(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記フラットジャッキは、プレロード後の受替えまで行えるものであるが、構造的に荷重精度が低く、1割以上の誤差が発生し、免震装置(アイソレータ)に与える変形量にバラツキが生じてしまい、その結果、構造物に有害な不等沈下を生じさせているおそれがある。また、フラットジャッキでプレロードして樹脂を注入後、その樹脂を硬化させて受替えを完了するため、当該フラットジャッキはそれら工事で施工される躯体内に埋め殺しにされ、再利用することはできず、経済的な負担が大きかった(例えば、特許文献4[0004]及び特許文献5[0004]参照)。
【0005】
また、従来のフラットジャッキは、円盤状で定形であるため、免震装置設置工事や橋梁支承交換工事で使用する場合、フラットジャッキが、その上下に配置する鋼板固定用のボルトや袋ナットに干渉し所望箇所に設置しにくいとか設置できないといったことがあった。
【0006】
本発明の解決課題は、
二以上の薄型ジャッキを組み立てて形成される型枠であって、打設材打設用の型枠として利用可能であり、内型枠の外側に配置して
当該内型枠を支持するサポートとして
も利用可能であ
り、鋼板固定用のボルトや袋ナットとの干渉を回避でき、免震装置設置工法や橋梁支承交換工法等の各種建設工事に使用でき
、それら工事への使用後は、薄型ジャッキを埋め殺しにすることな
く取り外して繰り返し利用可能
な型枠と、建造物の不等沈下を防止して建造物の健全を維持可能な免震装置設置工法及び橋梁支承交換工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の
型枠に使用する薄型ジャッキは、外部から供給する油その他の圧力媒体の量(圧力)を調整することによって伸縮可能な薄型ジャッキであって、その薄型ジャッキはシリンダ内に媒体室と可動体(ラムやロッド等を含む)があり、媒体室は外部から圧力媒体(主としてオイル)を給排出すると伸縮してその伸縮方向に前記可動体を移動させることができ、可動体は媒体室の伸縮に伴って上下動し、二以上を平面視リング状(円形や角形のリング状を含む。また、二以上が隙間なくリング状にされたものの他、隙間をあけてリング状にされたものを含む。明細書及び特許請求の範囲において同じ。)に組み立てることにより内側面で囲まれた打設材打設用の打設空間が形成されて型枠として使用可能であり、他の型枠
(内型枠)の外側に配置して当該型枠を支持するサポートとしても使用可能であり、それら使用後は前記組み立てを分解して再使用可能としたものである。また、二以上のジャッキの圧力媒体をホース等により連通させることでジャッキすべてに同じ圧力を生みだすことができる。
【0008】
前記薄型ジャッキは、打設空間に打設材を送り込み可能な打設ホースを挿通可能なホース挿通孔を備えたもの、又は打設ホースを挿通することなく打設材を送り込み可能な打設通孔を備えたものとすることもできる。この場合、打設ホース挿通孔又は打設通孔は、薄型ジャッキの厚さ方向下方寄りの位置に設けて、それらから供給される打設材が打設空間の底側から打設されるようにするのが好ましい。前記ホース挿通孔又は打設通孔は、リング状に組み立てた二以上のジャッキに設けることもできる。その場合は、二以上の箇所から打設できるので迅速な打設が可能となる。ジャッキがホース挿通孔又は打設通孔を備えない場合は、リング状に組み立てるジャッキの任意の箇所の隣接ジャッキ間に設ける型枠に隙間を開けてその隙間を打設材供給路とし、その打設材供給路から打設材を打設空間内に打設することができる。
【0009】
前記薄型ジャッキには、打設空間内に打設された打設材に混入している空気をジャッキの外に抜く空気抜き孔を設けることもできる。この場合、空気抜き孔は薄型ジャッキの厚さ方向上方寄りの位置に設けて、打設空間内に打設される打設材の量が多くなっても空気が抜けて、打設材内の未充填部の発生を防止できるようにするのが好ましい。この空気抜き孔も二以上の薄型ジャッキに設けて、打設空間内に打設された打設材内の空気が抜け易くなり、未充填部が発生しにくくなる(打設材を密に打設できる)ようにすることもできる。また、空気抜き孔を設けない場合は、リング状に組み立てるジャッキの任意の箇所の隣接ジャッキ間に設ける型枠に隙間をあけてその隙間を空気抜き孔とすることができる。
