(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分光要素アレイは、各単位ブロックにおいて、前記第1の光感知セルに対向して配置された第1の分光要素、前記第2の光感知セルに対向して配置された第2の分光要素、前記第3の光感知セルに対向して配置された第3の分光要素、および前記第4の光感知セルに対向して配置された第4の分光要素を含み、
前記第1の分光要素は、前記第1の色成分の補色光の少なくとも一部を前記第2の光感知セルに入射させ、前記第1の色成分の光を前記第1の光感知セルに入射させ、
前記第2の分光要素は、前記第1の色成分の光の少なくとも一部を前記第1の光感知セルに入射させ、前記第1の色成分の補色光を前記第2の光感知セルに入射させ、
前記第3の分光要素は、前記第3の色成分の光の少なくとも一部を前記第4の光感知セルに入射させ、前記第3の色成分の補色光を前記第3の光感知セルに入射させ、
前記第4の分光要素は、前記第3の色成分の補色光の少なくとも一部を前記第3の光感知セルに入射させ、前記第3の色成分の光を前記第4の光感知セルに入射させる、請求項1に記載の固体撮像素子。
前記第1の分光要素は、前記第1の色成分の補色光の半分を前記第2の光感知セルに入射させ、前記第1の色成分の補色光の残りの半分を隣接する第1の隣接単位ブロックに含まれる1つの光感知セルに入射させ、
前記第2の分光要素は、前記第1の色成分の光の半分を前記第1の光感知セルに入射させ、前記第1の色成分の光の残りの半分を隣接する第2の隣接単位ブロックに含まれる1つの光感知セルに入射させ、
前記第3の分光要素は、前記第3の色成分の光の半分を前記第4の光感知セルに入射させ、前記第3の色成分の光の残りの半分を隣接する前記第1および第2の隣接単位ブロックの一方に含まれる1つの光感知セルに入射させ、
前記第4の分光要素は、前記第3の色成分の補色光の半分を前記第3の光感知セルに入射させ、前記第3の色成分の補色光の残りの半分を隣接する前記第1および第2の隣接単位ブロックの他方に含まれる1つの光感知セルに入射させる、請求項2に記載の固体撮像素子。
前記第1の分光要素、前記第2の分光要素、前記第3の分光要素、および前記第4の分光要素の各々は、透光性部材を有し、前記透光性部材の形状、および前記透光性部材と前記透光性部材よりも屈折率の低い他の透光性部材との屈折率の差を利用して分光する、請求項2から4のいずれかに記載の固体撮像素子。
前記第1の分光要素、前記第2の分光要素、前記第3の分光要素、および前記第4の分光要素の各々は、ダイクロイックミラーを含み、前記ダイクロイックミラーによって分光する、請求項2から4のいずれかに記載の固体撮像素子。
前記信号処理部は、前記第1の光電変換信号と前記第2の光電変換信号との差分演算と、前記第3の光電変換信号と前記第4の光電変換信号との差分演算とにより、第1の色信号および第2の色信号を生成する、請求項8に記載の撮像装置。
前記信号処理部は、前記第1および第2の光電変換信号の加算、前記第3および第4の光電変換信号の加算、および前記第1から第4の光電変換信号の加算のいずれかを含む演算により、輝度信号を生成する、請求項8または9に記載の撮像装置。
【背景技術】
【0002】
近年、CCDやCMOS等の固体撮像素子(以下、「撮像素子」と称する場合がある。)を用いたデジタルカメラやデジタルムービーの高機能化、高性能化には目を見張るものがある。特に半導体製造技術の急速な進歩により、撮像素子における画素構造の微細化が進んでいる。その結果、撮像素子の画素および駆動回路の高集積化が図られ、撮像素子の高性能化が進んでいる。特に近年では、固体撮像素子の配線層が形成された面(表面)側ではなく裏面側で受光する裏面照射型(backside illumination)の撮像素子を用いたカメラも開発され、その特性等が注目されている。その一方で撮像素子の多画素化に伴い、1画素の受ける光量が低下するため、カメラ感度が低下するという問題が起きている。
【0003】
カメラの感度低下は、多画素化以外にも、色分離用の色フィルタが用いられることにも原因がある。通常のカラーカメラでは、撮像素子の各光感知セルに対向して有機顔料を色素とする減色型の色フィルタが配置される。色フィルタは、利用する色成分以外の光を吸収するため、このような色フィルタを用いた場合、カメラの光利用率は低下する。例えば、赤(R)1画素、緑(G)2画素、青(B)1画素を基本構成とするベイヤー型の色フィルタ配列をもつカラーカメラでは、R、G、Bの各色フィルタは、それぞれR、G、B光のみを透過させ、残りの光を吸収する。したがって、ベイヤー配列によるカラーカメラにおいて利用される光は、入射光全体の約1/3である。
【0004】
上記の感度低下の問題に対して、入射光を多く取り込むために、撮像素子の受光部にマイクロレンズアレイを取り付けることによって受光量を増やす技術が特許文献1に開示されている。この技術によれば、マイクロレンズを用いて光感知セルに集光することにより、撮像素子における光開口率を実質的に向上させることができる。この技術は現在殆どの固体撮像素子に用いられている。この技術を用いれば、確かに実質的な開口率は向上するが、色フィルタによる光利用率低下の問題を解決するものではない。
【0005】
光利用率低下と感度低下の問題を同時に解決する技術として、多層膜の色フィルタ(ダイクロイックミラー)とマイクロレンズとを組み合わせて、光を最大限利用する技術が特許文献2に開示されている。この技術では、光を吸収せず特定波長域の光を選択的に透過させ、他の波長域の光を反射する複数のダイクロイックミラーが用いられる。これにより、光を損失することなく、個々の光感知部に必要な波長域の光のみを入射させることができる。
【0006】
図10は、特許文献2に開示された撮像素子の撮像面に垂直な方向の断面を模式的に示す図である。この撮像素子は、撮像素子の表面および内部にそれぞれ配置された集光用のマイクロレンズ4a、4bと、遮光部20と、光感知セル2a、2b、2cと、ダイクロイックミラー17、18、19とを備えている。ダイクロイックミラー17、18、19は、光感知セル2a、2b、2cにそれぞれ対向して配置されている。ダイクロイックミラー17は、R光を透過させ、G光およびB光を反射する特性を有している。ダイクロイックミラー18は、G光を反射し、R光およびB光を透過させる特性を有している。ダイクロイックミラー19は、B光を反射し、R光およびG光を透過させる特性を有している。
【0007】
