【文献】
Byoungchoo PARK et al.,Thermal and optical stabilities of photoisomerizable polyimide layers for nematic liquid crystal alignments,Japanese Journal of Applied Physics,1998年10月,Vol.37, Part 1, No.10,p.5663-5668
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記重合体(A)の生成反応での反応物は、前記ジアミン(a‐1)、前記ジアミン(a‐2)、ジアミン(a‐3)、及び、テトラカルボン酸二無水物(a‐4)を含み、前記ジアミン(a‐3)は、ジアミン(a‐1)及びジアミン(a‐2)以外のジアミン化合物である請求項1に記載の液晶配向剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
液晶表示素子の映像品質を向上させるものとして、液晶配向膜は、以下の特性を有するべきである。(1)低残像現象(Image Sticking Effect):一般には、液晶表示素子が長時間同じ画面を連続して表示すると、画面を切り替えた後、前の映像が直ちに消えることなく、新しい画面と重なったり、流れ星のように移動したりする現象を、残像現象と称する。(2)低残留直流電圧(Residue Direct Current Voltage):液晶配向膜は、イオン性電荷を吸着して残留直流電圧を形成させ、残留直流電圧及び残像のメカニズムがまだ明らかではないが、液晶配向膜の残留直流電圧を低減できれば、残像現象も効果的に改善できる。
【0004】
現在、学界と業界では、大量の心血を注ぎ、前記問題を研究していたが、今まで、満足度の高い解決策を提出していない。
本発明は製作される液晶配向膜が低残像現象及び低残留直流電圧等の特性を有する液晶配向剤を提供することを目的としている。
また、低残像現象及び低残留直流電圧等の特性を有する液晶配向膜およびそれを用いた液晶表示素子提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明係る液晶配向剤は、重量百分率が50%以上のポリアミック酸又はポリイミドを含み、且つ、モル百分率が2.5%以上であり、構成が以下の化学式(i)、化学式(ii)、及び、その組み合わせからなる群から選ばれる構成であるフェノール基骨格、ならびに、モル百分率が5%以上である第三級窒素原子骨格を含む重合体(A)を備える。
【0006】
【化1】
【0007】
【化2】
【0008】
(化学式(i)中で、Y
1〜Y
5は、それぞれ独立しており、少なくとも1つがヒドロキシル基であり、残りが水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、ヒドロキシル基(‐OH)、又は、‐(CH
2)pCF
3であり、pは1〜5の整数であり、そして、Y
1〜Y
5は、少なくとも1つがヒドロキシル基である。化学式(ii)中で、Zは、単結合であり、炭素数1〜4のアルキレン基、‐CO‐、‐COO‐、又は、‐O‐であり、ベンゼン環上の置換基は、それぞれ独立しており、少なくとも1つがヒドロキシル基であり、残りが水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、‐CF
3、又は、‐OCF
3である。)
【0009】
また、重合体(A)は、アミド酸エステル、アミド又はイミドエステルを更に含むことができる。さらに、重合体(A)は、イミド‐アミド酸共重合体、ポリイミド又はポリアミック酸であってもよい。
【0010】
また、重合体(A)のフェノール基骨格、及び、第三級窒素原子骨格は、ジアミン(a‐1)又はジアミン(a‐2)の残基から選ばれるものである。ジアミン(a‐1)は、フェノール基を有し、ジアミン(a‐2)は、フェノール基を有しなく、第三級窒素原子を有する。
【0011】
ジアミン(a‐1)は、化学式(I‐1)又は化学式(I‐2)に示されている構成を含むことができる。
【化3】
【0012】
【化4】
【0013】
(化学式(I‐1)中で、M
1〜M
5は、それぞれ独立しており、少なくとも1つがヒドロキシル基であり、残りが水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、ヒドロキシル基又は‐(CH
2)pCF
3であり、pは1〜5の整数である。
化学式(I‐2)中で、Zは単結合であり、炭素数1〜4のアルキレン基、‐CO‐、‐COO‐、又は、‐O‐であり、R
1〜R
5のうち、1つがアミノ基(‐NH
2)であり、1つがヒドロキシル基であり、残りが、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、‐CF
3、又は、‐OCF
3である。R
6〜R
