(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、レンズ交換式の一眼レフカメラにおいて、撮影時の手ブレによる撮像画像のブレを補正するための像振れ補正機能を備えた交換用のレンズユニットが広く普及している。このようなレンズユニットにおいては、内蔵されたセンサによりレンズユニットの振れを検出し、この振れに起因して生じる撮像画像のブレが補正されるように、一部の撮像用レンズが駆動される。
【0003】
一方、交換用のレンズユニットを取り付けて使用するカメラ本体についても、像振れ補正機能を備えたものが発売されている。このようなカメラ本体においては、内蔵されたセンサによりカメラ本体の振れを検出し、この振れに起因して生じる撮像画像のブレが補正されるように、撮像素子が駆動される。このようなカメラ本体を使用することにより、取り付けたレンズユニットに像振れ補正機能が備えられていない場合においても、撮像される画像のブレを抑制することができる。
【0004】
しかしながら、交換用のレンズユニットとカメラ本体との組合せによっては、レンズユニット及びカメラ本体の両方に像振れ補正機能が備えられることとなる。このような組合せにおいて、レンズユニット側の像振れ補正機能と、カメラ本体側の像振れ補正機能が、個別に作動すると、同一の振れが二重に補正される結果となり補正量が過剰になる。このため、レンズユニット及びカメラ本体双方に像振れ補正機能が備えられていることにより、却って撮像される画像のブレが大きくなってしまう場合がある。
【0005】
特開2007−148045号公報(特許文献1)には、手振れ補正機能付きカメラシステムが記載されている。このカメラシステムにおいては、レンズユニット及びカメラ本体双方に像振れ補正機能が備えられている場合には、何れか一方の像振れ補正機能のみを作動させることにより、上記の問題を解決している。
【0006】
また、特開2007−25298号公報(特許文献2)には、カメラシステムが記載されている。このカメラシステムにおいて、複数のブレ補正機構(像振れ補正機能)が選択された場合には、選択されたブレ補正機構の各々にブレ補正量の配分が割り当てられ、この配分に従って各ブレ補正機構が作動される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特開2007−148045号公報記載の手振れ補正機能付きカメラシステムにおいては、何れか一方の像振れ補正機能のみが作動されるので、両方の像振れ補正機能が作動されることによる問題を回避できるものの、活用することができる像振れ補正機能は、レンズユニット又はカメラ本体の何れかに元来備えられていた像振れ補正機能のみである。このため、像振れを補正する性能は、レンズユニット又はカメラ本体の何れかに元々備えられていた性能を超えることがなく、作動されなかった方の像振れ補正機能が無駄になるという問題がある。
【0009】
一方、特開2007−25298号公報記載のカメラシステムにおいては、像振れを補正するために必要な補正量が、レンズユニット及びカメラ本体の両方に振り分けられるので、レンズユニット又はカメラ本体の像振れ補正機能によって補正することが可能であった最大の補正量を超える量の補正を実現することができる。しかしながら、像振れの補正性能を決定づけるファクターは最大補正量ばかりでなく、補正の応答特性等、多くのファクターが複雑に影響を及ぼし合うことにより、最終的に得られる補正性能が決定される。このため、実際には、1つの補正量をレンズユニット及びカメラ本体の両方に振り分けた場合に、必ずしも補正性能は向上されない。特に、レンズユニットとカメラ本体の組合せは多数存在し、それらの何れの組合せにおいても最終的な補正性能が向上されるように補正量を配分することは極めて困難であると共に、像振れ補正機構の制御が複雑化するという問題がある。
【0010】
