特許第5895315号(P5895315)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5895315
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】水中照明装置及び水中電子装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20160317BHJP
   F21V 31/03 20060101ALI20160317BHJP
   F21V 23/00 20150101ALI20160317BHJP
   G03B 15/02 20060101ALI20160317BHJP
   G03B 15/05 20060101ALI20160317BHJP
   G03B 17/08 20060101ALI20160317BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20160317BHJP
【FI】
   F21S2/00 640
   F21V31/03 200
   F21V23/00 110
   F21V23/00 160
   F21V23/00 140
   G03B15/02 Z
   G03B15/05
   G03B17/08
   F21Y101:02
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-561214(P2014-561214)
(86)(22)【出願日】2014年9月4日
(86)【国際出願番号】JP2014073322
(87)【国際公開番号】WO2015045782
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2014年12月22日
(31)【優先権主張番号】特願2013-198126(P2013-198126)
(32)【優先日】2013年9月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】392000486
【氏名又は名称】株式会社エルム
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮原 隆和
【審査官】 石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/143622(WO,A2)
【文献】 実開昭51−013683(JP,U)
【文献】 特開2007−280686(JP,A)
【文献】 特開2013−051137(JP,A)
【文献】 実開昭55−118401(JP,U)
【文献】 特開平05−312947(JP,A)
【文献】 特開2005−327669(JP,A)
【文献】 実開昭49−062675(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 23/00
F21V 31/03
G03B 15/02−15/05
G03B 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 内部に備えられた光源と、該光源の光を透過する窓を有する気密ケースとを有する複数の水中照明ユニットと、
b) 前記気密ケースに設けられた開口に接続される送気チューブと、
c) 前記送気チューブによりループ状又はマトリックス状に接続された前記複数の水中照明ユニットに、気体分配器及び前記送気チューブを介して気体を送り込む、陸上に配置される給気装置と
を有することを特徴とする水中照明装置。
【請求項2】
更に、前記送気チューブ内に、電力源から前記光源に電力を供給するための電線が挿通されていることを特徴とする請求項1に記載の水中照明装置。
【請求項3】
更に、前記送気チューブ内に、前記光源の発光を制御するための信号を伝送する電線が挿通されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の水中照明装置。
【請求項4】
前記送気チューブ内に挿通された電線に前記光源の発光を制御するための信号を重畳する信号重畳回路が備えられていることを特徴とする請求項2に記載の水中照明装置。
【請求項5】
更に、前記給気装置に圧力センサと制御部とポンプが備えられており、該制御部が、該圧力センサの検出結果に基づき該ポンプの起動及び停止を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水中照明装置。
【請求項6】
前記制御部が、前記圧力センサによって検出された値の低下する速度が所定の値よりも大きい場合に、警報を発することを特徴とする請求項5に記載の水中照明装置。
【請求項7】
