【実施例1】
【0028】
本発明の実施例1は、多成分物質等の評価対象、例えば多成分薬剤のFP作成方法、作成プログラム、作成装置、及びFPである。
【0029】
多成分薬剤は、複数の有効化学成分を含有する薬剤と定義され、限定はされないが、生薬、生薬の組合せ、それらの抽出物、漢方薬等が含まれる。また剤形も特に限定されず、例えば、第15改正日本薬局方の製剤総則で規定されている液剤、エキス剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、懸濁剤・乳剤、散剤、酒精剤、錠剤、浸剤・煎剤、チンキ剤、トローチ剤、芳香水剤、流エキス剤等が含まれる。多成分物質としては、薬剤以外のものも含まれる。
【0030】
漢方薬の具体例は、医療用漢方製剤148処方「使用上の注意」の業界統一と自主改訂、一般用漢方処方の手引き(1978年)に記載されている。
【0031】
多成分薬剤の評価では、評価対象薬剤が正常品と定めた複数の薬剤と同等であるかどうかを評価するため、まず、評価対象薬剤の三次元クロマトグラム・データ(以下、3Dクロマト)からその薬剤特有の情報を抽出した対象FPを作成する。
【0032】
次に、対象FPの各ピークを、全基準FPをピーク帰属処理し作成した全基準FPのピーク対応データ(以下、基準群FP)にFP帰属し、ピーク特徴量を得る。
【0033】
次に、基準群FPのピークと帰属した対象FPのピーク(以下、対象FP帰属ピーク)の同等性をMT法で評価する。最後に、得られた評価値(以下、MD値)と予め設定しておいた判定値(MD値の上限値)を比較し、評価対象薬剤が正常品と同等であるかどうかを判定する。
【0034】
なお、3Dクロマトは、評価対象となる多成分物質である多成分薬剤のHPLCクロマトグラム・データ(以下、クロマト)であり、UVスペクトルを含んでいる。
【0035】
FPとは、特定の波長で検出されたピークにおけるシグナル強度(高さ)の極大値又は面積値(以下、ピーク)とそのピークの出現時間(以下、リテンション・タイム)、とで構成するフィンガー・プリント・データである。
【0036】
対象FPは、評価対象である漢方薬の三次元クロマトグラム・データである3Dクロマトから、特定の検出波長における複数のピークとそのリテンション・タイムならびにUVスペクトルを抽出したものである。
【0037】
基準FPは、対象FPに対応しており、正常品と定めた多成分物質である多成分薬剤としての漢方薬のFPである。
[多成分薬剤の評価装置]
図1は、多成分薬剤の評価装置のブロック図、
図2は、多成分薬剤の評価手順を示すブロック図、
図3は、3Dクロマトから作成したFPの説明図、
図4(A)は、薬剤A、(B)は、薬剤B、(C)は、薬剤CのFPである。
【0038】
図1、
図2のように、パターンの評価装置としての多成分薬剤の評価装置1は、パターン取得部としてのFP作成部3と、基準FP選定部5と、ピーク・パターン作成部7と、ピーク帰属部9と、評価部11とを備えている。この多成分薬剤の評価装置1は、コンピュータで構成され、図示はしないが、CPU、ROM、RAMなどを備えている。
【0039】
本実施例において、FP作成部3と、基準FP選定部5と、ピーク・パターン作成部7と、ピーク帰属部9と、評価部11とは、一つのコンピュータで構成している。但し、FP作成部3と、基準FP選定部5と、ピーク・パターン作成部7と、ピーク帰属部9と、評価部11とを、それぞれ別々のコンピュータで構成し、或いはFP作成部3及び基準FP選定部5とピーク・パターン作成部7及びピーク帰属部9と評価部11とを別々のコンピュータで構成することなどもできる。
【0040】
FP作成部3は、多成分薬剤の評価装置1の一部として構成されたFP作成装置に備えられ、コンピュータにインストールされたFP作成プログラムにより、例えば、漢方薬13(
図2参照)のクロマトとして
図3のように三次元クロマトグラム・データである3Dクロマト15から、特定の検出波長における複数のピークとそのリテンション・タイムならびにUVスペクトルを抽出した対象FP17(以下単に、「FP17」ということもある。)を作成する機能部である。なお、FP作成プログラムは、これを記録したFP作成プログラム記録媒体を用い、コンピュータで構成されたFP作成部3にこれを読み取らせることで、FP作成を実現させることもできる。
【0041】
このFP17は、3Dクロマト15と同様に三次元の情報(ピーク、リテンション・タイム及びUVスペクトル)で構成している。
【0042】
このため、FP17は、その薬剤特有の情報をそのまま継承したデータである。それにも係らず、データ容量は約1/70に圧縮されているため、3Dクロマト15に比較して、処理すべき情報量を大幅に減少させることができ処理速度を速めることができる。
【0043】
3Dクロマト15は、漢方薬13(
図2参照)に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を適用した結果である。この3Dクロマト15は、各成分の移動速度として現れ、それを特定時間における移動距離として表し、或いはカラム末端から時系列に現れる様をチャートに表したものである。HPLCにおいては、時間軸に対する検出器応答をプロットしたもので、ピークの出現時間を保持時間(リテンション・タイム)と呼んでいる。
【0044】
検出器としては、特に限定されないが、光学的性質を利用した吸光度検出器(Absorbance Detector) が使用され、ピークは、紫外線(UV)の検出波長に応じたシグナル強度として三次元的に得られたものである。光学的性質を利用したものとしては、透過率検出器(Transmittance Detector)を用いることもできる。
【0045】
検出波長に限定はなく、好ましくは150nm〜900nmの範囲であり、特に好ましくは200nm〜400nmの紫外可視吸領域、更に好ましくは200nm〜300nmから選ばれた複数の波長である。
【0046】
そして、3Dクロマト15は、少なくとも、漢方薬の番号(ロット番号)、リテンション・タイム、検出波長、及びピークをデータとして有するものである。
【0047】
なお、3Dクロマト15は、市販の装置によっても得ることができ、かかる市販の装置としては、Agilent1100システム等が挙げられる。また、クロマトグラフィーは、HPLCに限定されず、種々のものを採用することができる。
【0048】
3Dクロマト15は、
図2、
図3のようにx軸をリテンション・タイム、y軸を検出波長、z軸をシグナル強度として表示する。
【0049】
FP17は、少なくとも、漢方薬の番号(ロット番号)、リテンション・タイム、特定の波長におけるピーク、及びUVスペクトルをデータとして有するものである。
【0050】
FP17は、
図2、
図3のようにx軸をリテンション・タイム、y軸を特定の検出波長におけるピークとした二次元で表示するが、
図3のように1ピークで示すUVスペクトル25と同様なUVスペクトル情報をピークごとに有したデータである。 FP17を作成する特定の検出波長は、特に限定されず種々選択できる。但し、FP17には3Dクロマト中の全てのピークを含めることが情報を継承するという点において重要である。このため、本実施例1では検出波長を3Dクロマト中の全てのピークを含んでいる203nmとした。
【0051】
一方、単独の波長では全てのピークを含めることができないことがある。そのような場合は検出波長を複数とし、後述のように複数の波長を組み合わせて全てのピークを含んだFPを作成する。
【0052】
本実施例1では、ピークをシグナル強度(ピーク高さ)の極大値としたが、ピークとして面積値を採用することもできる。また、FPにUVスペクトルを含めず、x軸をリテンション・タイム、y軸を特定の検出波長におけるピークとした二次元の表示情報のみにすることも可能である。この場合は、FPを漢方薬の番号(ロット番号)、リテンション・タイムをデータとして有するクロマトとしての2Dクロマトから作成することもできる。
【0053】
図4(A)は、薬剤A、(B)は、薬剤B、(C)は、薬剤CのFPである。
【0054】
基準FP選定部5は、ピーク・パターン作成部7で用いる基準FPを、複数の基準FPから選定する機能部である。この基準FP選定部5は、対象FPのピーク帰属に適した多成分物質のFPを複数の基準FPから選定する。すなわち、対象FPの各ピークのピーク帰属を高い精度で行うため、
図5〜
図9のように対象FPと基準FP間でピークのリテンション・タイム・出現パターンの一致度を算出し、この一致度が最小となる基準FPを全基準FPから選定する。具体的には、後述する。ピーク・パターン作成部7は、
図10〜
図12のように対象FP33における帰属の対象となるピーク(以下、帰属対象ピーク)に対し、時間軸方向前後の少なくとも一方に存在するn本のピークを含めた計n+1本のピークで構成されるピーク・パターンを帰属対象ピークのピーク・パターンとして作成する機能部である。nは、自然数である。具体的には、後述する。
【0055】
なお、
図11では時間軸方向前後の少なくとも一方に存在する2本のピークを含めた計3本のピークで構成されるピーク・パターンを、