従って、本発明は、制御を複雑化させることなく、レンズユニット及びカメラ本体に備えられた像振れ補正機能を効果的に活用することができるレンズユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明は、カメラ本体に取り付けて使用され、像振れ補正機能を備えたレンズユニットであって、レンズ鏡筒と、このレンズ鏡筒の内部に配置された像振れ補正用レンズと、この像振れ補正用レンズを、光軸に直交する平面内で駆動する像振れ補正用アクチュエータと、レンズユニットの回転による振れを検出するための角度振れ検出手段と、レンズユニットの平行移動による振れを検出するためのシフト振れ検出手段と、像振れ補正用アクチュエータを制御して、角度振れ検出手段の検出信号に基づく角度振れ制御、及びシフト振れ検出手段の検出信号に基づくシフト振れ制御を実行する制御手段と、取り付けられたカメラ本体に関する情報を、カメラ本体から取得する情報取得手段と、この情報取得手段により取得された情報に基づいて、制御手段によって実行される制御を、角度振れ制御及びシフト振れ制御を行う第1制御モード、シフト振れ制御のみを行う第2制御モード、又は振れ補正を行わない第3制御モードの何れかに切り換える補正モード切換手段と、を有することを特徴としている。
【0012】
このように構成された本発明においては、像振れ補正用アクチュエータよって光軸に直交する平面内で駆動される像振れ補正用レンズが、レンズ鏡筒の内部に配置されている。また、レンズユニットの回転による振れを検出する角度振れ検出手段、及び平行移動による振れを検出するシフト振れ検出手段が備えられ、制御手段は、これらの検出信号に基づいて角度振れ制御及びシフト振れ制御を実行する。さらに、情報取得手段は、取り付けられたカメラ本体に関する情報をカメラ本体から取得し、この情報に基づいて、補正モード切換手段は、制御手段によって実行される制御を、第1、第2、第3制御モードの何れかに切り換える。
【0013】
このように構成された本発明によれば、補正モード切換手段が、カメラ本体に関する情報に基づいて、角度振れ制御及びシフト振れ制御を行う第1制御モード、シフト振れ制御のみを行う第2制御モード、又は振れ補正を行わない第3制御モードの何れかに切り換えるので、過剰補正に陥るのを防止しつつ、レンズユニット及びカメラ本体に備えられた像振れ補正機能を効果的に活用することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、補正モード切換手段は、取り付けられたカメラ本体が像振れ補正機能を備えていない場合には第1制御モードを選択し、角度振れの補正機能のみを備えている場合には第2制御モードを選択し、角度振れ及びシフト振れの補正機能を備えている場合には第3制御モードを選択する。
【0015】
このように構成された本発明によれば、カメラ本体が角度振れの補正機能のみを備えている場合には第2制御モードが選択されるので、角度振れの補正はカメラ本体において行われる一方、シフト振れの補正はレンズユニットにおいて行われる。これにより、像振れ補正制御を複雑化することなく、カメラ本体及びレンズユニットの双方に備えられた像振れ補正機能を活用することができ、カメラ本体、レンズユニット夫々に元来備えられていた像振れ補正能力を超える像振れ補正を実現することができる。また、補正モード切換手段による第1、第2、第3制御モードの切り換えは、カメラ本体に備えられている像振れ補正制御を除外するように行われるので、本発明のレンズユニットと組み合わせて使用することを想定することなく設計されたカメラ本体にも、本発明のレンズユニットを取り付けて使用することができる。
【0016】
また、本発明は、レンズ交換式のカメラ本体、及びこのカメラ本体に取り付けて使用されるレンズユニットを備えたカメラシステムであって、本発明のレンズユニットと、カメラ本体と、を有し、カメラ本体は、撮像素子と、この撮像素子を、光軸に直交する平面内で駆動する撮像素子アクチュエータと、カメラ本体の回転による振れを検出するための本体側角度振れ検出手段と、撮像素子アクチュエータを制御して、本体側角度振れ検出手段の検出信号に基づく角度振れ制御を実行する制御手段と、カメラ本体に関する情報を、レンズユニットの情報取得手段に送る情報送信手段と、を有することを特徴としている。
【0017】
このように構成された本発明のカメラシステムによれば、角度振れの補正はカメラ本体において行われる一方、シフト振れの補正はレンズユニットにおいて行われる。これにより、像振れ補正制御を複雑化することなく、カメラ本体及びレンズユニットの双方に備えられた像振れ補正機能を活用することができ、カメラ本体、レンズユニット夫々に元来備えられていた像振れ補正能力を超える像振れ補正を実現することができる。また、本発明のカメラシステムを構成するレンズユニットを、像振れ補正機能を備えていないカメラ本体に取り付けた場合には、レンズユニットにより角度振れ及びシフト振れの補正を行うことができる。
【0018】
