特許第5894865号(P5894865)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5894865
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】車両位置検出装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/30 20060101AFI20160317BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20160317BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
   G01C21/30
   G08G1/0969
   G09B29/10 A
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-121729(P2012-121729)
(22)【出願日】2012年5月29日
(65)【公開番号】特開2013-246123(P2013-246123A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】クラリオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】特許業務法人湘洋内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 和弘
【審査官】 根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−174771(JP,A)
【文献】 特開平11−325931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00−21/36
G08G 1/0969
G09B 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両位置検出装置であって、
自車両の状態に関する車両情報を取得する車両情報取得部と、
前記車両情報が取り得る値のそれぞれの値と、当該値が車両の位置がリンクにマップマッチされるマッチ状態で発生するマッチ条件付き確率と、当該値が車両の位置がリンクにマップマッチされないフリー状態で発生するフリー条件付き確率とを対応付けた、条件付き確率情報を記憶する条件付き確率情報記憶部と、
前記条件付き確率情報を用いて、前記車両情報取得部により取得された前記車両情報の値に対応する、マッチ条件付き確率及びフリー条件付き確率を取得し、取得した当該マッチ条件付き確率に基づいてマッチ状態の確率指標を算出し、取得した当該フリー条件付き確率に基づいてフリー状態の確率指標を算出する確率指標算出部と、
前記確率指標算出部により算出された前記マッチ状態の確率指標及び前記フリー状態の確率指標に基づいて、いずれの状態を選択するかを判定する状態判定部と、を有する、
ことを特徴とする車両位置検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両位置検出装置であって、
前記条件付き確率情報は、前記車両情報が取り得る値を一以上の範囲に区分し、前記区分した範囲ごとに、当該範囲に含まれる値がマッチ状態で発生する前記マッチ条件付き確率と、当該範囲に含まれる値がフリー状態で発生する前記フリー条件付き確率とを対応付けたものであり、
前記確率指標算出部は、前記条件付き確率情報を用いて、前記車両情報取得部により取得された前記車両情報の値が含まれる範囲に対応する、前記マッチ条件付き確率及び前記フリー条件付き確率を取得する、
ことを特徴とする車両位置検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両位置検出装置であって、
前記車両情報取得部は、前記車両情報を一以上取得し、
前記条件付き確率情報記憶部は、前記車両情報ごとに、前記条件付き確率情報を記憶し、
前記確率指標算出部は、前記車両情報ごとに、前記マッチ条件付き確率及び前記フリー条件付き確率を取得し、取得した前記車両情報それぞれのマッチ条件付き確率に基づいてマッチ状態の確率指標を算出し、取得した前記車両情報それぞれのフリー条件付き確率に基づいてフリー状態の確率指標を算出する、
ことを特徴とする車両位置検出装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか一項に記載の車両位置検出装置であって、
マッチ状態及びフリー状態の状態遷移(同じ状態への遷移を含む)の関係ごとに、当該関係の状態遷移が発生する遷移確率を記憶する遷移確率情報記憶部を有し、
前記確率指標算出部は、取得した前記マッチ条件付き確率及びマッチ状態へ遷移する遷移確率に基づいて、前記マッチ状態の確率指標を算出し、取得した前記フリー条件付き確率及びフリー状態へ遷移する遷移確率に基づいて、前記フリー状態の確率指標を算出する、
ことを特徴とする車両位置検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両位置検出装置であって、
前記確率指標算出部は、
前記状態判定部により前回選択された状態がマッチ状態である場合、マッチ状態からマッチ状態への遷移確率と、マッチ状態からフリー状態への遷移確率と、を取得し、
前記状態判定部により前回選択された状態がフリー状態である場合、フリー状態からフリー状態への遷移確率と、フリー状態からマッチ状態への遷移確率と、を取得する、