図12では時間軸方向前後の少なくとも一方に存在する4本のピークを含めた計5本のピークで構成されるピーク・パターンを示す。
【0056】
また、ピーク・パターン作成部7は、
図13〜
図22(後述)のように基準FP55において帰属対象ピークのリテンション・タイムとの差が設定した範囲(許容幅)内の全てのピーク(以下、帰属候補ピーク)に対し、時間軸方向前後の少なくとも一方に存在するn本のピークを含めた計n+1本のピークで構成されるピーク・パターンを帰属候補ピークのピーク・パターンとして作成する機能部である。なお、
図15〜
図18(後述)では時間軸方向前後の少なくとも一方に存在する2本のピークを含めた計3本のピークで構成されるピーク・パターンを示す。
図19〜
図22(後述)では時間軸方向前後の少なくとも一方に存在する4本のピークを含めた計5本のピークで構成されるピーク・パターンを示す。
【0057】
許容幅に限定はなく、精度と効率の点から0.5分〜2分が好ましい。実施例1では、1分とした。
【0058】
さらに、ピーク・パターン作成部7では、対象FP33と基準FP55のピーク数に違いがある(つまり、どちらか一方に存在しないピークがある)場合に対しても柔軟に対応できるようにする。このため、
図23〜
図61(後述)のように、帰属対象ピークならびに帰属候補ピークの両方でピーク・パターンを構成するピーク(以下、ピーク・パターン構成ピーク)を変化させて網羅的にピーク・パターンを作成する。なお、
図23〜
図61では時間軸方向前後の少なくとも一方に存在する2本のピークを含めた計3本のピークで構成されるピーク・パターンの場合について示す。
【0059】
ピーク帰属部9は、対象FP、基準FPそれぞれのピーク・パターンを比較し対応するピークを特定する機能部である。実施例では、帰属対象ピークのピーク・パターンと帰属候補ピークのピーク・パターンとの一致度及びUVスペクトルの一致度を算出して対応するピークを特定する。具体的には、後述する。
【0060】
また、この2つの一致度を統合した帰属候補ピークの一致度を算出し、この一致度に基づき、対象FP33の各ピークを基準FP55の各ピークに帰属する機能部である。
【0061】
さらに、対象FP33と基準FP55の帰属結果に基づき、最終的に
図68、
図69(後述)のように対象FPの各ピークを基準群FPの各ピークに帰属する機能部である。
【0062】
ピーク帰属部9において、ピーク・パターンの一致度は、
図62〜
図64(後述)のように帰属対象ピークと帰属候補ピークのピーク・パターン間の対応するピーク及びリテンション・タイムの差をもとに算出する。また、UVスペクトルの一致度は、
図65、
図66(後述)のように帰属対象ピーク45のUVスペクトル107と帰属候補ピーク67のUVスペクトル111の各波長における吸光度の差をもとに算出する。さらに、
図67(後述)のようにこれら2つの一致度を乗じて帰属候補ピーク67の一致度を算出する。
【0063】
評価部11は、ピーク帰属部9で特定されて帰属したピークと前記複数の基準FPのピークとを比較評価する機能部である。実施例では、MT法で対象FP帰属ピーク21と基準群FP19との同等性を評価する機能部である。
【0064】
MT法は、品質工学で一般に知られている計算手法を意味する。例えば、「品質工学の数理」日本規格協会発行(2000)第136−138頁、品質工学応用講座「化学・薬学・生物学の技術開発」日本規格協会編(1999)第454−456頁及び品質工学
11(5),78−84(2003)、入門 MTシステム(2008)に記載がある。
【0065】
また一般に市販されているMT法プログラムソフトも使用できる。市販のMT法プログラムソフトとしては、アングルトライ(株)のATMTS; (財)日本規格協会のTM−ANOVA;(株)オーケンのMT法 for windows等が挙げられる。
【0066】
評価部11は、対象FP17のうち、漢方薬のロット番号と、リテンション・タイム又はUV検出波長の一方とに対して、MT法における変数軸を割り振り、ピークをMT法における特徴量とする。
【0067】
変数軸の割り振りには特に限定はないが、MT法におけるいわゆる項目軸にリテンション・タイムを割り振り、いわゆる番号列軸に多成分系薬剤の番号を割り振り、MT法におけるいわゆる特徴量にピークを割り振ることが好ましい。
【0068】
ここで、上記項目軸と番号列軸は、以下のように定義される。すなわちMT法においては、データセットXijについて、平均値mjと標準偏差σjを求め、Xijを規準化した値であるxij=(Xij−m
j)/σ
jから、iとjの相関係数rを求めて、単位空間やマハラノビスの距離を得る。この時、「平均値mjと標準偏差σjは、項目軸の値ごとに、番号列軸の値を変化させて求める」というように項目軸と番号列軸とは定義される。
【0069】
軸が割り振られたデータと特徴量とから、MT法を用いて、基準点と単位量(以下、「単位空間」と略記することがある)を得る。ここで、基準点、単位量及び単位空間は、上記MT法の文献の記載に従い定義される。
【0070】
MT法により、評価すべき薬剤の単位空間との相違の程度を表す値としてMD値を得る。ここでMD値は、MT法の文献の説明と同様に定義され、またMD値は、文献に記載の方法で求められる。
【0071】
このようにして得られたMD値を用いて、評価すべき薬剤は、正常品として定めた複数の薬剤からの相違の程度を判定し評価することができる。
【0072】
例えば、
図70〜
図74の各対象FPを前記のように帰属処理することで、上記MT法によりMD値(MD値:0.25、2.99等)を求めることができる。
【0073】
このMD値を正常品のMD値に対して評価する場合、正常品と定めた複数の薬剤で同様にMD値を求める。この正常品のMD値から閾値を設定し、
図2の評価部11の評価結果23に示すように評価対象薬剤のMD値をプロットし、正常品か非正常品かの判定を行うことができる。
図2の評価部11の評価結果23では、例えばMD値10以下を正常品としている。
【0074】
なお、評価部11は、対象FP帰属ピーク21と基準群FP19の同等性を比較評価できれば良いため、MT法以外のパターン認識手法等を適用することも可能である。
[ピーク・パターン処理の動作原理]
図5〜
図67は、前記基準FP選定部5、ピーク・パターン作成部7、ピーク帰属部9、及び評価部11の動作原理を説明するものである。
【0075】
図5〜
図9は、基準FP選定部5に係る対象FPと基準FPとのリテンション・タイム・出現パターンの一致度について説明した図である。
図5は、対象FP及び基準FPのリテンション・タイムを示す図、
図6は、対象FPのリテンション・タイム・出現パターンを示す図、
図7は、基準FPのリテンション・タイム・出現パターンを示す図である。
図8は、対象FPと基準FPのリテンション・タイム・出現距離の一致数を示す図、
図9は、対象FPと基準FPのリテンション・タイム・出現パターンの一致度を示す図である。
【0076】
図5では、対象FP33及び基準FP55それぞれのリテンション・タイムを示す。
図6、
図7では、対象FP33及び基準FP55それぞれのリテンション・タイムから全てのリテンション・タイム間距離を算出し、それら距離を表形式にまとめたリテンション・タイム・出現パターンを示す。
図8では、これらの出現パターンからリテンション・タイム・出現距離の一致数を算出し、それら一致数を表形式にまとめたリテンション・タイム・出現距離の一致数を示す。
図9では、この一致数をもとにリテンション・タイム・出現パターンの一致度を算出し、それら一致度を表形式にまとめたリテンション・タイム・出現パターンの一致度を示す。
図10〜
図12は、ピーク・パターン作成部7に係る帰属対象ピークとその周辺ピークで作成したピーク・パターンについて説明した図である。
図10は、対象FPの帰属対象ピークを示す図、
図11は、周辺ピーク2本を含めたピーク3本で作成したピーク・パターンについて、
図12は、周辺ピーク4本を含めたピーク5本で作成したピーク・パターンについて説明した図である。
【0077】
図13、
図14は、ピーク・パターン作成部7に係る帰属対象ピークと帰属候補ピークの関係について説明し、
図13は、帰属対象ピークの許容幅を示す図、
図14は、帰属対象ピークに対する基準FPの帰属候補ピークを示す図である。
【0078】
図15〜
図18は、ピーク・パターン作成部7に係るピーク3本で作成した帰属対象ピーク及び帰属候補ピークのピーク・パターン例である。
図15は、帰属対象ピークと帰属候補ピークのピーク3本によるピーク・パターン図、
図16は、帰属対象ピークと別な帰属候補ピークのピーク3本によるピーク・パターン図、
図17は、帰属対象ピークと別な帰属候補ピークのピーク3本によるピーク・パターン図、
図18は、帰属対象ピークと別な帰属候補ピークのピーク3本によるピーク・パターン図である。
【0079】
図19〜
図22は、ピーク・パターン作成部7に係るピーク5本で作成した帰属対象ピーク及び帰属候補ピークのピーク・パターン図である。
