(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の電気装置に内蔵される電子部品や制御用のプリント基板へ伝送される電気信号は高周波化されてきている。一般的に、高周波の電気信号を伝送するためにシールドケーブルが用いられるが、伝送される電気信号の更なる高周波化に伴って、このシールドケーブルに接続されるシールドコネクタにも更なる高周波化対応の要求が高まっている。
【0003】
シールドケーブルの1種である同軸ケーブルは、信号線と、その外周を被覆する絶縁体と、複数の素線を編んだ編組等のシールド導体と、シールド導体の外周を覆う絶縁性のシースとが同軸状に配された構造を有する。通常、同軸ケーブルの端末部分に接続されるシールドコネクタには、高周波信号を伝達する信号導体と接続される内導体端子と、シールド導体と接続される共に内導体端子の外周を覆う外導体端子と、これら内導体端子と外導体端子の間に介在される所定の比誘電率を有する誘電体とが備えられており、同軸ケーブルの端末部分の絶縁体とシースが剥ぎ取られて露出された信号導体とシールド導体にそれぞれ内導体端子と外導体端子が接続される。このようなシールドコネクタは、例えば下記特許文献1に開示されている。
【0004】
この種のシールドコネクタにおいては、外導体端子は、その一部として形成されたバレルの圧着片を介して、同軸ケーブルのシールド導体に圧着接続される。
図7に、このバレル部分の断面図を示す。外導体端子の圧着片103a、103bは、露出された編組Wdを折り返してシースWe端末部外周に被せた編組反転部Wf上にかしめられて編組Wdと圧着されている。この際、一方の圧着片103aの上に他方の圧着片103bがオーバーラップするようにかしめられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このように圧着片103a、103bを先端同士がオーバーラップするようにかしめた場合に、塑性変形させた材料にその材料自体の弾性によって復元力が働くスプリングバックと呼ばれる現象が発生する場合がある。すると、圧着片103a、103bが開いてしまい、圧着片103a、103bによる編組反転部Wfへの締め付けが低下する結果、シールドコネクタ100に対する同軸ケーブルWの引き抜き強度が低下してしまう。
【0007】
そこで本発明が解決する課題は、外導体端子をバレルを介してシールド電線の端末に圧着した端子圧着構造において、スプリングバックによるバレルの拡開を抑制することができる端子圧着構造及びその製造方法を提供すること、そしてそのような端子圧着構造を形成するための外導体端子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる端子圧着構造は、シールド導体を有するシールド電線の端末部に露出されたシールド導体の外周に外導体端子のバレルが圧着された端子圧着構造において、前記バレルは、前記シールド導体の外周に密着して前記シールド電線をかしめるかしめ部と、前記かしめ部の対向する端縁から前記シールド電線の周方向に延出する板状の第一の延出片と第二の延出片とを有し、前記第一の延出片には、前記かしめ部との境界上に端縁を有し、前記第二の延出片を挿通可能な貫通孔が形成され、前記かしめ部が前記シールド導体の外周を1周してかしめられるとともに、前記貫通孔に前記第二の延出片が挿通され、いずれか一方の延出片が前記かしめ部との境界において折り返され、他方の延出片が前記かしめ部と密着していることを要旨とする。
【0009】
ここで、前記第一の延出片が前記かしめ部の外周面側に折り返され、前記第二の延出片がその折り返しの山側から前記貫通孔に挿通されて前記かしめ部の外周面と密着しているとよい。
【0010】
また、前記第一の延出片と前記第二の延出片が重なっている箇所が、前記シールド電線に向かって外側から押圧されていることが好ましい。
【0011】
一方、本発明にかかる端子圧着構造の製造方法は、シールド導体を有するシールド電線の端末部で露出されたシールド導体の外周に外導体端子のバレルが圧着された端子圧着構造の製造方法において、前記バレルは、前記シールド導体の外周に密着して前記シールド電線をかしめるかしめ部と、前記かしめ部の対向する端縁から前記シールド電線の周方向に延出する第一の延出片と第二の延出片とを有し、前記第一の延出片には、前記かしめ部との境界上に端縁を有し、前記第二の延出片を挿通可能な貫通孔が形成され、前記かしめ部を前記シールド導体の外周を1周してかしめるとともに、前記貫通孔に前記第二の延出片を挿通し、いずれか一方の延出片を前記かしめ部との境界において折り返し、2つの延出片を相互に重ねた状態で他方の延出片を前記かしめ部に密着させることを要旨とする。
