(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
露光された前記感光体表面の露光後の表面電位の時間応答特性であるトランジット時間が、少なくとも0.080秒未満であることを特徴とする請求項1に記載の感光体ユニット。
少なくとも1以上の感光体ユニットと、前記少なくとも1以上の感光体ユニットの感光体表面に形成された静電潜像を現像する現像装置とを備えて、前記感光体表面の像を形成する画像形成装置において、
前記少なくとも1以上の感光体ユニットが、
感光体と、
前記感光体表面を画像形成時に帯電させる帯電部材と、
前記帯電部材による前記感光体表面の帯電前に、前記感光体表面に除電光を照射して除電する除電装置と
を備え、
前記感光体表面における前記除電光照射位置から前記帯電部材との接触位置までの移動時間をTeとし、0.014秒<Te<0.020秒のとき、以下の式(1)満たすことを特徴とする画像形成装置。
0.006秒<(N×(Vc/Vd))/Vd …式(1)
ここで、Vdは感光体の表面速度、Vcは帯電ローラの表面速度、Nは感光体と帯電ローラの接触幅。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(A)第1の実施形態
以下では、本発明の感光体ユニット及び画像形成装置の第1の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
(A−1)第1の実施形態の構成
(A−1−1)画像形成装置の構成
図2は、第1の実施形態に係る画像形成装置の概略的な内部構成を示す内部構成図である。
図2の画像形成装置50は、例えばカラー電子写真装置とする場合を例示する。なお、画像形成装置50は、少なくとも、後述する感光体ユニットとしての構成要素に加えて、現像装置を有する。
【0017】
図2の画像形成装置50は、給紙カセット13、給紙ローラ14、搬送ローラ15、搬送ローラ16、搬送ローラ17、排出ローラ18、排出部19、ドラムユニット9K、9Y、9M、9C、転写ローラ10、転写ベルト11、定着装置12を有する。
【0018】
図2の画像形成装置50は、概ねS状の搬送経路が配設されている。給紙カセット13に印字媒体20が収容されており、給紙ローラ14は、給紙カセットから印字媒体20を取り出す。給紙ローラ14により取り出された印字媒体20は、搬送ローラ15、ドラムユニット9の感光体ドラム1と転写ベルト11との間を経て、搬送ローラ16、搬送ローラ17、排出ローラ18、そして排出部19へと搬送される。
【0019】
また、画像形成装置50は、搬送ローラ16と搬送ローラ17との間に搬送経路の上流から、ブラックK、イエローY、マゼンタM、シアンCのそれぞれの像を印字媒体20上に形成する4個のドラムユニット9K、9Y、9M、9Cの順に設けられている。また、転写ベルト11を挟んで各ドラムユニット9K、9Y、9M、9Cの各感光ドラム1と対向する位置に各転写ローラ10が配置されている。印字媒体20が、各ドラムユニット9K、9Y、9M、9Cの感光体ドラム1と転写ベルト11との間を通過するときに、各感光体ドラム1と各転写ローラ10とのそれぞれの接点部分において、各感光体ドラム1上のトナー像が印字媒体20に転写される。
【0020】
(A−1−2)感光体ユニットの構成
図3は、実施形態に係るドラムユニット9の概略的な内部構成及びトナー像の転写工程を説明する説明図である。
【0021】
なお、4個のドラムユニット9K、9Y、9M、9Cは同様の構成を備えるため、
図3ではドラムユニット9と示して説明する。なお、感光体ユニットは、少なくとも、感光体、除電装置、帯電装置を有する。
【0022】
また、
図3では、露光装置としての露光LEDヘッド3をドラムユニット9の近傍に配置している。
【0023】
図3において、ドラムユニット9は、大別して、トナー29が充填されているトナーカートリッジ7と、ドラムカートリッジ8とを有する。 また、ドラムカートリッジ8は、感光体としての感光体ドラム1、感光体ドラム1の表面を一様に帯電させる帯電装置の帯電部材としての帯電ローラ2、感光体ドラム1の表面上の静電潜像をトナーで現像する現像装置としての現像ローラ4、現像ローラ4の表面にトナーを供給しつつ現像ローラ4との間でトナーをこすりつけてマイナス極性に摩擦帯電させるスポンジローラ5、感光体ドラム1の表面に残留したトナーをクリーニングするクリーニングブレード6、ドラムギア21、感光体ドラム1の表面に除電光を照射して感光体ドラム1表面上の電位をリセットする除電装置30を有する。
【0024】
除電装置30は、転写ローラ10と帯電ローラ2との間に配設されるものであり、感光体ドラム1の表面に除電光を照射するものである。除電装置30は、感光体ドラム1の表面上のトナー像の印刷媒体20への転写後、次のサイクルで帯電ローラ2により帯電されるまでの間の位置に配設される。この実施形態では、除電装置30が、クリーニングブレード6と帯電ローラ2との間に配設される場合を例示する。
【0025】
露光LEDヘッド3は、感光体ドラム1の表面を露光して、感光体ドラム1の表面上に静電潜像を形成するものである。露光LEDヘッド3は、画像形成装置50本体に設置されており、ドラムカートリッジ8の所定の位置から、感光体ドラム1の表面に露光できる位置に配設されている。
【0026】
転写ベルト11によって搬送された印字媒体20は、転写ベルト11を挟んで感光体ドラム1と反対側に配置されている転写ローラ10との接点部分において、感光体ドラム1の表面上の静電潜像に現像されたトナー像が転写される。