【0080】
図23〜
図61は、ピーク・パターン作成部7に係る帰属対象ピーク及び帰属候補ピークのピーク・パターンを網羅的に作成し、比較する網羅的比較の原理を説明した図である。
【0081】
図62、
図63は、ピーク帰属部9に係るピーク3本で作成したピーク・パターンの一致度の算出方法について説明した図である。
【0082】
図64は、ピーク帰属部9に係るピーク5本で作成したピーク・パターンの一致度の算出方法について説明した図である。
【0083】
図65は、ピーク帰属部9に係る帰属対象ピーク45及び帰属候補ピーク67のUVスペクトル107及び111を示した図である。
【0084】
図66は、ピーク帰属部9に係る帰属対象ピーク45のUVスペクトル107と帰属候補ピーク67のUVスペクトル111の一致度について説明した図である。
【0085】
図67は、ピーク帰属部9に係る帰属対象ピーク45と帰属候補ピーク67のピーク・パターンの一致度とUVスペクトルの一致度から算出する帰属候補ピークの一致度について説明した図である。
【0086】
図68は、ピーク帰属部9に係る対象FP17における各ピークの基準群FP19への帰属を説明した図である。
【0087】
図69は、ピーク帰属部9に係る対象FP17の各ピークが基準群FP19に帰属された状況を示す対象FPピーク特徴量21を説明した図である。
【0088】
図70〜
図74は、評価部11に係る各種対象FPとその評価値(MD値)を示した図である。
【0089】
[基準FPの選定]
前記基準FP選定部5の機能を、
図5〜
図9を用いてさらに説明する。
【0090】
図5は、対象FP及び基準FPのリテンション・タイムを示す図、
図6は、対象FPのリテンション・タイム・出現パターンを示す図、
図7は、基準FPのリテンション・タイム・出現パターンを示す図である。
図8は、対象FPと基準FPのリテンション・タイム・出現距離の一致数を示す図、
図9は、対象FPと基準FPのリテンション・タイム・出現パターンの一致度を示す図である。
【0091】
図5では、対象FP33及び基準FP55それぞれのリテンション・タイムを示す。
図6、
図7では、対象FP33及び基準FP55それぞれのリテンション・タイムから全てのリテンション・タイム間距離を算出し、それら距離を表形式にまとめたリテンション・タイム・出現パターンを示す。
図8では、これらの出現パターンからリテンション・タイム・出現距離の一致数を算出し、それら一致数を表形式にまとめたリテンション・タイム・出現距離の一致数を示す。
図9では、この一致数をもとにリテンション・タイム・出現パターンの一致度を算出し、それら一致度を表形式にまとめたリテンション・タイム・出現パターンの一致度を示す。
【0092】
対象FP33のピーク帰属処理において、対象FP33とできるだけFPパターンが類似した基準FPで対象FP33の各ピークを帰属する。この対象FP33に類似した基準FPを複数の基準FPから選定することが精度の高い帰属を行う上で重要なポイントである。
【0093】
そこで、対象FP33のFPパターンとの類似性を客観的かつ簡易的に評価する方法として、リテンション・タイム・出現パターンの一致度によりFPパターンの類似性を評価する。
【0094】
例えば、対象FP33及び基準FP55のリテンション・タイムが
図5のような場合、対象FP33及び基準FP55それぞれのリテンション・タイム・出現パターンは、
図6、
図7のようになる。
図6、
図7では、上段の対象FP33及び基準FP55に対し、下段の図表のように、各セルの値がリテンション・タイム間距離で構成された表形式のパターンとして作成している。
【0095】
図6において、対象FP33の各ピーク(35、37、39、41、43、45、47、49、51、53)のリテンション・タイムは、(10.2)、(10.5)、(10.8)、(11.1)、(11.6)、(12.1)、(12.8)、(13.1)、(13.6)、(14.0)となっている。
【0096】
したがって、ピーク35及びピーク37間のリテンション・タイム間距離は、(10.5)−(10.2)=(0.3)となる。同様に、ピーク35及びピーク39間は、(0.6)、ピーク37及びピーク39間は、(0.3)などとなる。以下、同様であり、
図6の下段図表の対象FP出現パターン79となる。
【0097】
図7において、基準FP55の各ピーク(57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77)のリテンション・タイムは、(10.1)、(10.4)、(10.7)、(11.1)、(11.7)、(12.3)、(12.7)、(13.1)、(13.6)、(14.1)、(14.4)となっている。
【0098】
したがって、同様にリテンション・タイム間距離は、
図7の下段図表の基準FP出現パターン81となる。
【0099】
この
図6、
図7ようにパターン化した各ピークを総当たりで比較し一致数を求める。例えば、
図6下段図表の対象FP出現パターン79の各セルの値と
図7下段図表の基準FP出現パターン81の各セルの値とを比較し、
図8のように一致数83を得る。
【0100】
すなわち、対象FP33と基準FP55のリテンション・タイム・出現パターンの全てのリテンション・タイム間距離を行単位で順番に総当たりで比較し、設定した範囲内で距離が一致した数を算出した。
【0101】
例えば、
図6、
図7の対象及び基準FPリテンション・タイム・出現パターン79、81の1行を比較すると、一致数は7個である。この7個の一致数が、
図8の対象及び基準FPリテンション・タイム・出現パターンの1行目に書き込まれる。
図6、
図7中のその他の行についても同様であり、対象FPリテンション・タイム・出現パターンの1行〜9行までと、基準FPリテンション・タイム・出現パターンの1行〜10行までとを総当たりで比較し、それぞれ一致数が得られる。
【0102】
図8に結果を示した。この
図8において、丸で囲まれた左端の7の数値は、対象及び基準FPリテンション・タイム・出現パターンの1行目を比較した結果であり、その隣の7の数値は、対象FPリテンション・タイム・出現パターンの1行目と基準FPリテンション・タイム・出現パターンの2行目とを比較した結果である。設定の範囲に限定はなく、好ましくは0.05分〜0.2分の範囲である。実施例1は、0.1分とした。
【0103】
リテンション・タイム・出現パターンの一致度をRPとすると、対象FP33のf行目のリテンション・タイム・出現パターンと基準FP55のg行目のリテンション・タイム・出現パターンの一致度(RP
fg)は、Tanimoto係数を用いて、RP
fg = {1−(m/(a+b−m))}×(a−m+1)として算出する。
【0104】
なお、式中aは対象FP33のピーク数(対象FPピーク数)、bは基準FP55のピーク数(基準FPピーク数)、mは出現距離の一致数である(
図8参照)。
図8の一致数83をもとに前記式により各リテンション・タイム・出現パターンの一致度(RP)を算出した(
図9の一致度85参照)。
【0105】
これらRPの最小値(RP_min)を対象FP33と基準FP55とのリテンション・タイム・出現パターンの一致度とする。
図9では、(0.50)が対象FP33の基準FPに対する一致度となる。
【0106】
この一致度を全ての基準FPについて算出し、最も小さい一致度の基準FPが選定され、この基準FPに対して対象FPのピーク帰属を行わせる。
【0107】
基準FP選定部5は、対象FP33及び基準FP55を、ピーク高さ比でパターン化することもできる。
【0108】
ピーク高さ比でパターン化した各ピークを総当たりで比較し、設定した範囲内で高さ比が一致した数を算出する。この算出により
図8と同様に一致数を得ることができる。
【0109】
なお、ピーク高さ比でパターン化する場合は、1行中に、同じような値が複数存在するケースがあり、これらを複数回カウントしないようにしなければならない。
【0110】
一致度は、Tanimoto係数を、「高さ比の一致数/(対象FPピーク数+基準FPピーク数−高さ比の一致数)」とし、(1−Tanimoto係数)が零に近いことで前記一致度を求めることができる。
【0111】
また、(1−Tanimoto係数)に、(対象FPピーク数−高さ比の一致数+1)の重み付けをし、「(1−Tanimoto係数)×(対象FPピーク数−出現距離又は高さ比の一致数+1」とし、重み付けにより対象FP33のピーク(35、37、・・・)がより多く一致している基準FPを選ぶことができる。
【0112】
[ピーク・パターンによる特徴量化]
前記ピーク・パターン作成部7及びピーク帰属部9の機能を、
図10〜
図69を用いてさらに説明する。
【0113】
図10のように帰属対象ピーク45を基準FP55のいずれかのピークに帰属するとき、何れのピークに帰属すべきか、ということになる。仮に、このピーク帰属を、ピーク、リテンション・タイム又はUVスペクトルのいずれかの情報のみで行ったとすると、これら3つの情報のいずれもが前記薬剤間誤差と分析誤差に起因する誤差を含んでいるため、単独情報によるピーク帰属では十分な精度は得られない。
