特許第5894745号(P5894745)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5894745
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】集積回路検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/302 20060101AFI20160317BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
   G01R31/28 L
   H01L21/66 C
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-121893(P2011-121893)
(22)【出願日】2011年5月31日
(65)【公開番号】特開2012-247397(P2012-247397A)
(43)【公開日】2012年12月13日
【審査請求日】2014年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124291
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】中村 共則
(72)【発明者】
【氏名】平井 伸幸
【審査官】 堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−064975(JP,A)
【文献】 特開2000−155099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/302
H01L 21/66
G01N 21/956
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板、及び前記半導体基板の表面側に形成された回路部を有する集積回路を検査するための集積回路検査装置であって、
波長幅を有する光を発生する光発生部と、
前記光発生部が発生する光の波長幅を調整する波長幅調整部と、
前記波長幅調整部で調整された光の照射位置を調整する照射位置調整部と、
前記照射位置調整部からの光が前記半導体基板の裏面を介して前記回路部に照射されたときに、前記集積回路からの光を検出する光検出部と、を備えることを特徴とする集積回路検査装置。
【請求項2】
前記光検出部は、前記集積回路からの光として干渉光の強度を検出することを特徴とする請求項1に記載の集積回路検査装置。
【請求項3】
前記光発生部は、スーパールミネッセントダイオードを有し、
前記波長幅調整部は、前記スーパールミネッセントダイオードに印加する電圧を調整することにより、前記波長幅を調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の集積回路検査装置。
【請求項4】
前記光発生部は、白色光源を有し、
前記波長幅調整部は、前記白色光源からの光のうち通過させる光の波長帯域を調整することにより、前記波長幅を調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の集積回路検査装置。
【請求項5】
前記照射位置調整部は、前記光発生部からの光が、前記半導体基板に形成される空乏層を介して前記回路部に照射されるように、前記照射位置を調整することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の集積回路検査装置。
【請求項6】
前記波長幅調整部は、前記集積回路に照射される光の中心波長、前記半導体基板の屈折率、前記半導体基板の厚さ及び前記空乏層の深さに基づいて、前記波長幅を調整することを特徴とする請求項5に記載の集積回路検査装置。
【請求項7】
前記半導体基板の厚みをTμm、前記光発生部が発生する光の波長幅をdμmとすると、
前記波長幅調整部は、d>3.38/Tとなるように、前記光発生部が発生する光の波長幅を調整する、請求項1〜6のいずれか一項記載の集積回路検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路検査装置に関する技術として、例えば特許文献1には、集積回路に形成されたトランジスタの活性領域にレーザ光を照射し、トランジスタの活性領域で変調されて反射されたレーザ光を検出することにより、トランジスタの故障を解析する技術が記載されている。特許文献1においては、レーザ光の変調は、トランジスタに印加された電圧に対するトランジスタの応答に依存するとされており、変調されたレーザ光の振幅や強度、施光、位相を解析することで、トランジスタの故障の有無を調べることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0039131号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術にあっては、半導体基板の裏面を介してトランジスタの活性領域にレーザ光を照射するため、トランジスタの活性領域で変調されて反射されたレーザ光に、半導体基板の裏面で反射されたレーザ光が干渉するおそれがある。つまり、変調されたレーザ光の信号情報に、裏面で反射されたレーザ光の干渉情報が重畳されて、S/Nが低下するおそれがある。しかも、温度変化に起因した半導体基板の膨張や屈折率の変化等によって光学的距離が変化するため、当該干渉情報は、極めて安定しにくい。
