(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
アルカリ金属酸化物が低濃度でドープされたシリカガラスを用いて作製した光ファイバは、伝送損失が低下することがこれまで多くの先人により示されてきたが(例えば、非特許文献1参照)、これを工業的に大量生産する技術は未完成である。既存の光ファイバの製造方法においては気相での加水分解反応、もしくは酸素による熱酸化反応を用いるため、例えば四塩化ケイ素(SiCl
4)、四塩化ゲルマニウム(GeCl
4)など、ガス状の原料を使用する必要がある。
【0003】
しかしながら、いわゆる硬いカチオンであるアルカリ金属イオンは、非常に強いイオン結合を形成するため、それらの化合物(塩)は常温かつ常圧付近では固体となることがほとんどである。従って、ガスとなる化合物をほとんど形成しないため、光ファイバの製造には適用が困難だった。そのため、アルカリ金属酸化物がドープされた光ファイバを商用生産するためには、従来この分野で確立された方法とは異なる製造方法を開発しなければならない。
【0004】
このような課題に対して、これまで様々な取り組みがなされてきた。
アルカリ金属酸化物を含む多成分ガラスファイバの製造法として、硅砂やアルカリ金属炭酸塩などの、粉体状の原料をバッチ溶融した後急冷する方法が知られている(例えば、非特許文献2参照)。
また、アルカリ金属化合物が易水溶性であることを利用して、アルカリ金属化合物の水溶液を霧状にして原料ガス中に混合して酸水素火炎に導入し、他の原料と同時に加水分解してガラスを形成する方法が試された。また、ある種のアルカリ金属化合物と他の金属化合物とを反応させて得られる複合塩は、元のアルカリ金属化合物よりも蒸気圧が高くなることが知られており、この複合塩を原料として利用する試みもなされた。
【0005】
更に最近では、アルカリ金属ハロゲン化物を強加熱してアルカリ金属蒸気とし、光ファイバ前駆体ガラスをこれに曝してドープする方法が試された(例えば、特許文献1,2参照)。さらに、アルカリ金属ハロゲン化物を加熱して蒸気とした後に直ちに冷却して微粒子化し、これを適当なガス流で運搬することでエアロゾルとして原料供給する方法も試された。
なお、非特許文献2には、シリカガラス中のK
2Oの濃度と屈折率の関係等について開示されている。また、非特許文献3には、シリカガラス中のClの濃度と屈折率の関係等について開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のガラス原料粉を溶融する方法で作製する場合、清澄や脱泡のために、高温で長時間の処理が必要になり製造性が悪い。また、炉材や原料に含まれる不純物を除去し、低損失な光ファイバを製造する技術は確立していない。
アルカリ金属化合物の水溶液を用いる方法は、本来光ファイバの製造においては損失増加の原因となる水分の混入を避けるべきである、という観点とは逆行する製造方法である。また、上述の蒸気圧の大きな複合塩を形成させて蒸気として導入する方法では、蒸気圧の上昇の程度が小さく効果は非常に限定的で、しかも本来光ファイバの機能に不必要な化学種を加えることになるため、伝送損失の上昇をもたらすことが懸念される。
更に、アルカリ金属化合物を強加熱してアルカリ金属蒸気を得る方法は、その還元反応の反応機構が不明確であり、現実性に乏しい。エアロゾルを用いる方法では、原料にガスを用いる従来の方法に比べて、原料供給量の制御性にやや難がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、光ファイバや光学部品等の光学用途に適用可能なほど高純度で、かつアルカリ金属イオンの添加物濃度を制御して導入することが可能なガラス母材の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、実質的にアルカリ金属イオンを含まないシリカを主成分とするシリカガラスにアルカリ金属イオンが導入されたガラス母材の製造方法であって、