ことを特徴とする車両位置検出装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の車両位置検出装置であって、
所定期間内にマッチ状態が発生するマッチ発生確率、及び、所定期間内にフリー状態が発生するフリー発生確率を記憶する発生確率情報記憶部を有し、
前記確率指標算出部は、取得した前記マッチ条件付き確率、前記マッチ状態へ遷移する遷移確率、及び前記マッチ発生確率に基づいて、前記マッチ状態の確率指標を算出し、取得した前記フリー条件付き確率、前記フリー状態へ遷移する遷移確率、及び前記フリー発生確率に基づいて、前記フリー状態の確率指標を算出する、
ことを特徴とする車両位置検出装置。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか一項に記載の車両位置検出装置であって、
前記車両情報は、位置誤差、方位誤差、尤度、GPS連続測位回数、GPS信号強度、車速、高度、及び路面傾斜角の少なくとも一以上である、
ことを特徴とする車両位置検出装置。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか一項に記載の車両位置検出装置であって、
前記確率指標算出部は、前記自車両の状態に応じて、前記確率指標の算出に使用する車両情報を選択する、又は車両情報の値を補正する、
ことを特徴とする車両位置検出装置。
【請求項9】
車両位置検出装置のプログラムであって、
自車両の状態に関する車両情報を取得する車両情報取得部と、
前記車両情報が取り得る値のそれぞれの値と、当該値が車両の位置がリンクにマップマッチされるマッチ状態で発生するマッチ条件付き確率と、当該値が車両の位置がリンクにマップマッチされないフリー状態で発生するフリー条件付き確率とを対応付けた、条件付き確率情報を記憶する条件付き確率情報記憶部と、
前記条件付き確率情報を用いて、前記車両情報取得部により取得された前記車両情報の値に対応する、マッチ条件付き確率及びフリー条件付き確率を取得し、取得した当該マッチ条件付き確率に基づいてマッチ状態の確率指標を算出し、取得した当該フリー条件付き確率に基づいてフリー状態の確率指標を算出する確率指標算出部と、
前記確率指標算出部により算出された前記マッチ状態の確率指標及び前記フリー状態の確率指標に基づいて、いずれの状態を選択するかを判定する状態判定部として、前記車両位置検出装置を機能させる、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、車両位置検出装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の移動体に用いられるナビゲーション装置では、地図データの道路リンク上の自車位置(例えば、「マップマッチ位置」と呼ばれる。)を求めるマップマッチ処理が行われる。
【0003】
マップマッチ処理では、例えば、車速センサ及びジャイロセンサから出力されるデータに基づいて算出された自車位置(例えば、「推定位置」などと呼ばれる。)及び自車方位と、地図データとを用いる。そして、例えば、推定位置とリンク上の候補位置との位置誤差や、自車方位とリンク方位との方位誤差が所定の条件を満たすリンクを、マップマッチ対象として選択する。また、マップマッチ対象の各リンク、あるいは、各リンク上の候補位置について、所定の尤度関数により尤度(「評価値」、「信頼度」などとも呼ばれる。)を求め、尤度が高いリンク上にマップマッチ位置を求める。例えば、特許文献1には、自車位置と誤差共分散とに基づいて道路リンク上の自車位置の尤度を算出することが記載されている。
【0004】
また、ナビゲーション装置では、現在位置を示す画像(例えば、「カーマーク」と呼ばれる。)を表示する際、マップマッチされた位置に表示するか、マップマッチされていない位置に表示するかの判定(以下、「フリー状態判定」とも呼ぶ。)が行われる。なお、マップマッチされている表示状態を「マッチ状態」、マップマッチされていない表示状態を「フリー状態」とも呼ぶ。
【0005】
このフリー状態判定では、例えば、位置誤差、方位誤差、GPS受信状態などの自車両の各パラメータと、各パラメータに対応する閾値とを用いた条件判定が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−2324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、複数の閾値を組み合わせた条件を用いたフリー状態判定は、仕組みが複雑であり、例えば、次のような問題がある。
【0008】
まず、フリー状態判定の精度を上げるためには、各閾値を最適な値とするとともに、各閾値の組み合わせた条件も最適である必要がある。しかし、現実的には、車両が走行するあらゆる場所などを考慮して、最適な値や条件を決定するのは困難である。また、判定精度を上げるためには、複数の閾値を組み合わせた条件を定める必要があるが、閾値の数が増えれば判定処理は複雑になる。また、新たな判定条件を追加又は削除する場合、閾値を単純に追加又は削除しても最適な条件になるとは限らず、各閾値を調整する必要などが生じる。
【0009】
そこで、本発明は、より簡単な仕組みで精度の高いフリー状態判定を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願は、上記課題の少なくとも一部を解決する手段を複数含んでいるが、その例を挙げるならば、以下のとおりである。
【0011】