【0010】
前記薄型ジャッキは、前記型枠を形成する場合の内周面をカバーで被覆したものとすることもできる。カバーは媒体室の伸縮及びそれに伴う可動体の移動に伴って伸縮可能なものが好ましい。カバーはジャッキの内周面(打設空間の外周面)を被覆して、打設材による当該内周面の汚れを防止できるものであれば、形状や材質の制約は受けず、例えば、伸縮可能な蛇腹式の金属薄板、樹脂シート、空気を出し入れできるホース、テープ、ゴムシート等であってもよい。カバーはジャッキの内周面から取り外し可能とすることもできる。
【0011】
本発明の免震装置設置工法は、ジャッキを用いて既設建造物の基礎柱に免震装置を設置する免震装置設置工法であって、前記基礎柱の周囲に仮受け手段を配置して建造物の荷重を仮受けし、前記仮受け状態で、前記基礎柱の一部をその上部と下部を残して切除し、前記切除により生じた基礎
柱下部と基礎
柱上部との間のスペースに免震装置を配置
する。前記免震装置と基礎柱上部との間又は免震装置と基礎柱下部との間に前記いずれかの薄型ジャッキ
を、二以上、リング状に
配置してその内側に打設空間を形成
する。前記
二以上の薄型ジャッキの媒体室内に圧力媒体を供給して当該媒体室を伸ばして可動体を移動させる(上昇させる)ことにより免震装置をプレ圧縮して前記仮受け手段にかかる荷重を免震装置に移行
させる。リング状に組み立てられた二以上の薄型ジャッキの打設空間内に打設材を打設して前記免震装置の上又は下に打設材による支持具を形成
する。支持具に所要の強度が発現した後に、前記媒体室から圧力媒体を排出して当該媒体室を縮ませることにより可動体を戻り方向に移動(下降)させ
て、支持具に荷重を移行
する。その後に、前記リング
状の二以上の薄型ジャッキ
を撤去し
て、前記既設建造物の荷重を前記支持具及び免震装置に移行させ、その後に前記仮受け手段を撤去する方法である。ここで、支持具の所要強度とはジャッキで保持していた力を代わりに受け止めることのできる応力度(強度)のことである。
【0012】
本発明の橋梁支承交換工法は、ジャッキを用いて橋梁支承を交換する橋梁支承交換工法であって、橋脚の沓座部分に前記いずれかの薄型ジャッキ
を、二以上、リング状に組み立ててその内側に打設空間を形成
し、リング状に組み立てた
二以上の薄型ジャッキの上に支圧板を載置し、当該支圧板の上に新設用の支承を載置
する。その載置後に、前記薄型ジャッキの媒体室内に圧力媒体を供給して当該媒体室を伸ばすことにより可動体を移動(上昇)させ、当該薄型ジャッキで橋桁の荷重を仮受け
する。その仮受け後に前記二以上の箇所の薄型ジャッキの打設空間内に打設材を打設して前記免震装置の上又は下に打設材による支持具を形成
する。その支持具に所要の強度が発現した後に、前記媒体室から圧力媒体を排出して当該媒体室を縮ませて前記可動体を戻り方向に移動(降下)させ、前記リング状の薄型ジャッキを分解して撤去することにより、橋桁の荷重を薄型ジャッキから前記支承及び支持具に移行させる方法である。
【発明の効果】
【0013】
二以上の薄型ジャッキで形成された本発明の型枠は、次の効果がある。
(1)
モルタルやコンクリートを打設可能な型枠として
利用できる。
(2)
内型枠の外側に配置して、
内型枠を外側から支持するサポートとして使用することもできる。
(3)二以上をリング状に組み立て分解可能としたので、免震装置設置工法や橋梁支承交換工法に使用した場合、使用後に分解して取り外せば埋め殺しすることなく繰り返し使用できて経済的である。
(4)ホース挿通孔又は打設通孔を
薄型ジャッキに設ければ、打設材を打設空間内に打設し易い。
(5)ホース挿通孔又は打設通孔を、薄型ジャッキの厚さ方向下方寄りの位置に設ければ、打設材が打設空間の底側から打設されるため、打設材内に空気が入りにくくなる。