マイクロレンズ4aに入射した光は、マイクロレンズ4bによって光束を調整された後、第1のダイクロイックミラー17に入射する。第1のダイクロイックミラー17は、R光を透過させるが、G光およびB光を反射する。第1のダイクロイックミラー17を透過した光は、光感知セル2aに入射する。第1のダイクロイックミラー17で反射されたG光およびB光は、隣接する第2のダイクロイックミラー18に入射する。第2のダイクロイックミラー18は、入射した光のうちG光を反射し、B光を透過させる。第2のダイクロイックミラー18で反射されたG光は、光感知セル2bに入射する。第2のダイクロイックミラー18を透過したB光は、第3のダイクロイックミラー19で反射され、その直下の光感知セル2cに入射する。このように、特許文献2に開示された撮像素子によれば、集光マイクロレンズ4aに入射した可視光は、色フィルタによって吸収されず、そのRGBの各成分が3つの光感知セルによって無駄なく検出される。
【0008】
上記の従来技術のほか、マイクロプリズムを用いることによって光の損失を防ぐことができる撮像素子が特許文献3に開示されている。この撮像素子は、マイクロプリズムによって赤、緑、青に分離された光をそれぞれ異なる光感知セルが受ける構造を有している。このような撮像素子によっても光の損失を防ぐことができる。
【0009】
しかしながら、特許文献2および特許文献3に開示された技術では、利用するダイクロイックミラーの数だけ、または分光する数だけ光感知セルを設ける必要がある。例えばRGB3色の光を検出するには、光感知セルの数を、従来の色フィルタを用いた場合の光感知セルの数と比較して3倍に増やさなければならないという課題がある。
【0010】
以上の技術に対し、光の損失は一部発生するが、ダイクロイックミラーと反射とを用いて光の利用率を高める技術が特許文献4に示されている。
図11は当該技術を用いた撮像素子の断面図の一部を示したものである。図示されるように、透光性の樹脂21内にダイクロイックミラー22、23が配置される。ダイクロイックミラー22はG光を透過させ、R光およびB光を反射する特性を有する。また、ダイクロイックミラー23はR光を透過させ、G光およびB光を反射する特性を有する。
【0011】
このような構成により、B光は光感知部で受光できないが、R光、G光は以下の原理で全て検出できる。まずR光がダイクロイックミラー22、23に入射すると、ダイクロイックミラー22では反射され、ダイクロイックミラー23では透過する。ダイクロイックミラー22で反射されたR光は、さらに透光性の樹脂21と空気との界面でも反射され、ダイクロイックミラー23に入射する。R光は、ダイクロイックミラー23を透過し、さらにR光透過性を有する有機色素フィルタ25およびマイクロレンズ26も透過する。このようにして、一部が金属層27で反射するものの、ダイクロイックミラー22、23に入射するR光の殆どが光感知部に入射する。一方、G光がダイクロイックミラー22、23に入射すると、ダイクロイックミラー22では透過し、ダイクロイックミラー23では反射される。ダイクロイックミラー23で反射されたG光は、さらに透光性の樹脂21と空気との界面で全反射し、ダイクロイックミラー22に入射する。G光は、ダイクロイックミラー22を透過し、さらにG光透過性を有する有機色素フィルタ24およびマイクロレンズ26も透過する。このようにして、一部が金属層27で反射するものの、ダイクロイックミラー22、23に入射するG光の殆どが損失なく光感知部に入射する。
【0012】
上記の原理により、特許文献4に示された技術では、RGB光のうち1色は損失するものの2色は殆ど損失なく受光できる。このため、RGB3色分の光感知部を配置する必要はない。ここで、ダイクロイックミラーを有さず有機色素フィルタのみによってカラー化を行う場合と比較すると、有機色素フィルタのみによる場合の光利用率が約1/3であるのに対して、特許文献4に開示された技術を用いた場合の光利用率は全入射光の約2/3となる。すなわち、この技術によれば撮像感度が約2倍に向上する。しかしながら、この技術によっても、3色のうちの1色は損失することになる。
【0013】
一方、分光要素を用いて大幅に光感知セルを増やすことなく光利用率を高めるカラー化技術が特許文献5に開示されている。この技術によれば、光感知セルに対応して配置された分光要素によって光が波長域に応じて異なる光感知セルに入射する。個々の光感知セルは、複数の分光要素から異なる波長域の成分が重畳された光を受ける。その結果、各光感知セルから出力される光電変換信号を用いた信号演算によって色信号を生成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の例示的な実施形態の概要は以下のとおりである。
【0023】
(1)本発明の一態様による固体撮像素子は、各々が第1の光感知セル、第2の光感知セル、第3の光感知セル、および第4の光感知セルを含む複数の単位ブロックが2次元状に配列された光感知セルアレイと、前記光感知セルアレイに対向して配置され、複数の分光要素を含む分光要素アレイと、を備える。前記分光要素アレイが存在しないと仮定した場合に各光感知セルが受ける光を各光感知セルのセル入射光とし、前記セル入射光に含まれる可視光が、第1の色成分、第2の色成分、および第3の色成分から構成され、各色成分を除く色成分の可視光を、当該色成分の補色光とするとき、前記分光要素アレイは、前記第1の光感知セルのセル入射光から前記第1の色成分の補色光を除いた光に前記第1の色成分の光を加えた光を前記第1の光感知セルに入射させ、前記第2の光感知セルのセル入射光から前記第1の色成分の光を除いた光に前記第1の色成分の補色光を加えた光を前記第2の光感知セルに入射させ、前記第3の光感知セルのセル入射光から前記第3の色成分の光を除いた光に前記第3の色成分の補色光を加えた光を前記第3の光感知セルに入射させ、前記第4の光感知セルのセル入射光から前記第3の色成分の補色光を除いた光に前記第3の色成分の光を加えた光を前記第4の光感知セルに入射させる。
【0024】
(2)項目(1)に記載の固体撮像素子のある態様において、前記分光要素アレイは、各単位ブロックにおいて、前記第1の光感知セルに対向して配置された第1の分光要素、前記第2の光感知セルに対向して配置された第2の分光要素、前記第3の光感知セルに対向して配置された第3の分光要素、および前記第4の光感知セルに対向して配置された第4の分光要素を含む。前記第1の分光要素は、前記第1の色成分の補色光の少なくとも一部を前記第2の光感知セルに入射させ、前記第1の色成分の光を前記第1の光感知セルに入射させ、前記第2の分光要素は、前記第1の色成分の光の少なくとも一部を前記第1の光感知セルに入射させ、前記第1の色成分の補色光を前記第2の光感知セルに入射させ、前記第3の分光要素は、前記第3の色成分の光の少なくとも一部を前記第4の光感知セルに入射させ、前記第3の色成分の補色光を前記第3の光感知セルに入射させ、前記第4の分光要素は、前記第3の色成分の補色光の少なくとも一部を前記第3の光感知セルに入射させ、前記第3の色成分の光を前記第4の光感知セルに入射させる。