【0027】
図4は、実施形態に係る感光体ドラム1の構成及び感光体ドラム1の層構造を説明する説明図である。
【0028】
図4(A)において、感光体ドラム1は、円筒型のドラム本体の一端にドラムギア21、他端にドラムフランジ22を有する。
【0029】
また、
図4(B)に示すように、感光体ドラム1は、円筒型に加工された導電性支持体24の表面に、ブロッキング層25、電荷発生層26、電荷輸送層27の順で積層された構造となっている。なお、電荷発生層26及び電荷輸送層27でなる層を感光層23と呼ぶ。感光層23は、例えば、比誘電率3程度の誘電体を用いることができる。また、導電性支持体24とブロッキング層25とは導電体を用いることができる。
【0030】
図5は、実施形態に係る感光体ドラム1及び帯電ローラ2の駆動制御を説明する説明図である。
【0031】
図5に示すように、感光体ドラム1は、感光体ドラム駆動部71により駆動される。また、帯電ローラ2は、帯電ローラ駆動部72により駆動される。感光体ドラム1及び帯電ローラ2は、例えば、感光体ドラム1及び帯電ローラ2の回転速度は印加される印加電圧を受けて駆動する。つまり、感光体ドラム駆動部71及び帯電ローラ駆動部72は、例えば感光体ドラム1及び帯電ローラ2に印加電圧を印加する電源装置等を適用することができる。そして、感光体ドラム駆動部71及び帯電ローラ駆動部72が、感光体ドラム1及び帯電ローラ2への印加電圧を制御することで、感光体ドラム1及び帯電ローラ2の回転速度、すなわち感光体ドラム1及び帯電ローラ2の表面速度を制御する。
【0032】
図1は、実施形態に係る感光体ドラム1と帯電ローラ2との接触部(以下、ニップ部ともいう)を説明する説明図である。
図1は、感光体ドラム1と帯電ローラ2との接触部(ニップ部)を分かり易く説明するため、感光体ドラム1及び帯電ローラ2を変形させて表現している。
【0033】
図1において、帯電ローラ2は、導電性シャフト2aと、例えば半導電性ゴム又はスポンジ等であって、導電性シャフト2aを覆うロール形状のローラ部2bとを有する。導電性シャフト2aには、電源62から帯電電圧Vch[V]が印加される。帯電ローラ2は、感光体ドラム1とニップ幅N[mm]で接触しており、表面速度Vc[mm/s]で回転している。
【0034】
また、
図1において、感光体ドラム1は、
図4(B)の層構造であり、感光層23は比誘電率が3程度の誘電体である。また、導電性支持体24及びブロッキング層25は導電体である。感光体ドラム1は、表面速度Vd[mm/s]で回転している。この表面速度Vd[mm/s]は画像形成装置50の印字プロセススピードとすることができる。
【0035】
ここで、一般的に感光体ドラム1表面の帯電は、パッシェンの法則に従って帯電工程の上流側の
図1に示す空隙部分Pで発生する放電による電荷注入と、帯電ローラ2が感光体ドラム1に接触しているニップ幅での感光層23の誘電体コンデンサーモデルによる帯電ローラ2からの電荷注入との2種類の合計の注入電荷量による。
【0036】
パッシェンの法則に従った放電による電荷注入は、帯電ローラ2表面と感光体ドラム1表面の空隙と電界強度の条件によって発生する。しかし、帯電工程の上流側での除電工程後の露光部と未露光部の電位差は、パッシェンの法則に従った放電の発生条件での電界強度に比べ非常に小さい。そのため、露光部への放電による電荷注入量と未露光部への放電による電荷注入量とに差が生じることなく、電位差は解消されない。
【0037】
それに比べ、帯電ローラ2と感光体ドラム1が接触しているニップ幅での誘電体コンデンサーモデルによる電荷注入は、除電工程後の露光部と未露光部との電位差は有意であり、露光部に注入される電荷量と未露光部に注入される電荷量とに差があり、電位差が解消される方向で注入されることになる。
【0038】
しかしながら、この誘電体コンデンサーモデルによる電荷注入は感光体ドラム1に対して帯電ローラ2が接触している接触時間及び相対的に接触した面積に依存する。すなわち、ニップ幅Nと、感光体ドラム1の表面速度Vd及び帯電ローラ2の表面速度Vcとすると、感光体ドラム1の或る微小領域(以下A点と称す)に着目した場合、A点に注入される電荷量は、A点がニップ幅Nを通過する時間(すなわちN/Vd)と、A点に対して帯電ローラ2が相対的に接触した面積(すなわちVc/Vd)とに比例する。つまり、誘電体コンデンサーモデルによる電荷注入は、(N×(Vc/Vd))/Vdで定義される時間内のみで有効である。
【0039】
したがって、前記時間内の電荷注入によって帯電工程の上流側で、除電工程後の露光部と未露光部の電位差が解消されると、ゴーストが発生せず、良好な印字が得られるということになる。
【0040】
よって、この実施形態では、以上のことにより、画像形成装置において、帯電ローラ2で感光体ドラム1表面を帯電する帯電工程と除電工程とを有する下記の<プロセス条件>のとき、帯電工程で下記式(1)を満たす条件であれば、除電工程があっても、ゴーストが発生する問題の発生を防止することができ、良好な印字が得られる。なお、<プロセス条件>の根拠については後述する。
【0041】
<プロセス条件>
除電工程から帯電工程までの感光体ドラム表面の移動時間をTeとすると、Te<0.020[s]程度のとき、帯電工程で下記式(1)を満たすようにする。
【0042】
0.006[s]<(N×(Vc/Vd))/Vd …(1)
すなわち、Teが0.020[s]程度以上の場合、除電工程のみで露光部と未露光部の電位差が解消されるのでゴーストは発生しない。
【0043】