【0005】
そこで、本発明は、集積回路の検査精度を向上させることができる集積回路検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の集積回路検査装置は、半導体基板、及び半導体基板の表面側に形成された回路部を有する集積回路を検査するための集積回路検査装置であって、波長幅を有する光を発生する光発生部と、光発生部が発生する光の波長幅を調整する波長幅調整部と、波長幅調整部で調整された光の照射位置を調整する照射位置調整部と、照射位置調整部からの光が半導体基板の裏面を介して回路部に照射されたときに、集積回路からの光を検出する光検出部と、を備える。また、本発明の集積回路検査装置において、半導体基板の厚みをTμm、光発生部が発生する光の波長幅をdμmとすると、波長幅調整部は、d>3.38/Tとなるように、光発生部が発生する光の波長幅を調整してもよい。
【0007】
この集積回路検査装置では、集積回路に照射される光の波長幅が波長幅調整部によって調整される。これにより、例えば回路部と半導体基板の裏面との距離に応じて波長幅を広くして(すなわち、可干渉距離を短くして)、回路部及びその近傍からの光に、半導体基板の裏面で反射された光(以下、「裏面反射光」という)が干渉するのを抑制することができる。つまり、回路部及びその近傍からの光の信号情報に、裏面反射光の干渉情報が重畳されて、S/Nが低下するのを抑制することができる。よって、この集積回路検査装置によれば、集積回路の検査精度を向上させることが可能となる。
【0008】
本発明の集積回路検査装置においては、光検出部は、集積回路からの光として干渉光の強度を検出してもよい。上述したように、回路部及びその近傍からの光に対する裏面反射光の干渉が抑制されるので、光検出部によって検出された干渉光の強度は、主に回路部及びその近傍からの光についてのものとなる。従って、光検出部によって検出された干渉光の強度に基づいて回路部の状態を精度良く解析することができる。
【0009】
本発明の集積回路検査装置においては、光発生部は、スーパールミネッセントダイオードを有し、波長幅調整部は、スーパールミネッセントダイオードに印加する電圧を調整することにより、波長幅を調整してもよい。或いは、光発生部は、白色光源を有し、波長幅調整部は、白色光源からの光のうち通過させる光の波長帯域を調整することにより、波長幅を調整してもよい。これらの構成よれば、集積回路に照射される光の波長幅を適切に調整することができる。特に、光発生部がスーパールミネッセントダイオードを有する場合には、光輝度の光を得ることができる。
【0010】
本発明の集積回路検査装置においては、照射位置調整部は、光発生部からの光が、半導体基板に形成される空乏層を介して回路部に照射されるように、照射位置を調整してもよい。この構成によれば、例えばMOS型トランジスタ部においては、空乏層を介してドレインに光を照射することで、空乏層側のドレインの界面(物質の違いによるもの)での反射光や、ドレインと反対側の空乏層の界面(キャリア密度の違いによるもの)での反射光等によって生じる干渉光の強度を検出し、回路部の状態を精度良く解析することができる。
【0011】
本発明の集積回路検査装置においては、波長幅調整部は、集積回路に照射される光の中心波長、半導体基板の屈折率、半導体基板の厚さ及び空乏層の深さに基づいて、波長幅を調整してもよい。この構成によれば、空乏層を介して回路部に光を照射する場合に、回路部及びその近傍からの光に対する裏面反射光の干渉を抑制して、主に回路部及びその近傍からの光を検出するために、集積回路に照射される光の波長幅を適切に調整することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、集積回路の検査精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態の集積回路検査装置の構成図である。
図2図1の集積回路検査装置の被検査デバイスである集積回路の一部の構成図である。
図3図1の集積回路検査装置を用いた集積回路動作像の作成についての説明図である。
図4図1の集積回路検査装置を用いた集積回路動作像の作成についての説明図である。
図5】集積回路動作像の比較例及び実施例を示す図である。
図6】本発明の他の実施形態の集積回路検査装置の構成図である。
