特許第5895845号(P5895845)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5895845
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】アダマンタンポリオールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/48 20060101AFI20160317BHJP
   C07C 35/37 20060101ALI20160317BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20160317BHJP
【FI】
   C07C29/48
   C07C35/37
   !C07B61/00 300
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-545686(P2012-545686)
(86)(22)【出願日】2011年11月15日
(86)【国際出願番号】JP2011076228
(87)【国際公開番号】WO2012070423
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2014年11月4日
(31)【優先権主張番号】特願2010-259910(P2010-259910)
(32)【優先日】2010年11月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大内 貴
(72)【発明者】
【氏名】西村 嘉男
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−104536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 29/48
C07C 35/37
C07B 61/00
B01J 27/13
B01J 38/00
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるアダマンタンを、水/有機溶媒2相系中でルテニウム化合物および次亜塩素酸塩と反応させてアダマンタンポリオールを製造する方法において、
反応系中にリン酸カルシウム類及びハイドロタルサイトからなる群より選ばれる1種以上の無機系吸着剤を添加する工程、及び反応混合液に、アルカリを添加し、前記ルテニウム化合物を前記無機系吸着剤とともに分離し、分離された該ルテニウム化合物及び該無機系吸着剤を次の反応に再利用する工程を有することを特徴とするアダマンタンポリオールの製造方法。
【化1】
(式中、置換基Rnは、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、またはハロゲン基を示し、nは0〜13の整数である。)
【請求項2】
前記無機系吸着剤を、反応器に予め添加しておく、あるいは、反応終了直前に添加する
、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記アルカリを、反応水相のpHが7以上になる様に添加する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記リン酸カルシウム類がリン酸三カルシウムである請求項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記リン酸カルシウムがヒドロキシアパタイトである請求項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高機能性ポリマー、合成潤滑油や可塑剤等の中間原料、あるいは医農薬等の有機薬品の中間体として有用なアダマンタンポリオールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アダマンタンポリオール(アダマンタンジオール、アダマンタントリオール等)の製法としては、アダマンタン類を水/有機溶媒2相系中で、ルテニウム化合物及び次亜塩素酸塩と反応させる方法がある(特許文献1〜3参照)。しかし、ルテニウム化合物は高価であるため、回収し再利用する必要がある。ここで、ルテニウムは様々な価数をとり得るため単一の化合物として回収することは困難で、その回収率が低いという問題があった。
【0003】
この問題点を解決するため、反応後の溶液に酸化剤を添加してルテニウムを高酸化状態とした後、有機相に移して回収する方法(特許文献4参照)、ルテニウム含有原料をアルカリ水酸化物と混合し、酸化剤と反応させてルテニウムを抽出し、さらに低級アルコールにより還元することで回収する方法(特許文献5参照)、ルテニウム含有原料をアルカリで溶融後、酸化剤を加えて浸出させ、湿式還元し、酸洗浄後に回収する方法(特許文献6参照)がある。
【0004】
しかし、これらいずれの方法でもルテニウム化合物を再度酸化反応の触媒として用いるためには煩雑な工程を必要とし、還元剤等を用いる必要があるためコスト的にも問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−219646号公報
