(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第一の態様は、下記の粒子状組成物である。
二酸化チタンを含有する粒子状組成物であって、
粒度分布におけるD50が0.15〜1.00μm、D90が0.20〜2.00μmであり、
比表面積が15〜350m
2/gであり、
900℃焼成後に二酸化チタン含有量が99.0質量%以上となる
ことを特徴とする粒子状組成物。
【0016】
粒子状組成物の比表面積は、15〜350m
2/gである。
粒子状組成物の比表面積が350m
2/gより大きいと、その粒子径に由来する凝集力を抑制することができない。一方、粒子状組成物の比表面積が15m
2/gより小さいと、微細且つ粒度分布が揃った所望のチタン酸バリウムを得ることができない。
粒子状組成物の比表面積は、15〜320m
2/gであることがより望ましい。
粒子状組成物の比表面積は、15〜220m
2/gであることがさらに望ましい。
比表面積の測定には、窒素吸着BET1点法により比表面積が測定される装置を使用することができる。そのような装置としては、例えば、マウンテック社製マックソーブが挙げられる。
【0017】
粒子状組成物の比表面積球相当径は、5〜100nmであることが望ましい。
粒子状組成物の比表面積球相当径は、7〜100nmであることがより望ましい。
粒子状組成物の比表面積球相当径は、10〜100nmであることがさらに望ましい。
粒子状組成物の比表面積球相当径が5nmより小さいと、その粒子径に由来する凝集力を抑制することができない可能性がある。一方、粒子状組成物の比表面積球相当径が100nmより大きいと、微細且つ粒度分布が揃った所望のチタン酸バリウムを得ることができない可能性がある。
【0018】
比表面積球相当径は、粒子形状を球と仮定して、BET法によって求められる比表面積から換算される粒子径のことであり、次式より求められる。
D=[6/(Sg×ρ)]×1000
(D:比表面積球相当径[nm]、Sg:比表面積[m
2/g]、ρ:粒子の真比重[g/cm
3])
【0019】
次に、900℃焼成後の二酸化チタン含有量について述べる。
900℃焼成後の二酸化チタン含有量は、JIS K 5116 7.2に規定される方法に基づいて測定することができる。
900℃焼成後の二酸化チタン含有量は、粒子状組成物から得られるチタン酸バリウムの純度に反映され、該二酸化チタン含有量が低いとチタン酸バリウムの誘電特性に悪影響を与える可能性がある。
チタン酸バリウムの誘電特性に悪影響を与える可能性がある元素としては、Fe、Al、Na、K、P、S、Zr、Si等が挙げられる。
900℃焼成後の二酸化チタン含有量は、99.1質量%以上であることがより望ましく、99.2質量%以上であることがさらに望ましい。
【0020】
次に、粒度分布におけるD50とD90について述べる。
D50とは、粒度分布において50体積%の粒径であり、D90とは、粒度分布において90体積%の粒径である。
粒度分布は、以下の方法で測定する。
日機装(株)製レーザー回折・散乱式粒度分析計Microtrac MT3300にて、イオン交換水を分散媒として、試料を添加し、測定液の光透過率が70〜95%になるように調整し、流速50%、超音波出力40W、超音波照射時間120秒の条件で超音波照射してから測定する。
D50は、0.15〜0.90μmであることがより望ましく、0.15〜0.80μmであることがさらに望ましい。D90は、0.20〜1.80μmであることがより望ましく、0.20〜1.60μmであることがさらに望ましい。
【0021】
粒度分布におけるD50とD90とが大きい場合(D50が1.00μmを超える場合、又は、D90が2.00μmを超える場合)、チタン酸バリウムの製造において、二酸化チタンと炭酸バリウムとを水により湿式混合を行う際、二酸化チタンが局部的に偏在した状態となってしまう。
二酸化チタンの局部的な偏在がある状態で、一次粒子径が微細なチタン酸バリウムを得るために低温で反応させると、未反応の二酸化チタンが残留する。二酸化チタンの残留は、チタン酸バリウムの誘電特性に悪影響を及ぼしてしまうという問題がある。
また、二酸化チタンの残留をなくすために反応温度を上げると、粒成長が起こり、一次粒子径が微細なチタン酸バリウムが得られないという問題がある。
【0022】