図7】本発明の他の実施形態の集積回路検査装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1に示されるように、集積回路検査装置1は、被検査デバイス(DUT:Device Under Test)である集積回路20において異常発生箇所を特定するなど、集積回路20を検査するための装置である。集積回路20は、例えばC−MOS−ICであり、シリコン基板(半導体基板)21、及びシリコン基板21の表面21a側に形成された回路部22を有している。集積回路20には、テスタ2からテスト信号(例えば矩形波状のパルス信号)が入力され、これにより、集積回路20は、検査時に駆動させられる。
【0016】
集積回路検査装置1は、集積回路20に照射される光Lを発生する光発生部3を備えている。光発生部3は、スーパールミネッセントダイオード(以下、「SLD」という)4、及びSLD4に電圧を印加する電圧印加部5を有している。電圧印加部5によって電圧が印加されることでSLD4が発した光Lは、レンズ系によって平行光にコリメートされて、光発生部3から出射される。
【0017】
光発生部3から出射された光Lは、偏光子6によって、所定の偏光方向を有する直線偏光に変換される。偏光子6を通過した光Lは、偏光ビームスプリッタ7及びスキャン光学系(照射位置調整部)8を順次通過し、1/4波長板9によって円偏光に変換される。1/4波長板9を通過した光Lは、ミラーやレンズ等を含む結像光学系11によって、集積回路20の所定の位置に結像される。このとき、光Lは、シリコン基板21の裏面21bを介して回路部22に照射される。そして、光Lは、スキャン光学系8によって、集積回路20に対して2次元的に走査される。つまり、スキャン光学系8は、集積回路20に照射される光Lの照射位置を調整する。
【0018】
集積回路20で反射された光Lは、結像光学系11を通過し、1/4波長板9によって直線偏光に変換される。1/4波長板9を通過した光Lは、スキャン光学系8を通過するものの、上述した所定の偏光方向に垂直な偏光方向を有するため、偏光ビームスプリッタ7によって反射され、光センサ(光検出部)12によって検出される。つまり、光センサ12は、光発生部3からの光Lがシリコン基板21の裏面21bを介して回路部22に照射されたときに、集積回路20からの光Lを検出する。ここでは、光センサ12は、集積回路20からの光Lとして干渉光の強度を検出する。
【0019】
光信号の入力に応じて光センサ12から出力された電気信号は、増幅されてロックインアンプ13に入力される。ロックインアンプ13では、テスタ2から集積回路20に入力されるテスト信号に基づいて、光信号の特定の周期に対応する信号が抜き出される。抜き出された信号は、スキャン光学系8等、集積回路検査装置1の各部を制御する制御部14に入力される。入力された信号は、制御部14において、集積回路20における光Lの照射位置と対応付けられて画像化される。このようにして作成された集積回路動作像は、ディスプレイ15に表示される。なお、ロックインアンプ13に代えてスペクトラムアナライザを用いてもよい。
【0020】
制御部14は、解析部として機能する他に、電圧印加部5と共に、集積回路20に照射される光Lの波長幅を調整する波長幅調整部としても機能する。つまり、制御部14は、電圧印加部5を制御してSLD4に印加する電圧を調整することにより、集積回路20に照射される光Lの波長幅を調整する。SLD4は、電圧印加部5によって印加される電圧が大きくなるほど、波長幅の狭い光Lを発する特性を有している。
【0021】
ここで、制御部14によって調整される光Lの波長幅について、図2を参照して説明する。図2は、集積回路20の一部であるMOS型トランジスタ部の構成図である。集積回路20に照射される光Lの照射位置は、シリコン基板21に形成される空乏層を介して回路部22(ここでは、ドレイン)に光Lが照射されるように、スキャン光学系8によって調整される。
【0022】
まず、光Lの可干渉距離lは、光Lの中心波長(例えば、ピーク発振波長)をλ、光Lの波長幅(例えば、スペクトル半値幅)をd、光Lが通過する媒体の屈折率をnとすると、次式で表される。
【数1】
【0023】
上述した集積回路動作像の作成に有効な信号の強度変調は、数十ppm程度である。すなわち、信号に対してノイズを低減し、十分なS/Nを確保するためには、観察すべき面(すなわち、回路部22及びその近傍の面)での光Lの反射光と、そうでない面(すなわち、シリコン基板21の裏面21b)での光Lの反射光との光路長差に対して、可干渉距離lを十分に小さくする必要がある。干渉光の強度Iは、強度Iが最大となる位置からの距離をxとすると、次式で表される。
【数2】
【0024】
|x|>1のとき、干渉光の強度Iは、強度Iの最大値を1とすると、おおよそ、
【数3】

となり、平均として、
【数4】

となる。
【0025】
S/Nを改善する場合、観察すべき面での光Lの反射光と、そうでない面での光Lの反射光との干渉光の強度Iを極力小さくする必要がある。例えば、強度Iを0.001にするためには、距離xを約14にすればよい。シリコン基板21の裏面21bでの光Lの反射光の干渉を抑えるためには、シリコン基板21内を往復する光Lの光路長が可干渉距離lを超えている必要がある。
【0026】
