(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の吐出器では、ノズル孔から泡体を吐出して押下ヘッドの押し下げを解除したときに、該ノズル孔内に残存した泡体が再び液化して外部に垂れ落ちたり、空気に触れて固化したりするおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、押下ヘッドの押し下げを解除したときに、ノズル孔から泡体が液化して垂れ落ちたり、固化したりすることを防止できる吐出器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明は、液体が収容された容器本体の口部に上方付勢状態で下方移動可能に立設された筒状のステムを有するポンプと、前記ステムの上端部に配設されノズル孔が形成された押下ヘッドと、を備え、前記ノズル孔から前記容器本体内の液体を発泡させて吐出する吐出器であって、前記ポンプには、前記ステムに連係する液用ピストンと、該液用ピストンが内部に上下摺動自在に収容された液用シリンダと、前記ステムに連係する空気用ピストンと、該空気用ピストンが内部に上下摺動自在に収容された空気用シリンダと、が備えられ、当該吐出器の内部には、前記液用シリンダからの液体と前記空気用シリンダからの空気とを混合する気液混合室と、該気液混合室と前記ノズル孔との間に配置され、前記気液混合室で混合された気液混合体を発泡する発泡部材と、が備えられ、前記空気用ピストンは、前記ステムに外挿された筒状の外挿体を備え、該外挿体とステムとの間に、前記空気用シリンダ内と前記気液混合室とを連通する空気導入路が形成され、前記押下ヘッドと前記ステムの上端部との間に、前記空気導入路と前記ノズル孔とを連通する空気吸入路が形成され、前記空気用シリンダは、前記空気導入路及び前記空気吸入路を通して前記ノズル孔に連通されており、前記ステムには、前記外挿体から上方に離間して、前記空気吸入路と前記空気導入路とを連通させ、かつ前記押下ヘッドの押し下げに伴って下方移動することで、前記外挿体に、該外挿体の上方から当接して、前記空気吸入路と前記空気導入路との連通を遮断するシール部が備えられることを特徴とする。
【0007】
本発明の吐出器では、押下ヘッドを押し下げると、この押し下げにともなってステムが下方移動することで、ステムのシール部が空気用ピストンの外挿体にその上方から当接し、空気吸入路と空気導入路との連通が遮断される。これにより、空気用シリンダ内の空気は、空気導入路から空気吸入路を通ってノズル孔側に向けて流れることなく、空気導入路から気液混合室に供給される。
【0008】
次いで、押下ヘッドの押し下げを解除すると、該押下ヘッドは付勢力により上方移動し、これに伴ってステムも上方移動することで、ステムのシール部は空気用ピストンの外挿体から上方に離間され、空気吸入路と空気導入路とが連通されるが、この際、シール部が外挿体から離間しつつ上方移動することで、外挿体とステムとの間の空気導入路及び空気用シリンダ内が負圧となり、該空気導入路に連通する空気吸入路側から、空気導入路内に空気が吸入される。さらに、空気用ピストンが空気用シリンダ内を上方移動することで、ノズル孔から空気吸入路及び空気導入路を通して、空気用シリンダ内に空気が吸入される。
【0009】
このように、空気導入路内に空気吸入路を通してノズル孔側から空気が引き込まれることにより、該ノズル孔内に残存する泡体が押下ヘッドの内部に後退させられるので、このノズル孔から泡体が液化して垂れ落ちたり、空気に触れて固化したりすることが防止される。
【0010】
さらに、本発明によれば、押下ヘッドの押し下げ時には、ステムのシール部と空気用ピストンの外挿体とが当接することで空気用シリンダ内を加圧でき、押下ヘッドの押し下げを解除した際には、ステムのシール部と空気用ピストンの外挿体とが離間されることにより、ノズル孔から空気吸入路及び空気導入路を通して、空気用シリンダ内に空気が吸入されるようになっているので、従来のように空気用シリンダ内を加圧したり空気を吸気させたりするための吸気弁等を要することなく従来同等の機能を具備させることができ、構造を簡単にして部品点数を削減できる。また、このような部品点数の削減に伴い、コスト低減の効果が得られる。
【0011】
また、本発明の吐出器において、前記押下ヘッド内には、前記発泡部材と前記ノズル孔とを連通する泡体供給路と、前記空気吸入路とを区画する仕切り壁が備えられることとしてもよい。
【0012】