これに対して、粒度分布におけるD50とD90とが小さければ、二酸化チタンと炭酸バリウムとの湿式混合において、二酸化チタンの局部的な偏在が起こらない。従って、チタン酸バリウムの合成反応において、二酸化チタンが残留することがなく、一次粒子径が微細なチタン酸バリウムを得ることができる。
【0023】
この点に関し、本発明者は、二酸化チタンを含有する粒子状組成物として、粒度分布におけるD50とD90とがそれぞれ異なる2点の粒子状組成物を調製した。
粒度分布におけるD50とD90とが大きな粒子状組成物(D50が1.67μm、D90が3.21μm)を使って、炭酸バリウムとの固相反応でチタン酸バリウムを調製すると、反応温度を1000℃とした場合には、比表面積3.3m
2/g(比表面積球相当径0.3μm)のチタン酸バリウムが得られたが、反応温度を950℃とした場合には、二酸化チタンが残留した。
また、粒度分布におけるD50とD90とが小さな粒子状組成物(D50が0.34μm、D90が0.64μm)を使って、炭酸バリウムとの固相反応でチタン酸バリウムを調製すると、反応温度を950℃とした場合であっても、二酸化チタンの残留が見られず、比表面積6.6m
2/g(比表面積球相当径0.15μm)のチタン酸バリウムを得ることができた。
【0024】
本発明の第二の態様は、下記の粒子状組成物である。
600℃で焼成した残分が1.0質量%以下の界面活性剤を0.10〜35.0質量%含有する
ことを特徴とする第一の態様の粒子状組成物。
本明細書では、600℃で焼成した残分を灰分とも言う。
【0025】
界面活性剤に含まれる灰分が多いと、当該灰分に起因して、チタン酸バリウムの誘電特性に悪影響が出現する可能性がある。
灰分が1.0質量%以下の界面活性剤としては、ナトリウムやカリウム、リン等のように焼成によって残留する元素を含まない界面活性剤が望ましいと考えられる。硫酸エステル塩やスルホン酸塩は、焼成により多くが脱離するが、硫黄分が残留することがあり、好ましくない。
界面活性剤に含まれる灰分は、1.0質量%以下であることが望ましく、0.9質量%以下であることがより望ましく、0.8質量%以下であることがさらに望ましい。
【0026】
界面活性剤は、その分子構造に由来する立体障害によって二酸化チタンの乾燥凝集を抑制し、二酸化チタンを乾燥させた後、水スラリー化するときに分散性を発揮させる目的で使用する。
また、後述するように、本発明の粒子状組成物の製造方法における湿式粉砕工程の際に、スラリーの粘度を低減させる効果も兼ね備えている。これにより、スラリー濃度を高くすることが可能となり、メディアの磨耗粉が混入することによって二酸化チタンの純度が低下してしまうことを抑制することができる。また、生産性を向上させることができる。
【0027】
界面活性剤の添加量が少なすぎると、乾燥凝集を抑制することができない可能性がある。一方、界面活性剤の添加量が多すぎると、過剰の界面活性剤によって粒子の凝集を引き起こすことがある。
界面活性剤の添加量は、スラリー中の二酸化チタン粒子100質量部に対して、0.10質量部以上であることが望ましく、0.20質量部以上であることがより望ましく、0.30質量部以上であることがさらに望ましい。また、界面活性剤の添加量は、スラリー中の二酸化チタン粒子100質量部に対して、35.0質量部以下であることが望ましく、30.0質量部以下であることがより望ましく、25.0質量部以下であることがさらに望ましい。
二酸化チタン粒子の比表面積が大きくなるにつれて、必要な界面活性剤の添加量は多くなる。
具体的に、界面活性剤の添加量は、スラリー中の二酸化チタン粒子100質量部に対して、(Sg/100)〜(Sg/10)質量部であることが望ましく、(Sg/75)〜(Sg/15)質量部であることがより望ましく、(Sg/50)〜(Sg/20)質量部であることがさらに望ましい。ここで、Sgは、スラリー中の二酸化チタン粒子の比表面積である。
【0028】
本発明の第三の態様は、下記の粒子状組成物である。
上記界面活性剤は、
分子鎖中に下記一般式(1)で表される構成単位を繰り返し単位として含むポリカルボン酸型界面活性剤、及び、分子鎖中に下記一般式(2)で表される構成単位を繰り返し単位として含むポリアクリル酸型界面活性剤からなる群から選択される少なくとも一種を含む
ことを特徴とする第二の態様の粒子状組成物。
【化3】
【化4】
(一般式(1)及び(2)中、R
1は水素基又は有機基を表し、R
2は水素基又は有機基を表し、nは繰り返し単位の存在数を表す。)
【0029】
