【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、燃料を内燃機関の燃焼室に噴射するための噴射ノズルが提供され、噴射ノズルは、燃料を加圧された燃料のための供給ラインから受け取るためのボアを有するノズル本体と、使用の際に燃焼室に燃料を送達するためのボアからの出口と、ニードル軸を定義し、出口を通って燃焼室に入る燃料の流れが阻止される閉鎖状態と、出口を通って燃焼室に入る燃料の流れが可能になる噴射状態との間でボアの内部で摺動可能な弁ニードルを備える。ニードルの動きは、使用の際に制御チャンバの内部の燃料圧力を変化させることによって制御可能である。ニードルは、ボアの内部でのニードルの摺動を案内するようになされたニードルガイド部を備える。
【0013】
噴射ノズルは、ボアを通る燃料の流れを制限するためのボアの内部の制限部、および上流側部分および下流側部分を有する制限要素をさらに備える。制限要素は、ニードルと共に可動であり、ニードルガイド部の上流側に配置される。制限部は、ボアと制限要素の周縁部との間に画成され、ニードルが使用の際に噴射状態になると、出口の燃料圧力が制限要素の下流側の直近のボア内の燃料圧力と実質的に同じになり、供給ラインからボアに供給される燃料圧力よりも低くなる。
【0014】
本発明のこの第1の態様では、制限要素の下流側部分の少なくとも一部分は、制限要素の周縁部に延出する傾斜面を備える。傾斜面はニードル軸に対して非垂直である。
【0015】
制限要素は、燃料の流れを制限し圧力低下をもたらし、それによって、ニードルが噴射状態になり燃料がボアを通って流れると、制限要素の下流側の燃料圧力は制限要素の上流側の燃料圧力よりも低くなる。このようにして、弁ニードルの制御は制限部の寸法を最適化することによって改善され得る。
【0016】
ニードルと共に可動であり、ニードルのガイド部から分離し、または離間して配置される制限要素を設けることにより、ニードルの開放中および閉鎖中にニードルの動的な特性を改善することが助長される。さらに、ニードルガイド部の上流側に制限要素を設けることにより、ニードルガイドを可能な限り噴射器の先端に近接して配置することが可能になり、それによって使用の際にニードルの機械的な安定性が増す。
【0017】
出口での燃料圧力は、制限要素の下流側の直近の燃料圧力と実質的に同じであるので、ニードルのガイド部の両側間での感知できるほどの圧力低下は全くないことを理解されたい。前記の別の方法では、ニードルのガイド部の両側間で生じるどのような圧力低下も、制限要素の両側間での圧力低下と比べて極めて小さい。
【0018】
周縁部の下流側にある制限要素の下流側部分の傾斜面は、燃料が制限部を通って流れると制限要素の下流側での燃料の乱流を最大にする働きをする。有利なことに、この配置は制限部を通る流れ特性の、燃料の粘度に対する感度を低下させ、それによって噴射器の性能によって変化する温度の影響が最小限に抑えられる。
【0019】
制限要素の下流側部分はニードル軸に対して垂直な下流側の面を備えることができ、傾斜面は下流側の面の周囲部に面取りとして形成され得る。傾斜面は円錐台であってもよい。
【0020】
一実施形態では、傾斜面はニードル軸に対して約15°と45°の間の角度で位置する。好ましくは、傾斜面はニードル軸に対して約30°の角度で位置する。
【0021】
制限要素の上流側部分は、制限要素の周縁部に延出する上流側縁部の面を備えることができる。一実施形態では、たとえば、制限要素の上流側部分は中央面を備え、上流側縁部の面は中央面の周りに環状に配置される。上流側縁部の面は、中央面からの窪みを設けられ、上流側縁部の面と中央面の間に段差を定めることができる。
【0022】
好ましくは、上流側縁部の面は、ニードル軸に垂直である。制限要素の周縁部は、上流側縁部の面と傾斜面が交わる場所に画定され得る。このようにして、周縁部は、上流側縁部の面と傾斜面の間の交差部において先鋭な縁部の形をとることができ、それによって制限部は粘度に対する感度が極めて小さい理論的な先鋭な縁部のオリフィスの流体の流れ特性に近い流れ特性を有するようになる。
【0023】
別の実施形態では、制限要素の上流側の少なくとも一部分は、周縁部に延出する傾斜面を備え、傾斜面はニードル軸に非垂直である。
