【文献】
ソリューション−収益管理,[online],データ・フォアビジョン株式会社,2011年10月25日,[2015年11月27日 検索],インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20111025133658/http://www.dfv.co.jp/solution/bm1.html>
【文献】
大久保豊,全体最適の銀行ALM,「金融工学とリスクマネジメント高度化」研究会 公開資料,「金融工学とリスクマネジメント高度化」研究会,2010年 9月 3日,p.8-47
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
1980年代以降、投資用資産の管理・運用を代行するアセットマネジメント(AM)業務の電子システム化が進んでいる。また、金融機関向けの市場リスク管理システムは、ALM(Asset Liability Management)管理システムなどと呼ばれ、高度な市場リスクや金利算出、収益管理等の機能を充実させてきた。
特に、金融機関では、こうした市場リスク管理にとどまらず、現金や金融商品の管理、さらには経営支援のための様々なシステムが提案されている
【0003】
例えば、グラフを用いて必要な資金量の予測範囲を任意に変えることができ、休日の前日や支店での現金の補充あるいは回収タイミングに柔軟に対応できる現金管理システムが提案されている(特許文献1)。
【0004】
すなわち、特許文献1には、現金の取引を行なう自動取引装置に対して、この自動取引装置に必要な資金量を予測する資金予測方法を実施するシステムであって、資金予測を行なうための任意の日時を指定し、前記自動取引装置の現金情報を基に、現時点から前記指
定された日時まで前記自動取引装置を運用させる場合に必要な資金量を予測し、この予測した資金量に応じて、前記自動取引装置に対
する現金の補充量あるいは回収量を算出し、この算出した補充量あるいは回収量を表示することを特徴とする資金予測方法を実施するシステムが開示されている。
【0005】
また、貸借対照表や損益計算書に年金や保有不動産、子会社の資産や負債等を取り込んで将来の経営計画を判断し、年金運用や不動産運用の種類毎に将来の貸借対照表や損益計算書を試算するとともにグループ企業全体の経営支援を行うシステムが提案されている。(特許文献2)。
【0006】
すなわち、特許文献2には、コンピュータを用いて企業経営の効率を改善するシステムにおいて、貸借対照表と損益計算書の実績データをコンピュータに入力する実績基本データ入力工程と、利益計画と設備投資計画と資金計画をデータとして入力する将来基本データ(シミュレーション)入力工程と、退職金・年金に関する将来予測データと不動産に関する将来予測データと金融商品・販売用不動産等の時価変動に関する将来予測データを入力する将来個別データ(シミュレーション)入力工程と、実績基本データをもとに将来基本・個別データ(シミュレーション)を推進した場合の将来の貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書・税務計算書、経営指標一覧表を選択したシミュレーション毎にコンピュータにより算出する予測(シミュレーション)データ試算工程と、予測データの蓄積管理工程と
、予測データの出力工程とからなることを特徴とする経営効率改善システムが開示されている。
【0007】
さらに、金融商品についての円滑な取引を実現するワークフローを効率的に作成するための金融商品管理システム等が提案されている。
【0008】
すなわち、特許文献3には、取引情報の入力制御を行なう第1レイヤのオブジェクトと、自動値決めと個別値決めとを切り分ける第2レイヤのオブジェクトと、取引を行なうための取引モデル毎に設定された第3レイヤのオブジェクトとを登録したオブジェクトデータベースと、取引モデルを組み合わせて設計された商品の管理を行なう制御手段とを備えた金融商品管理システムであって、前記制御手段が、前記オブジェクトデータベースから第3レイヤの複数のオブジェクトの組み合わせを抽出する抽出手段と、前記オブジェクトの組み合わせに取引パラメータを適用してシミュレーションによりリスク評価値を算出するシミュレーション手段と、前記リスク評価値に応じて、第2レイヤにおける自動値決め又は個別値決めの値決め方法を決定する判定手段と、前記第1レイヤのオブジェクト、前記決定された値決め方法に対応する第2レイヤのオブジェクト及び前記第3レイヤのオブジェクトの組み合わせを結合して設計された商品候補を出力する登録手段とを備えたことを特徴とする金融商品管理システムが開示されている。
【0009】