(6)空気抜き孔を
薄型ジャッキに設ければ、打設空間内に打設された打設材に混入した空気が抜けるため、打設材から空気を完全に抜ききることができ、打設材内にすができず、密に打設されて、設計した強度を確保することができる。
(7)空気抜き孔を薄型ジャッキの厚さ方向上方寄りの位置に設ければ、打設材が打設空間の底側から次第に打設されるので、空気が打設材内に残留し難くなる。
(8)リング状に組み立てられた薄型ジャッキの内周面側をカバーで被覆しておけば、薄型ジャッキを型枠として使用しても薄型ジャッキの内周面に打設材が付着しないため、薄型ジャッキを繰り返し使用することができる。
(9)二以上のジャッキの圧力媒体を連通させることで、ジャッキには均等の圧力を得ることができる。
(10)フラットジャッキと異なり、構造部材を塑性領域まで使用することもなく、受圧面積の増加もないため荷重を正確に計測できる。なお誤差は3%程度である。
【0014】
本発明の免震装置設置工法及び橋梁支承交換工法には、次の効果がある。
(1)
薄型ジャッキを組み立て分解可能
とした型枠を使用するので、打設材の打設後にその薄型ジャッキを分解して取り外すことができ、埋め殺しにすることなく繰り返し使用できて経済的である。
(2)
薄型ジャッキを組み立て分解可能
とした型枠を使用するので、二以上の薄型ジャッキの配置を変えることで鋼板固定用のボルトや袋ナットとの干渉を回避することができ、施工場所の制約を受けにくい。
(3)受け換える荷重を従来のフラットジャッキに比べると正確に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明
の型枠用薄型ジャッキの一例を示すものであって、免震装置の上に二つの半環状のジャッキを組み合わせてセットした状態を示す斜視図。
【
図2】本発明
の型枠用薄型ジャッキの断面図であって、(a)はジャッキアップ前の断面図、(b)はジャッキアップ後の断面図、(c)はホース挿通孔に打設用のホースを挿通した状態を示す断面図。
【
図3】本発明
の型枠用薄型ジャッキを角形にした場合の一例を示すものであって、(a)は免震装置上に薄型ジャッキを八つ配置した場合の説明図、(b)は四つ配置した場合の説明図。
【
図4】本発明の免震装置設置工法の作業工程説明図であって、(a)は仮受け手段を設置した状態を示すもの、(b)は基礎柱の切断部分を示すもの、(c)は基礎柱の一部を切除して、基礎柱上部に上部躯体を、基礎柱下部に下部躯体を設けた状態を示すもの。
【
図5】本発明の免震装置設置工法の作業工程説明図であって、(a)は下部躯体上に免震装置を設置し、その免震装置上に薄型ジャッキを配置した状態を示すもの、(b)は薄型ジャッキを伸ばした状態を示すもの、(c)は(b)の状態の薄型ジャッキの打設空間内に打設材を打設した状態を示すもの。
【
図6】本発明の免震装置設置工法の作業工程説明図であって、(a)は薄型ジャッキを縮める状態を示すもの、(b)は基礎柱上部の周囲に補強用打設材を打設し、養生した状態を示すもの、(c)は仮受け手段を撤去して免震装置設置工事を完了させた状態を示すもの。
【
図7】免震装置が実際に荷重を受けて変形する鉛直変形角および鉛直変位差の説明図。
【
図8】(a)は免震装置設置工法で使用可能な免震装置の一例を示す一部切り欠きの斜視図、(b)は橋梁支承交換工法で使用可能な免震支承の一例を示す一部切り欠きの斜視図。
【
図9】(a)は免震装置の
上に複数個の薄型ジャッキと二つの注入用ユニットをリング状に配置し、その内側に打設材漏れ防止用の自在チューブを配置した場合の平面図、(b)はモルタル硬化後に注入用ユニットの一つを引き抜いた状態を示す平面図、(c)は(a)のC−C断面図、(d)は(a)のA−A断面及びB−B断面を含む側面図。
【
図10】本発明の橋梁支承交換工法の作業工程説明図であって、(a)は沓座をブラストで清掃した状態を示すもの、(b)は清掃した部分にモルタルを打設した状態を示すもの、(c)は養生したモルタルの上