【0024】
本発明のこの第1の態様によるどの構成においても、ボアの内部の流れ方向での制限部の長さ、したがってニードル軸の方向での周縁部の長さは、可能な限り短いことが望ましい。この構成により、流れの粘度に対する感度が最小限に抑えられ、弁ニードルの移動質量(moving mass)が低減する。たとえば、周縁部はニードル軸に平行な方向に約0.2mm以下の長さを有することができる。好ましくは、周縁部はニードル軸に平行な方向に約0.1mm以下の長さを有する。周縁部は、ニードル軸に平行に延在する全体的に円筒形の表面を備えることができる。全体的に円筒形の表面の代わりに、周縁部は湾曲形状、またはたる形状の表面を備えることができ、またはナイフエッジ形状を形成され得る。
【0025】
カラーとシャフトの間の接合領域または接合部の長さは、アセンブリの機械的な長さを最大にするために、周縁部の長さと比べてニードル軸方向で比較的長くすることができる。
【0026】
噴射ノズルは、制限部の上流側に、供給ラインから燃料を受け取るようになされた第1のボア容積部、および制限部の下流側に、制限部を通る第1のボア容積部から燃料を受け取るようになされた第2のボア容積部を備え得る。ニードルのニードルガイド部は、好ましくは第2のボア容積部の内部に配置される。
【0027】
制限要素は、使用の際に第1のボア容積部内の燃料圧力を受ける上流向きスラスト面を備えることができる。有利なことに、この構成では、弁ニードルが噴射状態になると、制限要素の上流向きスラスト面が閉鎖方向に作用する弁ニードルに追加の力成分を加える。
【0028】
このようにして、ニードルが制御チャンバ内の圧力の変化によって噴射状態から閉鎖状態に移動されると、制限要素の上流向きスラスト面に作用する圧力は、ニードルの閉鎖する動きを補助するように働き、ニードルの閉鎖速度がより速くなる。対照的に、ニードルが制御チャンバ内の圧力の変化によって閉鎖状態から噴射状態に移動されると、制限要素の上流向きスラスト面に作用する圧力は、開放中にニードルへの正味の開放力を低減するように働き、ニードルの開放する動きを減衰させ、したがってニードルの開放速度がより減速する。ニードルの閉鎖速度がより速く、ニードルの開放速度がより減速することの両方が、噴射制御を改善するために有利である。
【0029】
一実施形態では、ニードルは使用の際に制限部の下流側の燃料圧力を受ける少なくとも1つの下流向きスラスト面を備える。好ましくは、下流向きスラスト面は、使用の際に第2のボア容積部内の燃料圧力を受ける。第2のボア容積部内の燃料圧力は、ニードルの開放方向に作用する、弁ニードルへの力成分を加えるように作用する。第2のボア容積部内の燃料圧力は制限部によって制御されるので、下流向きスラスト面から生じる力は制限部の大きさを選択することによって噴射器の動作を最適化するように選択され得る。
【0030】
制限要素は、任意の適切な形をとることができ、ニードルと一体に形成され、または製造中にニードルに後で取り付けられる別個の構成要素として形成され得る。
【0031】
たとえば、ニードルはシャフト部分を含むことができ、制限要素はシャフト部の周りに環状に配置されたカラーを備えることができる。カラーはシャフト部分と一体に形成され得、またはその代わりにカラーはプレス嵌めまたはその他の方法でシャフト部分に取り付けられた別個の構成要素であることができる。制限要素がニードルとは別個の構成要素である場合、研磨によりニードルを構築する際の材料の消費が節約できる。
【0032】
ニードルの軸に沿ったカラーの厚さまたは長さは、実質的にカラーの直径よりも小さくすることができる。このようにして、ニードルの移動質量が低減され得る。ニードルはシャフト部分よりも小さな直径を有するステム部分を含み、ここでも同様にニードルの移動質量を低減することができる。ステム部分はシャフト部分の上流側にあることができる。
【0033】
好ましくは、カラーは、ニードルのニードルガイド部よりも大きな直径を有する。噴射ノズルは、ニードルと関連付けられ、制御チャンバの内部の燃料圧力を受ける制御面を有する制御ピストンをさらに備えることができる。この場合、カラーはピストンよりも大きな直径を有することができる。カラーがニードルガイド部および/または制御ピストンよりも大きな直径を有する場合、カラーはニードルの開放する動きを減衰することにも、ニードルの閉鎖する動きを補助することにも特に効果的である。