しかし、Teが0.020[s]程度未満の場合であって(式1)を満たさないとき、除電工程後の露光部と未露光部との電位差に対して、帯電工程での誘電体コンデンサーモデルによる電荷注入が十分でないため電位差が解消されず、ゴーストが発生するということである。
【0044】
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態の画像形成装置50のドラムユニット60における動作を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0045】
以下の実施形態の動作説明では、
図3のドラムユニット9の構成を改変した測定装置を用いて、ドラムユニット9による印字動作を再現しながら、感光体ドラム1の表面電位を測定する。
【0046】
[測定装置]
図6は、実施形態に係る帯電部材により感光体ドラム1の表面の帯電電位を測定する測定装置を説明する説明図である。
【0047】
図6の測定装置60は、
図3のドラムユニット9の構成をベースにして改変したものである。測定装置60は、少なくとも、感光体ドラム1、帯電ローラ2、除電装置30を有する。
【0048】
また、測定装置60は、露光LEDヘッド3と転写ローラ10との間に、感光体ドラム1の表面電位を測定する表面電位計61が配設されている。表面電位計61は、
図3のドラムユニット9の現像ローラ4の位置に配設する。これにより、感光体ドラム1の表面上で現像される時点の感光体ドラム1の表面電位を測定することができる。
【0049】
さらに、測定装置60は、帯電ローラ2の支持体及び駆動ギアを調整して、感光体ドラム1の回転方向に対する帯電ローラ2と感光体ドラム1との接触距離(以下、ニップ幅とも呼ぶ)と、帯電ローラ2と感光体ドラム1との表面速度との周速差とを調整する。
【0050】
図6に示すように、測定装置60が、
図3のドラムユニット9の構成をベースにして感光体ドラム1の表面電位を測定することで、ドラムユニット9における印字データに基づく印字プロセスと同様のプロセスで感光体ドラム1の表面電位を測定することができる。すなわち、
図6の測定装置60は、
図3のドラムユニット9における印字動作を再現して感光体ドラム1の表面電位を測定できる。
【0051】
また、測定装置60は、帯電ローラ2による帯電工程、露光LEDヘッド3による露光工程、転写ローラ10による転写工程、除電装置30による除電工程の4工程のみで動作し、動作中での感光体ドラム1の表面電位を表面電位計61により測定することができる。
【0052】
さらに、測定装置60は、印字動作におけるプロセススピード、すなわち、感光体ドラム1の回転速度及び電源62から帯電ローラ2ヘの印加電圧Vch[V]については任意に設定できるようになっている。
【0053】
図7は、実施形態に係るドラムユニット9(又は測定装置60)への印字データと、その印字データに基づく印字プロセスでの感光体ドラム1の表面電位の推移を説明する説明図である。なお、
図7は、ゴーストが発生し得る場合の感光体ドラム1の表面電位状態を示している。
【0054】
図7(A)は、ドラムユニット9(又は測定装置60)に入力される印字データを説明する図である。
図7(A)の長方形は、被転写体(印字媒体)の印字領域であり、この印字領域内で印字媒体への印字を行うために印字データがドラムユニット(又は測定装置60)に入力される。
【0055】
感光体ドラム1の1サイクル目(すなわち、感光体ドラム1の1周目)において、先頭から1サイクル距離の約1/2程度までの範囲で、印字データはベタパターン(すなわち、印字密度100%)とする。また、感光体ドラム1の1サイクル目の残り約1/2程度に対応する距離と、その後の感光体ドラム2サイクル目(感光体ドラム1の2周目)以降の印字データは、全て白パターン(すなわち、印字密度0%)とする。
【0056】
図7(B)は、
図7(A)の印字データが入力された場合の感光体ドラム1の表面電位の推移を示す。
図7(B)の縦軸は表面電位計61からの感光体ドラム1の表面電位であり、横軸は時間である。
【0057】
図7(B)の感光体ドラム1の1サイクル目において、感光体ドラム1の表面電位は、ベタパターン部で露光工程による露光部電位VL[V]であり、白パターン部で帯電電工程による帯電電位V0(1)[V]となっていることが分かる。
【0058】
一方、感光体ドラム1の2サイクル目において、感光体ドラム1の表面電位は、1サイクル目のベタパターン部に対応する感光体ドラム1表面部分で、帯電電位(以下は露光部帯電電位と称す)V0(2)[V]となり、1サイクル目の白パターン部に対応する感光体ドラム表面部分で帯電電位(以下は未露光部帯電電位と称す)V0(1)となる。
【0059】
除電装置30の除電工程により、2サイクル目の露光部帯電電位V0(2)と未露光部帯電電位V0(1)との電位差が生じない場合、ゴーストが発生しない。
【0060】
しかし、画像形成装置の小型化、高速化により、除電工程がなされても、
図7(B)に示すように、帯電工程前の露光部と未露光部との間の電位差が解消されず、さらに帯電工程で不十分な電荷注入がなされ、2サイクル目の露光部帯電電位V0(2)と未露光部帯電電位V0(1)との電位差が生じた場合はゴーストが発生することになる。なお、除電工程で電位差が解消されない場合であっても、帯電工程で十分な電荷注入が可能であれば、ゴーストが発生しない良好な印字が得られる。
【0061】
[感光体ドラム1の表面電位の測定方法]
