特許第5895778号(P5895778)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5895778
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20160317BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20160317BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
   B60C11/03 100C
   B60C11/12 B
   B60C11/00 D
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-196531(P2012-196531)
(22)【出願日】2012年9月6日
(65)【公開番号】特開2014-51177(P2014-51177A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2014年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】永吉 勝智
【審査官】 八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−091736(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/098895(WO,A1)
【文献】 特開2012−153157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C11/03、11/00、11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部のトレッド面に、タイヤ赤道面を境にタイヤ幅方向の両側が対称な対称トレッドパターンを有し、かつタイヤ周方向に沿って延在する少なくとも3本の周方向主溝により、タイヤ周方向に延在する少なくとも4本のリブ状陸部が形成された空気入りタイヤにおいて、
前記周方向主溝が前記タイヤ赤道面上にあるときは前記タイヤ赤道面上の周方向主溝をセンター主溝とし、前記周方向主溝が前記タイヤ赤道面上にないときは前記タイヤ赤道面のタイヤ幅方向両外側の各周方向主溝を合わせてセンター主溝とし、前記センター主溝のタイヤ幅方向両外側に隣接するリブ状陸部を側方リブ状陸部とした場合、
前記側方リブ状陸部のタイヤ幅方向の一側から当該側方リブ状陸部のタイヤ幅方向寸法の40[%]以上60[%]以下の範囲に、タイヤ周方向に沿って延在し、前記周方向主溝よりも溝深さが浅く形成された周方向細溝と、
前記側方リブ状陸部に設けられて一端が当該側方リブ状陸部のタイヤ幅方向外側に隣接する周方向主溝に連通して終端し、他端が前記周方向細溝に連通して終端してタイヤ周方向に交差して延在し、前記周方向主溝よりも溝深さが浅く形成され、タイヤ周方向に複数配置された幅方向細溝と、
を含み、前記周方向細溝を境にした前記側方リブ状陸部のタイヤ幅方向内側をリブ形状とし、前記周方向細溝を境にした前記側方リブ状陸部のタイヤ幅方向外側をブロック形状とし、
前記幅方向細溝の溝底に溝底サイプが形成され、当該溝底サイプは、前記周方向主溝に連通しており、前記周方向主溝から前記周方向細溝までの距離の40[%]以上60[%]以下の範囲で延在することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
トレッド部のトレッド面に、タイヤ赤道面を境にタイヤ幅方向の両側が対称な対称トレッドパターンを有し、かつタイヤ周方向に沿って延在する少なくとも3本の周方向主溝により、タイヤ周方向に延在する少なくとも4本のリブ状陸部が形成された空気入りタイヤにおいて、
前記周方向主溝が前記タイヤ赤道面上にあるときは前記タイヤ赤道面上の周方向主溝をセンター主溝とし、前記周方向主溝が前記タイヤ赤道面上にないときは前記タイヤ赤道面のタイヤ幅方向両外側の各周方向主溝を合わせてセンター主溝とし、前記センター主溝のタイヤ幅方向両外側に隣接するリブ状陸部を側方リブ状陸部とした場合、
前記側方リブ状陸部のタイヤ幅方向の一側から当該側方リブ状陸部のタイヤ幅方向寸法の40[%]以上60[%]以下の範囲に、タイヤ周方向に沿って延在し、前記周方向主溝よりも溝深さが浅く形成された周方向細溝と、
前記側方リブ状陸部に設けられて一端が当該側方リブ状陸部のタイヤ幅方向外側に隣接する周方向主溝に連通して終端し、他端が前記周方向細溝に連通して終端してタイヤ周方向に交差して延在し、前記周方向主溝よりも溝深さが浅く形成され、タイヤ周方向に複数配置された幅方向細溝と、
を含み、前記周方向細溝を境にした前記側方リブ状陸部のタイヤ幅方向内側をリブ形状とし、前記周方向細溝を境にした前記側方リブ状陸部のタイヤ幅方向外側をブロック形状とし、
前記周方向細溝の溝底に溝底サイプが形成され、当該溝底サイプは、前記幅方向細溝が前記周方向細溝に連通する箇所の間隔の60[%]以上90[%]以下の範囲に配置されることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記周方向細溝および前記幅方向細溝は、その最大溝深さを、前記周方向主溝の溝深さに対して10[%]以上40[%]以下の範囲とすることを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記溝底サイプは、前記トレッド面からの最大溝深さを、前記周方向主溝の溝深さに対して60[%]以上90[%]以下の範囲とすることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記センター主溝をなす前記周方向主溝および前記周方向細溝は、タイヤ幅方向で同一距離を保ちつつタイヤ幅方向に屈曲または湾曲して形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記センター主溝は、その溝幅がタイヤ赤道面から接地端までのタイヤ幅方向寸法の3[%]以上15[%]以下の範囲とされ、前記センター主溝に対して前記側方リブ状陸部を間において設けられる各前記周方向主溝は、タイヤ赤道面からの位置がタイヤ赤道面から接地端までのタイヤ幅方向寸法の50[%]以上60[%]以下の範囲とされることを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
