特許第5894672号(P5894672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5894672
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】噴射ノズル
(51)【国際特許分類】
   F02M 61/10 20060101AFI20160317BHJP
   F02M 47/00 20060101ALI20160317BHJP
   F02M 61/16 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
   F02M61/10 G
   F02M61/10 Q
   F02M47/00 A
   F02M61/16 G
【請求項の数】26
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-528948(P2014-528948)
(86)(22)【出願日】2012年9月4日
(65)【公表番号】特表2014-526632(P2014-526632A)
(43)【公表日】2014年10月6日
(86)【国際出願番号】EP2012067209
(87)【国際公開番号】WO2013034543
(87)【国際公開日】20130314
【審査請求日】2014年4月25日
(31)【優先権主張番号】11180619.6
(32)【優先日】2011年9月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514160386
【氏名又は名称】デルファイ・インターナショナル・オペレーションズ・ルクセンブルク・エス・アー・エール・エル
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】クック,マイケル
【審査官】 赤間 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−174823(JP,A)
【文献】 特許第4608555(JP,B2)
【文献】 特表2010−533263(JP,A)
【文献】 特許第4714268(JP,B2)
【文献】 特開2010−236368(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/081574(WO,A1)
【文献】 特表2004−515706(JP,A)
【文献】 特表2002−532652(JP,A)
【文献】 特許第4297879(JP,B2)
【文献】 国際公開第2007/139620(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/042296(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00〜71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃焼室に燃料を噴射するための噴射ノズルであって、
加圧された燃料のための供給ライン(12)から燃料を受けるためのボア(17;57)を有するノズル本体(13;53)と、
使用の際に前記燃焼室に燃料を送達するための前記ボア(17;57)からの出口(16、56)と、
ニードル軸を定義し、前記出口(16、56)を通って前記燃焼室に入る燃料の流れが阻止される閉鎖状態と、前記出口(16、56)を通って前記燃焼室に入る燃料の流れが可能になる噴射状態との間で前記ボア(17、57)の内部で摺動可能な弁ニードル(15;55)であって、前記弁ニードル(15;55)の動きが、使用の際に制御チャンバの内部の前記燃料圧力を変化させることによって制御可能である弁ニードル(15;55)とを備え、
前記ニードル(15;55)が、前記ボア(17、57)の内部での前記ニードル(15、55)の摺動を案内するようになされたニードルガイド部(22;62)を備え、
前記噴射ノズルが、前記ボア(17、57)を通る燃料の流れを制限するための前記ボア(17、57)の内部の制限部(21a、61a)、および上流側部分(21b;61b)および下流側部分(21c;61c)を有する制限要素(21、61)をさらに備え、前記制限要素が、前記ニードル(15、55)と共に可動であり、前記ニードルガイド部(22、62)の上流側に配置され、
前記制限部(21a、61a)が、前記ボア(17)と前記制限要素の周縁部(21f、61f)との間に画成され、前記ニードル(15、55)が使用の際に噴射状態になると、前記出口(16、56)の燃料圧力が前記制限要素(21、61)の下流側の直近の前記ボア(17、57)内の燃料圧力と同じになり、前記供給ライン(12)から前記ボア(17、57)に供給される燃料圧力よりも低くなる噴射ノズルにおいて、
前記制限要素(21、61)の前記下流側部分(21c、61c)の少なくとも一部分が、前記周縁部(21f、61f)まで延出する傾斜面(21d、61d)を備え、前記傾斜面(21d、61d)が前記ニードル軸に対して非垂直であり、
前記弁ニードル(15;55)がシャフト部分(15d;55d)を含み、前記制限要素が前記シャフト部分(15d;55d)の周りに環状に配置されたカラー(21;61)であり、
前記カラー(21;61)が、前記弁ニードル(15;55)の前記ニードルガイド部(22;62)よりも大きな直径を有することを特徴とする、噴射ノズル。
【請求項2】
前記制限要素(21;61)の前記下流側部分(21c;61c)が、前記ニードル軸に対して垂直な下流側の面(21e;61e)を備え、前記傾斜面(21d;61d)が前記下流側の面(21e;61e)の周囲部に面取りとして形成される、請求項1に記載の噴射ノズル。
【請求項3】
前記傾斜面(21d;61d)が円錐台形である、請求項1または請求項2に記載の噴射ノズル。
【請求項4】
前記傾斜面(21d;61d)が、前記ニードル軸に対して15°と45°の間の角度で位置する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の噴射ノズル。
【請求項5】
前記傾斜面(21d;61d)が、前記ニードル軸に対して30°の角度で位置する、請求項4に記載の噴射ノズル。
【請求項6】
前記制限要素(61)の前記上流側部分(61b)が、前記制限要素(61)の前記周縁部(61f)まで延出する上流側縁部の面(61i)を備える、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の噴射ノズル。
【請求項7】
前記制限要素(61)の前記上流側部分(61b)が中央面(61g)を備え、前記上流側縁部の面(61i)が前記中央面(61g)の周りに環状に配置される、請求項6に記載の噴射ノズル。
【請求項8】
前記上流側縁部の面(61i)が、前記中央面(61g)から窪んでおり、前記上流側縁部の面(61i)と前記中央面(61g)の間に段差(61h)を定める、請求項7に記載の噴射ノズル。
【請求項9】
前記上流側縁部の面(61i)が、前記ニードル軸に対して垂直である請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の噴射ノズル。
【請求項10】
前記制限要素(61)の前記周縁部(61f)が、前記上流側縁部の面(61i)と前記傾斜面(61d)が交わる場所に画定される、請求項6から請求項9のいずれか一項に記載の噴射ノズル。
【請求項11】
前記制限要素(21、61)の前記上流側部分の少なくとも一部分が、前記周縁部(21f)まで延出する傾斜面(21i)を備え、前記傾斜面(21i)が前記ニードル軸に対して非垂直である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の噴射ノズル。
【請求項12】
前記周縁部(61f)が前記ニードル軸に平行な方向に0.2mm以下の長さを有し、円筒形の表面を形成する、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の噴射ノズル。
【請求項13】
前記周縁部(61f)が前記ニードル軸に平行な方向に0.1mm以下の長さを有し、円筒形の表面を形成する、請求項12に記載の噴射ノズル。
【請求項14】
前記制限部(21a、61a)の上流側に、前記供給ライン(12)から燃料を受け取るようになされた第1のボア容積部(18a;58a)、および前記制限部(21a;61a)の下流側に、前記制限部(21a;61a)を通る前記第1のボア容積部(18a;58a)から燃料を受け取るようになされた第2のボア容積部(18b;58b)を備え、前記ニードル(15;55)の前記ニードルガイド部(22;62)が、前記第2のボア容積部(18b;58b)の内部に配置される、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の噴射ノズル。
【請求項15】
前記制限要素(21;61)が、使用の際に前記第1のボア容積部(18a;58a)内の燃料圧力を受ける上流向きスラスト面(21b;61b)を備える、請求項14に記載の噴射ノズル。
【請求項16】
前記ニードル(15;55)が、使用の際に前記第2のボア容積部(18b、58b)内の燃料圧力を受ける、少なくとも1つの下流向きスラスト面(15a、15b)を備える、請求項14または請求項15に記載の噴射ノズル。
【請求項17】
前記ニードル(15;55)と関連付けられ、前記制御チャンバの内部の燃料圧力を受ける制御面を有する制御ピストン(15e;55e)をさらに備え、前記カラー(21;61)が前記ピストン(15e;55e)よりも大きな直径を有する、請求項に記載の噴射ノズル。
【請求項18】
前記ボア(17)が、前記制限要素(21)が配置された大径領域(17a)、および前記弁ニードル(15)の前記ニードルガイド部(22)が配置された小径領域(17b)を含み、前記大径領域(17a)は前記小径領域(17b)よりも大きな直径を有する、請求項1から請求項17のいずれか一項に記載の噴射ノズル。
【請求項19】
前記制限要素(21)が、前記大径領域(17a)の下流側端部に配置された、請求項18に記載の噴射ノズル。
【請求項20】
前記ボア(57)が、前記制限要素(61)の上流側の大径領域(57a)、前記弁ニードル(55)の前記ニードルガイド部(62)が配置された小径領域(57b)、および前記制限要素(61)が配置された狭窄領域(57c)を含み、前記大径領域(57a)は前記小径領域(57b)よりも大きな直径を有し、前記狭窄領域(57c)は前記大径領域(57a)と前記小径領域(57b)との中間の直径を有する、請求項1から請求項17のいずれか一項に記載の噴射ノズル。
