特許第5894848号(P5894848)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5894848
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】洗濯乾燥機
(51)【国際特許分類】
   D06F 58/02 20060101AFI20160317BHJP
   D06F 33/02 20060101ALI20160317BHJP
   D06F 25/00 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
   D06F58/02 N
   D06F33/02 T
   D06F25/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2012-96165(P2012-96165)
(22)【出願日】2012年4月20日
(65)【公開番号】特開2013-223548(P2013-223548A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2014年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立アプライアンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】矢田 好宏
(72)【発明者】
【氏名】小松 常利
(72)【発明者】
【氏名】金子 哲憲
(72)【発明者】
【氏名】小谷 直己
(72)【発明者】
【氏名】桧山 功
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 幹夫
【審査官】 横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3088573(JP,U)
【文献】 特開2012−070808(JP,A)
【文献】 特開2004−141344(JP,A)
【文献】 特開2010−227341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 25/00
D06F 33/02
D06F 58/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筺体内に支持され、内部に水を貯留する外槽と、前記外槽に内包され、衣類が収容される内槽と、衣類を乾燥させる乾燥運転時に前記内槽内へ送風するためのファンと、前記外槽の底部から機外の排水孔へ水を導く排水ホースと、前記排水ホースの途中に設けられた排水弁と、を備えた洗濯乾燥機において、
前記洗濯乾燥機は、洗い、すすぎ、脱水、乾燥の各工程を有し、
前記すすぎが始まって前記脱水が終わるまでの間に、前記排水弁を開状態とし、前記排水ホースにより水を機外から排出しながら、乾燥工程で用いる前記ファンで前記内槽内へ送風することを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項2】
請求項において、前記すすぎの最後に利用した水を前記排水ホースにより排出した後、再び給水して貯水し、この水を前記排水ホースにより排出しながら前記ファンで送風することを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項3】
請求項1または2において、前記ファンによる送風経路に吸気弁を有し、前記吸気弁を開いて外気を吸い込みながら前記ファンを回転させることを特徴とする洗濯乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯から乾燥まで連続して行える洗濯乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般の洗濯乾燥機は、長期間使用していると、洗濯水を貯留する外槽や、衣類を収容する内槽に、汚れ等が付着するため、洗濯運転や洗濯乾燥運転とは別に、槽の洗浄を目的としたコースが設けられている。また、金属イオンの抗菌作用に着目し、金属イオンを含有するイオン水を給水し、外槽及び内槽に作用させることにより、槽の表面に黒カビ等が発生するのを抑制する技術も提案されている。
【0003】
下記特許文献1には、洗濯完了後の循環水路の内部に、イオン水を滞留させて抗菌処理し、次回の運転開始までの間に循環水路内にカビ類が発生するのを防止することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−250847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、イオン水を単に浸しておくだけなので、洗いやすすぎの際に排水ホースへ付着した汚れ等が落としきれない場合があった。そして、このような汚れ等が排水ホースの底部に堆積して時間が経過すると、カビや臭いを発生させる可能性がある。
本発明は、上述の課題を解決するために成されたものであり、その目的は、排水ホース内をきれいに洗い流し、カビや臭いの発生を抑制した洗濯乾燥機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、筺体内に支持され、内部に水を貯留する外槽と、前記外槽に内包され、衣類が収容される内槽と、衣類を乾燥させる乾燥運転時に前記内槽内へ送風するためのファンと、前記外槽の底部から機外の排水孔へ水を導く排水ホースと、前記排水ホースの途中に設けられた排水弁と、を備えた洗濯乾燥機において、前記洗濯乾燥機は、洗い、すすぎ、脱水、乾燥の各工程を有し、前記すすぎが始まって前記脱水が終わるまでの間に、前記排水弁を開状態とし、前記排水ホースにより水を機外から排出しながら、乾燥工程で用いる前記ファンで前記内槽内へ送風する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、排水ホース内をきれいに洗い流し、カビや臭いの発生を抑制した洗濯乾燥機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機の外観を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機の内部構造を示す側面図である。
図3】給水電磁弁と洗浄水供給ホースと水抜きホースとの接続状態を示す斜視図である。
