(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1開口部と前記第2開口部は、前記伝達部材の外周において径方向外側に向けて開放した切欠として形成されていることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ機構。
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のブレーキ機構と、操作部材の操作により前記ブレーキ機構に入力トルクを伝達・遮断可能なラチェット機構とを備えるクラッチユニットであって、
前記ラチェット機構は、
前記伝達部材に対し前記軸方向に隣接して設けられ、前記伝達部材と係合して一体に回転可能である第1回転体と、
前記操作部材と一体に揺動可能な第2回転体と、
前記第1回転体および前記第2回転体に係合・離脱することで入力トルクの伝達・遮断を行う第2可動片とを備え、
前記伝達部材は、少なくとも前記第1回転体に向けて開放した係合穴を有し、
前記第1回転体は、前記係合穴に係合する第2突出部を有することを特徴とするクラッチユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の伝達部材は、ローラとの当接のためにカム側に向かって延びる部分があり、軸方向の大きさが大きいという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、ブレーキ機構のブレーキを解除する伝達部材を薄く、軽量化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した目的を達成するための本発明は、入力トルクを出力軸に伝達するとともに、前記出力軸からの逆入力トルクを遮断するブレーキ機構であって、円筒状の内周面を有するブレーキ側外輪と、前記ブレーキ側外輪に対して相対回転可能であり、前記ブレーキ側外輪の内周面と非平行な外周面を有するブレーキ側カムと、前記ブレーキ側外輪の内周面と前記ブレーキ側カムの外周面との間に配置され、前記ブレーキ側外輪の内周面と前記ブレーキ側カムの外周面に挟持されることで前記出力軸からの逆入力トルクを遮断する第1可動片と、前記ブレーキ側カムに対し軸方向に隣接して設けられ、前記第1可動片と当接して前記第1可動片が前記ブレーキ側外輪の内周面と前記ブレーキ側カムの外周面に挟持されるのを解除可能であり、かつ、前記ブレーキ側カムと係合して前記ブレーキ側カムに入力トルクを伝達可能な伝達部材とを備え、前記ブレーキ側カムは、板状の本体部と、当該本体部から前記伝達部材側に突出した第1突出部とを有し、前記第1可動片は、一部が前記本体部よりも前記伝達部材側に突出して配置され、前記伝達部材は、平板状に形成され、前記第1突出部を受け入れて係合可能な第1開口部と、前記第1可動片を受け入れて係合可能な第2開口部とを有することを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、ブレーキ側カムから伝達部材側に第1突出部が突出して形成されるとともに、第1可動片が伝達部材側に突出して配置されているので、伝達部材を平板状に形成することができる。すなわち、伝達部材の一部を軸方向に延ばす必要がなく、厚みを薄くして軽量化することができる。なお、ここでの軸方向は、ブレーキ側カムの回転軸の方向である。
【0010】
前記したブレーキ機構において、前記第1開口部と前記第2開口部は、前記伝達部材の外周において径方向外側に向けて開放した切欠として形成されていることが望ましい。
【0011】
このように、第1開口部と第2開口部が、伝達部材の外周に設けられていれば、第1開口部と第1突出部が当接する位置の回転半径を大きくすることができるので、第1開口部の縁に掛かる力を小さくすることができる。その結果、伝達部材の厚さを薄くすることが可能である。
【0012】
前記したブレーキ機構において、前記第1開口部と前記第2開口部は、それぞれ複数設けられ、周方向に交互に配置された構成とすることができる。
【0013】
これによれば、作動時に、伝達部材にバランス良く力が掛かり、伝達部材の回転をスムーズにすることができる。
【0014】