【請求項21】
前記制限要素に、複数の環状の突起(423;463)が設けられ、前記制限部が、少なくとも部分的に一連の副制限部を備え、各副制限部が、前記突起(423;463)のうちのそれぞれの突起の外周部と前記ボアの間に画成される、請求項1から請求項20のいずれか一項に記載の噴射ノズル。
【請求項22】
前記環状の突起(463)のうちの1つまたは複数の前記下流側部分が、前記ニードル軸に対して傾いた傾斜面(461d)を備える、請求項21に記載の噴射ノズル。
【請求項23】
前記制限要素(21;61)は、前記弁ニードル(15;55)が使用の際に噴射状態になると、前記ボア(17;57)の燃料の流速が、前記噴射状態から前記閉鎖状態への前記弁ニードル(15;55)の動きの間に前記弁ニードル(15;55)が移動する速度とほぼ等しくなるように寸法を決められている、請求項1から請求項22のいずれか一項に記載の噴射ノズル。
【請求項24】
前記制限要素(21;61)が、前記ボア(17;57)内の定常波に配置された、請求項1から請求項23のいずれか一項に記載の噴射ノズル。
【請求項25】
前記弁ニードル(15)に沿って離間して配置された複数の制限要素(521a、521b)を備える、請求項1から請求項24のいずれか一項に記載の噴射ノズル。
【請求項26】
前記閉鎖位置に向かって前記ニードル(15;55)を押圧するためのばね(19;59)をさらに備え、前記ニードル(15;55)が前記制限要素(21;61)の上流側に配置された前記ばね(19;59)のためのばね座(15c;55c)を備える、請求項1から請求項25のいずれか一項に記載の噴射ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料を内燃機関のシリンダに噴射する燃料噴射器に使用するための噴射ノズルに関する。特に、本発明は噴射器ニードルの制御の改善を提供するように構成された噴射ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
EP 0 844 383は、内燃機関用の高圧燃料噴射器に関する。燃料噴射器は、ボアを画成する噴射ノズルを有する。ボアは、燃料入口と複数の出口との間に高圧燃料用の流路を提供し、燃料は高圧燃料供給路から受け取られる。燃料噴射器はボアの内部で摺動可能なニードルを含む。ボアの下端において、ニードル座部が画成され、ニードルは座部と係合可能である。出口は座部の下流側に設けられ、ニードルが座部と係合すると、燃料が噴射されるのを阻止する。ニードルが座部から持ち上げられると、燃料は座部を通過し、出口を通ってエンジンの関連付けられた燃焼室に入ることができる。
【0003】
ニードルは、少なくとも1つの下流向きスラスト面を含み、そのスラスト面に対してボア内の高圧燃料が作用してニードルに持ち上げ力を与える。制御チャンバは、噴射ノズルのニードルの上端に設けられ、それによってニードルの上端が制御チャンバの燃料圧力を受ける。制御チャンバは供給路から高圧で燃料を受け取り、弁によって低圧ドレンに接続可能である。したがって、弁は制御チャンバでの燃料圧力を制御し、したがってニードルの上端に作用する下方の閉鎖力を決定する。このようにして、ニードルに作用する正味の液圧力(hydraulic force)の方向、したがって弁ニードルの開放および閉鎖の動きが制御され得る。
【0004】
弁ニードルとボアの部分との間の小さな径方向クリアランスの形の制限部が、燃料の入口と出口の間のボアを通る燃料の流れを制限するために設けられる。制限部は、下流向きスラスト面の上流側にある。したがって、ニードルが開放して噴射できるようになると、次いで制御チャンバとドレンの間の連通が閉鎖してニードルの閉鎖が開始し、ボア内の燃料圧力により下流向きスラスト面に作用する上方への力が、制御チャンバ内の燃料圧力によりニードルの上端に作用する下方への力より小さくなることが制限部により確実になる。制限部から生じる圧力差により、ニードルへの正味の閉鎖する液圧力が実質的に生じ、素早いニードルの閉鎖が実現可能になる。
【0005】
上述の構成と同様の構成において、高圧燃料供給部と噴射ノズルの噴射端部との間に圧力低下を発生させるために、燃料噴射器の内部に制限部を設けることがよく知られている。そのような圧力低下を誘引するために制限部を設けることができる、その他の様々な方法がある。たとえば、制限部は、ノズルの噴射端部付近に設けられ、またはその代わりに、ボアに供給する高圧燃料経路の内部に設けられ、その下流側では高圧燃料経路は制御チャンバに供給する。
【0006】
たとえば、US6,499,467は、制限部が、弁ニードルのピストン式ニードルガイド部を通るオリフィスの形をとる構成を開示する。ニードルガイド部はノズルの噴射端部付近にあり、制御チャンバからは離れている。EP 0 971 118は、制限部が弁ニードルに担持された環状のカラーとボアの壁との間に画成された構成を開示する。
【0007】
これらの構成の全てにおいて、制御チャンバと噴射器のボアは同じ高圧燃料供給路から供給される。しかし、ニードルの閉鎖が必要になると、制御チャンバ内の燃料圧力から生じる閉鎖力が、制限部の下流側でボア内の燃料圧力から生じ下流向きスラスト面またはニードルの表面に作用する、対抗する開放力に打ち勝つのに十分であることが制限部により確実になる。
【0008】
上述したような、知られている構成の可能性のある欠点は、制限部の両側間での比較的大きな圧力の低下が生じることである。実際には、これは噴射圧力が噴射器に供給される燃料圧力よりも低いことを意味する。したがって、噴射のために利用可能なよりも高い圧力に燃料を加圧するのにエネルギーが浪費される。噴射器の動作のために制限部の両側間での大きな圧力低下が必要でなく、それによって所与の燃料供給圧に対してより高い噴射圧力が実現できる構成を提供することが望ましい。
【0009】
前述の様式で制限部を使用する、知られている噴射器のさらなる可能性のある欠点は、噴射ノズルのボアが非常に小さいので、所望の圧力低下をもたらすための正確な径方向距離を提供するために必要な機械加工が非常に精密である必要があることである。そのような精度は、特にそのような小さな規模では、そうした噴射器を製造するために時間も費用もかかることを意味する。製造するのにより安価で単純な噴射器を提供することが望ましい。
【0010】
これらの従来技術の構成では、制限部を通る燃料の速度は、燃料の粘度、したがって温度に影響を受けやすい。使用の際に、燃料の温度は、エンジンの動作段階の間で大幅に変化し、それによって予測不可能なニードルの挙動を生じる可能性がある。したがって、燃料の粘度により影響を受けにくい噴射器を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の実施形態の目的は、上述の問題のうちの1つまたは複数を少なくとも部分的に緩和することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、燃料を内燃機関の燃焼室に噴射するための噴射ノズルが提供され、噴射ノズルは、燃料を加圧された燃料のための供給ラインから受け取るためのボアを有するノズル本体と、使用の際に燃焼室に燃料を送達するためのボアからの出口と、ニードル軸を定義し、出口を通って燃焼室に入る燃料の流れが阻止される閉鎖状態と、出口を通って燃焼室に入る燃料の流れが可能になる噴射状態との間でボアの内部で摺動可能な弁ニードルを備える。ニードルの動きは、使用の際に制御チャンバの内部の燃料圧力を変化させることによって制御可能である。ニードルは、ボアの内部でのニードルの摺動を案内するようになされたニードルガイド部を備える。
【0013】
噴射ノズルは、ボアを通る燃料の流れを制限するためのボアの内部の制限部、および上流側部分および下流側部分を有する制限要素をさらに備える。制限要素は、ニードルと共に可動であり、ニードルガイド部の上流側に配置される。制限部は、ボアと制限要素の周縁部との間に画成され、ニードルが使用の際に噴射状態になると、出口の燃料圧力が制限要素の下流側の直近のボア内の燃料圧力と実質的に同じになり、供給ラインからボアに供給される燃料圧力よりも低くなる。
【0014】
本発明のこの第1の態様では、制限要素の下流側部分の少なくとも一部分は、制限要素の周縁部に延出する傾斜面を備える。傾斜面はニードル軸に対して非垂直である。
【0015】
制限要素は、燃料の流れを制限し圧力低下をもたらし、それによって、ニードルが噴射状態になり燃料がボアを通って流れると、制限要素の下流側の燃料圧力は制限要素の上流側の燃料圧力よりも低くなる。このようにして、弁ニードルの制御は制限部の寸法を最適化することによって改善され得る。
【0016】
ニードルと共に可動であり、ニードルのガイド部から分離し、または離間して配置される制限要素を設けることにより、ニードルの開放中および閉鎖中にニードルの動的な特性を改善することが助長される。さらに、ニードルガイド部の上流側に制限要素を設けることにより、ニードルガイドを可能な限り噴射器の先端に近接して配置することが可能になり、それによって使用の際にニードルの機械的な安定性が増す。
【0017】
出口での燃料圧力は、制限要素の下流側の直近の燃料圧力と実質的に同じであるので、ニードルのガイド部の両側間での感知できるほどの圧力低下は全くないことを理解されたい。前記の別の方法では、ニードルのガイド部の両側間で生じるどのような圧力低下も、制限要素の両側間での圧力低下と比べて極めて小さい。
【0018】
周縁部の下流側にある制限要素の下流側部分の傾斜面は、燃料が制限部を通って流れると制限要素の下流側での燃料の乱流を最大にする働きをする。有利なことに、この配置は制限部を通る流れ特性の、燃料の粘度に対する感度を低下させ、それによって噴射器の性能によって変化する温度の影響が最小限に抑えられる。
【0019】
制限要素の下流側部分はニードル軸に対して垂直な下流側の面を備えることができ、傾斜面は下流側の面の周囲部に面取りとして形成され得る。傾斜面は円錐台であってもよい。
【0020】
一実施形態では、傾斜面はニードル軸に対して約15°と45°の間の角度で位置する。好ましくは、傾斜面はニードル軸に対して約30°の角度で位置する。
【0021】
制限要素の上流側部分は、制限要素の周縁部に延出する上流側縁部の面を備えることができる。一実施形態では、たとえば、制限要素の上流側部分は中央面を備え、上流側縁部の面は中央面の周りに環状に配置される。上流側縁部の面は、中央面からの窪みを設けられ、上流側縁部の面と中央面の間に段差を定めることができる。