【0012】
ここで、いずれか一方の延出片を前記かしめ部との境界において折り返した後に、前記バレルを前記シールド導体の外周に配置し、前記かしめ部を前記シールド導体の外周に1周させてかしめることが好適である。
【0013】
また、前記第一の延出片を前記かしめ部の外周面となる側に折り返し、前記第二の延出片をその折り返しの山側から前記貫通孔に挿通させて前記かしめ部の外周面と密着させるとよい。
【0014】
さらに、前記かしめ部が一部拡開した後に、前記第一の延出片と前記第二の延出片が重なった箇所を、前記シールド電線に向かって外側から押圧するとよい。
【0015】
また、本発明にかかる外導体端子は、シールド導体を有するシールド電線の端末部に露出されたシールド導体の外周に圧着されるバレルを有する外導体端子において、前記バレルは、前記シールド導体の外周に密着して前記シールド電線にかしめられるかしめ部と、前記かしめ部の対向する端縁から前記シールド電線への圧着時に前記シールド電線の周方向となる方向に延出する板状の第一の延出片と第二の延出片とを有し、前記第一の延出片には、前記かしめ部との境界上に端縁を有し、前記第二の延出片を挿通可能な貫通孔が形成されていることを要旨とする。
【0016】
ここで、前記第一の延出片及び第二の延出片のいずれかが、前記かしめ部との境界において折り曲げられているとよい。
【発明の効果】
【0017】
上記発明にかかる端子圧着構造によると、第一の延出片に形成された貫通孔に第二の延出片が挿通されるとともに、いずれか一方の延出片がかしめ部との境界において折り返されるので、この折り返し部に他方の延出片が係止され、かしめ部を拡開させるような力が働いた時に、貫通孔から第二の延出片が脱出する運動が阻止される。これにより、かしめ部がスプリングバックによって拡開するのが防止され、シールド電線の外導体端子に対する引き抜き強度が向上される。
【0018】
ここで、前記第一の延出片が前記かしめ部の外周面側に折り返され、前記第二の延出片がその折り返しの山側から前記貫通孔に挿通されて前記かしめ部と密着している場合には、貫通孔の端縁に第二の延出片を係止させることができ、かしめ部の拡開を効果的に防止することができる。また、両延出片がかしめ部の外側に配置されるため、かしめ部とシールド電線の密着性が高くなり、このことも効果的なかしめ部の拡開防止に寄与する。さらに、製造工程において、かしめ部をシールド導体の外周にかしめる工程と、第一の延出片の貫通孔に第二の延出片を挿通する工程、そして第一の延出片を折り返す工程を、一連の連続した作業として実行しやすい。
【0019】
また、前記第一の延出片と前記第二の延出片が重なっている箇所が、前記シールド電線に向かって外側から押圧されていると、かしめ部が第一の延出片を伴って外側に向かって開こうとするのが一層強固に阻止され、かしめ部の拡開が効果的に防止される。
【0020】
一方、本発明にかかる端子圧着構造の製造方法によると、スプリングバックによるかしめ部の拡開が防止された端子圧着構造を容易に製造することができる。
【0021】
また、本発明にかかる外導体端子は、簡素な構成を有しながら、スプリングバックによるバレルの拡開が防止された端子圧着構造を形成するのに適したものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0024】
図1〜3に、本発明の第一の実施形態にかかる外導体端子と、それを用いた端子圧着構造及びその製造手順を示す。外導体端子1は同軸ケーブルWの端末に接続される。
【0025】
同軸ケーブルWは、信号導体Waと、シールド導体として、複数の素線を編んだ編組Wdと、それらの間に介在される絶縁体Wbと、編組Wdの外周を被覆する絶縁性のシースWeが同軸状に配された構成を有する。外導体端子1は編組に接続され、その内部に収容される内導体端子及び誘電体とともに、シールドコネクタを形成する。
【0026】
外導体端子1は、導電性の板材が折り曲げ加工されて形成されたもので、前方に略円筒状のシェル部2が形成されている。シェル部2には、同軸ケーブルWの信号導体Waに接続されたメス型又はオス型の内導体端子(不図示)が収容される。また、内導体端子と外導体端子1の間には、所定の誘電率を有し、両端子間の絶縁を確保する円筒状に形成された誘電体(不図示)が配置される。