界面活性剤は、疎水基と親水基とから構成されているが、親水基の種類から、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及び、両性界面活性剤の何れかに分類される。
二酸化チタン粒子の表面には、アニオン性界面活性剤が選択的に吸着するため、二酸化チタン粒子への分散性付与効果は、アニオン性界面活性剤が最も高い。また、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、又は、両性界面活性剤を使用した場合、二酸化チタンの表面への吸着が弱いため、粘度の低減効果が劣る。
したがって、界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤が望ましい。
アニオン性界面活性剤の親水基としては、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩などが挙げられる。
【0030】
界面活性剤に含まれる灰分が多いと、当該灰分に起因して、MLCCの誘電特性に悪影響を及ぼす可能性がある。
灰分の少ない界面活性剤としては、ナトリウムやカリウム、リン等のように焼成によって残留する元素を含まない界面活性剤が望ましい。硫酸エステル塩やスルホン酸塩は、焼成により多くが脱離するが、硫黄分が残留することがあり、好ましくない。
したがって、アニオン性界面活性剤の親水基としては、カルボン酸アンモニウム塩が望ましい。
アニオン性界面活性剤としては、ポリカルボン酸型界面活性剤、又は、ポリアクリル酸型界面活性剤が望ましい。また、アニオン性界面活性剤としては、アンモニウム塩型の界面活性剤が望ましい。
【0031】
上記ポリカルボン酸型界面活性剤は、不飽和カルボン酸系単量体を重合させて得られる重合体のアンモニウム塩であることが望ましい。
上記不飽和カルボン酸系単量体としては、不飽和モノカルボン酸系単量体や不飽和ジカルボン酸系単量体等が挙げられる。
【0032】
上記ポリアクリル酸型界面活性剤は、アクリル酸系単量体を重合させて得られる重合体であることが望ましい。上記アクリル酸系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
【0033】
界面活性剤の疎水基としては、脂肪酸、脂肪酸エステル、高級アルコール、アルキルベンゼンなどが挙げられるが、その分子構造に由来する立体障害によって二酸化チタンの乾燥凝集を抑制することができるものが望ましい。
具体的に、界面活性剤の疎水基は、脂肪酸であることが望ましい。
より具体的に、界面活性剤は、分子鎖中に下記一般式(1)で表される構成単位を繰り返し単位として含むポリカルボン酸型界面活性剤、及び、分子鎖中に下記一般式(2)で表される構成単位を繰り返し単位として含むポリアクリル酸型界面活性剤からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが望ましい。
【化5】
【化6】
(一般式(1)及び(2)中、R
1は水素基又は有機基を表し、R
2は水素基又は有機基を表し、nは繰り返し単位の存在数を表す。)
【0034】
R
1及びR
2は、アルキル基であることが望ましい。
上記界面活性剤において、上記一般式(1)で表される構成単位の含有割合と上記一般式(2)で表される構成単位の含有割合との合計は、上記界面活性剤100質量%に対して、30質量%以上であることが望ましく、50質量%以上であることがより望ましく、70質量%以上であることがさらに望ましい。
【0035】
ポリカルボン酸型界面活性剤としては、サンノプコ社製SN−5020、SN−5027、SN−5029、SN−5468、KAO社製ポイズ532Aなどが挙げられる。
ポリアクリル酸型界面活性剤としては、ビックケミー社製BYK−154、サンノプコ社製SN−5023などが挙げられる。
【0036】
本発明の第四の態様は、下記の粒子状組成物である。
上記二酸化チタンの結晶形がアナタース型である
ことを特徴とする第一の態様〜第三の態様のいずれかの粒子状組成物。
【0037】
第一の態様において、上記二酸化チタンの結晶形は、特に限定されないが、アナタース型であることが望ましい。
【0038】
二酸化チタンの結晶形は均質であることが望まれている。
【0039】
原料の二酸化チタンに複数の結晶形が混在する場合、その反応性の違いから、得られるチタン酸バリウムは粒径が不均質なものとなる。このため、チタン酸バリウム用の二酸化チタンとしては、複数の結晶が混在しない単相が望まれている。