【0114】
また、
図13、
図14のように帰属対象ピーク45と基準FP55の各ピーク間でリテンション・タイムのズレの許容幅を設定し、その許容幅内に存在する基準FP55のピークとUVスペクトル情報の2つの情報によるピーク帰属では、すべての情報を総合して帰属先を判定しているため、上記単独情報によるピーク帰属に比べ精度は向上する。
【0115】
しかし、3つの情報を使ったピーク帰属であったとしても、UVスペクトルの特性として、類似成分のUVスペクトルはほとんど同じとなってしまうため、帰属候補ピークに複数の類似成分が含まれている場合は、結局ピーク情報のみでの帰属となってしまい、十分な精度は得られない。そのため、より精度の高いピーク帰属を行うためには、これら3つの情報にプラスする情報が必要である。
【0116】
そこで、
図11、
図12のような周辺ピークの情報を含めたピーク・パターンを作成し、このピーク・パターンの比較によってピークを帰属することにした。
【0117】
周辺のピークを含めたピーク・パターンとすると、これまでの3つの情報に周辺情報がプラスされ、4つの情報によるピーク帰属が可能となり、より高い帰属精度が得られる。
【0118】
その結果として、一度の帰属処理で大量のピークを高精度かつ効率的に一斉帰属することができる。
【0119】
さらに、ピーク帰属で使用するデータを周辺情報を含めた4つの情報にすることで、既存のピーク帰属の際に設定する制約条件(ピーク定義など)も必要なくなった。
【0120】
図11では、帰属対象ピーク45対し、時間軸方向の双方に存在するピーク43、47を含めたピーク・パターン87を作成した。
【0121】
図12では、帰属対象ピーク45対し、時間軸方向の双方に存在するピーク41、43、47、49を含めたピーク・パターン97を作成した。
【0122】
図13、
図14では、帰属対象ピーク45と基準FP55の各ピーク間でリテンション・タイムのズレの許容幅を設定し、その許容幅内に存在する基準FP55のピークを帰属対象ピーク45に対応する候補ピーク(以下、帰属候補ピーク)とした。
【0123】
図15では、帰属対象ピーク45のピーク・パターン87と比較するピーク・パターンとして、帰属候補ピーク65に対し、時間軸方向前後の双方に存在するピーク63、67を含めたピーク・パターン89を作成した。
【0124】
図16〜
図18では、帰属対象ピーク45のピーク・パターン87と比較するピーク・パターンとして、別な帰属候補ピーク67、69、71に対し、それぞれ時間軸方向前後の双方に存在するピークを含めたピーク・パターン91、93、95を作成した。
【0125】
このピーク・パターンの比較をより高い精度で行わせるには、
図19〜
図22のように、対象FPならびに基準FPの両方で周辺のピーク数を増加させたピーク・パターンを作成することが肝要である。
【0126】
例えば、周辺のピーク4本を含めた計5本のピークによるピーク・パターンの比較にすると、より高い帰属精度が得られる。
【0127】
図19では、帰属対象ピーク45のピーク・パターン97と比較するピーク・パターンとして、帰属候補ピーク65に対し、時間軸方向の双方に存在するピーク61、63、67、69を含めたピーク・パターン99を作成した。
【0128】
図20〜
図22では、帰属対象ピーク45のピーク・パターン97と比較するピーク・パターンとして、別な帰属候補ピーク67、69、71に対し、それぞれ時間軸方向前後の双方に存在するピークを含めたピーク・パターン101、103、105を作成した。
【0129】
さらに、このピーク・パターンによる帰属をより高い精度で行わせるには、対象FPと基準FPのピーク数に違いがある(つまり、どちらか一方に存在しないピークがある)場合の対応が必要である。そのためには
図23〜
図25のように帰属対象ピークならびに帰属候補ピークの両方でピーク・パターン構成ピークを網羅的に変化させたピーク・パターンを作成することが肝要である。
【0130】
具体的には、対象FPの帰属対象ピークの周辺ピークの中から予めピーク・パターン構成ピークの候補となるピーク(以下、ピーク・パターン構成候補ピーク)を設定し、このピーク・パターン構成候補ピークを順番にピーク・パターン構成ピークとしてピーク・パターンを作成する。基準FPの帰属候補ピークについても同様にピーク・パターン構成候補ピークを設定し、このピーク・パターン構成候補ピークを順番にピーク・パターン構成ピークとしてピーク・パターンを作成する。
【0131】
例えば、
図23のように帰属対象ピーク45のピーク・パターン構成候補ピークとして時間軸方向周辺4本(41、43、47、49)、帰属候補ピーク65のピーク・パターン構成候補ピークとして時間軸方向周辺4本(61、63、67、69)とし、ピーク・パターン構成ピークを任意の2本にそれぞれ設定する。この場合、
図24、
図25のように帰属対象ピーク45及び帰属候補ピーク65それぞれでピーク・パターンが4C2(=6)パターン作成される。
【0132】
さらに、ピーク・パターン構成候補ピークを10本とし、ピーク・パターン構成ピークを任意の2本に設定すると、帰属対象ピーク及び帰属候補ピークそれぞれで、10C2(=45)パターンのピーク・パターンが作成される。ピーク・パターン構成ピークを任意の4本に設定すると、帰属対象ピーク及び帰属候補ピークそれぞれで、10C4(=210)パターンのピーク・パターンが作成される。
【0133】
前記ピーク帰属部9の機能を、
図26〜
図67を用いてさらに説明する。
【0134】
ピーク帰属部9では、ピーク・パターン作成部7で作成した帰属対象ピークと帰属候補ピークの全ピーク・パターン間で、対応するピーク及びリテンション・タイムの差をもとにピーク・パターンの一致度(以下、P_Sim)を算出する。ピーク帰属部9は、P_Simの最小値(以下、P_Sim_min)を帰属対象ピークと帰属候補ピークのピーク・パターンの一致度とする。
【0135】
例えば、
図26〜
図61のように帰属対象ピーク45及び帰属候補ピーク65のそれぞれでピーク・パターン構成候補ピークを時間軸方向前後周辺4本とし、ピーク・パターン構成ピークを任意の2本に設定する。この設定では、帰属対象ピーク及び帰属候補ピークそれぞれで、4C2(=6)パターンのピーク・パターンが作成される。したがって、帰属対象ピーク45及び帰属候補ピーク65のP_Simは、6パターン×6パターン(=36)通りで算出され、これらP_Simの最小値であるP_Sim_minを帰属対象ピーク45と帰属候補ピーク65の一致度とする。
【0136】
ちなみに、帰属対象ピーク45及び帰属候補ピーク65のそれぞれでピーク・パターン構成候補ピークを時間軸方向前後周辺10本とし、ピーク・パターン構成ピークを任意の2本に設定すると、帰属対象ピーク及び帰属候補ピークそれぞれで、10C2(=45)パターンのピーク・パターンが作成される。したがって、帰属対象ピーク45及び帰属候補ピーク65のP_Simは、45パターン×45パターン(=2025)通りで算出され、これらP_Simの最小値であるP_Sim_minを帰属対象ピーク45と帰属候補ピーク65の一致度とする。また、ピーク・パターン構成ピークを任意の4本に設定すると、帰属対象ピーク及び帰属候補ピークそれぞれで、10C4(=210)パターンのピーク・パターンが作成される。したがって、帰属対象ピーク45及び帰属候補ピーク65のP_Simは、210パターン×210パターン(=44100)通りで算出され、これらP_Simの最小値であるP_Sim_minを帰属対象ピーク45と帰属候補ピーク65の一致度とする。
【0137】
このP_Simは、帰属対象ピーク45の全ての帰属候補ピークについて同様に算出する。
【0138】
図62、
図63で、3本のピークで構成されたピーク・パターンを比較するためのピーク・パターンの一致度の算出方法を説明する。この場合、帰属対象ピーク45のピーク・パターン87と帰属候補ピーク67のピーク・パターン91を例にする。
【0139】
帰属対象ピーク45のピーク・パターン87において、帰属対象ピーク45のピーク・データ及びリテンション・タイムをp1及びr1、ピーク・パターン構成ピーク43のピーク・データ及びリテンション・タイムをdn1及びcn1、ピーク・パターン構成ピーク47のピーク・データ及びリテンション・タイムをdn2及びcn2とする。
【0140】
帰属候補ピーク67のピーク・パターン91において、帰属候補ピーク67のピーク・データ及びリテンション・タイムをp2及びr2、ピーク・パターン構成ピーク65のピーク・データ及びリテンション・タイムをfn1及びen1、ピーク・パターン構成ピーク69のピーク・データ及びリテンション・タイムをfn2及びen2とする。
【0141】
ピーク・パターンの一致度をP_Simとすると、帰属対象ピーク45と帰属候補ピーク67の3本のピークで構成するピーク・パターンの一致度(P_Sim(45−67))は、
P_Sim(45−67) =(|p1−p2|+1)×(|(r1−(r2+d)|+1)
+(|dn1−fn1|+1)×(|(cn1−r1)−(en1−r2)|+1)
