(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、一般的なキーレスエントリーシステムを搭載した車両を例に挙げて詳細に説明する。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るエンジン始動制御システム100の構成を示すブロック図である。同図に示すように、エンジン始動制御システム100は、キーレスエントリー機能を有する、通信機能を備えた車両用の鍵1と、この鍵1を差し込んでエンジン始動(イグニッションオン)操作を行うキーシリンダー2と、このキーシリンダー2とインターフェース回路10を介して連結され、エンジンの始動を制御するECU5と、キーレス操作に関わる信号の送受信を行うアンテナであるドアアンテナ3、とを備えている。
【0015】
キーシリンダー2は、その周縁部にアンテナ(通称イモビアンテナ)が取り付けられており、ドアアンテナ3と共にインターフェース回路10を介してECU5と有線で接続されている。
【0016】
鍵1は、固有のIDコードを記憶したトランスポンダ4を内蔵しており、ドアアンテナ3やイモビアンテナから送信される起動信号を受信することにより、電磁誘導エネルギーを受けて送受信回路を起動し、車体と通信を行う。例えば、鍵1が車両の通信エリア内に入ると、ドアアンテナ3からの起動信号を受信、また鍵1がキーシリンダー2へ差し込まれると、イモビアンテナからの起動信号を受信して送受信回路が起動され、トランスポンダ4に記憶されたIDコードを電波信号に変換して送信する等の通信が行われる。
【0017】
ECU5は、主に、電源回路8と、トランスポンダ4より送信される信号をキーシリンダー2やドアアンテナ3を介して取り込むインターフェース回路10と、車両ドアの解錠を感知可能なスイッチ11や、イグニッションスイッチ12等、外部スイッチからの信号を取り込むインターフェース回路9と、トランスポンダ4の照合に使用する様々なコード等が格納される記憶部7(例えば、EEPROM)と、トランスポンダ4の照合を行い、エンジン始動等を制御するCPU6と、CPU6からの制御信号に応じ、ドアロック機構14やエンジン駆動機構15に対して様々な駆動信号を出力する駆動回路13と、を備えている。
【0018】
ドアロック機構14は、駆動回路13からの駆動信号に応じて、車両ドアのロックを解錠/施錠する。
【0019】
エンジン駆動機構15は、駆動回路13からの駆動信号に応じて、エンジンを始動する。より具体的には、鍵1がキーシリンダー2へ差し込まれてエンジン始動操作が行われると、駆動回路13からの駆動信号により、フューエルポンプが駆動して燃料タンク内の燃料が、燃料噴射装置へ送られる。続いて、後述する手順でトランスポンダ4の照合が行われ、照合が成立すると、駆動回路13からの駆動信号により、燃料噴射装置とイグニッションコイルが駆動して、燃料が燃焼室へ噴射されると共にスパークプラグが点火され、エンジンが始動される。
【0020】
次に、上述のように構成されたエンジン始動制御システム100の動作を、
図2に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0021】
まずECU5は、電源回路8より電力が供給されると、ユーザーのアクセス待ち受け状態となる。そして、ユーザーが鍵1を操作して車両ドアの解錠を要求すると、鍵1(トランスポンダ4)はIDコードを含む信号を送信する。CPU6はドアアンテナ3及びインターフェース回路10を介してこの信号を受信すると、記憶部7に格納されている、当該車両と対応する正規鍵のIDコードを読み出して、受信したIDコードと一致するかどうかを照合し(ステップS1)、照合が成立すると車両ドアを解錠する信号が、駆動回路13を介してドアロック機構14へ送信され、車両ドアが解錠される(ステップS2)。
【0022】
続いてCPU6は、エンジン始動制御の照合演算に用いる乱数を決定し、この乱数とステップS1で照合を行ったIDコードとを入力値として、予めトランスポンダ4と共有している関数を用いた、照合演算を開始する(ステップS3)。
【0023】
なお、照合演算の内容はこれに限定されるものではなく、使用する乱数は2つ以上であっても良いし、乱数とIDコード以外の入力値があっても良い。
【0024】