【0027】
外導体端子1の後方には、同軸ケーブルWの編組に圧着され、編組と電気的に接続される編組バレル3を有する。編組バレル3のさらに後方には、同軸ケーブルWのシースWeの外側から同軸ケーブルWに圧着され、外導体端子1の同軸ケーブルWへの物理的接続を強固に行うインシュレーションバレル4が形成されている。なお、本実施形態においては、シールド導体が編組である場合を例として採用しているため、「編組バレル」との名称を採用しているが、シールド導体は、金属箔等、編組以外の構成をとることもでき、その場合にも、「編組バレル」と同様の構成を有するバレル構造を使用することができる。
【0028】
本発明にかかる外導体端子1は、編組バレル3の構成に特徴を有する。編組バレル3は、断面略U字形に形成されたかしめ部3aを有する。かしめ部3aは、同軸ケーブルWの露出された編組の外周を1周囲んで密着し、編組にかしめられることで、編組と外導体端子1との間の物理的、電気的接続を形成する役割を果たす。
【0029】
かしめ部3aのU字形状上部に位置する両端縁には、上方、つまり同軸ケーブルWの周方向となる方向に延出して、板状の第一の延出片3bと第二の延出片3cが形成されている。第一の延出片3bと第二の延出片3cは、かしめ部3aが編組の外周にかしめられた際に、スプリングバック現象によってかしめ部3aが拡開し、同軸ケーブルWが外導体端子から抜けやすくなるのを、協働して防止する役割を果たす。
【0030】
第二の延出片3cは、かしめ部3aよりも幅(同軸ケーブルWの周に沿う方向と直交する方向の長さ)が短い略矩形の板状の構造を有している。
【0031】
一方、第一の延出片3bは、略矩形の板状の部材であり、略矩形の貫通孔3dを有する。貫通孔3dは、第二の延出片3cを挿通可能な大きさを有する。すなわち、貫通孔3dの幅が、第二の延出片3cの幅よりも大きく形成されている。また、貫通孔3dのかしめ部3a側の端縁3d1は、第一の延出片3bとかしめ部3aの境界に重なるように形成されている。第一の延出片3bの幅は、かしめ部3aの幅と同じでも、それよりも狭くてもよいが、図で示したようにかしめ部3aの幅と同じである場合、第一の延出片3bとかしめ部3aの間の境界は形態面からは規定されないが、この場合、
図2で点線で示したように、貫通孔3dの端縁3d1の位置が境界として規定される。このように境界の位置を規定することは、後述する端子圧着構造の形成に際して重要である。
【0032】
このような構成を有する外導体端子1を同軸ケーブルWの端末に圧着して形成される端子圧着構造の一例を、その製造方法とともに
図3に示す。
図3においては、外導体端子1のうち編組バレル3のみを抜き出し、
図1(d)に対応する背面から見た構成を簡略化して示している。
【0033】
端子圧着構造の形成にあたり、まず、同軸ケーブルWの端部の所定長さにわたり、シールドWeを被覆し、露出された編組WdをシールドWeの外側に折り返して、編組反転部Wfを形成しておく。この状態で、
図3(a)のように、同軸ケーブルWの端末を編組バレル3のかしめ部3aの底部に載置する。
【0034】
次に、
図3(b)のように、かしめ部3aを、編組反転部Wfの外周に1周にわたり密着させ、同軸ケーブルWの中心に向かう力を印加することで、かしめ部3aを編組反転部Wfの外周にかしめる。そして、第一の延出片3bの貫通孔3dに第二の延出片3cを挿通する。このとき挿通は、第一の延出片3bの内側面、つまりかしめ部3aが編組反転部Wfと接触している方の面から行われる。
【0035】
さらに
図3(b)に矢印で示したように、第一の延出片3bの内側面から第一の延出片3bに力を印加する。これにより、
図3(c)のように、第一の延出片3bをかしめ部3aとの境界つまり貫通孔3dの端縁3d1の位置でかしめ部3aの外周面側に折り返す。また、同時に第二の延出片3cをかしめ部3aの外周面に密着させる。これによって、第一の延出片3bがかしめ部3aとの境界において折り返されて、その折り返しの山側のから第二の延出片3cが貫通孔3dに挿通され、かしめ部3aの外周面に接触した状態となる。以上のようにして、2つの延出片3b、3cよりなる拡開防止構造5が形成される。
【0036】
さらに、形成された拡開防止構造に対して、
