特許第5894839号(P5894839)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5894839
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】撮像レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20160317BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
   G02B13/00
   G02B13/18
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-85263(P2012-85263)
(22)【出願日】2012年4月4日
(65)【公開番号】特開2013-214010(P2013-214010A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】391014055
【氏名又は名称】カンタツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002181
【氏名又は名称】特許業務法人IP−FOCUS
(74)【代理人】
【識別番号】100091694
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 守
(72)【発明者】
【氏名】石坂 亮
【審査官】 堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−037763(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0265593(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0134904(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102023370(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00−17/08
G02B 21/02−21/04
G02B 25/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体撮像素子用の5枚のレンズからなる撮像レンズであって、物体側から像側に向かって順に、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有する第1レンズ、像側に凹面を向けた負の屈折力を有する第2レンズを備えており、当該第1レンズ及び第2レンズは以下の条件式(1)、(2)、(3)
(1)45<ν1<90
(2)22<ν2<35
(3)2.0<ν1/ν2<2.6
を満足しており、
ただし、
ν1:第1レンズのアッべ数
ν2:第2レンズのアッべ数
であり、
さらに、光軸近傍で物体側に凸面を向けかつ像側に凹面を向けた正または負の屈折力を有する第3レンズ、光軸近傍で像側に凹面を向けた正の屈折力を有する両面が非球面の第4レンズ、光軸近傍で像側に凹面を向けた負の屈折力を有する両面が非球面の第5レンズで構成されることを特徴とする撮像レンズ。
【請求項2】
以下の条件式(4)を満足することを特徴とする請求項1記載の撮像レンズ。
(4)0.6<f1/f<0.9
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f1:第1レンズの焦点距離
【請求項3】
以下の条件式(5)を満足することを特徴とする請求項1または2記載の撮像レンズ。
(5)−1.0<f2/f<−0.8
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f2:第2レンズの焦点距離
【請求項4】
開口絞りは前記第1レンズの物体側に配置されることを特徴とする請求項3に記載の撮像レンズ。
【請求項5】
前記第4レンズ、及び前記第5レンズは、光軸近傍で像側に凹面を向けたメニスカス形状であり、物体側の面及び像側の面に光軸上以外に接平面と光軸が垂直に交わる非球面上の点である変極点を有することを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項6】
以下の条件式(6)を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
(6)1.1<TTL/f<1.3
ただし、
TTL:フィルタを外した際の第1レンズの物体側の面から撮像面までの光軸上の距離
f:撮像レンズ全系の焦点距離
【請求項7】