【0025】
(3)項目(2)に記載の固体撮像素子のある態様において、前記第1の分光要素は、前記第1の色成分の補色光の半分を前記第2の光感知セルに入射させ、前記第1の色成分の補色光の残りの半分を隣接する第1の隣接単位ブロックに含まれる1つの光感知セルに入射させ、前記第2の分光要素は、前記第1の色成分の光の半分を前記第1の光感知セルに入射させ、前記第1の色成分の光の残りの半分を隣接する第2の隣接単位ブロックに含まれる1つの光感知セルに入射させ、前記第3の分光要素は、前記第3の色成分の光の半分を前記第4の光感知セルに入射させ、前記第3の色成分の光の残りの半分を隣接する前記第1および第2の隣接単位ブロックの一方に含まれる1つの光感知セルに入射させ、前記第4の分光要素は、前記第3の色成分の補色光の半分を前記第3の光感知セルに入射させ、前記第3の色成分の補色光の残りの半分を隣接する前記第1および第2の隣接単位ブロックの他方に含まれる1つの光感知セルに入射させる。
【0026】
(4)項目(2)に記載の固体撮像素子のある態様において、前記第1の分光要素は、前記第1の色成分の補色光のほぼ全てを前記第2の光感知セルに入射させ、前記第2の分光要素は、前記第1の色成分の光のほぼ全てを前記第1の光感知セルに入射させ、前記第3の分光要素は、前記第3の色成分の光のほぼ全てを前記第4の光感知セルに入射させ、前記第4の分光要素は、前記第3の色成分の補色光のほぼ全てを前記第3の光感知セルに入射させる。
【0027】
(5)項目(1)から(4)のいずれかに記載の固体撮像素子のある態様において、前記第1の色成分は赤および青の一方の色成分であり、前記第3の色成分は赤および青の他方の色成分である。
【0028】
(6)項目(1)から(5)のいずれかに記載の固体撮像素子のある態様において、前記第1の分光要素、前記第2の分光要素、前記第3の分光要素、および前記第4の分光要素の各々は、透光性部材を有し、前記透光性部材の形状、および前記透光性部材と前記透光性部材よりも屈折率の低い他の透光性部材との屈折率の差を利用して分光する。
【0029】
(7)項目(1)から(5)のいずれかに記載の固体撮像素子のある態様において、前記第1の分光要素、前記第2の分光要素、前記第3の分光要素、および前記第4の分光要素の各々は、ダイクロイックミラーを含み、前記ダイクロイックミラーによって分光する。
【0030】
(8)本発明の一態様による撮像装置は、項目(1)から(7)のいずれかに記載の固体撮像素子と、前記固体撮像素子に像を形成する光学系と、前記固体撮像素子から出力される信号を処理する信号処理部であって、前記第1の光感知セルから出力される第1の光電変換信号、前記第2の光感知セルから出力される第2の光電変換信号、および前記第3の光感知セルから出力される第3の光電変換信号、前記第4の光感知セルから出力される第4の光電変換信号を用いた演算によって色情報を生成する信号処理部とを備える。
【0031】
(9)項目(8)に記載の撮像装置のある態様において、前記信号処理部は、前記第1の光電変換信号と前記第2の光電変換信号との差分演算と、前記第3の光電変換信号と前記第4の光電変換信号との差分演算とにより、第1の色信号および第2の色信号を生成する。
【0032】
(10)項目(8)または(9)に記載の撮像装置のある態様において、前記信号処理部は、前記第1および第2の光電変換信号の加算、前記第3および第4の光電変換信号の加算、および前記第1から第4の光電変換信号の加算のいずれかを含む演算により、輝度信号を生成する。
【0033】
(11)本発明の一態様による信号処理方法は、項目(1)から(7)のいずれかに記載の固体撮像素子から出力される信号を処理する方法であって、前記第1の光感知セルから出力される第1の光電変換信号、前記第2の光感知セルから出力される第2の光電変換信号、前記第3の光感知セルから出力される第3の光電変換信号、および前記第4の光感知セルから出力される第4の光電変換信号を取得するステップAと、前記第1から第4の光電変換信号を用いて色情報を生成するステップBとを含む。
【0034】
(12)項目(11)に記載の信号処理方法のある態様において、前記ステップBは、前記第1の光電変換信号と前記第2の光電変換信号との差分を示す第1の差分信号を生成するステップと、前記第3の光電変換信号と前記第4の光電変換信号との差分を示す第2の差分信号を生成するステップとを含む。
【0035】
(13)項目(12)に記載の方法のある態様において、前記ステップBは、前記第1および第2の光電変換信号の加算、前記第3および第4の光電変換信号の加算、および前記第1から第4の光電変換信号の加算のいずれかを含む演算によって輝度信号を生成するステップと、前記輝度信号、前記第1の差分信号、および前記第2の差分信号を用いて前記セル入射光に含まれる赤、緑、および青の色信号を生成するステップとをさらに含む。
【0036】
以下、具体的な実施形態を説明する前に、まず
図1、2を参照しながら、本開示における実施形態の基本原理を説明する。なお、以下の説明において、波長域または色成分の異なる光を空間的に分離することを「分光」と称することがある。
【0037】
本発明の一態様による固体撮像素子は、撮像面に2次元状に配列された複数の光感知セル(画素)を含む光感知セルアレイと、複数の分光要素を含む分光要素アレイとを備えている。
図1は、固体撮像素子10の撮像面に形成された光感知セルアレイ200および分光要素アレイ100の一部を模式的に示す斜視図である。分光要素アレイ100は、光感知セルアレイ200に対向して光が入射する側に配置されている。なお、光感知セル2の配列、形状、サイズなどはこの図の例に限られず、公知のどのような配列、形状、サイズであってもよい。また、分光要素アレイ100は、便宜上、四角柱で表されているが、実際はこのような形状を有しているわけではなく、様々な構造をとり得る。
【0038】
各光感知セル2は、光を受けると光電変換によって受けた光の強度(入射光量)に応じた電気信号(以下、「光電変換信号」または「画素信号」と呼ぶこととする。)を出力する。本実施形態では、各光感知セル2は、分光要素アレイ100によって進行方向が変化した複数の波長域(色成分)の光を受ける。その結果、各光感知セル2が受ける光は、分光要素が存在しないと仮定した場合に受ける光とは異なる分光分布(波長域ごとの強度分布)を有する。
【0039】
以下、
図2を参照しながら、撮像素子10の基本構造を説明する。
【0040】
図2(a)は、光感知セルアレイ200の基本画素構成(単位ブロック)40の一例を示す平面図である。光感知セルアレイ200は、各々が4つの光感知セル2a、2b、2c、2dを含む複数の単位ブロック40が撮像面上に2次元状に配列された構造を有している。図示される例では、1つの単位ブロック内に4つの光感知セルが2行2列に配置されている。