+(|dn2−fn2|+1)×(|(cn2−r1)−(en2−r2)|+1)
として算出する。
【0142】
なお、式中のdは、リテンション・タイムのずれを補正する値である。
【0143】
図64で、5本のピークで構成されたピーク・パターンを比較するためのピーク・パターンの一致度の算出方法を説明する。この場合、帰属対象ピーク45のピーク・パターン97と帰属候補ピーク67のピーク・パターン101を例にする。
【0144】
帰属対象ピーク45のピーク・パターン97において、帰属対象ピーク45のピーク・データ及びリテンション・タイムをp1及びr1、ピーク・パターン構成ピーク41、43、47、49のピーク・データ及びリテンション・タイムをそれぞれdn1及びcn1、dn2及びcn2、dn3及びcn3、dn4及びcn4とする。
【0145】
帰属候補ピーク67のピーク・パターン101において、帰属候補ピーク67のピーク・データ及びリテンション・タイムをp2及びr2、ピーク・パターン構成ピーク63、65、69、71のピーク・データ及びリテンション・タイムをそれぞれfn1及びen1、fn2及びen2、fn3及びen3、fn4及びen4とする。
【0146】
帰属対象ピーク45と帰属候補ピーク67の5本のピークで構成するピーク・パターンの一致度(P_Sim(45−67))は、
P_Sim(45−67) =(|p1−p2|+1)×(|(r1−(r2+d)|+1)
+(|dn1−fn1|+1)×(|(cn1−r1)−(en1−r2)|+1)
+(|dn2−fn2|+1)×(|(cn2−r1)−(en2−r2)|+1)
+(|dn3−fn3|+1)×(|(cn3−r1)−(en3−r2)|+1)
+(|dn4−fn4|+1)×(|(cn4−r1)−(en4−r2)|+1)
として算出する。
【0147】
なお、式中のdは、リテンション・タイムのずれを補正する値である。
【0148】
ピーク帰属部9では、
図65、
図66のように帰属対象ピークと帰属候補ピークでUVスペクトルの一致度を算出する。
【0149】
図65は、帰属対象ピーク45及び帰属候補ピーク67のUVスペクトル(107と111)図であり、
図66のようにこれら2つのUVスペクトルの一致度(UV_Sim(45−67))は、
UV_Sim(45−67)= RMSD(107vs 111)
として算出する。
【0150】
RMSDは、平均二乗偏差のことで、対応する2点の距離(dis)をそれぞれ二乗し、その相加平均の平方根として定義される。つまり、
RMSD = √{ Σdis
2 / n }
として算出する。
【0151】
nは、disの数である。
【0152】
ここで、UVスペクトルの波形は極大波長及び極小波長を含んでおり、この極大波長及び極小波長或いは何れかを比較することで一致度を算出することも可能である。しかし、吸収特性のない化合物あるいは吸収特性が類似した化合物等では、極大波長、極小波長は同じであるが、全体の波形がかなり異なる場合もあり、極大波長、極小波長の比較では、波形の一致度を算出できない恐れがある。
【0153】
これに対し、UVスペクトルの波形によりRMSDを利用した場合には、波形全体の比較となるため、UVスペクトルの波形の一致度の算出をより正確に行わせ、吸収特性のない化合物あるいは吸収特性が類似した化合物でも正確に識別できることになる。
【0154】
このUVスペクトルの一致度は、帰属対象ピーク45の全ての帰属候補ピークについて同様に算出する。
【0155】
さらに、ピーク帰属部9では、
図67のように上記2つの一致度を統合した帰属候補ピークの一致度を算出する。
【0156】
図67のように帰属候補ピークの一致度(SCORE(45−67))はピーク・パターンとUVスペクトルのそれぞれの一致度を乗じて算出する。ピーク・パターン45、67の一致度を示すスコアが、P_Sim_min(45−67)であり、対応するUVスペクトル107、111の一致度を示すスコアが、UV_Sim(45−67)であるとする。このとき、帰属候補ピークの一致度 SCORE(45−67)は、SCORE(45−67)
= P_Sim_min(45−67)×UV_Sim(45−67)
として算出する。
【0157】
この帰属候補ピークの一致度を帰属対象ピーク45の全ての帰属候補ピークについて同様に計算する。
【0158】
そして、全帰属候補ピーク間でこのSCOREを比較し、SCOREが最小となる帰属候補ピークを帰属対象ピーク45の帰属ピークとして判定する。
【0159】
ピーク帰属部9では、帰属対象ピークの帰属すべきピークを2つの観点を総合して判定するため、正確なピーク帰属を実現することができる。
【0160】
また、ピーク帰属部9では、対象FPの基準FPへの帰属結果をもとに、
図68のように、対象FP17の各ピークを基準群FP19へ帰属する。
【0161】
対象FP17の各ピークは、前記帰属処理により基準群FPを構成する基準FPに帰属される。この帰属結果をもとに最終的に基準群FP19のピークに帰属する。
【0162】
尚、基準群FP19は、正常品と定めた複数の基準FP全てを前記のように帰属処理し作成したものであり、その各ピークは帰属されたピークの平均値(黒点)±標準偏差(縦線)で表している。
【0163】
図69は、対象FP17を基準群FP19に帰属した結果であり、この結果が対象FP17の帰属処理の最終結果である。
[MD値]
この結果から、前記のようにMT法によりMD値(MD値:0.25、2.99等)を求めることができる(
図70〜
図74参照)。
[多成分薬剤の評価方法]
図75は、本発明実施例1の多成分薬剤の評価方法を示す工程図である。
【0164】
図75のように、パターンの評価方法としての多成分薬剤の評価方法は、パターン取得工程としてのFP作成工程113と、基準パターン選定工程としての基準FP選定工程115と、ピーク・パターン作成工程117と、ピーク帰属工程119と、評価工程121とを備えている。これら、FP作成工程113、基準FP選定工程115、ピーク・パターン作成工程117、ピーク帰属工程119、評価工程121は、本実施例において前記多成分薬剤の評価装置1を用いて行われ、FP作成工程113は、FP作成部3の機能により行わせ、同様に基準FP選定工程115、ピーク・パターン作成工程117、ピーク帰属工程119、評価工程121を、基準FP選定部5、ピーク・パターン特定部7、ピーク帰属部9、評価部11の機能により行わせることができる。
【0165】
前記FP作成工程113は、FP作成方法として備えられ、クロマトを、リテンション・タイム、検出波長、及びピークをデータとする3Dクロマトとし、この3Dクロマト15から特定波長で検出されたピークとそのリテンション・タイムならびにそのピークのUVスペクトルとでFP17を作成する。
[多成分薬剤の評価プログラム]
図76〜
図91は、多成分薬剤の評価プログラムに係るフローチャート、
図92は、3Dクロマトのデータ例を示す図表、
図93は、ピーク情報データ例を示す図表、
図94は、FPデータ例を示す図表、
図95は、ステップS3で作成した判定結果ファイル例を示す図表、
図96は、対象FPと基準FPで対応するピークを特定する過程で作成する2つの中間ファイル(帰属候補ピークスコア表、帰属候補ピーク番号表)例を示す図表、
図97は、対象FPと基準FPで対応するピークを特定した結果である照合結果ファイル例を示す図表、
図98は、基準群FPデータ例を示す図表、
図99は、対象FP帰属ピークのデータである対象FPのピーク・データ特徴量ファイル例を示す図表である。
【0166】
図76は、評価対象薬剤を評価するための処理全体のステップを示すフローチャートであり、システム起動によりスタートし、FP作成部3のFP作成機能と、基準FP選定部5の基準FP選定機能と、ピーク・パターン作成部7のピーク・パターン作成機能と、ピーク帰属部9のピーク帰属機能と、評価部11の評価機能とをコンピュータに実現させる。
【0167】
FP作成機能は、ステップS1で実現され、基準FP選定機能は、ステップS2で実現され、ピーク・パターン作成機能は、ステップS3で実現され、ピーク帰属機能は、ステップS3〜S5で実現され、評価機能は、ステップS6、S7で実現される。
【0168】
ステップS1は、3Dクロマト及び特定の検出波長におけるピーク情報を入力データとして「FP作成処理」が実行される。
【0169】
3Dクロマトは、評価対象薬剤をHPLCで分析することにより得られるデータであり、
図92の3Dクロマトのデータ例123で示すように、リテンション・タイム、検出波長、ピーク(シグナル強度)の三次元情報で構成されたデータである。ピーク情報は、同HPLC分析により得られる特定波長におけるクロマト・データをHPLCデータ解析ツール(例えば、ChemStation等)で処理することで得られるデータであり、
図93のピーク情報データ例125のように、ピークとして検出された全ピークの極大値及び面積値とその時点のリテンション・タイム等で構成されたデータである。
【0170】
ステップS1では、コンピュータのFP作成部3(
