特許第5895296号(P5895296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5895296-戸袋排水構造 図000002
  • 特許5895296-戸袋排水構造 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5895296
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】戸袋排水構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/24 20060101AFI20160317BHJP
   B60J 5/06 20060101ALI20160317BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
   B62D25/24 A
   B60J5/06 A
   B62D25/20 F
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-15290(P2012-15290)
(22)【出願日】2012年1月27日
(65)【公開番号】特開2013-154692(P2013-154692A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2015年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115200
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修之
(72)【発明者】
【氏名】門脇 武利
(72)【発明者】
【氏名】岡村 和志
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−024268(JP,A)
【文献】 特開平05−155252(JP,A)
【文献】 実開平04−062287(JP,U)
【文献】 実開昭60−191561(JP,U)
【文献】 実開平05−089052(JP,U)
【文献】 特開平08−020246(JP,A)
【文献】 特開2012−166624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/24
B60J 5/06
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用スライドドアの案内用としてガイドレールを内部に備えた戸袋部に係る排水構造であって、
車両側面の下縁に沿って前後方向に延び、車両側面に形成されたドア開口の下縁を形成するロッカー部と、
車両外側に向けて開口し、前記ガイドレールを内部に備えた戸袋部と、
前記戸袋部において前記ロッカー部よりも車両内側方向に外れた位置に形成された排水孔と、
前記戸袋部内から前記排水孔を経て車両外部に向けて排水する排水系統とを有し、
前記排水系統が、
前記戸袋部に対して前記排水孔と連通するように接続され、前記戸袋部に対して下方側に設けられたメンバー部材に連通した排水管と、
前記メンバー部材の下面側に形成された車両外部に連通する連通孔とを有するものであり、
前記メンバー部材は車両のフロアパネルの下面に取り付けられ、
前記排水管は、前記戸袋部の底面と前記フロアパネルとの隙間で下方に向けて突出する漏斗形状を形成する、ことを特徴とする戸袋排水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用スライドドアの案内用としてガイドレールを内部に備えた戸袋部における排水を行うための戸袋排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているスライドドア付車両のように、スライドドアの案内用として設けられたガイドレールを備えた戸袋を有し、この戸袋内に溜まった雨水等を排出させるための排水構造を備えたものが提供されている。特許文献1に開示されている車両においては、スライドドアの案内用としてのガイドレールを内部に備えた戸袋部に溜まった雨水等を排水させるべく、ロッカー部をなすアウターパネルに水抜孔を設けた構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平2−46410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているスライドドア付車両のようにアウターパネルに水抜孔を設けた場合には、車両が左右いずれかの方向に傾斜した状態(車幅方向一方側と他方側とで高低差が生じた状態)において、水抜孔とは反対側、すなわち戸袋部の奥側(車幅方向中央側)に雨水等が集まってしまい、水抜孔から排水できないという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、車両が左右いずれかの方向に傾斜した状態においても、戸袋部からスムーズに排水させることが可能な戸袋排水構造の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決すべく提供される本発明の戸袋排水構造は、車両用スライドドアの案内用としてガイドレールを内部に備えた戸袋部に係る排水構造であって、車両側面の下縁に沿って前後方向に延び、車両側面に形成されたドア開口の下縁を形成するロッカー部と、車両外側に向けて開口し、前記ガイドレールを内部に備えた戸袋部と、前記戸袋部において前記ロッカー部よりも車両内側方向に外れた位置に形成された排水孔と、前記戸袋部内から前記排水孔を経て車両外部に向けて排水する排水系統とを有することを特徴とするものである。
【0007】
本発明の戸袋排水構造においては、ロッカー部よりも車両内側方向に外れた位置に排水孔が形成されており、排水孔に集まった排水を排水系統を介して車両外部に排出させうる。従って、本発明の戸袋排水構造を採用することにより、車両が左右いずれかの方向に傾斜した状態においても、戸袋部からスムーズに排水させることが可能となる。
【0008】
また、本発明においては、戸袋部をロッカー部よりも車両内側(中央側)に向けて延設すること、すなわち戸袋部の奥行きを深くとることにより、排水孔を車両内側に偏った位置に設けることができる。そのため、本発明によれば、ロッカー部を車両内側方向に向けて拡大させることなく、戸袋部内における排水を確実に行わせることが可能となる。
【0009】
上述した本発明の戸袋排水構造は、前記排水系統が、前記戸袋部に対して前記排水孔と連通するように接続され、前記戸袋部に対して下方側に設けられたメンバー部材に連通した排水管と、前記メンバー部材の下面側に形成された車両外部に連通する連通孔とを有するものであることが望ましい。また、前記メンバー部材は車両のフロアパネルの下面に取り付けられ、前記排水管は、前記戸袋部の底面と前記フロアパネルとの隙間で下方に向けて突出する漏斗形状を形成することが望ましい。