【0034】
ボアは、比較的大きな直径の領域および比較的小さな直径の領域を含むことができる。比較的小さな直径の領域は、比較的大きな直径の領域の下流側に設けられ得る。
【0035】
制限要素は、ボアの比較的大きな直径の領域の内部に配置され得る。ボアの大きな直径の領域内に制限要素を設けることにより、ニードルの動きの方向に垂直な、大きな断面積を有する制限要素を設けることができる。特に、制限要素が上流向きスラスト面を備える場合、制限要素の上流側のボア内の燃料圧力を受けるスラスト面の断面積をこの構成では比較的大きくすることができる。大きな断面積を有することにより、ニードルの開放および閉鎖の特性が改善される。さらに、大きな断面積を有する制限要素を設けることにより、同じニードルの閉鎖力をもたらすための制限要素の両側間での圧力低下をより小さくすることができ、それによって利用可能な噴射圧力を上昇させ、製作公差の影響を低減させる。
【0036】
制限要素は、好ましくは比較的大きな直径の領域の下流側端部に配置される。たとえば、制限要素は、比較的大きな直径の領域の下流側の3分の1に配置され、より好ましくは比較的大きな直径の領域の下流側の4分の1に配置され得る。
【0037】
別の構成では、ボアは、制限要素の上流側の比較的大きな直径の領域、弁ニードルのニードルガイド部が配置された比較的小さな直径の領域、および制限要素が配置された中間の直径の領域を含む。
【0038】
比較的大きな直径の領域の下流側端部に、または比較的大きな直径の領域の下流側の中間の直径の領域に制限要素を配置することによって、制限要素の上のボアの容積が最大になり、その下側の容積が最小になる。これにより、制限部の上流側のボアの大きな直径の領域での高圧燃料に利用可能なアキュムレータ容積を最大にすることが助長される。
【0039】
ニードルガイド部が、比較的小さな直径の領域に設けられ得る。出口が、ボアの比較的小さな直径の領域に設けられ得る。したがって、ニードルガイド部はノズル先端の出口に近接して配置され得る。ニードルガイド部をノズル先端の付近に設けることにより、ニードル用の支持が得られ、ノズルの先端の付近のニードルの動きの阻止が助長される。
【0040】
制限要素がカラーまたは同様の全体的に円筒形の構成要素である場合、制限要素の直径はボアの比較的小さな直径の領域の直径の約2倍であることができる。これにより、ニードルの閉鎖中に、ニードルが噴射ノズルのボアを通る燃料の流速とほぼ等しい速度で移動する状態が得られる。したがって、素早いニードルの閉鎖が実現される。
【0041】
制限要素は、複数の環状の突起を設けられ得る。この場合、制限部は少なくとも部分的に一連の副制限部を備えることができ、各副制限部は、突起のうちのそれぞれの突起の外周部とボアの間に画成される。したがって、この場合には、各突起は、制限要素の両側間での燃料圧力の低下を生じ、制限要素の両側間での全圧力低下は、各突起の両側間での圧力低下の累計である。一連の副制限部を設けることにより、各副制限部が比較的小さな圧力低下を発生させ、制限部を画成するために必要な精度および許容公差が、圧力低下が単一の制限部を介して実現される構成と比べて低減される。環状の突起のうちの1つまたは複数の下流側部分は、ニードル軸に対して傾いた傾斜面を備えることができる。
【0042】
噴射ノズルを使用する際に、ボアの内部の燃料に圧力波が生じる可能性がある。そのような圧力波は、ボアの形状に依存する特徴的な波長(characteristic wavelength)を有する。そのような波は、ニードルの開放および閉鎖の動きと噴射された燃料の圧力を乱すことがあるので望ましくなく、噴射された燃料の量の不確定さを生じる。有利なことに、制限要素は、ニードルに配置され得、それによって使用の際に1つまたは複数のそのような圧力波の波腹またはその波腹に近接して配置され、それによって波を減衰させ、波の望ましくない影響を低減する。たとえば、制限要素は、ボア内の特徴的な定常波の波腹に配置され得る。