また、本発明は、カメラ本体に取り付けて使用され、像振れ補正機能を備えたレンズユニットであって、レンズ鏡筒と、このレンズ鏡筒の内部に配置された像振れ補正用レンズと、この像振れ補正用レンズを、光軸に直交する平面内で駆動する像振れ補正用アクチュエータと、レンズユニットの回転による振れを検出するための角度振れ検出手段と、レンズユニットの平行移動による振れを検出するためのシフト振れ検出手段と、像振れ補正用アクチュエータを制御して、角度振れ検出手段の検出信号に基づく角度振れ制御、及びシフト振れ検出手段の検出信号に基づくシフト振れ制御を実行する本体側制御手段と、制御手段によって実行される制御を、使用者の操作により、角度振れ制御及びシフト振れ制御を行う第1制御モード、シフト振れ制御のみを行う第2制御モード、又は振れ補正を行わない第3制御モードに切り換える補正モード切換スイッチと、を有することを特徴としている。
【0019】
このように構成された本発明によれば、使用者の操作により第1、第2、第3制御モードを切り換える補正モード切換スイッチを備えているので、カメラ本体に関する情報をレンズユニットに送信する機能を備えていないカメラ本体にも、本発明のレンズユニットを組み合わせて使用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のレンズユニットによれば、制御を複雑化させることなく、レンズユニット及びカメラ本体に備えられた像振れ補正機能を効果的に活用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態によるカメラシステム全体を示す概略断面図である。
図1に示すように、カメラシステム1は、レンズ交換式のカメラ本体2と、これに取り付けられた像振れ補正機能を備えたレンズユニット4と、を有する。
図1に示すように、レンズユニット4は、カメラ本体2に着脱自在に取り付けられる。換言すれば、本実施形態におけるレンズユニット4は、種々のカメラ本体に取り付けて使用される。また、本実施形態においては、カメラ本体2にも像振れ補正機能が備えられている。
【0023】
カメラ本体2は、撮像素子8と、この撮像素子8を駆動する撮像素子アクチュエータ10と、シャッター12と、カメラ本体2の振れを検出する本体側角度振れ検出手段である本体側ジャイロ14a、14bと、ミラー16と、ペンタプリズム18と、視度補正レンズ20と、レリーズボタン22と、本体側制御手段である本体側制御部24と、情報送信手段である本体側マウントコネクタ26と、を有する。なお、本体側制御部24は、具体的には、CPU等のマイクロプロセッサにより構成することができる。
【0024】
カメラ本体2のヨー方向、ピッチ方向の振れ角速度は、本体側ジャイロ14a、14bによって夫々検出され、本体側制御部24に入力される。本体側制御部24は、検出された振れ角速度に基づいて撮像素子アクチュエータ10を、光軸に直交する平面内で水平方向及び鉛直方向に駆動し、撮像素子8に形成される像を安定化させている。これにより、カメラ本体2における手振れ補正機能が実現されている。また、カメラ本体2には、カメラ本体2における手振れ補正機能の作動/停止を切り換える本体側作動/停止スイッチ28が設けられている。
【0025】
レンズユニット4は、レンズ鏡筒35と、このレンズ鏡筒35の内部に配置された撮像用レンズ36乃至45と、撮像用レンズのうちの像振れ補正用レンズ44を駆動するための像振れ補正用アクチュエータ46と、を有する。さらに、レンズユニット4は、レンズユニット4の回転による振れを検出する角度振れ検出手段であるレンズ側ジャイロ48a、48bと、レンズユニット4の平行移動による振れを検出するためのシフト振れ検出手段である加速度センサ49a、49bと、を有する。また、レンズユニット4は、撮像用レンズのうちのズーム用レンズ36の移動量を検出するズームエンコーダ50と、撮像用レンズのうちのフォーカス調整用レンズ40の移動量を検出するフォーカスエンコーダ52と、を有する。さらに、レンズユニット4は、絞り機構54と、制御手段であるレンズ制御部56と、情報取得手段であるレンズ側マウントコネクタ58と、を有する。なお、レンズ制御部56は、具体的には、CPU等のマイクロプロセッサにより構成することができる。
【0026】
