【実施例1】
【0024】
本発明の第1実施例である、マルチシリーズ型水中照明システムを
図1〜
図4により説明する。
図1はシステム全体の概略構成図である。本システムは、陸上に置かれる陸上部30と、水中Wに配置される水中部に大別される。水中部には多数の水中照明ユニット10が含まれ、それらが所定個数毎にシリーズとして接続されている。
図1の場合、点線の枠内の多数の水中照明ユニット10が1つのシリーズ20として、後述する送気チューブ40により直列に接続されている。
図1の例では、このようなシリーズが更に複数、シリーズ20と並列に接続されている。
【0025】
まず、水中照明ユニット10について詳しく説明する。
図2(a)は1個の水中照明ユニット10の平面図、
図2(b)はそのX-X
’断面図である。この例は光源として24個のフルカラーLED素子11を使用するものであるが、LED素子11の数は任意であり、また、RGBの各色がそれぞれ独立したLED素子を使用することもできる。さらには、光源は白熱電球や蛍光灯であってもよい。
【0026】
本実施例の水中照明ユニット10は、金属性の略円盤状のケース12の上部開口にOリングを介してガラス板13が置かれ、そのガラス板13をネジ式の窓蓋14でケース12に押さえて気密構造としている。なお、ケース12としては、高度な気密性(水密性)を必要としないので、金属やプラスチック等によるIP67相当程度の簡易防水ケースで十分である。全体又は一部を樹脂等で作製する場合、後述するように内部に空気を入れると浮力で浮き上がってしまう場合があるので、そのときは、一部を金属製とするか、別途、底部や側部等に重りを付着させるとよい。
【0027】
ケース12の側部両側にはそれぞれ1個の小さい側部開口が設けられており、そこに配管継手15が取り付けられている。なお、シリーズの末端の水中照明ユニット10xでは、一方の(直前の水中照明ユニット10に連なる方の)側部開口にのみ配管継手15が取り付けられ、他方の(シリーズの末端の方の)側部開口の配管継手15は袋ネジとOリングで密閉される。各配管継手15にはゴム製又はプラスチック製の送気チューブ40が差し込まれ、この送気チューブ40により、各水中照明ユニット10は隣接する水中照明ユニット10若しくは後述する陸上部30の分配器34と接続されている。
【0028】
図3に示すように、送気チューブ40の中には、各水中照明ユニット10が使用する電力を供給する電力線41と、各LED素子11の点滅、発光強度及び発光色を制御するための制御信号を伝送する信号線42、及び共通のアース線43が通され、1つのシリーズ20に属する複数の水中照明ユニット10に電力と制御信号を伝達する。なお、電力線41に信号を重畳する2線式や、信号線を送受信毎に設ける4線式など、このほかにも各種形態を採ることができる。なお、電力線41に信号を重畳して伝送する場合、後述の分配回路36に信号重畳回路を付設しておく。
【0029】
図4に陸上部30の構成を示す。陸上部30は、電源装置(Power)31、制御回路(Cont)32、コンプレッサ(Comp)33、分配器(Div)34及び空気乾燥器(Dry)35を有する。電源装置31は、全水中照明ユニット10及びこの陸上部30の各部に電源を供給するためのもので、その電力は商用電源から得てもよいし、発電装置や大型の蓄電装置から得ても良い。
【0030】
制御回路32は、各水中照明ユニット10のLED素子11の点滅、発光強度及び発光色を制御するための信号を生成し、後述の分配回路36を介して各水中照明ユニット10に送る。
【0031】
コンプレッサ33は、制御回路32の制御の下に起動及び停止し、必要な時に必要な量の空気を生成して分配器34に送る。
【0032】
一般に、水中に置かれる水中照明ユニット10の内部の温度は、陸上の温度よりも低い。そのため、陸上の空気をそのまま水中照明ユニット10に送り込むと、水中照明ユニット10の内部で結露して、LED素子11や回路16(
図2(b))等を傷める可能性がある。そこで、コンプレッサ33と分配器34の間には、陸上の空気中に含まれる水分(湿度)を除去する除湿機構(
図4の例では、シリカゲルを用いた空気乾燥器35)を入れた方が良い。
【0033】