次に、ユーザーが鍵1をキーシリンダー2に差し込みイグニッションスイッチ12をオンにすると、イグニッションオンの信号がインターフェース回路9を介してCPU6へ入力され、信号を受信したCPU6は、ステップS3で決定した乱数をトランスポンダ4へ送信し、演算結果を待つ(ステップS4)。トランスポンダ4は、乱数を受信すると、この乱数と保有するIDコードとを入力値として、CPU6と共有している既定の関数を用いた演算を行い、演算結果をCPU6へ送信する。
【0025】
本実施形態においては、車両側の演算をトランスポンダ4より先行して実施しているので、この時点でCPU6は演算を終えている。そして、トランスポンダ4から演算結果が送信されてくると、CPU6はステップS3で自らが演算した結果と、トランスポンダ4の演算結果が一致するかどうかを照合する(ステップS5)。
【0026】
演算結果が一致しているということは、照合演算の最中に共有した乱数と、初めから共有している関数以外の値、すなわちIDコードも一致していると判断することができる。
【0027】
照合が成立すると、CPU6はエンジンの始動を許可し、駆動回路13からエンジン駆動機構15へ駆動信号を送信して、エンジンを始動する(ステップS6)。照合が成立しなかった場合、ユーザーによるアクセスは正規鍵によるものではないと判断され、エンジンの始動は許可されない。
【0028】
以上のように、車両側(ECU5)の照合演算を従来のようにイグニッションオンをトリガに開始するのではなく、ユーザーによる車両へのアクセス(キーレス操作)を感知した時点で開始しておく事で、トランスポンダ4と略同時に演算を開始するものよりも、車両側の照合演算が完了するタイミングを早める事が出来る。従って、照合中に発生するトランスポンダ4の待ち時間を削減することができ、エンジン始動要求への応答性が高まる。
【0029】
尚、本実施形態においては、車両側(ECU5)の照合演算を開始するトリガとして、キーレス操作を例に挙げて説明したが、イグニッションオンより前に照合演算を開始できればよく、トリガとなる車両へのアクセスはキーレス操作以外であっても良い。例えば、車両ドアの開閉センサーや、運転席の着座センサー等をトリガとして採用する事も考えられる。また、車両側において、ECU5にCPU6や記憶部7等の機能が集約された構成を挙げて説明をしたが、これらの機能がECU5と別に設けられていても良い。例えば記憶部7が、ECU5の外部に設けられる構成であれば、ECU5と記憶部7が有線で接続される等して、ECU5が記憶部7に格納されるコード等の情報を読み出せる構成となっていれば良いし、CPU6が外部に設けられる構成であれば、トランスポンダ4の照合やエンジン制御を行うのに必要な機能とのつながりが保たれた構成であれば良い。
【0030】
<第2実施形態>
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。
【0031】
第2実施形態の構成は
図1に示した第1実施形態の構成と同じである。しかしながら、エンジン始動制御システム100の動作が第1実施形態と相違する。以下、相違点を中心に説明する。
【0032】
図3は、第2実施形態に係るエンジン始動制御システム100の動作を示したフローチャートである。尚、このフローチャートでは、説明の便宜上、イグニッションスイッチ12をオフした時点をスタートとしている。以下、これを参照しながら第2実施形態に係るエンジン始動制御システム100の動作について説明する。
【0033】
まず、ユーザーがイグニッションスイッチ12をオフにすると、イグニッションオフの信号がインターフェース回路9を介してCPU6へ入力され、信号を受信したCPU6は、駆動回路13からエンジン停止信号を送信すると共に、次回の照合演算に用いる乱数を決定し、記憶部7に格納されている、当該車両と対応する正規鍵のIDコードを読み出し、乱数とIDコードを入力値として、予めトランスポンダ4と共有している関数を用いた照合演算を行い(ステップS11)、演算に使用した入力値と共に、演算結果を記憶部7へ格納しておく(ステップS12)。
【0034】
なお、乱数の数や決定方法等、照合演算内容の詳細については、第1実施形態と同様、上述した形態に限定されるものではない。また、記憶部7に格納されている正規鍵のIDコードも1つとは限らない。複数の正規鍵が用意された車両であれば、IDコードもその鍵の数だけ存在するので、ステップS11で行う照合演算は、格納されているIDコードごとに行っておく。また、乱数の決定手順にIDコードが組み込まれている場合には、乱数もIDコードごとに決定しておく等、そのシステムに応じた処理を行う。
