリンダ2内に供給するためのホッパ6が原料供給部3aに設けられ、前記シリンダ1内には一対のスクリュ11が互いに異方向内回りに回転自在に内設され、このスクリュ11は、上流Aから下流Bへ向けて、輸送部スクリュ11a、混練部スクリュ21及び放出部スクリュ22が設けられている。
【0016】
図2は前記輸送部シリンダ3の上流側3Aの端面である上流側横断面3Aaを示しており、この輸送部シリンダ3の中心位置には内孔2Aがその長手方向に沿って貫通して形成されている。
前記内孔2Aは、一対の真円孔43がその一部に互いに重なり合うように連通されて端面が8字状をなす二軸空間用となるように形成されている。
【0017】
前記内孔2Aの横断面上半分40におけるその左上角部44及び右上角部45には、前記真円孔43の一部をざぐり又は切削等によって加工した非真円孔となるように
1個のみの左上側除去部41及び
1個のみの右上側除去部42が形成されている。
前記輸送部シリンダ3を側面から見た時の内孔2Aの高さHは、
図3で示されるように、輸送部シリンダ3の上流側3Aから下流側3Bにかけて同一、もしくは順次狭くなる。
【0018】
前記輸送部シリンダ3を平面から見た時(
図5)の内孔2Aの横断面上半分40の幅Wは、輸送部シリンダ3の上流側3Aから下流側3Bにかけて同一、もしくは順次狭くなるように形成されている。
尚、前記内孔2Aの横断面上半分40の下側である横断面下半分40aは、前記各真円孔43の下部が互いに接続された状態で形成されている。
【0019】
さらに、詳細に述べると、前記内孔2Aの上流側3Aの左上側除去部41及び右上側除去部42の各側部内周には、
図6のように、部分的に直線内周側壁50が形成され、各直線内周側壁50,50間の前記高さHは、順次狭くなるように形成された場合、
図3のように、上流側3Aから下流側3Bへ向けて直線状で互いに内側に向けて傾斜して狭くなるように形成されている。また、各直線内周側壁50,50間の前記幅Wは、順次狭くなるように形成された場合、
図5のように、上流側3Aから下流側3Bへ向けて直線状で互いに内側に向けて傾斜して狭くなるように形成されている。
【0020】
前記左上側除去部41及び右上側除去部42は、
図6に示されるように、互いに横方向に重なり合い並設された直径Dの一対の真円孔43に対して、ハッチングによって示されていることにより、各真円孔43と各除去部41,42との関係が明確に示されている。
【0021】
また、前記輸送部シリンダ3の内孔2Aの内部空間を示す断面形状は、上流側3Aにおける互いに重なり合った8字状の一対の真円孔43に各除去部41,42が連設された状態から、下流側3Bに向けて、各除去部41,42が順次狭くなるように形成された場合、
図3、
図5で示されるように、幅もしくは高さどちらか一方を同一とし、幅もしくは高さどちらか一方が順次狭くなる、すなわち、内孔2Aの空間断面積が狭まって下流側3Bにおいては従来と同じ一対の真円孔43のみからなる内孔2Aとなり、輸送部シリンダ3の上流側3Aから下流側3Bに向かう前記内孔2Aの空間断面積は、流路方向Cのどの地点でも互いに異なるように構成され、下流側3Bに行くほど空間断面積は狭まる。
【0022】
従って、前述の構成の輸送部シリンダ3を用いて、上流側3Aから下流側3Bに向けて追い込まれるプラスチック原料Pは、上流側3Aでは下流側3Bよりも大きい空間に入り込み、下流側3Bに移行するに従って順次空間容積が狭まって行く構成であるため、プラスチック原料Pの進行を妨げる抵抗力が従来のように一気に発生することもなく、プラスチック原料Pの搬送機能が円滑に実行されて結果的には、処理量の増大となる。
【0023】
また、前述のように各スクリュ11の回転方向を異方向内回りに限定させる根拠としては、
図7で示されるように、スクリュ11のスクリュフライトのサイドフォースF1、F2に対するシリンダ2からのサポートを要しない方向であることに基づいている。
すなわち、2条スクリュ(スクリュの断面形状が略楕円)での2軸押出機の場合、スクリュフライトが原料を押し出す際に生じる圧力が軸を横に押す力=サイドフォースとなって、シリンダ11とスクリュフライトの位置関係(A)、(B)により、脈動的に生じることが知られている。
このサイドフォースF1、F2による軸ぶれを抑えるためにはシリンダ2の壁面からのサポートを必要とし、異方向内回りの場合、サイドフォースF1、F2がその極大となるのは、フライト山がシリンダ2上部を通過する際に樹脂を中央部のシリンダ2のくびれ2aに押し込むように動く時であり、この時のサイドフォースF1、F2の向きは下に開くよう(4時と8時の時計の短針の向き)に生じる。ここで、
図6に示すように、
各々1個のみの溝からなる左上側除去部41及び右上側除去部42を配した位置(2時と10時の
みの時計の短針の向き)はサイドフォースF1、F2が強くは動かないので、サポートが無くても構わない位置となり、この位置に前記各除去部41、42を設けても軸ぶれの懸念は生じないためである。