【0022】
好ましくは、上流側縁部の面は、ニードル軸に垂直である。制限要素の周縁部は、上流側縁部の面と傾斜面が交わる場所に画定され得る。このようにして、周縁部は、上流側縁部の面と傾斜面の間の交差部において先鋭な縁部の形をとることができ、それによって制限部は粘度に対する感度が極めて小さい理論的な先鋭な縁部のオリフィスの流体の流れ特性に近い流れ特性を有するようになる。
【0023】
別の実施形態では、制限要素の上流側の少なくとも一部分は、周縁部に延出する傾斜面を備え、傾斜面はニードル軸に非垂直である。
【0024】
本発明のこの第1の態様によるどの構成においても、ボアの内部の流れ方向での制限部の長さ、したがってニードル軸の方向での周縁部の長さは、可能な限り短いことが望ましい。この構成により、流れの粘度に対する感度が最小限に抑えられ、弁ニードルの移動質量(moving mass)が低減する。たとえば、周縁部はニードル軸に平行な方向に約0.2mm以下の長さを有することができる。好ましくは、周縁部はニードル軸に平行な方向に約0.1mm以下の長さを有する。周縁部は、ニードル軸に平行に延在する全体的に円筒形の表面を備えることができる。全体的に円筒形の表面の代わりに、周縁部は湾曲形状、またはたる形状の表面を備えることができ、またはナイフエッジ形状を形成され得る。
【0025】
カラーとシャフトの間の接合領域または接合部の長さは、アセンブリの機械的な長さを最大にするために、周縁部の長さと比べてニードル軸方向で比較的長くすることができる。
【0026】
噴射ノズルは、制限部の上流側に、供給ラインから燃料を受け取るようになされた第1のボア容積部、および制限部の下流側に、制限部を通る第1のボア容積部から燃料を受け取るようになされた第2のボア容積部を備え得る。ニードルのニードルガイド部は、好ましくは第2のボア容積部の内部に配置される。
【0027】
制限要素は、使用の際に第1のボア容積部内の燃料圧力を受ける上流向きスラスト面を備えることができる。有利なことに、この構成では、弁ニードルが噴射状態になると、制限要素の上流向きスラスト面が閉鎖方向に作用する弁ニードルに追加の力成分を加える。
【0028】
このようにして、ニードルが制御チャンバ内の圧力の変化によって噴射状態から閉鎖状態に移動されると、制限要素の上流向きスラスト面に作用する圧力は、ニードルの閉鎖する動きを補助するように働き、ニードルの閉鎖速度がより速くなる。対照的に、ニードルが制御チャンバ内の圧力の変化によって閉鎖状態から噴射状態に移動されると、制限要素の上流向きスラスト面に作用する圧力は、開放中にニードルへの正味の開放力を低減するように働き、ニードルの開放する動きを減衰させ、したがってニードルの開放速度がより減速する。ニードルの閉鎖速度がより速く、ニードルの開放速度がより減速することの両方が、噴射制御を改善するために有利である。
【0029】
一実施形態では、ニードルは使用の際に制限部の下流側の燃料圧力を受ける少なくとも1つの下流向きスラスト面を備える。好ましくは、下流向きスラスト面は、使用の際に第2のボア容積部内の燃料圧力を受ける。第2のボア容積部内の燃料圧力は、ニードルの開放方向に作用する、弁ニードルへの力成分を加えるように作用する。第2のボア容積部内の燃料圧力は制限部によって制御されるので、下流向きスラスト面から生じる力は制限部の大きさを選択することによって噴射器の動作を最適化するように選択され得る。
【0030】
制限要素は、任意の適切な形をとることができ、ニードルと一体に形成され、または製造中にニードルに後で取り付けられる別個の構成要素として形成され得る。
【0031】
たとえば、ニードルはシャフト部分を含むことができ、制限要素はシャフト部の周りに環状に配置されたカラーを備えることができる。カラーはシャフト部分と一体に形成され得、またはその代わりにカラーはプレス嵌めまたはその他の方法でシャフト部分に取り付けられた別個の構成要素であることができる。制限要素がニードルとは別個の構成要素である場合、研磨によりニードルを構築する際の材料の消費が節約できる。
【0032】
ニードルの軸に沿ったカラーの厚さまたは長さは、実質的にカラーの直径よりも小さくすることができる。このようにして、ニードルの移動質量が低減され得る。ニードルはシャフト部分よりも小さな直径を有するステム部分を含み、ここでも同様にニードルの移動質量を低減することができる。ステム部分はシャフト部分の上流側にあることができる。
【0033】
好ましくは、カラーは、ニードルのニードルガイド部よりも大きな直径を有する。噴射ノズルは、ニードルと関連付けられ、制御チャンバの内部の燃料圧力を受ける制御面を有する制御ピストンをさらに備えることができる。この場合、カラーはピストンよりも大きな直径を有することができる。カラーがニードルガイド部および/または制御ピストンよりも大きな直径を有する場合、カラーはニードルの開放する動きを減衰することにも、ニードルの閉鎖する動きを補助することにも特に効果的である。
【0034】
ボアは、比較的大きな直径の領域および比較的小さな直径の領域を含むことができる。比較的小さな直径の領域は、比較的大きな直径の領域の下流側に設けられ得る。
【0035】
制限要素は、ボアの比較的大きな直径の領域の内部に配置され得る。ボアの大きな直径の領域内に制限要素を設けることにより、ニードルの動きの方向に垂直な、大きな断面積を有する制限要素を設けることができる。特に、制限要素が上流向きスラスト面を備える場合、制限要素の上流側のボア内の燃料圧力を受けるスラスト面の断面積をこの構成では比較的大きくすることができる。大きな断面積を有することにより、ニードルの開放および閉鎖の特性が改善される。さらに、大きな断面積を有する制限要素を設けることにより、同じニードルの閉鎖力をもたらすための制限要素の両側間での圧力低下をより小さくすることができ、それによって利用可能な噴射圧力を上昇させ、製作公差の影響を低減させる。
【0036】
制限要素は、好ましくは比較的大きな直径の領域の下流側端部に配置される。たとえば、制限要素は、比較的大きな直径の領域の下流側の3分の1に配置され、より好ましくは比較的大きな直径の領域の下流側の4分の1に配置され得る。
【0037】
別の構成では、ボアは、制限要素の上流側の比較的大きな直径の領域、弁ニードルのニードルガイド部が配置された比較的小さな直径の領域、および制限要素が配置された中間の直径の領域を含む。
【0038】
比較的大きな直径の領域の下流側端部に、または比較的大きな直径の領域の下流側の中間の直径の領域に制限要素を配置することによって、制限要素の上のボアの容積が最大になり、その下側の容積が最小になる。これにより、制限部の上流側のボアの大きな直径の領域での高圧燃料に利用可能なアキュムレータ容積を最大にすることが助長される。
【0039】
ニードルガイド部が、比較的小さな直径の領域に設けられ得る。出口が、ボアの比較的小さな直径の領域に設けられ得る。したがって、ニードルガイド部はノズル先端の出口に近接して配置され得る。ニードルガイド部をノズル先端の付近に設けることにより、ニードル用の支持が得られ、ノズルの先端の付近のニードルの動きの阻止が助長される。
【0040】
制限要素がカラーまたは同様の全体的に円筒形の構成要素である場合、制限要素の直径はボアの比較的小さな直径の領域の直径の約2倍であることができる。これにより、ニードルの閉鎖中に、ニードルが噴射ノズルのボアを通る燃料の流速とほぼ等しい速度で移動する状態が得られる。したがって、素早いニードルの閉鎖が実現される。
【0041】
制限要素は、複数の環状の突起を設けられ得る。この場合、制限部は少なくとも部分的に一連の副制限部を備えることができ、各副制限部は、突起のうちのそれぞれの突起の外周部とボアの間に画成される。したがって、この場合には、各突起は、制限要素の両側間での燃料圧力の低下を生じ、制限要素の両側間での全圧力低下は、各突起の両側間での圧力低下の累計である。一連の副制限部を設けることにより、各副制限部が比較的小さな圧力低下を発生させ、制限部を画成するために必要な精度および許容公差が、圧力低下が単一の制限部を介して実現される構成と比べて低減される。環状の突起のうちの1つまたは複数の下流側部分は、ニードル軸に対して傾いた傾斜面を備えることができる。
【0042】
噴射ノズルを使用する際に、ボアの内部の燃料に圧力波が生じる可能性がある。そのような圧力波は、ボアの形状に依存する特徴的な波長(characteristic wavelength)を有する。そのような波は、ニードルの開放および閉鎖の動きと噴射された燃料の圧力を乱すことがあるので望ましくなく、噴射された燃料の量の不確定さを生じる。有利なことに、制限要素は、ニードルに配置され得、それによって使用の際に1つまたは複数のそのような圧力波の波腹またはその波腹に近接して配置され、それによって波を減衰させ、波の望ましくない影響を低減する。たとえば、制限要素は、ボア内の特徴的な定常波の波腹に配置され得る。
【0043】
制限部は、制限要素をボアの大きさに対して適切な大きさに研削することによって製造され得る。この構成により、簡素化された製造工程が可能になる。
【0044】
噴射ノズルは、閉鎖位置に向かってニードルを押すためのばねをさらに備えることができる。ばねは、制限要素の上面に係合するようになされ得る。あるいは、ニードルは制限要素から間隔を置いて配置され、制限要素の上流側に配置されたばね座を備えることができる。噴射ノズルを低圧で動作可能にするために、比較的低荷重のばねが必要とされ、制限要素の上流側に別個のばね座を設けることにより、比較的短い低荷重のばねを使用して座屈の危険を最小限に抑えることができる。さらに、この構成では、ばねに占有された制限要素の上流側のボアの容積は比較的小さく、燃料に利用可能な容積が最大になる。
【0045】
スペーサ要素がボアの内部に配置され得る。スペーサ要素はニードルの上流側端部を受けるためのボアを備えることができ、ばねの上流側端部はスペーサ要素の下流側の面に支えられている。
【0046】
噴射ノズルは、ニードルに沿って離間して配置された複数の制限要素を備えることができる。複数の制限要素を設けることにより、ボアの内部の燃料の中での振動をさらに減衰させることを補助する。さらに、複数の制限要素が設けられた場合、各制限要素の両側間での必要な圧力低下が低減され、それによって必要になる全圧力低下が複数の制限要素の間で分散され得る。この構成の1つの利点は、全流れ狭窄への製作公差の影響が低減される。
【0047】
