特許第5894685号(P5894685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5894685
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】粉砕機
(51)【国際特許分類】
   B02C 13/04 20060101AFI20160317BHJP
   B02C 13/28 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
   B02C13/04
   B02C13/28 A
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-559018(P2014-559018)
(86)(22)【出願日】2014年5月30日
(86)【国際出願番号】JP2014064387
【審査請求日】2014年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】596100340
【氏名又は名称】晃立工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】福廣 安高
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−174638(JP,U)
【文献】 特公昭33−000541(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 13/00−13/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動軸と、当該回転駆動軸に対して偏心した位置で前記回転駆動軸の周方向複数箇所に前記回転駆動軸と平行に取り付けられた支軸と、当該支軸に揺動可能に取り付けられた複数の粉砕ハンマーとを有し、前記複数の粉砕ハンマーを前記支軸を中心として遠心力により半径方向外方に起立させた状態で前記回転駆動軸を中心として回転させることで、前記粉砕ハンマーの上方から供給される被粉砕物を当該粉砕ハンマーで打撃して粉砕する粉砕機において、
前記粉砕ハンマーの基端側の一部と、当該基端側の一部が当接する前記回転駆動軸の外周面とで、前記回転駆動軸の駆動中における前記粉砕ハンマーの起立方向上限角度を所定角度に規制する起立角度規制部を構成し、前記粉砕ハンマーが前記起立方向上限角度まで起立した状態において、前記粉砕ハンマーの打撃部となる先端側前縁部が前記回転駆動軸の回転方向後方側に所定角度で傾斜するようにしたことを特徴とする粉砕機。
【請求項2】
前記粉砕ハンマーの前記先端側前縁部が前記回転駆動軸の回転方向後方側に10°から80°の間の所定角度で傾斜するようにしたことを特徴とする請求項の粉砕機。
【請求項3】
前記回転駆動軸に複数の回転円板を所定間隔で固定すると共に、当該回転円板の周縁部相互間に前記支軸を介して前記粉砕ハンマーを少なくとも一つ取り付けると共に、当該支軸から周方向に離間した前記回転円板の周縁部相互間に少なくとも1つのハンマー受けを取り付け、当該ハンマー受けに前記粉砕ハンマーの先端側後縁部を当接させて前記粉砕ハンマーの起立方向と反対方向の揺動位置の規制を行うようにしたことを特徴とする請求項1又は2の粉砕機。
【請求項4】
前記ハンマー受けの外周に前記粉砕ハンマーの前記先端側後縁部が当接可能なカラーを交換可能に装着したことを特徴とする請求項の粉砕機。
【請求項5】
前記カラーが前記回転円板の相互間距離を規制するスペーサとしても機能するようにしたことを特徴とする請求項の粉砕機。
【請求項6】
前記回転駆動軸の両端側に固定された前記回転円板の外側面に前記支軸の少なくとも一端部を突出させ、当該突出端に前記支軸の抜止め用のCリングを装着したことを特徴とする請求項からのいずれか1項の粉砕機。
【請求項7】
前記回転円板の外側面に前記Cリングを収容可能な凹所を形成したことを特徴とする請求項の粉砕機。
【請求項8】
前記回転駆動軸に前記回転円板を3枚以上で取り付けて前記粉砕ハンマーを前記回転駆動軸の軸線方向で2列以上の多列で取り付け、当該多列の粉砕ハンマーの周方向取り付け位置を、隣接する粉砕ハンマーの取り付け位置と異ならせたことを特徴とする請求項からのいずれか1項の粉砕機。
【請求項9】