【0041】
図2(b)、(c)は、それぞれ
図2(a)におけるAA´線断面、BB´線断面を模式的に示す図である。
図2(b)、(c)は、撮像素子10に入射した光が分光要素アレイ100を透過する際に色成分によって進行方向が変化し、結果として各光感知セルが受ける光の分光分布が互いに異なっていることを示している。ここで、分光要素アレイ1が存在しないと仮定した場合に各光感知セルが受ける光をその光感知セルの「セル入射光」と呼ぶこととする。1つの単位ブロックに含まれる光感知セル2a〜2dが近接している場合、それらの光感知セルのセル入射光に含まれる光の強度および分光分布はほぼ同一であると考えることができる。それらの光感知セルのセル入射光の可視光成分の強度を記号「W」で表すこととする。本明細書では、セル入射光に含まれる可視光成分を、大別して第1の色成分、第2の色成分、第3の色成分に分類する。第1〜第3の色成分の強度をそれぞれC1、C2、C3と表すと、W=C1+C2+C3となる。
【0042】
以下の説明では、各色成分の強度だけでなく、色成分自体をC1、C2、C3で表すことがある。また、各色成分を除く可視光の色成分をその色成分の「補色」と呼び、補色の光を「補色光」と呼ぶ。すると、第1の色成分C1の補色はC2+C3、第2の色成分C2の補色はC1+C3、第3の色成分C3の補色はC1+C2で表される。以下では、便宜上、色成分Cn(CnはC1、C2、C3のいずれか)の補色およびその強度をCn^で表す場合がある。第1〜第3の色成分の組み合わせは、典型的には赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色の組み合わせであるが、可視光を3つの波長域に分けるものであれば他の色成分の組み合わせであってもよい。
【0043】
以下、本実施形態における分光要素アレイ100の働きを説明する。分光要素アレイ100は、第1の光感知セル2aのセル入射光(強度W)から第1の色成分の補色光(強度C1^)を除いた光に第1の色成分の光(強度C1)を加えた光を第1の光感知セル2aに入射させる。また、第2の光感知セル2bのセル入射光(強度W)から第1の色成分の光(強度C1)を除いた光に第1の色成分の補色光(強度C1^)を加えた光を第2の光感知セル2bに入射させる。さらに、第3の光感知セル2cのセル入射光(強度W)から第3の色成分の光(強度C3)を除いた光に第3の色成分の補色光(強度C3^)を加えた光を第3の光感知セル2cに入射させる。また、第4の光感知セル2dのセル入射光(強度W)から第3の色成分の補色光(強度C3^)を除いた光に第3の色成分の光(強度C3)を加えた光を第4の光感知セル2dに入射させる。
【0044】
以上の構成により、光感知セル2a〜2dは、
図2(b)、(c)に示すように、それぞれW−C1^+C1、W−C1+C1^、W−C3+C3^、W−C3^+C3で表される強度の光を受ける。各光感知セルは、これらの強度に応じた光電変換信号(画素信号)を出力する。ここで、光感知セル2a〜2dが出力する光電変換信号をそれぞれS2a〜S2dとし、強度Wに対応する信号をWs、強度C1に対応する信号をC1s、強度C2に対応する信号をC2s、強度C3に対応する信号をC3s、さらに強度C1^に対応する信号をC1^s(=C2s+C3s)、強度C2^に対応する信号をC2^s(=C1s+C3s)、強度C3^に対応する信号をC3^s(=C1s+C2s)とし、Ws=C1s+C2s+C3sとする。すると、S2a〜S2dは、それぞれ以下の式1〜4で表すことができる。
(式1) S2a=Ws−C1^s+C1s=2C1s
(式2) S2b=Ws−C1s+C1^s=2C1^s
(式3) S2c=Ws−C3s+C3^s=2C3^s
(式4) S2d=Ws−C3^s+C3s=2C3s
【0045】
信号S2a、S2bの差分をD1とし、信号S2c、S2dの差分をD2とすると、D1、D2は、それぞれ以下の式5、6で表される。
(式5) D1=S2a−S2b=2C1s−2C1^s
(式6) D2=S2d−S2c=2C3s−2C3^s
【0046】
さらに、C1^s=Ws−C1s、C3^s=Ws−C3sにより、それぞれ以下の式7、8が得られる。
(式7) D1=4C1s−2Ws
(式8) D2=4C3s−2Ws
すなわち、(4C1s−2Ws)および(4C3s−2Ws)の色差信号が得られる。
【0047】
一方、S2aとS2bとの加算、S2cとS2dとの加算、およびS2a〜S2dの加算のいずれかの演算により、以下の式9〜11に示すように、セル入射光の強度Wの2倍または4倍に相当する信号が得られる。また、これらの信号は、入射光の全てを損失なく光電変換されたものであるから、これらを輝度信号として利用すれば、画像の感度としては理想的である。
(式9) S2a+S2b=2Ws
(式10) S2c+S2d=2Ws
(式11) S2a+S2b+S2c+S2d=4Ws
【0048】
式9〜11のいずれかの演算によって求められる輝度信号と、式7、8によって求められる2つの色差信号が得られれば、行列演算によりRGB信号を求めることができる。すなわち、光感知セル2a〜2dから出力される4つの光電変換信号S2a〜S2dに基づく信号演算によってカラー信号を算出できる。
【0049】
本実施形態の撮像素子10によれば、光の一部を吸収する色フィルタを用いることなく、分光要素を用いて信号演算によってカラー情報を得ることができる。そのため、光の損失を防ぐことができ、撮像感度を高めることが可能となる。
【0050】
なお、
図1および
図2(b)、(c)では、分光要素アレイ100は複数の光感知セルを覆う連続的な要素として描かれているが、分光要素アレイ4は、空間的に分離した複数の分光要素の集合体であってもよい。このような分光要素として、例えば後述する高屈折率透明部材、ダイクロイックミラー、マイクロプリズムなどが用いられ得る。本実施形態における分光要素アレイ100は、上記の式1〜4で表される光電変換信号が得られればどのように構成されていてもよく、例えばホログラム素子などを用いて分光を行ってもよい。
【0051】
以下、
図3から
図8を参照しながらより具体的な実施形態を説明する。以下の説明において、共通する要素には同一の符号を付している。
【0052】
(実施形態1)
図3は、第1の実施形態による撮像装置の全体構成を示すブロック図である。本実施形態の撮像装置は、デジタル式の電子カメラであり、撮像部300と、撮像部300から送出される信号に基づいて画像を示す信号(画像信号)を生成する信号処理部400とを備えている。なお、撮像装置は静止画のみを生成してもよいし、動画を生成する機能を備えていてもよい。
