特許第5894818号(P5894818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5894818
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】打込み装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 15/14 20060101AFI20160317BHJP
【FI】
   G01M15/14
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-47329(P2012-47329)
(22)【出願日】2012年3月2日
(65)【公開番号】特開2013-181924(P2013-181924A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(73)【特許権者】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502291609
【氏名又は名称】テクノウェーブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】牛田 博久
(72)【発明者】
【氏名】篠原 健一
(72)【発明者】
【氏名】柳田 英輝
(72)【発明者】
【氏名】大野 勝雄
(72)【発明者】
【氏名】金子 俊夫
【審査官】 萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−077323(JP,A)
【文献】 特開2011−021981(JP,A)
【文献】 特開2004−177271(JP,A)
【文献】 実開昭58−055971(JP,U)
【文献】 特開2000−249620(JP,A)
【文献】 特開2009−109481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 15/00 −15/14
B64F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンブレードと衝突させる衝突体をファンブレードの回転領域に打ち込む打込み装置であって、
先端に前記衝突体が取り付けられるシャフトと、
前記シャフトを後端から先端に向かう方向に付勢するバネと、
前記バネの付勢力に逆らって後端側に押し込まれた前記シャフトを吸着保持する電磁石と、
前記電磁石に給電する給電部と
を備えることを特徴とする打込み装置。
【請求項2】
前記バネの付勢力に逆らって後端側に押し込まれた前記シャフトに当接することによって当該シャフトの移動を規制するストッパを備えることを特徴とする請求項1記載の打込み装置。
【請求項3】
前記電磁石を基台に対して傾動自在に接続するボールジョイントを備えることを特徴とする請求項1または2記載の打込み装置。
【請求項4】
前記電磁石を下方から支持する台座を備えることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の打込み装置。
【請求項5】
前記電磁石を前記シャフトに向けて押し込む押込み手段を備えることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の打込み装置。
【請求項6】
前記シャフトの後端に固定されると共に前記電磁石に当接状態で吸着される吸着板を備え、当該電磁石の吸着面の外形形状よりも前記吸着板の表面が広いことを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の打込み装置。
【請求項7】
前記衝突体を保持すると共に前記シャフトの先端に着脱自在な保持部を備えることを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の打込み装置。
【請求項8】
前記保持部は、少なくとも1つが前記衝突体の内部に位置すると共に前記シャフトの軸方向に配列される複数の鍔部を備えることを特徴とする請求項に記載の打込み装置。
【請求項9】
前記バネは、前記シャフトの周面に沿って巻回される第1コイルバネと当該第1コイルバネの外側にて巻回される第2コイルバネとを有する二重コイルバネであることを特徴とする請求項1〜8いずれかに記載の打込み装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打込み装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、航空用ジェットエンジンに対しては、鳥等を吸い込んだ場合におけるファンブレードの耐衝撃性を評価及び実証するための試験が行われている。このような試験では、例えば、鳥等を模擬したゼラチンをファンブレードに衝突させる。