図4】第1実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機の外槽カバー側ノズルの配置を示す平面図である。
図5図8のA−A線断面図である。
図6】外槽カバー側ノズルの単体を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図、(d)は下面図である。
図7】外槽カバー側ノズルによる水の流れを示す拡大断面図である。
図8】外槽カバー側ノズルによる洗浄範囲を模式的に示す平面図である。
図9】ドラム式洗濯乾燥機を示すブロック図である。
図10】ドラム式洗濯乾燥機の運転時のメイン制御を示すフローチャートである。
図11】自動おそうじ工程の前半における制御を示すフローチャートである。
図12】自動おそうじ工程の後半における制御を示すフローチャートである。
図13】脱水工程における制御を示すフローチャートである。
図14】第1実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機における各種給水電磁弁の開閉動作を示す全体工程表である。
図15】外槽下部周辺におけるホースの配置を示す図である。
図16】第1実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機における乾燥工程中盤の空気の流れを示す図である。
図17】第1実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機における乾燥工程終盤の空気の流れを示す図である。
図18】他の実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機における各種給水電磁弁の開閉動作を示す全体工程表である。
図19】他の実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機の自動おそうじ(排水ホース)工程における制御を示すフローチャートである。
図20】更に他の実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機における各種給水電磁弁の開閉動作を示す全体工程表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、洗濯から乾燥までの工程を行うことができるドラム式洗濯乾燥機(以下、洗濯乾燥機と表記する)を例に挙げて説明する。また、以下では、洗濯乾燥機S1を正面から見たときの方向を基準として説明する。
【0010】
図1に示すように、第1実施形態の洗濯乾燥機S1は、外郭が鋼板と樹脂成型品とを組み合わせて構成された筐体1を有し、筐体1がベース1hの上に取り付けられて構成されている。筐体1は、左右の側板1a、1b(図示せず)、前面カバー1c、背面カバー1d(図示せず)、上面カバー1e、下部前面カバー1fで構成されている。左右の側板1a、1bは、コの字型の上補強材(図示せず)、前補強材(図示せず)、後補強材(図示せず)で結合されており、ベース1hを含めて箱状の筐体1を形成し、筐体として十分な強度を有している。
【0011】
前面カバー1cの略中央には、衣類など(洗濯物、乾燥対象物)を出し入れするための投入口を塞ぐドア2が、前補強材に設けたヒンジで開閉可能に支持されて構成されている。ドア2の近傍の前面カバー1cには、ドア2のロック機構を解除するドア開放ボタン3が設けられている。ドア開放ボタン3を押すことで、ロック機構が外れてドア2が開き、ドア2を前面カバー1cに押し付けることでロックされて閉じるようになっている。図示しない前補強材は、後記する外槽20(図2図5参照)の開口部と同心に、衣類を出し入れするための円形の開口部を有している。
【0012】
筐体1の上部中央には、電源スイッチ4a、操作スイッチ4b、4c、表示器4dなどを備えた操作パネル4が設けられている。操作パネル4は、筐体1内に設けた制御装置60(図示せず)に電気的に接続されている。また、操作パネル4の左側には、洗剤や柔軟剤などを投入する引き出し式のトレイ5が設けられている。
【0013】
また、操作パネル4の右側には、引き出し式の乾燥フィルタ6が設けられている。乾燥フィルタ6は、メッシュ式のフィルタを備えており、糸くずなどが除去されるようになっている。乾燥フィルタ6の掃除は、乾燥フィルタ6を引き出してメッシュ式のフィルタを取り出して行う。また、上面カバー1eには、水道栓からの給水ホース接続口7a、風呂の残り湯の吸水ホース接続口7bが設けられている。
【0014】
次に、図2に示すように、洗濯乾燥機S1は、筺体1内に、回転可能に支持された円筒状の洗濯兼脱水槽としての回転ドラム(内槽)10が設けられている。この回転ドラム10は、前側(手前側)端面に衣類を出し入れするための開口部を有するとともに、その周壁に通水及び通風のための多数の貫通孔10h(図7参照)を有している。
【0015】
この開口部の縁部には、回転ドラム10と一体のバランスリング(流体バランサともいう)10bが設けられている。このバランスリング10bは、その内部に比重の大きな流体を封入して構成され、回転ドラム10の回転時に衣類30の偏り等によって偏心が生じたときに、バランスリング10b内での流体の移動によって偏心をキャンセルし、回転のバランスを維持する働きを有する。
【0016】
回転ドラム10の内周壁には、奥行き方向(軸方向)に延びるリフタ10cが複数個設けられている。洗濯、乾燥時に回転ドラム10が回転すると、衣類30がリフタ10cと遠心力で周壁に沿って持ち上がり、重力で落下するような動きを繰り返すようになっている。尚、回転ドラム10の回転中心は、開口部側が高くなるように傾斜している。
【0017】
また、洗濯乾燥機S1は、回転ドラム10を同軸上に内包し、前面が開口した円筒状の外槽20を備えている。この外槽20は、外槽本体21と外槽カバー22とで構成されている。外槽本体21の前面の開口21s(図7参照)には、合成樹脂製の外槽カバー22が設けられ、外槽20内への貯水を可能としている。外槽カバー22の前面(手前側)中央には、衣類30を出し入れするための開口部22a(図4参照)が形成されている。開口部22aと前補強材に設けた開口部は、ゴム製のパッキン23(図5参照)で接続されている。このパッキン23は、外槽20とドア2との水密性を維持する役割を果たしている。外槽20の底面最下部には、排水口20cが設けられ、排水ホース8が接続されている。
【0018】