規定内圧が600[kPa]以下の小型トラック用空気入りタイヤに適用されることを特徴とする請求項1〜の何れか1つに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐偏摩耗性能およびWET性能が求められる空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
JATMAで規定する小型トラック用空気入りタイヤなどでは、主に地場走行で使用されるため、中低速走行でストップアンドゴーが多く繰り返され、優れた耐摩耗性能とグリップ力(WET性能)が要求される。また、主に地場走行で使用される空気入りタイヤは、摩耗を均一化させて長寿命化を図るローテーションにおいて、前後のみならず左右の交換もすることが好ましく、そのため、対称トレッドパターンが望まれている。
【0003】
従来、例えば、特許文献1に記載の空気入りタイヤは、トレッド部に、タイヤ赤道面上に位置する1本の中央周方向溝と、この中央周方向溝と両トレッド端との間にそれぞれ位置する一対の側方周方向溝の計3本を配設している。これらの周方向溝により、4列のリブを区画形成する。中央周方向溝と側方周方向溝との間のリブは、中央周方向溝からタイヤ周方向と交差する方向に延びる多数本の横溝と、この横溝に連通しタイヤ周方向に延びる第1細溝部と、第1細溝部に連通する第1横サイプと、第1横サイプに連通しタイヤ周方向に延びる第2細溝部と、第2細溝部と横溝とに連通する第2横サイプと、を設けている。
【0004】
また、従来、特許文献2に記載の空気入りタイヤは、上述した特許文献2の空気入りタイヤに対して、一端が側方周方向溝に開口し、他端が第2細溝部に連通して第1横サイプに連続し、タイヤ赤道面に対して傾斜する向きに延びる傾斜サイプをさらに設けている。
【0005】
また、従来、特許文献3に記載の空気入りタイヤは、トレッド部に配設した3本の周方向主溝の間にそれぞれリブ状陸部を区画し、このリブ状陸部に、1本の周方向副溝、周方向主溝と周方向副溝との間を連通する幅方向溝を配設して、ブロック陸部を区画形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−12965号公報
【特許文献2】特開2010−149761号公報
【特許文献3】特開2012−86755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1〜特許文献3に記載の空気入りタイヤは、リブ状陸部(リブ)に、周方向副溝(第1細溝部および第2細溝部)を設け、この周方向副溝(第1細溝部および第2細溝部)と中央の周方向主溝(中央周方向溝)とを連通する幅方向溝(横溝)を設けており、中央の周方向溝(中央周方向溝)のタイヤ幅方向の両側にブロック陸部が区画形成されている。このような特許文献1〜特許文献3に記載の空気入りタイヤは、中央の周方向溝(中央周方向溝)のタイヤ幅方向の両側にブロック陸部が区画されることで、当該部分の剛性が低下することから、主に地場走行で使用される場合、中低速走行でのストップアンドゴーの繰り返しにより、トレッド部のセンター領域における早期摩耗(センターウェア摩耗)が生じやすい傾向となる。すなわち、耐摩耗性能の要求に応じることが難しい。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、耐偏摩耗性能およびWET性能を向上することのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、第1の発明の空気入りタイヤは、トレッド部のトレッド面に、タイヤ赤道面を境にタイヤ幅方向の両側が対称な対称トレッドパターンを有し、かつタイヤ周方向に沿って延在する少なくとも3本の周方向主溝により、タイヤ周方向に延在する少なくとも4本のリブ状陸部が形成された空気入りタイヤにおいて、前記周方向主溝が前記タイヤ赤道面上にあるときは前記タイヤ赤道面上の周方向主溝をセンター主溝とし、前記周方向主溝が前記タイヤ赤道面上にないときは前記タイヤ赤道面のタイヤ幅方向両外側の各周方向主溝を合わせてセンター主溝とし、前記センター主溝のタイヤ幅方向両外側に隣接するリブ状陸部を側方リブ状陸部とした場合、前記側方リブ状陸部のタイヤ幅方向の一側から当該側方リブ状陸部のタイヤ幅方向寸法の40[%]以上60[%]以下の範囲に、タイヤ周方向に沿って延在し、前記周方向主溝よりも溝深さが浅く形成された周方向細溝と、前記側方リブ状陸部に設けられて一端が当該側方リブ状陸部のタイヤ幅方向外側に隣接する周方向主溝に連通して終端し、他端が前記周方向細溝に連通して終端してタイヤ周方向に交差して延在し、前記周方向主溝よりも溝深さが浅く形成され、タイヤ周方向に複数配置された幅方向細溝と、を含み、前記周方向細溝を境にした前記側方リブ状陸部のタイヤ幅方向内側をリブ形状とし、前記周方向細溝を境にした前記側方リブ状陸部のタイヤ幅方向外側をブロック形状とすることを特徴とする。
【0010】