この場合、押下ヘッドのノズル孔から、空気吸入路及び空気導入路を通して空気用シリンダ内に空気が吸入される際、該ノズル孔内に残存する泡体がバックサクション作用(負圧により泡体を引き込む作用)により後退させられる一方、該押下ヘッドの泡体供給路内に残存する泡体が空気用シリンダ内に吸入されることを防止できる。すなわち、前記仕切り壁によって、泡体供給路内の泡体が、該泡体供給路の仕切り壁を挟んだ反対側に位置する空気吸入路内に入り込むようなことが防止される。従って、空気用シリンダ内における空気用ピストンの上下摺動が安定して行われる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の吐出器によれば、押下ヘッドの押し下げを解除したときに、ノズル孔から泡体が液化して垂れ落ちたり、固化したりすることを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る吐出器を備える吐出容器を説明する。
図1に示すように、吐出容器1は、液体が収容される容器本体2と、容器本体2に装着される吐出器10と、を備えている。
【0016】
吐出器10は、容器本体2の口部に装着される装着キャップ11と、該装着キャップ11内に上方付勢状態で下方移動可能に挿通されて該口部に立設された筒状のステム12を有するポンプ13と、ステム12の上端部に配設されノズル孔15が形成された押下ヘッド14と、を備えている。
そして、吐出器10は、押下ヘッド14を押し下げてステム12を下方に移動させ、ポンプ13を作動させることにより、容器本体2内の液体を移送するとともに空気と混合させ、これらの混合体(気液混合体)が発泡されてなる泡体を、押下ヘッド14のノズル孔15から吐出するように構成されている。
【0017】
ここで、容器本体2、装着キャップ11及びステム12の各中心軸線は、共通軸上に位置している。以下、この共通軸を軸線Oといい、軸線Oに沿う方向を上下方向といい、上下方向に沿った容器本体2の底部側を下側といい、押下ヘッド14側を上側といい、軸線Oに直交する方向を径方向といい、軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0018】
装着キャップ11は、容器本体2の口部に螺着される下筒部17と、該下筒部17よりも小径の上筒部18とが、連結段部19を介して連結された2段筒状をなしている。
上筒部18には、押下ヘッド14の下方への移動を規制する規制部材8が、着脱可能に装着されている。規制部材8は、当該吐出器10を上方から見た上面視においてC字状をなし、上筒部18に着脱可能に外嵌されており、該規制部材8には、径方向の外側に向けて把持部9が突設されている。
【0019】
ポンプ13は、前記ステム12と、ステム12に連係して上下動する液用ピストン20及び空気用ピストン22と、液用ピストン20が内部に上下摺動自在に収容された液用シリンダ21と、空気用ピストン22が内部に上下摺動自在に収容された空気用シリンダ23と、を備えている。
尚、液用ピストン20、空気用ピストン22、液用シリンダ21及び空気用シリンダ23は、いずれも前記軸線Oと同軸の筒状に形成されている。
また、この吐出器10の内部には、液用シリンダ21からの液体と空気用シリンダ23からの空気とを混合する気液混合室26と、気液混合室26とノズル孔15との間に配置され、気液混合室26で混合された気液混合体を発泡する発泡部材54と、が備えられている。本実施形態では、気液混合室26及び発泡部材54は、ステム12に配設されている。
【0020】
空気用シリンダ23は、装着キャップ11の前記連結段部19の外周縁部と容器本体2の口部の開口端部(不図示)との間に上下方向に挟持される環状の取付け部27と、取付け部27の内周縁から下方に向けて延設された周壁部28と、周壁部28から径方向の内側に向けて突設された環状の底壁部29と、を備えている。
図1に示される縦断面視において、底壁部29は、周壁部28から径方向内側に向かうに従い漸次上方に向けて延在している。
【0021】
液用シリンダ21は、空気用シリンダ23と一体に形成されている。液用シリンダ21は、空気用シリンダ23の底壁部29の内周縁から下方に向けて延設された基筒部30と、基筒部30の下端から下方に向けて連設され、下方に向かうに従い漸次縮径するテーパ部31と、を備えている。また、液用シリンダ21における基筒部30とテーパ部31との連結部分の内周面には、上下方向に延在する縦リブ32が、周方向に間隔をあけて複数突設されている。さらにテーパ部31の下端には、前記軸線Oと同軸に配置された垂下筒33が、下方に向けて連設されている。
【0022】