また、外部環境の変化を考慮しながら、財務指標及び株価を定量的に分析するシステム等が提案されている。
【0010】
すなわち、特許文献4には、株価分析システムであって、外部環境情報履歴記憶手段から外部環境情報の履歴を読み出し、営業効率履歴記憶手段から分析対象企業の営業効率の履歴を読み出し、前記読み出された外部環境情報の履歴及び前記読み出された分析対象企業の営業効率の履歴に基づいて、前記外部環境情報と前記分析対象企業の営業効率との相関を分析する第1分析処理を実行するステップと、前記外部環境情報履歴記憶手段から外部環境情報の履歴を読み出し、生産効率履歴記憶手段から分析対象企業の生産効率の履歴を読み出し、前記読み出された外部環境情報の履歴及び前記読み出された分析対象企業の生産効率の履歴に基づいて、前記外部環境情報と前記分析対象企業の生産効率との相関を分析する第2分析処理を実行するステップと、前記実行された第1分析処理の結果及び第2分析処理の結果を、分析処理結果記憶手段に記憶するステップと、前記分析処理結果記憶手段から前記第1分析処理の結果を読み出し、前記読み出された第1分析処理の結果及び外部環境情報の将来の予測値に基づいて、前記分析対象企業の営業効率の将来の予測値を算出するステップと、前記分析処理結果記憶手段から前記第2分析処理の結果を読み出し、前記読み出された第2分析処理の結果及び前記外部環境情報の将来の予測値に基づいて、前記分析対象企業の生産効率の将来の予測値を算出するステップと、前記算出された分析対象企業の営業効率の将来の予測値及び前記算出された分析対象企業の生産効率の将来の予測値に基づいて、前記分析対象企業の財務指標の将来の予測値及び株価の将来の予測値を算出するステップと、を実行することを特徴とする株価分析システムが開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明にかかる金融機関経営支援システム及びプログラム(以下、単に「システム」ないし「プログラム」ともいう)を実施するための形態について、図面を参照しながら詳述する。
【0020】
図1に、本発明の一実施形態における金融機関経営支援システムの機能ブロックを含むシステム構成例を示す。本発明の一実施形態における金融機関経営支援システム10は、コンピュータで構成され、ソフトウェア/アプリケーションモジュールとして、システムで処理するための基本データを取り込み・作成するための管理データベース(以下、「MDB」ともいう)機能部101と、TP実績等を管理するための実績管理部102と、部門・支店ごとの予算を策定するための予算策定部103と、ALM/リスク管理を行うためのALM/リスク管理部104とを含む。さらに、コンピュータシステムそれ自体の必須機能としてのセキュリティ管理やデータ保存・復元を行うためのセキュリティ管理部、データ保存部・復元部105を備える。
【0021】
システム10は、勘定系/情報系システム12から口座明細データ(預金・貸出金)や日計データ(取引の結果を日単位で整理したもの)の入力を受け付けて必要に応じて処理する。また、システム10は、クライアントPC11からも必要なデータの入力を受け付けて処理を行う。
【0022】
クライアントPC11には、これらに限定されるものではないが、有価証券(債券)データ111、有価証券(株式)データ112、その他の明細データ113、実績TPデータ114、各種ALM用データ115、保全/デフォルト率データ116、属性情報データ117、部門別経費データ118といったデータが格納されており、これらは分析等されるために必要に応じて加工されてシステム10へ送信される。
さらに、
図1に示されるように、システム10へは、資金計画データ13、市場予測データ14、将来TPデータ15といったデータを入力することもできる。
【0023】
図1に示したデータ入力経路によって、MDB機能モジュール101に取り込まれた各種明細データは、設定されたTP情報を元に明細単位にTPやスプレッドを算出するために使用される。
【0024】
図2に、本発明の一実施形態にかかる金融機関経営支援システムにおける収益管理モジュールのTP取り扱いの概念を示す。なお、一般的に、金融機関経営支援システムにおける仕切金利の運用方式には、「差額法」「総額法」等、様々な運用方式があるが、本発明の一実施形態にかかる収益管理モジュールでは、「個別スプレッド法」が採用される(後述)。また、本発明の一実施形態において、市場部門への部門間仕切りレートを「TP1」と呼ぶ。また、営業店への営業店仕切りレートを「TP2」と呼ぶ。また、対顧客レートとTP2の差(営業店収益)を「営業店スプレッド収益」と呼ぶ。
また、調達と運用のTP1のギャップ部分(約定期間の長短GAP)を「長短ミスマッチ収益」と呼ぶ。
【0025】