前記制御部が、前記ポンプが所定時間以上稼働している場合に、警報を発することを特徴とする請求項5に記載の水中照明装置。
【請求項8】
前記制御部が、前記ポンプが停止した後、所定時間以内に再度ポンプが起動した場合に、警報を発することを特徴とする請求項5に記載の水中照明装置。
【請求項9】
前記制御部が、前記警報を所定の外部端末に送信することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の水中照明装置。
【請求項10】
a) 光を透過する窓を有する気密ケースを有する複数の水中電子ユニットと、
b) 前記気密ケースに設けられた開口に接続される送気チューブと、
c) 前記送気チューブによりループ状又はマトリックス状に接続された前記複数の水中電子ユニットに、気体分配器及び前記送気チューブを介して気体を送り込む、陸上に配置される給気装置と
を有することを特徴とする水中電子装置。
【請求項11】
前記水中電子ユニットの内部にカメラを備えることを特徴とする請求項10に記載の水中電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中に設置可能な、照明装置及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水中から水面上に光を投影したり、或いは水中の自然物や人工物を照明するため、従来より、水中に設置可能な水中照明装置が各種考案されている。更に、照明システムを複数の照明ユニットに分け、各照明ユニットを様々に配置し、且つ、各照明ユニット毎に個々に色や明るさを調整することのできる照明装置も製造されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「19インチラックマウント商品・周辺機器オンラインショップ 地中埋設型・水中・水没・噴水用・ガーデンライト・ウォールウォッシャーライト・RGBライト」,株式会社ゼットコミュニケーションズ,[平成25年9月10日検索],インターネット<URL: http://19inch.jp/led/kapego.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような照明装置を長期間水中で使用するためには、水が侵入して光源や電気系統を傷めないように、その容器には高度な水密性が求められる。照明装置であるから、少なくとも一部には光を通すための透明なガラスや樹脂カバーを用いなければならないが、それと、物理的強度を確保するための金属製や硬質樹脂製の筐体との接合部において高度な水密性を確保しようとすると、装置は非常に高額となる。従って、例えば池やプールの全面に多数設置するような用途には不向きであった。内部にカメラ等の電子機器を備える電子ユニットを水中で使用する際にも同様のことがいえる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、比較的低コストでありながら、長期間の使用に耐える水中照明装置及び水中電子装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために成された本発明に係る水中照明装置は、
a) 内部に備えられた光源と、該光源の光を透過する窓を有する気密ケースとを有する複数の水中照明ユニットと、
b) 前記気密ケースに設けられた開口に接続される送気チューブと、
c) 前記送気チューブによりループ状又はマトリックス状に接続された前記複数の水中照明ユニットに、気体分配器及び前記送気チューブを介して気体を送り込む、陸上に配置される給気装置と
を有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る水中照明装置では、前記光源の電力は、水中照明ユニットの内部に設けた電池(一次電池、二次電池)に依ってもよいが、陸上に配置された電力源から供給することが望ましい。その場合、該電力を供給するための電線は、前記送気チューブとは別に設けてもよいし、前記送気チューブ内に挿通しておくこともできる。
【0008】
本発明に係る水中照明装置は更に、前記光源の発光(点滅や発光強度、発光色など)を制御するための信号を伝送する信号電線を接続しておくことが望ましい。この場合、前記電力供給電線が設けられているのであればそれと一緒にし、電力供給電線が上記のように送気チューブ内に挿通されているのであれば、それと一緒に挿通しておくことが望ましい。
【0009】
送気チューブ内に信号電線と電力電線を挿通する場合、それらを別個に挿通するのではなく、電力電線に信号を重畳させて通信を行うようにしてもよい。もちろん、送気チューブとは別に電力電線を引く場合にも、発光制御信号を電力電線に重畳させるようにしてもよい。