この構成においては、前記第1開口部と前記第2開口部は、それぞれ周方向に同じ長さを有し、かつ、周方向に等角度ピッチで配置されるのが望ましい。
【0015】
このような構成によれば、第1開口部と第2開口部は、実質的に同じものとなるので、伝達部材をブレーキ側カムに組み付けるときに、誤組を避けることができる。
【0016】
また、前記した課題を解決した本発明は、前記したブレーキ機構と、操作部材の操作により前記ブレーキ機構に入力トルクを伝達・遮断可能なラチェット機構とを備えるクラッチユニットであって、前記ラチェット機構は、前記伝達部材に対し前記軸方向に隣接して設けられ、前記伝達部材と係合して一体に回転可能である第1回転体と、前記操作部材と一体に揺動可能な第2回転体と、前記第1回転体および前記第2回転体に係合・離脱することで入力トルクの伝達・遮断を行う第2可動片とを備え、前記伝達部材は、少なくとも前記第1回転体に向けて開放した係合穴を有し、前記第1回転体は、前記係合穴に係合する第2突出部を有することを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、伝達部材と第1回転体を、係合穴と第2突出部により係合するので、伝達部材を板状にすることができる。すなわち、伝達部材を薄くして軽量化を図ることができる。
【0018】
このクラッチユニットにおいて、前記係合穴は、前記第1開口部および前記第2開口部よりも径方向内側に配置されていることが望ましい。
【0019】
これにより、伝達部材の小型化を図ることができる。
【0020】
また、前記したクラッチユニットにおいて、前記第1回転体は、板金によりカップ状に形成され、円筒状の内周面を有するラチェット側外輪であり、前記第2回転体は、前記ラチェット側外輪の内周面と非平行な外周面を有するラチェット側カムとすることができる。
【0021】
このような構成によれば、第1回転体の構造を簡素にしてコストダウンを図りつつ、第2回転体を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の構成によれば、伝達部材の厚みを薄くして軽量化することができる。
【0023】
請求項2に記載の構成によれば、第1開口部の縁に掛かる力を小さくすることができ、その結果、伝達部材の厚さを薄くすることが可能である。
【0024】
請求項3に記載の構成によれば、作動時に、伝達部材にバランス良く力が掛かり、伝達部材の回転をスムーズにすることができる。
【0025】
請求項4に記載の構成によれば、伝達部材をブレーキ側カムに組み付けるときに、誤組を避けることができる。
【0026】
請求項5に記載の構成によれば、伝達部材を薄くして軽量化を図ることができる。
【0027】
請求項6に記載の構成によれば、伝達部材の小型化を図ることができる。
【0028】
請求項7に記載の構成によれば、第1回転体の構造を簡素にしてコストダウンを図りつつ、第2回転体を小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、本発明のクラッチユニット1は、車両用シートSのシートクッションS1の高さを調整するための公知のハイトアジャスト機構(図示せず)に適用される。クラッチユニット1は、操作部材の一例としてのレバー部材13にレバーLVが取り付けられ、レバーLVの操作により、出力軸としての後述する出力ギヤ21D(
図2参照)を回転させてハイトアジャスト機構を駆動してシートクッションS1の高さを調整可能である。具体的には、レバーLVを中立位置Nから上げると、シートクッションS1が所定量上がり、レバーLVを中立位置Nから下げると、シートクッションS1が所定量下がるようになっている。なお、レバーLVを、上または下の位置から中立位置Nに戻すときには、出力ギヤ21Dが回転しないようになっている。
【0031】
図2(a)〜(c)に示すように、クラッチユニット1は、ハウジング10に各部材が収納されており、ハウジング10から突出するのは出力ギヤ21Dを有する主軸21とレバー部材13だけとなっている。このため、クラッチユニット1内の各部品にゴミが付着しにくく、また、乗員が所持している紐状の物などが各部品に絡まることが抑制されている。なお、以下の説明では、