前記粉砕ハンマーの取付位置を、前記回転駆動軸の長手方向中央部を境目として左右対称としたことを特徴とする請求項の粉砕機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転駆動軸の周方向に複数の粉砕ハンマーを揺動可能に取り付けた粉砕機に関し、特にハードディスク、ソリッドステートドライブ(SSD)、電子回路基板、携帯電話機、フラッシュメモリ、CD・DVD/FD/MO/キャッシュカード等の粉砕に適した粉砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
揺動可能な粉砕ハンマー(揺動式粉砕ハンマー)を有する粉砕機は、例えば特許文献1(特開平8−117634号公報)のように公知である。当該粉砕機は図7に示すように水平な回転駆動軸100に固定した回転円板110に複数の粉砕ハンマー120を取り付けている。各粉砕ハンマー120は回転円板110に固定した支軸130を中心として揺動可能とされている。回転駆動軸100を回転させると、粉砕ハンマー120が遠心力により半径方向外方に起立し、粉砕ハンマー120の先端側前縁部で被粉砕物を打撃して粉砕する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−117634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の粉砕ハンマー120は、遠心力による起立方向上限角度が特に規制されていない。このため、粉砕ハンマー120の起立方向最大角度は、一般に回転円板110の接線を基準としてほぼ90度になる。この状態で、回転駆動軸100から粉砕ハンマー120の先端部までの距離は最大となる。このように粉砕ハンマー120の先端部回転半径が大きくなると、当該先端部の周速が増大するため一般的には被粉砕物の粉砕に好都合である。
【0005】
しかしながら、比較的硬い被粉砕物を粉砕する場合は被粉砕物からの打撃反力が大きくなる。そうすると、粉砕ハンマー120が当該打撃反力に負けて回転方向後方側に大きく倒される結果、十分な粉砕効果が得られない場合がある。
【0006】
また、前記打撃反力による粉砕ハンマー120の後傾動作と遠心力による起立復帰動作の繰り返し振幅が大きいため、比較的大きな騒音や振動が発生するという課題もあった。また、大きな打撃反力のために粉砕ハンマー120の寿命が比較的短くなり、粉砕ハンマー120を短期間で交換しなければならないという課題もあった。
【0007】
また、回転駆動軸100をモータで回転し始めてから粉砕ハンマー120が最大起立角度に達するまでに、定常運転時よりも大きな負荷がモータに作用する。このため、モータの選定にあたって起動トルクが大きいものを選定せざるを得ず、コストアップ要因となっていた。
【0008】
本発明は、揺動式粉砕ハンマーを有する粉砕機において、駆動手段であるモータの起動トルクを抑制すると共に、粉砕能力・粉砕効率を向上し、同時に騒音・振動を抑制可能な粉砕機を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の粉砕機は、回転駆動軸と、当該回転駆動軸に対して偏心した位置で前記回転駆動軸の周方向複数箇所に前記回転駆動軸と平行に取り付けられた支軸と、当該支軸に揺動可能に取り付けられた複数の粉砕ハンマーとを有し、前記複数の粉砕ハンマーを前記支軸を中心として遠心力により半径方向外方に起立させた状態で前記回転駆動軸を中心として回転させることで、前記粉砕ハンマーの上方から供給される被粉砕物を当該粉砕ハンマーで打撃して粉砕する粉砕機において、前記粉砕ハンマーの基端側の一部と、当該基端側の一部が当接する前記回転駆動軸の外周面とで、前記回転駆動軸の駆動中における前記粉砕ハンマーの起立方向上限角度を所定角度に規制する起立角度規制部を構成し、前記粉砕ハンマーが前記起立方向上限角度まで起立した状態において、前記粉砕ハンマーの打撃部となる先端側前縁部が前記回転駆動軸の回転方向後方側に所定角度で傾斜するようにしたことを特徴とする粉砕機である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粉砕機によれば、粉砕ハンマーの起立方向上限角度を所定角度に規制する起立角度規制部を設けたので、粉砕ハンマーを傾斜した状態にして被粉砕物を打撃粉砕することができる。
【0011】
このため、粉砕ハンマーによる被粉砕物の粉砕効率が向上すると共に、当該粉砕ハンマーが受ける打撃反力を低減することができ、粉砕機の騒音・振動を低減することが可能である。
【0012】
また、粉砕ハンマーの起立角度が規制されるため、回転駆動軸の起動トルクを低減することができる。これにより、回転駆動軸の駆動用モータの小型低コスト化により粉砕機の小型低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態を示す粉砕機本体の概略側面図である。