10のうち、1つがアミノ基であり、1つがヒドロキシル基であり、残りが、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、‐CF
3又は‐OCF
3である。)
【0014】
ジアミン(a‐2)は、下記化学式(II)で示される構成であってよい。
【化5】
【0015】
(化学式(II)の中で、X
1〜X
5は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は、‐(CH
2)pCF
3である。pは1〜5の整数である。)
【0016】
重合体(A)の生成反応での反応物は、ジアミン(a‐1)、ジアミン(a‐2)、ジアミン(a‐3)、及び、テトラカルボン酸二無水物(a‐4)を含む。ジアミン(a‐3)は、ジアミン(a‐1)及びジアミン(a‐2)以外のジアミン化合物である。
【0017】
ジアミン(a‐3)は、化学式(a‐3‐1)、化学式(a‐3‐2)、化学式(a‐3‐3)、化学式(a‐3‐4)、化学式(a‐3‐5)、化学式(a‐3‐6)、又は、化学式(a‐3‐7)で示されている構造を有する。
【0018】
【化6】
【0019】
【化7】
【0020】
【化8】
【0021】
【化9】
【0022】
【化10】
【0023】
【化11】
【0024】
【化12】
【0025】
テトラカルボン酸二無水物(a‐4)は、脂環式テトラカルボン酸二無水物、又は、芳香族テトラカルボン酸二無水物を含むことができる。
【0026】
脂環式テトラカルボン酸二無水物は、化学式(a‐4‐1)で示されている構造を含むことができる。
【化13】
【0027】
芳香族テトラカルボン酸二無水物は、化学式(a‐4‐2)、化学式(a‐4‐3)又は化学式(a‐4‐4)で示されている構造を含むことができる。
【化14】
【0028】
【化15】
【0029】
【化16】
【0030】
本発明に係る液晶配向膜は、上述の液晶配向剤により形成される。
【0031】
本発明に係る液晶表示素子は、上述の液晶配向膜を含む
【0032】
これによって、上述の液晶配向剤により形成される液晶配向膜が、低残留直流電圧及び低残像の特性を有する。よって、当該液晶配向膜を用いて製造される液晶表示素子は、低残留直流電圧及び低残像の特性を有し、市場の需要を満たすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(一実施形態)
(重合体(A))
重合体(A)は、重量百分率が50%以上のポリアミック酸又はポリイミドを含み、且つ、モル百分率が2.5%以上であり、構成が以下の通り示される化学式(i)、化学式(ii)及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれるフェノール基骨格、及びモル百分率が5%以上の第三級窒素原子骨格を含む。
【0035】
【化2】
(化学式(i)中、Y
1〜Y
5は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、ヒドロキシル基又は‐(CH
2)pCF
3であり、pは1〜5の整数であり、そして、Y
1〜Y
5は、少なくとも1つがヒドロキシル基であり、化学式(ii)中、Zは単結合、炭素数1〜4のアルキレン基、‐CO‐、‐COO‐又は‐O‐であり、ベンゼン環上の置換基は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、‐CF
3又は‐OCF
3であり、そして、これらの置換基は、少なくとも1つがヒドロキシル基である。)
【0036】
本発明の一実施形態によると、重合体(A)の骨格は、アミド酸エステル、アミド又はイミドエステルを更に含むことができ、二元ブロック共重合体又は三元ブロック共重合体となる。二元ブロック共重合体の例示としては、アミド酸‐アミド酸エステル共重合体、イミド‐イミドエステル共重合体、アミド酸‐アミド共重合体、イミド‐アミド共重合体を含む。三元ブロック共重合体の例示としては、アミド酸‐アミド‐アミド酸エステル共重合体、イミド‐アミド‐イミドエステル共重合体を含む。
【0037】
本発明の他の実施形態によると、重合体(A)は、イミド‐アミド酸共重合体、ポリイミド又はポリアミック酸であってよい。
【0038】
前記「フェノール基骨格」とは、フェノール基を有する化合物が、重合体(A)を生成する重合反応に関与した後、重合体(A)の構成の一部となる、当該化合物の一部の構成を指す。
【0039】
前記フェノール基骨格の「モル百分率」とは、「フェノール基骨格」が重合体(A)の構成に占める割合を指す。
【0040】
前記「第三級窒素原子骨格」とは、第三級窒素原子を有する化合物が重合体(A)を生成する重合反応に関与した後、重合体(A)の構成の一部となる、当該化合物の一部の構成を指す。
【0041】
前記第三級窒素原子骨格の「モル百分率」とは、「第三級窒素原子骨格」が重合体(A)の構成に占める割合を指す。
【0042】
前記「二元」とは、重合体(A)の高分子において2種類のモノマーを有することを指す。
【0043】