このことから、上記二酸化チタンは、実質的にアナタース型単相からなる二酸化チタンであることが望ましい。
【0040】
ここで、「実質的にアナタース型単相からなる二酸化チタン」とは、以下の二酸化チタンを意味する。
二酸化チタン中のアナタース型の割合は、銅管球を持つX線回折装置での分析においてアナタース型二酸化チタン粉末の回折ピーク(面指数101)のピーク高さI
Aとルチル型二酸化チタン粉末の回折ピーク(面指数110)のピーク高さI
R、及び、ブルカイト型二酸化チタン粉末の回折ピーク(面指数121)のピーク高さI
Bを比較することにより決定することができる。
「実質的にアナタース型単相からなる二酸化チタン」とは、I
Aに対するI
Rの割合が10%以下であり、かつ、I
Aに対するI
Bの割合が5%以下である二酸化チタンを意味する。
上記X線回折装置としては、特に限定されないが、例えば、X線回折装置(UltimaIII、リガク社製)が挙げられる。
なお、上記I
Aに対するI
Rの割合は、5%以下であることがより望ましく、1%以下であることがさらに望ましく、ルチル型に対応する回折ピークが検出限界以下であってルチル型結晶をほぼ含まないことが特に望ましい。
また、上記I
Aに対するI
Bの割合は、3%以下であることがより望ましく、1%以下であることがさらに望ましく、ブルカイト型に対応する回折ピークが検出限界以下であってブルカイト型結晶をほぼ含まないことが特に望ましい。
【0041】
本発明の第五の態様は、下記の粒子状組成物の製造方法である。
二酸化チタン粒子を含むスラリーを調製するスラリー調製工程と、
スラリー中の二酸化チタン粒子を湿式粉砕する湿式粉砕工程と、
600℃で焼成した残分が1.0質量%以下の界面活性剤を添加する添加工程を含む
ことを特徴とする第一の態様〜第四の態様のいずれかの粒子状組成物の製造方法。
【0042】
上記二酸化チタン粒子としては、塩素法や硫酸法といった従来公知の方法により製造された二酸化チタン粒子を用いることができる。
塩素法とは、ルチル鉱とカーボンを1000℃程度の高温で塩素ガスに反応させ四塩化チタン(TiCl
4)を合成する工程(塩素化工程)と、得られた四塩化チタンを高速で噴射しながら酸化することで二酸化チタン粒子を得る工程(酸化工程)とからなる方法である。
硫酸法とは、原料のイルメナイト鉱(FeO・TiO
2)を濃硫酸に溶かし(濃硫酸溶解工程)、鉄分を硫酸鉄(FeSO
4)として分離後、生成した硫酸チタン(TiOSO
4)を水で加水分解することによりチタン水酸化物の沈殿を得(加水分解工程)、その沈殿を酸洗・水洗し、高温で焼成する工程(焼成工程)とからなる方法である。
【0043】
焼成で得られた二酸化チタンは、塊粒なので、まず乾式粉砕で粉体に仕上げる。
ただし、乾式粉砕のみでは所望の粒度分布は得られない。粉砕強度を上げると粉砕物が固まり、粉砕物の排出が困難になる場合がある。
湿式粉砕工程を設けることで、所望の粒度分布が得られるようになる。
【0044】
乾式粉砕には、特に限定されないが、高速回転粉砕機や圧縮、摩擦、及び、せん断の作用によるエッジランナー等を使用することができる。高速回転粉砕機としては、例えば、アトマイザーが挙げられる。
湿式粉砕には、特に限定されないが、例えば、ビーズミル、アトライター、サンドミル、ボールミル等のメディア型粉砕機を使用することができる。例えば、シンマルエンタープライゼス社製ダイノーミル、日本コークス工業社製SCミル等が挙げられる。
ビーズの材質としては、特に限定されないが、ジルコニア、ガラス、アルミナ、シリカ、チタニア等が挙げられる。
ビーズの粒子径も、特に限定されないが、1mm以下であることが望ましい。
また、ビーズのようなメディアを使用せずに、超音波を照射させる湿式粉砕機や、スラリー同士を高速で衝突させる湿式粉砕機を使用することができる場合もある。
【0045】
本発明の第六の態様は、下記の粒子状組成物の製造方法である。
前記スラリー調製工程は、
スラリー中の二酸化チタン粒子の濃度が400g/L以上となるように、スラリーを調製する工程である
ことを特徴とする第五の態様の粒子状組成物の製造方法。
【0046】
湿式粉砕時のTiO
2濃度は、400g/L以上であることが望ましく、500g/L以上であることがより望ましく、550g/L以上であることがさらに望ましい。また、湿式粉砕時のTiO