図2】粉砕機の外観斜視図である。
図3】粉砕機本体の蓋部を開放した状態の内部正面図である。
図4】粉砕機本体のロータの各回転円板と粉砕ハンマーを示す図である。
図5】粉砕ハンマーの支軸の端部を示す図である。
図6図3のIV-IV線矢視断面図である。
図7】従来の粉砕機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る粉砕機の実施形態を図1図6に基づいて説明する。
(粉砕機の全体構成)
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係る粉砕機10は、外装ケース11と、この外装ケース11内に配置された粉砕機本体12を有する。粉砕機本体12は、複数の粉砕ハンマー13と回転円板14とを有するロータ15と、当該ロータ15を収容したケーシング16を有する。
【0015】
ロータ15は図3のように水平な回転駆動軸17に取り付けられている。回転駆動軸17の両端は左右一対の軸受18によって支持されている。一方の軸受18の外側に突出した回転駆動軸17の一端に従動プーリ19が固定されている。この従動プーリ19は伝動ベルト20を介してモータ21の駆動プーリ22に連結されている。そしてモータ21の駆動により回転駆動軸17とロータ15が一体回転するようになっている。
【0016】
ケーシング16は左右の軸受18の間に配設されている。このケーシング16によって回転駆動軸17及びロータ15の周囲が覆われている。図1で分かるように、ケーシング16の左側約3分の2が本体部分16aであり、残り3分の1が蓋部16bである。当該本体部分16aと蓋部16bの分割部分に、回転駆動軸17が配置されている。
【0017】
蓋部16bは、その下部に配設された支軸35を中心として手前側に開放可能とされている。ロータ15等の内部部品を点検する際は蓋部16bを図1で鎖線のように手前側に開放する。蓋部16bは常時は図1に実線で示すように閉じられており、図示しない複数のボルトでケーシング16の本体部分16aに固定されている。
【0018】
ケーシング16の上部に被粉砕物Wを投入するための投入口30が形成されている。当該投入口30は外装ケース11の上面に配設された投入口31と接続されている。この投入口31には内開き式の蓋板33が配設されている。当該蓋板33は図示しないバネにより図1の実線のように閉じている。
【0019】
またケーシング16の下部には金属板を円弧状に曲げた篩部材32が配設されている。この篩部材32は粉砕物の大きさを揃えるためのもので、所定の大きさの円形穴32aが多数形成されている。
【0020】
粉砕機本体12の下方に、前記篩部材32から落下した粉砕物を収容するための粉砕物収容箱40が配設されている。この粉砕物収容箱40は、前面ドア41を開いて外部に取出可能とされている。
【0021】
粉砕物収容箱40は望ましくは透明プラスチック等で内部が見える容器で構成する。また、前面ドア41に透明板を嵌めた覗き窓42が設けられている。したがって、前面ドア41を閉じたまま覗き窓42を通じて粉砕物収容箱40内の粉砕物の状況を確認することができる。
【0022】
(粉砕機のロータ)
次に、ロータ15の構造について説明する。図3に示すように、回転駆動軸17に6枚の回転円板14が等間隔に固定されている。当該固定の方法としては、キーとキー溝、溶接等を使用することができる。前記回転円板14の相互間距離は、後述するように3種類のカラー46〜48と粉砕ハンマー13で規制されるようになっている。
【0023】
図4(a)〜(e)に示す各回転円板14は、図3の回転駆動軸17の左端から二番目の回転円板14から右端の回転円板14までを順番に示している。図示するように各回転円板14はその中心に軸穴14aを有する。当該軸穴14aに6枚の回転円板14を貫通するように回転駆動軸17が嵌合されている。
【0024】
回転駆動軸17の外周には、回転駆動軸17を保護するためのカラー48が装着されている。このカラー48によって回転円板14の相互間距離が規制される。
【0025】
本発明の実施形態では、図3に示すように、6枚の回転円板14の相互間に粉砕ハンマー13を配設するための5列のスペースが形成されている。当該5列のスペース内で粉砕ハンマー13の基端部が支軸44によって揺動可能に支持されている。なお、図3の中央の粉砕ハンマー13(断面指示線IV-IVの右側)は正面から見えるように便宜的に垂直にした状態で図示している。
