【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による撮像レンズは、5枚のレンズ構成であり、物体側から像側に向かって順に、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有する第1レンズ、開口絞り、像側に凸面を向けた負の屈折力を有する第2レンズを備えており、当該第1レンズ及び第2レンズは以下の条件式(1)、(2)
(1)50<ν1<85
(2)20<ν2<35
を満足しており、
ただし、
ν1:第1レンズのアッべ数
ν2:第2レンズのアッべ数
且つ、当該第2レンズは以下の条件式(3)
(3)1.55<Nd2<1.70
を満足しており、
ただし、
Nd2:第2レンズのd線における屈折率
であり、
さらに、像側に凹面を向けた正の屈折力を有する第3レンズ、像側に凸面を向けた正の屈折力を有する第4レンズ、光軸近傍で像側に凹面を向けた負の屈折力を有する両面が非球面の第5レンズで構成されることを特徴とする。
【0010】
上記構成の撮像レンズは、5枚で構成されるレンズのうち、第1レンズから第4レンズまでを一つの群として考えた場合、その合成焦点距離(f1234)が正となるよう構成されている。最も像側に配置される第5レンズは負の屈折力を有するレンズのため、群として考えれば、正の一群と負の二群の二つの群で構成されていると考えることが出来る。このような構成にすることで撮像レンズの光軸方向の距離、すなわち光学全長の短縮化を可能にしている。一般に、Fナンバーの小さい(大口径)レンズ系は、諸収差が多く発生しやすく、その補正が困難であるという課題がある。特に光学全長の短縮化を図りながら、Fナンバーを小さくし、光学性能を向上させることは困難な課題であった。本発明は、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有する第1レンズで光学全長の短縮化を図り、負の屈折力を有する第2レンズによって色収差の補正を良好に行い、第2レンズの像側の面を凸面にすることによって、第2レンズを出射する光線の出射角を抑制し、開口絞り近傍で発生しやすいマージナル光線の収差を抑えることを可能にしている。その結果、Fナンバーを小さくしても良好な収差補正を実現可能としたものである。
【0011】
条件式(1)、(2)は、第1レンズと第2レンズのアッベ数の範囲を規定するものであり、条件式(1)の下限値を下回る場合、及び条件式(2)の上限を上回る場合は色収差の補正が不十分となり、反対に条件式(1)の上限を上回る場合、及び条件式(2)の下限値を下回る場合は、補正過剰となる。条件式(1)、(2)を同時に満足することによって、色収差を良好に補正することが可能である。
【0012】
条件式(3)は第2レンズの屈折率の範囲を規定するものであり、この範囲に規定することによって、光学全長を短縮しながら良好な性能の確保が可能になる。また、第2レンズの屈折率を条件式(3)の範囲にすることにより、第2レンズのレンズ面を緩やかな形状にすることが出来るため、加工性を向上させることが出来る。条件式(3)の上限値を上回る場合は、レンズ材料の価格が高額になるため、低コスト化への対応に不利になる。
【0013】
なお、第1レンズ、第2レンズのアッベ数に関し、より好適には上記の条件式(1)、(2)と合わせて、以下の条件式(4)を満足することが望ましい。
(4)2.0<ν1/ν2<3.0
【0014】
正の屈折力を有する第3レンズは、像側の面を凹面にすることで、第4レンズとの空気間隔を比較的大きく設定でき、その結果、像面湾曲を良好に補正することが容易になる。
【0015】
正の屈折力を有する第4レンズは、像側の面を凸面にし、適切なパワーを与えることによって、光学全長の短縮化とバックフォーカスの確保を容易にしている。
【0016】
第5レンズは、適切な負のパワーを与えることで、バックフォーカスの確保を容易にし、像側の面を凹面とすることで、像面中心部の諸収差を良好に補正している。
【0017】