図2に示すように、本発明の一実施形態にかかる金融機関経営支援システムにおける収益管理モジュールでは、特徴的に、市場の動き(TP1)と営業店仕切レート(TP2)とを分けて設定することで、営業店では市場の動き(TP1)を意識せずに営業店収益(営業店プレッド)を確保することが可能となるという利点がある。
【0026】
つまり、
図2において、顧客21の約定に伴う約定金利a1が営業店収益として計上される際には、約定金利a1と本支店レート(TP2(a2))との差が営業店収益221として計上される。また、TP1(a3)とTP2(a2)との変化が一致しないために計上される収益としてベーシス収益222を勘案する。このとき、金利リスクは、TP1(a3)及びTP2(a2)により分解されることとなる。
以上の流れが、預金22の枠組みでのTPの取り扱われ方である。
【0027】
そして、運用・調達の約定期間差により計上されるものを「長期ミスマッチ収益(金利リスク見合い収益)」として把握する。
【0028】
一方で、営業店が営業店収益(営業店スプレッド)を把握する際には、市場の動き(TP1)と営業店仕切レート(TP2)とを分離して捉えるため、市場の動き(TP1)を意識せずに営業店収益(営業店スプレッド)を確保することができる。
【0029】
なお、貸出金24の枠組みでは、預金22の枠組みでの取り扱いと同様に、ベーシス収益241と営業店収益242とが把握される。また、有価証券25の枠組みでは、一例として、市場部門にて管理する損益251が考慮されて市場金利c2が把握される。
【0030】
[個別スプレッド法]
上述のTPの取扱いにおいては、「個別スプレッド法」が採用されるが、この手法は、個別の取引ごとに仕切レートを設定する方法である。個別の取引ごとに仕切レートが設定され、自店で調達した資金(おもに預金)は、すべて本部へ預けて仕切レートによって利息を受け取り、一方で、自店の運用に要する資金(おもに貸出金)は、すべて本部から借りて仕切レートによって利息が支支払われるという手続が採用される方法である。
この場合の各種仕切金利等の決定法は次の通りである。
【0031】
(営業店仕切金利と営業店収益の決定法)
約定利率と仕切金利の利鞘が営業店にとってのスプレッド収益とされる。営業店収益を得るために、営業店側では、営業店仕切金利で本部より資金を調達し、顧客に貸し出し、貸出利息を徴収する。また、預金を集め、預金利息を支払う一方、集めた金を本部に対して仕切金利で運用する。本部より仕切金利で調達する費用が本支店間支払利息、本部に対して仕切金利で運用する収益が、本支店間受入利息となる。
【0032】
[収益管理モジュールにおけるTP算出処理で使用される項目]
本発明の一実施形態にかかる収益管理モジュールにおけるTP算出処理では、次の3つも項目概念が導入される。
(1)仕切金利種類(仕切金利パターン)
(2)仕切金利プール
(3)仕切金利区分
以下、それぞれの項目概念について説明する。
【0033】
(1)仕切金利種類(仕切金利パターン)
仕切金利種類とは、TP1(部門別仕切レート)やTP2(営業店仕切レート)に相当する仕切金利の種類が定義されたテーブルである。本発明の一実施形態にかかる金融機関経営支援システムでは、仕切金利の種類は、従来のTP1、TP2といった2種類に固定されることなく、3種類以上の仕切金利を保持可能に構成されていることが大きな特徴となっている。また、これらの仕切金利は、営業店収益管理以外の目的でも利用可能である。例えば、次のような用途が挙げられる。
・TP2検証用、期替りでのTP水準見直し用の“TP2−2”の設定。
・TPの内訳を保証料、預金保険料などに分離して更に詳細に把握する。
・商品種別や顧客属性ごとの経費率として利用する。
・商品ごとの調達コストの実態を表す指標を設定(住宅ローンの調達コストを預金金利とした場合の収益性を把握する)。
【0034】
また、この仕切金利種類(仕切金利パターン)は、例えば、「今期用」「来期用」というように期ごとに用意
することができる。
【0035】
(2)仕切金利プール
仕切金利プールとは、仕切金利の計算方式や金利水準が同一となる明細のグルーピング単位である。仕切金利種類ごとに設定される。また、任意の明細項目(勘定コードや条件項目)、属性項目(顧客属性の人格や格付など)の条件の組み合わせにより、勘定科目とは異なる括りでのグルーピングを設定することも可能となる。
このような勘定科目とは異なる括りでのグルーピングを可能としたことは、本発明の大きな特徴の一つとなっている。
【0036】
(3)仕切金利区分