レンズユニット4のヨー方向、ピッチ方向の振れ角速度は、レンズ側ジャイロ48a、48bによって夫々検出され、レンズ制御部56に入力される。また、レンズユニット4の水平方向、鉛直方向の振れ加速度は、加速度センサ49a、49bによって夫々検出され、レンズ制御部56に入力される。レンズ制御部56は、検出された振れ角速度及び/又は振れ加速度に基づいて像振れ補正用アクチュエータ46を制御して像振れ補正用レンズ44を、光軸に直交する平面内で水平方向及び鉛直方向に駆動し、撮像素子8に形成される像を安定化させている。これにより、レンズユニット4における手振れ補正機能が実現されている。また、レンズユニット4には、レンズユニット4における手振れ補正機能の作動/停止を切り換えるレンズ側作動/停止スイッチ32が設けられている。
【0027】
レンズ鏡筒35に設けられたズームリング(図示せず)が操作されると、ズーム用レンズ36がレンズ鏡筒35内で移動され、レンズユニット4の焦点距離が変化する。ズーム用レンズ36の位置は、ズームエンコーダ50によって検出され、レンズ制御部56に入力される。
【0028】
また、レンズ鏡筒35に設けられたフォーカスリング(図示せず)が操作されると、フォーカス調整用レンズ40がレンズ鏡筒35内で移動され、撮像素子8上に形成される像のフォーカスが調整される。フォーカス調整用レンズ40の位置は、フォーカスエンコーダ52によって検出され、レンズ制御部56に入力される。
【0029】
また、フォーカス調整用レンズ40は、カメラの撮像素子上の画像を合焦状態にする動作、いわゆるオートフォーカスにも用いられる。具体的には、カメラ本体2には撮像素子8上のピントズレ量を検出する位相差検出センサ(図示せず)が備えられており、カメラ本体2は、この位相差検出センサの出力に基づいて、本体側マウントコネクタ26及びレンズ側マウントコネクタ58を介して、フォーカス調整用レンズ40の移動を、移動量を指定して指示する。さらに、レンズユニット4は、フォーカス調整用レンズ40を移動させるためのアクチュエータ(図示せず)を備えており、このアクチュエータを制御することにより、カメラ本体2の指示に従ってフォーカス調整用レンズ40を移動させ、カメラ本体2の撮像素子8上の画像を合焦状態にする。
【0030】
さらに、絞り機構54は、カメラ本体2からの信号により所定の絞り値になるように駆動され、露光時に撮像素子8に入射する光量を調整するように構成されている。
【0031】
レンズ鏡筒35に入射した光は、各撮像用レンズ、絞り機構54を介してカメラ本体2のミラー16によって反射され、ペンタプリズム18、視度補正レンズ20を介して撮影者にファインダー画像として認識される。また、レリーズボタン22が操作されると、ミラー16が跳ね上がると共に、シャッター12が所定の露光時間開放され、レンズユニット4を通過した光が撮像素子8上に合焦される。
【0032】
次に、
図2を参照して、カメラ本体2、レンズユニット4における像振れ防止機能の作用を説明する。
図2は、カメラ本体2及びレンズユニット4の像振れ防止機能に係るブロック図である。
【0033】
まず、
図2に示すように、本体側ジャイロ14a、14bによる検出信号は、本体側制御部24に送られる。本体側ジャイロ14a、14bは、カメラ本体2の水平方向(ヨー方向)及び鉛直方向(ピッチ方向)の回転による振れを夫々検出するように、カメラ本体2内に配置されている。即ち、本体側ジャイロ14a、14bは、カメラ本体2の光軸Aの傾き角速度を検出し、本体側制御部24に送信する。本体側制御部24に入力されたヨー方向、ピッチ方向の角速度の検出信号は、本体側制御部24内で積分処理され、各方向の振れ角度(カメラ本体2の傾き角度)が算出される。一方、レンズユニット4の焦点距離に関する情報が、レンズ側マウントコネクタ58及び本体側マウントコネクタ26を介して本体側制御部24に入力される。
【0034】
本体側制御部24は、レンズユニット4から入力された焦点距離に基づいて、算出された各方向の振れ角度を、撮像素子8の受光面上での被写体像の移動量に換算する。さらに、本体側制御部24は、撮像素子アクチュエータ10を制御して、撮像素子8を被写体像の移動量と同じ距離変位させ、カメラ本体2の回転による振れを補正する角度振れ制御を実行する。なお、カメラ本体2における角度振れ制御は、カメラ本体2に設けられている本体側作動/停止スイッチ28が「停止」に設定されている場合には実行されず、撮像素子8は、所定の位置に固定される。
【0035】