前記第1レンズは両凸レンズであり、以下の条件式(7)を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
(7)−0.40<r1/r2<−0.08
ただし、
r1:第1レンズの物体側の面の曲率半径
r2:第1レンズの像側の面の曲率半径
【請求項8】
以下の条件式(8)を満足することを特徴とする請求項3に記載の撮像レンズ。
(8)1.6<f4/f<3.8
ただし、
f4:第4レンズの焦点距離
【請求項9】
以下の条件式(9)を満足することを特徴とする請求項8に記載の撮像レンズ。
(9)−9.0<f5/f<−1.4
ただし、
f5:第5レンズの焦点距離
【請求項10】
前記第1レンズ、前記第2レンズ、前記第3レンズ、前記第4レンズ、前記第5レンズはプラスチック材料で構成され、前記第1レンズ、前記第3レンズ、前記第4レンズ、前記第5レンズにシクロオレフィン系プラスチック材料を用い、前記第2レンズにポリカーボネートを用いていることを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型の撮像装置に使用されるCCDセンサやC-MOSセンサの固体撮像素子上に被写体の像を結像させる撮像レンズに関し、特に、小型化、薄型化が進む携帯電話機やスマートフォンなどの携帯端末、及びPDA(Personal Digital Assistance)、さらには、ゲーム機やPC等の情報端末に搭載される撮像装置に内蔵される5枚のレンズから成る撮像レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、特に撮像装置を備えた携帯端末の市場は益々拡大する状況にある。これら携帯端末は、ほとんどの製品にカメラ機能が付加されるようになった。そして、そのカメラ性能は、今やデジタルスチルカメラに匹敵するほどの高画素タイプが主流になってきている。また、携帯端末の利便性、デザイン性などの理由から、特に薄型化の要求が強まっており、内蔵する撮像装置の小型化、薄型化への要求も当然厳しくなってきている。このような高画素の撮像素子を用いた撮像装置に組み込まれる撮像レンズに対しても、更なる高解像度化、小型化、薄型化とともに、明るいレンズ系(すなわち、小さなF値)が求められている。同時に、広範囲な被写体の像を撮影可能な、広い画角に対応することも強く望まれている。
【0003】
このような小型化、薄型化、高性能化の流れに適応する撮像レンズは、複数枚で構成することが一般的である。従来、VGA〜1メガピクセル程度の画素数に対応するのであれば、2枚構成や3枚構成の撮像レンズがサイズ、コストの面で有利なため、広く採用されてきた。また、更なる高画素化に対応するため、4枚構成の撮像レンズも多く提案されてきた。しかし上述したような小型、高画素に対応するために、4枚構成よりもさらに高性能化が可能な5枚構成の撮像レンズも提案されるようになった。それに対応したものが本発明である。
【0004】
例えば、特許文献1には、物体側から順に、物体側の面が凸面とされた正のパワーを有する第1レンズと、絞りと、光軸近傍においてメニスカス形状の第2レンズと、像側の面が光軸近傍において凸形状である第3レンズと、両面が非球面形状で、像側の面が周辺部において凸形状である第4レンズと、両面が非球面形状で、像側の面が周辺部において凸形状である第5レンズとを配置し、第2レンズないし第5レンズのうち、アッベ数が30以下の負レンズを1つのみ有する5枚構成の撮像レンズが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、物体側より順に、正の第1レンズと、正の第2レンズと、負の第3レンズ、正の第4レンズ、負の第5レンズからなる5枚構成の撮像レンズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−294528号公報
【特許文献2】特開2010−026434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の撮像レンズは、光学全長(TTL)と最大像高(IH)の比(TTL/2IH)が1.0前後で、比較的小型化が実現されている。しかし、F値が3.0前後であり、高画素化が進む撮像素子に十分対応する明るさを確保しているとは言えない。また、特許文献2に記載の撮像レンズはF値が2.05〜2.5で明るく、収差補正能力も高いレンズ系を実現しているが、第1レンズのパワーが弱く、薄型化に不利な構成である。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、5枚レンズ構成でありながら小型化、薄型化が可能で、且つF値が小さく、諸収差が良好に補正され、比較的広画角でさらには低コスト化にも対応可能な撮像レンズを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による撮像レンズは、5枚レンズ構成であり、物体側から像面側に向かって順に、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有する第1レンズと、像側に凹面を向けた負の屈折力を有する第2レンズとを備えており、