本発明の一態様は、車両位置検出装置であって、自車両の状態に関する車両情報を取得する車両情報取得部と、前記車両情報が取り得る値のそれぞれの値と、当該値が車両の位置がリンクにマップマッチされるマッチ状態で発生するマッチ条件付き確率と、当該値が車両の位置がリンクにマップマッチされないフリー状態で発生するフリー条件付き確率とを対応付けた、条件付き確率情報を記憶する条件付き確率情報記憶部と、前記条件付き確率情報を用いて、前記車両情報取得部により取得された前記車両情報の値に対応する、マッチ条件付き確率及びフリー条件付き確率を取得し、取得した当該マッチ条件付き確率に基づいてマッチ状態の確率指標を算出し、取得した当該フリー条件付き確率に基づいてフリー状態の確率指標を算出する確率指標算出部と、前記確率指標算出部により算出された前記マッチ状態の確率指標及び前記フリー状態の確率指標に基づいて、いずれの状態を選択するかを判定する状態判定部と、を有する。
【0012】
上記した以外の課題、構成、及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るナビゲーション装置1の概略図である。
図2】地図DB1400の概略図である。
図3】制御装置100の機能に関する概略図である。
図4】位置誤差に関する条件付き確率情報410を説明する図である。
図5】GPS受信状態(連続測位回数)に関する条件付き確率情報411を説明する図である。
図6】路面傾斜角(絶対値)に関する条件付き確率情報412を説明する図である。
図7】表示遷移確率情報420を説明する図である。
図8】表示発生確率情報430を説明する図である。
図9】フリー状態判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るナビゲーション装置1の概略図である。図示するように、ナビゲーション装置1は、制御装置100と、ディスプレイ110と、入力装置120(タッチパネル121、ハードスイッチ122)と、音声入出力装置130(スピーカ131、マイクロフォン132)と、記憶装置140と、インタフェース(I/F)装置150と、車速センサ160と、ジャイロセンサ161と、GPS(Global Positioning System)受信装置162と、FM放送受信装置170と、ビーコン受信装置171と、通信装置172と、車内通信装置180と、を備える。
【0016】
制御装置100は、所定のプログラムを実行してナビゲーション装置1の各種デバイスを統合的に制御し、ナビゲーション装置としての様々な機能を実現するユニットである。
【0017】
制御装置100は、例えば、各種演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)101と、実行対象のプログラムやデータを格納するRAM(Random Access Memory)102と、プログラムやデータを予め格納するROM(Read Only Memory)103と、他のデバイスを制御するためのインタフェース(I/F)104と、を備える。
【0018】
ディスプレイ110は、制御装置100で生成されたグラフィックス情報を表示するユニットである。ディスプレイ110は、例えば、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(Electro-Luminescence Display)などである。
【0019】
入力装置120は、ユーザの指示をユーザの操作により受け付けるためのユニットである。入力装置120は、タッチパネル121、ハードスイッチ122などで構成される。
【0020】
タッチパネル121は、例えば、ディスプレイ110の表示面に貼られた透過性のある操作パネルである。タッチパネル121は、例えば、ディスプレイ110に表示された画像のXY座標と対応したタッチ位置を特定し、タッチ位置を座標に変換して制御装置100に出力する。タッチパネル121は、例えば、感圧式または静電式の入力検出素子などにより構成される。ハードスイッチ122は、例えば、ダイヤルスイッチ、スクロールキー、キーボード、ボタンなどである。
【0021】
音声入出力装置130は、音声出力装置としてスピーカ131と、音声入力装置としてマイクロフォン132とを備える。スピーカ131は、制御装置100で生成された音声信号を出力する。マイクロフォン132は、ユーザその他の搭乗者から発せられた音声などのナビゲーション装置1の外部の音声を取得し、制御装置100に出力する。
【0022】
スピーカ131とマイクロフォン132とは、例えば、車両の所定の部位に、別個に配置されている。もちろん、スピーカ131とマイクロフォン132とは、一体の筐体に収納されていてもよい。また、ナビゲーション装置1は、スピーカ131およびマイクロフォン132を、それぞれ複数備えていてもよい。
【0023】
記憶装置140には、制御装置100が各種処理を実行するために必要なプログラムやデータが格納される。これらの情報は、例えば、CPU101によってRAM102上に読み出されて使用される。記憶装置140は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)により構成される。記憶装置140は、DVD−ROMなどの可搬型の記憶媒体を読み出すドライブ、フラッシュROM、SSD(Solid State Drive)などであってもよい。
【0024】