【0010】
本発明においては、排水孔に連通するように設けられた排水管、及びメンバー部材を介して戸袋部内に溜まった雨水等をスムーズに排出することができる。また、メンバー部材を介在させることにより、車両外部から戸袋部側に向けて雨水や、小石あるいは埃等の異物が流入することを抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両が左右いずれかの方向に傾斜した状態においても、戸袋部からスムーズに排水させることが可能な戸袋排水構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る戸袋排水構造を採用した車両の側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る戸袋排水構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
続いて、本発明の一実施形態に係る戸袋排水構造10について、これを採用した車両Aを例に挙げ、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1に示すように、車両Aは、後部座席側の側面にスライドドア20を備えたものである。車両Aの側面には、下縁に沿って前後方向に延びるようにロッカー部30が形成されている。また、図2に示すように、ロッカー部30は、アウタパネル32と、インナパネル34とを組み合わせることによって構成されている。ロッカー部30は、アウタパネル32が車両外側に向き、インナパネル34が車幅方向中央側に向く姿勢とされて設置されている。
【0014】
また、ロッカー部30において、スライドドア20が設けられた側(後部座席側)には戸袋部50が設けられている。戸袋部50は、車両Aの外側に向けて開口した、断面形状略「コ」字型の外観形状を有するものでる。戸袋部50の内側には、スライドドア20の下端部を支持し案内するためのガイドレール52が設置されている。
【0015】
戸袋部50は、上述したロッカー部30をなすインナパネル34よりも車幅方向中央側に向けて延設されている。言い換えれば、戸袋部50の開口側から見て奥側に立設された戸袋縦壁54は、インナパネル34をなすインナ縦壁36よりも車幅方向中央側に存在している。
【0016】
戸袋部50の底面56であって、インナ縦壁36が設けられた位置よりも奥側の領域(以下、「奥側領域58」とも称す)には、排水孔60が設けられている。本実施形態では、排水孔60が戸袋縦壁54に対して隣接する位置に設けられている。
【0017】
また、排水孔60には、排水管62が接続されている。排水管62は、漏斗状の外観形状を有し、排水孔60に集められた排水を集めて戸袋部50から排出するために用いられる管である。排水管62は、戸袋部50の底面56から下方に向けて突出するように設けられている。
【0018】
上述したロッカー部30及び戸袋部50の下方には、戸袋部50の底面56に対して間隔をあけてフロアパネル70が設けられている。また、フロアパネル70の下面72側には、メンバー部材80が取り付けられている。また、メンバー部材80の内部空間82は、底面84側に設けられた連通孔86を介して車両Aの外部と連通している。
【0019】
上述した排水管62は、フロアパネル70を貫通し、メンバー部材80の内部空間82と連通するように設置されている。これにより、戸袋部50内から排水孔60、排水管62、フロアパネル70、及びメンバー部材80を経て車両Aの外部に排水する排水系統100が形成されている。
【0020】
上述したように、本実施形態の戸袋排水構造10においては、ロッカー部30よりも車両内側方向(車幅方向中央側)に外れた奥側領域58内に排水孔86が形成されている。これにより、仮に車両Aが傾いた状態になったとしても、戸袋部50に流入した雨水等を排水孔86に集め、排水系統100を介してスムーズに車両Aの外部に排出させることができる。
【0021】
本実施形態の戸袋排水構造10においては、戸袋部50の奥行きを深くとり、戸袋部50をロッカー部30よりも車両内側(中央側)に向けて延設することにより、排水孔86を車両内側に偏った位置に設けるための奥側領域58を確保している。そのため、上述した戸袋排水構造10によれば、ロッカー部30を車両内側方向に向けて拡大させることなく、戸袋部50内に流入した雨水等を確実に排水させることが可能となる。
【0022】
また、上述したように戸袋部50を車両内側(中央側)に向けて延設すれば、ロッカー部30(インナパネル34)を車両内側方向に向けて拡大させる必要がなくなる。これにより、ロッカー部30の重量増加を抑制し、ひいては車両Aの燃費向上に資することが可能となる。
【0023】
上述したように、戸袋排水構造10においては、排水管62の上端側を戸袋部50に対して排水孔86と連通するように接続すると共に、排水管62の下端側をメンバー部材80に連通させ、さらにメンバー部材80に連通孔86を形成することにより排水系統100を形成している。このように、戸袋排水構造10においては、戸袋部50を排水管62を介して直接的に車両Aの外部と連通させるのではなく、メンバー部材80を介して戸袋部50を外部と連通させた構成とされている。そのため、戸袋排水構造10によれば、戸袋部50内に溜まった雨水等をスムーズに排出可能とする一方で、車両Aの外部から戸袋部50側に向けて雨水や、小石あるいは埃等の異物が流入することを抑制できる。
【0024】
なお、排水系統100は、必ずしも上述したように戸袋部50と車両Aの外部雰囲気との間にメンバー部材80を介在させたものとしなくても良い。具体的には、排水系統100は、排水孔60あるいは排水管62から直接外部に排水するものであっても良い。また、排水系統100をメンバー部材80以外の他部材を介して、車両Aの外部に排水するものとしても良い。
【0025】
また、メンバー部材80は、車両Aの車体構造をなすいかなるメンバー部材によって構成されていても良い。具体的には、メンバー部材80として車両Aを構成するサイドメンバ、あるいはクロスメンバを上述したメンバー部材80として利用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の戸袋排水構造は、スライドドアを備えた車両全般において利用可能である。スライドドアについては、モータ等の駆動力によってスライド動作する、いわゆるパワースライドドアの他、手動操作によりスライド動作するスライドドアとすることが可能である。
【符号の説明】
【0027】
10 戸袋排水構造
20 スライドドア
30 ロッカー部
50 戸袋部
52 ガイドレール
60 排水孔
62 排水管
80 メンバー部材
86 連通孔
100 排水系統
図1
図2