分配器34は、コンプレッサ33から供給される空気を、送気チューブ40を介して各シリーズ20に均等に送るための所定の容積を有する密閉容器である。分配器34には、要求されるシリーズ数の最大値に対応した配管継手38を設けておく。また、前記コンプレッサ33から空気の供給を受けるための継手には、チェックバルブ(逆止弁)37を設けておく。分配器34には圧力センサPが設けられており、この圧力センサPからの信号は制御回路32に送られる。いずれかの水中照明ユニット10において空気漏れが発生した場合、その空気漏れはその水中照明ユニット10の空気圧の低下として表れ、更にはこの分配器34における空気圧の低下として表れ、圧力センサPにより把握される。これを検知した制御回路32は、コンプレッサ33を起動することにより空気を分配器34を通して全水中照明ユニット10に送る。そうすると、この空気は、空気漏れが生じて圧力が低下している水中照明ユニット10に集中的に配給され、そこの圧力低下を補償する。
【0034】
詳しく述べると、制御回路32は、圧力センサPの検出値Pmが所定値P1を下回った時点でコンプレッサ33のポンプを起動し、別の所定値P2(>P1)を上回った時点でポンプを停止する。P1としては、水中照明ユニット10が置かれている水中の圧力(水圧)Paよりもやや高い値としておく。
【0035】
なお、圧力の値を連続的に測定する圧力センサPの代わりに、上記所定値P1以下、P1とP2の間の値、P2以上の各場合に応じて3種の信号を出力する圧力スイッチを用いてもよい。さらに、圧力値に応じてON/OFFする2値スイッチを用いることもできる。例えば、圧力値が前記所定値P1を超えたときにONとなる圧力スイッチを用いた場合には、圧力スイッチがOFFとなったときにポンプを起動し、圧力スイッチがONとなったときにポンプを停止する。
【0036】
制御回路32は、これらのポンプ(コンプレッサ33)制御とともに、圧力センサPや圧力スイッチの状態や遷移を基に警報を発するようにしておくことができる。例えば、圧力センサPの検出値Pmの低下速度が所定値Sを超えた場合には、異常な空気漏れが生じている可能性があるため、警報を発するようにしておくとよい。警報としては、その場において音や光を発する他、専用回線や携帯電話回線、インターネット等を通じて遠隔地のパソコンや携帯電話等にメール等で通知するようにしてもよい。又は、或いはそれと同時に、圧力値が第1の所定値P1以下である状態が所定時間以上継続した場合(すなわち、ポンプが所定時間以上継続して稼働している場合)にも、警報を発するようにしてもよい。圧力スイッチが2値スイッチである場合にも同様の措置をとることができる。
【0037】
分配器34の中にはまた、電源装置31からの電源を各シリーズ20の水中照明ユニット10の列に分配するための電源分配回路、及び、前述の制御信号を分配するための信号分配回路が配置されている。電源装置31からの電力及び制御回路32からの信号は、この電源分配回路及び制御信号分配回路を含む分配回路36により各シリーズ20の電力と信号に分離され、前述の通り、送気チューブ40内に敷設された各配線41、42、43を介して各水中照明ユニット10に配給される。なお、各水中照明ユニット10への発光制御信号の伝達には、DMX等の通信プロトコルを用いることができる。前述の通り、電力線に制御信号を重畳して各水中照明ユニット10に制御信号を伝達する場合には、本分配回路36に信号重畳回路を、各水中照明ユニット10に信号分離回路を付設する。
【0038】
このように、本実施例に係る水中照明ユニット10は、全水中照明ユニット10がシリーズ20毎に互いに送気チューブ40で接続されているため、陸上に設けた分配器34から空気を送り込むことにより、各水中照明ユニット10のケース12内部の空気圧を任意に設定することができる。従って、最も深いところに設けた水中照明ユニット10にかかる水圧(すなわち、最も高い水圧)を計算あるいは実測により求めておき、送給する空気の圧力がそれよりも僅かに高くなるように制御することにより、いずれかの水中照明ユニット10において気密漏れが生じても、空気がその水中照明ユニット10から外部に漏れるだけで、その水中照明ユニット10の内部を確実に浸水から保護することができる。また、このように或る水中照明ユニット10に気密漏れが生じた場合、その水中照明ユニット10から空気が漏れ出すため、気泡の発生により、漏れが生じた水中照明ユニット10を特定することができる。