前記「三元」とは、重合体(A)の高分子において3種類のモノマーを有することを指す。
【0044】
本発明の重合体(A)は、フェノール基骨格により提供されるフェノール基、及びフェノール基骨格のフェノール基と第三級窒素原子骨格の第三級窒素との間で発生したシナジー効果によって、本発明の液晶配向剤を用いて製作される液晶配向膜に、低残像現象及び低残留直流電圧等の特性を持たせる。
【0045】
重合体(A)は、フェノール基骨格により提供されるフェノール基によって、重合体(A)を構成する鎖状高分子の間に水素結合を生じさせ、高分子間の水素結合により、高分子を緊密に積層させることで、重合体(A)の蓄積電荷放出能力を向上させる。
【0046】
「フェノール基骨格のフェノール基と第三級窒素原子骨格の第三級窒素との間で発生したシナジー効果」(以下、「シナジー効果」と略称する)とは、重合体(A)が含んだフェノール基骨格が、水素イオン(H
+)を分離させて、負電荷を持ち、第三級窒素原子が、H
+を吸引して正電荷を持ち、正電荷を持つ第三級窒素原子と負電荷を持つフェノール基骨格とが、塩類に類似するイオン化合物を形成し、これによって、鎖状高分子間の積層を促進させ、高分子間又は高分子内の電荷伝達を速することで、高分子の導電性を向上させ、これによって、残像現象を低減し、残留直流電圧を下げることもできることを指す。
【0047】
本発明の一実施形態によると、重合体(A)のフェノール基骨格及び第三級窒素原子骨格は、ジアミン(a‐1)又はジアミン(a‐2)の残基から選ばれるものであり、ただし、ジアミン(a‐1)は、フェノール基を有し、ジアミン(a‐2)は、フェノール基を有しなく、第三級窒素原子を有する。
【0048】
重合体(A)の生成反応は、ジアミン(a‐1)、ジアミン(a‐2)、ジアミン(a‐3)及びテトラカルボン酸二無水物(a‐4)を反応物として、有機溶剤中で縮合反応させて得ることができる。ジアミン(a‐3)は、ジアミン(a‐1)及びジアミン(a‐2)以外のジアミン化合物である。ただし、テトラカルボン酸二無水物(a‐4)の無水酸基に対するジアミン(a‐1)、ジアミン(a‐2)及びジアミン(a‐3)のアミノ基の当量比は、0.5:1〜2:1であってよい。
【0049】
別の実施形態において、テトラカルボン酸二無水物(a‐4)の無水酸基に対するジアミン(a‐1)、ジアミン(a‐2)及びジアミン(a‐3)のアミノ基の当量比は、0.7:1〜1.5:1であってよい。
【0050】
前記「残基」とは、ジアミン(a‐1)、ジアミン(a‐2)が、重合体(A)を生成する縮合反応に関与した後、重合体(A)の構成の一部となる、ジアミン(a‐1)及び/又はジアミン(a‐2)の一部の構成を指す。
【0051】
前記ジアミンとテトラカルボン酸二無水物(a‐4)との縮合反応の後、ポリアミック酸を生成することができる。
【0052】
生成されたポリアミック酸を部分的に脱水閉環反応させることによって、イミド‐アミド酸共重合体を得ることができる。完全に脱水閉環反応させれば、ポリイミドを生成することができる。
【0053】
前記ポリアミック酸、ポリイミド又はイミド‐アミド酸共重合体に、実際の需要によって、少量のエステル結合、アミド結合を挿入することで、例えば、アミド酸‐アミド共重合体、イミド‐アミド共重合体、アミド酸‐アミド酸エステル共重合体、イミド‐イミドエステル共重合体、アミド酸‐アミド‐アミド酸エステル共重合体又はイミド‐アミド‐イミドエステル共重合体等の二元又は三元ブロック共重合体を形成することができる。挿入の方式によって、単一のモノマーで構成される重合体が2種類以上のモノマーを有する共重合体となることで、元の重合体の性能を改善させることは、当業者が熟知しているものであり、ここで詳しく述べない。
【0054】
(ジアミン(a‐1))
ジアミン(a‐1)は、化学式(I‐1)又は化学式(I‐2)で示される構成であってよい。
【化3】
【0055】
【化4】
(化学式(I‐1)中、M
1〜M
5は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、ヒドロキシル基又は‐(CH
2)pCF
3であり、pは1〜5の整数であり、そして、M
1〜M
5は、少なくとも1つがヒドロキシル基であり、化学式(I‐2)中、Zは、単結合、炭素数1〜4のアルキレン基、‐CO‐、‐COO‐又は‐O‐であり、R
1〜R
5の1つはアミノ基、1つは、ヒドロキシル基(‐OH)、残りは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、‐CF
3又は‐OCF
3であり、R
6〜R
10の1つは、アミノ基、1つは、ヒドロキシル基、残りは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、‐CF
3又は‐OCF
3である。)
化学式(I‐2)中、二つのアミノ基は、異なるベンゼン環に接続される。同一のベンゼン環に接続されると、それを用いて生成される液晶配向剤は、過大な配向角、塗布性低下等の欠陥を有する。
【0056】