図1)が機能し、3Dクロマト及びピーク情報から前記対象FP17(
図2)を作成し、そのデータをファイルとして出力する。この対象FP17は、
図94のFPデータ例127のように、リテンション・タイムとピーク高さとピーク高さごとのUVスペクトルで構成されたデータである。
【0171】
ステップS2は、ステップS1で出力した対象FP及び全基準FPを入力として、「対象FP帰属処理1」が実行される。
【0172】
ステップS2では、コンピュータの基準FP選定部5が機能し、全基準FPに対して対象FP17とのリテンション・タイム・出現パターンの一致度を算出し、対象FP17の帰属に適した基準FPを選定する。
【0173】
基準FPは、正常品と定めた薬剤の3Dクロマトとピーク情報から前記ステップS1と同様の処理により作成されたFPである。なお、正常品は、安全性、有効性が確認された薬剤と定義され、製品ロットの異なる複数の薬剤が該当する。 基準FPも、
図94のFPデータ例127と同様に構成されたデータである。
【0174】
ステップS3は、対象FP17とステップS2で選定した基準FPを入力とし、「対象FP帰属処理2」が実行される。
【0175】
ステップS3では、コンピュータのピーク・パターン作成部7(
図1)及びピーク帰属部9(
図1)が機能する。この機能により、対象FP17とステップS2で選定した基準FPの全ピークで、
図23〜
図61のように網羅的にピーク・パターンを作成し、次にそれらピーク・パターンの一致度(
図63または
図64のP_Sim)を算出する。また、対象FPと基準FPのピーク間でUVスペクトルの一致度(
図66のUV_Sim)を算出する。さらにこれら2つの一致度から帰属候補ピークの一致度(
図67のSCORE)を算出し、その算出結果をファイル(判定結果ファイル)に出力する。
【0176】
ステップS4は、ステップS3で出力した判定結果ファイルを入力とし、「対象FP帰属処理3」が実行される。
【0177】
ステップS4では、コンピュータのピーク帰属部7が機能し、対象FP17と基準FP間で、帰属候補ピークの一致度(SCORE)をもとに対象FPの各ピークに対応する基準FPのピークを特定し、その結果をファイル(照合結果ファイル)に出力する。
【0178】
ステップS5は、ステップS4で出力した照合結果ファイルと基準群FPを入力とし、「対象FP帰属処理4」が実行される。
【0179】
基準群FPは、全基準FPから前記ステップS2からステップS4と同様の処理により作成された全基準FP間のピーク対応データである。
【0180】
ステップS5では、コンピュータのピーク帰属部7が機能し、対象FP17の照合結果ファイルをもとに、
図68、
図69のように、対象FP17の各ピークを基準群FPのピークに帰属し、その結果をファイル(ピーク・データ特徴量ファイル)に出力する。
【0181】
ステップS6は、ステップS5で出力したピーク・データ特徴量ファイルと基準群FPを入力とし、「FP評価処理」が実行される。
【0182】
ステップS6では、コンピュータの評価部11が機能し、ステップS5で出力したピーク・データ特徴量データと基準群FPとの同等性をMT法により評価し、その評価結果をMD値をとして出力する(
図70〜
図74)。
【0183】
ステップS7は、ステップS6で出力したMD値を入力として、「合否判定」が実行される。
【0184】
ステップS7では、コンピュータの評価部11が機能し、ステップS6で出力したMD値と予め設定した閾値(MD値の上限値)を比較し、合否を判定する(
図2のグラフ23)。
[S1:FP作成処理(単一波長のみ利用)]
図77は、
図76ステップS1「FP作成処理」の単一波長のピーク情報を利用した場合のフローチャートである。
【0185】
図77は、波長を単一波長、例えば203nmとして評価対象のFPを作成するステップの詳細である。この処理では、3Dクロマトと検出波長が203nmにおけるピーク情報から、203nmで検出されたピークにおけるリテンション・タイムとピークならびにそれらピークのUVスペクトルで構成するFPを作成する。
【0186】
ステップS101では、「ピーク情報を読み込む」の処理が実行される。この処理では、FPの作成に必要な2つのデータのうちの1つ目としてピーク情報が読み込まれ、ステップS102へ移行する。
【0187】
ステップS102では、「ピークのリテンション・タイム(R1)と対応するピーク・データ(P1)を順番に取得」の処理が実行される。この処理では、ピーク情報から、ピークのリテンション・タイム(R1)及びピーク・データ(P1)を1ピークずつ順番に取得し、ステップS103へ移行する。
【0188】
ステップS103では、「3Dクロマトを読み込む」の処理が実行される。この処理では、FPの作成に必要な2つのデータのうちの2つ目として3Dクロマトが読み込まれ、ステップS104へ移行する。
【0189】
ステップS104では、「ピークのリテンション・タイム(R2)と対応するUVスペクトル(U1)を順番に取得」の処理が実行される。この処理では、3Dクロマトから、リテンション・タイム(R2)及びUVスペクトル(U1)をHPLC分析時のサンプリング・レート/2ごとに取得し、ステップS105へ移行する。
【0190】
ステップS105では、「|R1−R2|<=閾値?」の判断処理が実行される。この処理では、ステップS102及びS104で読み込まれたR1とR2が閾値の範囲で対応したものであるか否かが判断される。対応している(YES)場合は、2つのリテンション・タイムは同じであり、リテンション・タイムがR1のピークのUVスペクトルはU1であると判断し、ステップS106へ移行する。対応していない(NO)場合は、2つのリテンション・タイムは同じではなく、リテンション・タイムがR1のピークのUVスペクトルはU1ではないと判断し、3Dクロマトの次のデータとの比較のため、ステップS104へ移行する。なお、この判断処理での閾値は、3Dクロマトにおける“サンプリング・レート”とする。
【0191】
ステップS106では、「U1を最大値1で規格化」の処理が実行される。この処理では、S105でR1のUVスペクトルと判断したU1を最大値1で規格化し、ステップS107へ移行する。
【0192】
ステップS107では、「R1とP1ならびに規格化したU1を出力(対象FP)」の処理が実行される。この処理では、ピーク情報から取得したR1とP1ならびにS106で規格化したU1を対象FPに出力し、ステップS108へ移行する。
【0193】
ステップS108では、「全ピークの処理終了?」の判断処理が実行される。この処理では、ピーク情報中の全てのピークに対して処理が行われたか否かが判断され、全ピークに対して処理が終了していなければ(NO)、未処理のピークを処理するため、ステップS102へ移行する。S102からS108までの処理は全ピークの処理が終了するまで繰り返され、全ピークの処理が終了すると(YES)、FP作成処理を終了する。
[S1:FP作成処理(複数波長利用)]
図78、
図79は、
図76ステップS1「FP作成処理」において、前記単一波長のピーク情報に代え、複数波長のピーク情報を利用した場合のフローチャートである。例えば203nmを含めて、検出波長軸方向に複数(n個)の波長を選択し、FPを作成する場合である。
【0194】
このFP作成処理は、
図77のような単一波長では3Dクロマトで検出されている全ピークを網羅できない場合に複数波長のピーク情報を利用し、3Dクロマトの全ピークを網羅したFPを作成するためのものである。
【0195】
なお、
図78、
図79は、上記単一波長のみを利用したFP作成処理で波長ごとのFPをn個作成後、それらFPから複数波長によるFPを作成するステップの詳細である。
【0196】
ステップS110では、「波長ごとにFPを作成」の処理が実行される。この処理では、波長ごとに上記単一波長のみを利用したFP作成処理が行われ、n個のFPを作成し、ステップS111へ移行する。
【0197】
ステップS111では、「FPをピーク数(降順)でリスト化」の処理が実行される。この処理では、n個のFPをピーク数が多い順にリスト化し、ステップS112へ移行する。
【0198】
ステップS112では、n個のFPを順番に処理するためのカウンタの初期化としてnに1が代入(n←1)され、ステップS113へ移行する。
【0199】
ステップS113では、「リストn番目のFPを読み込む」の処理が実行される。この処理では、リストn番目のFPを読み込み、ステップS114へ移行する。
【0200】
ステップS114では、「全リテンション・タイム(X)を取得」の処理が実行される。この処理では、S113で読み込んだFPのリテンション・タイム情報を全て取得し、ステップS115へ移行する。
【0201】
ステップS115では、「nの更新(n←n+1)」の処理が実行される。この処理では、処理を次のFPへ移行するため、nの更新としてnにn+1を代入し、ステップS116へ移行する。
【0202】
ステップS116では、「リストn番目のFPを読み込む」の処理が実行される。この処理では、リストn番目のFPを読み込み、ステップS117へ移行する。