仕切金利区分とは、仕切金利の計算方式と仕切金利水準(基準金利連動方式や定率スプレッド方式等のTP計算手法やTP適用日算出パラメータ等)を設定する単位である。仕切金利プールに対して仕切金利区分を割り当てることで、仕切金利プールの仕切金利計算方式が決定される。また、仕切金利種類や仕切金利プールをまたがって同一の金利水準である場合には、同一の仕切金利区分を割り当てることが可能である。これは、仕切金利種類の増加時や仕切金利プールの細分化時に、仕切金利種類、仕切金利プールを分離しておくことで再設定負荷の軽減を考慮したものである。
【0037】
[仕切金利種類、仕切金利プール、仕切金利属性の設定例]
次に、
図3A、
図3B、
図4を参照して、本発明の一実施形態にかかる金融機関経営支援システムにおける収益管理モジュールで使用される、仕切金利種類、仕切金利プール、仕切金利属性の設定例を説明する。
【0038】
図3Aに、仕切金利種類(仕切金利パターン)としてのTPの例を示す。(A)は、TP1(部門間仕切)のテーブル例であり、(B)は、TP2−A(一例として、営業店仕切30期)のテーブル例であり、(C)は、TP2−B(一例として、営業店仕切31期)のテーブル例である。各テーブルは、「仕切金利プール」と「仕切金利区分」とが組となって設定されており、仕切金利プールに対して仕切金利区分が割り当てられることにより、仕切金利プールが設定されている。
【0039】
そして、各テーブルにおいて組となっている「仕切金利プール」及び「仕切金利区分」は、期ごとに関連付けが可能となっており、仕切金利プールを構成する「商手」「手貸」「証貸1年」「定期預金1年」「証貸地公体」「証貸一般」といった各要素は、それぞれが「切り口」としての性格を有する。
【0040】
次に、
図3Bに、仕切金利属性の設定例を示す。(A)は、仕切金利区分ごとに金利の計算方式や金利属性等が設定されたテーブル例であり、(B)は、仕切金利区分ごとに仕切金利実績レートやシナリオレートが設定されたテーブル例である。ここで、
図3B(B)の「区分」1〜11は、同(A)の仕切金利区分1〜11(1:市場金利1M、2:市場金利3M、3:短プラ基準、4:短プラキャンペーン、5:店頭金利、6:店頭金利(大口)1、7:店頭金利(大口)3、8:定期個別仕切、9:証貸個別仕切5Y、10:証貸個別仕切10Y、11:証貸地公体)にそれぞれ対応する。
【0041】
ここで、
図3A〜
図3Bによれば、「仕切金利プール」ごとに「仕切金利区分」を割り当てることができ、さらに「仕切金利区分」項目がキーとなって様々な金利属性(金利計算方式を含む)を抽出することができることが理解できるであろう。
【0042】
次に、
図4に、明細情報と仕切金利プールとの紐付処理イメージを示す。(A)は、明細情報の項目と、従来の属性情報(人格や格付けなど)と、新たな属性情報(取引方針など)とをテーブル上紐付けるイメージを示し、(B)は、(A)の紐付イメージに基づき紐付条件が「仕切金利プール紐付条件」として設定された様子を示す。
【0043】
すなわち、
図4(A)においては、明細情報テーブル(同図においては、オブジェクトID、商品、金利タイプ、期間コードといった項目からなる)に、約定明細情報の他の属性データの項目(同図においては、人格、格付けといった項目からなる)に加え、他のホスト情報等から取り入れた任意のデータ項目(同図においては、取引方針から構成される)を紐付条件定義の要素としている。そして、設定された紐付条件として、
図4(B)に示されるように、商品として「証貸」、金利タイプとして「固定」、取引方針として「積極姿勢」を紐付条件とする「証貸・固定・積極」というキーを有する第1の仕切金利プールと、商品として「証貸」、金利タイプとして「変動」、期間コードとして012以下、格付けとして「B以上」を紐付条件とする「証貸・変動短・B以上」というキーを有する第2の仕切金利プールと、商品として「定期」、人格として「法人」を紐付条件とする「定期・法人」というキーを有する第3の仕切金利プールとが設定(定義)される。
【0044】
なお、本発明の一実施形態は、これらの設定(定義)に制限されるものではなく、複数項目のAND条件、OR条件、除外条件などを柔軟に定義可能である。
【0045】
[考察 − 勘定科目とは異なる複数の『切り口』項目]
すでに説明したように、従来の金融機関経営支援システムでは、2種類の仕切金利に固定されたものであり、さらに、「勘定科目」が、様々な分析のパラメータ設定単位(ボリュームの計算、約定利率の計算、TP1・TP2など仕切りの計算)となっていた。また、様々な目的のアウトプットの参照単位(リスク管理用、収益管理用、当局報告用、行内報告用)でもあったため、その組み合わせが膨大となった結果、パラメータ設定作業に大きな影響を与えることとなり作業負荷へとつながっていた。
【0046】