本発明の一実施形態によると、化学式(I‐1)中、M
1、M
2、M
4、M
5は水素原子である。M
3はヒドロキシル基(‐OH)である場合、ジアミン(a‐1‐1)が得られる。その構成は以下の通りである。
【化5】
【0057】
本発明の別の実施形態によると、化学式(I‐2)中、Zは単結合であり、R
3、R
8はアミノ基であり、R2、R9はヒドロキシル基であり、R
1、R
4、R
5、R
6、R
7、R
10は水素原子である。ジアミン(a‐1‐2)が得られる。その構成は以下の通りである。
【化17】
【0058】
(ジアミン(a‐2))
本発明の一実施形態によると、ジアミン(a‐2)は、化学式(II)で示される構成であってよい。
【化5】
【0059】
(但し、X
1〜X
5は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は‐(CH
2)pCF
3であり、pは1〜5の整数である。)
【0060】
本発明の一実施形態によると、化学式(II)中、X
1〜X
5が水素原子である場合、ジアミン(a‐2‐1)が得られる。その構成は以下の通りである。
【化18】
【0061】
ジアミン(a‐1)とジアミン(a‐2)との主な相違点は、ジアミン(a‐1)がフェノール基を有し、ジアミン(a‐2)が第三級窒素原子を有するが、フェノール基を有しないことにある。
【0062】
(ジアミン(a‐3))
ジアミン(a‐3)は、ジアミン(a‐1)及びジアミン(a‐2)以外のジアミン化合物である。
【0063】
本発明の一実施形態によると、ジアミン(a‐3)は、化学式(a‐3‐1)〜化学式(a‐3‐7)で示される構成であってよい。
【化6】
【0070】
前記ジアミン(a‐3)は、単独で使用できるほか、液晶配向膜の性能に影響しない限り、2種以上を同時に使用することができる。
【0071】
(テトラカルボン酸二無水物(a‐4))
本発明の一実施形態によると、テトラカルボン酸二無水物(a‐4)は、脂環式テトラカルボン酸二無水物又は芳香族テトラカルボン酸二無水物を含む。
【0072】
脂環式テトラカルボン酸二無水物は、化学式(a‐4‐1)で示される構成であってよいが、これに限定されなく、芳香族テトラカルボン酸二無水物は、化学式(a‐4‐2)、化学式(a‐4‐3)又は化学式(a‐4‐4)で示される構成であってよいが、これらに限定されない。
【化13】
【0076】
前記テトラカルボン酸二無水物(a‐4)は、単独で使用しても、同時に2種以上を使用してもよい。液晶配向膜の性能に影響しない限り、テトラカルボン酸二無水物(a‐4)は、他のテトラカルボン酸二無水物と併用してもよい。
【0077】
テトラカルボン酸二無水物(a‐4)として、非芳香族テトラカルボン酸二無水物及び芳香族テトラカルボン酸二無水物を同時に使用する場合に、芳香族テトラカルボン酸二無水物の占めた含有量は、20〜90重量百分率である。
【0078】
(重合体(A)の合成方法)
以下、重合体(A)がイミド‐アミド酸共重合体である場合に対して、重合体(A)の調製方法について詳しく説明する。
【0079】
ジアミン(a‐1)、ジアミン(a‐2)、ジアミン(a‐3)及びテトラカルボン酸二無水物(a‐4)を反応物として、反応量の多少により調整して、40℃〜110℃の温度で有機溶剤(a‐5)中で1〜12時間縮合反応を進行させることで、ポリアミック酸を含有する反応溶液を得る。
【0080】
ジアミン混合物とテトラカルボン酸二無水物(a‐4)との比例関係は、テトラカルボン酸二無水物(a‐4)の無水酸基含有量が1当量に対し、ジアミン混合物のアミノ基が、0.5〜2当量であることが好ましく、0.7〜1.5当量であることがより好ましい。
【0081】
有機溶剤(a‐5)は、反応物及び生成物を溶解させることに用いられ、溶解度に優れた有機溶剤と、溶解度が悪い有機溶剤とを含む。
【0082】
溶解度に優れた有機溶剤は、N‐メチル‐2‐ピロリドン(a‐5‐1)、N,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド、N‐メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルリン酸アミド(hexa methyl phosphor amide)、γ‐ブチロラクトン(a‐5‐2)、ピリジンを含むが、これらに限定されない。上記有機溶剤は、単独で使用しても、2種以上を混合して同時に使用してもよい。
【0083】
溶解度が悪い有機溶剤は、溶解度に優れた前記有機溶剤と組み合わせて使用してもよいが、生成物であるイミド‐アミド酸共重合体が析出されるまでには至らないことを前提とする。溶解度が悪い有機溶剤は、メタノール、エタノール(a‐5‐3)、イソプロパノール、n‐ブチルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、1,2‐ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、n‐ヘキサン、n‐ヘプタン、n‐オクタンを含むが、これらに限定されない。