図2(b)に示すように、レバー部材13が配置される側を「入力側」と称し、出力ギヤ21Dが配置される側を「出力側」と称する。
【0032】
図3に示すように、クラッチユニット1は、入力側に設けられ、レバー部材13の揺動動作による入力トルクを伝達・遮断するラチェット機構2と、出力側に設けられ、ラチェット機構2からの入力トルクを出力ギヤ21Dに伝達するとともに、出力ギヤ21Dからの逆入力トルクを遮断するブレーキ機構3とを備えてなる。
【0033】
ラチェット機構2とブレーキ機構3の構成部品の概略を説明すると、ラチェット機構2は、カバー部材12と、レバー部材13と、姿勢規制部材14と、ローラ保持器15と、ラチェット側外輪16と、ローラ91と、付勢部材としてのリターンスプリング95とを備えてなる。また、ブレーキ機構3は、ブレーキ側外輪11と、ブレーキ側カム18と、伝達部材17と、ローラ92とを備えてなる。そして、主軸21が、ブレーキ側カム18の回転を外部へ出力するとともに、ラチェット機構2の回転を支持している。前記したハウジング10は、ブレーキ側外輪11と、カバー部材12の組合せにより構成されている。すなわち、ハウジング10は、ブレーキ側外輪11を兼ねている。そして、ブレーキ機構3から動力を取り出す主軸21は、入力側から出力側へ向けて、複数種類の直径の支持軸部21Aと、四角形断面の回転係合軸部21Bと、フランジ21Cと、出力ギヤ21Dとをこの順に有している。
【0034】
次に、ブレーキ機構3およびラチェット機構2の構成の詳細を説明する。
ブレーキ側外輪11は、円筒形状の外周部11Aと、この外周部11Aと連なる出力側の側壁11Bとを備えている。ブレーキ側外輪11の内周面11Cは、円筒状の面となっている。側壁11Bは、主軸21のフランジ21Cと略同じ直径の孔11Dが形成されている。
図4に示すように、フランジ21Cは、孔11Dに入って、ブレーキ側外輪11との隙間を小さくしてハウジング10内へのゴミの侵入を抑制している。
【0035】
図3に戻り、ブレーキ側カム18は、ローラ92の軸方向の長さと同等の厚みであるがやや薄い部材であり、レバーLVの操作時にブレーキ側外輪11に対して相対回転可能である。ブレーキ側カム18は、板状の本体部18Aと、第1突出部18Dとを有する。本体部18Aの外周面は、円形断面の円形外周面18Bと、平面からなるカム面18Cとを周方向に交互に有してなる。各カム面18Cは、周方向に4箇所、等ピッチで配置されている。カム面18Cは、ブレーキ側外輪11の内周面11Cと非平行な面であり、内周面11Cとカム面18Cの間に形成されるくさび形空間81(
図8参照)は、周方向中央から外側に行くにつれ、径方向の大きさが小さくなっている。すなわち、くさび形空間81は、周方向の両側に向け先端が先細りとなるくさび形となっている。
【0036】
第1突出部18Dは、伝達部材17側(入力側)へ向けて形成された小さな突起であり、外周部分の縁のうち、周方向において円形外周面18Bに対応する位置に設けられている。第1突出部18Dの突出量は、伝達部材17の厚み以上であるのがよく、略同じであるのがさらに望ましい。これにより、伝達部材17からブレーキ側カム18の係合部分に掛かる力が小さくなって負担が小さくなるとともに、第1突出部18Dが過剰に突出しないので軽量化を図ることができる。第1突出部18Dは、ハーフブランキングにより形成することで、低コストで形成することができる。また、この加工方法のため、第1突出部18Dの裏側(出力側)には、第1突出部18Dに対応した凹みが形成されている。本体部18Aの中心には、四角形断面の回転係合孔部18Eが形成されている。回転係合孔部18Eは、回転係合軸部21Bに対応した形状をしており、
図4に示すように、回転係合軸部21Bに嵌合している。これにより、ブレーキ側カム18と主軸21とは一体に回転するようになっている。
【0037】
図3に戻り、ローラ92は、第1可動片の一例であり、ブレーキ側カム18およびブレーキ側外輪11に係合・離脱することでブレーキ側カム18の回転のロックおよびロック解除を行う部材である。ローラ92は、