アルカリ金属化合物を、その融点以上に加熱して融液とした後、前記融液から揮発性の高い不純物を揮発させて前記アルカリ金属化合物を精製する前工程と、前記シリカガラスに
前記精製したアルカリ金属化合物の融液を接触させることにより、前記シリカガラスがその形状及びガラス状態を保持したまま、前記シリカガラスにアルカリ金属イオンを導入する
工程と、を有することを特徴とするガラス母材の製造方法を提供する
。
前記アルカリ金属化合物がアルカリ金属塩化物であることが好ましい。
前記前工程の際、塩素雰囲気中で、前記アルカリ金属化合物を、その融点以上に加熱することが好ましい。
前記アルカリ金属化合物の融液が、アルカリ金属酸化物を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アルカリ金属イオンの添加物濃度を制御してシリカガラスに導入することが容易で、かつシリカガラスの結晶化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、好適な実施の形態に基づいて本発明を説明する。
【0014】
アルカリ金属、すなわち、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムの化合物(塩)は、一般に次のような性質を示す。
例えば塩化物、臭化物、フッ化物、ヨウ化物などのハロゲン化物、酸化物、水酸化物などの多くは化学的に安定で、分解することなく融点を示す。炭酸水素塩はかなり低温で分解して炭酸塩となるが、炭酸塩は融点を示し、さらに加熱すると酸化物に分解する。硫化物は大気中の酸素や二酸化炭素と反応して、それぞれ酸化物や炭酸塩に変化するが、不活性ガス中では融点を示す。硝酸塩は比較的低い融点を示すが、融点以上で亜硝酸塩に分解する。いくつかの例を表1に示す。これらのアルカリ金属化合物の融点は、シリカガラスの融点よりも低い場合がほとんどである。
【0016】
従来、いわゆるアルカリガラスの機械的強度を改善する方法として、リチウムイオンやナトリウムイオンを含むアルカリガラスを、硝酸ナトリウム水溶液や硝酸カリウム水溶液、あるいは硝酸ナトリウムの融液や硝酸カリウムの融液などに浸漬し、ガラス中のリチウムイオンをナトリウムイオンで、あるいはナトリウムイオンをカリウムイオンで、それぞれイオン交換する方法がよく知られている。ガラスの歪み点以下の温度で、リチウムイオンあるいはナトリウムイオンが、それぞれイオン半径の大きな(すなわち占有体積の大きな)ナトリウムイオンあるいはカリウムイオンで交換されると、ガラス表層に圧縮応力が働くことになり、その結果、ガラスの機械的強度が高まる。このとき、歪み点以下の温度ではなく、歪み点以上の温度でイオン交換すると、応力が緩和されてしまうため、機械的強度を改善する方法としては用いられていない。また、この方法はイオン交換法であり、元々交換可能なアルカリ金属イオンを含まないガラス、例えば純粋なシリカガラス、あるいは酸化ゲルマニウム(GeO
2)やフッ素(F)等がドープされたシリカガラスには用いられていない。また、イオン交換法では、ガラス中に元々存在していたリチウムイオンやナトリウムイオンが溶出し、水溶液中や融液中のナトリウムイオンやカリウムイオンがガラス中に取り込まれることで、水溶液中や融液中のナトリウムイオンやカリウムイオンの濃度が経時的に低くなる(代わりにガラス中に元々存在していたリチウムイオンやナトリウムイオンの濃度が水溶液中や融液中で経時的に増大し、水溶液中や融液中からガラス中に戻ろうとする作用も働く)ため、イオン交換の効率が徐々に低下するという本質的な問題点がある。このため、イオン交換量を制御するためには、水溶液中や融液中のナトリウムイオンやカリウムイオンの濃度の管理が必要である。
【0017】
しかしながら、アルカリ金属イオンのイオン半径は、周期律表で同じ周期に属する他の元素のイオンに比べれば大きいものの、周期律表で前半のナトリウムやカリウムなどは比較的イオン半径が小さいため、シリカガラス中での拡散係数が大きく、高温にすることで熱拡散させることができる。そのため、実質的にアルカリ金属イオンを含まないシリカガラスをアルカリ金属化合物の融液に浸漬し、所定の温度に加熱すれば、イオン交換でなくても、シリカガラスにアルカリ金属化合物の融液を接触させることにより、シリカガラスにアルカリ金属イオンを導入(ドープ)することができる。