【特許文献2】特開2001−335519号公報
【特許文献3】特開2004−339105号公報
【特許文献4】特開2001−031603号公報
【特許文献5】特開2003−201526号公報
【特許文献6】特開2009−057611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アダマンタンポリオールを製造する方法において、触媒であるルテニウム化合物を高収率且つ容易に分離回収して次反応に供することができる該製法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、アダマンタン類を水/有機溶媒2相系中で、ルテニウム化合物及び次亜塩素酸塩と反応させる方法において、反応系中に無機系吸着剤を添加させることにより、ルテニウム化合物を容易に回収でき、再度酸化反応に供することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、一般式(1)で表されるアダマンタンを、水/有機溶媒2相系中でルテニウム化合物および次亜塩素酸塩と反応させてアダマンタンポリオールを製造する方法において、反応系中に無機系吸着剤を添加する工程、及び反応混合液に、アルカリを添加し、前記ルテニウム化合物を前記無機系吸着剤とともに分離し、分離された該ルテニウム化合物及び該無機系吸着剤を次の反応に再利用する工程を有することを特徴とするアダマンタンポリオールの製造方法に関する。
【0009】
【化1】
(式中、置換基Rnは、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、またはハロゲン基を示し、nは0〜13の整数である。)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、酸化反応の触媒となる高価なルテニウム化合物を簡便に高収率で回収でき、さらにその再活性化を容易にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明では、上記一般式(1)で表されるアダマンタンが用いられる。 一般式(1)において、置換基Rnは、それぞれ独立に、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル基等の炭素数1〜10のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;シクロヘキシル、シクロオクチル基等のシクロアルキル基;水酸基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ基等の炭素数2〜6のアシルオキシ基;またはフルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等のハロゲン基を示す。その中でも置換基Rnは炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。
【0012】
本発明で使用されるルテニウム化合物は、ルテニウム金属、二酸化ルテニウム、四酸化ルテニウム、水酸化ルテニウム、塩化ルテニウム、臭化ルテニウム、ヨウ化ルテニウム、硫酸ルテニウムまたはそれらの水和物等を単独または混合物で用いることができる。ルテニウム化合物は、高価なルテニウムの使用量を抑制する観点から原料のアダマンタン類1モルに対して0.005〜2.0モルが好ましく、特に0.01〜0.4モルの割合が副反応を抑制する観点からより好ましい。
【0013】
本発明に用いる次亜塩素酸塩類としては、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。次亜塩素酸塩類は、6〜35重量%の水溶液として使用する。次亜塩素酸塩類の濃度がこの範囲より低いと水相の量が多くなり、生成物の水相からの抽出効率が低下し、廃液処理にも負担をかける。一方、次亜塩素酸塩類の濃度がこの範囲より高いと副反応が起こりやすくなり、アダマンタンポリオールの収率が低下する。高効率かつ高収率でアダマンタンポリオールを得るためには、次亜塩素酸塩類の添加量は、アダマンタン類1モルに対し、0.5〜5.0モルが好ましく、より好ましくは1.0〜3.0モルの範囲とする。
【0014】
本発明に用いる有機溶媒は、高酸化状態のルテニウムに対して溶解性が高く、且つ耐酸化性に優れた不活性な溶媒を使用することが好ましい。高酸化状態のルテニウムに対して溶解性が低いと反応速度が低下し、反応時間が長時間化することになる。また、耐酸化性に劣る溶媒の場合、溶媒自体の分解や副生成物が生成したりするため不適である。好適な有機溶媒の例としては、例えばジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1,2−トリクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、1,6−ジクロロヘキサン等のハロゲン化アルキル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピルなどのエステル類;ヘキサクロロベンゼン、1,1,1−三フッ化トルエンなどのハロゲン化アリール類;ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類等の溶媒を挙げることができる。これらの溶媒は、単独でも2種以上の溶媒を混合した系でも使用できる。溶媒は、原料として用いるアダマンタン類1質量部に対して、0.1〜50質量部が好ましく、より好ましくは1〜30質量部の割合で使用する。