2濃度は、800g/L以下であることが望ましく、750g/L以下であることがより望ましく、700g/L以下であることがさらに望ましい。
湿式粉砕時のTiO
2濃度が低すぎると、湿式粉砕においてメディアを使用する場合、メディアの磨耗によって二酸化チタンの純度が低下してしまう可能性がある。一方、湿式粉砕時のTiO
2濃度が高すぎると、スラリー粘度の上昇によって湿式粉砕の効率が低下し、所望の粒度分布が得られなくなる可能性がある。
【0047】
本発明の第七の態様は、下記の粒子状組成物の製造方法である。
前記湿式粉砕工程は、
前記添加工程により、前記スラリー調製工程で調製したスラリーに界面活性剤を添加した後、湿式粉砕を行う工程である
ことを特徴とする第五の態様又は第六の態様の粒子状組成物の製造方法。
【0048】
界面活性剤を添加するタイミングは、湿式粉砕を行う前であってもよいし、湿式粉砕を行った後であってもよいが、湿式粉砕を行う前であることが望ましい。
上述したように、湿式粉砕時のTiO
2濃度が低すぎると、メディアの磨耗によって二酸化チタンの純度が低下してしまう可能性がある。一方で、そのような事態を防止するために、湿式粉砕時のTiO
2濃度を高くすると、スラリーの粘度も高くなる。湿式粉砕においては、スラリーの粘度が高いとメディアの運動が鈍くなり、粉砕の効率が悪くなる。
この点、湿式粉砕を行う前に界面活性剤を添加すると、スラリーの粘度を低減することができるので、湿式粉砕時のTiO
2濃度を高くしても、効率よく粉砕することができる。
また、湿式粉砕前に界面活性剤を添加することで、粉砕された粒子の再凝集を防ぐことができる点で、粉砕時間が短縮されるので、生産性が向上し、経済的である。
【0049】
湿式粉砕を行った後、スラリーを乾燥させることにより、二酸化チタンを含有する粒子状組成物を粉末として得ることができる。
乾燥の方法としては、静置乾燥することも可能であるが、瞬間的な乾燥が乾燥凝集を抑制することができるので望ましい。具体的には、スプレードライ法やフリーズドライ法を用いることができるが、瞬間的な乾燥の工業的な手法としては、スプレードライ(噴霧乾燥)法が望ましい。
乾燥温度としては、水分を蒸発させることができ、界面活性剤を変質させない温度であればよい。
乾燥温度とは乾燥室の雰囲気温度のことである。
乾燥温度は、80℃以上であればよいが、90℃以上であることがより望ましく、95℃以上であることがさらに望ましい。また、乾燥温度は、150℃以下であればよいが、140℃以下であることがより望ましく、130℃以下であることがさらに望ましい。
乾燥温度が80℃未満であれば、水分を十分に蒸発させることができない。また、乾燥温度が150℃を超えると、界面活性剤の分解や揮発によって、所望の分散性が得られなくなってしまうという問題がある。
【0050】
必要に応じて、乾式粉砕を行うことができる。これにより、一層望ましい粒度分布を得ることができる。
乾式粉砕機としては、特に限定されないが、高速回転粉砕機やジェット粉砕機、圧縮、摩擦、及び、せん断の作用によるエッジランナー等を使用することができる。高速回転粉砕機としては、例えば、アトマイザーが挙げられる。ジェット粉砕機としては、例えば、ジェットミルが挙げられる。
【0051】
本発明の第八の態様は、下記の粒子状組成物分散体である。
第一の態様〜第四の態様のいずれかの粒子状組成物を溶媒に分散させることにより得られる
ことを特徴とする粒子状組成物分散体。
本発明の第九の態様は、下記の粒子状組成物分散体である。
第五の態様〜第七の態様のいずれかの製造方法によって製造される粒子状組成物を溶媒に分散させることにより得られる
ことを特徴とする粒子状組成物分散体。
【0052】
粒子状組成物分散体は、粒子状組成物と溶媒とを混合することにより得られる。
上記溶媒としては、水、水と混合可能なイソプロピルアルコール、エチレングリコール、グリセリン、アセトンなどを用いることができる。
粒子状組成物分散体の粘度は、50〜10000mPa・sであることが望ましく、100〜8000mPa・sであることがより望ましく、150〜5000mPa・sであることがさらに望ましい。
【0053】
本発明の第十の態様は、下記のチタン酸バリウムである。
第一の態様〜第四の態様のいずれかの粒子状組成物を原料として製造したチタン酸バリウム。
【実施例】
【0054】
本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