本発明の一実施形態に係る金融機関経営支援システムでは、「勘定科目」のみならず、「勘定科目」とは概念の異なる店舗、人格、格付といった複数の項目を「切り口」として定義することができ、それらの組み合わせの最小単位で収益シミュレーションを行うことが可能となったことが大きな特徴となっている。これにより、従来勘定科目を細分化する要素となっていた人格、格付といった項目を勘定科目からに分離することができ、勘定科目の簡素化が実現可能となる。さらに、切り口の最小単位でのシミュレーションにおけるパラメータの多くは、同一切り口の実績の傾向をシステムでデフォルト反映することができ、設定負荷が軽減されるという効果を奏する。
【0047】
[『切り口』設定の概念]
このように、「勘定科目」とは概念の異なる店舗、人格、格付といった複数の項目を「切り口」と定義し、さらに、処理基準日時点の既存取引の実績と成り行き部分を「ストック」、翌月以降の新規獲得分とその残存(計画と成り行きの差)を「フロー」と定義した場合には、フロー部分の「切り口」には、パラメータ設定として必要な切り口(勘定科目、仕切金利プール、店舗、人格、格付など)の他、アウトプットや分析の単位として必要な情報を指定することが可能となる。
【0048】
また、ストック部分の「切り口」には、個別明細単位の取引条件をもとにボリューム計算を行い、さらに、金利パラメータや仕切金利属性を個別明細単位に適用して収益(約定利率、仕切金利)計算を行い、個別明細単位にデータを保持することができる。また、属性データの取り込みなどを行って個別明細に紐付けて任意に属性データ(顧客属性データなど)を取り込むこともでき、汎用な切り口を生成及び保持することができる。さらに、これらの属性を組み合わせて個別明細単位のデータを自由にアウトプットすることも可能となる。(例えば、顧客別、業種別、人格別、年収別といった任意の単位で計数をアウトプットが可能となる)
【0049】
[明細情報・属性情報と「切り口」項目との関係]
次に、
図12Aを参照して、店舗間のデータ移管前後を通じた、明細情報・属性情報と「切り口」項目との関係を説明する。同図左側には、明細単位の属性情報として、「統一フォーマット情報」「管理店番情報」「移管情報」「顧客属性情報」「勘定科目マッピング」「仕切金利1マッピング」「仕切金利2マッピング」「仕切金利nマッピング」「収益管理対象明細」といったテーブルが表されている。
【0050】
そして、
図12A右側には、明細単位の属性情報から抽出された切り口テーブルが表されている。すなわち、「管理店舗コード」「店舗コード」「業種」「人格」…「勘定科目コード」「仕切金利1プールコード」「仕切金利2プールコード」「仕切金利nプールコード」「収益管理対象明細」といった項目からなる「移管調整前」切り口テーブルと、「管理店舗コード」に替えて「移管側管理店舗コード」を取り込んだ「移管調整後」切り口テーブルである。なお、切り口と仕切金利プールとの関連情報は、同図に示されるように、「切り口ID」をキーとして「仕切金利1プールコード」「仕切金利2プールコード」「仕切金利nプールコード」といった各項目が紐付けさ
れ、かつ、同図中に示されるように、「移管調整前切り口」の最後尾の「切り口ID」と「移管調整後切り口」の最後尾の「切り口ID」とも紐付される。
【0051】
[「切り口」項目と集計表出力との関係]
次に、
図12Bを参照して、抽出された「切り口」項目と集計表出力との関係を説明する。同図左側には、
図12A右側に示された「切り口」項目が表されている。
図12B左側の「移管調整前」切り口テーブルと「移管調整後」切り口テーブルとからは、必須ないし任意の項目が抽出されて、同図右側に集計表単位例が表されている。すなわち、「集計店舗パターンコード」「ブロックコード」「地区コード」「集計店舗コード」「管理店舗コード」といった項目からなる「集計店舗」出力テーブルと、「集計区分」「勘定科目」「人格」…といった項目からなる「集計区分」出力テーブルである。これらは帳票としてシステム内で管理することができる。
また、本発明はこれらに限られず、他の多くの帳票を管理・出力することができる。
【0052】
このように、本発明の一実施形態にかかる金融機関経営支援システムでは、金利等の予測計算において「切り口」という概念を導入することで、従来であれば、勘定科目をほぼ全て引用しなければ不可能であった予測計算を、「切り口」パラメータという、より少ないパラメータで木目細かな予測計算が可能となるという有利な効果を奏するものである。
【0053】
[仕切金利計算のパラメータ(仕切金利属性)]