【0084】
以上挙げられた有機溶剤に加え、イミド‐アミド酸共重合体を溶解できる有機溶剤であれば、何れも有機溶剤(a‐5)とすることができる。
【0085】
ポリアミック酸を含有する前記反応溶液を部分的に脱水閉環反応させることで、イミド‐アミド酸共重合体を含有する反応溶液を得る。
【0086】
脱水閉環反応は、方法(1):直接加熱、又は、方法(2):脱水剤(a‐6)及び触媒(a‐7)添加、を用いることができる。
【0087】
方法(1):直接加熱、反応温度が約50℃〜300℃、好ましくは100℃〜250℃である。反応温度が50℃より低い場合、脱水閉環反応は進行しなく、反応温度が高すぎると、生成される重合体(A)の平均分子量は非常に低くなる。
【0088】
方法(2):脱水剤(a‐6)及び触媒(a‐7)を添加し、反応温度が約‐20℃〜150℃、好ましくは0℃〜120℃である。
【0089】
脱水剤(a‐6)は、無水酸を含むが、これに限定されない。無水酸としては、例えば、無水酢酸(a‐6‐1)、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸等を用いることができる。脱水剤(a‐6)の使用量は、必要な脱水閉環率により調整するもので、好ましくは、1モルあたりのイミド‐アミド酸共重合体の再現単位が0.01〜20モルを用いる。
【0090】
触媒(a‐7)は、例えば、トリエチルアミン、ピリジン(a‐7‐1)、ジメチルピリジン等の第三級アミンを含むが、これに限定されない。触媒(a‐7)の使用量は脱水剤(a‐6)の使用量により調整するもので、脱水剤(a‐6)約1モルあたりに対して、0.01〜10モルの触媒(a‐7)を用いる。
【0091】
最後に、前記イミド‐アミド酸共重合体の反応溶液を大量の溶解度が悪い溶剤に注ぎ、沈殿物を得ることができる。この沈殿物を減圧下で乾燥させ、イミド‐アミド酸共重合体を得ることができる。得られるイミド‐アミド酸共重合体を一回又は複数回精製することができる。精製ステップは、イミド‐アミド酸共重合体を有機溶剤に溶解させ、溶解度が悪い溶剤で沈殿を行い、そして、沈殿物を減圧下で乾燥させることである。
【0092】
重合体(A)がポリアミック酸である場合に、その調製方法は、前記反応とほぼ同じであり、ただ脱水閉環反応を省略する必要がある。重合体(A)がポリイミドである場合に、得られるポリアミック酸の反応溶液を完全に脱水閉環反応させればよい。
【0093】
(液晶配向剤)
本発明の液晶配向剤は、重合体(A)及び有機溶剤(B)を含み、且つ、添加剤(C)を選択的に含むことができる。
【0094】
前記重合体(A)を有機溶剤(B)に溶解すると、液晶配向剤を形成することができる。液晶配向剤を調製する温度は、好ましくは、0℃〜150℃であり、より好ましくは、20℃〜50℃である。
【0095】
液晶配向剤は、粘度と揮発性により、含まれる固体含有量を調整することができ、1wt%〜10wt%の固体含有量を含むものが好ましい。固体含有量は、1wt%より低いと、塗布後の液晶配向膜の厚みが薄すぎて、その配向性が低下するようになってしまう。固体含有量は、10wt%より高いと、塗布品質に影響してしまう。
【0096】
(有機溶剤(B))
有機溶剤(B)は、N‐メチル‐2‐ピロリドン(a‐5‐1)、N,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド、N‐メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、γ‐ブチロラクトン(a‐5‐2)、γ‐ブチロラクタム、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等を含むが、これらに限定されない。上記溶剤は、2種以上を混合して使用してもよい。前記挙げられた溶剤に加え、イミド‐アミド酸共重合体を溶解できれば、何れも有機溶剤(B)とすることができる。
【0097】
(添加剤(C))
前記液晶配向剤は、添加剤(C)を選択的に含むことができる。添加剤は、有機シラン(シロキサン)化合物(C‐1)又はエポキシ化合物(C‐2)であってよい。
【0098】
(有機シラン(シロキサン)化合物(C‐1))
液晶配向剤における、有機シラン(シロキサン)化合物(C‐1)の含有量は、液晶配向膜の所望の特性に影響しないことを前提として、液晶配向膜の基板表面に対する密着性を改善できる。有機シラン(シロキサン)化合物(C‐1)の含有量が多すぎると、形成される液晶配向膜に、配向不良の現象が発生しやすく、有機シラン(シロキサン)化合物(C‐1)の含有量が少なくすぎると、形成される液晶配向膜に、耐ラビング性不良とパウダーが多すぎる現象が発生しやすくなってしまう。そのため、本発明の液晶配向剤において、重合体(A)の総重量を100重量部とすれば、有機シラン(シロキサン)化合物(C‐1)の含有量が、好ましくは、0.01〜5重量部、より好ましくは、0.1〜3重量部である。
【0099】