【0203】
ステップS117では、「全リテンション・タイム(Y)を取得」の処理が実行される。この処理では、S116で読み込んだFPのリテンション・タイム情報を全て取得し、
ステップS118へ移行する。
【0204】
ステップS118では、「XとYを重複なしで統合(Z)」の処理が実行される。この処理では、S114で取得したリテンション・タイム情報XとS117で取得したリテンション・タイム情報Yを重複なしで統合した後、Zに保存し、ステップS119へ移行する。
【0205】
ステップS119では、「Xの更新(X←Z)」の処理が実行される。この処理では、Xの更新としてXにS118で保存したZを代入し、ステップS120へ移行する。
【0206】
ステップS120では、「全FP処理終了?」の判断処理が実行される。この処理では、S110で作成したn個のFP全てが処理されたか否かが判断され、処理済み(YES)の場合は、ステップS121へ移行する。未処理のFPがある(NO)の場合は、未処理のFPに対してS115〜S120の処理を実行するため、S115へ移行する。全FPの処理が終了するまでS115〜S120の処理を繰り返す。
【0207】
ステップS121では、n個のFPを再度順番に処理するためのカウンタの初期化としてnに1が代入(n←1)され、ステップS122へ移行する。
【0208】
ステップS122では、「リストn番目のFPを読み込む」の処理が実行される。この処理では、リストn番目のFPを読み込み、ステップS123へ移行する。
【0209】
ステップS123では、「各ピークのリテンション・タイム(R1)、ピーク・データ(P1)ならびにUVスペクトル(U1)を順番に取得」の処理が実行される。この処理では、S122で読み込んだFPからリテンション・タイム(R1)、ピーク・データ(P1)ならびにUVスペクトル(U1)を1ピークずつ順番に取得し、ステップS124へ移行する。
【0210】
ステップS124では、「Xからリテンション・タイム(R2)を順番に取得」の処理が実行される。この処理では、全FPのリテンション・タイムが重複なしで保存されているXから1リテンション・タイム(R2)ずつ順番に取得し、ステップS125へ移行する。
【0211】
ステップS125では、「R1=R2?」の判断処理が実行される。この処理では、S123で取得したR1とS124で取得したR2が等しいか否かが判断され、等しい(YES)場合は、ステップS127へ移行する。等しくない(NO)場合は、ステップS126へ移行する。
【0212】
ステップS126では、「Xの全リテンション・タイム比較終了?」の判断処理が実行される。この処理では、S123で取得したR1に対して、Xの全リテンション・タイムとの比較が終了しているか否かが判断される。終了している(YES)場合は、リテンション・タイムがR1のピークは処理済みであると判断し、次のピークへ処理を移行するため、ステップS123へ移行する。終了していない(NO)場合は、Xの次のリテンション。タイムに移行するため、ステップS124へ移行する。
【0213】
ステップS127では、「R1に(n−1)×分析時間(T)を加算(R1←R1+(n−1)×T)」の処理が実行される。この処理では、一番ピーク数の多いリスト1番目のFPに存在するピークのリテンション・タイムはそのままで、リスト1番目のFPには存在せず、リスト2番目のFPに存在するピークのリテンション・タイムはR1に分析時間(T)が加算され、さらに、リスト1〜n−1番目のFPには存在せず、リストn番目のFPに存在するピークのリテンション・タイムはR1に(n−1)×Tが加算され、ステップS128へ移行する。
【0214】
ステップS128では、「R1、P1ならびにU1を出力(対象FP)」の処理が実行される。この処理では、S127で処理したR1とS123で取得したP1ならびにU1を対象FPに出力し、ステップS129へ移行する。
【0215】
ステップS129では、「XからR2を削除」の処理が実行される。この処理では、リテンション・タイムがR1(=R2)における処理がS127、S128で終了したため、Xから処理済みリテンション・タイム(R2)を削除し、S130へ移行する。
【0216】
ステップS130では、「全ピーク処理終了?」の判断処理が実行される。この処理では、リストn番目のFPの全ピークに対して処理が終了しているか否かが判断され、処理済み(YES)の場合は、リストn番目のFPにおけるFP作成処理を終了し、ステップS131へ移行する。未処理のピークがある(NO)場合は、未処理のピークを処理するため、ステップS123へ移行する。全ピークの処理が終了するまでS123〜S130の処理を繰り返す。
【0217】
ステップS131では、「nの更新(n←n+1)」の処理が実行される。この処理では、処理を次のFPへ移行するため、nの更新としてnにn+1を代入し、ステップS132へ移行する。
【0218】
ステップS132では、「全FP処理終了?」の判断処理が実行される。この処理では、S110で作成したn個のFP全てが処理されたか否かが判断され、処理済み(YES)の場合は、FP作成処理を終了する。未処理のFPがある(NO)場合は、未処理のFPに対してS122〜S132の処理を実行するため、S122へ移行する。全FPの処理が終了するまでS122〜S132の処理を繰り返す。
[S2:対象FP帰属処理1]
図80は、
図76ステップS2の「対象FP帰属処理1」の詳細を示すフローチャートである。この処理は、帰属の前処理であり、正常品とされた複数の基準FPから対象FP17の帰属に適した基準FPを選定する。
【0219】
ステップS201では、「対象FPを読み込む」の処理が実行される。この処理では、帰属対象のFPを読み込み、ステップS202へ移行する。
【0220】
ステップS202では、「全リテンション・タイム(R1)を取得」の処理が実行される。この処理では、S201で読み込んだ対象FPのリテンション・タイム情報を全て取得し、ステップS203へ移行する。
【0221】
ステップS203では、「全基準FPのファイル名をリスト化」の処理が実行される。この処理では、後で全基準FPを順番に処理するために予め全基準FPのファイル名をリスト化し、ステップS204へ移行する。
【0222】
ステップS204では、全基準FPを順番に処理するためのカウンタの初期値としてnに1を代入(n←1)し、ステップS205へ移行する。
【0223】
ステップS205では、「リストn番目の基準FP(基準FP
n)を読み込む」の処理が実行される。この処理では、S203でリスト化した全基準FPのファイル名リストのn番目のFPを読み込み、ステップS206へ移行する。
【0224】
ステップS206では、「全リテンション・タイム(R2)を取得」の処理が実行される。この処理では、S205で読み込んだ基準FPのリテンション・タイム情報を全て取得し、ステップS207へ移行する。
【0225】
ステップS207では、「R1とR2のリテンション・タイム・出現パターンの一致度を算出(RP
n_min)」の処理が実行される。この処理では、S202で取得した対象FPのリテンション・タイムとS206で取得した基準FPのリテンション・タイムからRP
n_minを算出し、ステップS208へ移行する。なお、RP
n_minの詳細な計算フローは、
図85のサブルーチン1により別途説明する。
【0226】
ステップS208では、「RP
n_minの保存(RP
all_min」の処理が実行される。この処理では、S207で算出したRP
n_minをRP
all_minに保存し、ステップS209へ移行する。
【0227】
ステップS209では、「nの更新(n←n+1)」の処理が実行される。この処理では、処理を次のFPへ移行するためnの更新としてnにn+1を代入し、ステップS210へ移行する。
【0228】
ステップS210では、「全基準FP処理終了?」の判断処理が実行される。この処理では、基準FP全てが処理されたか否かが判断され、処理済み(YES)の場合は、ステップS211へ移行する。未処理の基準FPがある(NO)場合は、未処理のFPに対してS205〜S210の処理を実行するため、S205へ移行する。全基準FPの処理が終了するまでS205〜S210の処理を繰り返す。
【0229】
ステップS211では、「RP
all_minから一致度が最小となる基準FPを選定」の処理が実行される。この処理では、全基準FPに対して算出したRP
1_minからRP
n_minを比較し、対象FPとのリテンション・タイム・出現パターンの一致度が最小となる基準FPを選定し、対象FP帰属処理1を終了する。
[S3:対象FP帰属処理2]
図81は、
図76ステップS3の「対象FP帰属処理2」の詳細を示すフローチャートである。この処理は、帰属の本処理であり、対象FP17とステップS2で選定した基準FPとの間で、前記のようなピーク・パターン及びUVスペクトルの一致度から各帰属候補ピークの一致度(SCORE)を算出する。
【0230】
ステップS301では、「対象FPを読み込む」の処理が実行される。この処理では、帰属対象のFPを読み込み、ステップS302へ移行する。