下表に仕切金利計算のパラメータ例を示す。処理基準日時点の既存取引の実績と成り行き部分を「ストック」、翌月以降の新規獲得分とその残存(計画と成り行きの差)を「フロー」と定義した場合に、仕切金利の計算に際しては、フロー部分には仕切金利プールごとに割り当てている仕切金利区分の金利属性を適用することができ、ストック部分には仕切金利プールごとの設定の他、明細項目や明細仕切金利属性を適用することができる。
【0055】
[仕切金利計算に使用されるパラメータについて(仕切金利属性パラメータ)]
上表のパラメータとしても列挙した、仕切金利計算に使用されるパラメータについて以下に詳述する。仕切金利の計算は、フロー部分(先行き)に対しては仕切金利プールごとに割り当てている仕切金利区分の金利属性を適用することができ、ストック部分(実績)に対しては仕切金利プールごとの設定の他、明細項目や明細仕切金利属性の適用が可能であるが、仕切金利属性パラメータには、例示的に以下のものがある。
(1)仕切金利計算方式
(2)金利適用日
(3)基準金利種類
(4)基準金利期間
(5)期間補間方法
(6)弾性値
(7)所要月
(8)金利適用日指定
(9)適用レート
【0056】
(1)仕切金利計算方式
仕切金利計算方式は、一実施形態において、さらに次の3種類が用意される。
(A)個別金利設定方式
これは、各明細や仕切金利区分ごとに仕切金利をそのまま適用する方式である。個別に仕切金利の設定を行う必要のある商品に対して用いられる。
図5に仕切金利の設定概念を示す。
図5(A)は、貸出金における仕切金利の設定概念であり、同
図51において、仕切金利513が設定された仕切金利である。営業店スプレッド512は、口座明細の約定利率511から仕切金利513を差し引いたものとなる。
図5(B)は、預金における仕切金利の設定概念であり、同
図52において、仕切金利521が設定された仕切金利である。営業店スプレッド522は、仕切金利521から口座明細の約定利率523を差し引いたものとなる。
(B)定率スプレッド方式
これは、貸出金や預金における仕切金利算定に際し、定率スプレッド(営業店スプレッド)を加減する方式である。貸出金においては、口座明細の約定利率から本システムで登録した定率スプレッド幅を差し引いて仕切金利が算出される。また、預金においては、口座明細の約定利率に本システムで登録した定率スプレッド幅を加えることにより仕切金利が算出される。定率スプレッド方式は、流動性預金や制度融資など各営業店にて約定利率のコントロールが難しい商品に対し、一定のスプレッドを付与するという形で運用される。
図6(A)は、貸出金における仕切金利の算出概念であり、同
図61において、仕切金利613は、口座明細の約定利率611から定率スプレッド幅(営業店スプレッド)612を差し引いて算出される。
図6(B)は、預金における仕切金利の算出概念であり、同
図62において、仕切金利621は、口座明細の約定利率623に定率スプレッド幅(営業店スプレッド)を加えて算出される。
(C)基準金利連動方式
これは、本システムにて登録された基準金利に対し調整幅を加減して仕切金利を算出する方式である。貸出金においては、は本システムで登録した基準金利に必要に応じて調整幅を加算して仕切金利が算出される。また、預金においては、本システムで登録した基準金利に必要に応じて調整幅を減算して仕切金利が算出される。基準金利の動きに合わせて自動的に仕切レートが設定されるので、運用負荷が軽減されるという効果がある。市場金利やプライムレートに仕切金利を連動させる商品に対して用いられる。
図7(A)は、貸出金における仕切金利の算出概念であり、同
図71において、仕切金利713は、基準金利715に調整幅714を加えて算出される。
図7(B)は、預金における仕切金利の算出概念であり、同
図72において、仕切金利721は、基準金利724に調整幅722を加えて算出される。
【0057】
(2)金利適用日
本発明の一実施形態にかかるシステムでは、各仕切金利計算方式に基づいて設定した仕切金利を適用する日付を設定することができ、金利適用日はその適用日付となる。
【0058】
(3)基準金利種類
仕切金利計算方式にて、「基準金利連動方式」が選択された場合、どの基準金利に連動させるかを指定するための項目である。
【0059】
(4)基準金利期間
仕切金利計算方式にて、「基準金利連動方式」が選択され、連動する基準金利種類に期間構造がある場合、適用する基準金利の期間を指定するための項目である。例えば、金利更改周期については、ストックの場合、明細の「金利更改周期」項目にセットされている月数が使用され、フローの場合には、仕切金利属性の「基準金利期間」にセットされている月数が使用される。また、基準金利期間(仕切金利属性)については、ストック、フローともに、仕切金利属性の「基準金利期間」にセットされている月数が使用される。
【0060】
(5)期間補間方法