【0010】
更に、前記給気装置に圧力センサと制御部とポンプを設け、該制御部が、圧力センサの検出結果に基づきポンプの起動及び停止を制御するようにすることが望ましい。ここにおける「圧力センサ」は、圧力の値を測定するもの(以下、これを「圧力値センサ」と呼ぶ。)の他、所定の圧力段階毎に信号を出すものや、所定の値を境にON/OFFする圧力スイッチも含む。
【0011】
更に、前記給気装置に気体分配器を設け、該気体分配器から複数の水中照明ユニットに並列に気体を送り込むようにすることができる。
【0012】
前記並列に配列された複数の水中照明ユニットのそれぞれは更に、複数の水中照明ユニットを互いに前記送気チューブにより直列に接続したものであってもよい。
【0013】
また、複数の水中照明ユニットを送気チューブで直列に接続し、前記給気装置(或いは気体分配器)とループ状に接続してもよい。
【0014】
また、複数の水中照明ユニットは、網目状(マトリックス状)に構成された送気チューブにより前記給気装置(或いは気体分配器)と接続されるようにしてもよい。
【0015】
前記給気装置の制御部は、前記圧力値センサによって検出される値の低下する速度が所定の値よりも大きい場合に、警報を発するように構成することが望ましい。圧力の低下が急である場合、異常な気体漏れが発生している可能性が高いからである。警報は、その場で音や光を発するという方法の他、所定の通信端末(携帯電話、パソコン等)に電子メール等で送るという方法をとることもできる。
【0016】
また、前記圧力センサが、所定の値を境にON/OFFする圧力スイッチである場合、或いは、圧力値センサを用いて同様のON/OFF制御を行っている場合には、圧力が所定値以下である状態が所定時間以上継続したとき(すなわち、ポンプが所定時間以上稼働しているとき)に、該制御部が警報を発するように構成することが望ましい。上記同様、異常な気体漏れが発生している可能性が高いからである。
【0017】
また、同様の制御を行っている際に、ポンプ稼働により圧力が所定値以上に回復し、ポンプが停止した後、所定時間以内に再び圧力が所定値以下に低下してポンプが稼働するような場合には、やはり異常な気体漏れが発生している可能性が高いので、前記制御部が警報を発することが望ましい。
【0018】
本発明は、前記の、内部にカメラ等の電子機器を備える電子ユニットについても、同様に前記課題を解決することができる。すなわち、本発明に係る水中電子装置は、
a) 光を透過する窓を有する気密ケースを有する複数の水中電子ユニットと、
b) 前記気密ケースに設けられた開口に接続される送気チューブと、
c) 前記送気チューブによりループ状又はマトリックス状に接続された前記複数の水中電子ユニットに、気体分配器及び前記送気チューブを介して気体を送り込む、陸上に配置される給気装置と
を有することを特徴とする。
【0019】
本発明に係る水中電子装置は、その水中電子ユニットを前記水中照明装置の水中照明ユニットに置き換えるだけで、前記水中照明装置の様々な態様(電力に関する態様、信号電線に関する態様、ポンプ制御に関する態様、給気装置に関する態様、送気チューブの配管態様、警報の発生に関する態様)をとることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る水中照明装置又は水中電子装置では、水中照明ユニット(又は水中電子ユニット。以下、同じ。)の気密ケース内に気体を送り込むことにより、気密ケース内の圧力をその水中照明ユニットが置かれる水中の圧力(水圧)よりも高くしておくことができる。こうすることにより、仮にこの気密ケースに気密漏れが生じたとしても、水中照明ユニットに水が侵入することを防ぎ、中の光源やその回路等が傷むことを防止することができる。また、このように内部から与圧し、内外の圧力差を小さくするため、気密ケースとしては、金属やプラスチック等によるIP67相当程度の簡易防水ケースを使用することができる。
また、この送気のためのチューブに電線を挿通させておき、或いは送気チューブとは別に電線を設け、その電線を経由して陸上から光源に電源を供給することにより、長期間に亘る使用が可能となる。
【0021】
また、給気装置(或いは気体分配器)と複数の水中照明ユニットをループ状又はマトリックス状に接続することにより、1台の水中照明ユニットには2本の送気チューブから気体が供給されるようになる。その結果、送気チューブの或る箇所で気体漏れが発生した場合でも、各水中照明ユニットには少なくとも1本の送気チューブからの気体の供給が保証されるため、各水中照明ユニットへの浸水を防止することができる。
【0022】