硫酸法で生成した硫酸チタンスラリーを熱加水分解することで水酸化チタンを得た。得られた水酸化チタン2.0kgを780℃、180分の条件で焼成後、アトマイザー(スクリーン2mmφ)で乾式粉砕して、比表面積21m
2/g(比表面積球相当径72nm)のアナタース型二酸化チタン粒子1.80kgを得た。
得られた二酸化チタン粒子1.80kgと水2.5Lとでスラリーを調製し、ろ過及び水洗を行った後、再び、水2.0Lでスラリーを調製した。
ビックケミー社製BYK−154(有効成分40wt%溶液)を45.0g添加し、水でスラリー液量を3.0Lに調整した。
シンマルエンタープライゼス社製ダイノーミルKDL型(ミル容積595mL)に0.5mmφジルコニアビーズを1,770gセットし、調製したスラリーを150mL/minの流量で6パス通した。
得られたスラリーをスプレードライ(乾燥温度100℃)により乾燥させ、得られた乾燥物をジェットミルで粉砕して、二酸化チタンを含む粒子状組成物を得た。
【0056】
(実施例2)
硫酸法で生成した硫酸チタンスラリーを熱加水分解することで水酸化チタンを得た。得られた水酸化チタン2.0kgを800℃、180分の条件で焼成後、アトマイザー(スクリーン2mmφ)で乾式粉砕して、比表面積18m
2/g(比表面積球相当径85nm)のアナタース型二酸化チタン粒子1.80kgを得た。
得られた二酸化チタン粒子1.80kgと水2.5Lとでスラリーを調製し、ろ過及び水洗を行った後、再び、水2.0Lでスラリーを調製した。
ビックケミー社製BYK−154(有効成分40wt%溶液)を45.0g添加し、水でスラリー液量を3.0Lに調整した。
シンマルエンタープライゼス社製ダイノーミルKDL型(ミル容積595mL)に0.5mmφジルコニアビーズを1,770gセットし、調製したスラリーを150mL/minの流量で6パス通した。
得られたスラリーをスプレードライ(乾燥温度100℃)により乾燥させ、得られた乾燥物をジェットミルで粉砕して、二酸化チタンを含む粒子状組成物を得た。
【0057】
(実施例3)
硫酸法で生成した硫酸チタンスラリーを熱加水分解することで水酸化チタンを得た。得られた水酸化チタン2.0kgを450℃、180分の条件で焼成後、アトマイザー(スクリーン2mmφ)で乾式粉砕して、比表面積103m
2/g(比表面積球相当径15nm)のアナタース型二酸化チタン粒子1.90kgを得た。
得られた二酸化チタン粒子1.80kgと水2.5Lとでスラリーを調製し、ろ過及び水洗を行った後、再び、水2.0Lでスラリーを調製した。
ビックケミー社製BYK−154(有効成分40wt%溶液)を180g添加し、水でスラリー液量を3.0Lに調整した。
シンマルエンタープライゼス社製ダイノーミルKDL型(ミル容積595mL)に0.5mmφジルコニアビーズを1,770gセットし、調製したスラリーを150mL/minの流量で9パス通した。
得られたスラリーをスプレードライ(乾燥温度100℃)により乾燥させ、得られた乾燥物をジェットミルで粉砕して、二酸化チタンを含む粒子状組成物を得た。
【0058】
(実施例4)
硫酸法で生成した硫酸チタンスラリーを熱加水分解することで水酸化チタンを得た。得られた水酸化チタン2.0kgを215℃、180分の条件で焼成後、アトマイザー(スクリーン2mmφ)で乾式粉砕して、比表面積320m
2/g(比表面積球相当径7nm)のアナタース型二酸化チタン粒子1.93kgを得た。
得られた二酸化チタン粒子1.80kgと水2.5Lとでスラリーを調製し、ろ過及び水洗を行った後、再び、水2.0Lでスラリーを調製した。
ビックケミー社製BYK−154(有効成分40wt%溶液)を585g添加し、水でスラリー液量を3.0Lに調整した。
シンマルエンタープライゼス社製ダイノーミルKDL型(ミル容積595mL)に0.5mmφジルコニアビーズを1,770gセットし、調製したスラリーを150mL/minの流量で9パス通した。
得られたスラリーをスプレードライ(乾燥温度100℃)により乾燥させ、得られた乾燥物をジェットミルで粉砕して、二酸化チタンを含む粒子状組成物を得た。
【0059】
(実施例5)
硫酸法で生成した硫酸チタンスラリーを熱加水分解することで水酸化チタンを得た。得られた水酸化チタン2.0kgを780℃、180分の条件で焼成後、アトマイザー(スクリーン2mmφ)で乾式粉砕して、比表面積21m