仕切金利計算方式にて「基準金利連動方式」が選択され、「基準金利期間」にて基準金利が決定される場合に、該当期間の基準金利が設定されていない場合には、種々の補間ないし近似を行うことができる。本発明の一実施形態においては、線形補間、近傍、切上げ、切捨てといった手法が採用される。個々の手法の詳細は以下のとおりである。
(A)線形補間
直前に登録されている期間の金利および直後に登録されている期間の金利から線形補聞をして求めた仕切金利が適用される。
(B)近傍金利適用
直前に登録されている期間と直後に登録されている期間を比較し、近い期間の仕切金利が適用される。
(C)切上げ(直後グリッド補間)金利適用
直後に登録されている期間の仕切金利が適用される。
(D)切捨て(直前グリッド補間)金利適用
直前に登録されている期間の仕切金利が適用される。
【0061】
例えば、
図8に示すような[期間−金利]曲線があった場合に、上記の各手法によれば次のような補間ないし近似が行われる。
(A)線形補間の場合
仕切金利=1.5%×(20-12)+1.O%×(24-20)/(24-12)=1.33%
(B)近傍金利適用の場合
仕切金利=1.5%(期間20ヶ月は2年ものに近いため2Yが適用される)
(C)切上げ金利適用の場合
仕切金利=l.5%(期間20ヶ月から直後となる期間の2Yが適用される)
(D)切捨て金利適用の場合
仕切金利=1.0%(期間20ヶ月から直前となる期間の12Mが適用される)
【0062】
(6)弾性値
仕切金利計算方式にて「基準金利連動方式」が選択された場合、基準金利の変動に対する適用レートの追随率を設定するための項目である。
【0063】
(7)所要月
仕切金利計算方式にて「基準金利連動方式」が選択された場合、基準金利の変動に対し適用レートが変動するまでのタイムラグを設定するための項目である。期間月数で設定される。
【0064】
(8)金利適用日指定
ストック分に対して指定される仕切金利の適用日である。一実施形態として、「取引開始日」「前回金利更改日」「基準日」がある。「取引開始日」が指定された場合には、明細の取引開始日から直前の金利適用日に設定されている仕切金利が適用される。固定金利商品のように、当初確定した仕切金利を維持させ続ける際に使用されるものである。また、「前回金利更改日」が指定された場合には、明細の前回金利更改日から直前の金利適用日に設定されている仕切金利が適用される。変動金利商品のように、約定金利、基準金利が変動する商品に使用されるものである。また、「基準日」が指定された場合には、基準日から直前の金利適用日に設定されている仕切金利が適用される。流動性預金のように期間の概念のない商品に対し、常に直前の金利適用日に設定されている仕切金利を適用する場合に使用される。
【0065】
なお、
図9に、本発明の一実施形態にかかる金融機関経営支援システムにおける収益管理モジュールで採用される個別スプレッド法を総額法と対比して説明する。同図(A)に示される総額法では、本支店レート変更前の本支店レート(0.8%)、及び本支店レート変更後の本支店レート(1.3%)はそれぞれ一律に適用されるものであるのに対し、同図(B)に示される個別スプレッド法では、約定金利(1.5%)に対する仕切金利(0.8%)、約定金利(1.8%)に対する仕切金利(1.0%)、約定金利(2.0%)に対する仕切金利(1.0%)、約定金利(2.5%)に対する仕切金利(1.3%)はそれぞれ1本ごとに含まれるように運用される。
【0066】
(9)適用レート
明細仕切金利属性データを用いて適用する仕切金利(例えば、基準金利連動の場合の調整幅、個別仕切レート、定率スプレッド)を指定するための項目である。
【0067】
[店舗別収益管理]
本発明の一実施形態にかかる金融機関経営支援システムは、営業店別(店舗別)に収益管理をすることができる。つまり、本システムにおける収益管理モジュールは、営業店ごとに予算策定を行うことができ、また予算実績も営業店ごとに管理することができる。営業店(部門)の収益目標(予算)を策定するためには、営業店仕切レートを用いた収益計算が実施される。
また、営業店別の収益管理においては、導入先の会社ないしグループ組織での収益管理モジュールによる予算策定ならびに予算実績管理の業務フローが前提となるが、一実施形態として、
図10に示すような業務フローを採用することができる。
【0068】
すなわち、
図10に示されるように、予算策定フェーズでは、総合企画部門において経営計画が策定起案され(ステップS1001)、経営管理部門にて全体(全行ないし全社)の予算策定が検討される(ステップS1002)。策定された内容はデータ化されてALMシステムに入力され管理される(ステップS1003)。
【0069】