に本発明の型枠を載置した状態を示す
説明図。
【
図11】本発明の橋梁支承交換工法の作業工程説明図であって、(a)は本発明
における薄型ジャッキの上に支圧板を載せた状態を示すもの、(b)は支圧板の上にゴム支承を載置した状態を示すもの、(c)は薄型ジャッキを伸ばした状態を示す
説明図。
【
図12】本発明の橋梁支承交換工法の作業工程説明図であって、(a)は薄型ジャッキのラムを伸ばしてゴム支承で橋桁荷重を仮受けした状態で、薄型ジャッキの打設空間に打設材を打設する状態を示すもの、(b)は打設空間内に打設材を打設した状態を示すもの、(c)は打設材が所要の強度を発現した後に薄型ジャッキを縮めた状態を示す
説明図。
【
図13】本発明の橋梁支承交換工法の作業工程説明図であって、(a)は薄型ジャッキを撤去した状態を示すもの、(b)は養生したモルタルの周囲に補強用打設材を打設した状態を示すもの、(c)はゴム支承交換後の状態を示すもの。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(薄型ジャッキの実施形態)
本発明の
型枠用の薄型ジャッキ1の実施形態の一例を、図面を参照して説明する。この実施形態の薄型ジャッキ1は、単体(一つ)でも使用できるが、
図1及び
図3(a)(b)に示すように、二つ以上を組み合わせて使用できるものである。二以上の薄型ジャッキ1をその内周面が円形或いは角形のリング状に組み合わせることによって、それら複数の薄型ジャッキ1の内側面1bで囲われた打設材Fを打設可能な打設空間Sを形成できるようにしてある。夫々の薄型ジャッキ1は、油圧式、空圧式、機械式といった各種のものとすることができるが、以下では、油圧式の場合を一例として説明する。
【0017】
一例として
図1に示す薄型ジャッキ1はほぼ半環状のもので
ある。それを二つ対向させて内周面が円環状(円形リング状)になるように組み合わせ、両薄型ジャッキ1の連結部1aを突き合わせてボルトBとナットNで固定して
型枠を形成することができる。薄型ジャッキ1に囲まれた打設空間Sには、後述する打設ホース7(
図2(c))を通じて打設材Fを供給できるようにしてある。
【0018】
夫々の薄型ジャッキ1は、
図2(a)〜(c)に示すように、チューブ(シリンダ)2と媒体室3と可動体(ラムやロッド等を含む)4を備えており、媒体室3はシリンダ2の底側に設けられ、可動体4は媒体室3の上に設けられており、媒体室3は外部から媒体供給ホース5内を通して媒体(主に加圧オイル)を給排出することで上下に伸縮し、その伸縮に伴って可動体4がシリンダ2内を上下に摺動(スライド)するように構成されている。シリンダ2、媒体室3の周壁及び可動体4は例えば鋼材とかFRP等の硬質材で形成されている。
【0019】
図2(a)〜(c)に示すように、シリンダ2の底面、媒体室3及び可動体4の内側面、並びに可動体4の上面は、それら全体を被覆可能なカバー6で被覆してある。カバー6は内側被覆部6aを蛇腹状(波型)にして、媒体室3の伸縮に伴って可動体4が上下に摺動する際に、その動きに伴って伸縮するようにしてある。
図2(a)〜(c)に示した例では、カバー6に波型鋼板を使用してあるが、カバー6は媒体室3の伸縮及び可動体4の上下への摺動に追随して伸縮可能なものであれば他の構造、材質製であってもよく、例えば、樹脂シート、空気を出し入れできるホース、テープ、ゴムシート等であってもよい。カバー6は不要な場合は設けなくてもよい。
【0020】
カバー6には、モルタルやコンクリート等の打設材Fを打設空間S内に送る打設ホース7を差込むためのホース挿通孔8(
図2(c))を設けてある。ホース挿通孔8はホースを挿通することなく、そのまま打設材Fを送る打設通孔として使用することもできる。ホース挿通孔8は、薄型ジャッキ1の外周面(
図2(c)の左側)と内周面(同図の右側)に貫通させて、打設ホース7を挿抜できるようにしてある。ホース挿通孔8は