2/g(比表面積球相当径72nm)のアナタース型二酸化チタン粒子1.80kgを得た。
得られた二酸化チタン粒子1.20kgと水2.5Lとでスラリーを調製し、ろ過及び水洗を行った後、再び、水2.0Lでスラリーを調製し、水でスラリー液量を3.0Lに調整した。
シンマルエンタープライゼス社製ダイノーミルKDL型(ミル容積595mL)に0.5mmφジルコニアビーズを1,770gセットし、調製したスラリーを150mL/minの流量で6パス通した。
得られたスラリーにビックケミー社製BYK−154(有効成分40wt%溶液)を30.0g添加し、スプレードライ(乾燥温度100℃)により乾燥させ、得られた乾燥物をジェットミルで粉砕して、二酸化チタンを含む粒子状組成物を得た。
【0060】
(実施例6)
硫酸法で生成した硫酸チタンスラリーを熱加水分解することで水酸化チタンを得た。得られた水酸化チタン2.0kgを780℃、180分の条件で焼成後、アトマイザー(スクリーン2mmφ)で乾式粉砕して、比表面積21m
2/g(比表面積球相当径72nm)のアナタース型二酸化チタン粒子1.80kgを得た。
得られた二酸化チタン粒子1.80kgと水2.5Lとでスラリーを調製し、ろ過及び水洗を行った後、再び、水2.0Lでスラリーを調製した。
サンノプコ社製SN5029(有効成分25wt%溶液)を216.0g添加し、水でスラリー液量を3.0Lに調整した。
シンマルエンタープライゼス社製ダイノーミルKDL型(ミル容積595mL)に0.5mmφジルコニアビーズを1,770gセットし、調製したスラリーを150mL/minの流量で6パス通した。
得られたスラリーをスプレードライ(乾燥温度100℃)により乾燥させ、得られた乾燥物をジェットミルで粉砕して、二酸化チタンを含む粒子状組成物を得た。
【0061】
(実施例7)
硫酸法で生成した硫酸チタンスラリーを熱加水分解することで水酸化チタンを得た。得られた水酸化チタン2.0kgを800℃、180分の条件で焼成後、アトマイザー(スクリーン2mmφ)で乾式粉砕して、比表面積18m
2/g(比表面積球相当径85nm)のアナタース型二酸化チタン粒子1.80kgを得た。
得られた二酸化チタン粒子1.20kgと水2.5Lとでスラリーを調製し、ろ過及び水洗を行った後、再び、水2.0Lでスラリーを調製した。
ビックケミー社製BYK−154(有効成分40wt%溶液)を13.5g添加し、水でスラリー液量を3.0Lに調整した。
シンマルエンタープライゼス社製ダイノーミルKDL型(ミル容積595mL)に0.5mmφジルコニアビーズを1,770gセットし、調製したスラリーを150mL/minの流量で6パス通した。
得られたスラリーをスプレードライ(乾燥温度100℃)により乾燥させ、得られた乾燥物をジェットミルで粉砕して、二酸化チタンを含む粒子状組成物を得た。
【0062】
(実施例8)
硫酸法で生成した硫酸チタンスラリーを熱加水分解することで水酸化チタンを得た。得られた水酸化チタン2.0kgを210℃、180分の条件で焼成後、アトマイザー(スクリーン2mmφ)で乾式粉砕して、比表面積334m
2/g(比表面積球相当径7nm)のアナタース型二酸化チタン粒子1.93kgを得た。
得られた二酸化チタン粒子1.80kgと水2.5Lとでスラリーを調製し、ろ過及び水洗を行った後、再び、水2.0Lでスラリーを調製した。
ビックケミー社製BYK−154(有効成分40wt%溶液)を1,440g添加し、水でスラリー液量を4.5Lに調整した。
シンマルエンタープライゼス社製ダイノーミルKDL型(ミル容積595mL)に0.5mmφジルコニアビーズを1,770gセットし、調製したスラリーを150mL/minの流量で9パス通した。
得られたスラリーをスプレードライ(乾燥温度100℃)により乾燥させ、得られた乾燥物をジェットミルで粉砕して、二酸化チタンを含む粒子状組成物を得た。
【0063】
(実施例9)
硫酸法で生成した硫酸チタンスラリーを熱加水分解することで水酸化チタンを得た。得られた水酸化チタン2.0kgを820℃、180分の条件で焼成後、アトマイザー(スクリーン2mmφ)とジェットミルで乾式粉砕して、比表面積16m
2/g(比表面積球相当径95nm)のアナタース型二酸化チタン粒子1.93kgを得た。
得られた二酸化チタン粒子1.80kgと水2.5Lとでスラリーを調製し、ろ過及び水洗を行った後、再び、水2.0Lでスラリーを調製した。
ビックケミー社製BYK−154(有効成分40wt%溶液)を45.0g添加し、水でスラリー液量を3.6Lに調整した。