営業統括部門では、部門長レベルでALMシステムから必要な情報を参照して部/課レベルの部門への指示を出す(ステップS1004)。部/課レベルの部門では店舗別に配賦された目標額が通知され(ステップS1005)、各本部・各営業店レベルで予算策定、年度予算・月次予算の入力、調整が行われる(ステップS1006、ステップS1007)。各本部・各営業店レベルの部門での調整後、部/課レベルの部門にて再度調整が行われて予算が確定される(ステップS1008)。そして、経営管理部門において確定された予算値が収益管理モジュールに入力され(ステップS1009)、入力されたデータは収益管理モジュールにて管理される(ステップS1010)。
【0070】
また、予算実績管理フェーズでは、収益管理モジュールから配信サーバを介して営業成績等がフィードバックされる(ステップS1011〜ステップS1013、ステップS1015)。そして、営業統括部門の部/課レベルの部門や営業店の支店長・所長レベルでの予算・実績の分析が行われる(ステップS1014、ステップS1016)。
【0071】
[管理店舗(切り口)の設定例]
店別(部門別)に収益管理を行うにあたっては、分析の単位(広域ブロック、地区、支店等)を決定する必要があるが、本発明の一実施形態にかかる収益管理モジュールでは、例示的に、以下のパラメータに基づいて管理する店舗(部署)をシステム/モジュールに反映させることとしている。この設定を行うことで複数の集計単位で帳票を出力することが可能となる。
(1)集計店舗パターンコード:集計する店舗(分析軸)のパターンを登録する
(2)店舗階層1〜3:集計店舗パターンに紐付く店舗階層を最大3階層設定可能に構成する
(3)管理店舗コード:管理する店舗(分析軸)の最小単位を登録する
【0072】
以上のような階層的なパラメータ構成例を
図11に示す。同図に示されるように、店舗階層の最上位には関東ブロック1100がカテゴライズされ、その下位のカテゴリに東京地区1110、神奈川地区1120といった中位のパラメータが構成され、それぞれの地区の下位に管理店舗ごとの支店パラメータが構成される(1111〜1113、及び1121〜1123)。
かかる階層的構成によって、店別(部門別)に効率よく収益管理を行うことができる。
【0073】
[出力帳票]
営業店別(店舗別)に管理された情報は、例えば、「実績管理帳票」として例えば下表のように出力することができる。
【0075】
以上、具体例に基づき、本発明にかかるシステム及びプログラムを説明したが、本発明における処理の実施形態としては、方法又はプログラムの他、プログラムが記録された記憶媒体(一例として、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、磁気テープ、ハードディスク、メモリカード)等としての実施態様をとることも可能である。
【0076】
特に、プログラムの実装形態としては、コンパイラによってコンパイルされるオブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラムコード等のアプリケーションプログラムに限定されることはなく、オペレーティングシステムに組み込まれるプログラムモジュール等の形態であっても良い。
【0077】
さらに、プログラムは、必ずしも制御基板上のCPUにおいてのみ、全ての処理が実施される必要はなく、必要に応じて基板に付加された拡張ボードや拡張ユニットに実装された別の処理ユニット(DSP等)によってその一部又は全部が実施される構成とすることもできる。
【0078】
本明細書(特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に記載された構成要件の全て及び/又は開示された全ての方法又は処理の全てのステップについては、これらの特徴が相互に排他的である組合せを除き、任意の組合せで組み合わせることができる。
【0079】
また、本明細書(特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に記載された特徴の各々は、明示的に否定されない限り、同一の目的、同等の目的、または類似する目的のために働く代替の特徴に置換することができる。したがって、明示的に否定されない限り、開示された特徴の各々は、包括的な一連の同一又は均等となる特徴の一例にすぎない。
【0080】
さらに、本発明は、上述した実施形態のいずれの具体的構成にも制限されるものではない。本発明は、本明細書(特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に記載された全ての新規な特徴又はそれらの組合せ、あるいは記載された全ての新規な方法又は処理のステップ、又はそれらの組合せに拡張することができる。