排水ホース8の先端部は、機外の底面に設けられた排水孔101に接続されている。また、排水ホース8の途中には、排水電磁弁Vが設けられ、この排水電磁弁Vを閉じて給水することで外槽20内に水が溜められ、排水電磁弁Vを開くことで外槽20内の水が機外へ排出される。
【0019】
また、洗濯乾燥機S1は、外槽20の背面中央(底面中央)に、回転ドラム10を回転駆動するためのモータMが取り付けられている。尚、モータMの回転軸m1は、外槽20を貫通し、回転ドラム10の背面に設けられた金属製のフランジ10eと結合している。また、外槽20の下部は、下側をベース部1hに固定された複数のサスペンション9(コイルばねとダンパで構成)で防振支持されている。また、外槽20の上部は、上部補強部材に取り付けた補助ばね(図示せず)で支持されており、外槽20の前後方向への倒れを防ぐように構成されている。
【0020】
また、洗濯乾燥機S1は、筺体1の背面内側かつ外槽20の裏側を上下方向に延びる除湿ダクト32と、筺体1の上面内側かつ外槽20の上面側を後方から前方に延びる上部ダクト33を有している。除湿ダクト32の下部には、排水電磁弁Vの下流側において排水ホース8と合流するように接続される溢水ホース15が接続されている。この溢水ホース15の上流端は、後述するベローズ31よりも上側に位置するように接続されている。
【0021】
図15に示す通り、排水ホース8は、外槽20の奥側の最下部に設けられた排水継ぎ手18の底部と循環ポンプPを接続する循環ホース81、循環ポンプPと排水電磁弁Vの上流側とを接続する弁上流ホース82と、排水電磁弁Vの下流側と弁下流ホース83とで構成されている。ここで、循環ポンプPは、散水用ホースを介して外槽カバー22の側部に接続されており、外槽20内に貯留された水を、循環ホース81から吸い込んで散水用ホースにより汲み上げ、シャワーとして回転ドラム10内の衣類30に吹き掛ける。
【0022】
上部ダクト33の下流側には、ファン41(送風手段)とヒータ42(加熱手段)とを備えた送風ファンユニットが設けられている。ファンユニットの下流側には、ベローズ36を介して、温風吹き出し口37が取り付けられており、この温風吹き出し口37の先端はスリット形状となっている。また、この上部ダクト33は、ファン41の上流側であって、外槽20側の下面に、吸気弁13を有している。
【0023】
本実施形態では、温風吹き出し口37の面積を除湿ダクト32や上部ダクト33などの風路面積に比べて小さくするとともに、ファン41の電動機を高速回転して高圧力の空気を発生させている。これにより、温風吹き出し口37から高速の風、例えば50m/s以上の風をドラム内に吹き出し、この高速の風を衣類に吹き付けて、風の力で衣類に発生するしわを伸ばすことができる。
【0024】
ここで、ファン41は、いわゆるターボファンなどと称されるものであり、電動機と、羽根車と、羽根車を内包するファンケースを有する。また、羽根車は、中央に吸込み口を有する前面プレートと、電動機の回転軸に固定される後面プレートと、前面プレートと後面プレートとの間に設けられた複数枚の羽根で構成されている。これらの羽根は、中心側から外径側に行くに従って回転方向とは反対側に後退するように配置されている。また、羽根車を金属製とすることで、羽根車の小型・軽量化が可能となり、アンバランスが小さくなるため、高速の風を吹き付ける場合であっても、その振動、騒音を低減できる。
【0025】
尚、除湿ダクト32内には、水冷除湿機構として、多数の突起が形成された熱交換板(図示せず)が配設されており、この熱交換板には、その壁面に沿って冷却水を流すための給水管34が接続されている。そして、後述する冷却水給水電磁弁12dが開弁されることにより、水冷除湿が機能するようになっている。また、除湿ダクト32の下部は、外槽20の背面下部に設けられた通風口20dに柔軟構造のベローズ31で略水平方向に接続されている。一方で、ヒータ42の下流側と温風吹き出し口37とは、外槽20の前面側において、柔軟構造のベローズ36で略鉛直方向に接続されているので、外槽20の振動全体を吸収することが可能となっている。
【0026】
次に、トレイ5(図1参照)の後方には、5連の給水電磁弁Tや風呂水給水ポンプU、給水経路ユニット(図示せず)などを備えた給水ユニット12(給水手段)が設けられている。5連の給水電磁弁Tは、洗剤給水電磁弁12aと、仕上剤(ソフナー)給水電磁弁12bと、外槽給水電磁弁12cと、冷却水給水電磁弁12dと、槽洗浄給水電磁弁12e(給水手段)とを備えている。
【0027】
洗剤給水電磁弁12aは、給水ホース接続口7aからの水道水を、図示しない給水経路を通って、トレイ5の洗剤投入室(図示せず)に給水する。洗剤投入室に注水された水道水は、投入された洗剤とともに、投入ホース(図示せず)を介して、外槽20内に注水される。
【0028】
仕上剤給水電磁弁12bは、給水ホース接続口7aからの水道水を、図示しない給水経路を通って、トレイ5の仕上剤投入室(図示せず)に給水する。仕上剤投入室に注水された水道水は、投入された仕上剤とともに、投入ホースを介して、外槽20内に注水される。
【0029】
外槽給水電磁弁12cは、給水ホース接続口7aからの水道水を、図示しない給水経路を通って、注水ホース(図示せず)から外槽20内に給水する。
【0030】
冷却水給水電磁弁12dは、給水ホース接続口7aからの水道水を、図示しない給水経路を通って、除湿ダクト32(図2参照)の水冷除湿機構に給水する。
【0031】
槽洗浄給水電磁弁12eは、給水ホース接続口7aからの水道水を、図示しない給水経路を通って、洗浄水供給ホース55(洗浄水供給配管)を介して後述する外槽カバー側ノズル50A(水路部材)に給水する。
【0032】
尚、風呂水給水ポンプUで汲み上げられた吸水ホース接続口7bからの風呂水は、図示しない給水経路を通って、注水ホースから外槽20内に給水される。
【0033】
図3に示すように、5連の給水電磁弁Tは、外槽20の上部左寄りに配置されている。尚、図3では、給水ユニット12から5連の給水電磁弁Tのみを抜き出した状態を示している。
【0034】
槽洗浄給水電磁弁12eの吐出ポート(図示せず)には、分岐継手54が図示しないシール部材(Oリングなど)を介して接続され、この分岐継手54の先端に洗浄水供給ホース55の一端が接続され、分岐継手54の側面(周面)に水抜きホース56(水抜き配管)が接続されている。
【0035】