当該第1レンズ及び第2レンズは以下の条件式(1)、(2)、(3)
(1)45<ν1<90
(2)22<ν2<35
(3)2.0<ν1/ν2<2.6
を満足しており、
ただし、
ν1:第1レンズのアッベ数
ν2:第2レンズのアッベ数
であり、
さらに、正または負の屈折力を有する第3レンズと、光軸近傍で像側に凹面を向けた正の屈折力を有する第4レンズと、光軸近傍で像側に凹面を向けた負の屈折力を有する第5レンズを配置し、第4レンズと第5レンズの両面を非球面で形成するよう構成することを特徴とする。
【0010】
上記構成の撮像レンズは、5枚で構成されるレンズのうち、第1レンズの正の屈折力を強めることで光学全長の短縮化を容易にし、第2レンズと第5レンズの負の屈折力を有するレンズの発散作用の面によって、像面の周辺部まで良好な収差補正を容易にしている。また、第4レンズは像側に凹面を向けた正の屈折力を有するレンズにすることで、バックフォーカスの確保を容易にしている。さらに、第4レンズ、及び第5レンズの両面に適切な非球面形状を形成することによって、撮像素子へ入射する光線の角度を抑制している。
【0011】
条件式(1)は第1レンズのアッベ数を規定するものであり、条件式(2)は第2レンズのアッベ数を規定するものであり、ともに色収差の補正を良好に行うための条件である。条件式(1)の下限値を下回る場合、及び、条件式(2)の上限値を上回る場合は、第1レンズと第2レンズとの分散値の差が小さくなるため、色収差の補正が不十分になる。また、条件式(1)の上限値を上回る場合、及び条件式(2)の下限値を下回る場合、軸上色収差と倍率色収差のバランスが悪化し、周辺部における性能が劣化する。条件式(1)、(2)を同時に満足し、加えて条件式(3)の範囲内に収めることによって、良好な色収差補正が可能になる。
【0012】
また、本発明の撮像レンズは以下の条件式(4)を満足することが望ましい。
(4)0.6<f1/f<0.9
ただし、fは撮像レンズ全系の焦点距離、f1は第1レンズの焦点距離である。
【0013】
条件式(4)は全系のパワーに占める第1レンズの正のパワーを規定するものであり、小型化と良好な収差補正を行うための条件である。
条件式(4)の上限値を上回ると、全系のパワーに占める第1レンズの正のパワーが弱くなり、光学全長の短縮化に不利になる。一方、下限値を下回ると、第1レンズのパワーが強くなり過ぎ、収差補正が困難になるとともに、製造誤差感度が上昇するため好ましくない。
【0014】
また、本発明の撮像レンズは以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
(5)−1.0<f2/f<−0.8
ただし、f2は第2レンズの焦点距離である。
【0015】
条件式(5)は全系のパワーに占める第2レンズの負のパワーを規定するものであり、球面収差、コマ収差、軸上色収差の補正を良好に行うための条件である。
条件式(5)の上限値を上回ると、球面収差、コマ収差の補正が困難になる。一方、条件式(5)の下限値を下回ると、第2レンズの負のパワーが弱くなり過ぎ、軸上色収差の補正が困難になる。
【0016】
また、本発明の撮像レンズは、開口絞りを第1レンズの物体側に配置することが望ましい。第1レンズの物体側に開口絞りを配置することによって、射出瞳位置を像面から遠ざけることが出来るため、撮像素子への光線入射角度を抑制して良好な像側テレセントリック性を確保することが可能になる。
なお、第1レンズの物体側とは、第1レンズの物体側の面と光軸との交点よりも物体側に配置する場合と、第1レンズの物体側の面と光軸の交点から第1レンズの物体側の面の周縁までの間に配置する場合の両方を意味する。
【0017】
また、本発明の撮像レンズの第4レンズ、及び第5レンズは、ともに光軸近傍で像側に凹面を向けたメニスカス形状であり、物体側の面及び像側の面に光軸上以外に変極点を有するよう形成することが望ましい。このような非球面形状に形成することによって、像面湾曲を良好に補正しつつ、撮像素子へ入射する光線の角度を抑制し、テレセントリック性を高めることが出来る。なお、ここでいう変極点とは、接平面と光軸が垂直に交わる非球面上の点を意味する。
【0018】
また、本発明の撮像レンズは、以下の条件式(6)を満足することが望ましい。
(6)1.1<TTL/f<1.3
ただし、TTLは、フィルタを外した際の撮像レンズの最も物体側の面から撮像面までの光軸上の距離である。
【0019】