【0015】
本発明に用いる無機系吸着剤は、吸着能又はイオン交換能を有すること及び、反応系に共存させるためルテニウム化合物による酸化を受けない無機系吸着剤であれば特に制限はないが、リン酸カルシウム類、タルサイト類および非晶性アルミニウム珪酸塩類からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
リン酸カルシウムとしては、ヒドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、クロロアパタイト、炭酸ヒドロキシアパタイト、炭酸フルオロアパタイト、リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸三カルシウム等が挙げられる。また、タルサイトとしては、ハイドロタルサイトが挙げられ、非晶性アルミニウム珪酸塩としてはイモゴライト、アロフェロン等が例示され、これらを混合して使用することができる。
【0016】
リン酸カルシウムについては、例示した中でもルテニウム化合物の吸着能力や入手のし易さの観点から、特にリン酸三カルシウムやヒドロキシアパタイトが好ましい。タルサイトについても上記と同様の観点から、Mg−Al型又はLi−Al型のハイドロタルサイトを用いることが好ましい。
【0017】
アロフェロンやイモゴライトの様な非晶性アルミニウム珪酸塩は、珪酸塩のうち一部がアルミニウムに置換されたもので、一部が他の金属と置き換わっていても良い。
【0018】
無機系吸着剤の添加量は、ルテニウム化合物1質量部に対して、好ましくは0.1質量部〜100質量部の範囲で添加することができ、更に0.5質量部〜20質量部の範囲で用いることが好ましい。無機系吸着剤の添加量が適正な場合、反応に影響を与えることなくルテニウム化合物を容易に回収できるが、添加量が少な過ぎる場合、ルテニウム化合物の損失を抑制できず、反対に過剰量添加した場合、反応速度の低下や副反応などの影響を与え、経済的にも問題が生じる。また、無機系吸着剤を添加するタイミングは、特に制限されることなくいつでもよく、反応器に予め添加しておいても良いし、反応終了直前に添加しても良い。
【0019】
本発明における酸化反応の一態様としては、反応器に反応溶媒及び原料を仕込み、更に、ルテニウム触媒と無機系吸着剤を加える。最後に温度を昇温しながら酸化剤である次亜塩素酸塩とpH調整用酸を添加し反応を開始する。反応方式は、操作、原料取扱い、反応温度制御などの観点からバッチ式が好ましいが、反応溶媒に基質を溶解した反応液と、触媒及び無機系吸着剤を含んだ次亜塩素酸塩水溶液を予め調整し、例えばスタティックミキサーの様な静止型混合器(ラインミキサー)を通す流通式で実施しても良い。酸化反応の条件は、常圧下、反応温度は10〜100℃、好ましくは次亜塩素酸塩の自己分解を防ぐため40〜70℃の範囲で実施される。また、反応時間は100〜1500分が好ましい。使用する反応器は、特に制限はなく公知の攪拌機付き反応器で行うことができる。また、反応器の材質は、ルテニウム化合物に対して耐腐食製のある材質が好ましく、グラスライニング製やテフロンライニング製が例示される。
【0020】
本発明の酸化反応は、水相のpH調整が重要であり、3〜10の範囲で任意に選ぶことができる。特に、反応終了後にルテニウムを効率良く回収するためにpHが6以下の弱酸側で反応を行うことが好ましい。また、反応中のpHを調整するために酸を添加することができる。添加する酸としては、水溶性の酸であるギ酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸のいずれでも良いが、生成物の精製から考えると無機酸が好ましく、反応に影響を与える可能性が低い塩酸および硫酸が更に好ましい。用いる酸の濃度に特に制限はない。
【0021】
反応終了後、反応混合液にアルカリを添加し、反応水相のpHを7以上にすることによりルテニウム化合物を還元し、無機系吸着剤と共に黒色の結晶として沈殿させて、濾過等の固液分離により回収する。この固液分離の方法は、公知の方法を用いることができ、濾過、沈降分離、遠心分離などが選択できる。また、分離した触媒及び無機系吸着剤を水や溶媒により洗浄しても良い。この様にして分離したルテニウム化合物と無機系吸着剤は、そのまま次の反応に再利用することができる。
【0022】
ルテニウム化合物を還元するために添加するアルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、もしくは水酸化バリウム等の金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム等の金属炭酸塩、又はテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシドもしくはテトラブチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドが挙げられる。この中でも水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。添加するアルカリの濃度は特に制限はなく、固体のまま添加しても、予めアルカリ水溶液を調製し水溶液を連続的又は間欠的に添加してもよい。添加量は、反応水相のpHが7以上になる様に添加する。