洗浄水供給ホース55は、外槽本体21に沿って前方に延び、外槽カバー22の位置で左右方向の中央に折れ曲がるようにして延び、外槽カバー22の頂点部(中央部)に設けられた後述する給水口51f1(図4参照)に図示しないシール部材を介して接続されている。
【0036】
水抜きホース56は、分岐継手54から下方に延び、そして後方に折れ曲がりながら延び、外槽20(外槽本体21)の外側面後部に設けられた外槽給水継手24に接続されている。なお、外槽給水継手24は、トレイ5の洗剤投入室や仕上剤投入室に連通するケースと蛇腹ホース(図示せず)を介して接続されている。
【0037】
図4に示すように、外槽カバー22の前側には、槽洗浄用として水道水(洗浄水)を散水する外槽カバー側ノズル50Aが設けられている。外槽カバー側ノズル50Aは、合成樹脂などで形成され、略弓形形状(円弧形状)を呈し、外槽カバー22内の上部に設けられている。また、外槽カバー側ノズル50Aは、円周の四分の1程度の長さで形成され、中央から左右に同様の長さで延びている。また、外槽カバー側ノズル50Aの周方向の中央部には、洗浄水供給ホース55(図5参照)が接続される給水口50f1が形成され、外槽カバー22を貫通して、外槽カバー22の外側に突出している。なお、外槽カバー22と給水口50f1との境界には、Oリングなどのシール部材(図示せず)が設けられて水漏れしないようになっている。
【0038】
図5に示すように、外槽カバー側ノズル50Aが取り付けられる外槽カバー22の形状は、外槽本体21(図7参照)の開口21s(図7)と接続される大径部22bと、この大径部22bに対して手前側(前方)に向けて縮径する傾斜部22cと、この傾斜部22cに対して略鉛直方向に延びる前面部22dと、を有している。また、前面部22dには、前記パッキン23が取り付けられる凸部22eが前方に突出して形成されている。前記外槽カバー側ノズル50Aは、外槽カバー22の大径部22bの前端に位置するように配設されている。
【0039】
図6(a)に示すように、外槽カバー側ノズル50Aの前面50dには、周方向に間隔を置いて複数(本実施形態では、15個)の散水口50b2が形成されている。また、散水口50b2の孔径(直径)は、例えば、1.2mmとなるように形成されている。尚、この散水口50b2の個数、位置、孔径については、本実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0040】
図6(b)および(c)に示すように、外槽カバー側ノズル50Aの上面50eには、複数の取付部51Aが周方向に間隔を置いて上面50eから後方に突出するように形成されている。この取付部51Aは、矩形状の片部51aを有し、この片部51aにねじ挿通孔51bが形成されて構成されている。また、各取付部51Aは、上面50eと面一になるように形成され、図示しないねじを挿通孔51bに挿通し、外槽カバー22の内壁面22b1にねじ止めされるようになっている。
【0041】
図6(d)に示すように、外槽カバー側ノズル50Aの底面50fには、給水口50f1と対応する位置に散水口50a2が形成されている。尚、本実施形態では、散水口50a2は1個のみ設けられているが、複数個所に設けられていてもよい。
【0042】
図7に示すように、外槽カバー側ノズル50Aは、外槽カバー22(外槽20)と回転ドラム10の側面(周面)との間に配置されている。更に説明すると、回転ドラム10は、前端部に縮径した絞り部10dを有しており、外槽カバー側ノズル50Aが、外槽カバー22の大径部22bと絞り部10dとの間に位置している。尚、この絞り部10dの内周縁部にバランスリング10bが取り付けられている。
【0043】
このように外槽カバー側ノズル50Aが設けられた洗濯機S1では、図7において実線矢印R1で示すように、散水口50b2から前方に洗浄水が吐出され、外槽カバー22の傾斜部22cの内壁面22c1に当たり、内壁面22c1に沿って下方へ流れる。
【0044】
更に説明すると、散水口50b2から吐出された洗浄水は、直線状に吐出されて内壁面22c1に当たり、当たった後にその位置を中心として周囲に放射状に広がるようになっている。そして、内壁面22c1に散水された洗浄水は、外槽カバー22の傾斜部22cの内壁面22c1および前面部22dの内壁面22d1を重力の作用によって伝わって流れ落ちる。
【0045】
また、散水口50a2から吐出された洗浄水は、実線矢印R2で示すように、回転ドラム10の絞り部10dに当たる。絞り部10dに散水された洗浄水は、回転ドラム10が回転するときの遠心力によって外槽カバー22(外槽20)の大径部22bの内壁面22b1に飛び散り、また絞り部10dよりも後方の外槽カバー22の内面や回転ドラム10の外周面10sに飛散する。尚、回転ドラム10側に散水される散水口50a2は、1つではあるが、回転ドラム10を回転させながら散水することで、回転ドラム10の絞り部10dの周面全体に散水することが可能になる。このように、水道水を遠心力によって吹き飛ばして外槽カバー22内を洗浄することで、水道水を勢いよく吹き付けて洗浄する場合よりも使用水量を減らすことができる。
【0046】
図8に示すように、外槽カバー側ノズル50Aのそれぞれの散水口50b2(図6参照)から外槽カバー22の前方(内壁面22b1)に吐出された洗浄水が放射状に飛散したときに、鉛直方向(重力方向)に直交する水平方向において、隣り合う散水口50b1からの洗浄水が互いに重なるようになっている。これにより、洗浄水が下方に流れ落ちたときに、外槽カバー22の内壁面22c1、22d1において、洗浄水が流れない領域を無くすことができ、汚れが縦縞状に残るのを防止することができる。
【0047】
尚、上述した外槽カバー側ノズル50Aの散水口50b1の個数、孔径、位置は、図8で説明したように、洗浄水が外槽カバー22の内面全体に流れるように設定されるものであれば、個数、孔径、位置を適宜変更することができる。
【0048】
次に、本実施形態の洗濯機S1の動作について説明する。まず、本実施形態の洗濯機S1の全体の構成について簡単に説明する。図9に示すように、制御装置(マイクロコンピュータ)60は、CPU(Central Processing Unit)、プログラムを記憶したROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力回路などで構成され、各種スイッチ4b、4cに接続される操作ボタン入力回路62や、水位センサ63、温度センサ64、振動センサ65と接続され、使用者のボタン操作や洗濯工程、乾燥工程での各種情報信号を取得する。尚、温度センサ64は、外気温度を検出する外気温度センサ、排水口20cの温度を検出する温度センサなどが含まれる。また、振動センサ65は、外槽20の下部に設けられて、アンバランスによる振動を検知する。