この空気入りタイヤによれば、周方向細溝によりタイヤ周方向の排水性を有し、幅方向細溝によりタイヤ幅方向外側への排水性を有することで、WET性能(湿潤路面での操作性や制動性)を向上することができる。また、側方リブ状陸部のタイヤ幅方向内側(センター主溝側)では、リブ形状により必要以上の剛性低下を抑え、耐偏摩耗性能を向上することができる。特に、主に地場走行で使用される場合、中低速走行でのストップアンドゴーの繰り返しにより、トレッド部のセンター領域における早期摩耗(センターウェア摩耗)の発生を抑制することになる。また、周方向細溝を側方リブ状陸部のタイヤ幅方向寸法Wの40[%]以上60[%]以下の範囲であるタイヤ幅方向のほぼ中央に設けたことで、側方リブ状陸部のタイヤ幅方向での剛性差が小さくなるため、偏摩耗を抑制することができる。この結果、耐偏摩耗性能およびWET性能を向上することができる。しかも、この空気入りタイヤによれば、対称トレッドパターンを有することで、ローテーションにおいて、前後左右の交換をすることが可能であるため、摩耗を均一化させて長寿命化を図ることができる。
【0011】
また、第2の発明の空気入りタイヤは、第1の発明において、前記周方向細溝および前記幅方向細溝は、その最大溝深さを、前記周方向主溝の溝深さに対して10[%]以上40[%]以下の範囲とすることを特徴とする。
【0012】
この空気入りタイヤによれば、周方向細溝および幅方向細溝の最大溝深さが周方向主溝の溝深さに対して10[%]以上であれば、排水性をより発揮してWET性能の向上効果を顕著に得ることができる。また、周方向細溝および幅方向細溝の最大溝深さが周方向主溝の溝深さに対して40[%]以下であれば、側方リブ状陸部の剛性低下をより抑えて耐偏摩耗性能の向上効果を顕著に得ることができる。この結果、耐偏摩耗性能の向上効果およびWET性能の向上効果を顕著に得ることができる。
【0013】
また、第3の発明の空気入りタイヤは、第1または第2の発明において、前記周方向細溝または前記幅方向細溝の何れかの溝底に溝底サイプが形成されることを特徴とする。
【0014】
この空気入りタイヤによれば、周方向細溝や幅方向細溝は、周方向主溝より溝深さが浅く形成されているため、この溝深さの差を溝底サイプにより補填することで、側方リブ状陸部のリブ形状の剛性をタイヤ幅方向で均一に保ち、側方リブ状陸部のブロック形状の剛性をタイヤ幅方向やタイヤ周方向で均一に保つことで、偏摩耗を抑制することができる。この結果、耐偏摩耗性能の向上効果を顕著に得ることができる。
【0015】
また、第4の発明の空気入りタイヤは、第3の発明において、前記幅方向細溝の溝底に形成される溝底サイプは、前記周方向主溝に連通しており、前記周方向主溝から前記周方向細溝までの距離の40[%]以上60[%]以下の範囲で延在することを特徴とする。
【0016】
この空気入りタイヤによれば、溝底サイプを周方向主溝に連通することで、幅方向細溝から周方向主溝への排水性を向上することができる。しかも、溝底サイプを周方向主溝から周方向細溝までの距離の40[%]以上とすることで、排水性の向上効果を顕著に得ることができ、60[%]以下とすることで、側方リブ状陸部のブロック形状の剛性をタイヤ幅方向やタイヤ周方向で均一に保つ効果を顕著に得ることができる。この結果、耐偏摩耗性能の向上効果およびWET性能の向上効果を顕著に得ることができる。
【0017】
また、第5の発明の空気入りタイヤは、第3の発明において、前記周方向細溝の溝底に形成される溝底サイプは、前記幅方向細溝が前記周方向細溝に連通する箇所の間隔の60[%]以上90[%]以下の範囲に配置されることを特徴とする。
【0018】
この空気入りタイヤによれば、溝底サイプを幅方向細溝が周方向細溝に連通する箇所の間隔の60[%]以上とすることで、排水性の向上効果を顕著に得ることができ、90[%]以下とすることで、側方リブ状陸部のリブ形状やブロック形状の剛性をタイヤ幅方向やタイヤ周方向で均一に保つ効果を顕著に得ることができる。この結果、耐偏摩耗性能の向上効果およびWET性能の向上効果を顕著に得ることができる。
【0019】
また、第6の発明の空気入りタイヤは、第3〜第5の何れか1つの発明において、前記溝底サイプは、前記トレッド面からの最大溝深さを、前記周方向主溝の溝深さに対して60[%]以上90[%]以下の範囲とすることを特徴とする。
【0020】
溝底サイプのトレッド面からの最大溝深さを周方向主溝の溝深さに対して60[%]以上とすることで、排水性の向上効果を顕著に得ることができ、90[%]以下とすることで、側方リブ状陸部のリブ形状やブロック形状の剛性をタイヤ幅方向やタイヤ周方向で均一に保つ効果を顕著に得ることができる。この結果、耐偏摩耗性能の向上効果およびWET性能の向上効果を顕著に得ることができる。
【0021】
また、第7の発明の空気入りタイヤは、第1〜第6の何れか1つの発明において、前記センター主溝をなす前記周方向主溝および前記周方向細溝は、タイヤ幅方向で同一距離を保ちつつタイヤ幅方向に屈曲または湾曲して形成されていることを特徴とする。
【0022】
この空気入りタイヤによれば、センター主溝をなす周方向主溝が屈曲または湾曲して形成されていることで、タイヤ幅方向およびタイヤ周方向の双方のエッジ成分を有して、WET性能を向上することができる。この場合、周方向細溝および周方向主溝がタイヤ幅方向で同一距離を保つことで、側方リブ状陸部のリブ形状やブロック形状のタイヤ幅方向寸法がタイヤ周方向で均一となるため、側方リブ状陸部のリブ形状やブロック形状の剛性をタイヤ幅方向やタイヤ周方向で均一に保つ効果を顕著に得ることができる。
【0023】
また、第8の発明の空気入りタイヤは、第1〜第7の何れか1つの発明において、前記センター主溝は、その溝幅がタイヤ赤道面から接地端までのタイヤ幅方向寸法の3[%]以上15[%]以下の範囲とされ、前記センター主溝に対して前記側方リブ状陸部を間において設けられる各前記周方向主溝は、タイヤ赤道面からの位置がタイヤ赤道面から接地端までのタイヤ幅方向寸法の50[%]以上60[%]以下の範囲とされることを特徴とする。