記憶装置140には、例えば、図2(地図DB1400の概略図)に示すような地図DB(Database:データベース)1400が格納される。地図DB1400は、地図上の区画された領域であるメッシュの識別コード(メッシュID)1410ごとに、そのメッシュ領域に含まれる道路を構成する各リンクのリンクデータ1411を含む。リンクデータ1411は、リンクの識別コード(リンクID)1412ごとに、当該リンクを構成する2つのノード(開始ノード及び終了ノード)の座標情報1413、当該リンクを含む道路の種別(例えば、有料道路、一般道路など)を示す種別情報1414、当該リンクの長さを示すリンク長情報1415、当該リンクのリンク旅行時間1416、前記2つのノードにそれぞれ接続するリンクのリンクID(接続リンクID)1417、を含む。当該リンクの方位を示すリンク方位情報、当該リンクを含む道路の道路幅を示す道路幅情報、などを含んでいてもよい。
【0025】
なお、上記の地図DB1400の構成は、一例であり、上記の構成に限られない。また、一般的な地図DBに含まれる情報を排除するものではない。例えば、地図DB1400には、施設情報、地図描画データ、施設などの地図構成物の画像データなどが含まれていてもよい。
【0026】
図1に戻って、I/F装置150は、携帯端末や可搬型の記憶媒体などの外部デバイスと接続して、情報の送受信を行う装置である。I/F装置150は、例えば、USB(Universal Serial Bus)インタフェースである。
【0027】
車速センサ160、ジャイロセンサ161、およびGPS受信装置162は、移動体の現在位置などを検出するために使用される。これらの装置は、車内通信装置180及び車内通信ネットワーク(不図示)を介して制御装置100に接続されてもよい。
【0028】
車速センサ160は、車速を算出するために用いる車速データを出力するセンサである。ジャイロセンサ161は、光ファイバジャイロや振動ジャイロ等で構成され、移動体の回転による角速度を検出するセンサである。GPS受信装置162は、GPS衛星からの信号を受信し、移動体とGPS衛星間の距離とその距離の変化率を3個以上の衛星に対して測定することで、移動体の現在位置や進行速度を測定する。このように検出された各種データは、制御装置100に送られて使用される。
【0029】
FM放送受信装置170は、FM放送局から送られる電波を受信する。FM放送受信装置170は、例えば、概略現況交通情報、規制情報、SA/PA(サービスエリア/パーキングエリア)情報、災害情報などを受信する。
【0030】
ビーコン受信装置171は、道路に設置されたビーコン装置から送られる電波を受信する装置である。ビーコン受信装置171は、例えば、現況交通情報、規制情報、SA/PA情報、災害情報などを受信する。
【0031】
通信装置172は、無線通信によりネットワークと接続し、情報の送受信を行う装置である。通信装置172は、例えば、ネットワーク上のサーバから、交通情報、規制情報、SA/PA情報、災害情報などを受信する。
【0032】
車内通信装置180は、車内通信ネットワークと接続して通信を行う装置である。車内通信装置180は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)(不図示)などと接続され、各種情報を受信する。車内通信ネットワークは、例えば、CAN(Controller Area Network)やFlexRay(登録商標)などの規格に準拠したネットワークである。
【0033】
なお、図1のナビゲーション装置1の構成は、本願発明の特徴を説明するにあたって主要構成の一例を説明したのであって、上記の構成に限られない。また、一般的なナビゲーション装置が備える構成を排除するものではない。
【0034】
図3は、制御装置100の機能構成の概略図である。図示するように、制御装置100は、センサ情報取得部10と、車両状態算出部20と、マップマッチ処理部30と、フリー状態判定部40と、条件付き確率情報記憶部41と、表示遷移確率情報記憶部42と、表示発生確率情報記憶部43と、表示制御部50と、経路誘導部60と、を有する。
【0035】
上記の各機能部は、例えば、記憶装置140に記憶されている所定のプログラムをRAM102にロードしてCPU101で実行することで実現可能である。条件付き確率情報記憶部41、表示遷移確率情報記憶部42、及び表示発生確率情報記憶部43は、例えば、CPU101がRAM102又は記憶装置140を利用することにより実現してもよい。
【0036】
上記の所定のプログラムは、例えば、通信装置172を介してネットワークから、記憶装置140にダウンロードされ、それから、RAM102上にロードされてCPU101により実行されるようにしてもよい。また、通信装置172を介してネットワークから、RAM102上に直接ロードされ、CPU101により実行されるようにしてもよい。また、例えば、I/F装置150に接続された記憶媒体から、記憶装置140あるいはRAM102にロードされるようにしてもよい。
【0037】
センサ情報取得部10は、所定のタイミングで(例えば、所定距離ごとに)、車速センサ160、ジャイロセンサ161、及びGPS受信装置162から出力される各種データを取得し、保存する。
【0038】
車両状態算出部20は、センサ情報取得部10により取得された各種データに基づいて、所定のタイミングで(例えば、所定距離ごとに)、平面座標上の自車位置(推定位置)、自車方位、自車速度、路面傾斜角、及び、高度変化量を算出する。これらの車両状態に関するパラメータの算出は、既存の方法で実現できるため説明を省略する。
【0039】
マップマッチ処理部30は、車両状態算出部20により算出された各パラメータと、地図DB1400とを用いて、所定のタイミングで(例えば、所定距離ごとに)、マップマッチ位置を特定する。マップマッチ位置の特定は、既存の方法で実現できるため詳細な説明は省略する。
【0040】