【0043】
制限部は、制限要素をボアの大きさに対して適切な大きさに研削することによって製造され得る。この構成により、簡素化された製造工程が可能になる。
【0044】
噴射ノズルは、閉鎖位置に向かってニードルを押すためのばねをさらに備えることができる。ばねは、制限要素の上面に係合するようになされ得る。あるいは、ニードルは制限要素から間隔を置いて配置され、制限要素の上流側に配置されたばね座を備えることができる。噴射ノズルを低圧で動作可能にするために、比較的低荷重のばねが必要とされ、制限要素の上流側に別個のばね座を設けることにより、比較的短い低荷重のばねを使用して座屈の危険を最小限に抑えることができる。さらに、この構成では、ばねに占有された制限要素の上流側のボアの容積は比較的小さく、燃料に利用可能な容積が最大になる。
【0045】
スペーサ要素がボアの内部に配置され得る。スペーサ要素はニードルの上流側端部を受けるためのボアを備えることができ、ばねの上流側端部はスペーサ要素の下流側の面に支えられている。
【0046】
噴射ノズルは、ニードルに沿って離間して配置された複数の制限要素を備えることができる。複数の制限要素を設けることにより、ボアの内部の燃料の中での振動をさらに減衰させることを補助する。さらに、複数の制限要素が設けられた場合、各制限要素の両側間での必要な圧力低下が低減され、それによって必要になる全圧力低下が複数の制限要素の間で分散され得る。この構成の1つの利点は、全流れ狭窄への製作公差の影響が低減される。
【0047】
制限要素は閉鎖位置から開放位置への弁ニードルの動きに耐えるようになされた上面を提供することができる。この耐性は、供給ラインから出口までの燃料の流れに対して動く弁ニードル、したがって制限要素によるものである。制限要素の上面は、弁ニードルが供給ラインから出口への燃料の流れと共に動くときの開放位置から閉鎖位置への弁ニードルの動きも補助することができる。したがって、制限要素の上面の表面領域は、ニードルの動きの特性を補助する。特に、上方の表面領域は、燃料の流れに対する、ニードルの動きと反対方向の抵抗をもたらすことによって、ニードルの開放を減速させる。さらに、燃料の流れは、制限要素の上面に下方への力を働かせるので、制限要素の上面の表面領域は、素早いニードルの閉鎖をもたらすことを助長する。
【0048】
開放および閉鎖の動きの間のニードルの速度および加速度は、ニードルに作用する液圧力、任意の付勢ばねの強度、およびニードルの質量を含むいくつかの要因によって決定される。本発明の実施形態では、制限要素はニードルの動きに抗力成分を導入することによってニードルの動きの動態に影響を与えることもできる。
【0049】
一般的に言えば、制限要素は好ましくは、弁ニードルが使用の際に噴射状態になると、特に制限要素の付近のボアの燃料の流速は、噴射状態から閉鎖状態への弁ニードルの動きの間に弁ニードルが移動する速度とほぼ等しくなるように寸法を決められている。ニードルはボア内の燃料とほぼ同じ速度で移動するので、制限要素の存在によるニードルへの抗力は、したがって閉鎖するニードルの動きの間に最小限に抑えられる。
【0050】
制限要素はニードルの動きの方向に垂直な断面積を有することができ、それは出口の全断面積のほぼ200から800倍大きい。ボアを通る燃料の流速は、出口の面積にしたがって決定される。制限要素が上流向きスラスト面を含む場合、ニードルの閉鎖速度は、上流向きスラスト面の断面積、およびボアの内部の燃料の速度によって影響を受ける。したがって、ニードルの閉鎖の速度は、出口の面積に対する制限要素の断面積の比率によって影響を受ける。特に、本発明の実施形態でニードルの閉鎖の速度に影響を与えるのは、ニードルの動きの方向に垂直な制限要素の上面の断面積である。上記に示した出口面積に対する制限要素面積の比率は、ニードルの閉鎖速度を最適化するために与えられている。
【0051】
好ましくは、制限要素は、出口の断面積よりも約500倍大きい、ニードルの動きの方向に垂直な断面積を有する。出口面積に対する制限要素の面積のそのような比率により、ニードルの閉鎖速度が燃料の流速とほぼ等しくなることが可能になる。
【0052】