【0053】
撮像部300は、被写体を結像するための光学レンズ12と、光学フィルタ11と、光学レンズ12および光学フィルタ11を通して結像した光情報を、光電変換によって電気信号に変換する固体撮像素子10(イメージセンサ)とを備えている。撮像部300はさらに、撮像素子10を駆動するための基本信号を発生するとともに撮像素子10からの出力信号を受信して信号処理部400に送出する信号発生/受信部13と、信号発生/受信部13によって発生された基本信号に基づいて撮像素子10を駆動する素子駆動部14とを備えている。光学レンズ12は、公知のレンズであり、複数のレンズを有するレンズユニットであり得る。光学フィルタ11は、画素配列が原因で発生するモアレパターンを低減するための水晶ローパスフィルタに、赤外線を除去するための赤外カットフィルタを合体させたものである。撮像素子10は、典型的にはCMOSまたはCCDであり、公知の半導体製造技術によって製造される。信号発生/受信部13および素子駆動部14は、例えばCCDドライバなどのLSIから構成されている。
【0054】
信号処理部400は、撮像部300から送出される信号を処理して画像信号を生成する画像信号生成部15と、画像信号の生成過程で発生する各種のデータを格納するメモリ30と、生成した画像信号を外部に送出する画像信号出力部16とを備えている。画像信号生成部15は、公知のデジタル信号処理プロセッサ(DSP)などのハードウェアと、画像信号生成処理を含む画像処理を実行するソフトウェアとの組合せによって好適に実現され得る。メモリ30は、DRAMなどによって構成される。メモリ30は、撮像部300から送出された信号を記録するとともに、画像信号生成部15によって生成された画像データや、圧縮された画像データを一時的に記録する。これらの画像データは、画像信号出力部16を介して不図示の記録媒体や表示部などに送出される。
【0055】
なお、本実施形態の撮像装置は、電子シャッタ、ビューファインダ、電源(電池)、フラッシュライトなどの公知の構成要素を備え得るが、それらの説明は本実施形態の理解に特に必要でないため省略する。また、以上の構成はあくまでも一例であり、本実施形態において、撮像素子10および画像信号生成部15を除く構成要素には、公知の要素を適切に組み合わせて用いることができる。
【0056】
以下、本実施形態における固体撮像素子10を説明する。
【0057】
図4は、露光中にレンズ12を透過した光が撮像素子10に入射する様子を模式的に示す図である。
図4では、簡単のためレンズ12および撮像素子10以外の構成要素の記載は省略されている。また、レンズ12は、一般には光軸方向に並んだ複数のレンズによって構成され得るが、簡単のため、単一のレンズとして描かれている。撮像素子10の撮像面10aには、2次元状に配列された複数の光感知セル(画素)を含む光感知セルアレイが配置されている。各光感知セルは、典型的にはフォトダイオードであり、光電変換によって入射光量に応じた光電変換信号(画素信号)を出力する。撮像面10aにはレンズ12および光学フィルタ11を透過した光(可視光)が入射する。一般に撮像面10aに入射する光の強度および波長域ごとの入射光量の分布(分光分布)は、入射位置に応じて異なる。
【0058】
図5(a)、(b)は、本実施形態における画素配列の例を示す平面図である。光感知セルアレイ200は、例えば、
図5(a)に示すように撮像面10a上に正方格子状に配列された複数の光感知セルを有する。光感知セルアレイ200は、複数の単位ブロック40から構成され、各単位ブロック40は4つの光感知セル2a、2b、2c、2dを含んでいる。なお、光感知セルの配列は、このような正方格子状の配列ではなく、例えば、
図4(b)に示す斜交型の配列であってもよいし、他の配列であってもよい。本実施形態では、各単位ブロックに含まれる4つの光感知セル2a〜2dは、
図5(a)、(b)に示すように、互いに近接しているが、これらが離れていても、後述する分光要素アレイを適切に構成することによって色情報を得ることが可能である。また、各単位ブロックが5個以上の光感知セルを含んでいてもよい。
【0059】
光感知セルアレイ200に対向して、光が入射する側に複数の分光要素を含む分光要素アレイが配置される。本実施形態では、各単位ブロックに含まれる4つの光感知セルに対して各々1つずつ分光要素が設けられる。
【0060】
以下、本実施形態における分光要素を説明する。
【0061】
本実施形態における分光要素は、屈折率が異なる2種類の透光性部材の境界で生じる光の回折を利用して入射光を波長域に応じて異なる方向に向ける光学素子である。このタイプの分光要素は、屈折率が相対的に高い材料で形成された高屈折率透明部材(コア部)と、屈折率が相対的に低い材料で形成されコア部の各々の側面と接する低屈折率透明部材(クラッド部)とを有している。コア部とクラッド部との間の屈折率差により、両者を透過した光の間で位相差が生じるため、回折が起こる。この位相差は光の波長によって異なるため、光を波長域(色成分)に応じて空間的に分離することが可能となる。例えば、第1の方向および第2の方向に第1色成分の光を半分ずつ向け、第3の方向に第1色成分以外の光を向けることができる。また、3つの方向にそれぞれ異なる波長域(色成分)の光を向けることも可能である。コア部とクラッド部との屈折率差によって分光が可能になるため、本明細書では、高屈折率透明部材のことを「分光要素」と呼ぶことがある。このような回折型の分光要素の詳細は、例えば、特許第4264465号公報に開示されている。
【0062】
以上のような分光要素を有する分光要素アレイは、公知の半導体製造技術により、薄膜の堆積およびパターニングを実行することにより、製造され得る。分光要素の材質(屈折率)、形状、サイズ、配列パターンなどを適切に設計することにより、個々の光感知セルに所望の波長域の光を分離・統合して入射させることが可能となる。その結果、各光感知セルが出力する光電変換信号の組から、必要な色成分に対応する信号を算出することができる。
【0063】
以下、
図6を参照しながら本実施形態における撮像素子10の基本構造および各分光要素の働きを説明する。
【0064】
図6(a)は撮像素子10の基本構造を示す平面図である。各単位ブロックにおいて、4つの光感知セル2a、2b、2c、2dの各々に対向して分光要素1a、1b、1c、1dがそれぞれ配置されている。このような基本構造を有する複数のパターンが撮像面10a上に繰り返し形成されている。
【0065】
図6(b)、(c)は、