図8に示すように、ブレーキ側外輪11とブレーキ側カム18の間に形成される各くさび形空間81に一対ずつ入っており、この一対のローラ92の間にはスプリング96が配置されている。スプリング96は、常時、ローラ92を互いに離すように付勢しており、これにより、ローラ92は、くさび形空間81の両端の狭い方へと押し込まれ、非動作時(レバーLVが中立位置Nにあるとき)には、ブレーキ側外輪11の内周面11Cとブレーキ側カム18のカム面18Cとに挟持されている。このため、出力ギヤ21Dに逆入力トルクが掛かってブレーキ側カム18がブレーキ側外輪11に対し回ろうとしても、一対のローラ92のうちのいずれかが、くさび形空間81のより狭い側へと押し込まれるので回転することができない。すなわち、出力ギヤ21Dからの逆入力トルクを遮断している。
【0038】
図4に示すように、ローラ92は、ブレーキ側カム18の本体部18Aの厚さよりも少し長く、本体部18Aよりも入力側に一部突出して設けられている。詳しくは、ローラ92は、端部の丸まった形状を除いた純粋な円筒面が、軸方向において伝達部材17の全幅を含む程度に本体部18Aから突出している。ローラ92の出力側の端面および径方向(主軸21を中心とする径方向)の外側は、ブレーキ側外輪11に覆われている。
【0039】
図3に戻り、伝達部材17は、ローラ92と当接してローラ92をブレーキ側カム18およびブレーキ側外輪11から離脱させる(ブレーキ側カム18とブレーキ側外輪11による挟持を解除する)ことが可能であり、かつ、ブレーキ側カム18と係合してブレーキ側カム18にラチェット機構2からの入力トルクを伝達可能な部材である。伝達部材17は、薄い平板状の形状を有し、ブレーキ側カム18の本体部18Aに対し入力側に隣接し、本体部18Aに接触して設けられている。伝達部材17は、外周において、径方向外側に向けて開放した略矩形の切欠17Aを8つ有している。そして、伝達部材17の外周部のうち切欠17Aが形成されていない残りの部分は、円形状の外周面を有した大径部17Bとなっている。切欠17Aの大径部17Bに隣接する段差部17Cは、ローラ92と係合してブレーキ側カム18のロック解除を行うか、もしくは、第1突出部18Dと係合してブレーキ側カム18へ入力トルクを伝達する部分となっている。
【0040】
切欠17Aは、周方向の大きさがいずれも同じであり、周方向に等ピッチで設けられている。
図8および
図4に示すように、切欠17Aは、90度ごとに設けられた4つがローラ92を受け入れており、残りの4つが、ブレーキ側カム18の第1突出部18Dを受け入れている。なお、
図4においては、第1突出部18Dと切欠17Aの係合は、
図2のIV−IV線からずれた断面を変位図示している。
【0041】
本発明における、第1突出部18Dを受け入れて係合可能な第1開口部と、第1可動片(ローラ92)を受け入れて係合可能な第2開口部は、本実施形態においては、いずれも、切欠17Aによって実現されている。このように、第1開口部と第2開口部が、伝達部材17の外周、すなわち、主軸21の中心から最も遠い部分に設けられていることで、第1開口部と第1突出部が当接する位置の回転半径を大きくすることができる。そのため、第1開口部の縁(段差部17C)に掛かる力を小さくすることができ、伝達部材17の厚さを薄くすることが可能である。
【0042】
そして、第1開口部(第1突出部18Dが入っている切欠17A)と第2開口部(ローラ92が入っている切欠17A)は、本実施形態において周方向に交互に配置されている。このため、作動時に伝達部材17にバランス良く力が掛かり、伝達部材17の回転をスムーズにすることができる。また、第1開口部と第2開口部は、ともに、互いに同等な切欠17Aにより実現されていることで、ブレーキ側カム18に伝達部材17を組み合わせるときに、第1突出部18Dに係合させる切欠17Aを選択する必要がなく、誤組を防止することができる。
【0043】
非作動時において、ローラ92は、ブレーキ側外輪11の内周面11Cおよびブレーキ側カム18のカム面18Cと接触しているが、伝達部材17の段差部17Cからは僅かに離れている。段差部17Cとローラ92の距離G1は、第1突出部18Dを受け入れている切欠17Aの段差部17Cと第1突出部18Dの周方向の距離G2より小さい。
【0044】
図3に戻り、伝達部材17は、中心に、主軸21が通る貫通孔17Dが形成されている。また、伝達部材17は、切欠17Aよりも径方向内側において、貫通した係合穴17Eが形成されている。係合穴17Eは、周方向に等ピッチで配置されている。