(エポキシ化合物(C‐2))
液晶配向剤における、エポキシ化合物(C‐2)の含有量は、液晶配向膜の所望の特性に影響しないことを前提として、液晶配向膜の基板表面に対する密着性を改善できる。エポキシ化合物(C‐2)の含有量が多すぎると、形成される液晶配向膜に、配向不良の現象が発生しやすく、エポキシ化合物(C‐2)の含有量が少なくすぎると、形成される液晶配向膜に、耐ラビング性不良とパウダーが多すぎる現象が発生しやすくなってしまう。このため、本発明の液晶配向剤において、重合体(A)の総重量を100重量部とすれば、エポキシ化合物(C‐2)の含有量が、好ましくは、0.01〜3重量部、より好ましくは、0.1〜2重量部である。
【0100】
(液晶配向膜)
本発明の液晶配向剤をパターン化された透明導電膜を有するガラス基板に塗布して被覆層を形成する。塗布方法は、ロールコーティング法、スピンコーティング法及び印刷法を含むが、これらに限定されない。塗布方法は、慣用な方法であり、ここで詳しく述べない。
【0101】
次に、被覆層を加熱・ベーキングして、液晶配向膜を形成する。加熱・ベーキングの目的は、液晶配向剤における有機溶剤(B)を取り除き、重合体(A)に含まれるポリアミック酸の脱水閉環反応を促進することである。加熱・ベーキングの温度は、80℃〜300℃であってよく、より好ましくは、100℃〜240℃である。形成された液晶配向膜の厚みは、0.005〜0.5μmであることは好ましい。
【0102】
液晶配向膜を、ナイロン又は綿繊維布が巻き取られるローラーで更に配向摩擦してよく、これにより、液晶配向膜に、液晶分子に対する配向性を持たせる。
【0103】
(液晶表示素子)
まず、前記液晶配向膜を有する1枚の基板にフレーム用接着剤を塗布して、前記液晶配向膜を有する別の基板にスペーサーを散布させ、その後、2枚の液晶配向膜基板をそれぞれのフィルム塗布方向が互いに垂直に又は互いに平行に組み合わせ、最後に、二枚の基板の隙間へ液晶を注入して、注射穴を密着して、液晶表示素子を形成する。
【0104】
(評価方法)
液晶配向剤の粘度測定:
本発明の液晶配向剤の粘度(ηln)は、下記数式1によって、得られるものである。重合体(A)、溶剤(B)、添加剤(C)を含む液晶配向剤をN‐メチル‐2‐ピロリドン溶剤(a‐5‐1)に溶解させ、濃度が0.5グラム/100ミリリットルである溶液を調製して、30℃における溶液の粘度を測定した。
【数1】
【0105】
液晶表示素子の残像現象の判定:
充電前に、先に液晶表示素子の所定位置における透過度と電圧の変化曲線を測定し、その後、室温又は60度(高温)で、10Vの直流電圧で6時間を充電させた後、再度に同じ所定位置における透過度と電圧の変化曲線を測定した。充電前の透過度50%に対応する電圧を基準とし、この電圧で、充電前後の所定位置における透過度の変化量を比べ、透過度変化量を、充電前のこの電圧に対応する透過度で割り、そして、パーセントで表現した。変化量が2%より小さいと、特優と判定され、5%より小さいと、優と判定され、5%より大きいと、普通と判定され、10%より大きいと、悪いと判定される。
【0106】
液晶表示素子の残留直流電圧:
液晶表示素子に5V電圧を印加させ、3600秒を維持して、次に、1秒間放電し、最後に、600秒である時の残留直流電圧値を記載した。
【0107】
脱水閉環率(イミド化比率):
重合体(A)又は液晶配向剤を室温で減圧して乾燥させ、次に、乾燥後の固体を重水素化されたジメチルスルホキシドに溶解させ、テトラメチルシランを用いて参照物質とし、プロトン核磁気共鳴(
1H‐NMR)測定によって、下記数式2から、イミド化比率を得た。
【数2】
A
1は、NH基の陽子から誘導されたピーク面積(10ppm)である。
A
2は、他の陽子から誘導されたピーク面積である。
αは、重合体(A)におけるポリアミック酸のNH基の陽子に対する他の陽子の数の比である。
【0108】
(実験一)
合成例重合体A‐1(A‐1‐1〜A‐1‐6)、A‐2(A‐2‐1〜A‐2‐5)と比較例重合体A‐3(A‐3‐1)、A‐4(A‐4‐1、A‐4‐2)の合成方法
【0109】
ジアミン(a‐1、a‐2、a‐3)及びテトラカルボン酸二無水物(a‐4)を表一〜表二で示される比例によって、順次にN‐メチル‐2‐ピロリドン(a‐5‐1)に添加し、固体含有量が20wt%である溶液を調製して、40℃で5〜6時間反応させ、ポリアミック酸を含有する溶液を得た。ポリアミック酸溶液が希釈された後、比例適当なピリジン(a‐7‐1)と無水酢酸(a‐6‐1)を添加して、100〜110℃で3〜4時間脱水閉環反応させることで、イミド‐アミド酸共重合体を含有する溶液を形成した。前記共重合体を含有する溶液をエタノール(a‐5‐3)に注ぎ、析出を行い、そして、エタノール(a‐5‐3)で洗浄して精製させ、最後に、固体を集め、減圧して乾燥させ、表1と表2で示される固有粘度及びイミド化比率を有する重合体(A)を得た。
【0112】
(実施例1〜9と比較例1´〜2´の実験方法)