制限要素は閉鎖位置から開放位置への弁ニードルの動きに耐えるようになされた上面を提供することができる。この耐性は、供給ラインから出口までの燃料の流れに対して動く弁ニードル、したがって制限要素によるものである。制限要素の上面は、弁ニードルが供給ラインから出口への燃料の流れと共に動くときの開放位置から閉鎖位置への弁ニードルの動きも補助することができる。したがって、制限要素の上面の表面領域は、ニードルの動きの特性を補助する。特に、上方の表面領域は、燃料の流れに対する、ニードルの動きと反対方向の抵抗をもたらすことによって、ニードルの開放を減速させる。さらに、燃料の流れは、制限要素の上面に下方への力を働かせるので、制限要素の上面の表面領域は、素早いニードルの閉鎖をもたらすことを助長する。
【0048】
開放および閉鎖の動きの間のニードルの速度および加速度は、ニードルに作用する液圧力、任意の付勢ばねの強度、およびニードルの質量を含むいくつかの要因によって決定される。本発明の実施形態では、制限要素はニードルの動きに抗力成分を導入することによってニードルの動きの動態に影響を与えることもできる。
【0049】
一般的に言えば、制限要素は好ましくは、弁ニードルが使用の際に噴射状態になると、特に制限要素の付近のボアの燃料の流速は、噴射状態から閉鎖状態への弁ニードルの動きの間に弁ニードルが移動する速度とほぼ等しくなるように寸法を決められている。ニードルはボア内の燃料とほぼ同じ速度で移動するので、制限要素の存在によるニードルへの抗力は、したがって閉鎖するニードルの動きの間に最小限に抑えられる。
【0050】
制限要素はニードルの動きの方向に垂直な断面積を有することができ、それは出口の全断面積のほぼ200から800倍大きい。ボアを通る燃料の流速は、出口の面積にしたがって決定される。制限要素が上流向きスラスト面を含む場合、ニードルの閉鎖速度は、上流向きスラスト面の断面積、およびボアの内部の燃料の速度によって影響を受ける。したがって、ニードルの閉鎖の速度は、出口の面積に対する制限要素の断面積の比率によって影響を受ける。特に、本発明の実施形態でニードルの閉鎖の速度に影響を与えるのは、ニードルの動きの方向に垂直な制限要素の上面の断面積である。上記に示した出口面積に対する制限要素面積の比率は、ニードルの閉鎖速度を最適化するために与えられている。
【0051】
好ましくは、制限要素は、出口の断面積よりも約500倍大きい、ニードルの動きの方向に垂直な断面積を有する。出口面積に対する制限要素の面積のそのような比率により、ニードルの閉鎖速度が燃料の流速とほぼ等しくなることが可能になる。
【0052】
本発明の第2の態様によれば、燃料を内燃機関の燃焼室に噴射するための噴射ノズルが設けられる。噴射ノズルは、加圧された燃料のための供給ラインから燃料を受け取るためのボアを有するノズル本体を備える。使用の際に燃焼室に燃料を送達するために、ボアからの出口が設けられる。さらに、弁ニードルが設けられ、出口を通って燃焼室に流入する燃料の流れが阻止される閉鎖状態と、出口を通って燃焼室に入る燃料の流れが可能になる噴射状態との間でボアの内部で摺動可能である。ニードルの動きは、使用の際に制御チャンバの内部の燃料圧力を変えることによって制御可能である。
【0053】
ニードルは、ボアの内部でのニードルの動きを案内するようになされたニードルガイド部を備える。噴射ノズルは、ボアを通る燃料の流れを制限するためのボアの内部の制限部をさらに備える。制限部は、ニードルと共に可動でありニードルガイド部の上流側に配置された制限要素によって画成される。出口の燃料圧力は、制限要素の下流側の直近のボア内の燃料圧力と実質的に同じであり、供給ラインからボアに供給された燃料圧力よりも低い。
【0054】
制限部は、少なくとも部分的に制限要素とボアの間に画成され得る。制限部は、全体的に環状の形態であることができる。たとえば、制限要素は、少なくとも部分的には制限要素の外周部、または外円周表面とボアの間に画成され得る。
【0055】
制限要素には、その外表面に少なくとも1つの平坦な領域が設けられ得る。制限部は、少なくとも部分的には、平坦な領域とボアの間に画成され得る。都合のよいことに、この実施形態では、制限部は、ニードルの制限要素の上に平坦な表面を研磨することによって製造中に画成され得る。同様にして、制限部は、少なくとも部分的には1つまたは複数のチャネル、溝、スロット、または同様の特徴によって制限要素に画成され得る。
【0056】
ボアには少なくとも1つの窪みを設けることができ、その場合、制限部は少なくとも部分的には、制限要素の外表面と、上記のまたは各窪みによって画成され得る。
【0057】
制限要素は、1つまたは複数のオリフィスを設けられて、少なくとも部分的に制限部を画成することができる。上述のまたは各オリフィスは制限要素を通る穴をドリル加工することによって設けられ得る。そのような方法を使用して、そのようなドリル加工は正確な寸法で形成され得るので、制限要素は比較的製造が容易である。
【0058】
本発明のこの態様のいくつかの実施形態では、制限要素はボアの壁と接触しておらず、したがって制限要素はニードルの動きに対する案内機能を行わない。その他の実施形態では、制限要素はボアと摺動式に接触し、したがってニードルの直線的な動きを案内するのを助長する。
【0059】
本発明の第3の態様によれば、燃料を内燃機関の燃焼室に噴射するための噴射ノズルが提供される。噴射ノズルは、加圧された燃料のための供給ラインから燃料を受け取るためのボアを有するノズル本体を備える。使用の際に燃焼室に燃料を送達するために、ボアからの出口が設けられる。さらに、弁ニードルが設けられ、出口を通って燃焼室に流入する燃料の流れが阻止される閉鎖状態と、出口を通って燃焼室に入る燃料の流れが可能になる噴射状態との間でボアの内部で摺動可能である。ニードルの動きは、使用の際に制御チャンバの内部の燃料圧力を変化させることによって制御可能である。
【0060】
本発明のこの第3の態様では、噴射ノズルは、ボアを通る燃料の流れを制限するためのボア内の制限部、およびニードルと可動である制限要素をさらに備える。制限部は、制限要素とボアの間に画成される。制限要素は、使用の際に制限部の上流側の燃料圧力を受ける、上流向きスラスト面を備える。出口の燃料圧力は、制限要素の下流側の直近のボア内の燃料圧力と実質的に同じであり、供給ラインからボアに供給される燃料圧力よりも低い。
【0061】
本発明の別の態様では、燃料を内燃機関の燃焼室に噴射するための噴射ノズルが提供され、噴射ノズルは、燃料を加圧された燃料のための供給ラインから受け取るためのボアを有するノズル本体と、使用の際に燃焼室に燃料を送達するためのボアからの出口と、ニードル軸を定義し、出口を通って燃焼室に入る燃料の流れが阻止される閉鎖状態と、出口を通って燃焼室に入る燃料の流れが可能になる噴射状態との間でボアの内部で摺動可能な弁ニードルを備える。ニードルの動きは、使用の際に制御チャンバの内部の燃料圧力を変化させることによって制御可能である。噴射ノズルは、ボアを通る燃料の流れを制限するためのボアの内部の制限部、および上流側部分および下流側部分を有する制限要素をさらに備える。制限要素は、ニードルと共に可動である。制限部は、ボアと制限要素の周縁部との間に画成される。制限要素の下流側部分の少なくとも一部分は、制限要素の周縁部に延出する傾斜面を備える。
【0062】
本発明の別の態様によれば、燃料を内燃機関の燃焼室に噴射するための噴射ノズルが提供される。噴射ノズルは、燃料を加圧された燃料のための供給ラインから受け取るためのボアを有するノズル本体を備える。使用の際に燃焼室に燃料を送達するために、ボアからの出口が設けられる。さらに、弁ニードルが設けられ、出口を通って燃焼室に流入する燃料の流れが阻止される閉鎖状態と、出口を通って燃焼室に入る燃料の流れが可能になる噴射状態との間でボアの内部で摺動可能である。
【0063】
ニードルの動きは、使用の際に制御チャンバの内部の燃料圧力を変えることによって制御可能である。ニードルは、ボアの内部でのニードルの動きを案内するようになされたニードルガイド部を備える。噴射ノズルは、ボアを通る燃料の流れを制限するためのボアの内部の制限部をさらに備える。制限部は、ニードルと共に可動でありニードルガイド部の上流側に配置された1つまたは複数の制限要素によって画成される。制限部は一連の副制限部を備える。1つの構成では、2つ以上の制限要素が弁ニードルに沿って離間して配置され、各副制限部は制限要素のうちのそれぞれの突起によって画成される。別の構成では、上記のまたは各制限要素は、複数の環状の突起を設けられ、各副制限部は環状の突起のうちのそれぞれの突起によって画成される。別の構成では、2つ以上の制限要素が弁ニードルに沿って離間して配置され、各制限要素は複数の環状の突起を含む。
【0064】
本発明の実施形態は、高圧燃料供給路とノズルの噴射端部との間の制限部の両側間での圧力低下を従来技術と比べて低減させ、その一方で素早いニードルの閉鎖ももたらす。これは、燃料が加圧される必要がある圧力を低下させ、したがってそのような燃料噴射システムのエネルギー消費を低下させる。本発明では、ニードルに関連付けられた制限要素と、スラスト面の上流側にある噴射器のボアの比較的大きな直径の領域との間に制限部を設けることによりこれが実現され得る。この構成により、制限要素が比較的大きな断面積を有することが可能になり、それによって制限要素の両側間での圧力低下が比較的小さくなる。
【0065】
本発明の実施形態は、知られている噴射器と比べて噴射器の製造上の複雑さを低減する。特に、制限部は噴射ノズルのボアの比較的大きな直径の領域の中に画成され得るので、制限要素は、ニードルの直径と比べて比較的大きな直径を有することができ、より大きな流れ面積を有する制限部が設けられ得る。したがって、前述のタイプの知られている噴射器と比べて、そのような噴射器を製造することがより簡単かつ安価になる。
【0066】
本発明の実施形態は、制限要素の断面積が大きいことにより、ニードルがボアを通って流れる燃料の速度で閉鎖するのを助長するため、ニードルの閉鎖が改善される。
【0067】
本発明の実施形態は、ニードルの開放を減衰する。ニードルに関連付けられた制限要素の上流向きスラスト面は、ニードルが開放中に移動しようとする方向と反対方向に流れる燃料の流れに対する抵抗をもたらす。したがって、この抵抗はニードルの開放を減速させ、それが望ましいことである。
【0068】
本発明の実施形態は、噴射ノズルのボアの内部の燃料の振動の低下を助長する。特に、ボアの内部の制限要素は、前記ボアの内部の燃料の振動を減衰させる。したがって、燃料の振動の減衰は、ニードルに伝達されている燃料の振動により振動がニードルに対して有する影響を低減する。本発明の別の実施形態では、複数の制限要素があることにより、さらに振動を低減するのが助長される。