得られたスラリーをスプレードライ(乾燥温度100℃)により乾燥させ、得られた乾燥物をジェットミルで粉砕して、二酸化チタンを含む粒子状組成物を得た。
【0064】
(実施例10)
硫酸法で生成した硫酸チタンスラリーを熱加水分解することで水酸化チタンを得た。得られた水酸化チタン2.0kgを780℃、180分の条件で焼成後、アトマイザー(スクリーン2mmφ)で乾式粉砕して、比表面積21m
2/g(比表面積球相当径72nm)のアナタース型二酸化チタン粒子1.93kgを得た。
得られた二酸化チタン粒子1.80kgと水2.5Lとでスラリーを調製し、ろ過及び水洗を行った後、再び、水2.0Lでスラリーを調製した。
ビックケミー社製BYK−154(有効成分40wt%溶液)を45.0g添加し、水でスラリー液量を9.0Lに調整した。
シンマルエンタープライゼス社製ダイノーミルKDL型(ミル容積595mL)に0.5mmφジルコニアビーズを1,770gセットし、調製したスラリーを150mL/minの流量で2パス通した。
得られたスラリーをスプレードライ(乾燥温度100℃)により乾燥させ、得られた乾燥物をジェットミルで粉砕して、二酸化チタンを含む粒子状組成物を得た。
【0065】
(比較例1)
硫酸法で生成した硫酸チタンスラリーを熱加水分解することで水酸化チタンを得た。得られた水酸化チタン2.0kgを780℃、180分の条件で焼成後、アトマイザー(スクリーン2mmφ)で乾式粉砕して、比表面積21m
2/g(比表面積球相当径72nm)のアナタース型二酸化チタン粒子1.80kgを得た。
得られた二酸化チタン粒子1.80kgと水2.5Lとでスラリーを調製し、ろ過及び水洗を行った後、再び、水2.0Lでスラリーを調製し、水でスラリー液量を9.0Lに調整した。
シンマルエンタープライゼス社製ダイノーミルKDL型(ミル容積595mL)に0.5mmφジルコニアビーズを1,770gセットし、調製したスラリーを150mL/minの流量で6パス通した。
得られたスラリーをスプレードライ(乾燥温度100℃)により乾燥させ、得られた乾燥物をジェットミルで粉砕して、二酸化チタンを含む粒子状組成物を得た。
【0066】
(比較例2)
硫酸法で生成した硫酸チタンスラリーを熱加水分解することで水酸化チタンを得た。得られた水酸化チタン2.0kgを210℃、180分の条件で焼成後、アトマイザー(スクリーン2mmφ)で乾式粉砕して、比表面積334m
2/g(比表面積球相当径7nm)のアナタース型二酸化チタン粒子1.93kgを得た。
得られた二酸化チタン粒子1.80kgと水2.5Lとでスラリーを調製し、ろ過及び水洗を行った後、再び、水2.0Lでスラリーを調製した。
ビックケミー社製BYK−154(有効成分40wt%溶液)を1,620g添加し、水でスラリー液量を4.5Lに調整した。
シンマルエンタープライゼス社製ダイノーミルKDL型(ミル容積595mL)に0.5mmφジルコニアビーズを1,770gセットし、調製したスラリーを150mL/minの流量で9パス通した。
得られたスラリーをスプレードライ(乾燥温度100℃)により乾燥させ、得られた乾燥物をジェットミルで粉砕して、二酸化チタンを含む粒子状組成物を得た。
【0067】
(比較例3)
硫酸法で生成した硫酸チタンスラリーを熱加水分解することで水酸化チタンを得た。得られた水酸化チタン2.0kgを780℃、180分の条件で焼成後、アトマイザー(スクリーン2mmφ)で乾式粉砕して、比表面積21m
2/g(比表面積球相当径72nm)のアナタース型二酸化チタン粒子1.80kgを得た。
得られた二酸化チタン粒子1.20kgと水2.5Lとでスラリーを調製し、ろ過及び水洗を行った後、再び、水2.0Lでスラリーを調製した。
サンノプコ社製SN5034(ポリカルボン酸ナトリウム型アニオン性界面活性剤、有効成分40wt%溶液、600℃で焼成した残分は22.3質量%)を30.0g添加し、水でスラリー液量を3.0Lに調整した。
シンマルエンタープライゼス社製ダイノーミルKDL型(ミル容積595mL)に0.5mmφジルコニアビーズを1,770gセットし、調製したスラリーを150mL/minの流量で6パス通した。
得られたスラリーをスプレードライ(乾燥温度100℃)により乾燥させ、得られた乾燥物をジェットミルで粉砕して、二酸化チタンを含む粒子状組成物を得た。
【0068】
実施例及び比較例のまとめを表1に示す。
【0069】
【表1】