これはアルカリ金属ハロゲン化物や、アルカリ金属酸化物などのアルカリ金属化合物は、Si−O−Si結合に対して付加反応を起こすためである。例えばアルカリ金属塩化物(MCl)を使用した場合は次のような反応が起こる。Mはアルカリ金属元素を表す。
【0019】
またアルカリ金属酸化物(M
2O)の場合は次のような反応が起こる。
【0021】
上述の反応により、シリカガラス表面に付加したアルカリ金属イオンとカウンターイオンが、シリカガラス内部へ拡散することで導入される。
この場合、イオン交換を伴わないため、融液中のアルカリ金属イオンの濃度は常に一定に保たれており、シリカガラス中への導入量は拡散係数のみに支配されるため経時的に変化することがなく、ガラス中に導入されて減少したアルカリ金属化合物を単純に補充するのみで済み、濃度の管理の必要がない。
【0022】
シリカガラスは、実質的にアルカリ金属イオンを含まないシリカを主成分とするシリカガラスであり、純粋なシリカ(SiO
2)ガラスでもよく、フッ素(F)や二酸化ゲルマニウム(GeO
2)等、アルカリ金属以外の添加物がドープされたシリカガラスでもよい。アルカリ導入前のシリカガラスにおけるアルカリ金属イオンの含有量としては、例えば100ppm以下が挙げられる。
【0023】
図1に、本形態例のガラス母材の製造方法に用いられる製造装置の一例を示す。この製造装置10は、加熱用容器11と、被処理シリカガラス12を支持する軸13を有する。軸13は、中心線の周囲で回転させたり、長手方向に沿って移動させたりすることができる構造とすることも可能である。ここで、「被処理シリカガラス」とは、ガラス母材の原材料となるシリカガラス、すなわちドープ前の被ドープシリカガラスと、この被ドープシリカガラスから誘導されるドープ途中及びドープ後のシリカガラスを総称する意味であり、製造装置内のシリカガラスで構成され得る他の部材を含まない。
【0024】
加熱用容器11の中には、アルカリ金属化合物の融液14が貯留されている。被処理シリカガラス12は、アルカリ金属化合物の融液14中に浸漬されている。加熱用容器11としては、例えばシリカガラス管の一端を閉じたものを用いることができる。
加熱用容器11の外周には、1つ又は2つ以上のヒータ15が設けられている。
図1の場合、ヒータ15は、被処理シリカガラス12の全体よりも長い円筒状のヒータが一体に設けられており、被処理シリカガラス12の全体を均等に加熱することが可能な均熱炉を構成している。被処理シリカガラス12の長手方向に複数のヒータを設置することも可能である。ヒータ15により、被処理シリカガラス12、及びアルカリ金属化合物の融液14の温度が、アルカリ金属化合物の融点以上となるように加熱することができる。
なお、
図1において、軸13及び先端部16が被処理シリカガラス12と一体のシリカガラス材(ロッド等)から構成されてもよく、アルカリ導入後のシリカガラスのうち、アルカリ導入量の少ない部分や導入量の不均一な部分を切断等で除去することもできる。
【0025】
ところで、アルカリ金属化合物以外の典型金属化合物、及び遷移金属化合物は、アニオンが共通のアルカリ金属化合物に比べて、融点、及び沸点が低いものが多い。例として、アニオンが塩素の場合(塩化物)について、アルカリ金属化合物の一般的な試薬に不純物として含まれる可能性のある第3及び第4周期の典型金属の塩化物、及び遷移金属の塩化物の融点、及び沸点を表2に示す。
【0027】
アルカリ金属塩化物中に、たとえ他の族に属する典型金属イオン、及び遷移金属イオンが不純物として微量混入していても、表2で挙げた例ではCrとNiを除いては、アルカリ金属塩化物の融点付近、又はアルカリ金属塩化物の融点以上付近の温度で加熱保持することにより、他の族に属する典型金属イオン、及び遷移金属イオンが塩化物として優先的に揮発するため、容易に除去することができる。すなわち、アルカリ金属化合物の融液をシリカガラスに接触させる前に、融液をアルカリ金属化合物の融点以上に加熱して、融液から揮発性の高い不純物を揮発させることで、アルカリ金属化合物を精製することができる。なお、同じ族に属する典型金属イオン、すなわち、他のアルカリ金属イオンが共存している場合(例えばナトリウム化合物中にカリウム化合物が共存している場合)は、不純物として除去する必要はなく、共存したまま、該融液をシリカガラスへのアルカリ金属イオンの導入に使用することができる。