【0069】
本発明の各態様の好ましい、および/または任意の特徴が、単独で、または適切な組合せで本発明のその他の態様にも含まれ得ることを理解されたい。
【0070】
ここで本発明の実施形態が、同様の参照番号が同様の部品を指す、添付の図面を参照して例としてのみ述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1(a)】本発明の第1の実施形態による噴射ノズルの断面図である。
図1(b)】図1(a)の噴射ノズルの拡大断面図である。
図2図1の噴射ノズルの一部分の平断面図である。
図3(a)】本発明の第2の実施形態による噴射ノズルの断面図である。
図3(b)】図3(a)の噴射ノズルの拡大断面図である。
図4】別の構成による噴射ノズルの一部分の平断面図である。
図5】別の構成による別の噴射ノズルの一部分の平断面図である。
図6】別の構成による別の噴射ノズルの一部分の平断面図である。
図7】別の構成による噴射ノズルで使用するための制限要素の断面図である。
図8】本発明の第3の実施形態による噴射ノズルで使用するための制限要素の断面図である。
図9】本発明の第4の実施形態による噴射ノズルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
本明細書全体を通して、「上方」および「下方」などの用語が、図1(a)、1(b)、3(a)、3(b)、および9に示されるような噴射ノズルの向きを参照して使用されるが、噴射ノズルは任意の適切な向きで使用され得ることを理解されたい。「上流側」および「下流側」などの用語は通常の使用での噴射中に噴射ノズルの内部の燃料の流れの全体的な方向を指す(図1(a)、1(b)、3(a)、3(b)、および9での下方向)。
【0073】
図1(a)および1(b)は本発明の第1の実施形態による噴射ノズル10を示す。噴射ノズル10は、関連付けられたエンジンの燃焼室(図示せず)に燃料を噴射するための燃料噴射器の一部分を形成する。図1(a)を参照すると、噴射ノズル10は、噴射ノズル10のノズル本体13のボア17の内部で摺動可能な弁ニードル15を設けられている。ノズル本体13の上部は、ハウジング部8内の窪みの内部に受けられる。ハウジング部8およびノズル本体13は、少なくとも部分的には袋ナット11の形の噴射器ハウジングの内部に受けられる。
【0074】
ボア17の上端は、使用の際にハウジング部8の内部に少なくとも部分的に画成された高圧燃料供給路12から高圧燃料を受け取る。弁ニードル15は、ボア17の内部の燃料圧力を受ける全体的に円錐台形の第1および第2のスラスト面15a、15bを設けられる。
【0075】
ボア17の下端において、ボアは弁ニードル15が係合可能な円錐台形の弁ニードル座部17dを画成する。座部17dの下流側では、ノズル本体13が、ボア17の最下方先端に画成されたサック容積17eと連通している複数の出口16(そのうちの1つのみを示す)を設けられている。出口16は、ボア17の中の高圧燃料が関連付けられたエンジンの燃焼室(図示せず)に噴射されることを可能にする。ニードル15が座部17dに係合されると、燃料が噴射ノズル10から噴射されることが阻止される。この場合、ニードルは閉鎖状態にあるということができる。ニードル15が座部17dから持ち上がると、ニードル15の先端が座部17dから離脱し、燃料が出口16を通って燃焼室に噴射される。この状態では、ニードルは噴射状態にあるということができる。
【0076】
カラー21の形の制限圧力低減要素(restrictive pressure reduction element)が弁ニードル15に設けられる。カラー21は、ニードル15の円筒形のシャフト部15dに担持されている。下記により詳細に説明されるように、ニードル15が使用の際に座部17dから持ち上がると、カラー21は高圧燃料供給路12と出口16の間のボアを通る燃料流路での圧力低下を生じさせる。カラー21は、ニードルから径方向外側に突出し、ニードル15の直径と比べて比較的大きな断面積を有する。
【0077】
ボア17の上端において、ばね19が設けられ、ニードルを閉鎖状態に向かって押す。ばね19は、ニードル15のばね支持カラー15cの上面とハウジング部8の下面との間に係合される。したがって、ばね支持カラー15cは、ばね19のためのばね座を提供し、図示された実施形態では、ニードル15の一体化された部分として形成されるが、その代わりにニードル15に装着された別個の部分であることができる。
【0078】
弁ニードルの動きはハウジング部8の内部に配置された制御チャンバ(図示せず)の中の燃料圧力を変えることによって制御される。弁ニードル15は、その上流側端部に制御ピストン15eを含む(その下方部分のみを図1(a)に示す)。制御ピストン15eの端部は制御チャンバに受けられ、それによって制御ピストン15eの端面は制御チャンバの燃料圧力を受ける。
【0079】
制御チャンバの内部の燃料圧力は当業者にはよく知られている作動システム(図示せず)によって制御される。たとえば、作動システムは三方弁を含むことができ、三方弁は制御チャンバと低圧ドレンの間の燃料の流れを阻止しながら高圧燃料供給路12から制御チャンバに燃料が流れるかどうかを制御し、または燃料が制御チャンバから低圧ドレンに流れることができ、高圧燃料供給路12から制御チャンバへの燃料の流れが阻止されるかどうかを制御する。弁の動作は、たとえばソレノイドアクチュエータまたは圧電アクチュエータによって制御される。
【0080】
ノズル本体13は、2つの分離した部分、すなわち噴射ノズル10の上流側部分の大きな直径の領域13a、および噴射ノズル10の下流側部分の小さな直径の領域13bを有する。大きな直径の領域13aは、袋ナット11の内部に配置され、小さな直径の領域13aは袋ナット11内の開口14を通って突出するようになされる。
【0081】
出口16は、ノズル本体13の小さな直径の領域13bの端部に配置される。出口16は、使用の際に関連付けられたエンジン(図示せず)の燃焼室の内部に配置される、ノズル本体13の小さな直径の領域13bの先端に配置される。
【0082】
ノズル本体13のボア17は、実質的にノズル本体13と同じ形をとり、したがってボア17は、大きな直径の領域17aおよび小さな直径の領域17bで形成される。ニードル15は、ボア17の大きな直径の領域17a、および小さな直径の領域17bの両方を通って同軸に延びる。
【0083】
燃料は、高圧燃料供給路12からボア17の大きな直径の領域17aの上端に設けられた燃料入口ボア17cを通ってボア17に入る。ボア17は、燃料入口17cからボアの大きな直径の領域17aを通り、ボアの小さな直径の領域17bに入り、出口16に向かう燃料のための流路を画成する。使用の際に、燃料はボア17の大きな直径の領域17aと小さな直径の領域17bの両方を満たし、それらが共に燃料用のアキュムレータ容積部18を画成する。
【0084】
ボアの小さな直径の領域17bでは、弁ニードル15がニードルガイド部22を設けられている。ニードルガイド部22は、全体的に円筒形の案内面を提供し、その案内面はボアの小さな直径の領域17bの内側表面と摺動式に係合するようになされ、それによってボア17の内部でのニードル15の横方向の動きが阻止される。したがって、ニードルガイド部22は、ボア17の内部でのニードル15の摺動を案内する。ニードルガイド部22は、燃料が前述の流路に沿ってニードルガイド部22を容易に通過することを可能にしながらも、ニードル15のための案内機能をもたらすことができる複数の角度の付いたまたは螺旋の溝22aを有する。
【0085】
ニードルガイド部22での溝22aの存在は、ニードルガイド部22を通過する燃料の流れへの制限的な効果が実質的にないことを意味することを理解されたい。したがって、ニードルガイド部22はボア17の内部での燃料圧力の低下をもたらさない。本発明の代替的実施形態では、ニードルガイド部22によって得られた燃料圧力の低下は、制限要素21によって得られた燃料圧力の低下に対して無視できるほどである。したがって、出口16で噴射された燃料圧力は、カラー21の下流側の直近の圧力と実質的に等しい。
【0086】
ニードルガイド部22は、ニードル15の先端に優れた安定性をもたらすために、ボアの小さな直径の領域17bの内部に配置される。ニードルガイド部22を弁ニードル15の先端に可能な限り近接して設け、それによってニードル15の先端がニードル軸には垂直でなく、ニードル15の軸に沿ってのみ移動することができるようにすることが望ましい。ニードル15の先端のそのような横方向の動きを制限することにより、ニードル15の先端は、ニードルが閉鎖されると座部17dと信頼性の高い封止を形成する。
【0087】
カラー21は、ボアの大きな直径の領域17aのニードル15に設けられる。カラー21は、図1(b)および2に最も明確に示されるように、環形状でありボアの大きな直径の領域17aの直径よりもわずかに小さい直径を有する。したがって、カラー21はボアの隣接する領域17aと共に、燃料入口17cと出口16の間の燃料流路に沿った燃料の流れを制限するための制限部21aを画成するようになされる。制限部21aは、カラー21とボア17の大きな直径の領域17aの内側表面との間のカラー21の外周縁部21fの周りに画成される。したがって、制限部21aは、環状の通路または隙間の形をとる。下記に説明されるように、制限部21aは、ニードル15が噴射状態になり、燃料がボアを通って流れると、カラー21の両側間での圧力低下を生じるように断面積が十分小さくなっている。このようにして、ニードルが噴射状態になると、カラー21の下流側に、上流側の燃料圧力と比べて低下した燃料圧力が存在する。
【0088】
したがって、カラー21は、アキュムレータ容積部18を以下にボア容積部として述べられる2つの別個の圧力制御容積部に分割する。図1(a)に戻って参照すると、第1のまたは上方のボア容積部18aがボア17の最上端とカラー21の間に形成され、第2のまたは下方のボア容積部18bがカラー21と座部17dの間に形成されている。ニードル15が噴射状態になると、第1のボア容積部18a内の燃料圧力が、制限部21aにより第2のボア容積部18b内の燃料圧力よりも大きくなる。
【0089】
ニードル15のスラスト面15a、15bは、第2のボア容積部18bの内部に配置され、したがってニードル15が使用の際に噴射状態になると低下した燃料圧力を受ける。ニードルガイド部22も第2のボア容積部18bの内部に配置され、したがって低下した圧力の燃料がその全ての露出した面に作用する。
【0090】