更に、圧力センサの検出値等に応じて適切に警報を発することにより、水中照明ユニットや送気チューブの破損等を早期に検出し、適切な対応をとることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施例であるマルチシリーズ型水中照明システムの概略構成図。
図2】同実施例の水中照明ユニットの平面図(a)及びX-X断面図(b)。
図3】同実施例の送気チューブの断面図(図2(b)のY-Y断面図)。
図4】同実施例の陸上部の概略構成図。
図5】本発明の第2実施例であるマルチシリーズ型水中照明システムの概略構成図。
図6】本発明の他の実施例における水中電子ユニットについて、カメラのみを含む場合の平面図(a)及びカメラと光源を含む場合の平面図(b)。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0024】
本発明の第1実施例である、マルチシリーズ型水中照明システムを図1図4により説明する。図1はシステム全体の概略構成図である。本システムは、陸上に置かれる陸上部30と、水中Wに配置される水中部に大別される。水中部には多数の水中照明ユニット10が含まれ、それらが所定個数毎にシリーズとして接続されている。図1の場合、点線の枠内の多数の水中照明ユニット10が1つのシリーズ20として、後述する送気チューブ40により直列に接続されている。図1の例では、このようなシリーズが更に複数、シリーズ20と並列に接続されている。
【0025】
まず、水中照明ユニット10について詳しく説明する。図2(a)は1個の水中照明ユニット10の平面図、図2(b)はそのX-X断面図である。この例は光源として24個のフルカラーLED素子11を使用するものであるが、LED素子11の数は任意であり、また、RGBの各色がそれぞれ独立したLED素子を使用することもできる。さらには、光源は白熱電球や蛍光灯であってもよい。
【0026】
本実施例の水中照明ユニット10は、金属性の略円盤状のケース12の上部開口にOリングを介してガラス板13が置かれ、そのガラス板13をネジ式の窓蓋14でケース12に押さえて気密構造としている。なお、ケース12としては、高度な気密性(水密性)を必要としないので、金属やプラスチック等によるIP67相当程度の簡易防水ケースで十分である。全体又は一部を樹脂等で作製する場合、後述するように内部に空気を入れると浮力で浮き上がってしまう場合があるので、そのときは、一部を金属製とするか、別途、底部や側部等に重りを付着させるとよい。
【0027】
ケース12の側部両側にはそれぞれ1個の小さい側部開口が設けられており、そこに配管継手15が取り付けられている。なお、シリーズの末端の水中照明ユニット10xでは、一方の(直前の水中照明ユニット10に連なる方の)側部開口にのみ配管継手15が取り付けられ、他方の(シリーズの末端の方の)側部開口の配管継手15は袋ネジとOリングで密閉される。各配管継手15にはゴム製又はプラスチック製の送気チューブ40が差し込まれ、この送気チューブ40により、各水中照明ユニット10は隣接する水中照明ユニット10若しくは後述する陸上部30の分配器34と接続されている。
【0028】
図3に示すように、送気チューブ40の中には、各水中照明ユニット10が使用する電力を供給する電力線41と、各LED素子11の点滅、発光強度及び発光色を制御するための制御信号を伝送する信号線42、及び共通のアース線43が通され、1つのシリーズ20に属する複数の水中照明ユニット10に電力と制御信号を伝達する。なお、電力線41に信号を重畳する2線式や、信号線を送受信毎に設ける4線式など、このほかにも各種形態を採ることができる。なお、電力線41に信号を重畳して伝送する場合、後述の分配回路36に信号重畳回路を付設しておく。
【0029】
図4に陸上部30の構成を示す。陸上部30は、電源装置(Power)31、制御回路(Cont)32、コンプレッサ(Comp)33、分配器(Div)34及び空気乾燥器(Dry)35を有する。電源装置31は、全水中照明ユニット10及びこの陸上部30の各部に電源を供給するためのもので、その電力は商用電源から得てもよいし、発電装置や大型の蓄電装置から得ても良い。
【0030】
制御回路32は、各水中照明ユニット10のLED素子11の点滅、発光強度及び発光色を制御するための信号を生成し、後述の分配回路36を介して各水中照明ユニット10に送る。
【0031】
コンプレッサ33は、制御回路32の制御の下に起動及び停止し、必要な時に必要な量の空気を生成して分配器34に送る。
【0032】
一般に、水中に置かれる水中照明ユニット10の内部の温度は、陸上の温度よりも低い。そのため、陸上の空気をそのまま水中照明ユニット10に送り込むと、水中照明ユニット10の内部で結露して、LED素子11や回路16(図2(b))等を傷める可能性がある。そこで、コンプレッサ33と分配器34の間には、陸上の空気中に含まれる水分(湿度)を除去する除湿機構(図4の例では、シリカゲルを用いた空気乾燥器35)を入れた方が良い。