特許文献1及び特許文献2には、圧縮空気を用いてゼラチン等の衝突体を投射物や飛翔体として打ち出す射出試験装置が開示されている。また、非特許文献1には、火薬の爆発による剪断力で拘束体を破壊することで瞬時にバネの拘束を解き、当該バネの付勢力によってゼラチン等の衝突体を打込む装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−77323号公報
【特許文献2】特開2011−21981号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Oller, T. L., Fiber Composite Fan Blade Impact Improvement Program., Final Report, GENERAL ELECTRIC COMPANY, National Aeronautics and Space Administration, DEC 1976, NASA-CR-135078, P.24
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2では、回転しているファンブレードにゼラチンを衝突させている。高速で回転しているファンブレードにゼラチンを正確に衝突させるためには、ファンブレードの回転とゼラチンの射出のタイミングを高精度で制御する必要がある。ところが、特許文献1に開示された発明では、圧縮空気の膨張速度が温度環境に応じてばらついたりすることから毎回同様の射出環境を再現することは難しく、打込みタイミングを制御することは非常に困難である。
【0006】
一方、非特許文献1では、火薬の爆発タイミングによってゼラチンの打込みタイミングを制御するため、打込みタイミングを高精度に制御することが可能である。しかしながら、火薬を使用することから、使用環境の制約が多く取り扱いに十分な注意が必要となる。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、衝突体をファンブレードの回転領域に打込む打込み装置において、取り扱いが容易でありかつ打込みタイミングを高精度に制御可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0009】
第1の発明は、ファンブレードと衝突させる衝突体をファンブレードの回転領域に打ち込む打込み装置であって、先端に上記衝突体が取り付けられるシャフトと、上記シャフトを後端から先端に向かう方向に付勢するバネと、上記バネの付勢力に逆らって後端側に押し込まれた上記シャフトを吸着保持する電磁石と、上記電磁石に給電する給電部とを備えるという構成を採用する。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記バネの付勢力に逆らって後端側に押し込まれた上記シャフトに当接することによって当該シャフトの移動を規制するストッパを備えるという構成を採用する。
【0011】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記電磁石を基台に対して傾動自在に接続するボールジョイントを備えるという構成を採用する。
【0012】
第4の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、上記電磁石を下方から支持する台座を備えるという構成を採用する。
【0013】
第5の発明は、上記第1〜第4いずれかの発明において、上記電磁石を上記シャフトに向けて押し込む押込み手段を備えるという構成を採用する。
【0014】
第6の発明は、上記第1〜第5いずれかの発明において、上記シャフトの後端に固定されると共に上記電磁石に当接状態で吸着される吸着板を備え、当該電磁石の吸着面の外形形状よりも上記吸着板の表面が広いという構成を採用する。
【0015】
第7の発明は、上記第1〜第6いずれかの発明において、上記衝突体を保持すると共に上記シャフトの先端に着脱自在な保持部を備えるという構成を採用する。
【0016】
第8の発明は、上記第1〜第7いずれかの発明において、上記保持部が、少なくとも1つが上記衝突体の内部に位置すると共に上記シャフトの軸方向に配列される複数の鍔部を備えるという構成を採用する。