つまり、シリコン基板21の厚さをT、光Lに対するシリコン基板21の屈折率をnとすると、
【数5】

【数6】

を満たす必要がある。
【0027】
シリコン基板21の屈折率nは、おおよそ3.5である。光Lの中心波長(観察波長)λは、シリコン基板21に吸収されず、かつできるだけ短いことが好ましいことから、1.3μmであることが標準である。この場合、光Lの波長幅dは、
【数7】

となる。シリコン基板21の厚さTが100μmであれば、光Lの波長幅dは33.8nmを超える必要がある。
【0028】
このように、光Lの波長幅dを広くして、光Lの可干渉距離lを短くすることで、回路部22及びその近傍の面での光Lの反射光に、裏面反射光(シリコン基板21の裏面21bでの光Lの反射光)が干渉するのを抑制することができる。
【0029】
その一方で、光Lの反射光の変調は、回路部22及びその近傍の面での光Lの反射率の変化に基づくものであるが、この変化は、回路部22周辺の空乏層の拡大・縮小による反射面の移動、及びその内部キャリアによる光吸収に起因するものである。つまり、反射率の変化の減少を防止するためには、空乏層の深さ(空乏層側のドレインの界面と、ドレインと反対側の空乏層の界面との距離)の2倍に屈折率nを乗じたもの相当する可干渉距離lが必要である。この距離は、接している領域間の電圧の平方根に比例し、キャリア密度に反比例する。拡散層に伴う空乏層の深さをtとすると、次式が成立する。
【数8】
【0030】
上述したように、シリコン基板21の屈折率nを3.5、光Lの中心波長を1.3μmとすると、おおよそ
【数9】

となる。
【0031】
よって、光Lの適切な波長幅dは、次式で表される。
【数10】
【0032】
深い拡散層(ウェル構造)等の電圧も観察する場合、空乏層の深さtを1μm、シリコン基板21の厚さTを100μmと仮定すると、光Lの適切な波長幅dは、次式で表される。
【数11】
【0033】
以上のように、制御部14は、集積回路20に照射される光Lの中心波長λ、シリコン基板21の屈折率n、シリコン基板の厚さT及び空乏層の深さtに基づいて、光Lの波長幅dの値を決定する。そして、制御部14は、電圧印加部5を制御してSLD4に印加する電圧を調整することにより、決定した値となるように光Lの波長幅dを調整する。
【0034】
次に、上述した集積回路動作像の作成について説明する。ここでの集積回路動作像の作成は、LVI(Laser Voltage Imaging)法に基づくものである(例えば特許文献1参照)。
【0035】
まず、テスタ2から集積回路20にテスト信号が入力され、集積回路20が駆動させられる。この状態で、図3に示されるように、集積回路20に照射される光Lの照射位置が、スキャン光学系8によって位置Pに合わされ、干渉光の強度が、光センサ12によって検出される。そして、ロックインアンプ13において、干渉光の強度信号がテスト信号に同期して解析され、特定の周波数fの干渉光の強度Iが検出される。
【0036】
続いて、図4に示されるように、集積回路20に照射される光Lの照射位置が、スキャン光学系8によって位置Pに合わされ、干渉光の強度が、光センサ12によって検出される。そして、ロックインアンプ13において、干渉光の強度信号がテスト信号に同期して解析され、特定の周波数fの干渉光の強度Iが検出される。
【0037】
このようにして、光Lの照射位置が集積回路20に対して2次元的に走査され、集積回路20の全体において、特定の周波数fの干渉光の強度Iが検出される。そして、制御部14において、干渉光の強度が光Lの照射位置と対応付けられて、特定の周波数fにおける干渉光強度画像が集積回路動作像として作成され、ディスプレイ15に表示される。
【0038】
集積回路20を駆動している場合と駆動していない場合とでは、回路部22においてキャリアが存在する範囲が変化し、空乏層の深さや光吸収率等が変化する。そのため、ドレインと反対側の空乏層の界面で反射する光Lの光路長が変化する。従って、集積回路20を駆動している場合と駆動していない場合とでは、当該界面で反射する光Lの強度の変化(強度変調)が存在し、異常発生個所では、当該界面で反射する光Lの強度の変化が生じないため、干渉光の強度を検出することで、集積回路20における異常発生個所を特定することができる。なお、集積回路20における特定の位置に光Lの照射位置を合わせ、その特定の位置における干渉光の強度を検出し、その特定の位置について検査を行ってもよい。
【0039】
以上説明したように、集積回路検査装置1では、集積回路20に照射される光Lの波長幅が制御部14及び電圧印加部5によって調整される。これにより、回路部22とシリコン基板21の裏面21bとの距離に応じて波長幅を広くして(すなわち、可干渉距離を短くして)、回路部22及びその近傍からの光Lに裏面反射光が干渉するのを抑制することができる。つまり、回路部22及びその近傍からの光Lの信号情報(主に回路部22及びその近傍からの光についての干渉光の強度情報)に、裏面反射光の干渉情報が重畳されて、S/Nが低下するのを抑制することができる。よって、集積回路検査装置1によれば、集積回路20の検査精度を向上させることが可能となる。