上記構成の撮像レンズにおいて、第4レンズは光軸近傍でメニスカス形状とし、像側の面を周辺に向かうに従って正の屈折力が弱くなる非球面で形成することが望ましい。第4レンズをこのような形状にすることで、軸外における諸収差、すなわち、像面湾曲、歪曲収差、倍率色収差を良好に補正することが可能になる。
【0018】
また、上記構成の撮像レンズにおいて、第5レンズは、両面が凹面であり、物体側の非球面上には変極点を持たず、像側の面の非球面上には光軸以外の位置に変極点を有することが望ましい。第5レンズの物体側の面を変極点のない、全体に凹面にすることで、像側の面の周辺形状を物体側に移動させやすくなるため、第5レンズの像側の面のうち、最も像側に張り出した位置と撮像面との距離を確保しやすくなる。また、像側の面に光軸以外の位置に変極点を持たせることは、撮像面への光線入射角度を抑制し、テレセントリック性を高めることに効果がある。なお、ここでいう変極点とは、接平面が光軸に垂直に交わる非球面上の点を意味するものとする。
【0019】
また、上記構成の撮像レンズは以下の条件式(5)、(6)、(7)を満足することが望ましい。
(5)20<ν3<30
(6)50<ν4<60
(7)1.5<Nd3<1.7
ただし、
ν3:第3レンズのアッべ数
ν4:第4レンズのアッべ数
Nd3:第3レンズのd線における屈折率
【0020】
条件式(5)、(6)はさらに色収差を良好に補正するための条件であり、条件式(5)の下限値を下回る場合、及び条件式(6)の上限値を上回る場合、色収差の補正が過剰になる傾向となる。一方、条件式(5)の上限値を上回り、条件式(6)の下限値を下回る場合は色収差が補正不足の傾向となる。条件式(5)、(6)を同時に満足することによって、第3レンズ、第4レンズによっても色収差補正を可能にしている。
【0021】
条件式(7)は条件式(5)、(6)と合わせて、軸上色収差を良好に補正するための条件である。条件式(7)の下限値を下回ると、第3レンズの正の屈折力が弱くなり過ぎ、像面湾曲が悪化するので好ましくない。一方、上限値を上回ると、第3レンズの正の屈折力が強くなり過ぎ、軸上色収差の補正が困難となる。また、レンズ材料の価格が高額になるため、低コスト化への対応に不利になってしまう。
【0022】
また、第3レンズ、第4レンズのアッベ数に関し、より好適には上記の条件式(5)、(6)と合わせて、以下の条件式(8)を満足することが望ましい。
(8)1.8<ν4/ν3<2.5
【0023】
また、上記構成の撮像レンズは、第2レンズの形状に関して、以下の条件式(9)を満足することが望ましい。
(9)1.0<|(r3+r4)/(r3−r4)|<1.3
ただし、
r3:第2レンズの物体側の面の曲率半径
r4:第2レンズの像側の面の曲率半径
【0024】
条件式(9)は第2レンズの物体側の面と像側の面の形状を規定するものであり、製造誤差感度を低く抑えながら、光学全長の短縮化、良好な色収差補正を行うための条件である。条件式(9)の下限値を下回ると、第2レンズの物体側の面の負の屈折力が強くなり過ぎ、製造誤差感度が上昇するため好ましくない。一方、条件式(9)の上限値を上回ると、第2レンズの像側の面の正の屈折力が強まり、第2レンズの負の屈折力が弱くなるため、光学全長の短縮化には有効だが、色収差が悪化するため好ましくない。
【0025】
また、上記構成の撮像レンズは、第1レンズの像側の面と第2レンズの物体側の面の形状に関して、以下の条件式(10)を満足することが望ましい。
(10)1.7<r2/r3<6.0
ただし、
r2:第1レンズの
像側の面の曲率半径
【0026】
条件式(10)は色収差と像面湾曲、さらに製造誤差感度を抑制するための条件である。条件式(10)の下限値を下回ると、第1レンズの像側の面の曲率半径に対して第2レンズの物体側の曲率半径が大きくなるため、第1レンズと第2レンズの屈折力のバランスが悪くなり、色収差が悪化する傾向になるため好ましくない。一方、条件式(10)の上限値を上回ると、第1レンズの像側面の曲率半径が第2レンズの物体側の曲率半径に比較して大きくなり過ぎ、その場合、第1レンズの屈折力を維持するために第1レンズの物体側の面の曲率半径を小さくせざるを得ず、その結果第1レンズの製造誤差感度が高くなるため好ましくない。さらに、条件式(10)の上限値を上回ると、第2レンズの物体側の面の負の屈折力が強くなり過ぎて、像面湾曲の補正が困難となる。