【0026】
図4(c)は、前記5列のスペースの中央のスペース(第3例スペース)に配設された粉砕ハンマー13を示している。図4(c)では回転円板14に2つの粉砕ハンマー13が周方向180°の位相差で対照的に取り付けられている。
【0027】
これに対して図4(b)(第2例スペース)では、図4(c)の2つの粉砕ハンマー13と周方向90°の位相差をなすようにして、1つの粉砕ハンマー13が支軸44を介して回転円板14に取り付けられている。
【0028】
また図4(a)(第1例スペース)では、図4(b)の粉砕ハンマー13に対して周方向180°の位相差をなすようにして、1つの粉砕ハンマー13が支軸44を介して回転円板14に取り付けられている。
【0029】
一方、中央のスペース図4(d)(第4例スペース)でも、図4(c)の2つの粉砕ハンマー13と周方向90°の位相差をなすようにして、1つの粉砕ハンマー13が支軸44を介して回転円板14に取り付けられている。
【0030】
また図4(e)(第5例スペース)では、図4(d)の粉砕ハンマー13に対して周方向180°の位相差をなすようにして、1つの粉砕ハンマー13が支軸44を介して回転円板14に取り付けられている。
【0031】
このように、回転駆動軸17には第1列から第5列スペースで合計6本の粉砕ハンマー13が取り付けられ、各粉砕ハンマー13は回転駆動軸17の軸方向及び周方向に均一に分散配置されている。また、左右一対の軸受18の中央部を境として、すなわち回転駆動軸17の長手方向中央を境として、左右各3つの粉砕ハンマー13が左右対称に配置されている。
【0032】
したがって、複数の粉砕ハンマー13の相互間に被粉砕物を受け入れる十分なスペースが確保され、また粉砕ハンマー13及び回転円板14の回転バランスが維持される。これにより、被粉砕物の効率的な粉砕処理が可能である。
【0033】
回転円板14の周縁部には、周方向等間隔(90°間隔)で4つの軸穴14bが形成されている。これら軸穴14bに回転駆動軸17と粉砕ハンマー13を支持するための支軸44が貫通されている。
【0034】
支軸44は回転駆動軸17と平行に延び、回転駆動軸17と同様に6枚の回転円板14を貫通している。支軸44の両端部は、回転駆動軸17の両端側に配置された左右一対の回転円板14の外側面から外側に短く突出している。
【0035】
回転円板14相互間の支軸44の外周に、幅(軸線方向長さ)が大小異なる2種類のカラー46、47が装着されている。幅が大きい方が第1カラー46、幅が小さい方が第2カラー47である。幅が大きい第1カラー46は粉砕ハンマー13が取り付けられていない支軸44に装着されている。
【0036】
当該第1カラー46は回転円板14の相互間距離を規制すると共に、粉砕ハンマー13を受けるハンマー受けとしても機能する。すなわち、粉砕ハンマー13が被粉砕物を打撃するとその反力で粉砕ハンマー13が回転方向と反対方向に揺動する。粉砕ハンマー13が回転方向と反対方向に揺動すると、その先端側後縁部がハンマー受けとしての第1カラー46に当接する。これにより、粉砕ハンマー13の起立方向と反対方向の揺動位置が規制される。
【0037】
当該第1カラー46は、粉砕ハンマー13が繰り返し衝突するため粉砕機10の使用時間に応じて摩耗が進む。したがって、第1カラー46は粉砕機10の所定使用時間を目安にして交換しなければならない消耗部品である。
【0038】
一方、幅が小さい方の第2カラー47は、粉砕ハンマー13が取り付けられた支軸44の外周に装着されている。当該第2カラー47は、粉砕ハンマー13と共に回転円板14の相互間距離を規制する。
【0039】
(Cリング)
両端の回転円板14から外側に突出した支軸44の両端部に、図5に示すように環状溝44aが形成されている。そして当該環状溝44aに支軸44の抜止め用のCリング45が嵌合されている。
【0040】
両端の回転円板14の外側面には当該Cリング45を収容するための円形の凹部14cが形成されている。この凹部14cはCリング45を保護するためのもので、凹部14cによってCリング45に対する粉砕物の直接的衝突が回避される。
【0041】
支軸44は、少なくとも一方のCリング45を取り外すことで回転円板14から軸方向に簡単に引き抜くことが可能である。支軸44を引き抜くと粉砕ハンマー13やカラー46、47を取り外すことができる。そして粉砕ハンマー13を別の種類のハンマーに交換したり、寿命が到来した粉砕ハンマー13やカラー46、47を新品の粉砕ハンマー13やカラー46、47に交換したりすることができる。