液用ピストン20は、液用シリンダ21内に液密状態で上下摺動可能に嵌合する大径部34と、下端が大径部34に連結された小径部35と、を備えている。また液用ピストン20は、当該液用ピストン20における大径部34と小径部35との連結部分と、液用シリンダ21の前記縦リブ32と、の間に介装された付勢部材36により、上方に付勢されている。尚、付勢部材36としては、例えばコイルスプリングや樹脂バネ等を採用することができる。
【0023】
ここで、液用ピストン20、液用シリンダ21及び付勢部材36内には、棒状の弁部材37が挿通されている。弁部材37の上端部には、液用ピストン20の上端部に形成された弁座部38に、該弁座部38の上方から着座する中空逆円錐状の上部弁体39が、該弁座部38に離間可能に形成されている。弁部材37の下端部には、液用シリンダ21のテーパ部31から上方に離間する下部弁体40が、該テーパ部31に着座可能に形成されている。また、下部弁体40の外周面には、液用シリンダ21の前記縦リブ32の間に配置されるガイド凸部41が突設されている。
【0024】
ステム12は、空気用シリンダ23内に挿通されており、ステム12の下端部は、液用ピストン20の小径部35に外嵌されている。また、ステム12には、径方向の外側に向けて突出する環状のフランジ部42と、径方向の内側に向けて突出する環状の台座部43とが、下方からこの順に上下方向に間隔をあけて配置されている。フランジ部42の上面には、空気用ピストン22の後述する内筒部45の下端縁が離間可能に当接される。また、ステム12のうち、台座部43よりも上側に位置する上端部は、装着キャップ11の上筒部18内に配置されている。
【0025】
気液混合室26は、ステム12内に配設されており、本実施形態では、ステム12の前記上端部内とされている。具体的に、ステム12の上端部における台座部43の上方には、発泡部材54を支持する支持筒24が設けられており、気液混合室26は、これら支持筒24と台座部43との間に形成されている。支持筒24は、ステム12における最上部に配置されており、その上側部分をなし押下ヘッド14の装着筒部73に嵌合される拡径部57と、下側部分をなす縮径部58とを有している。縮径部58の外周面には、気液混合室26に連通するとともに径方向の外側に向けて開口する溝状の第2連通路67が形成されている。また、気液混合室26内には、台座部43に着座する球状の液吐出弁44が設けられており、該液吐出弁44は、台座部43に離間可能に形成されている。
【0026】
空気用ピストン22は、ステム12に外挿された内筒部(筒状の外挿体)45と、空気用シリンダ23内に嵌合された外筒部46と、これらの内筒部45と外筒部46とを連結する連結部47と、を備えている。
連結部47は、内筒部45の下端部と外筒部46の上下方向の中央部とを全周にわたって連結する環状に形成され、空気用シリンダ23の内部のうち、当該連結部47よりも上方に画成される上室48内と、当該連結部47よりも下方に画成される下室49内とを区画(遮断)している。
【0027】
内筒部45は、その上側部分が上筒部18内に位置しており、ステム12の外周面における気液混合室26に対応する部位との間に隙間をあけて、該ステム12に外挿されている。内筒部45の上側部分とステム12との間に形成された前記隙間は、第3連通路68となっている。第3連通路68は、後述する第1連通路66、及び前記第2連通路67に各別に開口している。
【0028】
内筒部45の下側部分は、ステム12において前記フランジ部42よりも上側に位置しかつ前記台座部43よりも下側に位置する大径部分51に、隙間をあけて外挿されている。内筒部45の下側部分の内周面と前記大径部分51の外周面との前記隙間は、第1連通路66となっている。尚、ステム12の前記大径部分51に上下方向に延びる溝が形成されていてもよく、この場合は、内筒部45の下側部分が該大径部分51に上下摺動可能に外嵌されるとともに、該溝の内部が第1連通路66とされる。
また、内筒部45の下端縁には、下方に開口された半円状の切欠き部が周方向に間隔をあけて複数形成されており、該切欠き部は、第1連通路66と下室49とを連通させる連通隙間25となっている。第1連通路66は、フランジ部42に空気用ピストン22の内筒部45が着座した際において、連通隙間25を通して下室49と連通される。尚、連通隙間25の形状は、フランジ部42に対して内筒部45の下端縁が着座した状態で、第1連通路66と下室49とを連通可能であればよいことから、前述した半円状の切欠き部に限定されるものではない。
前述した第1連通路66、第2連通路67及び第3連通路68は、空気用シリンダ23内の前記下室49と前記気液混合室26とを連通させる空気導入路65を構成している。
【0029】
内筒部45の下端縁は、フランジ部42の上面にその上方から離間可能に着座している。内筒部45の下端縁がフランジ部42の上面に着座した状態において、空気導入路65は前記連通隙間25を通して下室49に連通されている。