【0049】
また、制御装置60は、各駆動回路66を介して、各給水電磁弁12a〜12e、風呂水給水ポンプU、排水電磁弁V、モータMの回転速度(回転ドラム10の回転速度)およびファン41の回転速度、ヒータ42の通電(ON/OFF)を制御する。また、制御装置60は、使用者に洗濯機S1の動作状態を知らせるための表示器4dや発光ダイオード67、ブザー68を制御する。
【0050】
制御装置60は、電源スイッチ4aが押されて電源が投入されると起動し、例えば、図10図14に示す洗濯および乾燥の基本的な制御処理プログラムを実行する。尚、以下では、洗濯から乾燥までの一連の運転が行われる場合について図10図14を参照して説明する。
【0051】
図10に示すように、制御装置60は、洗い工程(ステップS100)、すすぎ1工程(ステップS200)、すすぎ2工程(ステップS300)、自動おそうじ工程(ステップS400)、脱水工程(ステップS500)、乾燥工程(ステップS600)が順に実行される。
【0052】
図14に示すように、洗い工程(S100)の布量センシング工程(S101)において、制御装置60は、回転ドラム10を回転させ、注水前の衣類30について布量を算出する。尚、布量は、モータMの回転速度と電流値に基づいて、回転ドラム10内の衣類30の重量を算出することができる。衣類30の重量が増加することにより回転ドラム10を回転させるための負荷が大きくなり、モータMに流れるモータ電流が多く必要になることから、モータMのモータ電流と回転速度により衣類30の重量を算出することができる。
【0053】
洗剤溶かし給水工程(S102)において、制御装置60は、洗剤給水電磁弁12aを開弁し、トレイ5の洗剤投入室に水道水を給水する。トレイ5に注水された水道水は、洗剤を溶かしながら、蛇腹ホース(図示せず)、外槽給水継手24を介して外槽20内に注水される。尚、制御装置60は、洗剤給水電磁弁12aが開弁されてから所定時間経過後に閉弁する。
【0054】
回転給水工程(S103)において、制御装置60は、洗剤給水電磁弁12aの開弁を維持した状態において、回転ドラム10を回転させながら、循環ポンプPを駆動して、洗濯水(高濃度の洗剤溶液)を循環させて衣類30に洗濯水を散布しながら給水する。尚、ここでは、回転ドラム10を所定の回転速度で回転させる。また、制御装置60は、回転給水終了後、洗剤給水電磁弁12aを閉じる。
【0055】
前洗い工程(S104)において、制御装置60は、高濃度の洗剤溶液で衣類を洗う。
【0056】
布質センシング工程(S105)において、制御装置60は、水を含んだ状態の衣類30の重量を算出する。そして、制御装置60は、布量センシング工程(S101)で算出した衣類30の重量と布質センシング工程(S105)で算出した水を含んだ状態の衣類の重量から、衣類30の布質(吸水性)を判定する。判定された衣類の布質に従って以下の工程が実行される。
【0057】
補給水工程(S106)において、制御装置60は、布量センシング工程(S101)で算出した衣類30の重量と、布質センシング工程(S105)で判断した衣類30の布質に合わせて、外槽給水電磁弁12cおよび槽洗浄給水電磁弁12eを開弁して、外槽20の内部に給水する。例えば、タオル生地など吸水性の高いものであれば、補給水工程において洗濯水を補給する。なお、給水終了後、制御装置60は、外槽給水電磁弁12cおよび槽洗浄給水電磁弁12eを閉弁する。この補給水工程において、槽洗浄給水電磁弁12eを開弁することにより、外槽カバー側ノズル50Aから洗浄水が散水され、それまでの洗い工程で外槽カバー22内の上部や回転ドラム10の前端側面部などに付着した洗剤成分を流すことができる。
【0058】
本洗い工程(S107)において、制御装置60は、回転ドラム10を正逆両方向に回転させながら衣類30を洗う。本洗いが終了すると、衣類30のアンバランス状態を監視し、脱水に移行するか否かを判断する。
【0059】
次に、すすぎ1工程(S200)に入る。まず、排水工程(S201)において、制御装置60は、排水電磁弁Vを開弁し、外槽20内の洗濯水を排水する。尚、排水の終了判定は、水位センサの検出値によって行われる。
【0060】
脱水工程(S202)において、制御装置60は、排水終了後、回転ドラム10を高速で回転させて衣類30に含まれる洗濯水を脱水する。尚、脱水時の回転ドラム10の回転速度は、例えば1000r/min以上に設定される。
【0061】
回転シャワー工程(S203)において、制御装置60は、排水電磁弁Vを閉弁し、外槽給水電磁弁12cを開弁して、外槽20にすすぎ水を供給する。また、回転ドラム10を回転させつつ、循環ポンプPを駆動して、すすぎ水を回転ドラム10内の衣類30に散布する。
【0062】
脱水工程(S204)において、制御装置60は、回転ドラム10を高速で回転させつつ、循環ポンプPを停止させて、衣類30からすすぎ水を脱水する。
【0063】
回転シャワー工程(S205)において、制御装置60は、回転ドラム10を回転させつつ、再び循環ポンプPを駆動して、すすぎ水を回転ドラム10内の衣類30に散布する。
【0064】
続いて、すすぎ2工程(S300)に入る。まず、排水工程(S301)において、制御装置60は、回転ドラム10および循環ポンプPを停止させて、排水電磁弁Vを開弁し、外槽20内のすすぎ水を排水する。
【0065】
脱水工程(S302)において、制御装置60は、排水終了後、回転ドラム10を高速で回転させて衣類30に含まれる水(すすぎ水)を脱水する。
【0066】
給水工程(S303)において、制御装置60は、排水電磁弁Vを閉弁、槽洗浄給水電磁弁12eを開弁して、外槽20にすすぎ水を供給する。制御装置60は、給水終了後、槽洗浄給水電磁弁12eを閉弁する。給水工程において、槽洗浄給水電磁弁12eを開弁して給水を行うことにより、すすぎ工程時に、外槽カバー22の上部などに付着した汚れを流すことができる。
【0067】
仕上剤(ソフナー)給水工程(S304)において、制御装置60は、仕上剤給水電磁弁12bを開弁し、外槽20に仕上剤を含んだすすぎ水を供給する。制御装置60は、仕上剤給水終了後、仕上剤給水電磁弁12bを閉弁する。