【0042】
(粉砕ハンマー)
図6図3のIV-IV線矢視断面図であって、中央の回転円板14と2つの粉砕ハンマー13を示している。粉砕ハンマー13は細長短冊状に構成され、例えば矩形平板鋼を加工して製造することができる。
【0043】
粉砕ハンマー13の一端部には支軸44が挿通される穴部13aが形成されている。この穴部13aがある側の端部は斜めにカットされて傾斜部13bとされている。
【0044】
当該傾斜部13bは、粉砕ハンマー13が回転中に被粉砕物と衝突して鎖線で示すように回転方向後方側に倒れた時、粉砕ハンマー13の基端側角部が回転円板14の外周から大きく半径方向外方に飛び出さないようにするためである。当該基端側角部が外側に飛び出すと、ここに被粉砕物が衝突して粉砕ハンマー13が損傷し、穴部13aの周囲に亀裂が発生するおそれがある。なお、傾斜部13bに代えて当該部分を回転円板14の外周に沿った円弧部としてもよい。
【0045】
粉砕ハンマー13の傾斜部13bの終端側に近接して当接部13cが形成されている。この当接部13cは粉砕ハンマー13の直線状の後縁上にあって、粉砕ハンマー13が遠心力で図6の実線で示すように起立した時に、回転駆動軸17の外周に嵌合された第3カラー48に当接する。
【0046】
粉砕ハンマー13の当接部13cと第3カラー48により、起立角度規制部50が構成されている。この実施形態では粉砕ハンマー13の起立角度を約50°に設定している。
【0047】
すなわち、粉砕ハンマー13の先端側前縁部(ブレード部13d)と、回転駆動軸17と支軸44とを結ぶ直線とがなす角度θ1を約50°に設定している。当該角度θ1は、被粉砕物の種類等によって適宜変更することができることは勿論である。
【0048】
すなわち角度θ1は、例えば10°から80°の間の所定角度に設定することができる。また、角度θ1は望ましくは20°から70°、より望ましくは30°から60°、さらに望ましくは35°から55°の間の所定角度に設定することができる。
【0049】
本実施形態の粉砕機10では、前記角度θ1が10°以下では粉砕機10の騒音・振動の低減効果が殆ど得られなくなり、かつ、回転駆動軸17の起動トルク低減効果も殆ど得られなくなる。また、角度θ1が80°以上になると被粉砕物の粉砕効果が殆ど得られなくなる。
【0050】
粉砕ハンマー13の穴部13aと反対側の前縁部、すなわち粉砕ハンマー13の先端側前縁部に縁部を先鋭にした所定長さのブレード部13dが形成されている。このブレード部13dは粉砕能力ないし粉砕効率を向上するために断面V字状の鋭角で形成され、その角度θ2は本実施形態では約50°である。当該角度θ2は被粉砕物の種類等によって変更可能であることは勿論である。
【0051】
本発明の実施形態では各粉砕ハンマー13を図4及び図6のように傾斜状態(図示例ではθ1=50°)で回転させる。これによりブレード部13dのブレード角度θ2が実質的にθ2よりも小さくなることで粉砕ハンマー13の粉砕能力が向上する。また、ブレード部13dに対する負荷ないし打撃反力を低減することができる。したがって、粉砕ハンマー13の粉砕能力向上と寿命向上を図れる。
【0052】
このため、ブレード部13dによる被粉砕物の粉砕効率が向上すると共に、当該粉砕ハンマー13が受ける打撃反力が低減することから粉砕機10の騒音・振動を低減することができる。
【0053】
また、前述した起立角度規制部50によって粉砕ハンマー13の起立角度が規制されるため、回転駆動軸17の起動トルクを低減することができる。これにより、回転駆動軸17の駆動に使用するモータの小型低コスト化により粉砕機10の小型低コスト化を達成可能である。
【0054】
前記粉砕ハンマー13のブレード部13dは、図示例では直線状に形成しているが、必ずしも直線状に形成する必要はない。ブレード部13dは弓なりに形成してもよい。つまりブレード部13dが前方に向けて凸状となるように円弧状に形成してもよい。このような弓なり形状にすることでブレード部13dのいわゆる「引き切り」効果を高めることができ、破砕効率を一段と向上させ、同時に粉砕ハンマー13の寿命向上を図ることができる。
【0055】
(粉砕ハンマーの粉砕作用)
本発明の実施形態に係る粉砕機10は以上のように構成されている。そしてモータ21により回転駆動軸17を回転して粉砕ハンマー13を回転することで、粉砕ハンマー13の上方から供給される被粉砕物を粉砕ハンマー13で粉砕する。粉砕された被粉砕物は、篩部材32の円形穴32aから下方に落下し、粉砕物収容箱40に収容される。