表2に挙げた典型金属塩化物、又は遷移金属塩化物の中には加熱により分解するものがあることから、アルカリ金属化合物を塩素雰囲気中で加熱することが好ましい。これにより、アルカリ金属化合物の融解や精製の際に不純物の分解による揮発性の低下が抑制され、揮発性の高い不純物をより多く除去することができる。
【0028】
アルカリ金属化合物の融液にシリカガラスを大気圧下で浸漬する場合、処理温度は、必然的に、アルカリ金属化合物が液体である温度域、すなわち、そのアルカリ金属化合物の融点から沸点の間の温度域になる。表1に示すとおり、アルカリ金属化合物が液体である温度域は約800〜1400℃程度の範囲であり、シリカガラスの結晶化が進行する温度に対応する。特に、アルカリ金属元素の存在下において、シリカガラスの結晶化が著しく進行することはよく知られている。アルカリ金属イオンがドープされたシリカガラスを、光ファイバや光学部品等の光学用途に用いるためには、透明なガラスを得る必要があることから、シリカガラスの結晶化を避けなければならない。アルカリ金属化合物の融液でシリカガラスの表面を濡らすことにより、接触面におけるシリカガラスの表面エネルギーが低下する。これにより、シリカガラス表面から結晶核生成が起こる場合の活性化エネルギーが増加するので、通常であればシリカガラスの結晶化が進行するような温度域であっても、ガラス表面の失透や結晶化を抑制しつつ、シリカガラスにアルカリ金属イオンを導入することができる。
【0029】
アルカリ金属化合物としては、同一のアルカリ金属元素の化合物を2種類以上併用することもでき、異なるアルカリ金属元素の化合物を2種類以上併用することもできる。シリカガラスに異なるアルカリ金属イオンが2種類以上ドープされてもよい。上述したように、濃度の管理の容易性の観点からは、単一のアルカリ金属化合物の融液を用いることが好ましい。アルカリ金属化合物の温度が高すぎると、シリカガラスが結晶化、あるいは軟化(更には液化)して、ガラス状態や形状、組成分布を維持することが困難になる場合がある。そのため、浸漬処理の温度と時間は、シリカガラスがその形状及びガラス状態を維持しつつ、アルカリ金属イオンを導入可能な条件を設定することが好ましい。
【0030】
シリカガラスは酸性であるため、アルカリ金属化合物としてアルカリ金属酸化物を用いると、表面エネルギーの低下による結晶化の抑制効果は顕著になる。しかし、アルカリ金属化合物としてアルカリ金属酸化物のみを用いると、シリカガラスの腐食や溶出が著しくなってしまうため、アルカリ金属塩化物等とアルカリ金属酸化物とを混合して用いることが効果的である。アルカリ金属酸化物の他にも、塩基性のアルカリ金属化合物として、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩等を用いることもできるが、水分を抑制する観点からは、無水の酸化物や炭酸塩等が好ましい。
【0031】
アルカリ金属化合物の融液に浸漬してシリカガラスにアルカリ金属イオンを導入した後、シリカガラス中のアルカリ金属イオンの濃度分布を平準化することを目的として、熱処理等を行うこともできる。熱処理の際にシリカガラスの周囲に設けられる雰囲気ガスとしては、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、窒素(N
2)等の不活性ガス雰囲気、酸素(O
2)等を含む酸化性雰囲気、水素(H
2)等を含む還元性雰囲気が挙げられる。
【0032】