例えば、マップマッチ処理部30は、地図DB1400を参照して、車両状態算出部20により算出された自車位置から所定範囲内のリンクであって、かつ、車両状態算出部20により算出された自車方位との方位誤差が所定角度以内のリンクを抽出し、抽出したリンク上に候補位置を算出する。そして、各候補位置について、当該自車方位と当該候補位置があるリンクのリンク方位との方位誤差と、当該自車位置から当該候補位置があるリンクまでの距離である位置誤差とに基づいて、所定の尤度関数を用いて当該候補位置の尤度を算出する。それから、各候補位置の尤度に基づいて、各候補位置の中からマップマッチ位置を特定する。例えば、最も尤度の高い候補位置を、マップマップ位置として特定する。
【0041】
フリー状態判定部40は、所定のタイミングで(例えば、所定距離ごとに)、現在位置を、マップマッチ処理部30により算出されたマップマップ位置に表示するか、車両状態算出部20により算出された自車位置に表示するか、の判定を行う。本実施形態では、フリー状態判定部40は、車両の状態に関する各種パラメータの値を、各表示状態(マッチ状態及びフリー状態)の確率に変換し、この確率に基づいて判定を行う。
【0042】
そのため、フリー状態判定部40は、条件付き確率情報記憶部41、表示遷移確率情報記憶部42、及び表示発生確率情報記憶部43に予め記憶された確率情報を用いる。
【0043】
条件付き確率情報記憶部41には、車両の状態に関する各種パラメータそれぞれについて、当該パラメータの値が、マッチ状態及びフリー状態それぞれの状態(条件)で発生する確率を特定する条件付き確率情報が格納される。本実施形態では、車両の状態に関する各種パラメータには、位置誤差、方位誤差、尤度、GPS受信状態(連続測位回数)、GPS信号強度、車速、高度、及び路面傾斜角が含まれる。
【0044】
なお、上記の各種パラメータは、一例であり、さらに他のパラメータを含んでいてもよい。また、これらのパラメータ全てを使用する必要はなく、これらのパラメータのうち一以上を使用するようにしてもよい。
【0045】
位置誤差に関する条件付き確率情報は、例えば、図4(位置誤差に関する条件付き確率情報410)に示すように、位置誤差が取り得る値が一以上の範囲4101に区分され、区分した範囲4101ごとに、マッチ状態であるときに当該範囲に含まれる値が出現する確率4102と、フリー状態であるときに当該範囲に含まれる値が出現する確率4103と、が対応付けられている。本図では、位置誤差は、11個の範囲に区分されている。
【0046】
GPS受信状態(連続測位回数)に関する条件付き確率情報は、例えば、図5(GPS受信状態(連続測位回数)に関する条件付き確率情報411を説明する図)に示すように、連続測位回数が取り得る値が一以上の範囲4111に区分され、区分した範囲4111ごとに、マッチ状態であるときに当該範囲に含まれる値が出現する確率4112と、フリー状態であるときに当該範囲に含まれる値が出現する確率4113と、が対応付けられている。本図では、連続測位回数は、7個の範囲に区分されている。
【0047】
路面傾斜角に関する条件付き確率情報は、例えば、図6(路面傾斜角(絶対値)に関する条件付き確率情報412を説明する図)に示すように、路面傾斜角の絶対値が取り得る値が一以上の範囲4121に区分され、区分した範囲4121ごとに、マッチ状態であるときに当該範囲に含まれる値が出現する確率4122と、フリー状態であるときに当該範囲に含まれる値が出現する確率4123と、が対応付けられている。本図では、路面傾斜角の絶対値は、9個の範囲に区分されている。
【0048】
他のパラメータ(方位誤差、尤度、GPS信号強度、車速、高度)の条件付き確率情報については、図示しないが、図4図6と同様の構成を有している。すなわち、当該パラメータが取り得る値が一以上の範囲に区分され、区分した範囲ごとに、マッチ状態であるときに当該範囲に含まれる値が出現する確率と、フリー状態であるときに当該範囲に含まれる値が出現する確率と、が対応付けられている。
【0049】
上述の各パラメータの条件付き確率情報は、実際の車両の走行データを集計したデータを基に予め作成され、ナビゲーション装置1に格納される。例えば、位置誤差であれば、走行データを基に、マッチ状態及びフリー状態それぞれについて、各範囲に含まれる位置誤差データの個数を求める。そして、マッチ状態及びフリー状態それぞれについて、範囲ごとに、当該範囲に含まれる個数を全範囲の総個数で割ることで、当該範囲の確率を算出する。走行データに含まれる位置誤差データだけでなく又は替えて、車両が走行したときに理論上発生する位置誤差を求め、それらの個数を各範囲に加えて、確率を算出するようにしてもよい。他のパラメータについても同様の方法で、条件付き確率情報を作成することができる。
【0050】
表示遷移確率情報記憶部42には、各表示状態(マッチ状態及びフリー状態)が他の表示状態(同じ表示状態を含む)に遷移する確率を特定する表示遷移確率情報が格納される。
【0051】
表示遷移確率情報は、例えば、図7(表示遷移確率情報420を説明する図)に示すように、表示状態の遷移関係を特定する情報421ごとに、当該遷移関係が発生する確率422が対応付けられている。遷移関係としては、マッチ状態からフリー状態への遷移、マッチ状態からマッチ状態への遷移、フリー状態からマッチ状態への遷移、フリー状態からフリー状態への遷移、がある。
【0052】
ここで、状態A(マッチ状態)から状態B(フリー状態)へ遷移する確率P(状態Aから状態Bへの遷移)は、式(1)により決定される。
式(1): P(状態Aから状態Bへの遷移)=1/(状態Bが発生するまでに状態Aが連続して発生する回数)
【0053】
同様に、確率P(状態Bから状態Aへの遷移)は、式(2)により決定される。