【0045】
ラチェット側外輪16は、伝達部材17に対し軸方向の入力側に隣接して設けられ、伝達部材17と一体に回転可能な第1回転体の一例であり、板金によりカップ状に形成されている。ラチェット側外輪16は、円筒形状の外周部16Aと、この外周部16Aと連なる出力側の側壁16Bとを備えている。ラチェット側外輪16の内周面16Cは、円筒状の面となっている。側壁16Bには、ハーフブランキングにより出力側に向けて突出した第2突出部16Dを有する。第2突出部16Dは、係合穴17Eに対応した大きさおよび配置で設けられ、
図4に示すように、係合穴17Eに係合している。これによりラチェット側外輪16と伝達部材17とは一体に回転するようになっている。ラチェット側外輪16の中央には、円形の孔16Eが形成されており、孔16Eが主軸21の支持軸部21Aに嵌合することで、ラチェット側外輪16は、主軸21およびハウジング10に対して回転可能となっている。
【0046】
ローラ保持器15は、ローラ91をラチェット側外輪16の内周に沿って所定の位置に保持するための部材である。ローラ保持器15は、円形の孔15Aを有し、孔15Aが主軸21の支持軸部21Aに嵌合することで、主軸21に対する位置が決められている。ローラ保持器15の外周のうち、
図3の上半分には、ラチェット側外輪16の内周面16Cから、ローラ91の直径より少し大きな距離離れた、円弧形状のローラ保持部15Bが形成されている。ローラ保持部15Bは、2つ形成されており、ローラ保持部15Bの上側の末端には、径方向に外側に延びたローラ保持壁15Cが設けられ、下側の末端には、径方向外側に延びたバネ支持壁15Dが設けられている。また、ローラ保持器15には、中心から
図3における左右の斜め下方向に向けて延びる2つの姿勢規制壁15Eが形成されている。
【0047】
図7に示すように、ローラ保持部15Bとラチェット側外輪16の内周面16Cの間の空間のうち、ローラ保持壁15Cに隣接した領域に、ローラ91が配置されている。ローラ91は、ラチェット側外輪16と、後述するラチェット側カム13Cに係合・離脱することでレバー部材13からの入力トルクの伝達・遮断を行う部材である。ローラ91とバネ支持壁15Dの間には、スプリング97が配置されており、ローラ91は、スプリング97により、常時、ローラ保持壁15Cに向けて付勢されている。
【0048】
姿勢規制部材14は、
図3および
図5に示すように、ローラ保持器15の姿勢をハウジング10に対して一定姿勢に規制するための部材である。姿勢規制部材14は、径方向に延びる本体アーム14Aと、孔14Bと、バネ保持部14Cと、バネ支持部14Dとを備えてなる。孔14Bは、本体アーム14Aの中央に形成されている。バネ保持部14Cは、本体アーム14Aから、
図3における下方向に対し45度方向において出力側(ローラ保持器15側)に向けて延びて形成されている。また、バネ保持部14Cは、ローラ保持器15の姿勢規制壁15Eに係合しており、これにより、ローラ保持器15と姿勢規制部材14とは、主軸21の軸線周りの方向(回転方向)に関し互いにずれないようになっている。バネ支持部14Dは、本体アーム14Aの下の部分から出力側に向けて延びて形成されている。
【0049】
カバー部材12は、円筒形状の外周部12Aと、外周部12Aに連なる入力側の側壁12Bとを備えて構成されている。側壁12Bには、中心部から
図3の上に向かって広がる操作開口12Cが形成されている。また、側壁12Bの下半分の領域には、左右に円弧状に延びるバネ係止用開口12Dが形成されている。側壁12Bのうち、操作開口12Cの上側の縁の周囲は、出力側に凹んだ凹部12Eとなっている。凹部12Eを構成する側壁12Bの部分は、ローラ91の入力側の側面を覆っておりローラ91が入力側へ移動するのを規制している(
図4参照)。このように、カバー部材12にローラ91が入力側へ移動するのを規制させることで、他の部品を用いる場合に比較して、軸方向の厚みを抑制し、クラッチユニット1の小型化が実現されている。外周部12Aのうち、左右の2箇所(
図3では1つのみ図示)には、出力側へ向けて開放した切欠12Fが形成されている。
【0050】