【0024】
ハイドロブレーニング現象は、トレッド面のタイヤ幅方向中央側を起点として発生する傾向にある。そのため、この空気入りタイヤによれば、タイヤ幅方向中央側に配置されるセンター主溝の溝幅を規定し、かつセンター主溝のタイヤ幅方向外側に隣接する周方向主溝の位置をタイヤ幅方向中央側に配置することで、タイヤ幅方向中央側での排水性が向上するため、WET性能のさらなる向上を図ることができる。
【0025】
また、第9の発明の空気入りタイヤは、第1〜第8の何れか1つの発明において、前記トレッド部をなすコンパウンドの20[℃]でのJIS硬度が60以上75以下の範囲であることを特徴とする。
【0026】
この空気入りタイヤによれば、トレッド部をなすコンパウンドの20[℃]でのJIS硬度を60以上とすることで、適度な硬さにより耐偏摩耗性能の向上効果およびWET性能の向上効果を顕著に得ることができる。
【0027】
また、第10の発明の空気入りタイヤは、第1〜第9の何れか1つの発明において、規定内圧が600[kPa]以下の小型トラック用空気入りタイヤに適用されることを特徴とする。
【0028】
この空気入りタイヤによれば、主に地場走行で使用されるため、中低速走行でストップアンドゴーが多く繰り返され、優れた耐摩耗性能とグリップ力(WET性能)が要求される。この空気入りタイヤによれば、主に地場走行で使用される小型トラック用空気入りタイヤとして、優れた耐摩耗性能とグリップ力の要求を満たすことができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る空気入りタイヤは、耐偏摩耗性能およびWET性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの平面図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの他の例の平面図である。
図3図3は、図1および図2に示す空気入りタイヤの一部拡大断面図である。
図4図4は、図1および図2に示す空気入りタイヤの一部拡大平面図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの他の例の平面図である。
図6図6は、本発明の実施例に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
図7図7は、本発明の実施例に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
図8図8は、本発明の実施例に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
図9図9は、本発明の実施例に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0032】
図1および図2は、本実施形態に係る空気入りタイヤの平面図であり、図3は、図1および図2に示す空気入りタイヤの一部拡大断面図であり、図4は、図1および図2に示す空気入りタイヤの一部拡大平面図であり、図5は、本実施形態に係る空気入りタイヤの他の例の平面図である。
【0033】
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示せず)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とは、タイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ幅方向とは、前記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、前記回転軸を中心軸とする周方向である。また、タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1の周方向に沿う線をいう。本実施形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。
【0034】
本実施形態の空気入りタイヤ1は、図1および図2に示すように、トレッド部2を有している。トレッド部2は、ゴム材からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面がトレッド面2aとして空気入りタイヤ1の輪郭となる。
【0035】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1は、トレッド部2に、タイヤ赤道面CLを境にタイヤ幅方向の両側が対称な対称トレッドパターンを有している。具体的には、トレッド部2は、トレッド面2aに、タイヤ周方向に沿って延在する周方向主溝3が、タイヤ幅方向で少なくとも3本(図1では3本であり、図2では4本である)並設されている。そして、トレッド部2は、トレッド面2aに、少なくとも3本の周方向主溝3により、タイヤ周方向に沿って延在するリブ状陸部4が少なくとも4本(図1では4本であり、図2では5本である)形成されている。なお、対称トレッドパターンは、タイヤ幅方向で裏返した場合に、トレッドパターンが同様の形状であることを示している。また、対称トレッドパターンは、タイヤ赤道面CLを境にタイヤ周方向で位相がずれているものを含む。
【0036】