式(2): P(状態Bから状態Aへの遷移)=1/(状態Aが発生するまでに状態Bが連続して発生する回数)
【0054】
また、確率P(状態Aから状態Aへの遷移)は、式(3)により決定される。
式(3): P(状態Aから状態Aへの遷移)=1−P(状態Aから状態Bへの遷移)
【0055】
同様に、確率P(状態Bから状態Bへの遷移)は、式(4)により決定される。
式(4): P(状態Bから状態Bへの遷移)=1−P(状態Bから状態Aへの遷移)
【0056】
上述の表示遷移確率情報420は、実際の車両の走行データを集計したデータを基に予め作成され、ナビゲーション装置1に格納される。例えば、走行データを基に、マッチ状態及びフリー状態の発生状況を分析することで、状態Bが発生するまでに状態Aが連続して発生している期間を一以上特定し、各期間での連続回数の平均値を、「状態Bが発生するまでに状態Aが連続して発生する回数」として設定する。そして、上述の式により各遷移関係の確率を求める。走行データに基づくマッチ状態及びフリー状態の発生状況だけでなく又は替えて、車両が走行したときに理論上発生するマッチ状態及びフリー状態の発生状況を求め、確率を算出するようにしてもよい。
【0057】
表示発生確率情報記憶部43には、各表示状態(マッチ状態及びフリー状態)が発生する確率を特定する表示発生確率情報が格納される。
【0058】
表示発生確率情報は、例えば、図8(表示発生確率情報430を説明する図)に示すように、表示状態431ごとに、当該表示状態が発生する確率432が対応付けられている。
【0059】
ここで、状態Aが発生する確率P(状態Aの発生)は、式(5)により決定される。
式(5):P(状態Aの発生)=(状態Aが発生する回数)/(状態A及び状態Bが発生する回数の総和)
【0060】
同様に、状態Bが発生する確率P(状態Bの発生)は、式(6)により決定される。
式(6):P(状態Bの発生)=(状態Bが発生する回数)/(状態A及び状態Bが発生する回数の総和)
【0061】
上述の表示発生確率情報430は、実際の車両の走行データを集計したデータを基に予め作成され、ナビゲーション装置1に格納される。例えば、走行データを基に、マッチ状態及びフリー状態の発生状況を分析することで、所定期間内において、状態Aが発生する回数、状態Bが発生する回数、状態A及び状態Bが発生する回数の総和を求める。そして、上述の式により各表示状態の発生確率を求める。走行データに基づくマッチ状態及びフリー状態の発生状況だけでなく又は替えて、車両が走行したときに理論上発生するマッチ状態及びフリー状態の発生状況を求め、確率を算出するようにしてもよい。
【0062】
なお、上述の図4図8の、条件付き確率情報、表示遷移確率情報、及び表示発生確率情報の構成は、一例であり、これに限定されるものではない。
【0063】
図3に戻って、フリー状態判定部40は、センサ情報取得部10、車両状態算出部20、及びマップマッチ処理部30から、上述した各種パラメータ(位置誤差、方位誤差、尤度、GPS受信状態(連続測位回数)、GPS信号強度、車速、高度、路面傾斜角)の値を取得する。そして、取得したパラメータごとに、条件付き確率情報記憶部41に格納されている当該パラメータの種類に対応する条件付き確率情報を参照して、当該パラメータの値が含まれる範囲を特定し、当該範囲に対応付けられたマッチ状態で出現する確率とフリー状態で出現する確率とを取得する。
【0064】
ここで、状態A(マッチ状態)で、パラメータ1〜nの値X1〜nが出現する確率を、P(X1〜n|A)と表すものとする。また、状態B(フリー状態)で、パラメータ1〜nの値X1〜nが出現する確率を、P(X1〜n|B)と表すものとする。
【0065】
また、フリー状態判定部40は、前回の判定結果(マッチ状態又はフリー状態を示す情報)に応じて、表示遷移確率情報を表示遷移確率情報記憶部42から取得する。
【0066】
前回の判定結果がマッチ状態である場合、マッチ状態からマッチ状態への遷移確率と、マッチ状態からフリー状態への遷移確率を取得する。一方、前回の判定結果がフリー状態である場合、フリー状態からフリー状態への遷移確率と、フリー状態からマッチ状態への遷移確率を取得する。
【0067】
また、フリー状態判定部40は、マッチ状態及びフリー状態の表示発生確率情報を、表示発生確率情報記憶部43から取得する。
【0068】
それから、フリー状態判定部40は、前回の判定結果(マッチ状態又はフリー状態を示す情報)に応じて、判定を行うために使用する各表示状態の確率指標を算出する。本実施形態では、後述するように、各条件付き確率情報の積と、表示遷移確率情報と、表示発生確率情報と、の積により確率指標を算出する。
【0069】
前回の判定結果が状態A(マッチ状態)である場合、状態Aの確率指標を式(7)により算出し、状態B(フリー状態)の確率指標を式(8)により算出する。
式(7): (状態Aの確率指標)=P(状態Aから状態Aへの遷移)×P(状態Aの発生)×P(X|A)×・・・×P(X|A)
式(8): (状態Bの確率指標)=P(状態Aから状態Bへの遷移)×P(状態Bの発生)×P(X|B)×・・・×P(X|B)
【0070】
一方、前回の判定結果が状態Bである場合、状態Bの確率指標を式(9)により算出し、状態Aの確率指標を式(10)により算出する。
式(9): (状態Bの確率指標)=P(状態Bから状態Bへの遷移)×P(状態Bの発生)×P(X|B)×・・・×P(X|B)
式(10): (状態Aの確率指標)=P(状態Bから状態Aへの遷移)×P(状態Aの発生)×P(X|A)×・・・×P(X|A)
【0071】