一方、レンズ側ジャイロ48a、48bによる検出信号は、レンズ制御部56に送られる。レンズ側ジャイロ48a、48bは、レンズユニット4の水平方向(ヨー方向)及び鉛直方向(ピッチ方向)の回転による振れを夫々検出するように、レンズユニット4内に配置されている。即ち、レンズ側ジャイロ48a、48bは、レンズユニット4の光軸Aの傾き角速度を検出し、レンズ制御部56に送信する。レンズ制御部56に入力されたヨー方向、ピッチ方向の角速度の検出信号は、レンズ制御部56内で積分処理され、各方向の振れ角度(レンズユニット4の傾き角度)が算出される。
【0036】
また、加速度センサ49a、49bによる検出信号も、レンズ制御部56に送られる。加速度センサ49a、49bは、レンズユニット4の水平方向及び鉛直方向の平行移動による振れを夫々検出するように、レンズユニット4内に配置されている。即ち、加速度センサ49a、49bは、レンズユニット4の光軸Aの平行移動の加速度を検出し、レンズ制御部56に送信する。レンズ制御部56に入力された水平方向及び鉛直方向の加速度の検出信号は、レンズ制御部56内で積分処理され、各方向の平行移動量(レンズユニット4の並進移動量)が算出される。
【0037】
次に、レンズ制御部56は、フォーカスエンコーダ52から出力されたピント位置(レンズユニット4から被写体までの距離)の情報、及び焦点距離の情報に基づいて、算出された平行移動量を、撮像素子8の受光面上での被写体像の移動量(シフト振れ量)に換算する。
【0038】
さらに、レンズ制御部56は、レンズ側ジャイロ48a、48bの検出信号に基づいて算出された振れ角度、及びシフト振れ量に相当する像振れ補正用レンズ44の変位量を算出する。レンズ制御部56は、像振れ補正用アクチュエータ46を制御して、算出された変位量だけ像振れ補正用レンズ44を移動させる。即ち、レンズ制御部56は、像振れ補正用アクチュエータ46を制御して、レンズ側ジャイロ48a、48bの検出信号に基づく角度振れ制御、及び加速度センサ49a、49bの検出信号に基づくシフト振れ制御を実行する。
【0039】
なお、レンズユニット4における角度振れ制御及びシフト振れ制御は、レンズユニット4に設けられているレンズ側作動/停止スイッチ32が「停止」に設定されている場合には実行されず、像振れ補正用レンズ44は、所定の位置に固定される。
【0040】
一方、レンズ側作動/停止スイッチ32が「作動」に設定されている場合には、レンズ制御部56に内蔵されている補正切換手段56aにより、第1、第2、第3の制御モードの何れかが選択され、実行される。
【0041】
まず、補正切換手段56aは、レンズ側マウントコネクタ58を介して、カメラ本体2に関する情報、及び本体側作動/停止スイッチ28の設定状態の情報を取得する。本実施形態においては、補正切換手段56aは、カメラ本体2に関する情報として、カメラ本体2の型式を取得する。補正切換手段56aは、取得されたカメラ本体2の型式に基づいて、内蔵されているデータテーブル(図示せず)を参照し、カメラ本体2が、像振れ補正機能を備えていないものであるか、角度振れの補正機能のみを備えたものであるか、又は角度振れ及びシフト振れの両方の補正機能を備えたものであるか、を識別する。
【0042】
なお、変形例として、補正切換手段56aが取得するカメラ本体2に関する情報は、カメラ本体2の型式ではなく、カメラ本体2が角度振れの補正機能及び/又はシフト振れの補正機能を備えているか否かの情報とすることもできる。この変形例によれば、補正切換手段56aがデータテーブル(図示せず)を備えている必要がない。
【0043】
本体側作動/停止スイッチ28が「停止」に設定されている場合、及びカメラ本体2が像振れ補正機能を備えていない場合には、補正切換手段56aにより第1制御モードが選択される。第1制御モードが選択された場合には、レンズ制御部56により、角度振れ制御及びシフト振れ制御が実行される。即ち、像振れ補正用レンズ44は、レンズ側ジャイロ48a、48bの検出信号に基づく角度振れ補正量、及び加速度センサ49a、49bの検出信号に基づくシフト振れ補正量が重畳された距離だけ移動される一方、カメラ本体2の撮像素子8が移動されることはない。このように、第1制御モードでは、レンズユニット4の像振れ補正機能により、角度振れ及びシフト振れが補正される。
【0044】