【0033】
分配器34は、コンプレッサ33から供給される空気を、送気チューブ40を介して各シリーズ20に均等に送るための所定の容積を有する密閉容器である。分配器34には、要求されるシリーズ数の最大値に対応した配管継手38を設けておく。また、前記コンプレッサ33から空気の供給を受けるための継手には、チェックバルブ(逆止弁)37を設けておく。分配器34には圧力センサPが設けられており、この圧力センサPからの信号は制御回路32に送られる。いずれかの水中照明ユニット10において空気漏れが発生した場合、その空気漏れはその水中照明ユニット10の空気圧の低下として表れ、更にはこの分配器34における空気圧の低下として表れ、圧力センサPにより把握される。これを検知した制御回路32は、コンプレッサ33を起動することにより空気を分配器34を通して全水中照明ユニット10に送る。そうすると、この空気は、空気漏れが生じて圧力が低下している水中照明ユニット10に集中的に配給され、そこの圧力低下を補償する。
【0034】
詳しく述べると、制御回路32は、圧力センサPの検出値Pmが所定値P1を下回った時点でコンプレッサ33のポンプを起動し、別の所定値P2(>P1)を上回った時点でポンプを停止する。P1としては、水中照明ユニット10が置かれている水中の圧力(水圧)Paよりもやや高い値としておく。
【0035】
なお、圧力の値を連続的に測定する圧力センサPの代わりに、上記所定値P1以下、P1とP2の間の値、P2以上の各場合に応じて3種の信号を出力する圧力スイッチを用いてもよい。さらに、圧力値に応じてON/OFFする2値スイッチを用いることもできる。例えば、圧力値が前記所定値P1を超えたときにONとなる圧力スイッチを用いた場合には、圧力スイッチがOFFとなったときにポンプを起動し、圧力スイッチがONとなったときにポンプを停止する。
【0036】
制御回路32は、これらのポンプ(コンプレッサ33)制御とともに、圧力センサPや圧力スイッチの状態や遷移を基に警報を発するようにしておくことができる。例えば、圧力センサPの検出値Pmの低下速度が所定値Sを超えた場合には、異常な空気漏れが生じている可能性があるため、警報を発するようにしておくとよい。警報としては、その場において音や光を発する他、専用回線や携帯電話回線、インターネット等を通じて遠隔地のパソコンや携帯電話等にメール等で通知するようにしてもよい。又は、或いはそれと同時に、圧力値が第1の所定値P1以下である状態が所定時間以上継続した場合(すなわち、ポンプが所定時間以上継続して稼働している場合)にも、警報を発するようにしてもよい。圧力スイッチが2値スイッチである場合にも同様の措置をとることができる。
【0037】
分配器34の中にはまた、電源装置31からの電源を各シリーズ20の水中照明ユニット10の列に分配するための電源分配回路、及び、前述の制御信号を分配するための信号分配回路が配置されている。電源装置31からの電力及び制御回路32からの信号は、この電源分配回路及び制御信号分配回路を含む分配回路36により各シリーズ20の電力と信号に分離され、前述の通り、送気チューブ40内に敷設された各配線41、42、43を介して各水中照明ユニット10に配給される。なお、各水中照明ユニット10への発光制御信号の伝達には、DMX等の通信プロトコルを用いることができる。前述の通り、電力線に制御信号を重畳して各水中照明ユニット10に制御信号を伝達する場合には、本分配回路36に信号重畳回路を、各水中照明ユニット10に信号分離回路を付設する。
【0038】
このように、本実施例に係る水中照明ユニット10は、全水中照明ユニット10がシリーズ20毎に互いに送気チューブ40で接続されているため、陸上に設けた分配器34から空気を送り込むことにより、各水中照明ユニット10のケース12内部の空気圧を任意に設定することができる。従って、最も深いところに設けた水中照明ユニット10にかかる水圧(すなわち、最も高い水圧)を計算あるいは実測により求めておき、送給する空気の圧力がそれよりも僅かに高くなるように制御することにより、いずれかの水中照明ユニット10において気密漏れが生じても、空気がその水中照明ユニット10から外部に漏れるだけで、その水中照明ユニット10の内部を確実に浸水から保護することができる。また、このように或る水中照明ユニット10に気密漏れが生じた場合、その水中照明ユニット10から空気が漏れ出すため、気泡の発生により、漏れが生じた水中照明ユニット10を特定することができる。
【0039】
なお、陸上部30の分配器34の他に、各水中照明ユニット10にも圧力センサを設けるようにしてもよい。これにより、各水中照明ユニット10の気密漏れをより早期に検出し、コンプレッサ33の起動をより迅速に行うことができるようになる。