条件式(6)は光学全長と全系の焦点距離との比を規定するものであり、光学全長の短縮化と諸収差の補正を良好に行うための条件である。
【0020】
条件式(6)の上限値を上回ると、各レンズの形状に対する自由度が向上して諸収差を補正しやすくなるが、光学全長が長くなるため薄型化が困難になる。一方、条件式(6)の下限値を下回ると、光学全長が短くなり過ぎ、各レンズが形状的な制約を受けるとともに、諸収差の補正も困難となる。
【0021】
また、本発明の撮像レンズは、以下の条件式(7)を満足することが望ましい。
(7)−0.40<r1/r2<−0.08
ただし、r1は第1レンズの物体側の面の曲率半径、r2は第1レンズの像側の面の曲率半径である。
【0022】
条件式(7)は第1レンズの近軸における形状を規定するものであり、光学全長の短縮化と球面収差を抑制するための条件である。
【0023】
条件式(7)の上限値を上回ると、第1レンズの物体側の面のパワーが像側の面のパワーより強くなり、球面収差が増大するため好ましくない。一方、条件式(7)の下限値を下回ると、第1レンズの物体側の面のパワーが像側の面のパワーより弱くなり過ぎ、光学全長の短縮化に不利になる。
【0024】
また、本発明の撮像レンズは、以下の条件式(8)を満足することが望ましい。
(8)1.6<f4/f<3.8
ただし、f4は第4レンズの焦点距離である。
【0025】
条件式(8)は全系のパワーに占める第4レンズのパワーを規定するものであり、バックフォーカスを確保しつつ、光学全長の短縮化をおこなうための条件である。
【0026】
条件式(8)の上限値を上回ると、全系のパワーに占める第4レンズの正のパワーが弱くなるため、バックフォーカスの確保は容易になるが、光学全長の短縮化に不利になる。一方、条件式(8)の下限値を下回ると、全系のパワーに占める第4レンズの正のパワーが強くなり過ぎ、光学全長の短縮化には有利になるが、バックフォーカスの確保が困難になる。
【0027】
また、本発明の撮像レンズは、以下の条件式(9)を満足することが望ましい。
(9)−9.0<f5/f<−1.4
ただし、f5は第5レンズの焦点距離である。
【0028】
条件式(9)は全系のパワーに占める第5レンズの負のパワーを規定するものである。
【0029】
条件式(9)の上限値を上回ると、全系のパワーに占める第5レンズの負のパワーが強くなり、光学全長の短縮化に不利になる。一方、条件式(9)の下限値を下回ると、全系のパワーに占める第5レンズの負のパワーが弱くなり過ぎ、光学全長の短縮化には有利になるが、歪曲収差、像面湾曲の補正が困難になる。
【0030】
また、本発明の撮像レンズは、構成する全てのレンズがプラスチック材料であることが望ましい。全てのレンズをプラスチック材料で構成することにより、大量生産が可能で低コスト化が可能になる。具体的には、前記第1レンズ、前記第3レンズ、前記第4レンズ、前記第5レンズに同一材料のシクロオレフィン系プラスチック材料を用い、前記第2レンズにポリカーボネートを用いている。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、諸収差が良好に補正され、小型化、薄型化に対応した比較的広画角で明るい撮像レンズを得ることが出来る。
また、全てのレンズをプラスチック材料で構成することによって、大量生産に向いた、低コスト化が可能な撮像レンズを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】実施例1の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図2】実施例1の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図3】実施例2の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図4】実施例2の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図5】実施例3の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図6】実施例3の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図7】実施例4の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図8】実施例4の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1図3図5図7はそれぞれ、本実施形態の実施例1〜4に係る撮像レンズの概略構成図を示している。いずれも基本的なレンズ構成は同一であるため、ここでは実施例1の概略構成図を参照しながら、本実施形態の撮像レンズ構成について説明する。