図6(a)におけるAA´線断面およびBB´線断面をそれぞれ示す図である。図示されるように、撮像素子10は、シリコンなどの材料からなる半導体基板7と、半導体基板7の内部に配置された光感知セル2a〜2dと、半導体基板7の表面側(光が入射する側)に形成された配線層5および低屈折率透明部材からなる透明層6aと、透明層6aの内部に配置された高屈折率透明部材からなる分光要素1a、1b、1c、1dとを備えている。また、各光感知セルへの集光を効率的に行うためのマイクロレンズ4aが透明層6aを隔てて個々の光感知セルに対応して配置されている。なお、マイクロレンズ4aが配置されていなくても本実施形態の効果を得ることは可能である。
【0066】
図6(a)〜(c)に示す構造は、公知の半導体製造技術により作製され得る。
図6(a)〜(c)に示される撮像素子10は、配線層5の側から各光感知セルに光が入射する表面照射型の構造を有している。しかしながら、本実施形態の撮像素子10はこのような構造に限られず、配線層5の反対側から光を受ける裏面照射型の構造を有していてもよい。
【0067】
分光要素1a、1bは、
図6(b)に示すように、光が透過する方向に長い長方形状の断面を有し、自身と透明層6aとの間の屈折率差によって分光する。分光要素1aは、対向する光感知セル2aに赤(R)光を入射させ、光感知セル2b、および隣接する単位ブロックに含まれる光感知セル(不図示)にシアン(Cy)光を半分ずつ入射させる。ここで、シアン(Cy)光は緑(G)光および青(B)光から成る光である。一方、分光要素1bは、対向する光感知セル2bにCy光を入射させ、光感知セル2a、および隣接する他の単位ブロックに含まれる光感知セル(不図示)にR光を半分ずつ入射させる。本実施形態では、分光要素1a、1bが上記の分光特性をもつように分光要素1a、1bの長さおよび厚さが設計されている。なお、G光およびB光の強度は必ずしも一致しないため、Cy光は、緑と青の混色であるシアン色を視認させる光であるとは限らない。例えば、セル入射光がB光を全く含んでいない場合、Cy光は、G光と同様、緑色を視認させる光である。
【0068】
このような分光要素1a、1bを用いることにより、光感知セル2aは、分光要素1aからR光を受け、分光要素1b、および隣接する単位ブロックに含まれる分光要素からもR光を半分ずつ受ける。また、光感知セル2bは、分光要素1bからCy光を受け、分光要素1a、および隣接する単位ブロックに含まれる分光要素(不図示)からもCy光を半分ずつ受ける。
【0069】
また、分光要素1c、1dも、
図6(c)に示すように、光が透過する方向に長い長方形状の断面を有し、自身と透明層6aとの間の屈折率差によって分光する。分光要素1cは、対向する光感知セル2cに黄光(Ye)を入射させ、光感知セル2d、および隣接する単位ブロックに含まれる光感知セル(不図示)に青(B)光を半分ずつ入射させる。ここで、黄光(Ye)は赤(R)光と緑(G)光から成る光である。一方、分光要素1dは、対向する光感知セル2dに青(B)光を入射させ、光感知セル2c、および隣接する他の単位ブロックに含まれる光感知セル(不図示)に黄(Ye)光を半分ずつ入射させる。本実施形態では、分光要素1c、1dが上記の分光特性をもつように分光要素1c、1dの長さおよび厚さが設計されている。なお、R光およびG光の強度は必ずしも一致しないため、Ye光は、赤と緑の混色である黄色を視認させる光であるとは限らない。例えば、セル入射光がG光を全く含んでいない場合、Ye光は、R光と同様、赤色を視認させる光である。
【0070】
上記の分光要素1a〜1dによる分光の結果、光感知セル2a〜2dは、それぞれ以下の式12〜15で表される光電変換信号S2a〜S2dを出力する。ここで、赤光、緑光、青光の強度に相当する信号をそれぞれRs、Gs、Bsで表す。また、シアン光の強度に相当する信号CsをGs+Bs、黄光の強度に相当する信号YsをRs+Gs、白光の強度に相当する信号WsはRs+Gs+Bsとする。
(式12)S2a=Ws−Cs+Rs=2Rs
(式13)S2b=Ws−Rs+Cs=2Cs
(式14)S2c=Ws−Bs+Ys=2Ys
(式15)S2d=Ws−Ys−Bs=2Bs
【0071】
式12〜15は、それぞれ式1〜4においてC1sをRsに、C1^sをCsに、C3sをBsに、C3^sをYsに置換したものに相当する。すなわち、本実施形態では、第1の色成分はR光、第2の色成分はG光、第3の色成分はB光である。
【0072】
画像信号生成部15(
図3)は、式12〜15で示される光電変換信号を用いた演算によって色情報を生成する。以下、
図7を参照しながら、画像信号生成部15による色情報生成処理を説明する。
図7は、本実施形態における色情報生成処理の手順を示すフロー図である。
【0073】
画像信号生成部15は、まず、ステップS10において、光電変換信号S2a〜S2dを取得する。続いて、ステップS12において、(S2a−S2b)の演算によって2(Rs−Cs)、すなわち色差信号(4Rs−2Ws)を生成し、(S2d−S2c)の演算によって2(Bs−Ys)、すなわち色差信号(4Bs−2Ws)を生成する。次に、ステップS14において、画素信号S2a〜S2dを合算することによってセル入射光の強度を示す信号4(Rs+Gs+Bs)=4Wsを生成し、これを輝度信号とする。最後に、ステップS16において、2つの色差信号と1つの輝度信号から行列演算によりRGBカラー信号を得る。具体的には、色差信号(4Rs−2Ws)に輝度信号の1/2を加えて4Rsを作り、色差信号(4Bs−2Ws)に輝度信号の1/2を加えて4Bsを作り、輝度信号4Wsから4Rsと4Bsを減算することにより、4Gsが得られる。
【0074】
画像信号生成部15は、以上の信号演算を光感知セルアレイ2の単位ブロック40ごとに実行することによってR、G、Bの各色成分の画像を示す信号(「カラー画像信号」と呼ぶ。)を生成する。生成されたカラー画像信号は、画像信号出力部16によって不図示の記録媒体や表示部に出力される。
【0075】
このように、本実施形態の撮像装置によれば、光電変換信号S2a〜S2dを用いた加減算処理により、カラー画像信号が得られる。本実施形態における撮像素子10によれば、光を吸収する光学素子を用いないため、色フィルタなどを用いる従来技術と比較して光の損失を大幅に低減することができる。
【0076】
以上のように、本実施形態の撮像素子10では、光感知セルアレイに対向して2行2列を基本構成とする分光要素アレイが配置される。1行1列目には光を赤光と赤光以外とに分ける分光要素1aが配置される。1行2列目には光をシアン光とシアン光以外とに分ける分光要素1bが配置される。2行1列目には光を黄光と黄光以外とに分ける分光要素1cが配置される。2行2列目には光を青光と青光以外とに分ける分光要素1dが配置される。このような分光要素の配列パターンが撮像面上に繰り返し形成されているため、光感知セルアレイ200における単位ブロック40の選び方を1行または1列ずつ変えても、得られる4つの光電変換信号は、常に式12〜15で表される4つの信号の組み合わせとなる。すなわち、演算対象の画素ブロックを1行および1列ずつずらしながら上記の信号演算を行うことにより、RGB各色成分の情報をほぼ画素数分だけ得ることができる。このことは、撮像装置の解像度を画素数の程度まで高めることができることを意味している。したがって、本実施形態の撮像装置は、従来の撮像装置よりも高感度であることに加えて、高解像度のカラー画像を生成することが可能である。