【0027】
また、上記構成の撮像レンズは、開口絞りが第1レンズと第2レンズとの間に配置することが望ましい。
【0028】
一般に、開口絞りを最も物体側に配置することによって、射出瞳位置を撮像面から遠ざけることができるため、像側テレセントリック性を高めることが出来る。しかし、最も物体側に開口絞りを配置すると、各レンズの絞りに対する対称性が無くなるため、収差補正が困難になり易い。本発明では、第1レンズと第2レンズとの間に配置することによって、最も物体側に開口絞りを配置した場合よりも、絞りに対する光学系の対称性を良くしている。従って、Fナンバーを小さくした際に、レンズの有効径が大きくなることで発生する諸収差の良好な補正を可能にしている。
【0029】
また、上記構成の撮像レンズは、以下の条件式(11)を満足することが望ましい。
(11)0.5<f1/f<0.8
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f1:第1レンズの焦点距離
【0030】
条件式(11)は撮像レンズの光軸方向の距離を短縮しながら、球面収差の発生を抑えるとともに、製造誤差感度を低減するための条件である。
条件式(11)の下限値を下回ると、撮像レンズ全系の屈折力に対する第1レンズの正の屈折力が強くなり過ぎ、諸収差、特に球面収差の補正が困難となる。また、製造誤差に対し敏感になるため組立精度が悪化するため好ましくない。一方、条件式(11)の上限値を上回ると、撮像レンズ全系の屈折力に対する第1レンズの正の屈折力が弱くなり過ぎ、球面収差の補正や製造誤差感度の低減には有利になるが、光学全長の短縮化に不利になる。
【0031】
また、上記構成の撮像レンズは、以下の条件式(12)を満足することが望ましい。
(12)−1.1<f2/f<−0.7
ただし、
f2:第2レンズの焦点距離
【0032】
条件式(12)は色収差を補正しつつ、像面湾曲を良好に補正するための条件である。条件式(12)の下限値を下回ると、撮像レンズ全系の屈折力に対する第2レンズの負の屈折力が弱くなり過ぎ、色収差の補正が困難となる。一方、条件式(12)の上限値を上回ると、撮像レンズ全系の屈折力に対する第2レンズの負のパワーが強くなり過ぎ、像面湾曲が補正困難となり撮像面周辺の解像性能が大きく低下するとともに、光学全長の短縮化にも不利となる。
【0033】
また、上記構成の撮像レンズにおいて、以下の条件式(13)を満足することが望ましい。
(13)0.5<f4/f<0.7
ただし、
f4:第4レンズの焦点距離
【0034】
第4レンズの像側の面を周辺に向かうに従って、正の屈折力が弱くなる非球面形状にすることによって、高像高における諸収差、特に像面湾曲と歪曲収差を良好に補正することが可能になる。また、テレセントリック性の確保を容易にすることが出来る。また、条件式(13)はバックフォーカスを確保しながら光学全長を短縮化するための条件であり、条件式(13)の下限値を下回ると、撮像レンズ全系の屈折力に対する第4レンズの正の屈折力が強くなり過ぎ、光学全長の短縮化には有利になるが、バックフォーカスの確保が困難となり、撮像素子に有害な赤外光線をカットするIRカットフィルター等を配置するスペースの確保が困難となる。一方、条件式(13)の上限値を上回ると、撮像レンズ全系の屈折力に対する第4レンズの正の屈折力が弱くなり過ぎ、バックフォーカスの確保は容易になるが、光学全長の短縮化に不利になるため好ましくない。
【0035】
なお、本発明でいう光学全長とは撮像レンズとCCDやC−MOSセンサ等の固体撮像素子との間に配置するIRカットフィルター等の光学素子を取り外した際の、第1レンズの物体側の面から撮像面までの光軸上の距離を意味するものとする。