アルカリ導入によって得られるガラス母材は、乾燥した雰囲気下でアルカリ金属イオンがドープされるため、水酸基(−OH)の含有量が低く、透明、かつ高純度で、伝送光の損失を抑制することができるので、光ファイバやレンズ、プリズム等の光学部品を製造するためのガラス母材として利用可能である。
【実施例】
【0033】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0034】
シリカガラスを主成分とし、実質的にアルカリ金属イオンを含まないガラスからなるガラスロッドとして、以下に示した6種類を準備した。
(1)気相合成で作製したシリカ微粒子を、塩化チオニル(SOCl
2)を含む雰囲気で脱水した後、ヘリウム(He)雰囲気で焼結することにより得た円筒状のガラスロッド。
(2)VAD法で作製した二酸化ゲルマニウム(GeO
2)を含むシリカからなるシリカスートを、酸素(O
2)とSOCl
2を含む雰囲気で脱水した後、O
2を含むHe雰囲気で焼結することにより得た、ゲルマニウムがドープされたガラスロッド。
(3)気相合成で作製したGeO
2を含むシリカからなる中心部と、純粋シリカからなる周辺部の2層構造となっているシリカスートを、O
2とSOCl
2を含む雰囲気で脱水した後、O
2を含むHe雰囲気で焼結することにより得た、ゲルマニウムがドープされたシリカガラスからなるコアと純粋シリカガラスからなるクラッドとを有するガラスロッド。
【0035】
(4)気相合成で作製した純粋シリカからなるシリカスートを、四フッ化ケイ素(SiF
4)を含むHe雰囲気で焼結することにより得た、フッ素がドープされたガラスロッド。
(5)気相合成で作製した純粋シリカからなるシリカスートを、SOCl
2を含む雰囲気で脱水した後、SOCl
2を含むHe雰囲気で焼結することにより得た、塩素がドープされたガラスロッド。
(6)市販の合成純粋シリカからなるガラスロッド(信越石英株式会社製、Suprasil−F300)。
【0036】
(アルカリ金属化合物の導入)
一端を閉じた合成シリカガラス管(信越石英株式会社製、Suprasil−F300)からなる容器中に、塩化カリウム(KCl、純正化学株式会社製、純度99.9%以上)、もしくはKClに10mol%等量の炭酸カリウム(K
2CO
3、株式会社トリケミカル研究所製、純度99.9%又は98%)を混合したものを粉末として充填し、静置した。これを電気炉内に入れ、150℃で1時間加熱することにより容器内のアルカリ金属化合物を乾燥した。次いで、KClの融点である780℃以上の所定の温度に加熱してアルカリ金属化合物を溶融し、さらに塩素を含む雰囲気中で1時間加熱することでアルカリ金属化合物の融液から不純物を除去した。上述のシリカガラスロッドをあらかじめ融液と同じ所定の温度に加熱した後、シリカガラスロッドを融液に浸漬した。所定の温度で、所定の時間(例えば1200℃で2h、あるいは1000℃で24h)浸漬したまま放置した後、シリカガラスロッドを取り出した。
【0037】
本発明の実施例を上述のように製造した。代表的な実施例として、(1)および(4)によって製造されたガラスロッドの屈折率分布を測定し、浸漬の前後での屈折率の変化から、導入された塩化カリウムの濃度を推定した。屈折率と添加量との関係は、非特許文献2にシリカガラス中のK
2Oの濃度と屈折率の関係が次のように記載されている。
【0038】
【数1】
【0039】
数1の示す意味は、カリウムシリケートガラス中のK
2O mol濃度あたりの屈折率変化量をΔとして示している。Δは次のように定義される。
【0040】
【数2】
【0041】
数2中のn
1、n
2はそれぞれ、純粋なシリカガラスの比屈折率と、カリウムを含んだシリカガラスの比屈折率を意味する。
また、非特許文献3には、シリカガラス中のCl濃度と屈折率の関係が次のように記載されている。
【0042】
【数3】
【0043】
数3中のClは塩素を含有するシリカガラス中の塩素濃度を示すものであり、単位は(ppm)である。
シリカガラス中に導入されたKClによる屈折率の変化量を、それぞれカリウム等量のK
2Oと、Clによる屈折率変化から換算した。
図2に、推定されたKClの濃度と、シリカガラス表面からの距離との関係を示した。