【0017】
第9の発明は、上記第1〜第8いずれかの発明において、上記バネが、上記シャフトの周面に沿って巻回される第1コイルバネと当該第1コイルバネの外側にて巻回される第2コイルバネとを有する二重コイルバネであるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、先端に衝突体が取り付けられるシャフトが電磁石によって吸着保持され、給電部からの電磁石の給電を停止した場合にバネの付勢力によってシャフトが先端方向に移動される。このため、本発明によれば、電磁石への給電をカットするタイミングで衝突体の打込みタイミングを制御することができる。電磁石への給電の停止は、温度等の周囲環境に依存することなく瞬時に行うことができる。したがって、本発明によれば、高精度で打込みタイミングを制御することが可能となる。
また、本発明によれば、火薬を用いることなく衝突体を打込むことができる。このため、火薬を用いる場合と比較すると、遥かに取り扱いが容易となり、使用環境の制限が少なくなる。
このように、本発明によれば、衝突体をファンブレードの回転領域に打込む打込み装置において、取り扱いが容易でありかつ打込みタイミングを高精度に制御することが可能となる。
さらに、本発明は、電磁石と給電部という極めてシンプルな構造でシャフトを保持できるため、機械式の固定方法を採用する場合と比較して稼動部の摩耗が生じにくく、長期に亘る使用においても高精度で打込みタイミングを制御でき信頼性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る打込み装置の概略構成図であり、(a)が平面断面図であり、(b)が側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る打込み装置が備える保持具の拡大図であり、(a)が背面図、(b)が側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る打込み装置が備えるストッパを含む拡大側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る打込み装置においてシャフトを押し込む様子を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明に係る打込み装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。なお、以下の説明では、ファンブレードを1枚のみ回転させ、このファンブレードの回転領域のなかでファンブレードが存在しない領域にゼラチン(衝突体)を打込んでファンブレードにゼラチンを衝突させる耐衝撃性実験に用いられる打込み装置について説明する。
【0021】
図1は、本実施形態の打込み装置1の概略構成図であり、(a)が平面断面図であり、(b)が側面図である。この本実施形態の打込み装置1は、図1に示すように、シャフト2と、ガイドローラ3と、二重バネ4(バネ)と、保持具5(保持部)と、吸着板6と、電磁石7と、給電部8と、ボールジョイント9、台座10、押上げボルト11(押込み手段)、ストッパ12、エアシリンダ13とを備えている。
【0022】
シャフト2は、先端にゼラチンGが取り付けられる丸棒部材である。このシャフト2は、図1に示すゼラチンGの打込み方向X(シャフト2の後端から先端に向かう方向)に軸方向を一致させるように姿勢設定されており、ガイドローラ3によって打込み方向Xに移動可能とされている。このシャフト2の後端側には、シャフト2の打込み方向Xへの移動を止めるためのフランジ2aが設けられている。なお、打込み装置1のベース部材である基台20には、シャフト2が挿通される貫通孔を有する板状の受部20aが設けられており、フランジ2aが受部20aに衝突することによって打込み方向Xへ移動するシャフト2が停止される。このフランジ2aの形成位置は、シャフト2が最大限打込み方向Xに移動した場合に、保持具5に保持されたゼラチンGがファンブレードの回転領域に入り込み、かつ、保持具5がファンブレードの回転領域の手前で停止する位置に設定されている。
【0023】
ガイドローラ3は、このシャフト2を打込み方向Xに移動可能に支持するフリーローラである。このガイドローラ3は、当該ガイドローラ3を軸支する軸部3aを介して、基台20に支持されている。また、本実施形態では、ガイドローラ3として、図1(a)に示すように、シャフト2の先端側に配置される先端側ガイドローラ3bと、シャフト2の後端側に配置される後端側ガイドローラ3cとが設けられている。なお、図1(a)においては、シャフト2を下側から支える先端側ガイドローラ3bと後端側ガイドローラ3cとが各々1つずつ図示されている。これに加え、本実施形態においては、シャフト2に上側から当接する不図示の先端側ガイドローラと後端側ガイドローラとが設けられており、シャフト2が一対の先端側ガイドローラと一対の後端側ガイドローラとで上下方向から狭持されている。