そして、本実施形態では、図1に示すように、周方向主溝3がタイヤ赤道面CL上にあるときはタイヤ赤道面CL上の周方向主溝3をセンター主溝31とする。また、図2に示すように、周方向主溝3がタイヤ赤道面CL上にないときはタイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向両外側の2本の周方向主溝3を合わせてセンター主溝31とする。また、センター主溝31のタイヤ幅方向両外側に隣接するリブ状陸部4を側方リブ状陸部41とする。なお、図には明示しないが、周方向主溝3が5本の場合、周方向主溝3がタイヤ赤道面CL上にあるため、タイヤ赤道面CL上の周方向主溝3をセンター主溝31とする。そして、上記各センター主溝31のタイヤ幅方向両外側に隣接するリブ状陸部4を側方リブ状陸部41とする。
【0037】
側方リブ状陸部41は、周方向主溝3よりも溝幅が狭い周方向細溝5および幅方向細溝6が形成されている。周方向細溝5は、側方リブ状陸部41において、タイヤ幅方向の一側から当該側方リブ状陸部41のタイヤ幅方向寸法Wの40[%]以上60[%]以下の範囲で、タイヤ周方向に沿って延在して設けられている。この周方向細溝5は、周方向主溝3の溝深さD1(図3参照)よりも溝深さD2(図3参照)が浅く形成されている。また、幅方向細溝6は、側方リブ状陸部41において、一端が側方リブ状陸部41のタイヤ幅方向外側に隣接する周方向主溝3に連通して終端し、他端が周方向細溝5に連通して終端してタイヤ周方向に交差して延在して設けられ、タイヤ周方向に複数配置されている。この幅方向細溝6は、周方向主溝3の溝深さD1(図3参照)よりも溝深さD3(図3参照)が浅く形成されている。
【0038】
ここで、本実施形態の空気入りタイヤ1において、周方向主溝3は、その溝深さD1を7[mm]以上12[mm]以下の範囲とし、溝幅を8.0[mm]以上15.0[mm]以下の範囲とする。また、周方向細溝5および幅方向細溝6は、その溝深さD2,D3を上記規定の範囲とし、溝幅を1.0[mm]以上5.0[mm]以下の範囲とする。
【0039】
そして、側方リブ状陸部41は、周方向細溝5および幅方向細溝6により、周方向細溝5を境にしたタイヤ幅方向内側(センター主溝31側)をリブ形状とされ、周方向細溝5を境にしたタイヤ幅方向外側を複数の幅方向細溝6によりブロック形状とされている。
【0040】
このような空気入りタイヤ1によれば、このような空気入りタイヤ1によれば、周方向細溝5によりタイヤ周方向の排水性を有し、幅方向細溝6によりタイヤ幅方向外側への排水性を有することで、WET性能(湿潤路面での操作性や制動性)を向上することが可能である。また、側方リブ状陸部41のタイヤ幅方向内側(センター主溝31側)では、リブ形状により必要以上の剛性低下を抑え、耐偏摩耗性能を向上することが可能になる。特に、主に地場走行で使用される場合、中低速走行でのストップアンドゴーの繰り返しにより、トレッド部2のセンター領域における早期摩耗(センターウェア摩耗)の発生を抑制することになる。また、周方向細溝5を側方リブ状陸部41のタイヤ幅方向寸法Wの40[%]以上60[%]以下の範囲であるタイヤ幅方向のほぼ中央に設けたことで、側方リブ状陸部41のタイヤ幅方向での剛性差が小さくなるため、偏摩耗を抑制することが可能になる。この結果、耐偏摩耗性能およびWET性能を向上することができる。しかも、この空気入りタイヤ1によれば、対称トレッドパターンを有することで、ローテーションにおいて、前後左右の交換をすることが可能であるため、摩耗を均一化させて長寿命化を図ることが可能になる。
【0041】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1は、図3に示すように、周方向細溝5および幅方向細溝6の最大溝深さD2,D3を、周方向主溝3の溝深さD1に対して10[%]以上40[%]以下の範囲とすることが好ましい。
【0042】
この空気入りタイヤ1によれば、周方向細溝5および幅方向細溝6の最大溝深さD2,D3が周方向主溝3の溝深さD1に対して10[%]以上であれば、排水性をより発揮してWET性能の向上効果を顕著に得ることが可能になる。また、周方向細溝5および幅方向細溝6の最大溝深さD2,D3が周方向主溝3の溝深さD1に対して40[%]以下であれば、側方リブ状陸部41の剛性低下をより抑えて耐偏摩耗性能の向上効果を顕著に得ることが可能になる。この結果、耐偏摩耗性能の向上効果およびWET性能の向上効果を顕著に得ることが可能になる。なお、耐偏摩耗性能の向上効果およびWET性能の向上効果を顕著に得るため、周方向細溝5および幅方向細溝6の最大溝深さD2,D3を、周方向主溝3の溝深さD1に対して20[%]以上30[%]以下の範囲とすることがより好ましい。
【0043】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1は、図3および図4に示すように、周方向細溝5または幅方向細溝6の何れかの溝底に溝底サイプ7,8が形成されることが好ましい。
【0044】
なお、本実施形態の空気入りタイヤ1は、図4に示すように、周方向主溝3に一端が連通し、他端がリブ状陸部4で終端するとともにトレッド面2aに開口するトレッド面サイプ9を有している。サイプ7,8,9は、その溝幅を1.0[mm]以下とする。また、本実施形態の空気入りタイヤ1は、タイヤ幅方向最外側のリブ状陸部4のトレッド面2aに、周方向主溝3の溝深さD1に対して10[%]以上の細溝またはサイプを配置していない。
【0045】
溝底サイプ7は、周方向細溝5の溝底からタイヤ径方向内側に向けて形成され、周方向細溝5の延在方向(タイヤ周方向)に沿って延在して設けられている。また、溝底サイプ7は、図4では、周方向細溝5の溝壁に沿って形成されている。これに限らず、溝底サイプ7は、図には明示しないが、周方向細溝5の溝底の中央に形成されていてもよい。また、溝底サイプ7は、周方向細溝5の溝壁に沿って形成される場合、周方向細溝5の両溝壁の何れか一方または双方に形成されていてもよい。溝底サイプ8は、幅方向細溝6の溝底からタイヤ径方向内側に向けて形成され、幅方向細溝6の延在方向に沿って延在して設けられている。また、溝底サイプ8は、図4では、幅方向細溝6の溝壁に沿って形成されている。これに限らず、溝底サイプ8は、図には明示しないが、幅方向細溝6の溝底の中央に形成されていてもよい。また、溝底サイプ8は、幅方向細溝6の溝壁に沿って形成される場合、幅方向細溝6の両溝壁の何れか一方または双方に形成されていてもよい。