固定比例の重合体(A‐1)と重合体(A‐2)、及び重合体(A‐3)と重合体(A‐4)を、それぞれγ‐ブチロラクトン(a‐5‐2)とN‐メチル‐2‐ピロリドン(a‐5‐1)との混合溶剤に溶解させ、固体含有量が6wt%である溶液を調製して、直径が1μmであるフィルターで濾過して、本発明の液晶配向剤である濾過液を集めた。
【0113】
本発明の液晶配向剤を、ローラープリンタによってガラス基板上に塗布して、200℃の加熱基板で20分間乾燥させ、厚みが0.08μmであるフィルムを形成した。このフィルムに対して、ローラー回転数1000(回転/分)、プラットフォーム移動速度60(ミリメートル/秒)、圧入量0.4μmで配向摩擦を行った。
【0114】
前記液晶配向膜を有する1枚の基板にフレーム用接着剤を塗布して、前記液晶配向膜を有する別の基板にスペーサーを散布させてから、2枚の液晶配向膜基板をそれぞれのフィルム塗布方向が互いに垂直に組み合わせ、最後に、2枚の基板の隙間へ液晶(Merck Ltd.社製ZLI‐4792液晶)を注入して、注射穴を密着して、液晶表示素子を形成した。
【0115】
得られた液晶表示素子に対して、室温残像特性、高温残像特性、残留直流電圧に関わる評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0117】
実施例1〜9において、重合体(A)を合成する時に、ジアミン(a‐1)、ジアミン(a‐2)、ジアミン(a‐3)を同時に用いたが、比較例1´、2´において、ジアミン(a‐3)のみを用いた。比較例1´、2´において得られた液晶表示素子の室温残像特性は普通であり、高温残像特性は悪く、残留直流電圧は345mVと420mVであり、比較例1´、2´における各評価結果の何れも実施例1〜9より悪い。このため、本発明は、ジアミン(a‐1)、ジアミン(a‐2)の提供したフェノール基、及びフェノール基と第三級窒素原子とのシナジー効果によって、液晶表示素子の残像特性を改善して、低残留直流電圧を得ることができる。
【0118】
実施例1、8、9において、ジアミン(a‐1‐1)の含有量は次第に高まり、その内、実施例1におけるジアミン(a‐1‐1)の含有量は最も低く、その残留直流電圧が81mVであることは最適であるが、実施例9におけるジアミン(a‐1‐1)の含有量は最も高いが、その室温残像特性は最も悪く、残留直流電圧は最も高い。このため、ジアミン(a‐1‐1)の使用量は一定の範囲にあり、比較例1´、2´のように全く使用しなかったり、実施例8、9のように過量使用したりすると、液晶表示素子の残留直流電圧が高まり、室温残像特性が悪くなってしまう。好ましくは、ジアミン(a‐1‐1)の使用量は、ジアミン総使用量の30wt%以下を占め、より好ましくは、15wt%以下を占める。
【0119】
実施例1〜4において、使用されたジアミン及びテトラカルボン酸二無水物(a‐4)は、何れも同じであり、四者の主な相違点はイミド化の比率にあり、実施例1におけるイミド化比率70%は最も高く、実施例4におけるイミド化比率0%は最も低い。イミド化比率が低下すると共に、高温残像特性が明らかに改善され、そして、残留直流電圧が低下する。
【0120】
実施例1、5、7において、実施例1におけるテトラカルボン酸二無水物(a‐4‐1)とテトラカルボン酸二無水物(a‐4‐2)の使用量が同じであり、実施例5におけるテトラカルボン酸二無水物(a‐4‐1)の使用量がテトラカルボン酸二無水物(a‐4‐2)の使用量より高く、実施例7において、全部、テトラカルボン酸二無水物(a‐4‐1)を使用した。これによって、芳香族テトラカルボン酸二無水物(例えば、テトラカルボン酸二無水物(a‐4‐2))の代わりに脂環式テトラカルボン酸二無水物(例えば、テトラカルボン酸二無水物(a‐4‐1))を使用すると、その室温残像特性が悪くなり、且つ残留直流電が高まることが判明した。このため、テトラカルボン酸二無水物(a‐4)において、芳香族テトラカルボン酸二無水物が所定の添加量であれば好適な評価結果を得る。一般的には、重量百分率が20〜90%の芳香族テトラカルボン酸二無水物を含むものが好ましい。
【0121】
(実験二)
合成例重合体A‐5(A‐5‐1)、A‐6(A‐6‐1〜A‐6‐4)と比較例重合体A‐7(A‐7‐1)、A‐8(A‐8‐1、A‐8‐3)の合成方法
【0122】
ジアミン(a‐1、a‐2、a‐3)及びテトラカルボン酸二無水物(a‐4)を表4〜表5で示される比例によって、順次にN‐メチル‐2‐ピロリドン(a‐5‐1)に添加し、固体含有量が25wt%である溶液を調製して、40℃で5〜6時間反応させ、ポリアミック酸を含有する溶液を得た。ポリアミック酸溶液が希釈された後、比例適当なピリジン(a‐7‐1)と無水酢酸(a‐6‐1)を添加して、100〜110℃で3〜4時間脱水閉環反応させることで、イミド‐アミド酸共重合体を含有する溶液を形成した。共重合体を含有する前記溶液をエタノール(a‐5‐3)に注ぎ、沈殿を行い、そして、エタノール(a‐5‐3)で洗浄して精製させ、最後に、固体を集め、減圧して乾燥させ、表4と表5で示される固有粘度及びイミド化比率を有する重合体(A)を得た。