【0040】
水中照明ユニット10を設置する水深が10 m以内であると、内部に送り込む空気の圧力は1 kg/cm2以下でよく、更に、供給する流量も、漏れを補償する程度の僅かなものでよいので、コンプレッサ33の容量は小さくてよい。従って、一般的なピストン型である必要はなく、チューブポンプやベローズ型等、多くの種類から選択することができる。
【0041】
コンプレッサ33の起動により当該水中照明ユニット10に必要な(僅かな)量の空気が供給されると、当該水中照明ユニット10の圧力が直ちに復帰し、当該水中照明ユニット10の圧力センサ又は分配器34の圧力センサPによりそれが検出されて、コンプレッサ33の動作が停止される。これにより、無駄な電力の消費を免れることができる。
【0042】
上記実施例では、陸上部30が独立して機能を発揮する形態の事例を示したが、この制御回路32を直接または通信線を通じて間接的にパソコン等と接続し、同パソコン側のソフトウェアにより、各水中照明ユニット10の発光量や発光色を経時的に制御することもできる。この場合、パソコンにおいてプログラムを組むことにより、より自在な照明の制御が可能となる。
【0043】
なお、上記実施例で示したように、本発明は複数の水中照明ユニット10を含むシステムにおいて好適に実施することができるが、本発明自体は必ずしも複数の水中照明ユニット10を必須要件とするものではなく、1個の水中照明ユニット10だけについて実施することももちろん可能である。
【実施例2】
【0044】
本発明の第2実施例であるマルチシリーズ型水中照明システムを図5に示す。図1に示されている第1実施例の各構成要素の番号に40を加えた番号が付されている図5の構成要素は第1実施例のそれと同じであるため、その説明を省略する。
本実施例では、複数の水中照明ユニット50で構成されるシリーズ60が、ループ状の水中照明ユニットシリーズ61とマトリックス状の水中照明ユニットシリーズ62から成る。ループ状シリーズ61では、複数の水中照明ユニット50が送気チューブ80により分配器74とループ状に接続され、マトリックス状シリーズ62では、分配器74とループ状に接続された送気チューブ80及び水中照明ユニット50の所々において送気チューブ80がT字形空気継手91及び十字形空気継手92で互いに接続されることにより、送気チューブ80が網目状(マトリックス状)となっている。
【0045】
本実施例のマルチシリーズ型水中照明システムでは、ループ状シリーズ61であれマトリックス状シリーズ62であれ、各水中照明ユニット50が2本の送気チューブ80に接続され、それぞれの送気チューブ80から空気が供給されている。そのため、或る送気チューブ80で空気漏れが発生した場合であっても、他の送気チューブ80から空気が供給されるため、該水中照明ユニット50への浸水を防止することができる。
【0046】
上記実施例の水中照明ユニット10、50は、内部にカメラ(静止画カメラ、動画カメラのいずれでも良い。)を備えた水中電子ユニットに置き換えることができる。また、カメラと照明装置を備えた水中電子ユニットに置き換えることもできる。これらの場合の本発明の実施例である水中電子装置の水中電子ユニットの平面図を図6(a)、及び図6(b)に示す。これらの図の構成要素に付されている、番号の下2桁が図2(a)の水中照明ユニット10の番号と同じである構成要素は、該水中照明ユニット10のそれと同じであるため、該構成要素の説明を省略する。
【0047】
図6(a)に示す水中電子ユニット110は、カメラ117が配置されたものである。この水中電子ユニット110は、例えば、水中から養殖魚を撮影する等の利用が可能である。
また、図6(b)に示す水中電子ユニット210は、カメラ217の他に、撮影対象を照明するためのLED素子211が配置されている。この水中電子ユニット210は、夜間や、光の届かないような深度での水中撮影が可能になる。
【符号の説明】
【0048】
10、10x、50…水中照明ユニット
11、211…LED素子
12…ケース
13、113、213…ガラス板
14、114、214…窓蓋
15、115、215…配管継手
16…(水中照明ユニット内)回路
20、60、61、62…水中照明ユニットシリーズ
30、70…陸上部
31、71…電源装置
32、72…制御回路
33、73…コンプレッサ
34、74…分配器
35、75…空気乾燥器
36…分配回路
38…配管継手
40、80、140、240…送気チューブ
41…電力線
42…信号線
43…アース線
110、210…水中電子ユニット
117、217…カメラ
P…圧力センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6