図6の測定装置60において、現像ローラ2と感光体ドラム1とのニップ幅N、感光体ドラム1の表面速度Vd、帯電ローラ2の表面速度Vcを条件パラメータとして、感光体ドラム1の表面電位を測定する。
【0062】
すなわち、帯電工程後の露光部帯電電位V0(2)と未露光部帯電電位V0(1)とを測定し、帯電工程後の電位差の絶対値|V0(1)−V0(2)|を算出する。
【0063】
さらに、電位差の絶対値|V0(1)−V0(2)|の値は、測定値バラツキの影響があるので参考値とし、実際の印字評価でゴーストの有無を確認して、印字画像によって効果を判断することにした。印字動作での帯電ローラ2ヘの印加電圧Vchは直流電圧で−1150[V]に設定する。
【0064】
[感光体ドラム1の特性について]
感光体ドラム1の特性については、トランジット時間を測定した。
図8は、トランジット時間を説明する説明図である。トランジット時間とは、
図8に示すように、感光体ドラム1表面の露光部電位VLを露光後経過時間に対してプロットした関係グラフにて見出される屈曲点での時間tTとして定義される。トランジット時間は、感光体ドラム1の表面電位露光後減衰の時間応答特性を把握する指標である。
【0065】
トランジット時間の測定方法は、
図6で示す測定装置60を用いて行うものとした。つまり、感光体ドラム1の表面速度Vdをパラメータとし、
図7に示す印字データに基づいた印字プロセスの動作において表面電位計61から出力される感光体ドラム1の露光部電位VLを測定することで行った。
【0066】
なお、トランジット時間の測定時の帯電ローラ2への印加電圧Vchは直流電圧で−1150[V]とし、露光LEDヘッド3からの照射光量エネルギーは通常の印字動作時と同じであり0.8μJ/cm
2とする。
【0067】
ここで、感光体ドラム1上の露光工程位置から表面電位計61のプローブ位置までの感光体ドラム表面距離をLとすると、Lは設計上既知であるため、感光体ドラム表面速度Vdから露光後経過時間はL/Vd[s]にて換算でき、測定した露光部電位VLを
図8のようなグラフでプロット可能である。
【0068】
上述のように、トランジット時間tTを測定した結果、この実施形態で使用した感光体ドラム1のトランジット時間は、tT=0.061[s]であった。
【0069】
[感光体ドラム1表面の移動時間Te]
図9は、感光体ドラム1表面上における除電光照射位置と帯電ローラ2位置との関係を説明する説明図である。測定装置60は、
図9に示すように、感光体ドラム1に対して、除電光照射位置及び帯電ローラ2位置が配設されている。
【0070】
図9において、感光体ドラム1外径がφ30mm、帯電ローラ2外径がφ12mm、感光体ドラム1表面の除電光照射位置と帯電ローラ2中心位置との感光体ドラム1の中心角θが20度である。このとき、除電工程から帯電工程までの感光体ドラム表面距離は約5.24mmであり、除電工程から帯電工程までの感光体ドラム1表面の移動時間TeはTe[s]=5.24/Vdとなる。
【0071】
[印字評価方法]
印字評価方法は、ドラムユニット9に対して、それぞれの条件パラメータを設定し、
図10に例示する印字パターンを印字させることで行なった。
【0072】
図10に示す印字パターンは、A4サイズのPPC(Plain Paper Copier)用紙を縦方向に印字する。用紙の印字領域の上端から約50mmの幅には、
図10に示すように、白地に、「A B C D」のボールド体の文字列を印字する。また、用紙の印字領域の上端から約50mmより下端側の領域には、
図10に示すように、印字密度30%のハーフトーンを印字する。
【0073】
ゴーストの発生の有無は、
図11に示すように、感光体ドラム周期で、感光体ドラム1の2周目のハーフトーン印字部において、感光体ドラム1の1周目のボールド体の文字列に対応する露光部と白地部分に対応する未露光部での感光体ドラム1の表面上の電位差が印字として現れるか否かを判断する。
【0074】
なお、
図11の感光体ドラム1の2サイクル目において、白抜き実線で示す「A」、「B」はゴーストが比較的濃く浮き出る場合を表現しており、白抜き点線で示す「C」、「D」はゴーストが比較的薄く浮き出る場合を表現している。
【0075】
判断基準は、ゴースト印字が目視で認識できないものを「○」とし、
図11の「C」、「D」のように、ゴースト印字は認識できるが実使用上問題ないレベルを「△」、
図11の「A」、「B」のように、ゴースト印字が目視で認識できるもの「×」とした。
【0076】
また、
図11の「C」、「D」のようにゴースト印字が比較的薄く浮き出る場合をネガゴーストとし、
図11の「A」、「B」のように、ゴースト印字が比較的濃く浮き出る場合をポジゴーストとする。
【0077】
[印刷評価]
図12は、実施形態に係るドラムユニット60による印刷評価結果を説明する説明図である。
図12は、上述した<プロセス条件>の条件パラメータ値を変えて印刷した場合の印刷評価を示す。
【0078】
図12の印刷評価では、除電工程後、感光体ドラム1の露光部と未露光部との電位差が解消されないプロセススピードを測定するため、測定装置60を用いて、感光体ドラム表面電位の評価と、
図10に例示する印字パターンを印字させてゴースト評価、すなわち|V0(1)−V0(2)|の算出とゴーストレベルの印字評価を実施した。
【0079】
また、
図12では、帯電工程での誘電体コンデンサーモデルによる電荷注入の影響を極力少なくするため、感光体ドラム1と帯電ローラ2とのニップ幅Nを0.2mm以下としている。
【0080】