【0046】
この空気入りタイヤ1によれば、周方向細溝5や幅方向細溝6は、周方向主溝3より溝深さが浅く形成されているため、この溝深さの差を溝底サイプ7,8により補填することで、側方リブ状陸部41のリブ形状の剛性をタイヤ幅方向で均一に保ち、また側方リブ状陸部41のブロック形状の剛性をタイヤ幅方向やタイヤ周方向で均一に保って、偏摩耗を抑制することが可能になる。この結果、耐偏摩耗性能の向上効果を顕著に得ることが可能になる。
【0047】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図4に示すように、幅方向細溝6の溝底に形成される溝底サイプ8は、周方向主溝3に連通しており、周方向主溝3から周方向細溝5までの距離S1の40[%]以上60[%]以下の範囲で延在することが好ましい。
【0048】
この空気入りタイヤ1によれば、溝底サイプ8を周方向主溝3に連通することで、幅方向細溝6から周方向主溝3への排水性を向上することが可能になる。しかも、溝底サイプ8を周方向主溝3から周方向細溝5までの距離S1の40[%]以上とすることで、排水性の向上効果を顕著に得ることが可能になり、60[%]以下とすることで、側方リブ状陸部41のブロック形状の剛性をタイヤ幅方向やタイヤ周方向で均一に保つ効果を顕著に得ることが可能になる。この結果、耐偏摩耗性能の向上効果およびWET性能の向上効果を顕著に得ることが可能になる。なお、耐偏摩耗性能の向上効果およびWET性能の向上効果を顕著に得るため、溝底サイプ8を周方向主溝3から周方向細溝5までの距離S1の45[%]以上55[%]以下の範囲で延在することがより好ましい。
【0049】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図4に示すように、周方向細溝5の溝底に形成される溝底サイプ7は、幅方向細溝6が周方向細溝5に連通する箇所の間隔S2の60[%]以上90[%]以下の範囲に配置されることが好ましい。図4では、溝底サイプ7は、幅方向細溝6が周方向細溝5に連通する箇所の間隔S2で複数配置されており、その総計を対象とする。
【0050】
この空気入りタイヤ1によれば、溝底サイプ7を幅方向細溝6が周方向細溝5に連通する箇所の間隔S2の60[%]以上とすることで、排水性の向上効果を顕著に得ることが可能になり、90[%]以下とすることで、側方リブ状陸部41のリブ形状やブロック形状の剛性をタイヤ幅方向やタイヤ周方向で均一に保つ効果を顕著に得ることが可能になる。この結果、耐偏摩耗性能の向上効果およびWET性能の向上効果を顕著に得ることが可能になる。なお、耐偏摩耗性能の向上効果およびWET性能の向上効果を顕著に得るため、溝底サイプ7を幅方向細溝6が周方向細溝5に連通する箇所の間隔S2の70[%]以上80[%]以下の範囲に配置することがより好ましい。
【0051】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図3に示すように、溝底サイプ7,8は、トレッド面2aからの最大溝深さD4を、周方向主溝3の最大溝深さD1に対して60[%]以上90[%]以下の範囲とすることが好ましい。
【0052】
溝底サイプ7,8のトレッド面2aからの最大溝深さD4を周方向主溝3の最大溝深さD1に対して60[%]以上とすることで、排水性の向上効果を顕著に得ることが可能になり、90[%]以下とすることで、側方リブ状陸部41のリブ形状やブロック形状の剛性をタイヤ幅方向やタイヤ周方向で均一に保つ効果を顕著に得ることが可能になる。この結果、耐偏摩耗性能の向上効果およびWET性能の向上効果を顕著に得ることが可能になる。なお、耐偏摩耗性能の向上効果およびWET性能の向上効果を顕著に得るため、溝底サイプ7,8のトレッド面2aからの最大溝深さD4を周方向主溝3の最大溝深さD1に対して70[%]以上80[%]以下の範囲とすることがより好ましい。
【0053】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1は、図5に示すように、センター主溝31をなす周方向主溝3および周方向細溝5は、タイヤ幅方向で同一距離を保ちつつタイヤ幅方向に屈曲または湾曲して形成されていることが好ましい。なお、図5では、周方向主溝3がタイヤ赤道面CL上にあるときを示しており、この場合はタイヤ赤道面CL上の周方向主溝3をセンター主溝31としている。また、図には明示しないが、周方向主溝3がタイヤ赤道面CL上にないときはタイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向両外側の2本の周方向主溝3を合わせてセンター主溝31とすることから、2本のセンター主溝31がタイヤ幅方向に屈曲または湾曲して形成される。
【0054】
この空気入りタイヤ1によれば、センター主溝31をなす周方向主溝3が屈曲または湾曲して形成されていることで、タイヤ幅方向およびタイヤ周方向の双方のエッジ成分を有して、WET性能を向上することが可能になる。この場合、周方向細溝5および周方向主溝3がタイヤ幅方向で同一距離を保つことで、側方リブ状陸部41のリブ形状やブロック形状のタイヤ幅方向寸法がタイヤ周方向で均一となるため、側方リブ状陸部41のリブ形状やブロック形状の剛性をタイヤ幅方向やタイヤ周方向で均一に保つ効果を顕著に得ることが可能になる。