【0024】
二重バネ4は、シャフト2の周面に沿って巻回される第1コイルバネ4aと、当該第1コイルバネ4aの外側にて巻回される第2コイルバネ4bとから構成される二重コイルバネである。これらの第1コイルバネ4aと第2コイルバネ4bとは、先端側ガイドローラ3bと後端側ガイドローラ3cとの間に配置されており、先端部がシャフト2に固定され、後端部が基台20に固定されている。このような二重バネ4は、圧縮されることによりシャフト2を打込み方向Xに向けて付勢する。なお、図1(a)に示すように、基台20には二重バネ4を囲うケース21が設置されている。
【0025】
保持具5は、シャフト2の先端に固定され、ゼラチンGを保持するものである。この保持具5は、シャフト2の先端に螺合されており、シャフト2の先端に対して着脱自在とされている。図2は、保持具5の拡大図であり、(a)が背面図、(b)が側面図である。この図に示すように、保持具5は、打込み方向X(シャフト2の軸方向)に配列される2つの鍔部5a,5bを備えている。各鍔部5a,5bは、円板状に形状設定されており、打込み方向Xから見て中心が一致するように配置されている。これらの鍔部5a,5bは、ゼラチンGの内部に配置され、打込み時にゼラチンGが保持具5から抜けることを抑止する。なお、シャフト2側に配置される鍔部5aは、鍔部5bよりも大径とされており、打込み方向Xに貫通する複数の貫通孔5cを備えている。これらの貫通孔5cは、液状のゼラチンに保持具5を浸漬してゼラチンを固化させる場合に発生する気泡を逃がすためのものである。
【0026】
図1に戻り、吸着板6は、シャフト2の後端に固定され、電磁石7によって当接状態で吸着されるものである。この吸着板6は、例えば、鉄鋼材(SS400)によって形成されている。また、吸着板6は、電磁石7側の表面6aが電磁石7の吸着面7aよりも広い面積を有しており、電磁石7と吸着板6との位置関係が多少ずれた場合であっても確実に電磁石7と当接できるように形状設定されている。
【0027】
電磁石7は、励磁された場合に吸着板6を吸着保持するものであり、円柱状に形状設定されている。この電磁石7は、二重バネ4が伸張している状態(図1に示す状態)で、吸着板6に対して打込み方向Xの後方に離間して配置されている。吸着板6と電磁石7との離間距離は、二重バネ4が圧縮された場合に吸着板6が電磁石7と当接する距離に設定されている。また、電磁石7のシャフト2側の面は、吸着板6に当接して当該吸着板6を吸着する吸着面7aとされており、上述のように吸着板6の表面6aよりも面積が広く設定されている。このような電磁石7は、給電部8と電気的に接続されており、給電部8から給電されることによって励磁される。
【0028】
給電部8は、電磁石7に給電を行うものである。この給電部8は、例えば、作業者によって操作されるトリガボタンと接続されており、トリガボタンが押圧された場合に電磁石7への給電を停止する。
【0029】
ボールジョイント9は、電磁石7を基台20に対して傾動自在に接続するものである。このボールジョイント9は、打込み方向Xから見て電磁石7の中央部に固定されており、当該ボールジョイント9が固定される中央部を支点として電磁石7を傾動可能としている。なお、ボールジョイント9は、例えば所定の隙間を介して基台20と接続されており、当該隙間を調節することで基台20に対して僅かに位置調節が可能なように取り付けられている。
【0030】
台座10は、電磁石7を下方から支持するブロック状の部材である。この台座10の上面は、電磁石7の周面と同様の曲率で湾曲されており、電磁石7の周面が当接されている。この台座10は、電磁石7と吸着板6とが当接される場合や吸着板6から電磁石7が離間する場合に、電磁石7が大きく移動することを防止する。なお、台座10も、ボールジョイント9と同様に、例えば所定の隙間を介して基台20と接続されており、当該隙間を調節することで基台20に対して僅かに位置調節が可能なように取り付けられている。
【0031】