このとき、画像形成装置50において、感光体ドラム1の表面速度VDと帯電ローラ2の表面速度Vcについて、Vd=Vcの条件とし、感光体ドラム1の表面速度Vdを変化させる。しかし、それ以外の条件は通常時の印字条件、すなわち帯電ローラ2ヘの印加電圧Vchは直流電圧で−1150[V]、露光LEDヘッド3からの照射光量エネルギーは0.8μJ/cm
2とする。
【0081】
図12の条件No.1〜条件No.5は、感光ドラム1の移動時間Teが約0.020程度以上においては、除電工程で感光体ドラム1の露光部と未露光部の電位差|V0(1)−V0(2)|は約10[V]未満であり、電位差がほぼ解消されていることが分かる。また、ゴーストレベルも目視できない又は実使用上問題ない程度であり、印字評価は良好である。
【0082】
一方、
図12の条件No.6〜条件No.10は、感光体ドラム1の移動時間Teが約0.020程度未満においては、除電工程で露光部と未露光部の電位差|V0(1)−V0(2)|は約12[V]以上であり、位相差が解消されていないことが分かる。また、ゴーストレベルも目視でき、ゴーストが発生した。
【0083】
上記のように、
図12の印刷評価結果より、帯電工程での誘電体コンデンサーモデルによる電荷注入で、感光体ドラム1の露光部と未露光部との電位差を解消させる必要な条件は、除電工程から帯電工程までの感光体ドラム1表面の移動時間をTeとしたとき、Te<0.020[s]を満たす画像形成装置である。
【0084】
ところで、画像形成装置の小型化、高速化が求められている。この実施形態の感光体ユニット及び画像形成装置は、小型化、高速化の要求に応えるため、感光体ドラム1の表面速度Vdが282mm/s以上とする場合を例示する。
【0085】
例えば、
図12の印刷評価結果を踏まえ、感光体ドラム1の表面速度Vdが282mm/s以上であって、感光体ドラム表面の移動時間TeがTe<0.020[s]であるという、除電工程で感光体ドラム1の露光部と未露光部との電位差が解消されない条件において、帯電工程での誘電体コンデンサーモデルによる電荷注入での解消に必要な条件を求める。
【0086】
図13は、例えば、感光体ドラム1の表面速度Vdが282mm/s以上であって、感光体ドラム表面の移動時間Teが0.020未満の条件で、条件パラメータ値を変えて印刷評価した印刷評価結果を説明する説明図である。
【0087】
ここでは、感光体ドラム1の表面速度Vdについて、Vd=282mm/s、Vd=323mm/s、Vd=358mm/sのそれぞれに対して、帯電ローラ2の表面速度Vcを、Vc=Vd[mm/s]、Vc=1.3×Vd[mmm/s]の2通りと、ニップ幅Nを、N=1.0mm、N=1.6mn、N=2.0mm、N=2.4mmの4通りとの組み合わせでゴースト評価を実施した。
【0088】
図13では、測定装置60を用いて、感光体ドラム表面電位の評価と、
図10に例示する印字パターンを印字させてゴースト評価、すなわち|V0(1)−V0(2)|の算出とゴーストレベルの印字評価を実施した。
【0089】
このとき、画像形成装置50において、帯電ローラ2ヘの印加電圧Vchは直流電圧で−1150[V]、露光LEDヘッド3からの照射光量エネルギーは通常の印字動作時と同じであり0.8μJ/cm
2とする。
【0090】
図14は、
図13に示す印刷評価結果をまとめたものである。
図14において、縦軸は、除電工程で感光体ドラム1の露光部と未露光部との電位差|V0(1)−V0(2)|の値であり、横軸は、感光体ドラム1表面の移動時間Teを示す。
【0091】
図14に示すように、除電工程から帯電工程までの感光体ドラム1表面の移動時間Teが、Te<0.020[s]程度を満たす画像形成装置50において、0.006[s]<(N×(Vc/Vd))/Vdを満たせば、帯電工程での十分な電荷注入によりゴーストのない良好な印字を得ることができる。
【0092】
ここで、この実施形態では、感光体ドラム1と帯電ローラ2の表面速度比(Vc/Vd)を考慮する。これは、感光体ドラム1の表面上の或る点が帯電ローラ2との接触する時間を考慮している。つまり、感光体ドラム1と帯電ローラ2とのニップ幅Nであっても、(Vc/Vd)を調整することで、感光体ドラム1の表面上の或る点が帯電ローラ2との接触時間を調整することができる。小型化、高速化が要求される画像形成装置50においては、感光体ドラム1と帯電ローラ2との表面速度比を調整することで、帯電工程での十分な電荷注入が可能となり、良好な印字を得ることができる。
【0093】
上述した
図13及び
図14に示す印刷評価結果例を踏まえ、画像形成装置50の除電工程で露光部と未露光部の電位差が解消されない条件Te<0.020[s]程度を満たすVdが282mm/s以上の感光体ドラム表面速度(プロセススピード)において、帯電工程での誘電体コンデンサーモデルによる電荷注入での解消が必要な条件は、式(1)に示す条件であることが分かる。
【0094】
0.006[s]<(N×(Vc/Vd))/Vd …(1)
なお、第1の実施形態では、1個の帯電ローラで帯電をするプロセスを例示した。しかし、ドラムユニット9が複数個の帯電ローラ2を備え、複数の帯電工程を有する場合でも、上述した第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0095】
例えば、2個の帯電ローラ2を用いた構成で、除電工程の下流で最も近い側の第1の帯電ローラまでの感光体ドラム表面移動時間Teが、Te<0.020[s]を満たす場合、第1の帯電ローラでの誘電体コンデンサーモデルによる電荷注入時間T1=(N1×(Vc1/Vd))/Vdと、第2の帯電ローラでの誘電体コンデンサーモデルによる電荷注入時間T2=(N2×(Vc2/Vd))/Vdとする。この場合、帯電工程での電荷注入時間T1及びT2の合計が、0.006[s]<(T1+T2)を満たせばよい。