【0034】
図1に示すように、本実施形態の撮像レンズは、物体側から像面側に向かって順に、正の屈折力を有する第1レンズL1と、負の屈折力を有する第2レンズL2と、正または負の屈折力を有する第3レンズL3と、正の屈折力を有する第4レンズL4と、負の屈折力を有する第5レンズL5とで構成されている。また、開口絞りSTは第1レンズL1の物体側に配置されている。第5レンズL5と像面IMとの間にはフィルタIRが配置されている。なお、このフィルタIRは省略することが可能である。
【0035】
上記5枚レンズ構成の撮像レンズにおいて、第1レンズL1は物体側の面r1と像側の面r2が共に凸面で形成された両凸形状のレンズであり、第2レンズL2は物体側の面r3が凸面で、像側の面r4が凹面のメニスカス形状のレンズであり、第3レンズL3は光軸X近傍で物体側の面r5が凸面であり、像側の面r6が凹面のメニスカス形状のレンズであり、第4レンズL4は光軸X近傍で物体側の面r7が凸面で像側の面r8が凹面のメニスカス形状のレンズであり、第5レンズL5は物体側の面r9が凸面で像側の面r10が凹面のメニスカス形状のレンズである。
なお、第3レンズL3は、全系のパワーに対して弱い正又は負のパワーを有するレンズであり、本実施形態の実施例1が負のパワー、実施例2〜実施例4が正のパワーになっている。
【0036】
上記の構成は、5枚で構成されるレンズL1〜L5のうち、第1レンズL1の正の屈折力を強めることで光学全長の短縮化を容易にし、第2レンズと第5レンズの負の屈折力を有するレンズの発散作用を有する面によって、撮像面の周辺部まで良好な収差補正を容易にしている。第3レンズL3は弱い正又は負のパワーを有しており、主に軸外の収差補正の役割を担っている。また、第4レンズL4、及び第5レンズL5の両面に適切な非球面形状を形成することによって、撮像素子へ入射する光線のテレセントリック性を高めている。
【0037】
また、本実施形態の撮像レンズはすべてプラスチック材料を採用している。全ての実施例は第1レンズL1、第3レンズL3、第4レンズL4、第5レンズL5にシクロオレフィン系プラスチック材料を、第2レンズL2にポリカーボネートを用いている。
すべてのレンズにプラスチック材料を採用することで、安定した大量生産が可能となり、低コスト化が容易である。また、第1レンズL1、第3レンズL3、第4レンズL4、第5レンズL5は同一の材料で構成されているため製造が容易である。
【0038】
本発明の撮像レンズは以下の条件式を満足する。
(1)45<ν1<90
(2)22<ν2<35
(3)2.0<ν1/ν2<2.6
(4)0.6<f1/f<0.9
(5)−1.0<f2/f<−0.8
(6)1.1<TTL/f<1.3
(7)−0.40<r1/r2<−0.08
(8)1.6<f4/f<3.8
(9)−9.0<f5/f<−1.4
但し、
ν1:第1レンズのアッベ数
ν2:第2レンズのアッベ数
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f1:第1レンズの焦点距離
f2:第2レンズの焦点距離
f4:第4レンズの焦点距離
f5:第5レンズの焦点距離
TTL:フィルタを外した際の第1レンズの物体側の面から像面までの光軸上の距離
r1:第1レンズの物体側の面の曲率半径
r2:第1レンズの像側の面の曲率半径
【0039】
本実施形態では、すべてのレンズ面を非球面で形成している。これらのレンズ面に採用する非球面形状は光軸方向の軸をZ、光軸に直交する方向の高さをH、円錐係数をk、非球面係数をA4、A6、A8、A10、A12、A14、A16としたとき次式により表わされる。
【0040】
【数1】
【0041】
次に本実施の形態に係る撮像レンズの実施例を示す。各実施例において、fは撮像レンズ全系の焦点距離を、FnoはFナンバーを、ωは半画角を、IHは最大像高をそれぞれ示す。また、iは物体側から数えた面番号、rは曲率半径、dは光軸上のレンズ面間の距離(面間隔)、Ndはd線(基準波長)に対する屈折率、νdはd線に対するアッベ数をそれぞれ示す。なお、非球面に関しては、面番号iの後に*(アスタリスク)の符号を付加して示す。
【実施例1】
【0042】
基本的レンズデータを以下の表1に示す。
【表1】
【0043】
実施例1の撮像レンズは、表5に示すように条件式(1)〜(9)の全てを満たしている。
【0044】
図2は実施例1の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。これら収差図は、g線(436nm)、F線(486nm)、e線(546nm)、d線(588nm)、C線(656nm)の各波長に対する収差量を示している。また、非点収差図にはサジタル像面S、タンジェンシャル像面Tにおける収差量をそれぞれ示している。図2に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【0045】