【0068】
回転給水・補給水工程(S305)において、制御装置60は、外槽給水電磁弁12cおよび槽洗浄給水電磁弁12eを開弁し、すすぎ水を外槽20内に給水する。尚、吸水性の高い衣類が投入されていて、給水量が不足する場合には、すすぎ水を補給する。また、制御装置60は、外槽20にすすぎ水を溜めた状態で回転ドラム10を回転させて衣類30を攪拌しつつすすぐ。尚、このときの回転ドラム10の回転速度は、35〜45r/minに設定される。
【0069】
次に、自動おそうじ工程(S400)の詳細について、図11および図12を用いて説明する。
【0070】
まず、残水起動工程(S401)において、すすぎ2で外槽20内に溜めた水を排水せずに、そのまま回転ドラム10の回転速度を増加させる。そして、制御装置60は、回転ドラム10を、洗い工程時の回転速度(例えば、25r/min)よりも高く、脱水工程時の回転速度(例えば、1000r/min)よりも低い回転速度である80〜300r/minとする。ただし、回転ドラム10の背面に突起を設けて水掻き部を形成した場合などは、水が巻き上がり易く、回転ドラム10の外側や外槽20の内側を充分に洗浄できるので、その場合は、上述の回転速度より低くても構わない。
【0071】
本実施形態では、第1の槽洗浄回転速度として、100r/minで右回転させる。ここでの槽洗浄は、槽の下部の大きな汚れを落とすことを主とした暫定的な洗浄工程であるため、清水でなく、すすぎの水を利用し、しかも、回転ドラム10の回転速度を低めに設定している。尚、このときの水位は、上述の回転給水・補給水工程(S305)で、回転給水・補給水を行った後と同じ水位(第1の槽洗浄水位)であり、衣類30の量に応じて異なるが、最大でも水量11.5リットル(第1の槽洗浄水量)を給水した場合の水位となる。そして、回転ドラム10が回転し、外槽20の底部に溜められた洗浄水(水道水)が上方へ巻き上げられることにより、水が巻き上げられる側の外槽20の内側左側半分の領域や回転ドラム10の左側半分の領域が主に洗浄される。
【0072】
続いて、制御装置60は、回転ドラム10を右回転させてから所定時間が経過したか否かを図示しないタイマによって判定する。尚、所定時間は特に限定されるものではなく、例えば、60秒に設定される。その後、制御装置60は、所定時間100r/minで回転ドラム10を左回転させる。これにより、右回転のときと同様に外槽20内に溜められた洗浄水が巻き上げられて、外槽20の内側の右側半分の領域や回転ドラム10の右側半分の領域が主に洗浄される。
【0073】
このような槽洗浄を実行することにより、回転ドラム10の外周壁面及び外槽20の内周壁面に汚れやゴミが付着して残るのを抑制できる。また、回転ドラム10を右回転と左回転させることにより、洗浄される領域に偏りが発生するのを防止できる。
【0074】
そして、排水工程(S402)に入ると、制御装置60は、回転ドラム10の回転(左回転、100r/min)はそのまま維持した状態で、排水電磁弁Vを開にして、排水を行う。これにより、槽洗浄で使用された外槽20内の使用済みの洗浄水が排水ホース8を介して機外に排出される。排水が完了したか否かは、水位センサ63の検出値に基づいて判定できる。
【0075】
排水が完了すると、回転ドラム10の回転速度を増加させ、回転ドラム10の回転速度を380r/min程度とする。このとき、電導度センサで脱水度合いを確認し、衣類30に含まれる水分が一定程度にまで減少したことを検知すると、回転ドラム10の回転速度を低下させる。尚、本実施形態における電導度センサは、図示していないが、互いに向かい合う一対の電極で構成されており、この電極間の水の硬度を測定することが可能である。また、この電導度センサは、外槽20の下部側面付近に配置されているので、排水が進んで外槽20内の水が僅かとなった状態であっても、感度良く脱水度合いを検知できる。
【0076】
そして、電導度センサで脱水状態を検知した後に、回転ドラム10の回転速度を第2の槽洗浄回転速度である240r/min程度まで低下させ、更なる槽洗浄工程である槽洗浄シャワー1(S403)の動作を開始する。このときの槽洗浄は、図12に示すように、制御装置60が、排水電磁弁Vを閉じ、槽洗浄給水電磁弁12eを開放して、外槽20内に洗浄水を溜める。洗浄水を溜めているときも回転ドラム10の回転数は240r/minを維持する。洗浄水を溜める時間は水道水圧により変動している。初期の給水量と時間の関係にて、水道水圧を判定して、その水圧に合った給水時間を選択して時間制御にて給水を行う。ここで、第2の槽洗浄水量として約7リットルの洗浄水を給水することで、回転ドラム10底面高さの25%程度の第2の槽洗浄水位まで水を溜める。回転ドラム10の回転速度が240r/minの条件下では、洗浄水量が約7リットルあれば、外槽20及び外槽カバー22の内面全体に洗浄水を流すことが可能なためである。
【0077】
この動作により、外槽20の下部に溜まった水が、回転ドラム10の外側に存在する脱水孔等の凹凸によって掻き揚げられ、外槽20の底面や側面に当たって沿うように持ち上がる。しかも、また、この第2の槽洗浄回転速度240r/minは、残水起動(S401)における槽洗浄時の回転速度よりも高いので、残水起動(S401)における槽洗浄では届かない高い場所まで水を掻き揚げることができ、残水起動時の槽洗浄で落としきれない汚れを洗い流す。また、前回の乾燥運転中に付着した、外槽20の上部や外槽カバー22の上部の埃についても、この槽洗浄によって洗い流すことができる。しかも、残水起動時の槽洗浄で利用するすすぎ水と異なり、清水を利用するため、粉末汚れ等の付着を防止することが可能となる。
【0078】
また、ここでの槽洗浄では、槽洗浄給水電磁弁12eから、洗浄水供給ホース55を介して、外槽カバー側ノズル50Aへ給水される動作も行われる。そして、外槽カバー側ノズル50Aの前面50d側に設けられた散水口50b2から水を吐出し、外槽カバー22の内壁面に水を当て、外槽カバー側ノズル50Aの底面50f側に設けられた散水口50a2から水を吐出し、内槽10の側壁面に水を当てる。回転ドラム10の側壁面に散水された水は、回転ドラム10の回転による遠心力により周方向外側へ向かって飛び散り、外槽カバー22の後方の内壁面や回転ドラム10の外壁面にも行き渡る。
【0079】