空気用シリンダ23は、前記空気導入路65、前記連通隙間25及び後述する空気吸入路60を通して前記ノズル孔15に連通されている。この吐出器10では、空気用シリンダ23の下室49内への空気の吸入はすべて、空気導入路65、空気吸入路60及びノズル孔15を通して行われる。
【0030】
また、内筒部45の上端部には、上方に向かうに従い漸次拡径するテーパ状の被シール面55が形成されている。
【0031】
発泡部材54は、ステム12の支持筒24内に装着された2つの発泡エレメント56からなる。発泡エレメント56は、支持筒24の拡径部57内に装着されており、これらの発泡エレメント56のうち、下側の発泡エレメント56は、筒体の下側開口面にメッシュ体が張設されてなり、上側の発泡エレメント56は、筒体の上側開口面にメッシュ体が張設されてなる。
【0032】
押下ヘッド14は、上下に延設され内部にステム12が嵌合された装着筒部73と、該装着筒部73の上端部から径方向の外側に向けて突設された環状の頂壁部74と、頂壁部74の外周端縁の一部から径方向外側に突設され、内部が装着筒部73内に連通するとともに、先端にノズル孔15が形成されたノズル筒部75と、頂壁部74から下方に向けて突設され、装着筒部73を径方向の外側から囲繞する囲繞筒部76と、を備えている。これらの装着筒部73、頂壁部74及び囲繞筒部76は、前記軸線Oと同軸に配置されている。
【0033】
装着筒部73の上側部分77は、囲繞筒部76内に位置している。装着筒部73の下側部分78は、上筒部18内に位置している。
装着筒部73の上側部分77の内径は、下側部分78の内径より小さくされており、
図3に示される例では、前記上側部分77の内径は、支持筒24の拡径部57の内径と略同等とされている。また
図3において、装着筒部73の下側部分78の内径は、下方に向かうに従い段階的に拡径されており、該下側部分78における上端部78aが、支持筒24の拡径部57に外嵌されている。また、装着筒部73において下側部分78の上端部78aより下方に位置する部位には、内筒部45の上端部が上下摺動可能に嵌合している。
【0034】
図1において、押下ヘッド14の装着筒部73とステム12の上端部との間には、空気導入路65とノズル孔15とを連通する空気吸入路60が形成されている。具体的に、装着筒部73の内周面には、その上側部分77から下側部分78の上端部78aにかけて上下に延びる溝61が形成されており、この溝61によって装着筒部73の内周面とステム12の支持筒24の外周面との間に空隙が形成されていて、該空隙が空気吸入路60の一部をなしている。
【0035】
押下ヘッド14内の装着筒部73から頂壁部74及びノズル筒部75にかけては、発泡部材54とノズル孔15とを連通する泡体供給路52と、前記空気吸入路60とを区画する仕切り壁53が備えられている。仕切り壁53は、装着筒部73の上側部分77からノズル筒部75にかけて延設されており、
図2に示すように、押下ヘッド14内を泡体供給路52と空気吸入路60とに区画している。
図1において、具体的に、仕切り壁53の下端縁は、支持筒24の上端縁に当接しており、仕切り壁53は、該下端縁から上方に向かって延びた後、頂壁部74内でノズル筒部75の先端側へと向きを変えて延び、該仕切り壁53のノズル孔15側の端部は、ノズル筒部75内に位置している。尚、仕切り壁53のノズル孔15側の端部は、ノズル筒部75内にまで達していなくてもよく、この場合、前記端部は頂壁部74内に配置される。
【0036】
そして、ステム12には、内筒部45から上方に離間して、空気吸入路60と空気導入路65とを連通させ、かつ押下ヘッド14の押し下げに伴って下方移動することで、内筒部45にその上方から当接して、空気吸入路60と空気導入路65との連通を遮断するシール部72が備えられる。具体的に、ステム12の支持筒24における拡径部57と縮径部58との連結部分には、径方向外側に向けて突出するとともに周方向に沿って延びる環状のフランジ部62が形成されており、該フランジ部62の外周面が前記シール部72とされている。シール部72は、下方に向かうに従い漸次縮径するテーパ状に形成されていて、押下ヘッド14の押し下げに伴って下方移動することにより、内筒部45の上端部の被シール面55に当接するようになっている。
【0037】
頂壁部74は、円板状をなしており、該頂壁部74の内部を通して、ノズル筒部75内と装着筒部73内とが連通している。ノズル筒部75は、径方向外側に向かって延びており、その先端は径方向外側に向かうに従い僅かに下方に向かって傾斜している。