次に、本体側作動/停止スイッチ28が「作動」に設定され、且つカメラ本体2が角度振れの補正機能のみを備えたものである場合には、補正切換手段56aにより第2制御モードが選択される。第2制御モードが選択された場合には、レンズ制御部56によりシフト振れ制御のみが実行される。即ち、像振れ補正用レンズ44は、加速度センサ49a、49bの検出信号に基づくシフト振れ補正量だけ移動され、レンズ側ジャイロ48a、48bの検出信号に基づく角度振れ補正量は無視される。一方、カメラ本体2においては、本体側制御部24により角度振れ制御が実行され、撮像素子8が移動される。これにより、カメラシステム1全体としては、カメラ本体2の像振れ補正機能により角度振れの補正が実行され、レンズユニット4の像振れ補正機能によりシフト振れの補正が実行される。
【0045】
カメラ本体2及びレンズユニット4の像振れ補正機能をこのように作動させることにより、カメラ本体2、レンズユニット4両方の像振れ補正機能が同時に作動されていても、過剰補正に陥るのを回避することができ、適正な像振れ補正を行うことができる。また、カメラ本体2及びレンズユニット4が、角度振れ及びシフト振れを夫々分担して補正するので、算出された1つの補正量を2つに分配する必要がなく、像振れ補正制御が複雑化することがない。
【0046】
次に、本体側作動/停止スイッチ28が「作動」に設定され、且つカメラ本体2が角度振れ及びシフト振れの補正機能を備えたものである場合には、補正切換手段56aにより第3制御モードが選択される。第3制御モードが選択された場合には、レンズユニット4のレンズ制御部56は、角度振れ及びシフト振れ制御を実行せず、像振れ補正用レンズ44は所定の位置に固定される。これにより、カメラシステム1全体としては、カメラ本体2の像振れ補正機能により角度振れ及びシフト振れの補正が実行される。このため、カメラ本体2の本体側作動/停止スイッチ28、及びレンズユニット4のレンズ側作動/停止スイッチ32が両方同時に「作動」に設定されている場合でも、過剰補正に陥るのを回避することができる。
【0047】
さらに、レンズユニット4において第1乃至第3制御モードの何れが選択されている場合においても、カメラ本体2が実行する像振れ補正制御は、カメラ本体2に元々備えられていた制御と変わるところがない。このため、本実施形態のレンズユニット4を取り付けて使用することを想定することなく設計されたカメラ本体2に対しても本実施形態のレンズユニット4を取り付け、カメラシステムとして適正な像振れ補正制御を実行することができる。
【0048】
次に、本実施形態のレンズユニット4を第2制御モードによって作動させることにより、像振れ補正性能を向上させることができることを、
図3乃至
図5を参照して説明する。
【0049】
図3は、像振れ補正制御が行われていない場合における角度振れの一例を示すグラフであり、横軸は時間を示し、縦軸は、角度振れに基づいて撮像素子8の受光面上の被写体像が移動する距離を示している。
図3に示す例では、被写体像が移動する速度(振れ速度)は最大で約13[mm/sec]、被写体像が移動する距離(振れ量)の振幅は約±0.5[mm]である。
【0050】
図4は、像振れ補正制御が行われていない場合におけるシフト振れの一例を示すグラフであり、横軸は時間を示し、縦軸は、シフト振れに基づいて撮像素子8の受光面上の被写体像が移動する距離を示している。
図4に示す例では、被写体像が移動する速度(振れ速度)は最大で約20[mm/sec]、被写体像が移動する距離(振れ量)の振幅は約±0.7[mm]である。
【0051】
図5は、像振れ補正制御が行われていない場合において
図3の角度振れ及び
図4のシフト振れが重畳された状態を示すグラフであり、横軸は時間を示し、縦軸は、角度振れ及びシフト振れに基づいて撮像素子8の受光面上の被写体像が移動する距離を示している。
図5に示す例では、被写体像が移動する速度(振れ速度)は最大で約33[mm/sec]、被写体像が移動する距離(振れ量)の振幅は約±1.2[mm]となっている。
【0052】
図3及び
図4に示すように、角度振れに基づく被写体像の移動と、シフト振れに基づく被写体像の移動には、一般に強い相関がある。従って、
図5に示すように、これらの振れが重畳されると受光面上の被写体像の移動速度(振れ速度)及び移動距離(振れ量)は増大する。ここで、カメラ本体2に備えられている撮像素子アクチュエータ10の像振れ補正能力、及びレンズユニット4に備えられている像振れ補正用アクチュエータ46の像振れ補正能力が、共に最大振れ速度30[mm/sec]、最大振れ振幅±1.0[mm]であると仮定する。この場合には、カメラ本体2又はレンズユニット4単独の像振れ補正制御では、