【0035】
次に、ユーザーが鍵1を操作して車両ドアの解錠を要求すると、鍵1(トランスポンダ4)はIDコードを含む信号を送信する。CPU6はドアアンテナ3及びインターフェース回路10を介してこの信号を受信すると、記憶部7に格納されている、当該車両と対応する正規鍵のIDコードを読み出して、受信したIDコードと一致するかどうかを照合し(ステップS13)、照合が成立すると車両ドアを解錠する信号が、駆動回路13を介してドアロック機構14へ送信され、車両ドアが解錠される(ステップS14)。
【0036】
ここでCPU6は、記憶部7にエンジン始動制御の照合に使用するデータ(入力値、及び照合演算結果)が格納されているかどうかを確認する(ステップS15)。データが格納されていた場合には、イグニッションオンの信号待ち受け状態となる。
【0037】
次に、ユーザーが鍵1をキーシリンダー2に差し込みイグニッションスイッチ12をオンにすると、イグニッションオンの信号がインターフェース回路9を介してCPU6へ入力され、信号を受信したCPU6は、記憶部7に格納されていた乱数と演算結果を読み出して、この乱数をトランスポンダ4へ送信し、演算結果を待つ(ステップS16)。上述したように、IDコードが複数存在する車両であれば、記憶部7にはIDコードごとのデータが格納されているので、ステップS13で照合を行ったIDコードに対応する乱数と演算結果を読み出して、この乱数をトランスポンダ4へ送信する。トランスポンダ4は、乱数を受信すると、この乱数と保有するIDコードとを入力値として、CPU6と共有している既定の関数を用いた演算を行い、演算結果をCPU6へ送信する。
【0038】
トランスポンダ4から演算結果が送信されてくると、CPU6はステップS16で記憶部7から読み出しておいた演算結果と、トランスポンダ4の演算結果が一致するかどうかを照合する(ステップS17)。照合が成立すると、CPU6はエンジンの始動を許可し、駆動回路13からエンジン駆動機構15へ駆動信号を送信して、エンジンを始動する(ステップS18)。照合が成立しなかった場合、ユーザーによるアクセスは正規鍵によるものではないと判断され、エンジンの始動は許可されない。
【0039】
ステップS15において、データが格納されていなかった場合には、CPU6は、エンジン始動制御の照合演算に用いる乱数を決定し、この乱数とステップS13で照合を行ったIDコードとを入力値として、予めトランスポンダと共有している関数を用いた照合演算を開始する(ステップS19)。なお、記憶部7に格納するデータについては、初期値を設定しておいても良い。その場合、記憶部7にデータが格納されていないことはなくなるので、ステップS19とステップS20のフローを省くことが可能となる。
【0040】
その後、ユーザーが鍵1をキーシリンダー2に差し込みイグニッションスイッチ12をオンにすると、イグニッションオンの信号がインターフェース回路9を介してCPU6へ入力され、信号を受信したCPU6は、ステップS19で決定した乱数をトランスポンダ4へ送信し、演算結果を待つ(ステップS20)。トランスポンダ4は、乱数を受信すると、この乱数と保有するIDコードとを入力値として、CPU6と共有している既定の関数を用いた演算を行い、演算結果をCPU6へ送信する。
【0041】
トランスポンダ4から演算結果が送信されてくると、CPU6はステップS19において自らが演算した結果と、トランスポンダ4の演算結果が一致するかどうかを照合する(ステップS17)。照合が成立すると、CPU6はエンジンの始動を許可し、駆動回路13からエンジン駆動機構15へ駆動信号を送信して、エンジンを始動する(ステップS18)。照合が成立しなかった場合、ユーザーによるアクセスは正規鍵によるものではないと判断され、エンジンの始動は許可されない。
【0042】
以上のように、車両側(ECU5)の照合演算を従来のようにイグニッションオンをトリガに開始するのではなく、イグニッションオフの信号をトリガにして事前に行い、記憶部7に格納しておく事で、車両側の照合演算が完了するタイミングを、第1実施形態と比べてより早めることが出来る。従って、ユーザーが次回エンジン始動を試みる時には、トランスポンダ4の演算が終わり次第、車両側との照合を行う事が可能になり、エンジン始動要求への応答性がさらに高まる。