【0096】
また、式(1)の上限値については、特に制限はない。例えば、第1の実施形態のプロセス条件のTe<0.020[s]を満足し、小型化、高速化の画像形成装置を設計する上で想定される最大値としては、0.019[s](例えば、感光体ドラム1の表面速度Vd=282mm/s、帯電ローラ2の表面速度Vc=423mm/s、ニップ幅N=3.5mmとする。)である。(N1×(Vc1/Vd))/Vdが上記値以上の場合、感光体ドラム1や帯電ローラ2の径を大きくするなど、小型化、高速化の設計に対して実用的ではないからである。
【0097】
また、露光部と未露光部の電位差が帯電工程での十分な電荷注入で解消できれば、除電工程がなくてもゴーストのない良好な印字が得られる可能性が考えられる。しかし、それを実現するためには、帯電工程における誘電体コンデンサーモデルでの電荷注入に必要な時間に関して、少なくとも除電工程のみで電位差が解消される条件、つまりTeが0.020[s]以上と同等の時間が必要である。すなわち、0.020[s]≦(N×(Vc/Vd))/Vdを満たす必要があると考えられる。
【0098】
第1の実施形態で、これを満たすような状態の例としては、Vd=Vc=199mm/sの中速プロセススピードであっても、ニップ幅Nは4.0mm以上必要となる。そのため、感光体ドラム1や帯電ローラ2の径を大きくするなど、小型化、高速化に対しての設計が困難となる。つまり小型化、高速化の画像形成装置に対しては、第1の実施形態で説明した通り、除電工程が必要である。
【0099】
(A−3)第1の実施形態の効果
以上のように、第1の実施形態によれば、除電工程を有し、除電工程から帯電工程までの感光体ドラム表面の移動時間Teが、Te<0.020[s]程度のとき、式(1)を満たすような条件の帯電工程であれば、ゴーストのない良好な印字を得られ、複雑な構成や制御を必要とせず、また画像形成装置を大規模化することなく高速化が可能となる。
【0100】
0.006[s]<(N*(Vc/Vd))/Vd …式(1)
ここで、Nは感光体ドラムと帯電ローラのニップ幅、Vdは感光体ドラム表面速度、Vcは帯電ローラ表面速度である。
【0101】
(B)第2の実施形態
次に、本発明の感光体ユニット及び画像形成装置の第2の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0102】
(B−1)第2の実施形態の構成及び動作
第2の実施形態の画像形成装置及び感光体ユニットの構成は、第1の実施形態と同様の構成を用いることができる。第2の実施形態においても、
図1〜
図4を用いて説明する。
【0103】
第2の実施形態は、第1の実施形態で説明したプロセス条件で、ゴーストが発生しない良好な印字を得る画像形成装置及び感光体ユニットにおいて、耐刷経時においてもゴースト発生しない安定的かつ良好な印字が得られ、ドラムユニットの長寿命化を可能にする最適な感光体ドラムに関する。
【0104】
図15は、第2の実施形態に係る感光体ドラム1の製造工程を示すフローチャートである。
【0105】
(Step1)導電性支持体24の原材料であるアルミニウム合金ビレットを中空形成可能な金型に入れ、例えばポートホール法等の押出方式により、アルミニウム素管を成型する。ここで、この実施形態のアルミニウム合金ビレットは、例えば、アルミニウムに珪素等を混合した合金が挙げられ、JIS−A3000系のアルミニウム合金ビレットを用いる。
【0106】
(Step2)次に、Step1で成形したアルミニウム素管の表面を切削加工する。これにより、所定の肉厚、外形寸法の円筒とする。この実施形態では、押し出し円筒管は、外径φ30mm、長さ246mm、肉厚0.75mmの円筒形状である導電性支持体24(以下、アルミニウム素管24と称す)を作製した。
【0107】
(Step3)(Step2)で作製されたアルミニウム素管24を洗浄層に運搬し、表面洗浄処理を行い、表面の油分、空気中の各種塵埃等などを十分に落とす。
【0108】
(Step4)十分洗浄されたアルミニウム素管24の表面上にブロッキング層25を形成する。この実施形態では、ブロッキング層25として陽極酸化処理を行い、その後、酢酸ニッケルを主成分とする封孔処理を行う。これにより、陽極酸化皮膜(以下、アルマイト層25と称す)でブロッキング層25を形成する。
【0109】
(Step5)アルマイト層25上に電荷発生層26を形成する。この実施形態の電荷発生層26の形成方法は、あらかじめ調合された電荷発生層用塗布液で満たされた液槽に、アルマイト層25を形成したアルミニウム素管24を浸して塗布する浸漬塗布方法にて行う。浸漬塗布により、この実施形態では約0.3/μmの電荷発生層26になるように塗布を行う。
【0110】
この実施形態で用いる電荷発生層用塗布液は、オキソチタニウムフタロシアニン10部(なお、部は重量部をいう。以下同様とする。)を、1,2−ジメトキシエタン150部に加え、サンドグラインドミルにて粉砕分散処理を行って作製した顔料分散液160部に、ポリビニルプチラール5部を1,2−ジメトキシエタン95部に溶解した固形分濃度5%のバインダー溶液100部を混ぜ合わせ、最終的に固形分濃度4%、1,2−ジメトキシエタン:4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2=9:1となるように調整され調合された液体を電荷発生層用分散液とした。