【0023】
触媒分離後の反応混合液中のアダマンタンポリオールは、抽出、洗浄、濾過、濃縮、蒸留、晶析、再結晶等の公知方法で分離、精製することができる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。水相中に含まれるアダマンタンポリオールの生成量については、FID検出器を有したガスクロマトグラフィーにて分析を行った。また、水相中に含まれるルテニウム化合物の定量については、試料を塩酸で溶解させることで均一溶液とした後、ICP発光分析にて行った。なお、ルテニウム回収効率は、固液分離後、廃水中に流出したルテニウム量を測定し、その濃度で求めた。
【0025】
(実施例1)
マグネット誘導式攪拌装置、温度計、ジムロート冷却器、pH電極を備えた容量2Lのジャケット付きガラス製セパラブルフラスコに、アダマンタン54g、無機系吸着剤としてリン酸三カルシウム(和光純薬工業製化学用、以下「TCP」と省略)を3.6g、塩化ルテニウム・n水和物2.7g(エヌイーケムキャット製、Ru含有量は43%、即ち約1.2gがRu)、酢酸エチル415ml、水400mlを仕込み、12重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液1200gを滴下した。この時、反応液のpHが3.5となるように10重量%硫酸を同時に滴下した。次亜塩素酸ナトリウムの滴下に要した時間はおよそ12時間であった。また、次亜塩素酸ナトリウム滴下中は、温度が55℃±5℃となるように調整を行った。反応終了後、反応液のpHが7になるまで25%水酸化ナトリウム溶液を滴下した。次いで反応液を静置し、酢酸エチルを主成分とする有機相を留去し、ルテニウム化合物(触媒)およびアダマンタンポリオール類を含む水相を得た。この水相をガスクロマトグラフィーで分析した結果、1,3,5−アダマンタントリオールの収率は64%であった。更に、得られた水相を吸引濾過によりルテニウム触媒を無機系吸着剤と共に分離し、母液としてアダマンタントリオール類を含有する水相1800gを得た。この水相中のルテニウム濃度をICP発光分析により定量したところ5.0ppmであった。
【0026】
(実施例2)
リン酸三カルシウムと塩化ルテニウム・n水和物を新しく添加する代わりに実施例1で濾別したルテニウム触媒を吸着したリン酸三カルシウムをそのまま使用した以外は、実施例1と同様の操作を実施した。実施例1と同様に水相をガスクロマトグラフィーで分析した結果、1,3,5−アダマンタントリオールは収率66%であった。得られた水相中のルテニウム濃度をICP発光分析により定量したところ3.7ppmであった。結果を表1に記載した。
【0027】
(実施例3)
実施例1で用いたリン酸三カルシウムの代わりにヒドロキシアパタイト(和光純薬製生体材料研究用、以下「HAP」と省略)3.6gを添加した以外は、実施例1と同様の操作を実施した。実施例1と同様に水相をガスクロマトグラフィーで分析した結果、1,3,5−アダマンタントリオールは収率66%であった。得られた水相中のルテニウム濃度をICP発光分析により定量したところ2.6ppmであった。結果を表1に記載した。
【0028】
(実施例4)
ヒドロキシアパタイトと塩化ルテニウム・n水和物を新しく添加する代わりに実施例3で濾別したルテニウム触媒を吸着したヒドロキシアパタイトをそのまま使用した以外は、実施例3と同様の操作を実施した。実施例3と同様に水相をガスクロマトグラフィーで分析した結果、1,3,5−アダマンタントリオールは収率66%であった。得られた水相中のルテニウム濃度をICP発光分析により定量したところ4.2ppmであった。結果を表1に記載した。
【0029】
(実施例5)
実施例1で用いたリン酸三カルシウムの代わりにハイドロタルサイト(和光純薬製、以下「HT」と省略)1.8gを添加した以外は、実施例1と同様の操作を実施した。実施例1と同様に水相をガスクロマトグラフィーで分析した結果、1,3,5−アダマンタントリオールは収率66%であった。得られた水相中のルテニウム濃度をICP発光分析により定量したところ9.5ppmであった。
【0030】
(比較例1)
実施例1においてリン酸三カルシウムを使用しない以外は、実施例1と同様の操作を実施した。実施例1と同様に水相をガスクロマトグラフィーで分析した結果1,3,5−アダマンタントリオールは収率64%であったが、得られた水相中のルテニウム濃度をICP発光分析で定量したところ100ppmであった。
【0031】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明により、アダマンタンポリオールを製造する際に、高価なルテニウム化合物を高回収率で分離回収でき、高機能性ポリマーの中間原料や医農薬等の有機薬品の中間体を安価に製造することができる。