本発明の第2の態様によれば、燃料を内燃機関の燃焼室に噴射するための噴射ノズルが設けられる。噴射ノズルは、加圧された燃料のための供給ラインから燃料を受け取るためのボアを有するノズル本体を備える。使用の際に燃焼室に燃料を送達するために、ボアからの出口が設けられる。さらに、弁ニードルが設けられ、出口を通って燃焼室に流入する燃料の流れが阻止される閉鎖状態と、出口を通って燃焼室に入る燃料の流れが可能になる噴射状態との間でボアの内部で摺動可能である。ニードルの動きは、使用の際に制御チャンバの内部の燃料圧力を変えることによって制御可能である。
【0053】
ニードルは、ボアの内部でのニードルの動きを案内するようになされたニードルガイド部を備える。噴射ノズルは、ボアを通る燃料の流れを制限するためのボアの内部の制限部をさらに備える。制限部は、ニードルと共に可動でありニードルガイド部の上流側に配置された制限要素によって画成される。出口の燃料圧力は、制限要素の下流側の直近のボア内の燃料圧力と実質的に同じであり、供給ラインからボアに供給された燃料圧力よりも低い。
【0054】
制限部は、少なくとも部分的に制限要素とボアの間に画成され得る。制限部は、全体的に環状の形態であることができる。たとえば、制限要素は、少なくとも部分的には制限要素の外周部、または外円周表面とボアの間に画成され得る。
【0055】
制限要素には、その外表面に少なくとも1つの平坦な領域が設けられ得る。制限部は、少なくとも部分的には、平坦な領域とボアの間に画成され得る。都合のよいことに、この実施形態では、制限部は、ニードルの制限要素の上に平坦な表面を研磨することによって製造中に画成され得る。同様にして、制限部は、少なくとも部分的には1つまたは複数のチャネル、溝、スロット、または同様の特徴によって制限要素に画成され得る。
【0056】
ボアには少なくとも1つの窪みを設けることができ、その場合、制限部は少なくとも部分的には、制限要素の外表面と、上記のまたは各窪みによって画成され得る。
【0057】
制限要素は、1つまたは複数のオリフィスを設けられて、少なくとも部分的に制限部を画成することができる。上述のまたは各オリフィスは制限要素を通る穴をドリル加工することによって設けられ得る。そのような方法を使用して、そのようなドリル加工は正確な寸法で形成され得るので、制限要素は比較的製造が容易である。
【0058】
本発明のこの態様のいくつかの実施形態では、制限要素はボアの壁と接触しておらず、したがって制限要素はニードルの動きに対する案内機能を行わない。その他の実施形態では、制限要素はボアと摺動式に接触し、したがってニードルの直線的な動きを案内するのを助長する。
【0059】
本発明の第3の態様によれば、燃料を内燃機関の燃焼室に噴射するための噴射ノズルが提供される。噴射ノズルは、加圧された燃料のための供給ラインから燃料を受け取るためのボアを有するノズル本体を備える。使用の際に燃焼室に燃料を送達するために、ボアからの出口が設けられる。さらに、弁ニードルが設けられ、出口を通って燃焼室に流入する燃料の流れが阻止される閉鎖状態と、出口を通って燃焼室に入る燃料の流れが可能になる噴射状態との間でボアの内部で摺動可能である。ニードルの動きは、使用の際に制御チャンバの内部の燃料圧力を変化させることによって制御可能である。
【0060】
本発明のこの第3の態様では、噴射ノズルは、ボアを通る燃料の流れを制限するためのボア内の制限部、およびニードルと可動である制限要素をさらに備える。制限部は、制限要素とボアの間に画成される。制限要素は、使用の際に制限部の上流側の燃料圧力を受ける、上流向きスラスト面を備える。出口の燃料圧力は、制限要素の下流側の直近のボア内の燃料圧力と実質的に同じであり、供給ラインからボアに供給される燃料圧力よりも低い。
【0061】
本発明の別の態様では、燃料を内燃機関の燃焼室に噴射するための噴射ノズルが提供され、噴射ノズルは、燃料を加圧された燃料のための供給ラインから受け取るためのボアを有するノズル本体と、使用の際に燃焼室に燃料を送達するためのボアからの出口と、ニードル軸を定義し、出口を通って燃焼室に入る燃料の流れが阻止される閉鎖状態と、出口を通って燃焼室に入る燃料の流れが可能になる噴射状態との間でボアの内部で摺動可能な弁ニードルを備える。ニードルの動きは、使用の際に制御チャンバの内部の燃料圧力を変化させることによって制御可能である。噴射ノズルは、ボアを通る燃料の流れを制限するためのボアの内部の制限部、および上流側部分および下流側部分を有する制限要素をさらに備える。制限要素は、ニードルと共に可動である。制限部は、ボアと制限要素の周縁部との間に画成される。制限要素の下流側部分の少なくとも一部分は、制限要素の周縁部に延出する傾斜面を備える。