図2(c)のように薄型ジャッキ1の厚さ方向下方寄りに設けて、打設材Fが打設空間S内の底側から上側に向けて充填されるようにすると、打設材F内の空気が押し出され易くなって(抜け易くなって)打設材F内にすができにくくなり、打設材Fが密に打設されて、設計された強度を得ることができる。前記カバー6は打設空間S内に打設される打設材Fが付着するのを防止して、薄型ジャッキ1を再利用し易くするものである。
【0021】
夫々の薄型ジャッキ1には空気抜き孔9(
図1)を設けてあり、打設空間S内に打設材Fを打設する際に、打設空間S内の打設材Fに混入している空気が抜けるようにしてある。空気抜き孔9は薄型ジャッキ1の任意の位置に設けることができるが、薄型ジャッキ1の厚さ方向上方寄りの箇所に設けると空気が抜け易くなって好ましい。空気抜き孔9は必ずしも設けなくてもよい。
【0022】
薄型ジャッキ1は
図3(a)(b)に示すように三つ以上を組み立て分解可能
な型枠とすることもできる。この場合は、外面の一部に凹陥部10を備えた平面視門型状とすることもできる。これら薄型ジャッキ1はリング状に組み立て可能な数を一つのセット(ユニット)として使用することができる。
図3(a)は八つ、同(b)は四つをセットにして組み合わせ
て型枠とした場合の例であるが、薄型ジャッキ1のセット数はこれ以外であってもよい。
図3(a)では隣接する薄型ジャッキ1の間に調整治具11を配置し、その調整治具11と薄型ジャッキ1をボルトとナットで連結固定して組み立てて、薄型ジャッキ1が位置ずれしないようにしてある。複数の薄型ジャッキ1は、
図3(a)(b)に示すように内側面1bを隙間なく並べ
て型枠を形成することもできるが、内側面1bを多少離して組み立てることもできる。この
型枠の場合は、隣接する薄型ジャッキ1の間から打設材Fを供給して、複数のジャッキ1の内側面1bで囲われた打設空間S内に打設材Fを打設することもできる。もちろん調整治具11を設けずに、薄型ジャッキ1の設置に隙間をあけて配置することもできる。
【0023】
図3(a)(b)に示す門型状の薄型ジャッキ1は、
図2の薄型ジャッキ1と同様、シリンダ2、媒体室3、可動体4を備えたものであり、媒体室3は媒体を供給すると上下に伸縮し、その伸縮に伴って可動体4が上下に摺動(スライド)するようにしてある。シリンダ2、媒体室3の周壁及び可動体4の材質も
図1の薄型ジャッキ1と同様のものとすることができる。
【0024】
(免震装置設置工法
の実施形態)
本発明
の免震装置設置工
法の一例を、
図4〜
図8(a)を参照して説明する。この実施形
態は既設建造物25の基礎柱26に免震装置21を設置する工法である。免震装置21には、例えば、
図8(a)に示すような汎用のゴム支承(ゴム沓)を用いることができる。このゴム支承は、二枚の円盤状のフランジ22(下側フランジ22a、上側フランジ22b)間の中心部に円柱状の鉛プラグ23が配置され、その鉛プラグ23の外周にゴム板24aと鋼板24b等の積層材24が積層されたものである。積層材24の外周は、被覆ゴム28でカバーされている。本発明の免震装置設置工法では、これ以外の免震装置、例えば、新たに開発される形状、構造のものを用いることもできる。
【0025】
図4〜
図6は免震装置設置工法の作業工程を示す概略図であり、いずれも既設建造物25の基礎柱26の周囲の土壌(基礎部分)を事前に掘削して必要な作業スペースを確保した状態を示している。基礎部分の掘削は既存の方法で行うことができる。以下、本発明の設置工法の具体的な手順の一例について説明する。
【0026】
図4(a)に示すように、基礎柱26の周囲に仮受け手段27を配置し、その仮受け手段27で既設建造物25の荷重を仮受けする(既設建造物25の荷重を仮受け手段27に移行する)。仮受け手段27としては、例えば、仮支柱27aの上に仮受け用のジャッキ27bを載せたものを用いることができる。仮支柱27aには、例えばH形鋼、その他の形状の鋼材を用いることができる。仮受け用のジャッキ27bには、油圧式、エア式、機械式といった各種のものを用いることができる。
【0027】
既設建造物25の荷重を仮受け手段27によって仮受けして無応力化した基礎柱26の一部を、