次に、本発明のこの第1の実施形態による噴射ノズル10の動作が、図1(a)、1(b)、および2を参照して述べられる。
【0091】
ニードル15が閉鎖状態にある場合、ニードル15の先端が出口16から燃料が流れ出るのを阻止するために座部17dに係合する。この状態では、高圧燃料がボアの大きな直径の領域17a、小さな直径の領域17bを満たす。燃料の流れが全くないので、カラー21の両側の第1のボア容積部18a、第2のボア容積部18bの圧力が同一である。この段階では、制御チャンバとドレンの間の連通が閉鎖し、それによって制御チャンバ内の燃料圧力が高くなる。
【0092】
したがって、制御ピストン15eに作用する制御チャンバ内の燃料圧力によりニードル15に作用する下方への力または閉鎖力と、ばね19によって与えられた下方への力の組合せは、ニードル15のスラスト面15a、15bに作用する燃料圧力によりニードル15に作用する上方への力または開放力よりも大きい。これは結果として、ニードル15への正味の下方への力または閉鎖力になり、このためニードル15が閉鎖位置に留まる。第1のボア容積部18aおよび第2のボア容積部18bの内部の燃料圧力が同じなので、それぞれの容積部内の燃料圧力によりカラー21に作用する上方への力および下方への力は互いに打ち消し合う。
【0093】
ニードル15を開放するために、弁が制御チャンバと低圧ドレンの間の連結を開放するように弁が作動され、それによって制御チャンバの内部の圧力を低下させる。制御チャンバ内の圧力が低下すると、その結果生じている、制御ピストン15eに作用する下方への力が低下し、最終的に第2のボア容積部18bの内部の燃料圧力によりニードル15のスラスト面15a、15bに働く上方への力が、ばね19による下方への力と組み合わされる制御チャンバの内部の燃料圧力によりニードル15に作用する下方への力よりも大きくなる点に達する。この点において、正味の上方への力または開放力がニードル15に作用し、ニードル15が座部17dから離れて上方に移動し、その噴射状態に移行する。
【0094】
ニードル15が座部17dから持ち上がると、燃料が出口16から流れ出て燃焼室に入る。高圧燃料経路12はボア17に燃料を供給し続けるが、第2のボア容積部18b内のボア17の下端での圧力は燃焼室に噴射される燃料により低下する。これにより、スラスト面15a、15bへの燃料によって働く上方への圧力が低下するために、ニードル15が持ち上がる最初の速度が減速することが助長される。
【0095】
さらに、燃料がカラー21を通過し、したがって制限部21aを通って第2のボア容積部18bに流入するので、第2のボア容積部18b内の燃料圧力が第1のボア容積部18a内の燃料圧力と比べて低下する。その結果、カラー21の各側に作用する燃料圧力がこれ以上均衡しないので、その代わりにカラーがニードル15に下方への力を加える。前記別の方法では、カラー21の上流向き側部分21bが、第1のボア容積部18a内の燃料圧力を受ける上流向きスラスト面を形成し、ニードル15への下方への力成分を生成する。
【0096】
したがって、ボア17を通って燃料が流れると、燃料はカラー21の上流向き側部分21bに対して圧力を加え、したがってニードル15が座部17dから離れて上方へ移動する速度を低下させることも助長する。さらに、燃料を通るカラー21の動きはニードル15の速度も減じるドラグ効果を生じる。したがって、カラー21は、ニードル15の動きとは反対の方向への燃料の流れに対する、ニードル15の開放する動きを減衰させる効果を有する。カラー21によりニードル15に作用する下方への力成分は、スラスト面15a、15bにより作用する上方への力成分に打ち勝つのに十分ではなく、したがって正味の上方への力がニードル15を開放するように作用し続けることに留意されたい。
【0097】
ニードル15は、最終的に最大リフト位置(maximum lift position)に達し、燃料は高圧燃料経路12からボア17および出口16を通って燃焼室に流れ続ける。
【0098】
所望の量の燃料が燃焼室に送達されると、弁がドレンへの連結を閉鎖するように作動され、高圧燃料が制御チャンバに流入することが可能になる。制御チャンバ内の圧力が上昇し、それによって制御ピストン15eを介してニードル15に作用する下方への力または閉鎖力が高まる。最終的には、ニードル15に作用する組み合わさった下方への力がニードル15に作用する上方への力よりも大きくなり、ニードルを閉鎖方向に移動させるニードルへの正味の下方への力となる。
【0099】
上記に留意したように、制限部21aはカラー21の両側間での圧力低下を実現するので、第1のボア容積部18aには、カラー21の下流側の第2のボア容積部18b内に存在するよりも高い圧力が存在する。その結果生じる、上流向き側スラスト面21bに作用する燃料圧力によってカラー21を介してニードル15に加えられる下方への力は、ニードルの閉鎖の速度を増加させる閉鎖力のさらなる成分をもたらす。
【0100】
有利なことに、カラー21および制限部21aは、カラー21の領域内の燃料の流速はニードルが閉鎖中に移動する速度とほぼ同じであるように寸法を決められている。この構成では、ニードルの閉鎖中にカラー21とカラー21を取り巻く燃料との間の相対的な動きがほとんどあるいは全くなく、したがって抗力がほとんどあるいは全く生じない。したがって、カラー21は、ニードル15がボア17の内部で「燃料の流れと共に動く」ことが可能になるような閉鎖するスラスト面を実現する。言い換えれば、カラー21はニードルの閉鎖する動きを減衰させず、その代わりに素早いニードルの閉鎖が可能になる。素早いニードルの閉鎖は、スモークを最小限に抑え、望ましくないCO排出を低減するために望ましい。
【0101】
閉鎖動作は、ニードル15が座部と係合し、次の開放動作が実施されるまで出口16からさらに燃料が流れ出るのを阻止すると終る。
【0102】
制限要素またはカラー21のニードル15の動きへの効果はヒステリシスを示すことを理解されたい。ニードルの開放中に、カラー21はニードルの動きを減衰させ、小さな噴射容積の優れた制御を可能にする。ニードルの閉鎖中に、カラー21はニードルの閉鎖速度を増大させ、それにより噴射の迅速な終了を可能にする。カラー21によってニードル15に加えられたさらなる力は、使用の際にニードル15の長さ全体を移動する力の波によるニードルの動きにおけるどのような機械的な振動も減衰させることも助長する。
【0103】
本発明のこの実施形態でのカラー21の直径は、ニードルガイド部22の直径、または換言すればボア17の小さな直径の領域17bの約2倍である。したがって、ボアの大きな直径の領域17aに配置された場合、カラー21は、一般に、それがたとえばニードルガイド部22の代わりに小さな直径の領域17bに配置された場合よりも4倍大きい断面積を有する。カラー21によって発生した追加のニードル閉鎖力は、第1のボア容積部18a内の燃料圧力を受けるカラーの断面積にカラー21の両側間での圧力差をかけたものに依存するので、かなり小さな圧力低下(この例では4分の1)を使用して所与の追加のニードル閉鎖力を発生させることができる。したがって、所与の燃料供給圧力に対して、より高い噴射圧力を実現することができ、効率が増加する。
【0104】
ボア17の大きな直径の領域17a内の制限部21aを画成する別の利点は、製造中に制限部21aを画成するプロセス、および噴射ノズルの製造が全体として知られている構成と比べて簡素化されることである。上記に示したように、カラー21は比較的大きな断面積を有するので、制限部21aで必要な圧力低下は比較的小さい。したがって、制限部21aは、燃料の流れにとって利用可能な比較的大きな断面積を必要とする。言い換えれば、カラー21とボア17の間の径方向の隙間は、図示された実施形態では、カラー21がボアのより小さな直径の領域に配置された場合よりも大きくなる。したがって、制限部を通る燃料の流れにとって利用可能な断面積は、製作公差によるカラー21およびボア17の直径でのわずかな変化により受ける影響が少ない。
【0105】
カラー21の長さまたは厚さは、ニードル15の軸に平行な方向では、カラー21の直径と比べて比較的小さい。薄いカラー21が、カラー21の質量、したがってニードル15の移動質量を低減するために好ましい。カラー21はニードル15の摺動を案内しないので、カラー21がニードル15の長さに沿って軸方向に延出する必要が全くない。
【0106】
図1(b)に最も明確に示されているように、カラー21がその上流向き側部分21bおよび下流向き側部分21cの両方に面取りされた縁部または傾斜縁部21i、21dを設けられている。面取りされた縁部21i、21dは、カラー21のそれぞれの上方面21gおよび下方面21eから外周縁部21fに延出する。上方面21gおよび下方面21eは、ニードル15の軸に垂直に位置する。
【0107】
面取りされた部分21i、21dは、制限部を画成するカラー21の周囲面の長さを短くすることを可能にするが、ニードル15のシャフト部15dに当接するカラー21の内側表面は比較的長く、カラー21がシャフト部15dに確実に係合することを可能にする。周囲面を短く保つことは、制限部21aがオリフィスのように挙動し、それによって制限部21aでの燃料の流れの挙動に対する燃料の粘度の影響を低減することを意味する。特に、周縁部21fの下流側のカラー21の面取りされた縁部21dは、燃料が制限部21aを通って流れるとカラー21の下流側の燃料の乱流を最大にするように働く。
【0108】
面取りされた部分21i、21dはカラー21の強度を損なわずにカラー21の容積および質量を最小にすることも助長する。面取りされた部分21i、21dは、使用の際にカラー21の動的な特性も補助し、噴射ノズル10の製造中にカラー21の直径を研磨してサイズ決めする場合に発生しやすいバリを低減する。
【0109】
本発明のこの第1の実施形態では、カラー21は、ニードル15とは別個の噴射ノズル10の構成要素である。カラー21は、ニードル15のスラスト面15aにプレス嵌めされ、それによってカラー21はニードル15に対して可動でなくなる。したがって、カラー21は、ニードル15がボア17の内部で摺動するとニードル15と共に移動する。カラー21をニードルとは別個に作製する1つの利点は、ニードルを製造するために必要なバーの大きさを縮小し、それによって製造コストおよび製造中に廃材を節約することができる。しかし、本発明の代替的実施形態では、カラー21はニードルと一体の特徴であることができることを理解されたい。
【0110】