【0062】
本発明の別の態様によれば、燃料を内燃機関の燃焼室に噴射するための噴射ノズルが提供される。噴射ノズルは、燃料を加圧された燃料のための供給ラインから受け取るためのボアを有するノズル本体を備える。使用の際に燃焼室に燃料を送達するために、ボアからの出口が設けられる。さらに、弁ニードルが設けられ、出口を通って燃焼室に流入する燃料の流れが阻止される閉鎖状態と、出口を通って燃焼室に入る燃料の流れが可能になる噴射状態との間でボアの内部で摺動可能である。
【0063】
ニードルの動きは、使用の際に制御チャンバの内部の燃料圧力を変えることによって制御可能である。ニードルは、ボアの内部でのニードルの動きを案内するようになされたニードルガイド部を備える。噴射ノズルは、ボアを通る燃料の流れを制限するためのボアの内部の制限部をさらに備える。制限部は、ニードルと共に可動でありニードルガイド部の上流側に配置された1つまたは複数の制限要素によって画成される。制限部は一連の副制限部を備える。1つの構成では、2つ以上の制限要素が弁ニードルに沿って離間して配置され、各副制限部は制限要素のうちのそれぞれの突起によって画成される。別の構成では、上記のまたは各制限要素は、複数の環状の突起を設けられ、各副制限部は環状の突起のうちのそれぞれの突起によって画成される。別の構成では、2つ以上の制限要素が弁ニードルに沿って離間して配置され、各制限要素は複数の環状の突起を含む。
【0064】
本発明の実施形態は、高圧燃料供給路とノズルの噴射端部との間の制限部の両側間での圧力低下を従来技術と比べて低減させ、その一方で素早いニードルの閉鎖ももたらす。これは、燃料が加圧される必要がある圧力を低下させ、したがってそのような燃料噴射システムのエネルギー消費を低下させる。本発明では、ニードルに関連付けられた制限要素と、スラスト面の上流側にある噴射器のボアの比較的大きな直径の領域との間に制限部を設けることによりこれが実現され得る。この構成により、制限要素が比較的大きな断面積を有することが可能になり、それによって制限要素の両側間での圧力低下が比較的小さくなる。
【0065】
本発明の実施形態は、知られている噴射器と比べて噴射器の製造上の複雑さを低減する。特に、制限部は噴射ノズルのボアの比較的大きな直径の領域の中に画成され得るので、制限要素は、ニードルの直径と比べて比較的大きな直径を有することができ、より大きな流れ面積を有する制限部が設けられ得る。したがって、前述のタイプの知られている噴射器と比べて、そのような噴射器を製造することがより簡単かつ安価になる。
【0066】
本発明の実施形態は、制限要素の断面積が大きいことにより、ニードルがボアを通って流れる燃料の速度で閉鎖するのを助長するため、ニードルの閉鎖が改善される。
【0067】
本発明の実施形態は、ニードルの開放を減衰する。ニードルに関連付けられた制限要素の上流向きスラスト面は、ニードルが開放中に移動しようとする方向と反対方向に流れる燃料の流れに対する抵抗をもたらす。したがって、この抵抗はニードルの開放を減速させ、それが望ましいことである。
【0068】
本発明の実施形態は、噴射ノズルのボアの内部の燃料の振動の低下を助長する。特に、ボアの内部の制限要素は、前記ボアの内部の燃料の振動を減衰させる。したがって、燃料の振動の減衰は、ニードルに伝達されている燃料の振動により振動がニードルに対して有する影響を低減する。本発明の別の実施形態では、複数の制限要素があることにより、さらに振動を低減するのが助長される。
【0069】
本発明の各態様の好ましい、および/または任意の特徴が、単独で、または適切な組合せで本発明のその他の態様にも含まれ得ることを理解されたい。
【0070】
ここで本発明の実施形態が、同様の参照番号が同様の部品を指す、添付の図面を参照して例としてのみ述べられる。