【0055】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図1図2または図5に示すように、センター主溝31は、その溝幅がタイヤ赤道面CLから接地端Tまでのタイヤ幅方向寸法Lの3[%]以上15[%]以下の範囲とされ、センター主溝31に対して側方リブ状陸部41を間において隣接して設けられる各周方向主溝3は、タイヤ赤道面CLからの位置がタイヤ赤道面CLから接地端Tまでのタイヤ幅方向寸法Lの50[%]以上60[%]以下の範囲とされることが好ましい。
【0056】
なお、タイヤ赤道面CLから離隔して設けられる各周方向主溝3は、タイヤ赤道面CLからの位置とは、当該周方向主溝3の溝幅の中央の位置とする。
【0057】
ここで、接地端Tとは、接地領域(空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、かつ正規内圧を充填するとともに正規荷重の70%をかけたとき、この空気入りタイヤ1のトレッド部2のトレッド面2aが路面と接地する領域)のタイヤ幅方向の両最外端をいい、図1図2図5では、接地端Tをタイヤ周方向に連続して示している。また、接地端Tのタイヤ幅方向の間隔が接地幅TWとして設定され、対称トレッドパターンである本実施形態の空気入りタイヤ1において、タイヤ赤道面CLから接地端Tまでのタイヤ幅方向寸法Lは、接地幅TWの1/2に相当する。
【0058】
なお、正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、正規荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
【0059】
ハイドロブレーニング現象は、トレッド面2aのタイヤ幅方向中央側を起点として発生する傾向にある。そのため、この空気入りタイヤ1によれば、タイヤ幅方向中央側に配置されるセンター主溝31の溝幅を規定し、かつセンター主溝31のタイヤ幅方向外側に隣接する周方向主溝3の位置をタイヤ幅方向中央側に配置することで、タイヤ幅方向中央側での排水性が向上するため、WET性能のさらなる向上を図ることが可能になる。
【0060】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1は、トレッド部2をなすコンパウンドの20[℃]でのJIS硬度が60以上75以下の範囲であることが好ましい。
【0061】
この空気入りタイヤ1によれば、トレッド部2をなすコンパウンドの20[℃]でのJIS硬度を60以上とすることで、適度な硬さにより耐偏摩耗性能の向上効果およびWET性能の向上効果を顕著に得ることが可能になる。トレッド部2をなすコンパウンドの20[℃]でのJIS硬度が75においては、一般的な空気入りタイヤに用いる最大値である。なお、耐偏摩耗性能の向上効果およびWET性能の向上効果をより顕著に得るため、トレッド部2をなすコンパウンドの20[℃]でのJIS硬度を65以上70以下の範囲とすることが好ましい。
【0062】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1は、規定内圧が600[kPa]以下の小型トラック用空気入りタイヤに適用されることが好ましい。
【0063】
小型トラック用空気入りタイヤは、主に地場走行で使用されるため、中低速走行でストップアンドゴーが多く繰り返され、優れた耐摩耗性能とグリップ力(WET性能)が要求される。本実施形態の空気入りタイヤ1によれば、主に地場走行で使用される小型トラック用空気入りタイヤとして、優れた耐摩耗性能とグリップ力の要求を満たすことが可能になる。
【実施例】
【0064】
図6図9は、本実施例に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。本実施例では、条件が異なる複数種類の空気入りタイヤについて、耐偏摩耗性能およびWET性能(WET制動性能)に関する性能試験が行われた。
【0065】
この性能試験では、タイヤサイズ205/85R16 117/115L LTRリブタイヤの空気入りタイヤを、正規リムに組み付け、正規内圧を充填し、試験車両(3[t]積み小型トラック)に装着した。
【0066】
耐偏摩耗性能の評価方法は、上記試験車両にて平均速度60[km/h]で5万[km]走行後におけるリブ状陸部に発生した偏摩耗(側方リブ状陸部と他のリブ状陸部とのトレッド面の摩耗量の差)が測定される。そして、この測定結果に基づいて従来例1を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、その数値が大きいほど耐偏摩耗性能が優れていることを示している。
【0067】
WET性能の評価方法は、上記試験車両にて水深10±1[mm]の湿潤路面のテストコースで、初速度60[km/h]からの制動距離が測定される。そして、この測定結果に基づいて従来例1を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、その数値が大きいほどWET性能が優れていることを示している。
【0068】
図6および図7は、トレッド部に4本の周方向主溝を配置して5本のリブ状陸部を区画した空気入りタイヤである。つまり、周方向主溝がタイヤ赤道面上にない。従来例1の空気入りタイヤは、タイヤ赤道面のタイヤ幅方向両側の各周方向主溝(センター主溝)のタイヤ幅方向両側に隣接するリブ状陸部(側方リブ状陸部)について、そのタイヤ幅方向両側の周方向主溝に各端が連通し、周方向主溝よりも溝深さが浅く形成された複数の幅方向細溝を配置して側方リブ状陸部をブロック形状としている。また、比較例1の空気入りタイヤは、タイヤ赤道面のタイヤ幅方向両側の各周方向主溝(センター主溝)のタイヤ幅方向両側に隣接するリブ状陸部(側方リブ状陸部)について、タイヤ周方向に延在し、周方向主溝よりも溝深さが浅く形成された周方向細溝を配置して側方リブ状陸部を2本のリブ形状としている。また、比較例2の空気入りタイヤは、比較例1の空気入りタイヤに対し、側方リブ状陸部に、タイヤ幅方向両側の周方向主溝に連通し、周方向主溝よりも溝深さが浅く形成された複数の幅方向細溝を配置して側方リブ状陸部をブロック形状としている。この従来例1、比較例1、比較例2の空気入りタイヤは、他のリブ状陸部に細溝を形成していない。なお、比較例1および比較例2は、従来例1を基準として評価する。