このように、本実施形態では、外槽カバー側ノズル50Aによって散水されるシャワーを利用して、外槽カバー22の内側等に汚れが残り難くし、このシャワーでは届かない領域、例えば、外槽20の後方の高い位置における内壁面付近の領域については、上述の通り、外槽20の下部に溜められた水を上方へ掻き揚げることで、汚れの付着を防ぐ。
【0080】
尚、本実施形態は、外槽カバー側ノズル50Aによるシャワーと、外槽20に溜めた水の掻き揚げとを組み合わせることで、皮脂汚れや洗剤カスなどを自動で洗い流す方式であるが、外槽カバー側ノズル50Aによるシャワーは用いなくても、汚れ等を洗い流す効果は一定程度期待できる。その場合、外槽20内への給水は、槽洗浄給水電磁弁12e以外の給水弁を用いても構わない。ただし、仕上剤給水電磁弁12b及び冷却水給水電磁弁12dのように、給水流量が少ない弁で動作させると、給水時間が増加し、結果として運転時間が長くなってしまうので、洗剤給水電磁弁12aや外槽給水電磁弁12cが望ましい。
【0081】
次に、外槽20内に十分な洗浄水が給水されたら、槽洗浄給水電磁弁12eを閉弁するが、回転ドラム10の第2の槽洗浄回転速度はそのまま維持して(30秒)、外槽20に溜まった水の掻き揚げを継続し、洗浄される領域に偏りが発生するのを防止する。本実施形態では、運転時間が長くならないよう、第2の槽洗浄回転数による回転ドラム10の回転は一方向のみとしたが、所定時間経過後に回転方向を逆にしたり、これらを複数回繰り返したりして、より洗いムラを小さくする制御としても構わない。
【0082】
その後、排水(排気)工程(S404)において、回転ドラム10の回転速度を維持したまま、排水電磁弁Vを開いて洗浄水を排水するとともにファン41を6000r/min以上、望ましくは10000r/min以上に高速回転させる。このとき、上部ダクト33に設けられた吸気弁13を開くことにより、ベース1hの下部の隙間から吸い込まれた外部空気が、ファン41を通って温風吹き出し口37から回転ドラム10内に入った後、排水口20cを経由して排水ホース8へ到達する。尚、外部空気が取り込める構造となっているものであれば、本実施形態のような吸気弁13には限られない。
【0083】
単に排水する場合は、水位が徐々に下がっていくが排水ホース8の最下部に汚れ等が残り易いが、このように水を排出しながら空気も排出すると、排水ホース8内を空気と水が一緒になって勢い良く流れるので、排水ホース8内に臭いの基となる物質の付着を未然に防ぐことができる。
【0084】
また、溢水ホース15の径を排水ホース8よりも小さくする、例えば、溢水ホース15で最も細い部分の径を、排水ホース8で最も細い部分(図15における循環ホース81や弁上流ホース82)の径よりも小さくすることで、ファン41で発生させた空気が、溢水ホース15へ漏れてしまうのを防ぎ、排水ホース8を流れる空気の勢いを強めることが可能である。この場合のファン41の回転速度は、上述よりも低くても構わない。また、ファン41を動作させるに伴い、ヒータ42など加熱手段も動作させても良い。
【0085】
そして、排水電磁弁Vを開にしてから所定時間が経過すると、排水が完了したとして、回転ドラム10の回転速度を維持した状態で、更に別の槽洗浄工程である槽洗浄シャワー2(S405)の動作を開始する。このとき、まず制御装置60が、吸気弁13を閉じてファン41の回転を停止させるとともに、排水電磁弁Vを再度閉じ、槽洗浄給水電磁弁12eを再度開放して、約2.5リットルの水道水の給水を行う。この2.5リットルの洗浄水量(第3の槽洗浄水量)は、回転ドラム10の回転速度が240r/min(第2の槽洗浄水量と同じ)の条件下では、外槽カバー22の内側全体までは行き渡り難いものの、外槽20の内部底面全体には洗浄水を流すことが可能な程度の量である。このように、汚れの付着しやすい外槽20内部底面が、繰り返し清水で洗浄されるので、確実に汚れを落とすことができる。しかも、このときに使用する水量は、第2の槽洗浄水量と比べて少なくしているため、節水にもつながる。尚、ここでの槽洗浄工程でも、槽洗浄給水電磁弁12eから外槽カバー側ノズル50Aへ給水して、外槽カバー22等へ散水を行っている。
【0086】
次に、外槽20内に十分な洗浄水が給水されたら、槽洗浄給水電磁弁12eを閉弁するが、回転ドラム10の槽洗浄回転速度はそのまま維持する(30秒)。
【0087】
そして、所定時間が経過すると、脱水工程(S500)に入る。図13に示すように、まず、排水工程(S501)において、回転ドラム10の回転速度を維持したまま、排水電磁弁Vを開いて洗浄水を排水する。更に、排水が完了したら、脱水工程(S502)へ進み、最終脱水工程を所定時間実行した後、排水電磁弁Vを開けたまま、乾燥工程(S600)へ移行する。
【0088】
このように、自動おそうじ工程(S400)から脱水工程(S500)に移行する際に、回転ドラム10の回転を維持したまま脱水へ移行することで、運転時間の短縮を図ることができる。すなわち、脱水前に回転ドラム10の回転を停止させてしまうと、脱水を開始する際に、回転ドラム10のバランスをとりながら回転速度を上昇させることが必要になり、脱水に対応した回転速度に上昇するまでに時間がかかることになる。本実施形態のように、自動おそうじ工程で回転ドラム10の回転を停止させないようにすることで、上述したバランス取りの時間を省略することができ、運転時間の短縮を図ることが可能になる。
【0089】
尚、最終脱水工程における回転ドラム10の脱水回転速度は、利用者が操作パネル4により適宜設定できるようにしても良い。例えば脱水最高回転速度を1000r/min以上に設定することで、衣類30の含水率を低減でき、洗濯物を部屋干しする際に部屋干し時間を短縮することができ、また部屋干し後にアイロン掛けにより洗濯物を早くに使用(着用)することが可能になる。一方、例えば脱水最高回転数を700r/min以下に設定することで、衣類30の脱水率を低めて、Yシャツなどシワになりやすい衣類において脱水ジワが生じるのを低減できる。その結果、アイロン掛けする際の労力を軽減でき、しかも消費電力量を低減できる。また、最終脱水工程において回転ドラム10を高速回転させることにより、衣類30に含まれていた水分が絞り出され、回転ドラム10の貫通孔10hを介して、外槽20の内壁面に勢い良く吹き付けられるので、外槽20の内壁面に汚れ等が付着するのを防ぐことが可能である。
【0090】
次に、乾燥工程(S601)における動作について説明する。
【0091】