図1及び
図3において、囲繞筒部76の下端部内には、装着キャップ11の上筒部18の上端から径方向の外側に向けて環状に突出する突状部83に当接するリング状部84が嵌合されており、押下ヘッド14内への例えば液体などの浸入が規制されている。
【0038】
以上のように構成された吐出容器1では、使用前においては、規制部材8により押下ヘッド14の下方に向けた移動が規制されている。
そこで、当該吐出容器1の使用時には、規制部材8の把持部9を把持して、装着キャップ11の上筒部18から該規制部材8を径方向に相対的に移動させ、装着キャップ11から規制部材8を離脱させる。
【0039】
次いで、
図4に示すように、押下ヘッド14を下方へ押し下げると、ステム12及び液用ピストン20が一体的に押し下げられる。このとき、空気用ピストン22の内筒部45の上端部が装着筒部73の内周面上を摺動することにより、空気用ピストン22の上下方向の位置が保持されることから、ステム12のフランジ部42と、空気用ピストン22の内筒部45の下端縁とが離間される。またこのとき、押下ヘッド14とともにステム12の支持筒24が下方移動して、該支持筒24のフランジ部62のシール部72が、内筒部45の上端部の被シール面55にその上方から当接する(
図5を参照)。これにより、空気導入路65の第3連通路68と空気吸入路60との連通が遮断される。
またこのとき、弁部材37も下方に移動させられ、弁部材37の下部弁体40が液用シリンダ21のテーパ部31に着座して、液用シリンダ21の下端開口部が閉塞されるようになっている。
【0040】
そして、ステム12のシール部72が内筒部45の被シール面55に当接するまで押下ヘッド14を押し下げると、押下ヘッド14とともに空気用ピストン22が下方に移動し、空気用ピストン22の外筒部46が、空気用シリンダ23の周壁部28の内周面上を、下方に向けて摺動する。これにより、下室49内の空気が圧縮され、この空気が、前記連通隙間25(及びその下方のフランジ部42との間の隙間)と空気導入路65を通して気液混合室26に移送される。尚、
図4に示す例では、装着筒部73の下端縁が空気用ピストン22の連結部47にその上方から当接しているが、これらが当接しないように形成してもよい。
またこのとき、液用シリンダ21の下端開口部が閉塞された状態で、付勢部材36を圧縮変形させつつ、液用ピストン20を下方に移動させて、弁部材37の上部弁体39を液用ピストン20の弁座部38から離間させることにより、液用シリンダ21の内部とステム12の内部とが連通される。これにより、液用シリンダ21内の液体が、弁座部38の内側及び上部弁体39の外側を通過してステム12内の気液混合室26に移送される。
【0041】
以上のように、押下ヘッド14を押し下げることにより、気液混合室26に空気及び液体がそれぞれ移送され、これらは気液混合室26で合流して混合される。この気液混合体は、支持筒24内の発泡部材54に移送され、下側の発泡エレメント56のメッシュ体及び上側の発泡エレメント56のメッシュ体を順次通過することで発泡させられて泡体になり、装着筒部73の上側部分77内及びノズル筒部75内の泡体供給路52を流通して、ノズル孔15から吐出される。
【0042】
その後、押下ヘッド14の押し下げを解除すると、
図6に示すように、付勢部材36の弾性復元力により液用ピストン20が上方に押し上げられる。これにより、
図1に示すように、液用ピストン20の弁座部38が弁部材37の上部弁体39に当接して弁座部38が閉じられ、気液混合室26への内容物の移送が停止される。
また、
図6において、上昇する液用ピストン20とともに、ステム12及び押下ヘッド14が一体的に上昇し、ステム12のフランジ部42が空気用ピストン22の内筒部45の下端縁に当接する。尚、その後、付勢部材36の弾性復元力により、空気用ピストン22が押し上げられることで、前記下室49内が負圧状態となり、連通隙間25、空気導入路65及び空気吸入路60を通して、ノズル孔15から下室49内に外気が供給される。
【0043】
以上説明した本実施形態の吐出器10を用いた吐出容器1では、押下ヘッド14を押し下げると、この押し下げにともなってステム12が下方移動することで、ステム12のシール部72が空気用ピストン22の内筒部45にその上方から当接し、空気吸入路60と空気導入路65との連通が遮断される。これにより、空気用シリンダ23内の空気は、空気導入路65から空気吸入路60を通ってノズル孔15側に向けて流れることなく、空気導入路65から気液混合室26に供給される。
【0044】