【0077】
なお、画像信号生成部15は、必ずしも3つの色成分の画像信号を全て生成しなくてもよい。用途に応じて1色または2色の画像信号だけを生成するように構成されていてもよい。また、必要に応じて信号の増幅、合成、補正を行ってもよい。
【0078】
また、各分光要素は上述した分光性能を厳密に有していることが理想であるが、それらの分光性能が多少ずれていてもよい。すなわち、各光感セルから実際に出力される光電変換信号が、式12〜15に示す光電変換信号から多少ずれていてもよい。各分光要素の分光性能が理想的な性能からずれている場合であっても、ずれの程度に応じて信号を補正することによって良好な色情報を得ることができる。
【0079】
さらに、本実施形態における画像信号生成部15が行う信号演算を、撮像装置自身ではなく他の機器に実行させることも可能である。例えば、撮像素子10から出力される光電変換信号の入力を受けた外部の機器に本実施形態における信号演算処理を規定するプログラムを実行させることによっても色情報を生成することができる。
【0080】
なお、撮像素子10の基本構造は
図6に示す構成に限られるものではない。例えば、分光要素1aと分光要素1bとが入れ替わった構成、あるいは分光要素1cと分光要素1dとが入れ替わった構成で配置されていても本実施形態の効果に変わりはない。また、
図6(a)に示す1行目の配置と2行目の配置とが入れ替わっていてもよいし、分光要素1a、1bおよび分光要素1c、1dが行方向ではなく、列方向に並ぶように配置されていてもその有効性に変わりはない。
【0081】
さらに、分光要素アレイは、単位ブロック40に含まれる4つの光感知セル2a、2b、2c、2dに、それぞれ2R、2Cy(2G+2B)、2Ye(=2R+2G)、2Bで表される光が入射するように構成されていれば、どのように構成されていてもよい。
【0082】
以上の説明では、分光要素として、2つの部材の屈折率差を利用して分光する光学素子を用いているが、本実施形態における分光要素は、各光感知セルに所望の色成分の光を入射できればどのようなものであってもよい。例えば、分光要素としてマイクロプリズムやダイクロイックミラーを用いてもよい。また、異なる種類の分光要素を組み合わせて用いることも可能である。
【0083】
一例として、ダイクロイックミラーによる光の透過と反射とを一部に利用した撮像素子の構成例を
図8に示す。
図8(a)は、この例における基本画素構成を示す平面図である。
図8(b)、(c)は、それぞれ
図8(a)におけるAA´線断面およびBB´線断面を示す図である。この構成例では、
図6に示す分光要素1a、1bの代わりに、ダイクロイックミラーを含む分光要素1e、1fがそれぞれ配置されている。分光要素1c、1dは、
図6に示す分光要素1c、1dと同様の特性を有している。なお、
図8に示す撮像素子10は、配線層5の反対側から光が入射する裏面照射型の構造を有しているが、このことは特に重要ではなく、表面照射型の構造を有していてもよい。
【0084】
撮像素子10は、
図8(b)、(c)に示すように、シリコンなどの材料からなる半導体基板7と、半導体基板7内に配置された光感知セル2a〜2dと、半導体基板7の裏面側(光が入射する側)に形成された透明層6bと、透明層6bの内部に配置された分光要素1e、1f、および分光要素1c、1dとを備えている。半導体基板7の表面側(光が入射する側の反対側)には配線層5が形成されている。また、表面側には半導体基板7や配線層5などを支持する固定基盤9が配置されている。固定基板9は透明層6bを介して半導体基板7と接合されている。透明層6bは、空気よりも屈折率が高く、分光要素1c、1dよりも屈折率が低い透光性の部材から形成される。
【0085】
分光要素1eは、Cy光を反射し、Cy光以外を透過させるダイクロイックミラーを2つ接合したものを含んでいる。分光要素1fは、R光を反射し、R光以外を透過させるダイクロイックミラーを2つ接合したものを含んでいる。各分光要素に含まれる2つのダイクロイックミラーは、撮像面の法線に対して対称に傾斜して配置されている。これらのダイクロイックミラーの傾斜角度は、その反射光が撮像素子10の外部の空気層との界面で全反射し、対向画素に隣接する2つの画素に入射するように設定されている。
【0086】
分光要素1eに光が入射すると、Cy光は反射され、R光は透過する。反射されたCy光の半分は、透明層6bと空気との界面で全反射し、光感知セル2bに入射する。反射されたCy光の残りの半分は、透明層6bと空気との界面で全反射し、隣接する単位ブロックに含まれる光感知セルに入射する。分光要素1eを透過したR光は光感知セル2aに入射する。
【0087】
分光要素1fに光が入射すると、R光は反射され、Cy光は透過する。反射されたR光の半分は、透明層6bと空気との界面で全反射し、光感知セル2aに入射する。反射されたR光の残りの半分は、透明層6bと空気との界面で全反射し、隣接する他の単位ブロックに含まれる光感知セルに入射する。分光要素1fを透過したCy光は光感知セル2aに入射する。
【0088】
分光要素1cは、
図6に示す構成と同様、Ye光を光感知セル2cに入射させ、B光を光感知セル2dと隣接する単位ブロックに含まれる光感知セルに入射させる。また、分光要素1dについても、上記と同様、B光を光感知セル2dに入射させ、Ye光を光感知セル2cと隣接する単位ブロックに含まれる光感知セルに入射させる。なお、分光要素1c、1dのサイズおよび形状は、透明層6bと半導体基板7との界面での屈折を考慮して設計される。
【0089】
このような構成により、各光感知セル2a〜2dは、
図6に示す構成を採用した場合と全く同様の光を受ける。したがって、各光感知セル2a〜2dから出力される光電変換信号も
図6の構成における光電変換信号と変わりはなく、上述の信号演算がそのまま適用できる。このように、
図8に示す構成を採用しても、
図6に示す構成を採用した場合と同様の効果を得ることができる。
【0090】
(実施形態2)
次に、
図9を参照しながら、第2の実施形態を説明する。本実施形態の撮像装置は、実施形態1の撮像装置と比較して、撮像素子10の構造のみが異なっており、その他の構成要素は同一である。以下、実施形態1の撮像装置との相違点を中心に説明し、重複する点は説明を省略する。