【0111】
(Step6)アルマイト層25上に電荷発生層を塗布されたアルミニウム素管24を乾燥することで、電荷発生層26内の余分な溶媒を除去し、アルマイト層25上に電荷発生層26を定着させる。
【0112】
(Step7)電荷発生層26上に電荷輸送層27を形成する。この実施形態の電荷輸送層27の形成方法は、あらかじめ調合された電荷輸送層用塗布液で満たされた液槽に、電荷発生層26を形成されたアルミニウム素管24を浸して塗布する浸漬塗布方法にて行う。電荷輸送用塗布液は、主にバインダー樹脂と電荷輸送物質を溶媒に溶解させた液体であり、この実施形態においては、後述する電荷輸送用塗布液で感光体ドラムサンプルを作製した。
【0113】
(Step8)電荷発生層26上に浸漬塗布された電荷輸送層27を乾燥し、電荷輸送層27内の余分な溶媒を除去し、電荷発生層26上に定着させる。
【0114】
次に、この実施形態で使用する12種類の感光体ドラム1のサンプルを説明する。
【0115】
<サンプルNo.1>
バインダー樹脂として(構造式1)のポリカーボネート樹脂100部、電荷輸送物質として(構造式2)の電荷輸送物質70部を、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液として、
図15の製造工程に従って感光層の膜厚18μmの感光体ドラム1のサンプルを作製した。
【化1】
【化2】
【0116】
<サンプルNo.2>
バインダー樹脂として(構造式3)のポリカーボネート樹脂100部、電荷輸送物質として(構造式4)の電荷輸送物質70部を、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液として、前述した
図15の製造工程に従って感光層の膜厚18μmの感光体ドラムサンプルを作製した。
【化3】
【化4】
【0117】
<サンプルNo.3>
バインダー樹脂として(構造式5)のポリカーボネート樹脂100部、電荷輸送物質として(構造式6)の電荷輸送物質70部を、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した
図15の製造工程に従って感光層の膜厚18μmの感光体ドラムサンプルを作製した。
【化5】
【化6】
【0118】
<サンプルNo.4>
バインダー樹脂として(構造式1)のポリカーボネート樹脂30部、(構造式7)のポリアリレート樹脂70部、電荷輸送物質として(構造式2)の電荷輸送物質50部、(構造式8)の電荷輸送物質20部、添加剤として(構造式10)の添加剤1部を、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した
図15の製造工程に従って感光層の膜厚18μmの感光体ドラムサンプルを作製した。
【化7】
【化8】
【化9】
【0119】
<サンプルNo.5>
バインダー樹脂として(構造式3)のポリカーボネート樹脂30部、(構造式7)のポリアリレート樹脂70部、電荷輸送物質として(構造式4)の電荷輸送物質50部、(構造式8)の電荷輸送物質20部、添加剤として(構造式9)の添加剤1部を、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した
図15の製造工程に従って感光層の膜厚18μmの感光体ドラムサンプルを作製した。
【0120】
<サンプルNo.6>
バインダー樹脂として(構造式5)のポリカーボネート樹脂30部、(構造式7)のポリアリレート樹脂70部、電荷輸送物質として(構造式6)の電荷輸送物質50部、(構造式8)の電荷輸送物質20部、添加剤として(構造式9)の添加剤1部を、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した
図15の製造工程に従って感光層の膜厚18μmの感光体ドラムサンプルを作製した。
【0121】
<サンプルNo.7>
バインダー樹脂として(構造式1)のポリカーボネート樹脂30部、(構造式10)のポリエステル樹脂70部、電荷輸送物質として(構造式2)の電荷輸送物質50部を、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した
図15の製造工程に従って感光層の膜厚18μmの感光体ドラムサンプルを作製した。
【化10】
【0122】
<サンプルNo.8>
バインダー樹脂として(構造式3)のポリカーボネート樹脂30部、(構造式10)のポリエステル樹脂70部、電荷輸送物質として(構造式4)の電荷輸送物質50部を、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した
図15の製造工程に従って感光層の膜厚18μmの感光体ドラムサンプルを作製した。
【0123】
<サンプルNo.9>
バインダー樹脂として(構造式5)のポリカーボネート樹脂30部、(構造式10)のポリエステル樹脂70部、電荷輸送物質として(構造式6)の電荷輸送物質50部を、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した
図15の製造工程に従って感光層の膜厚18μmの感光体ドラムサンプルを作製した。
【0124】
<サンプルNo.10>
バインダー樹脂として(構造式1)のポリカーボネート樹脂100部、電荷輸送物質として(構造式2)の電荷輸送物質40部、(構造式8)の電荷輸送物質10部、添加剤として(構造式9)の添加剤1部を、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した