【0039】
なお、陸上部30の分配器34の他に、各水中照明ユニット10にも圧力センサを設けるようにしてもよい。これにより、各水中照明ユニット10の気密漏れをより早期に検出し、コンプレッサ33の起動をより迅速に行うことができるようになる。
【0040】
水中照明ユニット10を設置する水深が10 m以内であると、内部に送り込む空気の圧力は1 kg/cm
2以下でよく、更に、供給する流量も、漏れを補償する程度の僅かなものでよいので、コンプレッサ33の容量は小さくてよい。従って、一般的なピストン型である必要はなく、チューブポンプやベローズ型等、多くの種類から選択することができる。
【0041】
コンプレッサ33の起動により当該水中照明ユニット10に必要な(僅かな)量の空気が供給されると、当該水中照明ユニット10の圧力が直ちに復帰し、当該水中照明ユニット10の圧力センサ又は分配器34の圧力センサPによりそれが検出されて、コンプレッサ33の動作が停止される。これにより、無駄な電力の消費を免れることができる。
【0042】
上記実施例では、陸上部30が独立して機能を発揮する形態の事例を示したが、この制御回路32を直接または通信線を通じて間接的にパソコン等と接続し、同パソコン側のソフトウェアにより、各水中照明ユニット10の発光量や発光色を経時的に制御することもできる。この場合、パソコンにおいてプログラムを組むことにより、より自在な照明の制御が可能となる。
【0043】
なお、上記実施例で示したように、本発明は複数の水中照明ユニット10を含むシステムにおいて好適に実施することができるが、本発明自体は必ずしも複数の水中照明ユニット10を必須要件とするものではなく、1個の水中照明ユニット10だけについて実施することももちろん可能である。
【実施例2】
【0044】
本発明の第2実施例であるマルチシリーズ型水中照明システムを
図5に示す。
図1に示されている第1実施例の各構成要素の番号に40を加えた番号が付されている
図5の構成要素は第1実施例のそれと同じであるため、その説明を省略する。
本実施例では、複数の水中照明ユニット50で構成されるシリーズ60が、ループ状の水中照明ユニットシリーズ61とマトリックス状の水中照明ユニットシリーズ62から成る。ループ状シリーズ61では、複数の水中照明ユニット50が送気チューブ80により分配器74とループ状に接続され、マトリックス状シリーズ62では、分配器74とループ状に接続された送気チューブ80及び水中照明ユニット50の所々において送気チューブ80がT字形空気継手91及び十字形空気継手92で互いに接続されることにより、送気チューブ80が網目状(マトリックス状)となっている。
【0045】
本実施例のマルチシリーズ型水中照明システムでは、ループ状シリーズ61であれマトリックス状シリーズ62であれ、各水中照明ユニット50が2本の送気チューブ80に接続され、それぞれの送気チューブ80から空気が供給されている。そのため、或る送気チューブ80で空気漏れが発生した場合であっても、他の送気チューブ80から空気が供給されるため、該水中照明ユニット50への浸水を防止することができる。
【0046】
上記実施例の水中照明ユニット10、50は、内部にカメラ(静止画カメラ、動画カメラのいずれでも良い。)を備えた水中電子ユニットに置き換えることができる。また、カメラと照明装置を備えた水中電子ユニットに置き換えることもできる。これらの場合の本発明の実施例である水中電子装置の水中電子ユニットの平面図を
図6(a)、及び
図6(b)に示す。これらの図の構成要素に付されている、番号の下2桁が
図2(a)の水中照明ユニット10の番号と同じである構成要素は、該水中照明ユニット10のそれと同じであるため、該構成要素の説明を省略する。
【0047】
図6(a)に示す水中電子ユニット110は、カメラ117が配置されたものである。この水中電子ユニット110は、例えば、水中から養殖魚を撮影する等の利用が可能である。
また、
図6(b)に示す水中電子ユニット210は、カメラ217の他に、撮影対象を照明するためのLED素子211が配置されている。この水中電子ユニット210は、夜間や、光の届かないような深度での水中撮影が可能になる。