【0069】
一方、図6および図7に示すように、実施例1〜実施例41の空気入りタイヤは、タイヤ赤道面のタイヤ幅方向両側の各周方向主溝(センター主溝)のタイヤ幅方向両側に隣接するリブ状陸部(側方リブ状陸部)について、側方リブ状陸部のタイヤ幅方向の一側から当該側方リブ状陸部のタイヤ幅方向寸法の40[%]以上60[%]以下の範囲に、タイヤ周方向に沿って延在し、周方向主溝よりも溝深さが浅く形成された周方向細溝と、一端が側方リブ状陸部のタイヤ幅方向外側に隣接する周方向主溝に連通して終端し、他端が周方向細溝に連通して終端してタイヤ周方向に交差して延在し、周方向主溝よりも溝深さが浅く形成されてタイヤ周方向に複数配置された幅方向細溝と、を含み、周方向細溝を境にした側方リブ状陸部のタイヤ幅方向内側をリブ形状とし、周方向細溝を境にした側方リブ状陸部のタイヤ幅方向外側をブロック形状としている。この実施例1〜実施例41の空気入りタイヤは、他のリブ状陸部に細溝を形成していない。実施例4〜実施例8の空気入りタイヤは、細溝の溝深さを規定している。実施例9〜実施例18の空気入りタイヤは、幅方向細溝の溝底に溝底サイプが形成されている。実施例19〜実施例28の空気入りタイヤは、周方向細溝の溝底に溝底サイプが形成されている。実施例29〜実施例38の空気入りタイヤは、幅方向細溝および周方向細溝の溝底に溝底サイプが形成されている。実施例39および実施例41の空気入りタイヤは、周方向主溝および周方向細溝が屈曲している(図5参照)。実施例40および実施例41の空気入りタイヤは、センター主溝の溝幅および隣接する周方向主溝の位置の規定を満足している。なお、実施例1〜実施例41は、従来例1を基準として評価する。
【0070】
図8および図9は、トレッド部に3本の周方向主溝を配置して4本のリブ状陸部を区画した空気入りタイヤである。つまり、周方向主溝がタイヤ赤道面上に配置されている。従来例2の空気入りタイヤは、タイヤ赤道面上の周方向主溝(センター主溝)のタイヤ幅方向両側に隣接するリブ状陸部(側方リブ状陸部)について、そのタイヤ幅方向両側の周方向主溝に各端が連通し、周方向主溝よりも溝深さが浅く形成された複数の幅方向細溝を配置して側方リブ状陸部をブロック形状としている。また、比較例3の空気入りタイヤは、タイヤ赤道面上の周方向主溝(センター主溝)のタイヤ幅方向両側に隣接するリブ状陸部(側方リブ状陸部)について、タイヤ周方向に延在し、周方向主溝よりも溝深さが浅く形成された周方向細溝を配置して側方リブ状陸部を2本のリブ形状としている。また、比較例4の空気入りタイヤは、比較例3の空気入りタイヤに対し、側方リブ状陸部に、タイヤ幅方向両側の周方向主溝に連通し、周方向主溝よりも溝深さが浅く形成された複数の幅方向細溝を配置して側方リブ状陸部をブロック形状としている。この従来例2、比較例3、比較例4の空気入りタイヤは、他のリブ状陸部に細溝を形成していない。なお、従来例2は、従来例1を基準とした指数であり、比較例3および比較例4は、この従来例2を基準として評価する。
【0071】
一方、図8および図9に示すように、実施例42〜実施例82の空気入りタイヤは、タイヤ赤道面上の周方向主溝(センター主溝)のタイヤ幅方向両側に隣接するリブ状陸部(側方リブ状陸部)について、側方リブ状陸部のタイヤ幅方向の一側から当該側方リブ状陸部のタイヤ幅方向寸法の40[%]以上60[%]以下の範囲に、タイヤ周方向に沿って延在し、周方向主溝よりも溝深さが浅く形成された周方向細溝と、一端が側方リブ状陸部のタイヤ幅方向外側に隣接する周方向主溝に連通して終端し、他端が周方向細溝に連通して終端してタイヤ周方向に交差して延在し、周方向主溝よりも溝深さが浅く形成されてタイヤ周方向に複数配置された幅方向細溝と、を含み、周方向細溝を境にした側方リブ状陸部のタイヤ幅方向内側をリブ形状とし、周方向細溝を境にした側方リブ状陸部のタイヤ幅方向外側をブロック形状としている。この実施例42〜実施例82の空気入りタイヤは、他のリブ状陸部に細溝を形成していない。実施例45〜実施例49の空気入りタイヤは、細溝の溝深さを規定している。実施例50〜実施例59の空気入りタイヤは、幅方向細溝の溝底に溝底サイプが形成されている。実施例60〜実施例69の空気入りタイヤは、周方向細溝の溝底に溝底サイプが形成されている。実施例70〜実施例79の空気入りタイヤは、幅方向細溝および周方向細溝の溝底に溝底サイプが形成されている。実施例80および実施例82の空気入りタイヤは、周方向主溝および周方向細溝が屈曲している(図5参照)。実施例81および実施例82の空気入りタイヤは、センター主溝の溝幅および隣接する周方向主溝の位置の規定を満足している。なお、実施例42〜実施例82は、従来例2を基準として評価する。
【0072】
図6図9の試験結果に示すように、実施例1〜実施例82の空気入りタイヤは、耐偏摩耗性能およびWET性能が改善されていることが分かる。
【符号の説明】
【0073】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
2a トレッド面
3 周方向主溝
31 センター主溝
4 リブ状陸部
41 側方リブ状陸部
5 周方向細溝
6 幅方向細溝
7,8 溝底サイプ
9 トレッド面サイプ
CL タイヤ赤道面
T 接地端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9