図15の製造工程に従って感光層の膜厚18μmの感光体ドラムサンプルを作製した。
【0125】
<サンプルNo.11>
バインダー樹脂として(構造式3)のポリカーボネート樹脂100部、電荷輸送物質として(構造式4)の電荷輸送物質40部、(構造式8)の電荷輸送物質10部、添加剤として(構造式9)の添加剤1部を、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した
図15の製造工程に従って感光層の膜厚18μmの感光体ドラムサンプルを作製した。
【0126】
<サンプルNo.12>
バインダー樹脂として(構造式5)のポリカーボネート樹脂100部、電荷輸送物質として(構造式6)の電荷輸送物質40部、(構造式8)の電荷輸送物質10部、添加剤として(構造式9)の添加剤1部を、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20の混合溶媒に溶解させた液体を電荷輸送層用塗布液とし、前述した
図15の製造工程に従って感光層の膜厚18μmの感光体ドラムサンプルを作製した。
【0127】
図16は、上述した12種類の感光体ドラム1のトランジット時間tTを示す図である。
【0128】
ここで、トランジット時間tTの測定方法は、第1実施形態と同様の方法で実施した。なお、サンプルNo.1の感光体ドラム1は、第1実施形態で使用した感光体ドラムである。
【0129】
[印刷評価]
次に、上述した12種類の感光体ドラム1のそれぞれを使用したドラムユニット9を備える画像形成装置50の印刷評価結果を示す。
【0130】
画像形成装置50は、印字枚数40K枚(すなわち40000枚)の耐刷を実施する。初期から10K枚毎に
図9の印字パターンを画像形成装置50に印字させて、ゴーストが発生するか否かの印字品質確認を実施する。
【0131】
なお、耐刷40K枚は、
図3のドラムユニット9のユニット寿命20K枚の2倍の印字枚数である。
【0132】
画像形成装置50の条件は、
図13の条件No.12を適用した。すなわち、Vd=Vc=358mm/s、ニップ幅N=2.4mm、Te=0.0146[s]、(N×(Vc/Vd))/Vd=0.0067[s]である。
【0133】
印刷条件は、通常の印字条件とする。すなわち、帯電ローラ2ヘの印加電圧Vchは直流電圧で−1150[V]、露光LEDヘッド3からの照射光量エネルギーは通常の印字動作時と同じであり0.8μJ/cm
2である。
【0134】
ゴーストの発生有無の評価方法は、
図10及び
図11のような感光体ドラム周期で感光体ドラム1の2周目のハーフトーン印字部において、感光体ドラム1の1周目のボールド体の文字列パターンに対応する露光部と白地部分に対応する未露光部での感光体ドラム1の表面上の電位差が印字として現れるかどうかで判断する。
【0135】
なお、判定基準としては、
図10及び
図11のようなゴースト印字が目視で認識できないものを「○」、ゴースト印字は認識できるが実使用上問題ないレベルを「△」、ゴースト印字が目視で認識できるもの「×」とした。
【0136】
一般的に、耐刷によるゴースト発生は、感光体ドラム1の感光層23が摩耗し、誘電体コンデンサーモデルでの感光層部分の静電容量増大および感光層23の経時の特性劣化による。これらにより、ゴーストが発生しやすい状態になる。
【0137】
図17は、第2の実施形態で作製した12種類の感光体ドラム1を用いた画像形成装置50の印字評価結果である。
図18は、
図17の印字評価結果をまとめたものである。
【0138】
図17及び
図18に示すように、第2の実施形態に係る12種類の感光体ドラム1を用いたドラムユニット9のそれぞれは、ユニット寿命である10K枚後まで、トランジット時間tTによらず、実用上問題のないゴーストレベルであることが分かる。
【0139】
さらに、ユニット寿命の2倍の40K枚後は、トランジット時間tTが0.080[s]未満で問題のないゴーストレベルであることが分かる。
【0140】
したがって、第2の実施形態は、トランジット時間tTが0.080[s]未満であれば、誘電体コンデンサーモデルでの感光層部分の静電容量増大および感光層23の経時特性劣化により、ゴーストが発生しやすい状態になっても、ゴーストが発生しない良好な印字が得られた。
【0141】
以上より、小型化、高速化に加え、耐刷経時においても安定的にゴーストが発生しない良好な印字が得られ、ドラムユニットの長寿命化を可能にするための最適な感光体ドラムは、トランジット時間tTが小さい値で優位であり、少なくともトランジット時間tTが0.080[s]未満の感光体ドラムを適用したドラムユニットが最適である。
【0142】
(B−3)第2の実施形態の効果
以上のように、第2の実施形態によれば、第1実施形態の条件、すなわち、Te<0.020[s]、および0.006[s]<(N×(Vc/Vd))/Vdであるゴーストが生じない高速な画像形成装置において、少なくともトランジット時間tTが0.080[s]未満の感光体ドラムを適用することで、ドラムユニットの従来比2倍以上の耐刷経時においても安定的にゴーストが発生しない良好な印字が可能となる。
【0143】
(C)他の実施形態
上述した第1及び第2の実施形態においても種々の変形実施形態を説明したが、その他にも他の変形実施形態を本発明は適用することができる。
【0144】
上述した第1及び第2の実施形態では、画像形成装置がカラー電子写真方式のプリンタの場合を例示したが、本発明の画像形成装置は、複写機、モノクロプリンタ、ファクシミリ、MFP等に広く適用することができる。