【0091】
本実施形態における撮像素子10は、回折を利用する分光要素ではなく、光を原色と補色とに分離するダイクロイックミラーを備えている。また、本実施形態における各分光要素は、隣接単位ブロックの光感知セルに光を入射させず、各単位ブロック内の光感知セルのみに光を入射させる。以下、本実施形態における撮像素子10の基本構造を説明する。
【0092】
図9は、本実施形態における撮像素子10の基本構造を示す図である。本実施形態における撮像素子10は、裏面照射型の撮像素子である。なお、本実施形態においても撮像素子10のタイプが裏面照射型であるか表面照射型であるかは重要ではなく、撮像素子10は表面照射型であってもよい。
図9(a)は、撮像素子10の受光面側の平面図である。本実施形態における撮像素子10の光感知セルの配列は実施形態1における配列と同様であり、1つの単位ブロックは、4つの光感知セル2a〜2dを有している。光感知セル2a、2b、2cに対向してダイクロイックミラー3a、3b、3c、3dがそれぞれ撮像面に対して傾斜して配置されている。ここで、ダイクロイックミラーの傾斜角度は、その反射光が撮像素子10外の空気層との界面で全反射し、対向画素の隣接画素に入射するように設定されている。
【0093】
図9(b)、(c)は、
図9(a)におけるCC´線断面およびDD´線断面をそれぞれ示す図である。図示されるように、撮像素子10は、シリコンなどの材料からなる半導体基板7と、半導体基板7内に配置された光感知セル2a〜2dと、半導体基板7の裏面側(光が入射する側)に形成された透明層6bと、透明層6bの内部に配置されたダイクロイックミラー3a、3b、3c、3dとを備えている。半導体基板7の表面側(光が入射する側の反対側)には配線層5が形成されている。また、表面側には半導体基板7や配線層5などを支持する固定基盤9が配置されている。固定基板9は透明層6bを介して半導体基板7と接合されている。
【0094】
図9(b)に示されるように、ダイクロイックミラー3aは、R光を透過させ、Cy光を反射する特性を有している。また、ダイクロイックミラー3bは、Cy光を透過させ、R光を反射する特性を有している。その結果、ダイクロイックミラー3aを透過したR光は、光感知セル2aに入射する。ダイクロイックミラー3aで反射されたCy光は、透明層6bと空気との界面で全反射し、光感知セル2bに入射する。ダイクロイックミラー3bを透過したCy光は、光感知セル2bに入射する。ダイクロイックミラー3bで反射されたR光は、透明層6bと空気との界面で全反射し、光感知セル2aに入射する。
【0095】
図9(c)に示されるように、ダイクロイックミラー3cは、Ye光を透過させ、B光を反射する特性を有している。また、ダイクロイックミラー3dは、B光を透過させ、Ye光を反射する特性を有している。その結果、ダイクロイックミラー3cを透過したYe光は、光感知セル2cに入射する。ダイクロイックミラー3cで反射されたB光は、透明層6bと空気との界面で全反射し、光感知セル2dに入射する。ダイクロイックミラー3dを透過したB光は、光感知セル2dに入射する。ダイクロイックミラー3dで反射されたYe光は、透明層6bと空気との界面で全反射し、光感知セル2cに入射する。
【0096】
このようなダイクロイックミラー3a〜3dを用いることにより、各光感知セル2a〜2dは、実施形態1における構成を採用した場合と全く同様の色成分の光を受ける。すなわち、光感知セル2aは、ダイクロイックミラー3aを透過したR光と、ダイクロイックミラー3bで反射されたR光とを受ける。光感知セル2bは、ダイクロイックミラー3bを透過したCy光と、ダイクロイックミラー3aで反射されたCy光とを受ける。光感知セル2cは、ダイクロイックミラー3cを透過したYe光と、ダイクロイックミラー3dで反射されたYe光とを受ける。光感知セル2dは、ダイクロイックミラー3dを透過したB光と、ダイクロイックミラー3cで反射されたB光とを受ける。その結果、各光感知セル2a〜2dから出力される光電変換信号S2a〜S2dは、実施形態1における構成を採用した場合と同様、それぞれ式12〜15で表すことができる。したがって、実施形態1における処理と全く同様の処理によって色情報を得ることができる。
【0097】
以上のように、本実施形態の撮像装置によれば、実施形態1の撮像装置と同様、光電変換信号S2a〜S2dを用いた信号演算処理により、カラー画像信号が得られる。本実施形態における撮像素子10によっても、光を吸収する光学素子を用いないため、色フィルタなどを用いる従来技術と比較して光の損失を大幅に低減することができる。また、4つの光電変換信号を用いた演算によって3つの色信号が得られるため、画素数に対して得られる色情報の量が従来の撮像素子による場合よりも多いという効果を有する。
【0098】
以上のように、本実施形態の撮像素子10では、1行1列目には光をシアン光とシアン光以外とに分けるダイクロイックミラー3aが配置される。1行2列目には光を赤光と赤光以外とに分けるダイクロイックミラー3bが配置される。2行1列目には光を青光と青光以外とに分けるダイクロイックミラー3cが配置される。2行2列目には光を黄光と黄光以外とに分けるダイクロイックミラー3dが配置される。このような分光要素の配列パターンが撮像面上に繰り返し形成されているため、光感知セルアレイ200における単位ブロックの選び方を1行または1列ずつ変えても、得られる4つの光電変換信号は、常に式12〜15で表される4つの信号の組み合わせとなる。すなわち、演算対象の画素ブロックを1行および1列ずつずらしながら上記の信号演算を行うことによって、RGB各色成分の情報をほぼ画素数分だけ得ることができる。したがって、本実施形態の撮像装置は、従来の撮像装置よりも高感度であることに加えて、高解像度のカラー画像を生成することが可能である。
【0099】
なお、撮像素子10の基本構造は
図9に示す構成に限られるものではない。例えば、ダイクロイックミラー3aとダイクロイックミラー3bとが入れ替わり、ダイクロイックミラー3cとダイクロイックミラー3dが入れ替わった構成で配置されていても本実施形態の効果に変わりはない。また、
図9(a)に示す1行目の配置と2行目の配置とが入れ替わっていてもよいし、ダイクロイックミラー3a、3bが行方向ではなく、列方向に並ぶように配置されていてもその有効性に変わりはない。
【0100】
本実施形態では、分光要素として、ダイクロイックミラーを用いているが、分光要素は、原色光とその補色の光とに分離するものであればどのようなものでもよい。例えば、分光要素として、マイクロプリズムや、実施形態1で用いられる回折を利用する光学素子を用いてもよい。また、異なる種類の分光要素を組み合わせて用いることも可能である。