【0040】
また、光発生部3がSLD4を有し、制御部14が、電圧印加部5を制御してSLD4に印加する電圧を調整することにより、集積回路20に照射される光Lの波長幅を調整する。これにより、集積回路20に照射される光Lの波長幅を適切に調整することができる。特に、SLD4を用いることで、光輝度の光Lを得ることができる。
【0041】
なお、SLD4から発せられた光Lの光路上に、光Lの波長幅を調整するための波長選択フィルタを配置してもよい。このとき、制御部14は、波長選択フィルタと共に、集積回路20に照射される光Lの波長幅を調整する波長幅調整部として機能する。つまり、制御部14は、数種類の波長選択フィルタ(例えば、バンドパスフィルタ、ロングパスフィルタ、ショートパスフィルタのいずれか、又はそれらの組み合わせ)を切り替えるなどして、SLD4からの光Lのうち通過させる光Lの波長帯域を調整することにより、集積回路20に照射される光Lの波長幅を調整する。これによっても、集積回路20に照射される光Lの波長幅を適切に調整することができる。
【0042】
このとき、制御部14が、集積回路20に照射される光Lの中心波長、シリコン基板21の屈折率、シリコン基板21の厚さ及び空乏層の深さに基づいて、光Lの波長幅の値を決定する。これにより、回路部22及びその近傍からの光Lに対する裏面反射光の干渉を抑制して、主に回路部22及びその近傍からの光Lを検出するべく、集積回路20に照射される光Lの波長幅を適切に調整することができる。
【0043】
また、光発生部3からの光Lが、シリコン基板21に形成される空乏層を介して回路部22に照射されるように、スキャン光学系8が光Lの照射位置を調整する。これにより、例えばMOS型トランジスタ部においては、空乏層を介してドレインに光Lを照射することで、空乏層側のドレインの界面(物質の違いによるもの)での反射光や、ドレインと反対側の空乏層の界面(キャリア密度の違いによるもの)での反射光等によって生じる干渉光の強度を検出し、回路部22の状態を精度良く解析することができる。近年、集積回路20の微細化に伴ってソース−ドレイン間のチャンネル領域の幅が光Lの波長以下に狭くなりつつあり、当該領域には光Lが入射しにくいことから、上記構成は、極めて有効といえる。なお、光発生部3からの光Lを、チャンネル領域直下の空乏層を介して回路部22に照射してもよい。
【0044】
図5は、集積回路動作像の比較例及び実施例を示す図である。比較例として、中心波長1300nm、波長幅1nm以下、出力109mWのレーザ光を照射して、LVPによる集積回路動作像を取得し、駆動部を楕円で囲んだ(図5(a))。一方、実施例として、中心波長1310nm、波長幅55nm、出力14mWの光を照射して、LVPによる集積回路動作像を取得し、駆動部(活性部)を楕円で囲んだ(図5(b))。被検体デバイスとしては、同一の集積回路を使用した。その結果、中心波長1310nm、波長幅55nm、出力14mWの光を照射した場合には、中心波長1300nm、波長幅1nm以下、出力109mWのレーザ光を照射した場合に比べ、裏面反射光の影響によるノイズが低減され、レーザ光を照射した場合には駆動部が観察されなかった領域でも、駆動部が観察された。
【0045】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図6に示されるように、SLD4と偏光ビームスプリッタ7との間に偏光子6を配置しなくてもよい。この場合、SLD4から発せられた光Lのうち直線偏光でない成分が散乱光として光センサ12に向かうのを防止するために、偏光ビームスプリッタ7に対して光センサ12と反対側に、黒色の部材等、当該成分を吸収する光吸収体16を配置すればよい。
【0046】
また、図7に示されるように、光発生部3が、SLD4に代えて白色光源17を有していてもよい。この場合、白色光源17から発せられた光Lの光路上に、光Lの波長幅を調整するための波長選択フィルタ18を配置すればよい。このとき、制御部14は、波長選択フィルタ18と共に、集積回路20に照射される光Lの波長幅を調整する波長幅調整部として機能する。つまり、制御部14は、数種類の波長選択フィルタ18(例えば、バンドパスフィルタ、ロングパスフィルタ、ショートパスフィルタのいずれか、又はそれらの組み合わせ)を切り替えるなどして、白色光源17からの光Lのうち通過させる光Lの波長帯域を調整することにより、集積回路20に照射される光Lの波長幅を調整する。これによっても、集積回路20に照射される光Lの波長幅を適切に調整することができる。
【符号の説明】
【0047】
1…集積回路検査装置、3…光発生部、4…スーパールミネッセントダイオード、5…電圧印加部(波長幅調整部)、8…スキャン光学系(照射位置調整部)、12…光センサ(光検出部)、14…制御部(波長幅調整部)、17…白色光源、18…波長選択フィルタ(波長幅調整部)、20…集積回路、21…シリコン基板(半導体基板)、22…回路部、L…光。
図1
図2
図3
図4
図6
図7
図5