【0056】
粉砕ハンマー13が回転する際、最初は粉砕ハンマー13が図6の鎖線で示すように回転方向後ろ側のカラー46に当った状態で回転し始める。回転駆動軸17の回転数が上がるにつれて粉砕ハンマー13が遠心力により図示の実線で示すように矢印方向に立ち上がる。そして最終的に支軸44が貫通した基端部側の当接部13cが回転駆動軸17のカラー48に当接して傾斜角度θ1が一定になる。この状態で粉砕ハンマー13が回転駆動軸17と一体的に回転して被粉砕物を粉砕する。
【0057】
傾斜角度はこの実施形態ではθ1=約50°としている。勿論、当該傾斜角度は約50°に限定されるものではなく、被粉砕物の種類や、使用する粉砕ハンマー13の種類、回転駆動軸17の回転数等によって変更可能である。
【0058】
粉砕ハンマー13は、回転中常に前記傾斜角度θ1を維持しているわけではない。被粉砕物に当たると当該被粉砕物を粉砕しながら、粉砕ハンマー13自体は被粉砕物との衝突の反力で図示時計方向(後方)に揺動する。この後方側への揺動で粉砕ハンマー13は回転方向後ろ側のカラー46に衝突するが、この衝突反力と遠心力の作用で再び矢印方向に跳ね返るように揺動し、短時間で前記傾斜角度θ1の起立状態に復帰する。
【0059】
粉砕ハンマー13はこのような揺動を高速で繰り返しながら被粉砕物を次々と粉砕していく。小さな被粉砕物や比較的柔らかい被粉砕物の場合、粉砕ハンマー13は必ずしも後ろ側のカラー46まで揺動しないこともある。カラー46に当たる前に遠心力の作用で矢印方向(反時計方向)に回転して元通りの傾斜角θ1に復帰する。
【0060】
粉砕ハンマー13は、起動当初は図6の鎖線で示すように横に寝た形になっている。したがって粉砕ハンマー13の先端部回転半径R1は比較的小さい。このため、モータ21の必要起動トルクを抑制することができ、定格の小さいモータ21でも実用上支障なく使用可能にする。これにより、粉砕機10のコストダウンと電力コストの低減を図ることができる。
【0061】
回転中は粉砕ハンマー13の先端部回転半径が図示するようにR2に増大し、これにより周速増大により被粉砕物を強力に粉砕することができる。しかも、粉砕ハンマー13は回転方向後方側に角度θ1で傾斜しているので、ブレード部13dの角度θ2が実際の角度よりも鋭利化し、硬い被粉砕物でも小さな衝撃力で容易に粉砕することができる。したがって、粉砕ハンマー13に作用する粉砕時の反力を低減することができ、粉砕ハンマー13の寿命増大、カラー46の寿命増大、粉砕機10の振動・騒音の低減を図ることができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば回転円板14の数は必ずしも6枚である必要はない。回転円板14は2枚以上であれば6枚以上でも4枚以下でも構わない。要するに、粉砕ハンマー13は任意の数の多列で配設することが可能である。
【0063】
また、粉砕ハンマー13の支軸44は必ずしも回転円板14で支持する必要はない。回転円板14に代わる適当な支持部材を使用しても構わない。要するに、揺動式の粉砕ハンマー13を回転方向後方側に所定角度で傾斜させた状態で回転できるように、粉砕ハンマーの起立方向上限角度を所定角度に規制する起立角度規制部50を配設可能な構造であればよい。
【符号の説明】
【0064】
10:粉砕機
11:外装ケース
12:粉砕機本体
13:粉砕ハンマー
13a:穴部
13b:傾斜部
13c:当接部
13d:ブレード部
14:回転円板
14a:軸穴
14b:軸穴
14c:凹部
15:ロータ
16:ケーシング
16a:本体部分
16b:蓋部
17:回転駆動軸
18:軸受
19:従動プーリ
20:伝動ベルト
21:モータ
22:駆動プーリ
30:投入口
31:投入口
32:篩部材
32a:円形穴
33:蓋板
35:支軸
40:粉砕物収容箱
41:前面ドア
42:覗き窓
44:支軸
44a:環状溝
45:Cリング
46:第1カラー
47:第2カラー
48:第3カラー
50:起立角度規制部
100:回転駆動軸
110:回転円板
120:粉砕ハンマー
130:支軸
R1:回転半径
R2:回転半径
【要約】
揺動式粉砕ハンマーを有する粉砕機において、駆動手段であるモータの起動トルクを抑制すると共に、粉砕能力・粉砕効率を向上し、騒音・振動を抑制する。回転駆動軸(17)の駆動中における粉砕ハンマー(13)の起立方向上限角度θ1を所定角度(例えば約50°)に規制する起立角度規制部(50)を設ける。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7