押上げボルト11は、電磁石7の移動を規制するものであり、電磁石7の背面側に複数設置されている。これらの押上げボルト11は、先端が電磁石7側に突出するようにして基台20に対して螺合されており、回転させることによって打込み方向Xに移動自在とされている。このような押上げボルト11を回転させることによって打込み方向Xに移動させ、押上げボルト11の先端を電磁石7の背面に押し当てて電磁石7を押し込むことにより電磁石7の移動が規制される。
【0032】
ストッパ12は、二重バネ4を圧縮させながら(すなわち二重バネ4の付勢力に逆らって)後端側に押し込まれたシャフト2の移動を規制するものである。図3は、ストッパ12を含む拡大図であり、図1(b)と反対方向から見た側面図である。このストッパ12は、シャフト側の側方が開放された略U字状に形状設定されている。このようなストッパ12は、図3に示すように、後端側に押し込まれたシャフト2のフランジ2aと基台20に設けられた受部20aとの間に配置され、一端が受部20aに当接すると共に他端がフランジ2aに当接した状態でシャフト2の移動を規制する。なお、ストッパ12の一端側と他端側とには、鉛直方向に向く軸を中心として回転する複数のコロ12aが設けられ、ストッパ12とフランジ2aあるいは受部20aとの間における摩擦力の低減が図られている。このようなストッパ12をシャフト2のフランジ2aと基台20に設けられた受部20aとの間に挟み込むことにより、電磁石7が励磁されていない場合であってもシャフト2を後端側に押し込んだ状態(二重バネ4を圧縮させた状態)が維持される。
【0033】
図1に戻り、エアシリンダ13は、ストッパ12と接続されており、当該ストッパ12を打込み方向Xと直交する水平方向に移動させるものである。このエアシリンダ13は、ストッパ12の側方に配置されており、フランジ2aと受部20aとの間の位置(シャフト移動規制位置)と、フランジ2aと受部20aとの間から外れた位置(退避位置)との間においてストッパ12を移動させる。
【0034】
次に、このように構成された本実施形態の打込み装置1の動作について説明する。なお、以下の動作説明は、ゼラチンGを保持する保持具5がシャフト2の先端から取り外され、かつ電磁石7が励磁されていない状態からの説明を行う。
【0035】
まず、図4に示すように、ケース21に対して油圧シリンダ100を固定し、この油圧シリンダ100を用いてシャフト2を後端側に押し込むことによって二重バネ4を圧縮させる。なお、ここでは、油圧シリンダ100により、吸着板6が電磁石7と当接するかその近傍の位置となるまでシャフト2を押し込む。
【0036】
このようにしてシャフト2が押し込んだ後に、エアシリンダ13を作動させ、フランジ2aと受部20aとの間にストッパ12を差し入れることでストッパ12を上記シャフト移動規制位置に配置する。そして、油圧シリンダ100の油圧を減少させた後、油圧シリンダ100をケース21から取り外す。油圧シリンダ100をケース21から取り外すと、シャフト2が二重バネ4の付勢力によって打込み方向Xに移動しようとするが、フランジ2aと受部20aとの間に配置されたストッパ12によってシャフト2の移動が規制される。このため、油圧シリンダ100をケース21から取り外しても二重バネ4が圧縮された状態が維持される。
【0037】
続いて、吸着板6の表面6aと電磁石7の吸着面7aとの隙間調節を行う。具体的には、一定の厚みを有するシムを吸着板6と電磁石7との間に配置し、吸着板6の表面6aと電磁石7の吸着面7aとがシムの表裏面に正確に合わさるように電磁石7の位置を調節する。なお、電磁石7の位置を調節のために移動させた場合には、その移動に合わせて台座10も移動させる。このようなシムを用いることで、吸着板6の表面6aと電磁石7の吸着面7aとの隙間距離は常にシムの厚みに合わされることになり、吸着板6の表面6aと電磁石7の吸着面7aとの隙間距離を毎回同じにかつ均一に調節することができる。
【0038】
続いて、押上げボルト11を回転させて打込み方向Xに移動させ、当該押上げボルト11で電磁石7を押し込むことによって電磁石7が移動しないように固定する。その後、吸着板6と電磁石7との間に配置されたシムを取り除く。
【0039】
続いて、ゼラチンGを保持する保持具5をシャフト2の先端に取り付け、その後、給電部8から電磁石7へ給電する。このように電磁石7に給電されると、電磁石7が励磁されて吸着板6を吸着保持する。つまり、シャフト2が吸着板6を介して電磁石7により吸着保持される。ここで、吸着板6の表面6aと電磁石7の吸着面7aとの隙間が常に一定に保たれているため、電磁石7を励磁した場合の吸着板6及びシャフト2の移動量が常に同じとなり、吸着板6及びシャフト2の移動時における挙動が常に同じとなる。したがって、吸着時における電磁石7と吸着板6(すなわちシャフト2)との位置関係を常に同一に再現することができる。