カバー部材12は、外周部12Aがブレーキ側外輪11の外周部11Aの外側に嵌合し、ブレーキ側外輪11と溶接などにより一体にされている。そして、カバー部材12の各切欠12Fには、本体アーム14Aの先端部が係合しており、これにより、ハウジング10に対する姿勢規制部材14およびローラ保持器15の回転方向の姿勢が固定されている。すなわち、ローラ保持器15は、レバーLVの操作によってもハウジング10に対して回転することがない、静止した部材である。
【0051】
レバー部材13は、
図3および
図6に示すように、レバー取付部13Aと、ラチェット側カム13Cと、接続部13Eと、バネ支持部13Gとを有する。
【0052】
レバー取付部13Aは、ハウジング10の外側に配置されている。レバー取付部13Aは、
図3において中心から左右に延び、レバーLVが取り付けられる部分である。レバー取付部13Aの中心には、円形の孔13Bが形成され、孔13Bが支持軸部21Aに嵌合することで、レバー取付部13Aは、ハウジング10に対して揺動可能となっている。
レバー取付部13Aは、ハウジング10の外周、すなわち、カバー部材12の外周部12Aよりも径方向外側まで延びている。そのため、レバー取付部13Aの先端は、揺動中心からの距離が長く、レバー取付部13AにレバーLVを取り付けたときに、レバーLVからレバー取付部13Aに回転トルクを伝えやすい。これにより、レバーLVの操作時にレバー取付部13AからレバーLVに掛かる反力が小さいので、レバーLVを樹脂で構成したときにもレバーLVの耐久性を向上させることができる。
【0053】
ラチェット側カム13Cは、ハウジング10の内部に配置され、ラチェット側外輪16の内周面16Cと非平行な外周面としてフラットなカム面13Dを
図3における上側の2箇所に有している。カム面13Dは、ローラ保持壁15Cの位置におよそ対応して配置されている。ラチェット側カム13Cは、第2回転体の一例であり、レバー部材13の一部として構成されていることで、レバー部材13と一体に揺動可能である。
【0054】
接続部13Eは、カバー部材12の操作開口12Cを通じてハウジング10の内外を貫通し、ラチェット側カム13Cとレバー取付部13Aとを接続する部材である。
【0055】
バネ支持部13Gは、レバー部材13の揺動軸線(主軸21の中心軸線と同じ)を挟んで接続部13Eとは反対側に配置され、出力側に延びてカバー部材12のバネ係止用開口12Dを通じてハウジング10の中に入り込んでいる。バネ支持部13Gの、ハウジング10に入った部分には、左右外側の縁にバネ係止溝13Fが形成されている。
【0056】
レバー部材13は、支持軸部21Aに組み付けられた上、支持軸部21Aにロック部材22を固定することで支持軸部21Aから離脱しないようになっている。ロック部材22は、図においては簡略化して示しているが、例えば、支持軸部22Aに螺合するナットなどを採用することができる。
【0057】
リターンスプリング95は、バネ用の線材を屈曲させた部材であり、下端が切れた円形に延びる円形部95Aと、円形部95Aの両端部から径方向外側に延びる係合端部95Bとを有する。リターンスプリング95は、ハウジング10内に収納されており、その径方向外側は、完全にハウジング10に覆われている。
円形部95Aは、
図7に示すように、レバー部材13の接続部13Eの外周面と姿勢規制部材14のバネ保持部14Cの外周面に保持されている。係合端部95Bは、姿勢規制部材14のバネ支持部14Dと、レバー部材13のバネ係止溝13Fに係合している。バネ支持部14Dは、レバー部材13の揺動によっても静止したままである一方、バネ係止溝13Fはレバー部材13の揺動によって移動するので、レバー部材13を中立位置Nから揺動させたときには、リターンスプリング95からバネ係止溝13Fに掛かる力が、レバー部材13を
図7に示すような中立位置Nに戻そうとする力として働くようになっている。
【0058】
以上のように構成されたクラッチユニット1の動作について説明する。
図9(a)に示す中立位置Nにおいて、部分拡大図で示したように、ローラ91は、ラチェット側外輪16の内周面16Cとレバー部材13のカム面13Dの間に位置するが、これらの間には僅かな隙間があり、これらに挟持されてはいない。ローラ91は、スプリング97によりローラ保持壁15Cに押し付けられている。