【0043】
<変形例>
上述した実施形態では、キーレスシステムを搭載した車両の例を挙げたが、本発明はキーレスシステムを搭載しない車両にも適用可能である。
【0044】
第1実施形態の場合、例えば以下のような構成に変える事で、同様の効果が実現できる。以下、
図4に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0045】
ユーザーが車両ドアの鍵穴を操作して、車両ドアが解錠されると、車両ドアの解錠を検知したスイッチ11からインターフェース回路9を介してCPU6へ信号が入力される。信号を受信するとCPU6は、記憶部7に格納されている、当該車両と対応する正規鍵のIDコードを読み出し、エンジン始動制御の照合演算に用いる乱数を決定し、IDコードと乱数を入力値として、予めトランスポンダと共有している関数を用いた照合演算を開始する(ステップS21)。
【0046】
なお、記憶部7に格納されている正規鍵のIDコードは1つとは限らないので、上述したように必要に応じた処理を行う。
【0047】
続いて、ユーザーが鍵1をキーシリンダー2に差し込むと、トランスポンダ4より固有IDコードを含む信号が送信され、キーシリンダー2に搭載されたアンテナがこれを受信し、インターフェース回路10を介してCPU6へ入力される。
【0048】
CPU6では、受信したIDコードが、記憶部7に格納されている、当該車両と対応する正規鍵のIDコードと一致するかどうかを照合する(ステップS22)。照合が成立し、続いてイグニッションスイッチ12がオンにされると、イグニッションオンの信号がインターフェース回路9を介してCPU6へ入力され、信号を受信したCPU6は、ステップS21で決定した乱数をトランスポンダ4へ送信し、演算結果を待つ(ステップS23)。この変形例においても上述したように、IDコードが複数存在する車両であれば、ステップS21で決定した乱数と演算結果も複数存在するので、ステップS22で照合を行ったIDコードに対応する乱数をトランスポンダ4へ送信する。
【0049】
トランスポンダ4から演算結果が送信されてくると、CPU6はステップS21で自らが演算した結果と、トランスポンダ4の演算結果が一致するかどうかを照合する(ステップS24)。
【0050】
照合が成立すると、CPU6はエンジンの始動を許可し、駆動回路13からエンジン駆動機構15へ駆動信号を送信して、エンジンを始動する(ステップS25)。照合が成立しなかった場合、ユーザーによるアクセスは正規鍵によるものではないと判断され、エンジンの始動は許可されない。
【0051】
第2実施形態の場合も同様で、例えば以下のような構成に変える事で、同様の効果が実現できる。以下、
図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0052】
尚、イグニッションスイッチ12をオフにした後の処理(ステップS11及びステップS12)については、第2実施形態と同じ構成となるので、説明は省略する。
【0053】
ユーザーが車両ドアの鍵穴を操作して、車両ドアが解錠されると、車両ドアの解錠を検知したスイッチ11からインターフェース回路9を介してCPU6へ信号が入力される。信号を受信するとCPU6は、記憶部7にエンジン始動制御の照合に使用するデータ(入力値、及び照合演算結果)が格納されているかどうかを確認する(ステップS31)。データが格納されていた場合には、イグニッションオンの信号待ち受け状態となる。
【0054】
次に、ユーザーが鍵1をキーシリンダー2に差し込むと、トランスポンダ4より固有IDコードを含む信号が送信され、キーシリンダー2に搭載されたアンテナがこれを受信し、インターフェース回路10を介してCPU6へ入力される。
【0055】
CPU6では、受信したIDコードが、記憶部7に格納されている、当該車両と対応する正規鍵のIDコードと一致するかどうかを照合する(ステップS32)。照合が成立し、続いてイグニッションスイッチ12がオンにされると、イグニッションオンの信号がインターフェース回路9を介してCPU6へ入力され、信号を受信したCPU6は、記憶部7に格納されていた乱数と演算結果を読み出して、乱数をトランスポンダ4へ送信し、演算結果を待つ(ステップS33)。IDコードが複数存在する車両であれば、記憶部7にはIDコードごとのデータが格納されているので、ステップS32で照合を行ったIDコードに対応する乱数と演算結果を読み出して、この乱数をトランスポンダ4へ送信する。トランスポンダ4は、乱数を受信すると、この乱数と保有するIDコードとを入力値として、CPU6と共有している既定の関数を用いた演算を行い、演算結果をCPU6へ送信する。