【0040】
続いて、再びエアシリンダ13を作動させ、フランジ2aと受部20aとの間からストッパ12を引き出すことでストッパ12を上記退避位置に戻す。なお、電磁石7に吸着板6が吸着される際に吸着板6及びシャフト2が、吸着板6の表面6aと電磁石7の吸着面7aとのに設けられた隙間分だけ移動されている。このため、フランジ2aと受部20aとの間の隙間は僅かに拡がっており、ストッパ12を容易に引き出すことができる。
【0041】
続いて、給電部8に接続されたトリガボタンを押圧し、電磁石7への給電を停止する。電磁石7への給電はトリガボタンを押圧した瞬間に停止され、この結果、電磁石7の吸着力も瞬時に消失する。このように電磁石7の吸着力が消失すると、二重バネ4の付勢力によりシャフト2がガイドローラ3にガイドされながら打込み方向Xに移動され、ゼラチンGがファンブレードの回転領域に打込まれる。
【0042】
以上のような本実施形態の打込み装置1によれば、先端にゼラチンGが取り付けられるシャフト2が電磁石7によって吸着保持され、給電部8からの電磁石7の給電を停止した瞬間に二重バネ4の付勢力によってシャフト2が打込み方向X(先端方向)に移動される。このため、本実施形態の打込み装置1によれば、電磁石7への給電をカットするタイミングでゼラチンGの打込みタイミングを制御することができる。電磁石7への給電の停止は、温度等の周囲環境に依存することなく瞬時に行うことができる。したがって、本実施形態の打込み装置1によれば、高精度で打込みタイミングを制御することが可能となる。
また、本実施形態の打込み装置1によれば、火薬を用いることなくゼラチンGを打込むことができる。このため、火薬を用いる場合と比較すると、遥かに取り扱いが容易となり、使用環境の制限が少なくなる。
このように、本実施形態の打込み装置1によれば、ゼラチンGをファンブレードの回転領域に打込む打込み装置において、取り扱いが容易でありかつ打込みタイミングを高精度に制御することが可能となる。
さらに、本実施形態の打込み装置1は、電磁石7と給電部8という極めてシンプルな構造でシャフト2を保持できるため、機械式の固定方法を採用する場合と比較して稼動部の摩耗が生じにくく、長期に亘る使用においても高精度で打込みタイミングを制御でき信頼性が高い。
【0043】
また、本実施形態の打込み装置1は、二重バネ4の付勢力に逆らって後端側に押し込まれたシャフト2に当接することによって当該シャフト2の移動を規制するストッパ12を備える。このため、電磁石7を常に励磁させなくとも二重バネ4が圧縮された状態を維持することができる。したがって、電磁石7の周辺に精密機器等が配置されている場合に、これらの精密機器等が強力な磁界に晒される時間を短くすることができ、強い磁界に晒されることによる精密機器の寿命を短縮する等の悪影響を抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態の打込み装置1は、電磁石7を基台20に対して傾動自在に接続するボールジョイント9を備える。このため、上述のように電磁石7のシャフト2(吸着板6)に対する位置を容易に調節することができる。よって、吸着前における電磁石7と吸着板6との間の隙間形状を毎回同一に再現することが容易となる。吸着前における電磁石7と吸着板6との間の隙間形状が毎回同一に再現されると、吸着時における電磁石7と吸着板6との位置関係が毎回同一に再現されることになる。吸着時における電磁石7と吸着板6との位置関係が毎回異なると、シャフト2が打込み方向Xに移動するときの挙動がばらつき、ごく僅かながらゼラチンGの打込みタイミングにばらつきが生じるおそれがあるが、本実施形態の打込み装置1によれば、吸着時における電磁石7と吸着板6との位置関係が毎回同一に再現されるため、打込みタイミングにごく僅かなばらつきが生じることも防止することができる。
【0045】
また、本実施形態の打込み装置1は、電磁石7を下方から支持する台座10を備える。このため、シャフト2が電磁石7から離間するときに電磁石7が移動することを抑制することができる。シャフト2が電磁石7から離間するときに電磁石7が移動すると、電磁石7の移動がシャフト2の移動に影響を与え、打込みタイミングにばらつきが生じるおそれがあるが、本実施形態の打込み装置1によれば、シャフト2が電磁石7から離間するときの電磁石7の移動が抑制されるため、打込みタイミングがばらつくことをより確実に防止することができる。
【0046】