それから、フリー状態判定部40は、上記のように算出した各表示状態の確率指標を比較する。フリー状態の確率指標がマッチ状態の確率指標よりも大きい場合、表示状態をフリー状態と判定し、それ以外の場合、表示状態をマッチ状態と判定する。この判定結果を、今回の表示状態として選択する。
【0072】
表示制御部50は、地図、現在位置などの各種情報を、ディスプレイ110に出力して表示させる。例えば、所定のタイミングで(例えば、所定距離ごとに)、車両状態算出部20により算出された自車位置から所定範囲内の地図データを、地図DB1400から取得し、表示する。また、経路誘導部60が設定した経路情報がある場合は、当該経路情報を地図データに重ねて表示してもよい。
【0073】
また、例えば、表示制御部50は、所定のタイミングで(例えば、所定距離ごとに)、フリー状態判定部40の判定結果を取得する。そして、判定結果がフリー状態である場合、車両状態算出部20により算出された自車位置に現在位置を表示する。一方、判定結果がマッチ状態である場合、マップマッチ処理部30により算出されたマップマップ位置に現在位置を表示する。
【0074】
経路誘導部60は、経路情報の生成、経路の誘導を行う。例えば、経路誘導部60は、入力装置120を介して、ナビゲーション装置1のユーザから出発地点や目的地点、探索条件等とともに、推奨経路の探索指示を受け取った場合に、地図DB1400を参照して、出発地点から目的地点までの推奨経路を、例えばダイクストラ法等を用いて探索する。また、例えば、推奨経路の案内中には、進行方向や所要時間などの各種情報を、スピーカ131を介して音声出力したり、表示制御部50を介してディスプレイに表示させたりする。
【0075】
なお、図3の制御装置100の機能構成は、本願発明を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分類したものである。構成要素の分類の仕方や名称によって、本願発明が制限されることはない。制御装置100の構成は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。また、各構成要素の処理は、1つのハードウェアで実行されてもよいし、複数のハードウェアで実行されてもよい。また、各構成要素の処理は、1つのプログラムで実現されてもよいし、複数のプログラムで実現されてもよい。
【0076】
図9は、フリー状態判定処理のフローチャートである。本フローは、所定のタイミング(例えば、所定距離ごとに)でフリー状態判定部40により実行される。
【0077】
まず、フリー状態判定部40は、車両状態算出部20から、自車速度、路面傾斜角、及び高度変化量を取得する(S10)。また、フリー状態判定部40は、センサ情報取得部10から、GPS受信状態(連続測位回数)、及びGPS信号強度を取得する(S20)。また、フリー状態判定部40は、マップマッチ処理部30から、マップマッチ位置を特定する際に算出された位置誤差、方位誤差、及び尤度を取得する(S30)。
【0078】
また、フリー状態判定部40は、相対高度を算出する(S40)。具体的には、フリー状態判定部40は、前回の判定結果がフリー状態である場合、前回算出した相対高度にステップS10で取得した高度変化量を加算して、相対高度を算出する。一方、前回の判定結果がマッチ状態である場合、相対高度を0として算出する。すなわち、本ステップでは、最後にマッチ状態であった位置(時点)を基準とする相対高度を算出する。
【0079】
それから、フリー状態判定部40は、ステップS10〜S40で取得したあるいは算出した各パラメータ(位置誤差、方位誤差、尤度、GPS受信状態(連続測位回数)、GPS信号強度、車速、高度(相対高度)、路面傾斜角)について、条件付き確率を算出する(S50)。具体的には、パラメータごとに、条件付き確率情報記憶部41に格納されている当該パラメータの種類に対応する条件付き確率情報を参照して、当該パラメータの値が含まれる範囲を特定し、当該範囲に対応付けられたマッチ状態で出現する確率とフリー状態で出現する確率とを取得する。
【0080】
また、フリー状態判定部40は、表示状態の遷移確率を算出する(S60)。具体的には、フリー状態判定部40は、前回の判定結果がマッチ状態である場合、マッチ状態からマッチ状態への遷移確率と、マッチ状態からフリー状態への遷移確率を、表示遷移確率情報記憶部42から取得する。一方、前回の判定結果がフリー状態である場合、フリー状態からフリー状態への遷移確率と、フリー状態からマッチ状態への遷移確率を、表示遷移確率情報記憶部42から取得する。
【0081】
また、フリー状態判定部40は、表示状態の発生確率を算出する(S70)。具体的には、フリー状態判定部40は、マッチ状態の表示発生確率情報と、フリー状態の表示発生確率情報とを、表示発生確率情報記憶部43から取得する。
【0082】
それから、フリー状態判定部40は、各表示状態の確率指標を算出する(S80)。具体的には、前回の判定結果がマッチ状態である場合、上述した式(7)及び式(8)に、ステップS50〜S70で得られた各確率を代入することで、マッチ状態の確率指標及びフリー状態の確率指標を算出する。一方、前回の判定結果がフリー状態である場合、上述した式(9)及び式(10)に、ステップS50〜S70で得られた各確率を代入することで、フリー状態の確率指標及びマッチ状態の確率指標を算出する。
【0083】
そして、フリー状態判定部40は、ステップS80で算出した各表示状態の確率指標を用いてフリー状態判定を行う(S90)。具体的には、マッチ状態の確率指標とフリー状態の確率指標とを比較する。フリー状態の確率指標がマッチ状態の確率指標よりも大きい場合、表示状態をフリー状態と判定し、それ以外の場合、表示状態をマッチ状態と判定する。