図4(b)に示すように、基礎柱下部26aと基礎柱上部26bを残して切除し、基礎柱下部26aと基礎柱上部26bの間に前記免震装置21を配置可能なスペースを形成する。基礎柱26の切除には、例えばワイヤーソーを用いることができる。
【0028】
基礎柱26の切除後、
図4(c)に示すように、基礎柱下部26aの周囲に下部躯体29を構築する。下部躯体29の構築は既存の方法で行うことができる。具体的には、基礎柱下部26aの周囲に型枠を配置して下部躯体29の構築範囲を確定し、その型枠内に配筋してからその型枠内にコンクリートやモルタルなどの躯体材料を打設する。躯体材料の打設にあたっては、空気の混入を除去するのが望ましい。空気を除去するには、打設したコンクリートやモルタル等をバイブレータなどの既存機器で攪拌したり、振動させたりして行うことができる。下部躯体29の表面側(上面側)には下部免震プレートX
1を設けて、免震装置21の下側フランジ22aを例えばボルト、ナット等の既存の固定手段で固定できるようにする。下部免震プレートX
1の底面側には、袋ナットやスタッドボルト等が取付けられている。
【0029】
前記下部躯体29と同様、基礎柱上部26bの周囲には上部躯体20を構築する。上部躯体20の構築は既存の方法で行うことができる。具体的には、基礎柱上部26bと免震装置21の上側フランジ22bの外周に型枠を配置して上部躯体20の構築範囲を確定し、配筋し、配筋後、型枠内にコンクリートやモルタルなどの躯体材料を打設して上部躯体20を形成する。躯体材料の打設にあたっては、下部躯体29の構築時と同様に、混入空気の除去を行う。上部躯体20の表面側(底面側)には上部免震プレートX
2が設けられ、免震装置21の上側フランジ22bを例えばボルトとナット等の固定手段で固定できるようにしてある。上部免震プレートX
2の上面側には袋ナットやスタッド等が取付けられている。また、上部免震プレートX
2は上部躯体20と同時に形成することもある。
【0030】
基礎柱26の一部を切除した後(より具体的には、下部躯体29と上部躯体20を形成した後)、
図5(a)に示すように、基礎柱下部26aと基礎柱上部26bの間に生じたスペースに免震装置21を配置し、その免震装置21の上側フランジ22b上に二以上の薄型ジャッキ1を配置
して型枠を形成する。二以上の薄型ジャッキ1は、それらの内側に打設空間Sができるように配置する。その後、
図5(b)に示すように、薄型ジャッキ1の媒体室3内にオイルを注入し、薄型ジャッキ1のストロークを伸ばして免震装置21をプレ圧縮する。プレ圧縮の目的は免震装置21をあらかじめ圧縮しておくことによって、既設建造物25の荷重が仮受け手段27から免震装置21に移行した際の免震装置21の圧縮量が少なくなる(殆ど0の場合もある)ようにするとともに、仮受け手段27が受けている既設建造物25の荷重を薄型ジャッキ1及び免震装置21に移行させること、更には、後記するように薄型ジャッキ1を取り外して仮受け手段27が受けている既設建造物25の荷重が免震装置21に移行することにより免震装置21が圧縮して発生する鉛直変形角α(
図7)が生じにくくなる(鉛直変形角αがほぼ1/2000以下となる)ようにすることにある。このため、薄型ジャッキ1で免震装置21にかけるプレ圧縮力は、既設建造物25の荷重が仮受け手段27からプレ圧縮されていない免震装置21に移行することにより免震装置21に生じる圧縮量と同じ(略同じを含む。)程度になる圧縮力であり、且つ、仮受け手段27に作用している荷重が仮受け手段27に残らない程度の圧縮力が好ましい。
【0031】
なお、ここでいう「鉛直変形角」とは、
図7に示すように、既設建造物の隣接する柱(隣接柱)との鉛直方向の差分δを隣接柱との距離(スパン)Lで割った角度のことを意味する。建造物の健全度を維持するためには、この「鉛直変形角」を極力小さくすることが必要となる。
【0032】
前記プレ圧縮後、