また、本実施形態の打込み装置1は、電磁石7をシャフト2に向けて押し込む押上げボルト11を備える。このため、例えば、電磁石7の支持機構(本実施形態においてはボールジョイント9)における僅かな寸法誤差により電磁石7にがたつきがある場合であっても、押上げボルト11によって電磁石7をシャフト2に向けて押し込むことにより、上記がたつきをなくすことができる。
【0047】
また、本実施形態の打込み装置1は、シャフト2の後端に固定されると共に電磁石7に当接状態で吸着される吸着板6を備え、当該電磁石7の吸着面7aの外形形状よりも吸着板6の表面6aが広い。このため、予め存在する寸法誤差等によってシャフト2(吸着板6)と電磁石7との位置関係が狙った位置に対してずれることがあっても、確実にシャフト2(吸着板6)と電磁石7とを吸着させることができる。
【0048】
また、本実施形態の打込み装置1は、ゼラチンGを保持すると共にシャフト2の先端に着脱自在な保持具5を備える。このため、保持具5をシャフト2から取り外した状態で保持具5にゼラチンGを保持させ、その後、ゼラチンGを保持した保持具5をシャフト2に装着ことによって、容易にシャフト2の先端にゼラチンGを取り付けることができる。
【0049】
また、本実施形態の打込み装置1では、保持具5は、少なくとも1つがゼラチンGの内部に位置すると共にシャフト2の軸方向に配列される複数の鍔部5a,5bを備える。このため、電磁石7から離間したシャフト2が打込み方向X側に最大限移動して停止したときに、慣性力によって保持具5に保持されたゼラチンGが保持具5から外れることを防止することができる。
【0050】
また、本実施形態の打込み装置1では、二重バネ4は、シャフト2の周面に沿って巻回される第1コイルバネ4aと当該第1コイルバネ4aの外側にて巻回される第2コイルバネ4bとを有する。このため、一重のコイルバネを用いる場合と比較して、小さな圧縮量で大きな付勢力を得ることができる。したがって、一重のコイルバネを用いる場合よりも打込み装置1の全長を短くすることができる。
【0051】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0052】
例えば、上記実施形態においては、ストッパ12を備える構成について説明した。しかしながら、二重バネ4を圧縮させてからゼラチンGの打込みまでを短時間で行える場合には、必ずしもストッパ12を設ける必要はない。
【0053】
また、上記実施形態においては、ボールジョイント9、台座10及び押上げボルト11を用いて電磁石7とシャフト2(吸着板6)との位置関係を毎回同一に再現する構成について説明した。しかしながら、ボールジョイント9、台座10及び押上げボルト11がなくとも打込みタイミングがばらつかない場合には、ボールジョイント9、台座10及び押上げボルト11を設ける必要はない。また、押上げボルト11に換えてエアシリンダ等のアクチュエータを用いて電磁石7を押し込むようにしても良い。
【0054】
また、上記実施形態においては、保持具5がシャフト2の先端に着脱自在とされている。しかしながら、ゼラチンG以外の物体を衝突体として使用し、シャフト2から保持具5を取り外すことなく保持具5に保持させることが可能であるような場合には、保持具5をシャフト2と一体化させて保持具5がシャフト2から外れない構成とすることもできる。
【0055】
また、上記実施形態においては、ファンブレードの回転領域であってファンブレードが存在しない領域にゼラチンGを打込むことから、保持具5からゼラチンGが抜け落ちないように保持具5が鍔部5a,5bを備えるものとした。しかしながら、本発明の打込み装置1は、ファンブレードに対してゼラチンGを発射する発射装置として用いることもできる。このような場合には、慣性力によってゼラチンGが抜けやすい形状の保持具を用いる。
【0056】
また、上記実施形態においては二重バネ4を用いる構成を採用したが、圧縮量に対する付勢力が非常に大きいコイルバネを用いることができる場合や、打込み装置の全長が長くなっても構わない場合には、一重のコイルバネを用いることもできる。
【符号の説明】
【0057】
1……打込み装置、2……シャフト、3……ガイドローラ、4……二重バネ(バネ)、5……保持具(保持部)、5a,5b……鍔部、6……吸着板、6a……表面、7……電磁石、7a……吸着面、8……給電部、9……ボールジョイント、10……台座、11……押上げボルト(押込み手段)、12……ストッパ、13……エアシリンダ、20……基台、20a……受部、21……ケース、G……ゼラチン(衝突体)、X……打込み方向
図1
図2
図3
図4