図9(b)に示すように、レバーLVを下に揺動させていくと、カム面13Dが時計回りに回動してローラ91に接し、内周面16Cとカム面13Dの間でローラ91が挟持される。これにより、ラチェット側外輪16とレバー部材13とは一体に回転できるようになる。
そのため、
図9(c)に示すように、さらにレバー部材13を時計回りに回していけば、ラチェット側外輪16とレバー部材13とが一体になったまま、時計回りに回動する。すなわち、レバー部材13を回動させた入力トルクがラチェット側外輪16に伝達される。
【0059】
レバーLVを、中立位置Nより下の位置から中立位置Nに戻すときには、
図9(c)または(b)の状態からレバー部材13が反時計回りに回るので、ローラ91からカム面13Dが反時計回りに逃げていき、ローラ91はカム面13Dと内周面16Cには挟持されないので、ラチェット側外輪16が静止したまま、レバー部材13が中立位置Nに向けて回動する。すなわち、レバー部材13を戻すときの入力トルクはラチェット側外輪16には伝達されず、遮断される。なお、レバーLVは、リターンスプリング95の付勢力により中立位置Nに向けて操作するのが補助されるとともに、中立位置Nに維持される。
【0060】
レバーLVを中立位置Nから上に上げ、また、上の位置から中立位置Nに戻すときの動作は、上述の下への揺動の場合と同様であるので説明を省略する。
【0061】
このようにして、レバーLVの操作によりラチェット側外輪16が回動するときのブレーキ機構3の動作について説明する。
図10(a)に示すように、ラチェット側外輪16が回動する前において、ローラ92は、ブレーキ側外輪11の内周面11Cと、カム面18Cとの間に挟持されている。これにより、出力ギヤ21Dからの逆入力トルクは遮断されている。このとき、ローラ92は、伝達部材17の段差部17Cからは僅かに離間している。
ラチェット側外輪16が回動すると、伝達部材17もラチェット側外輪16と一体に回転する。
図10(b)に示すように、伝達部材17が時計回りに少し回動すると、段差部17Cとローラ92が接触し、ローラ92を時計回りに押すことで内周面11Cとカム面18Cによるローラ92の挟持を解除し、ブレーキを解除する。その後、
図10(c)に示すように、そのままレバーLVを下に下げれば、伝達部材17が時計回りにさらに回動して、第1突出部18Dと、その第1突出部18Dが入っている切欠17Aの段差部17Cとが周方向に当接する。この段差部17Cと第1突出部18Dの係合により、レバーLVを下に下げるときの入力トルクが、伝達部材17からブレーキ側カム18に伝達される。
【0062】
ブレーキ側カム18が時計回りに回動すると、主軸21は、ブレーキ側カム18と一体になっているので、主軸21も時計回りに回動する。なお、レバーLVを下に下げるときには、出力ギヤ21Dに車両用シートSを下げようとする方向の力が掛かっていれば、ブレーキの解除後、その力によってもブレーキ側カム18が回動される。レバーLVを下げるのを止めて、中立位置Nに戻すと、ローラ92が内周面11Cとカム面18Cの間に挟持されたときにブレーキ側カム18が止まる。
【0063】
レバーLVを中立位置Nから上に揺動させるときは、上述の下に揺動させるときの略逆の動作により出力ギヤ21Dを回動させることができる。
【0064】
以上のような動作を実現するブレーキ機構3およびクラッチユニット1は、リターンスプリング95が、その少なくとも径方向外側がハウジング10により覆われているので、リターンスプリング95には、溶接時のスパッタや埃などのゴミが付着しにくい。また、乗員が紐状の持ち物を持っていたとしても、リターンスプリング95の径方向外側がハウジング10により覆われていることで、この紐状の部材がリターンスプリング95に絡まることはほとんど無い。そのため、これらのゴミがリターンスプリング95の動作を妨害することが抑制され、レバーLVを中立位置Nへ戻す動作を安定して実現することができる。なお、
図2(a)に示すように、リターンスプリング95は、操作開口12Cから一部が露出しているが、操作開口12Cは、カバー部材12の側壁12Bのうち、外側から見て凹んだ凹部12Eの部分に形成されているので、操作開口12Cからハウジング内にゴミが入ってリターンスプリング95に付着したり、リターンスプリング95に紐状の物が絡まることはほとんど無い。