【0084】
ステップS90の処理を行って、フリー状態判定部40は、本フローチャートの処理を終了する。ステップS90での判定結果は、表示制御部50などの他の機能により使用される。
【0085】
なお、上記図9のフローチャートの処理単位は、フリー状態判定部40の処理を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものである。処理単位の分割の仕方や名称によって、本願発明が制限されることはない。フリー状態判定部40の処理は、処理内容に応じて、さらに多くの処理単位に分割することもできる。また、1つの処理単位がさらに多くの処理を含むように分割することもできる。また、同様のフリー状態判定が行えれば、上記のフローチャートの処理順序も、図示した例に限られるものではない。
【0086】
以上のように、本発明の一実施形態によれば、車両の状態に関する車両情報(各種パラメータ)の値を各表示状態(マッチ状態及びフリー状態)の確率に変換して、この確率に基づいてフリー状態判定を行うので、より簡単な仕組みで精度の高いフリー状態判定を行うことができる。
【0087】
また、各表示状態の確率指標は、各パラメータに対応する確率や表示に関する確率の積により算出できるため、複雑な条件判定を行う必要がない。また、例えば、パラメータの追加や削除をする必要が生じても、当該パラメータの条件付き確率情報の追加や削除、式への項の追加や削除が容易であるため、保守や改良の手間を少なくすることができる。
【0088】
なお、以上の本発明の実施形態は、本発明の要旨と範囲を例示することを意図し、限定するものではない。例えば、以下のような変形を行ってもよい。
【0089】
上述の実施形態では、全てのパラメータの条件付き確率情報を使用しているが、状況に応じて使用するパラメータを選択するようにしてもよい。状況に応じて使用するパラメータの値を補正してもよい。
【0090】
具体的には、フリー状態判定部40は、例えば、マップマッチ位置がトンネルのリンク上に位置する場合、GPS受信状態及びGPS信号強度の条件付き確率を、各表示状態の確率指標の算出に使用しないようにする(例えば、GPS受信状態及びGPS信号強度の条件付き確率に「1」を代入して、式(7)及び(8)、又は式(9)及び(10)を計算する)。これは、トンネル内を車両が走行している場合に、なるべくマッチ状態と判定し易くするためである。
【0091】
また、フリー状態判定部40は、例えば、負の高度(相対高度)を取得できている状態で、GPSを受信できていると判定された場合、高度の条件付き確率を、各表示状態の確率指標の算出に使用しないようにする。これは、高度の算出誤差が生じた場合に、フリー状態判定の精度が落ちることをなるべく防ぐためである。
【0092】
また、フリー状態判定部40は、例えば、パラメータの値が、異常値である場合、当該パラメータの条件付き確率を、各表示状態の確率指標の算出に使用しないようにする。これは、センサなどの故障により、フリー状態判定の精度が落ちることをなるべく防ぐためである。
【0093】
また、フリー状態判定部40は、例えば、GPSを受信できていない状態から受信できる状態に変化した場合、所定時間の間、マップマッチ処理部30から取得する自車方位とリンク方位の間の方位誤差から、所定の方位誤差値を差し引くようにしてもよい。これは、例えば、立体駐車場などから車両が出庫した場合に、立体駐車場を走行している間に蓄積したセンサの誤差を補正して、フリー状態判定の精度が落ちることをなるべく防ぐためである。
【0094】
上記のようにすれば、車両の状況に応じて、精度の高いフリー状態判定を行うことができる。
【0095】
上述の実施形態、及び各変形例は、いずれか二つ以上を適宜組み合わせてもよい。
【0096】
なお、本発明は、フリー状態及びマッチ状態の判定だけでなく、他の表示状態の判定に適用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1:ナビゲーション装置、100:制御装置、101:CPU、102:RAM、103:ROM、104:I/F、110:ディスプレイ、120:入力装置、121:タッチパネル、122:ハードスイッチ、130:音声入出力装置、131:スピーカ、132:マイクロフォン、140:記憶装置、150:I/F装置、160:車速センサ、161:ジャイロセンサ、162:GPS受信装置、170:FM放送受信装置、171:ビーコン受信装置、172:通信装置、180:車内通信装置、
1400:地図DB、1410:メッシュID、1411:リンクデータ、1412:リンクID、1413:座標情報、1414:種別情報、1415:リンク長情報、1416:リンク旅行時間、1417:接続リンクID、
10:センサ情報取得部、20:車両状態算出部、30:マップマッチ処理部、40:フリー状態判定部、41:条件付き確率情報記憶部、42:表示遷移確率情報記憶部、43:表示発生確率情報記憶部、50:表示制御部、60:経路誘導部、
410:条件付き確率情報、4101:区分した範囲、4102:確率、4103:確率、
411:条件付き確率情報、4111:区分した範囲、4112:確率、4113:確率、
412:条件付き確率情報、4121:区分した範囲、4122:確率、4123:確率、
420:表示遷移確率情報、421:遷移関係、422:確率、
430:表示発生確率情報、431:表示状態、432:確率
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9