また、光学全長TTLは4.899mmと短く、最大像高IHとの比(TTL/2IH)は0.858であり、5枚構成でありながら薄型化が実現されている。さらに、F値は2.20と明るく、半画角は約35°で比較的広い画角が実現されている。
【実施例2】
【0046】
基本的レンズデータを以下の表2に示す。
【表2】
【0047】
実施例2の撮像レンズは、表5に示すように条件式(1)〜(9)の全てを満たしている。
【0048】
図4は実施例2の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。これら収差図は、g線(436nm)、F線(486nm)、e線(546nm)、d線(588nm)、C線(656nm)の各波長に対する収差量を示している。また、非点収差図にはサジタル像面S、タンジェンシャル像面Tにおける収差量をそれぞれ示している。図4に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【0049】
また、光学全長TTLは4.962mmと短く、最大像高IHとの比(TTL/2IH)は0.869であり、5枚構成でありながら小型化が実現されている。さらに、F値は2.20と明るく、半画角は約35°で比較的広い画角が実現されている。
【実施例3】
【0050】
基本的レンズデータを以下の表3に示す。
【0051】
【表3】
実施例3の撮像レンズは、表5に示すように条件式(1)〜(9)の全てを満たしている。
【0052】
図6は実施例3の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。これら収差図は、g線(436nm)、F線(486nm)、e線(546nm)、d線(588nm)、C線(656nm)の各波長に対する収差量を示している。また、非点収差図にはサジタル像面S、タンジェンシャル像面Tにおける収差量をそれぞれ示している。図6に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【0053】
また、光学全長TTLは4.931mmと短く、最大像高IHとの比(TTL/2IH)は0.863であり、5枚構成でありながら小型化が実現されている。さらに、F値は2.20と明るく、半画角は約35°で比較的広い画角が実現されている。
【実施例4】
【0054】
基本的レンズデータを以下の表4に示す。
【表4】
【0055】
実施例4の撮像レンズは、表5に示すように条件式(1)〜(9)の全てを満たしている。
【0056】
図8は実施例4の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。これら収差図は、g線(436nm)、F線(486nm)、e線(546nm)、d線(588nm)、C線(656nm)の各波長に対する収差量を示している。また、非点収差図にはサジタル像面S、タンジェンシャル像面Tにおける収差量をそれぞれ示している。図8に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【0057】
また、光学全長TTLは4.712mmと短く、最大像高IHとの比(TTL/2IH)は0.825であり、5枚構成でありながら小型化が実現されている。さらに、F値は2.20と明るく、半画角は約35°で比較的広い画角が実現されている。
【0058】
本発明の実施形態に係る撮像レンズは、光学全長TTLと最大像高IHとの比(TTL/2IH)が0.85前後を達成しており、5枚構成でありながら光学全長の短縮化が図られていることがわかる。また、F値は2.20程度で明るく、半画角ωが35°前後で比較的広い画角の撮影を可能にし、さらに良好に収差が補正されている。
【0059】
表5に実施例1〜4の条件式(1)〜(9)の値を示す。
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0060】
上述したように、各実施の形態に係る5枚レンズ構成の撮像レンズを携帯電話機やスマートフォンなどの携帯端末、及びPDA(Personal Digital Assistance)、さらには、ゲーム機等に搭載される撮像装置に内蔵される光学系に適用した場合、当該カメラの高性能化と小型化の両立を図ることができる。
【符号の説明】
【0061】
ST 開口絞り
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
L5 第5レンズ
IR フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8