【0056】
トランスポンダ4から演算結果が送信されてくると、CPU6はステップS33で記憶部7から読み出しておいた演算結果と、トランスポンダ4の演算結果が一致するかどうかを照合する(ステップS34)。
【0057】
照合が成立すると、CPU6はエンジンの始動を許可し、駆動回路13からエンジン駆動機構15へ駆動信号を送信して、エンジンを始動する(ステップS35)。照合が成立しなかった場合、ユーザーによるアクセスは正規鍵によるものではないと判断され、エンジンの始動は許可されない。
【0058】
ステップS31において、データが格納されていない場合には、CPU6は、記憶部7に格納されている、当該車両と対応する正規鍵のIDコードを読み出し、エンジン始動制御の照合演算に用いる乱数を決定し、IDコードと乱数を入力値として、予めトランスポンダと共有している関数を用いた照合演算を開始する(ステップS36)。なおこの変形例においてでも、記憶部7に格納するデータについては、初期値を設定しておいても良い。その場合、ステップS36からステップS38のフローを省くことが可能となる。
【0059】
次に、ユーザーが鍵1をキーシリンダー2に差し込むと、トランスポンダ4より固有IDコードを含む信号が送信され、キーシリンダー2に搭載されたアンテナがこれを受信し、インターフェース回路10を介してCPU6へ入力される。
【0060】
CPU6では、受信したIDコードが、記憶部7に格納されている、当該車両と対応する正規鍵のIDコードと一致するかどうかを照合する(ステップS37)。照合が成立し、続いてイグニッションスイッチ12がオンにされると、イグニッションオンの信号がインターフェース回路9を介してCPU6へ入力され、信号を受信したCPU6は、ステップS36で決定した乱数をトランスポンダ4へ送信し、演算結果を待つ(ステップS38)。IDコードが複数存在する車両であれば、ステップS36で決定した乱数と演算結果も複数存在するので、ステップS37で照合を行ったIDコードに対応する乱数をトランスポンダ4へ送信する。トランスポンダ4は、乱数を受信すると、この乱数と保有するIDコードとを入力値として、CPU6と共有している既定の関数を用いた演算を行い、演算結果をCPU6へ送信する。
【0061】
トランスポンダ4から演算結果が送信されてくると、CPU6はステップS36で自らが演算した結果と、トランスポンダ4の演算結果が一致するかどうかを照合する(ステップS34)。
【0062】
照合が成立すると、CPU6はエンジンの始動を許可し、駆動回路13からエンジン駆動機構15へ駆動信号を送信して、エンジンを始動する(ステップS35)。照合が成立しなかった場合、ユーザーによるアクセスは正規鍵によるものではないと判断され、エンジンの始動は許可されない。
【0063】
尚、上述した実施形態及び変形例においては、鍵をキーシリンダーに差し込む構造を例に挙げて説明したが、鍵がカードキーのような、キーシリンダーへ差し込む必要のない構造の場合にも、IDコードや乱数等を含むデータ通信の形態を、適宜変更する事で、本発明を適用する事が可能である。
【0064】
また、車両側(ECU5)とトランスポンダ4とで、同じ関数を共有させておき、照合演算の結果が一致することで、トランスポンダ4が正規の鍵であると判断する例を挙げて説明したが、別の条件をもってトランスポンダ4の照合を行っても良い。例えば、照合演算の結果が互いに逆数になる、或いは対数になる等、何らかの特定条件を生み出す別々の関数を車両側(ECU5)とトランスポンダ4に持たせておき、これらの演算結果が特定条件を満たすかどうかを照合する方法等でも良い。また、いわゆるCRC、チェックサムエラー、パリティーチェックなどの誤り制御方式を取り入れ、トランスポンダ4が送信する演算結果に負荷情報を持たせ、車両側(ECU5)は受信した負荷情報からデータの信頼性を判断した上で、演算結果の照合を行う構成であっても良い。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。