制限部21aの断面が形成される精度を最大にするために、カラー21をニードル15を固定した後にカラー21の直径を研磨することが望ましい可能性がある。特に、カラー21がニードル15に固定された場合にカラー21の直径を研磨することにより、カラーとニードル軸の間の優れた同心度を実現することが助長される。また、ニードルガイド22を関連付けられたボアの大きさ17bの測定に基づいて制御されたクリアランスに整合研磨(match grind)することが従来の慣習であるので、カラー21の直径も、ボア17の対応する大きな直径の領域17aの測定に基づいて制御されたクリアランスに整合研磨され得る。
【0111】
代替的な製造方法では、カラー21およびボア17は高い精度で研磨され、それによってニードルをノズル本体に整合研磨し、またはその他の方法で個別に整合することが必要でなくなる。この方法は、本発明により噴射ノズルを製造するためのコストを節約する。
【0112】
カラー21の上流向き側部分21bは、出口16の全断面積(すなわち出口を通る燃料の流れにとって利用可能な領域)よりも200倍から800倍まで大きく、好ましくは約500倍大きい、シャフト15dの軸に垂直な断面積を有するようになされる。この面積比にすることは、ニードルが閉鎖中にカラー21の付近の燃料とほぼ同じ速度で移動することを意味する。
【0113】
カラー21は、ボア17の内部の燃料中の圧力波を低減することも助長する。ニードル15およびカラー21がボア17の内部で移動し、燃料がボア17を通過すると、圧力波が燃料中で形成される。カラー21がボア17の大きな直径の領域17aの幅を横切って延在するので、カラー21はボア17を通る燃料の流れを制限することによって圧力波を弱めまたは減衰させる。ニードル15のカラー21の位置は、そのような圧力波を最小限に抑えるために選択することができる。たとえば、カラー21は、ボアの大きな直径の領域17aの内部に生じる主要な共振圧力波(resonant pressure wave)のうちの1つの波腹に、またはそれに近接して配置され得る。
【0114】
同様に、カラー21は、減衰要素としても作用し、ニードル15自体の振動を低減する。カラー21は、ニードル15の主要な共振振動のうちの1つの波腹に、またはそれに近接して配置され得る。
【0115】
ニードル15の開放中に、カラー21の上面の大きな表面領域によって得られる燃料の流れに対する抵抗は、ニードルの速度を低下させる。この減速した開放の1つの利点は、ニードル15がその最上位置に達すると、ニードルが「はね返る」傾向が低減されることである。そのようなはね返りは、非常に速い速度でニードルが開放し、次いで上方への移動の終わりに止め部(stop)に当たりそこからはね返ることにより従来技術のシステムで起こることが知られている。これは、ニードルでの望ましくない振動および噴射ノズルの構成要素の摩耗を生じる。したがって、本発明の実施形態は、これらの問題を緩和し、または少なくとも最小限に抑えることを助長する。
【0116】
図3(a)は、本発明の第1の実施形態に全体的に同様であり第2の実施形態による噴射ノズル50を示し、相違点のみが詳細に述べられる。
【0117】
噴射ノズル50は、ノズル本体53のボア57の内部で摺動可能であり複数の出口56を通る燃料の流れを制御する弁ニードル55を備える。本発明の第1の実施形態と同様に、この第2の実施形態では、ノズル本体53は袋ナットによりハウジング部に装着されている。ハウジング部および袋ナットは、図3(a)には示されない。
【0118】
この実施形態では、ボア57は、比較的大きな直径の領域57a、および比較的小さな直径の領域57bを含む。大きな直径の領域57aおよび小さな直径の領域57bは中間の直径の狭窄領域57cによって分離されている。狭窄領域57cは、円筒形の一定直径部57dおよび一定直径部57dを小さな直径の領域57bの最上端につなぐ移行部分57eを備える。大きな直径の領域57a、小さな直径の領域57b、および狭窄領域57cは共に高圧燃料用のアキュムレータ容積部58を画成する。
【0119】
カラー61の形の制限要素は、弁ニードル55の円筒形のシャフト部55dに担持されている。カラー61は、弁ニードル55の動きの範囲全体にわたってノズル本体のボア57の狭窄領域57cの一定直径部57dと部分的に重なるように配置されている。このようにして、カラー61とボア57の一定直径部57d(図3(b)に最も明確に示される)の間の環状の制限部61aは、弁ニードル55が移動するとき、一定かつ輪郭が明確な断面積の状態を保つ。
【0120】
さらに、ボア57の大きな直径の領域57aと小さな直径の領域57bの間に狭窄領域57cを配置することにより、カラー61の上流側のボア容積部58aがカラー61の下流側のボア容積部58bよりも実質的に大きくなる。上流側のボア容積部58aを最大にし、下流側のボア容積部58bを最小にすることにより、制限部61aの効率を最大にすることが助長される。
【0121】
図3(b)に詳細に示されるように、本発明のこの実施形態では、カラー61は非対称形状を有し、それによってカラー61の上流向き側部分61bは、下流向き側部分61cとは異なる形状を有する。カラーの下流向き側部分61cは、本発明の第1の実施形態でのような斜面にされた、または面取りされた縁部61dを有する。面取りされた縁部61dは、カラー61の下方の面61eから外周縁部61fに延在する傾斜面であり、外周縁部61fはカラー61の最大径を定義し、したがって制限部61aの大きさを定義する。カラーの上流向き側部分61bは、外縁部で段差を付けられ、周縁部の窪みまたは切り欠きを画成する平坦な上方中央面61gを備える。切り欠きの平坦なベース部分は、外側に延出し、カラー61の周縁部61fと交わる上流側縁部の面61iを画成する。したがって上流側縁部の面61iは、中央面61gからの窪みを設けられて段差61hを画成する。
【0122】
このようにして、周縁部61fは制限部61aを画成する「先鋭な縁部」またはナイフエッジを形成する。言い換えれば、カラー61の周縁部61fは、第1の面(面取りされた縁部61d)が第2の面(上流側縁部の面61i)と交わる角によって画成される。第1の面はニードル55の軸に対して傾けられ、第2の面はニードル55の軸に垂直である。この実施形態では、周縁部61fは、カラー61の上方の面61gと下方の面61eの間の中間にある。
【0123】
カラー61の形状は、制限部61aを画成するカラー61の周縁部61fがニードル軸の方向に非常に短いことを意味する。さらに、周縁部61fの下流側の、カラー61の面取りされた縁部61dは、燃料が制限部61aを通って流れるときカラー61の下流側の燃料の乱流を最大にするように働く。
【0124】
したがって、本発明のこの第2の実施形態では、制限部61aの特性は先鋭な縁部にされたオリフィスの特性に近くなり、その利点は、燃料の粘度に対する制限部の感度、したがって温度に対する感度が特に低くなることである。
【0125】
周縁部61fは、実際には、完全に先鋭であり得ないことを理解されたい。その代わりに、周縁部61fは、ニードル55の軸に平行な方向に有限の長さを有する全体的に円筒形の表面を形成し、その長さは好ましくは0.2mm未満である。より好ましくは、ニードル軸に平行な方向の外縁部61fの長さは0.1mm以下である。
【0126】
この例では、カラー61の下流側部分61cの面取りされた縁部61dは、ニードル軸に対して約30°の角度で面取りされている。その他の例では、面取りされた縁部61cは、好ましくはニードル軸に対して約15°と45°の間の角度で面取りされ得る。
【0127】
図3(a)を再び参照すると、円筒形のシャフト部分55dの上流側のニードル55のステム部分55fが円筒形のシャフト部分55dよりも小さな直径を有する。有利なことに、これは図1に示される実施形態と比べてニードル55の全体の質量を低減する。
【0128】
ステム部分55fの最上端は、付勢ばね59のための直径の拡大されたばね座55cを画成するカラーに形成される。ばね座55cの上部では、弁ニードル55が制御ピストン55eを含み、制御ピストン55eは、本発明の第1の実施形態でのように制御チャンバ(図示せず)と協働する。
【0129】
この第2の実施形態では、制御ピストン55eは、スペーサ部片60のボア60aの内部で摺動可能である。スペーサ部片60は、ばね59のための上方の座部として働き、ばね59をハウジング部(図示せず)から離隔させる。スペーサ部片60は、ばね59の力によってハウジング部に対して保持される。スペーサ部片60は、製造での公差により生じるようなニードル55のハウジング部との位置合わせ不良を調整するために横方向に摺動することができる。
【0130】
ばね59は、ばね座55cの上部に設けられた、弁ニードル55のばねガイド部分55gによって弁ニードル55の軸と同心に整列して維持される。ばねガイド部分55gは、ばね59がばねガイド部分55g上で摺動式に案内されるように寸法を決められている。さらに、スペーサ部片60の下面は、ボア60aへの入口の周りの突起した配置リング60bを形成されている。配置リング60bは、ばね59の内径の中に受けられ得るように寸法を決められている。このようにして、配置リング60bは、ばね59をニードル軸に対して同心の位置に配置する。
【0131】
この実施形態では、ノズル本体53のボア57の小さな直径の領域57bは、ニードル55のガイド部分62の外径に整合した縮小した内径を有するガイド領域57fを含む。同様に、ガイド領域57fの下流側に、ボア57の小さな直径の領域57bがノズル本体53の先端に近接して、さらに直径が低下した部分57gを含み、制限部61aの下流側のボア57の容積を低下させる。
【0132】
本発明の第1および第2の実施形態では、制限部21a、61aは、カラー21、61の外表面と、ボア17a、57cの内表面との間に環状の通路によって画成される。しかし、任意の適切な制限部が、少なくとも部分的にはカラーまたは任意のその他の適切な制限要素によって設けられ、画成され得ることが理解されよう。そのような3つの可能な代替的構成が図4、5、6に示され、下記により詳細に論じられる。
【0133】
図4は代替的構成を例示するための噴射ノズルの一部分の平断面図を示す。噴射ノズルは、カラー121の形の制限要素を含む。この構成では、カラー121は、その外表面に平坦部122を備える窪み部分を設けられ、その窪み部分は、ボア17aと共に制限部121aを画成する。したがって、平坦部122は、カラー121の周囲部とボア17aとの間に画成された環状の流路に加えて、カラー121を通過する燃料のためのさらなる流路を提供する。平坦部122は、カラーの片側が平坦にされる研磨プロセスによって容易に形成され得る。1つの平坦部122のみが図4に示されるが、実際には複数の平坦部を設けてカラーおよびニードルへの不均衡な負荷を回避することができる。