図3(c)中矢印で示したように、第一の延出片3bと第二の延出片3cが重なった箇所において、第一の延出片3bの上方から同軸ケーブルWの方に向かって押圧を行い、第一の延出片3bと第二の延出片3cをかしめ部3a及び同軸ケーブルWに押し付けてもよい。
【0037】
拡開防止構造5においては、第二の延出片3cが第一の延出片3bに設けられた貫通孔3dに挿通されるともに、貫通孔3dの端縁3d1の箇所に折り返しが形成され、折り返し部に第二の延出片3cが係止され、かしめ部3aを押し広げようとする力が働いても、この係止構造がそれを阻止する。つまり、かしめ部3aを構成する材料の弾性により、かしめ部3aの第一の延出片3b側及び/又は第二の延出片3c側の端部に、
図3(c)の上方へ持ち上がるような力が働いても、第二の延出片3cが第一の延出片3bに形成された貫通孔3dから脱することができない。それどころか、このような力が働くことにより、貫通孔3dの端縁3d1に第二の延出片3cが強く押し付けられるようになるので、第一の延出片3bと第二の延出片3cの間の係止が一層深くなる。このようにして、かしめ部3aがスプリングバックによって拡開するのが阻止される。つまり、同軸ケーブルWが外導体端子1から抜けにくくなり、引き抜き強度が向上する。さらに、
図3(c)の状態において、第一の延出片3bと第二の延出片3cが重なった箇所への押圧が行われる場合には、拡開防止構造5の外側から同軸ケーブルWの方向に働く力が及ぼされることにより、スプリングバックによるかしめ部3aの拡開が一層強固に防止される。
【0038】
上記のように、かしめ部3aを拡開する力が働くと、貫通孔3dの端縁3d1に第二の延出片3cが強く押し付けられ、両者の係止関係が一層深くなるが、この意味において、第一の延出片3bの折り返しを行った後、かしめ部3aが一部拡開し、貫通孔3dの端縁3d1に第二の延出片3cが完全に係止されてかしめ部3aの拡開が止まった状態において、重なり部分への押圧を行うことが好適である。
【0039】
以上のような端子圧着構造は、同軸ケーブルWの編組反転部Wfの外周にかしめ部3aをかしめる工程と、第一の延出片3bの折り返しと第二の延出片3cのかしめ部3aの外周面への密着を行う工程とが実行できるならば、どのような手段を用いて形成されてもよい。例えば、
図4に示すような装置を使用する方法を例示することができる。
【0040】
図4に示す圧着装置30は、対向するアンビル31とクリンパ32と、クリンパ32内に設けられた挿通孔33内に挿通された押圧具34よりなる。クリンパ32は上下動可能であり、押圧具34も、クリンパ32と独立して挿通孔33内で上下動可能である。
【0041】
同軸ケーブルWを載置され、断面略U字状に開いた編組バレル3は、アンビル31上に配置される。そのアンビル31に向かってクリンパ32が徐々に下降され、その過程において、
図4(a)のように、アンビル31の上面及びクリンパ32の下面の曲面形状によって、編組バレル3のかしめ部3aが同軸ケーブルWの外周に沿う形状に曲げられ、同軸ケーブルWの外周に密着される。そして、
図4(b)に示したようにクリンパ32が最下端の位置に達すると、かしめ部3aが同軸ケーブルWの外周を1周してかしめられる。それとともに、第一の延出片3bの貫通孔3dに第二の延出片3cが挿通される。その後、
図4(c)のように、押圧具34が下降され、第一の延出片3bの内側面から押圧されることにより、第一の延出片3bが折り返されて第二の延出片3cの側に倒されるともに、第二の延出片3cがかしめ部3aの外周面に密着される。こうして、拡開防止構造5が形成され、端子圧着構造が完成される。
【0042】
さらに第一の延出片3bと第二の延出片3cの重なった部分を外側から押圧する場合は、一旦クリンパ32及び押圧具34を上昇させて負荷を除き、この重なり部分が押圧具34の真下にくるように編組バレル3が取り付けられた同軸ケーブルWを回転させ、かしめ部3aがわずかに拡開して止まった状態で、押圧具34を再び下降させて押圧を行えばよい。
【0043】
端子圧着構造は必ずしもこのような圧着装置30を使用しなくても形成可能であるが、圧着装置30を使用することで、かしめ部3aを同軸ケーブルWの外周に密着させてかしめ、貫通孔3dに第二の延出片3cを挿通する工程と、第一の延出片3bを折り返し、第二の延出片3cをかしめ部3aの外周面に密着させる工程と、さらには重ねた第一の延出片3bと第二の延出片3cを同軸ケーブルWの側に押圧する工程とを連続的に単一の装置内で完結することができる。この点において、上記の方法は生産性に優れる。
【0044】