図5(c)に示すように、隣接する薄型ジャッキ1間(薄型ジャッキ1に打設ホース7をセット可能なホース挿通孔8が設けられている場合はそのホース挿通孔8)に打設ホース7をセットする。打設ホース7は一端が打設空間S内に引き込まれ、他端が薄型ジャッキ1の外面側に引き出されるようにセットする。セットした打設ホース7の一端側から打設空間S内に打設材Fを打設する。打設材Fの量は、薄型ジャッキ1で囲まれる打設空間Sの広さによって異なるが、いずれの場合も、免震装置21のプレ圧縮後の打設空間Sに隙間なく打設される程度の量が好ましい。このような量を打設することによって、養生後、薄型ジャッキ1を撤去しても免震装置21が元の位置に復元することなく、圧縮状態を維持することができる。打設空間S内に打設材Fが十分に打設されたかを確認するには、空気抜き孔9から打設材Fが流れ出ていることを確認すればよい。
【0033】
打設材Fの打設に際しては、薄型ジャッキ1の隙間から打設材Fが漏れ出さないよう、薄型ジャッキ1の内面側に打設材漏れ防止手段を設けることもできる。漏れ防止手段には、ガムテープや、
図9(a)(b)(d)に示すような自在チューブ12等を用いることができる。
図9(a)(b)(d)に示す自在チューブ12は空気の注入によって膨らむものである。自在チューブ12は、例えば、
図9(a)〜(d)に示すような注入用ユニット13を用いて膨らませることができる。この注入用ユニット13は、二本の空気供給ホース取付け口15と、その間の打設材注入口16と、取っ手17を備えている。空気供給ホース取付け口15は自在チューブ12に空気を供給する空気供給ホース14を差込む(取り付ける)ためのもの、打設材注入口16は打設用ホース7を差し込むためのものである。注入ユニット13は、
図9(a)に示すように、免震装置21の上にリング状に配置した複数個(図示例では18個)の薄型ジャッキ1の対向位置二箇所にセットして使用することができる。この注入用ユニット13の空気供給ホース取付け口15に空気供給ホース14を連結し、この空気供給ホースに外部から空気を供給することにより、リング状に配置した複数個(図示例では18個)の薄型ジャッキ1の内側に配置されている自在チューブ12に空気を入れて、当該自在チューブ12を膨らますことができる。打設材注入口16に打設用ホース7を連結し、この打設用ホース7に外部から打設材(例えば生コンやモルタル等)Fを供給することにより、自在チューブ12の内側空間内に打設材Fを打設することができる。この場合、先に膨らませてある自在チューブ12によって打設材Fの漏れが防止される。
図9(a)に示す18個の薄型ジャッキ1と注入ユニット13と、自在チューブ12によって型枠として機能する。自在チューブ12には
図9(a)(d)に示すように大径の自在チューブ12を一本使用することもできるが、
図9(d)に仮想線で示すように、細径のチューブ12a、12bを、上下二段に重ねて一本の大径の自在チューブ12の高さと同じ高さにして使用することもできる。本数は三本以上であってもよい。
【0034】
打設材Fには、モルタル(硬練りのモルタルを含む)やコンクリートを用いることができる。モルタルやコンクリートは間隙に隙間なく打設することができるので、基礎柱上部26bや免震装置21の上側フランジ22bに凹凸、窪み等の不陸があっても基礎柱上部26bを確実に支持することができる。打設材Fの打設に際しては、打設材F中への空気の混入を除去するのが望ましい。空気の除去は、打設したコンクリートやモルタル等をバイブレータなどの既存機器で攪拌したり、振動させたりして行うことができる。
【0035】
打設材Fを養生して所要の強度を得た支持具40を形成したのち、
図6(a)に示すように、薄型ジャッキ1のストロークを元に戻して支持具40に荷重を移行させたのち、全ての薄型ジャッキ1を免震装置21上から撤去し、
図6(b)に示すように、免震装置21の上部に補強用打設材39を打設し、所要強度が発現するまで養生する。
【0036】
補強用打設材39の養生後、仮受け手段27を撤去し、免震装置設置工事を完了する(