【0134】
別の構成(図示せず)では、カラーの環状の縁部がノズル本体内の大きな直径のボア領域の内表面と摺動式に接触しており、それによってボアの内部でのニードルの自由な動きを可能にする。この場合には、燃料は、カラーの全円周部の周りではなく、平坦部とボアの間のみを流れることが可能である。
【0135】
別の代替的構成(図示せず)では、複数の制限部を設けるために角度的に間隔をあけた位置で、カラーに複数の平坦部を設けることができる。平坦部は、複数の制限部によって設けられた全断面積がカラーの両側間での所望の全圧力低下をもたらすように配置される。チャネルまたは溝などの任意のその他の形状の窪みまたは形態を、平坦部の代わりにまたは平坦部に加えて使用することができる。
【0136】
図5は別の代替的構成を図示するための噴射ノズルの一部分の平断面図を示す。ここでも同様に、噴射ノズルは、カラー221の形の制限要素を有する。この構成では、制限部は、カラー221の上面から下面に延びる穴の形で、カラー221のオリフィス221aによって提供される。そのようなオリフィス221aを構築することは比較的容易であり比較的精密であることができる。特に、オリフィス221aはカラー221にドリル加工され得る。
【0137】
この構成では、カラー221の外円周部は、ボア17の内表面とすべり嵌めを可能にするようになされ、それによってニードル15がボア17の内部で摺動可能になることができる。この場合には、燃料は、カラー221の外表面の周りではなく制限部221aのみを通って流れることができる。
【0138】
別の代替的構成(図示せず)では、カラーを通る複数の制限部を画成するために、複数のオリフィスを設けることができる。オリフィスは、必要な機能を実現するのに適した任意の形状または形式で設けられ得る。
【0139】
図6は、カラー321の形で制限要素を有する別の代替的構成を示すための噴射ノズルの一部分の平断面図である。
【0140】
この構成では、窪み部分321a、321b、321c、321dがノズル本体313に設けられ、窪み部分は、カラー321の外表面と共にカラー321を通過する燃料流路に制限部を画成する。ここでも同様に、カラー321の外表面は、ノズル本体313の内表面とすべり嵌めを可能にするようになされ、それによってニードル15がボア領域317aの内部で摺動可能になる。したがって、燃料は、カラー321の外表面の残りの部分を通るのではなく窪み部分321a、321b、321c、および321dのみを通って流れることが可能になる。別の実施形態では、カラー321の周囲の環状の流路を設けてもよい。
【0141】
任意の適切な数の窪み部分を設けることができることを理解されたい。窪み部分は、ノズル本体を機械加工して窪みを形成することによって、または窪み形状を成形工程に導入してノズル本体を形成することによって作製され得る。
【0142】
異なるタイプの制限部の組合せが可能にするような、制限要素の両側間での圧力低下をもたらすための任意のその他の適切な手段を利用することもできる。ここでも同様に、制限部は、制限部によってもたらされる全断面積が所望の全圧力低下をもたらすように配置される。
【0143】
複数の制限部を噴射ノズルを通る燃料流路の内部に直列に配置することができる。たとえば、図7は、噴射ノズルで使用するためのカラーの形の制限要素421の断面を示す。カラー421は、その外周面の周りに円周方向に形成された2つの溝422を有する。2つの溝422は、3つの突出する環状部分423を画成し、環状部分423はカラー421の周りに円周方向にも延在する。
【0144】
この構成では、制限部は一連の寄与する制限部または副制限部を備え、各副制限部は突起423のうちのそれぞれの突起の外周部とボア(図7には図示せず)との間に画成されている。圧力低下は、カラー421の突起部分423のぞれぞれの両側間での各副制限部で実現される。突起部分423の形状および数は、突起部分423の両側間での圧力低下の合計が所望の全圧力低下に等しいように選択される。
【0145】
制限部を画成するために複数の突起部分423を設けることは、制限要素421を製造することがより容易になるので有利である。各突起部分423によって得られる各副制限部の両側間での圧力低下は、単一の制限部が設けられた場合よりも小さくなる。したがって単一の制限部と比べて各突起部分423の直径を縮小して、カラー421とボアの間のクリアランスをより大きくし、単一の制限部の場合と比べて突起部分423の所与の直径の公差の面積への影響をより小さくすることができる。
【0146】
図7は、全体的に図1に示すタイプのカラーへの溝の使用を示し、溝は任意の形の制限要素に適用され得ることを理解されたい。たとえば、溝は図4に示されるカラーの平坦部、図5に示されるカラーのオリフィス、または図6に示されるボアの窪みに沿って設けられ得る。
【0147】
適切である場合には、図1(a)から3(b)に記載される本発明の実施形態の特徴は、図4から7の構成に適用できることを理解されたい。たとえば、図4から6のカラーの下流側部分、または図7のカラーの突起部分のうちの1つまたは複数の下流側部分に傾斜面を設けることができる。
【0148】
たとえば、図8は、本発明の第3の実施形態による噴射ノズルに使用するためのカラーの形の制限要素461の断面図を示す。図7に示されるカラーでのように、図8に示されるカラー461は、3つの突出する環状部分463を備え、環状部分463はカラー461の外周面の周りに円周方向に延在する。環状の突起463は、カラー461の周囲面に形成された円周方向の溝462によって分離されている。
【0149】
各環状の突起463は、その下流側部分に環状部分463のそれぞれの外周縁部461fに延出する面取りされた面または傾斜面461dを有する。カラーの下流側部分461cに最も近接した環状の突起463の傾斜面461dは、下流側部分461cの中央面461eの周囲に形成される。中央面461はニードル軸に垂直である。
【0150】
カラー461の上流側部分461bは、中央面461gからの窪みを設けられて段差461hを画成する上流側縁部の面461iを備える。上流側縁部の面461iおよび中央面461gはニードル軸に垂直である。上流側縁部の面461iは、カラー461の上流側部分461bに最も近い環状の突起463の外周縁部461fに延出する。
【0151】
図7の構成でのように、図8のカラーでは、制限要素が一連の寄与する制限部または副制限部から形成される制限部をもたらし、各副制限部は、突起463のうちのそれぞれの突起の外周縁部461fとボア(図8に示さず)との間に画成される。さらに、傾斜面461dにより、各副制限部は先鋭な縁部によって画成され、図3(a)および3(b)を参照して上述した利点が与えられる。
【0152】
図9は、本発明の第4の実施形態による燃料噴射ノズル500の断面を示す。図9に示される燃料噴射ノズル500は、2つの制限要素を含む点で図1(a)に示される噴射ノズルとは異なり、各制限要素は、図1(a)および1(b)に示された本発明の第1の実施形態のカラー21と同じ形状を有するカラー521a、521bの形をとる。カラー521a、521bは、ニードル515の全体的に円筒形のシャフト部分515dに沿って離間して配置されている。
【0153】
各カラー521a、521bは、カラー521a、521bとボア517との間にそれぞれの副制限部を画成する。副制限部は、直列に配列され、供給路512と、最下方のカラー512bとノズル500の先端の間のボア容積部518bとの間の所望の圧力低下を得る。単一の制限部の代わりに複数の副制限部を設けることによって、カラー521a、521bとボア517との間のクリアランスを増加させ、それによって製作公差によるどのような直径の変化の影響も低減することができる。
【0154】
2つのカラー521a、521bを設けることにより、ボア517内の燃料の中およびニードル515の振動をさらに減衰させることが可能である。2つのカラー521a、521bは、ボア517の内部の燃料の振動を最小限に抑えるために配置され得る。たとえば、各カラー521a、521bは、ボア517の大きな直径の領域517aの内部の燃料の主要な共振振動のうちの1つの波腹、および/またはニードル自体の主要な共振振動のうちの1つの波腹に配置され得る。振動を低減するために、さらなるカラーを設けることができることを理解されたい。
【0155】
この実施形態では、カラーは同一であり、必要な圧力低下は2つのカラーの間で分担される。しかし、2つのカラーは、異なってもよく、互いのカラーの両側間での異なる圧力低下を生じ得ることができることを理解されたい。必要な圧力低下の全てをもたらす第1のカラー、および圧力低下をもたらさないがその代わりにボアの内部で波を減衰させるためだけに利用される第2のカラーを設けることも可能である。そのような実施形態では、カラーは「制限カラー」または「減衰カラー」と呼ばれ得る。
【0156】
本発明の第4の実施形態の変形形態では、図3(a)および3(b)に示される形状、あるいは図7または8に示される形状を有するカラーが使用され得る。
【0157】
本発明のいくつかの変更形態および変形形態が企図され得る。たとえば、図示されない本発明の別の実施形態では、カラーがばねの下端を支持する。すなわち、カラーは、カラーの上面と噴射器本体の間のばねに係合するようになされるばね座を画成する。この実施形態では、噴射器内で必要な構成要素の数が少なくなり、したがってより簡素な噴射器が得られる。その他の実施形態では、ばねは制御チャンバまたはその他の場所に設けられ得る。
【0158】
例示された実施形態では、ニードルが一体型のノズル本体のボア内に収容される。しかし、その代わりにニードルが複数部品構成のノズル本体に収容されてもよく、その場合にボアは複数の同軸に配置されたボアから形成され得る。ボアはノズル本体の上流側の構成要素内に延出し、または設けられてもよい。
【0159】
制御ピストンが弁ニードルの端部領域として形成されてもよい。あるいは、制御ピストンはニードルと関連付けられた別個の部分であり、制御ピストンの動きがニードルに伝達されてもよい。
【0160】
上記に明示的に述べられないさらなる変更形態および変形形態も、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲から逸脱せずに当業者によってなされ得る。
図1(a)】
図1(b)】
図2
図3(a)】
図3(b)】
図4
図5
図6
図7
図8
図9