次いで、押下ヘッド14の押し下げを解除すると、該押下ヘッド14は付勢力により上方移動し、これに伴ってステム12も上方移動することで、ステム12のシール部72は空気用ピストン22の内筒部45から上方に離間され、空気吸入路60と空気導入路65とが連通されるが、この際、シール部72が内筒部45から離間しつつ上方移動することで、内筒部45とステム12との間の空気導入路65、連通隙間25及び下室49内が負圧となり、該空気導入路65に連通する空気吸入路60側から、空気導入路65内に空気が吸入される。
【0045】
具体的に、
図7に示すようにシール部72が内筒部45の被シール面55に対して距離Lだけ上方移動することにより、この距離Lに応じて空気導入路65内の体積が増大して負圧が生じるとともに、空気吸入路60内の空気及びそのノズル孔15側の泡体が、空気導入路65側へ向けて矢印F方向に引き込まれる。
【0046】
このように、空気導入路65内に空気吸入路60を通してノズル孔15側から空気が引き込まれることにより、該ノズル孔15内に残存する泡体が押下ヘッド14のノズル筒部75における径方向内側や装着筒部73内に後退させられるので、このノズル孔15から泡体が液化して垂れ落ちたり、空気に触れて固化したりすることが防止される。
【0047】
さらに、本実施形態によれば、押下ヘッド14の押し下げ時には、ステム12のシール部72と空気用ピストンの内筒部45とが当接することで空気用シリンダ23内を加圧でき、押下ヘッド14の押し下げを解除した際には、ステム12のシール部72と空気用ピストン22の内筒部45とが離間されることにより、ノズル孔15から空気吸入路60及び空気導入路65を通して、空気用シリンダ23内に空気が吸入されるようになっているので、従来のように空気用シリンダ内を加圧したり空気を吸気させたりするための吸気弁等を要することなく従来同等の機能を具備させることができ、構造を簡単にして部品点数を削減できる。また、このような部品点数の削減に伴い、コスト低減の効果が得られる。
【0048】
また、押下ヘッド14内には、泡体供給路52と空気吸入路60とを区画する仕切り壁53が備えられているので、押下ヘッド14のノズル孔15から、空気吸入路60及び空気導入路65を通して空気用シリンダ23内に空気が吸入される際、該ノズル孔15内の仕切り壁53よりもノズル筒部75の先端側(径方向外側)に残存する泡体がバックサクション作用(負圧により泡体を引き込む作用)により後退させられる一方、該押下ヘッド14の泡体供給路52内に残存する泡体が空気用シリンダ23内に吸入されることを防止できる。すなわち、前記仕切り壁53によって、泡体供給路52内の泡体が、該泡体供給路52の仕切り壁53を挟んだ反対側に位置する空気吸入路60内に入り込むようなことが防止される。さらに、本実施形態においては、ノズル筒部75内に位置する仕切り壁53の先端部分が、空気吸入路60と泡体供給路52とをこの順に上・下に区画していることから、前述の効果を顕著に奏することになる。従って、空気用シリンダ23内における空気用ピストン22の上下摺動が安定して行われる。
【0049】
また、内筒部45の上端部の被シール面55が、上方に向かうに従い漸次拡径するテーパ状に形成され、シール部72は、下方に向かうに従い漸次縮径するテーパ状に形成されて、前記被シール面55に当接されるようになっている。従って、ステム12のシール部72と空気用ピストン22の内筒部45との当接面積を大きく確保できることから、これらシール部72と内筒部45との当接時における気密性(密閉性)を確保しやすい。
【0050】
尚、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0051】
例えば、前述の実施形態では、気液混合室26及び発泡部材54が、ステム12に設けられているとしたが、これに限定されるものではなく、気液混合室26及び発泡部材54のいずれか1つ以上が、押下ヘッド14の装着筒部73に設けられていてもよい。
【0052】
また、前述の実施形態では、互いに対応するテーパ状とされたシール部72及び被シール面55(内筒部45の上端部)が当接することで、空気吸入路60と空気導入路65との連通を遮断するとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、フランジ部62の下端面がシール部72とされ、該シール部72が、軸線Oに直交する平面とされた被シール面55にその上方から当接することで、空気吸入路60と空気導入路65との連通を遮断してもよい。
また、規制部材8、突状部83及びリング状部84は、設けられていなくてもよい。
【0053】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。