【0125】
(実施例10〜16と比較例3´〜5´の実験方法)
表6に示すように、実施例と比較例のいずれかにおいて、2種類の重合体(A)を取り、表6で示される比例により、γ‐ブチロラクトン(a‐5‐2)とN‐メチル‐2‐ピロリドン(a‐5‐1)との混合溶剤に溶解させ、固体含有量が6wt%である溶液を調製して、直径1μmであるフィルターで濾過して、本発明の液晶配向剤である濾過液を集めた。
【0126】
本発明の液晶配向剤を、ローラープリンタによってガラス基板上に塗布して、200℃の加熱基板で20分間乾燥させ、厚みが0.08μmであるフィルムを形成した。このフィルムに対して、ローラー回転数1000(回転/分)、プラットフォーム移動速度60(ミリメートル/秒)、圧入量0.4μmで配向摩擦を行った。
【0127】
前記液晶配向膜を有する1枚の基板にフレーム用接着剤を塗布して、前記液晶配向膜を有する別の基板にスペーサーを散布させてから、2枚の液晶配向膜基板をそれぞれのフィルム塗布方向が互いに垂直に組み合わせ、最後に、2枚の基板の隙間へ液晶(Merck Ltd.社製ZLI‐4792液晶)を注入して、注射穴を密着して、液晶表示素子を形成した。
【0128】
得られた液晶表示素子に対して、室温残像特性、高温残像特性、残留直流電圧に関わる評価を行った。評価結果を表6に示す。
【0130】
比較例3´においてジアミン(a‐1‐2)の代わりにジアミン(a‐2‐1)を使用した点のみで、実施例13に相違し、即ち、比較例3´においてジアミン(a‐2‐1)、ジアミン(a‐3‐6)のみを用いたが、ジアミン(a‐1‐2)を用いなく、比較例3´の残留直流電圧が明らかに高い。このため、本発明は、重合体(A)の反応物として、3種類のジアミンを同時に用いて、ジアミン(a‐1)、ジアミン(a‐2)の提供したフェノール基、及びフェノール基と第三級窒素原子とのシナジー効果によって、液晶表示素子の残留直流電圧を低下させることができる。
【0131】
実施例10、11、13、14において、重合体(A)の反応物として、3種類のジアミンを同時に用いて、得られた残像特性は、優と良好であり、残留直流電圧は19〜48であり、ジアミン(a‐1‐2)とジアミン(a‐2‐1)を同時に用いて、少量のジアミン(a‐3‐6)を更に添加して、良好な残像特性及び低い残留直流電圧を得られることが示された。
【0132】
実施例11と12を比較すると、実施例12において、実施例11における一部のジアミン(a‐2‐1)の代わりにジアミン(a‐3‐5)を使用した点で、相違し、即ち、実施例12において、ジアミン全体におけるジアミン(a‐2‐1)の占めた比例が低下して、ジアミン全体におけるジアミン(a‐3)の占めた比例が上がった。この際、室温、高温残像特性は、優から良好となり、残留直流電圧は、19mVから165.9mVまでに上がった。実施例14、15及び16を比較すると、実施例15において、実施例14における一部のジアミン(a‐2‐1)の代わりにジアミン(a‐3‐2)を使用し、室温、高温残像特性は、優から普通となり、残留直流電圧は、31mVから217.8mVまでに上がった。実施例16において、実施例14における一部のジアミン(a‐2‐1)の代わりに、ジアミン(a‐3‐5)を使用し、残像特性は、優から普通となり、残留直流電圧は、31mVから203.8mVまでに上がった。前記比較から、ジアミン全体におけるジアミン(a‐3)の占めた比例が高すぎてはいけなく、高すぎると、液晶表示素子の室温、高温残像特性が悪く、残留直流電圧が高くなることが判明した。
【0133】
比較例3´、4´、5´のいずれかにおいて、ジアミン(a‐1‐2)を用いなく、その室温残像特性はただ良好及び普通であり、高温残像特性はただ悪く、残留直流電圧は、実施例10、11、13、14と比較しても高く、これによって、本発明は、ジアミン(a‐1)、ジアミン(a‐2)の提供したフェノール基、及びフェノール基と第三級窒素原子とのシナジー効果によって、液晶表示素子の残像特性を改善して、低残留直流電圧を得られることが判明した。
【0134】
本発明において、重合体(A)が少なくともモル百分率が2.5%のフェノール基骨格、及び少なくともモル百分率が5%の第三級窒素原子骨格を含むことにより、反応して重合体(A)を生成する過程において、フェノール基骨格を提供する化合物が有するフェノール基、及びフェノール基と第三級窒素原子骨格を提供する第三級窒素原子との間で発生したシナジー効果によって、重合体(A)を用いて製作される液晶表示素子に良好な残像特性及び低い残留直流電圧を持たせる。
【0135】
本発明の実施形態を前述の通りに開示したが、本発明を限定するものではない。当業者であれば、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、多様な修正や変更を加えることができる。従って、本発明の保護範囲は、下記特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。