【0065】
そして、リターンスプリング95の端部は、レバー部材13の一部が延びてハウジング10内に入り込んだバネ支持部13Gに支持されているので、簡素な構成でリターンスプリング95の端部におけるゴミの付着を抑制することができる。また、リターンスプリング95を覆う部材は、ローラ91,92を収容するハウジング10であるので、ハウジング10とは別の部材を用いる場合に比較して、部品点数を削減し、クラッチユニット1の小型化および軽量化を図ることができる。
【0066】
さらに、ハウジング10は、カバー部材12の外周部12Aがブレーキ側外輪11の外周部11Aに嵌合して構成されているので、ブレーキ側外輪11の外周部11Aは、カバー部材12の外周部12Aにより補強される。このため、ブレーキ側外輪11が径方向外側へ変形しにくくなり、ブレーキ力の向上を図ることができる。
【0067】
そして、レバー部材13は、レバーLVを取り付けるための部材というだけでなく、ラチェット側カム13Cとしての機能、接続部13Eでリターンスプリング95を保持する機能、バネ支持部13Gでリターンスプリング95の両端部を支持する機能をも果たすので、部品点数を削減してクラッチユニット1のコンパクト化、軽量化を図ることができる。
【0068】
また、ブレーキ機構3について見ると、伝達部材17とローラ92との係合は、ローラ92の入力側の端部がブレーキ側カム18から少し突出することで実現され、伝達部材17とブレーキ側カム18の係合は、ブレーキ側カム18の本体部18Aから入力側へ向けて第1突出部18Dが形成されていることで実現されている。このため、伝達部材17は、平板状に形成することができ、軸方向の大きさ(厚み)が小さく、軽量化を図ることができる。また、伝達部材17は平板状であることから、板材のブランキングのみで製造することができるので、低コストで製造することが可能である。
【0069】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0070】
例えば、第1可動片および第2可動片は、ローラである必要はなく、外輪の内周面およびカム面に係合・離脱可能な小片であれば形状は限定されず、球体やくさびであってもよい。
前記実施形態では、第1回転体としてラチェット側外輪を例示し、第2回転体としてラチェット側カムを例示したが、外輪の内周面がカム形状で、内輪の外周面が円筒形状であっても構わない。
【0071】
前記実施形態においてハウジング10は、リターンスプリング95を入力側に少し露出させていたが、レバー部材13を2部品で構成して操作開口12Cの大きさを小さくしたり、操作開口12Cを覆う別の部品を設けるなどして、リターンスプリング95の入力側を完全に覆うように構成してもよい。このようにすれば、リターンスプリング95にゴミが付着するのがさらに抑制される。
【0072】
前記実施形態において、ブレーキ側外輪11がハウジング10を兼ねていたが、これに限らずブレーキ側外輪とは別部品のハウジングを用いてもよい。
【0073】
前記実施形態において、カバー部材12がローラ91の入力側への移動を規制していたが、別の部品によりこの規制を実現してもよい。
【0074】
前記実施形態において、レバー取付部13Aは、ハウジング10の外周よりも径方向外側まで延びていたが、径方向外側まで延びていなくても構わない。また、操作部材は、必ずしもレバー形状でなくてもよい。
【0075】
伝達部材に設けられる第1開口部および第2開口部は、前記実施形態のように外周に設けられる切欠である必要はなく、より内周側に設けられる貫通孔であってもよい。そして、第1開口部と第2開口部は、異なる形状とされていても構わない。
【0076】
また、係合穴17Eは、第2突出部16Dが係合できれば、貫通孔である必要はなく、有底の穴であってもよい。そして、その配置も、第1開口部および第2開口部よりも径方向外側の位置であってもよい。
【0077】
また、ブレーキ機構およびクラッチユニットは、車両用シートSのハイトアジャスト機構に用いられるだけでなく、他の装置に任意に適用することができる。