図6(c))。なお、前記実施形態では一本の基礎柱26についてのみ説明しているが、他の基礎柱26についても同じ方法で施工できることは言うまでもない。また、前記実施形態では、薄型ジャッキ1を免震装置21の上面側に配置する場合を一例として説明しているが、薄型ジャッキ1を免震装置21の下面側に配置することもできる。
【0037】
(橋梁支承交換工法
の実施形態)
本発明
の橋梁支承交換工
法の一例を、
図8(b)及び
図10〜
図13を参照して説明する。この実施形態は
、薄型ジャッキ1
を組み合わせた型枠を用いて、橋梁の支承を交換する方法である。この支承には、例えば、
図8(b)に示すようなゴム支承31を用いることができる。このゴム支承31は、二枚の方形状の連結鋼板32(下側連結鋼板32a、上側連結鋼板32b)間に円柱状の鉛プラグ33が四本配置され、その鉛プラグ33の周囲に、ゴム板34aと鋼板34bとを積層した積層材34が設けられたものである。二枚の連結鋼板32及び積層材34の外周は、被覆ゴム35でカバーされている。支承には、新たに開発される形状、構造のもの等、これ以外のものを用いることもできる。
【0038】
図10〜
図13は薄型ジャッキ1を用いて橋梁支承を交換する場合の作業工程を示す概略図であり、いずれも橋桁36とその橋桁36を支える橋脚37とを拡大して示してある。以下、橋梁支承交換工法の具体的な手順の一例について説明する。
【0039】
図10(a)に示すように、橋脚37の表面の沓接地部分(沓座)30をブラスト等によって清掃する。沓座30の清掃後、
図10(b)に示すように、当該沓座30にモルタルを打設する。打設したモルタルを所要強度まで養生した後、
図10(c)に示すように、養生したモルタル
の上に二以上の薄型ジャッキ1を
設置して型枠を形成する。二以上の薄型ジャッキ1は、それらの内側に打設空間Sができるように配置する。
【0040】
設置した薄型ジャッキ1
の上に、
図11(a)に示すように、鋼製の支圧板38を載せ、その支圧板38上に、
図11(b)に示すように、新設用のゴム支承31を設置する。ゴム支承31の設置後、
図11(c)に示すように、薄型ジャッキ1のストロークを上げ(ジャッキアップし)、当該薄型ジャッキ1又は/及びゴム支承31で橋桁36の荷重を仮受けする。既設のゴム支承は、この仮受け後、任意のタイミングで撤去することができる。
【0041】
橋桁荷重の仮受け後、
図12(a)に示すように、当該薄型ジャッキ1間に形成された打設空間Sに向けて打設ホース7を挿通する。打設ホース7の挿通後、
図12(b)に示すように、薄型ジャッキ1に囲まれた打設空間Sに打設ホース7を通して、モルタルやコンクリートといった打設材Fを打設する。打設材Fの量は、薄型ジャッキ1で囲まれる打設空間Sの広さに応じて調整することができる。打設空間S内に打設材Fが十分に打設されたかを確認するには、空気抜き孔9から打設材Fが流れ出ていることを確認すればよい。
【0042】
打設材Fの打設に際しては、薄型ジャッキ1の隙間から打設材Fが漏れ出さないよう、薄型ジャッキ1の内面側に漏れ防止手段を設けることもできる。免震装置設置工法と同様、漏れ防止手段には、ガムテープや
図9(a)(b)に示すような自在チューブ12等を用いることができる。また、打設材Fに混入した空気は適宜除去するのが望ましい。空気の除去は、打設したコンクリートやモルタル等をバイブレータなどの既存機器で攪拌したり、振動させたりして行うことができる。打設材Fは所要強度まで養生する。
【0043】
打設材Fを所定強度まで養生した後、
図12(c)に示すように、薄型ジャッキ1の媒体室3を元の状態まで縮ませて、橋桁36の荷重を薄型ジャッキ1からゴム支承31及び養生したモルタル(支持具40)に移行させる。橋桁荷重の移行後、
図13(a)に示すように、薄型ジャッキ1を撤去し、支持具40の外周囲に補強用打設材39を打設する(
図13(b))。補強用打設材39にはモルタルやコンクリートなどを用いることができる。補強用打設材39(モルタル等)を、所定強度が発現するまで養生させ、橋梁支承の交換作業を完了する(
図13(c))。