図5に示す振れを完全に補正することができない。
【0053】
これに対して、レンズユニット4において第2制御モードが選択されている場合には、カメラ本体2に備えられている撮像素子アクチュエータ10は、
図3に示す角度振れを補正するように作動され、レンズユニット4に備えられている像振れ補正用アクチュエータ46は
図4に示すシフト振れを補正するように作動される。このため、角度振れはカメラ本体2の像振れ補正能力の範囲内で補正を行うことができ、シフト振れはレンズユニット4の像振れ補正能力の範囲内で補正を行うことができる。従って、本実施形態のカメラシステム1によれば、カメラ本体2、レンズユニット4夫々の像振れ補正能力を超えた振れを補正することが可能になる。
【0054】
本発明の実施形態のレンズユニット4によれば、補正モード切換手段56aが、カメラ本体2に関する情報に基づいて、角度振れ制御及びシフト振れ制御を行う第1制御モード、シフト振れ制御のみを行う第2制御モード、又は振れ補正を行わない第3制御モードの何れかに切り換えるので、過剰補正に陥るのを防止しつつ、レンズユニット4及びカメラ本体2に備えられた像振れ補正機能を効果的に活用することができる。
【0055】
また、本実施形態のレンズユニット4によれば、カメラ本体2が角度振れの補正機能のみを備えている場合には第2制御モードが選択されるので、角度振れの補正はカメラ本体2において行われる一方、シフト振れの補正はレンズユニット4において行われる。これにより、像振れ補正制御を複雑化することなく、カメラ本体2及びレンズユニット4の双方に備えられた像振れ補正機能を活用することができ、カメラ本体2、レンズユニット4夫々に元来備えられていた像振れ補正能力を超える像振れ補正(
図5)を実現することができる。また、補正モード切換手段56aによる第1、第2、第3制御モードの切り換えは、カメラ本体2に備えられている像振れ補正制御を除外するように行われるので、本実施形態のレンズユニット4と組み合わせて使用することを想定することなく設計されたカメラ本体2にも、本実施形態のレンズユニット4を取り付けて使用することができる。
【0056】
さらに、本実施形態のカメラシステム1によれば、角度振れの補正はカメラ本体2において行われる一方、シフト振れの補正はレンズユニット4において行われる。これにより、像振れ補正制御を複雑化することなく、カメラ本体2及びレンズユニット4に像振れ補正が分配され、双方に備えられた像振れ補正機能を活用することができる。この結果、カメラ本体2、レンズユニット4夫々に元来備えられていた像振れ補正能力を超える像振れ補正を実現することができる。また、本実施形態のレンズユニット4を、像振れ補正機能を備えていないカメラ本体に取り付けた場合には、レンズユニット4により角度振れ及びシフト振れの補正を行うことができる。
【0057】
また、上述した本発明の実施形態においては、レンズ制御部56がレンズ側マウントコネクタ58を介してカメラ本体2に関する情報を取得し、補正切換手段56aが第1乃至第3制御モードの何れかを自動的に選択していたが、変形例として、各制御モードの選択を使用者が手動で行うように本発明を構成することもできる。本変形例においては、レンズ側作動/停止スイッチ32に代えて、或いはレンズ側作動/停止スイッチ32に加えて、補正モード切換スイッチ(図示せず)がレンズユニットに設けられる。補正モード切換スイッチは、使用者の操作により、第1、第2、第3制御モードを手動で切り換えることができるように構成されている。使用者は、好ましくは、レンズユニットを取り付けたカメラ本体が像振れ補正機能を備えていない場合には、補正モード切換スイッチを第1制御モードに切り換え、カメラ本体が角度振れの補正機能のみを備えたものである場合には、補正モード切換スイッチを第2制御モードに切り換え、カメラ本体が角度振れ及びシフト振れの補正機能を備えたものである場合には、補正モード切換スイッチを第3制御モードに切り換える。
【0058】
本変形例によれば、カメラ本体に関する情報をレンズユニットに送信する機能を備えていないカメラ本体にも、本変形例のレンズユニットを取り付けて、像振れ補正機能を適正に作動させることができる。
【0059】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、静止画撮影用のレンズユニット、カメラシステムに本発明を適用していたが、本発明を動画撮影用のレンズユニット、カメラシステムに適用することもできる。