さらに製造工程を簡略化することができる第二の実施形態にかかる外導体端子とそれを用いた端子圧着構造を次に示す。
【0045】
図5に第二の実施形態にかかる外導体端子の編組バレル3’の構成を、端子圧着構造及びその製造方法とともに示す。編組バレル3’は第一の実施形態にかかる外導体端子1の編組バレル3と同様の形状に形成されているが、
図5(a)に示すように、第一の延出片3b’がかしめ部3a’との境界つまり貫通孔3d’の端縁3d1’の位置において折り返されているという点においてのみ異なる。この折り返しを先に形成した状態で、編組バレル3’を同軸ケーブルWの編組反転部Wfの外周に配置する。
【0046】
このようにしておくと、
図5(b)のように折り返し部の山側から第二の延出片3c’を貫通孔3d’に挿入するだけで、第二の延出片3c’が第一の延出片3b’の折り返し部に係止された構造を形成することができる。特に
図4のような圧着装置を使用して端子圧着構造を形成する場合に、第一の延出片3b’に折り返しを形成するために押圧具34を下降させる必要がなくなるので、押圧具34を下降させて押圧を行う工程を一度実行するのみで、
図5(b)に矢印で示した第一の延出片と第二の延出片が重なった箇所に押圧を行う工程までを行うことができる。つまり、第一の実施形態にかかる端子圧着構造よりも簡素な工程で端子圧着構造を形成することができる。
【0047】
以上の端子圧着構造においては、貫通孔を有する第一の延出片がかしめ部の外周面の側に折り返されることで、第一の延出片と第二の延出片の間の係止関係が形成された。しかし、折り返しの形成箇所と折り返し方向が異なる場合にも、第一の延出片と第二の延出片の間に係止関係を形成し、スプリングバックによる拡開を防止することが可能である。
【0048】
図6に折り返しの形成箇所と第二の延出片の挿入方向が異なる4通りの端子圧着構造における編組バレル部分を簡素化したものを示す。
図6(a)は、
図3(c)及び
図5(b)の第一及び第二の実施形態にかかかる端子圧着構造に対応しており、第一の延出片がかしめ部の外周面側に折り返され、貫通孔に挿通された第二の延出片がかしめ部の外周面に密着している。
図6(b)では、第二の延出片がかしめ部の外周面側に折り返され、この第二の延出片を貫通孔に挿通された第一の延出片がかしめ部の外周面に密着している。
図6(c)では、第二の延出片がかしめ部の内周面側に折り返され、この第二の延出片を貫通孔に挿通された第一の延出片がかしめ部の内周面に密着している。
図6(d)では、第一の延出片がかしめ部の内周面側に折り返され、貫通孔に挿通された第二の延出片がかしめ部の内周面に密着している。
【0049】
いずれの端子圧着構造においても、かしめ部の拡開しようとする運動が、第一の延出片と第二の延出片の係止構造によって阻止される。いずれの端子圧着構造も、
図1及び
図2に示した第一の実施形態にかかる外導体端子1を用いて形成することができる。あるいは、第二の実施形態の場合のように、編組バレルのあらかじめ折り返すべき箇所を折り返してから同軸ケーブルWの外周に編組バレルを配置して形成することもできる。
【0050】
同軸ケーブルとかしめ部の間に延出片が介在されず、同軸ケーブルとかしめ部の間に高い密着性が得られるという点においては、
図6(c)、(d)の場合より、
図6(a)、(b)の場合の方が好適である。また、
図6(a)の場合には、
図5(a)に示したように、あらかじめ折り返し部を形成しておけば、かしめ部を同軸ケーブルの外周に1周密着させる工程と連続的に、第二の延出片を第一の延出片の貫通孔に挿通することができるので、
図6(a)の構成が最も好適である。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、上述したように、シールド導体が編組として構成されている必要はない。また、各図では、編組バレルが編組反転部の外周にかしめられているが、編組反転部を形成せず、シースを剥離して露出した単層の編組の上に直接編組バレルを取り付けてもよい。さらに、上記では単一の同軸ケーブルの末端に外導体端子が取付けられているが、複数の絶縁電線を束ねてその外周に形成されたシールド導体に(編組)バレルを接続する構成とすることもできる。また、上記編組バレルの構成及びそれを用いた端子圧着構造と類似の構成は、外導体端子のシールド導体用のバレルのみならず、外導体端子のインシュレーションバレル、さらには内導体端子のワイヤバレルにも適用することが可能である。