まず、乾燥工程前半から中盤では、図16に示す通り、排水電磁弁Vを開いた状態で回転ドラム10を回転させると共に、ファン41を運転して外槽20内の空気を通風口20dから吸い出して除湿ダクト32内を通過させて水冷除湿した後にヒータ42で加熱して温風吹き出し口37から回転ドラム10内の衣類30に向けて吹き込む循環空気17を生成する。回転ドラム10内で衣類30から水分を奪って湿潤した循環空気17の除湿は、冷却水給水電磁弁12dを開き供給管34から除湿ダクト32内の壁面に流れ出た冷却水52を流下させ、循環空気17と触れさせることにより実現する。除湿ダクト32内の壁面に流れ出た冷却水52は排水口20cを通って排水ホース8により排出される。
【0092】
乾燥工程後半では、図17に示すように、吸気弁13を動作させ循環風路を閉じ、ベース1h下部の隙間から外部空気16を吸気する。吸気された外部空気16は、外槽20の側面を流れながら外槽20、モータM、ファン41の排熱を受けながら温められ、乾燥中盤までに外槽20の上面と筺体1の空間に溜められた高温の筐体内部空気15とともにファン41へ吸い込まれる。このとき、ヒータ42をオフにして冷却水52を止めている。吸い込まれた筐体内部空気15は衣類30に吹き付けられ、衣類30から水分を奪い、湿潤して排水口20cから排水ホース8を通り、排水トラップ19の水封じを破って排水口39に排出される。一般的な排水トラップの場合、水封じ高さは50〜80mm程度あるため、水封じを破るには排水ホース8側の圧力は約1000Pa以上必要となる。
【0093】
乾燥工程終了後は、排水孔101側の圧力より排水ホース8側の圧力を高く保ちながら水封じを破らない圧力レベルまでファン41の回転数を下げて給水し、排水トラップ19の水封じを回復させて乾燥終了となる。
【0094】
上述の本実施形態によれば、自動おそうじ工程(S400)における槽洗浄により、回転ドラム10の外面及び外槽20の内面に付着した汚れ等が取り除かれ、カビの繁殖や異臭の発生を抑制できる。更に、自動おそうじ工程(S400)における排水ホース洗浄では、排水ホース8内を、空気と水が一緒になって勢い良く流れるため、排水ホース8内に堆積する汚れ等も物理的に洗い流すことが可能である。また、槽洗浄の際に溜まった水を利用し、これを排水するときに排気するため、新たに水を溜め直す場合と比べて節水になる。
【0095】
ここで、すすぎ水を排水するときに、ファン41を回転して排気させても構わないが、汚れのより少ない槽洗浄シャワー1(S403)で外槽20内に溜まった水を排水するときにのみ排気すると、効率的である。尚、槽洗浄シャワー2(S405)で外槽20内に溜まった水は、排水孔101に供給して排水トラップ19の水封じを回復させるために用いるので、このときには排気しないのが望ましい。この槽洗浄シャワー2(S405)における排水でも排気を行う場合には、排水トラップ19の水封じを回復するために再度水道水を供給し、排水孔101へ排水する必要がある。
【0096】
尚、本実施形態における自動おそうじ工程(S400)は、所定のボタンがオンに設定された状態で洗濯コース又は洗濯乾燥コースが開始された場合にのみ行い、オフに設定された状態で洗濯コース又は洗濯乾燥コースが開始された場合には、これらの槽洗浄工程及び排水ホース洗浄工程を省略して通常の洗濯運転又は洗濯乾燥運転が行われる。したがって、自動おそうじ工程をオンに設定していれば、洗濯コースや洗濯乾燥コースとは別の特別な洗浄コースを行わなくても、洗濯コースや洗濯乾燥コースの途中で自動的に、槽壁面や排水ホースに汚れが残り難くする運転を行う。このようにして汚れやゴミの付着を抑制できることで、カビの繁殖や異臭の発生を抑制することが可能になる。更には、洗濯中の洗濯物へのゴミの付着も防止または抑制できる。
【0097】
また、上述の実施形態では、洗い工程から脱水工程までの間の途中で、槽洗浄と排水ホース洗浄とを一体で、自動的に行うものについて説明したが、槽洗浄を行わずに排水ホース洗浄のみを行うようにしても良い。その場合は、最終すすぎである、すすぎ2で溜った水を排水しながら、ファン41を回転させて排気し、その後、排水孔101へ水を供給して排水トラップ19の水封じを回復する方法が考えられる。あるいは、すすぎ2で溜った水はファン41を回転させずに排出した後、再度水道水を供給し直し、排水孔101が水に浸かる程度まで溜めてから、吸気弁13を開にし、排水電磁弁Vを開にした状態で、ファン41を回転させて排気するようにしても良い。
【0098】
次に、その他の実施形態について、図18図20を用いて説明する。図18及び図19は、排水ホースの洗浄を、すすぎと脱水の間ではなく、洗濯運転の終了後に行う場合の例を示している。この場合、脱水工程(S502)が終わると、自動的に、排水電磁弁Vを閉じ、仕上剤給水電磁弁12bを開く(S701)。こうして仕上剤給水を行い、外槽20の奥側底部まで水を溜めた後、吸気弁13を開き、排水電磁弁Vを開くと共に、ファン41を回転させ、排水ホース8内へ水と空気を流し込む(S702)。そして、水がなくなるまでの所定時間が経過すると、仕上剤給水電磁弁12bを開き、排水トラップ19の水封じを回復する補給水を行う(S703)。尚、脱水工程(S502)の後に再度水道水を供給し直す量としては、排水継ぎ手18が浸かる程度以上に溜めるのが望ましいが、少なくとも弁上流ホース82の一部が水に浸かっている状態であれば、一定のホース洗浄効果が得られる。
【0099】
図20は、洗濯乾燥運転の終了後に、排水ホースの洗浄を行う場合の例を示している。この場合、乾燥工程(S601)が終わると、自動的に、排水電磁弁Vを閉じ、仕上剤給水電磁弁12bを開く(S701)。こうして仕上剤給水を行い、外槽20の奥側底部まで水を溜めた後、吸気弁13を開き、排水電磁弁Vを開くと共に、ファン41を回転させ、排水しながら排気する(S702)。その後、所定時間が経過すると、仕上剤給水電磁弁12bを開き、排水孔101への補給水を行う(S703)。
【0100】
また、上述の実施形態では、ヒータ加熱方式の洗濯乾燥機において説明したが、ヒートポンプ方式の洗濯乾燥機においても同様に実施できる。更に、上述の実施形態では、ドラム式洗濯乾燥機について説明したが、縦型の洗濯乾燥機であっても良い。
【符号の説明】
【0101】
1 筺体
8 排水ホース
10 回転ドラム
13 吸気弁
20 外槽
20c 排水口
41 ファン
101 排水孔
V 排水電磁弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20