【0231】
ステップS302では、「帰属対象ピークのリテンション・タイム(R1)とピーク・データ(P1)ならびにUVスペクトル(U1)を順番に取得」の処理が実行される。この処理では、S301で読み込んだ対象FPの各ピークを順番に帰属対象ピークとし、R1とP1ならびにU1を取得し、ステップS303へ移行する。
【0232】
ステップS303では、「基準FPを読み込む」の処理が実行される。この処理では、
図80の[対象FP帰属処理1]で選定された基準FPを読み込み、ステップS304へ移行する。
【0233】
ステップS304では、「基準FPのピークのリテンション・タイム(R2)とピーク・データ(P2)ならびにUVスペクトル(U2)を順番に取得」の処理が実行される。この処理では、S303で読み込んだ基準FPからR2とP2ならびにU2を1ピークずつ取得し、ステップS305へ移行する。
【0234】
ステップS305では、「|R1−(R2+d)|<閾値?」の判断処理が実行される。この処理では、ステップS302及びS304で読み込まれたR1とR2が閾値の範囲内で対応したものであるか否かが判断される。対応している(YES)場合は、リテンション・タイムがR2のピークはリテンション・タイムがR1のピークの帰属候補ピークであると判断し、帰属候補ピークの一致度(SCORE)を算出するためステップS306へ移行する。対応していない(NO)場合は、リテンション・タイムがR2のピークとリテンション・タイムがR1のピークではリテンション・タイムが違いすぎるため、帰属候補ピークにはならないと判断し、ステップS309へ移行する。なお、この判断処理でのdは、対象FPと基準FPのピークのリテンション・タイムを補正する値で、初期値は0とし、処理を進める中で随時帰属したピーク間のリテンション・タイムの差を求め、その値でdを更新する。また、閾値は、帰属候補ピークとすべきかどうかを判断するためのリテンション・タイムの許容幅である。
【0235】
ステップS306では、「UVスペクトルの一致度を算出(UV_Sim)」の処理が実行される。この処理では、S302で取得した帰属対象ピークのU1とS304で取得した帰属候補ピークのU2から、UV_Simを算出し、ステップS307へ移行する。なお、UV_Simの詳細な計算フローは、
図86のサブルーチン2に別途記載する。
【0236】
ステップS307では、「ピーク・パターンの一致度を算出(P_Sim_min)」の処理が実行される。この処理では、S302で取得した帰属対象ピークのR1及びP1とS304で取得した帰属候補ピークのR2及びP2から、これらピークに対して網羅的にピーク・パターンを作成する。これらピーク・パターンのP_Sim_minを算出し、ステップS308へ移行する。なお、P_Sim_minの詳細な計算フローは、
図87のサブルーチン3に別途記載する。
【0237】
ステップS308では、「帰属候補ピークの一致度を算出(SCORE)」の処理が実行される。この処理では、S306で算出したUV_SimとS307で算出したP_Sim_minから、帰属対象ピークと帰属候補ピークのSCOREを、
SCORE = UV_Sim × P_Sim_min
として算出し、ステップS310へ移行する。
【0238】
ステップS309では、「SCOREに888888を代入(SCORE←888888)」の処理が実行される。この処理では、帰属対象ピークの帰属候補ピークに該当しないピークのSCOREを888888とし、ステップS310へ移行する。
【0239】
ステップS310では、「SCOREの保存(SCORE_all)」の処理が実行される。この処理では、S308あるいはS309で得られたSCOREをSCORE_allに保存し、ステップS311へ移行する。
【0240】
ステップS311では、「基準全ピークの処理終了?」の判断処理が実行される。この処理では、基準FPの全ピークが処理されたか否かが判断され、処理済み(YES)の場合は、ステップS312へ移行する。未処理のピークがある(NO)場合は、未処理のピークに対してS304〜S311の処理を実行するため、S304へ移行する。全ピークの処理が終了するまでS304〜S311の処理を繰り返す。
【0241】
ステップS312では、「判定結果ファイルにSCORE_allを出力し、SCORE_allを初期化(空にする)」の処理が実行される。この処理では、判定結果ファイルにSCORE_allを出力後、SCORE_allを初期化(空にする)し、ステップS313へ移行する。
【0242】
ステップS313では、「対象全ピークの処理終了?」の判断処理が実行される。この処理では、対象FPの全ピークが処理されたか否かが判断され、処理済み(YES)の場合は、対象FP帰属処理2を終了する。未処理のピークがある(NO)場合は、未処理のピークに対してS302〜S313の処理を実行するため、S302へ移行する。全ピークの処理が終了するまでS302〜S313の処理を繰り返す。
【0243】
図95で出力した判定結果ファイル例129を示す。
[S4:対象FP帰属処理3]
図82は、
図76ステップS4の「対象FP帰属処理3」の詳細を示すフローチャートである。この処理は、帰属の後処理であり、前記のように算出した帰属候補ピークの一致度(SCORE)から対象FPの各ピークに対応する基準FPのピークを特定する。
【0244】
ステップS401では、「判定結果ファイルを読み込む」の処理が実行される。この処理では、
図81の「対象FP帰属処理2」で作成した判定結果ファイルを読み込み、ステップS402へ移行する。
【0245】
ステップS402では、「「SCORE<閾値」の条件を満たしたデータで帰属候補ピークスコア表を作成」の処理が実行される。この処理では、判定結果ファイルのSCOREをもとに
図96(上図)の帰属候補スコア表131を作成し、ステップS403へ移行する。この帰属候補ピークスコア表は、基準FPのピークごとに、対象FP全ピークに対して算出されたSCOREから、閾値より小さいSCOREだけを昇順に並べた表である。ちなにみ、このSCOREは値が小さいほど帰属すべきピークの可能性が高い。なお、閾値は、帰属候補とすべきかどうかを判断するためのSCOREの上限値である。
【0246】
ステップS403では、「帰属候補ピーク番号表を作成」の処理が実行される。この処理では、帰属候補ピークスコア表をもとに
図96(下図)の帰属候補ピーク番号表133を作成し、ステップS404へ移行する。この帰属候補ピーク番号表は、帰属候補ピークスコア表の各スコアをそのスコアに対応する対象FPのピーク番号に置き換えた表である。このことから、この表は、基準FPのピークごとに対応させるべき対象FPのピーク番号が順番に並んだ表となっている。
【0247】
ステップS404では、「帰属すべき対象FPのピーク番号を取得」の処理が実行される。この処理では、S403で作成した帰属候補ピーク番号表から、基準FPのピークごとに一番上位に位置する対象FPのピーク番号を取得し、ステップS405へ移行する。
【0248】
ステップS405では、「取得したピーク番号が降順(重複なし)に並んでいる?」の判断処理が実行される。この処理では、S404で取得した対象FPのピーク番号が重複なしで降順に並んでいるか否かが判断される。並んでいる(YES)場合は、基準FPの各ピークに対応する対象FPのピークが確定できたと判断し、ステップS408へ移行する。並んでいない(NO)場合は、問題のあった基準FPのピークに帰属すべき対象FPのピークを見直すため、ステップS406へ移行する。
【0249】
ステップS406では、「問題のあったピーク間でSCOREを比較し、帰属候補ピーク番号表を更新」の処理が実行される。この処理では、問題のあった対象FPのピーク番号に対応するSCOREを帰属候補スコア表で比較し、SCOREが大きい方のピーク番号を2番目に位置するピーク番号に置き換えた帰属候補ピーク番号表に更新し、ステップS407へ移行する。
【0250】
ステップS407では、「帰属候補ピークスコア表を更新」の処理が実行される。この処理では、S406での帰属候補ピーク番号表の更新内容に沿って、帰属候補ピークスコア表を更新し、ステップS404へ移行する。対象FPのピーク番号に問題(重複あり、降順に並んでいない)がなくなるまで、S404からS407の処理を繰り返す。
【0251】
ステップS408では、「帰属結果を保存(TEMP)」の処理が実行される。この処理では、基準FPの全ピークのピーク番号、リテンション・タイム、及びピークとこれらピークに対応するピークとして特定した対象FPのピーク・データをTEMPに保存し、ステップS409へ移行する。
【0252】
ステップS409では、「TEMPに対象FPの全ピークが入っている?」の判断処理が実行される。この処理では、S408で保存したTEMP中に対象FPの全ピークのピーク・データが入っているか否かが判断される。全て入っている(YES)場合は、対象FPの全てのピークで処理が終了したと判断し、S412へ移行する。入っていないピークがある(NO)場合は、入っていないピークのピーク・データをTEMPに追加するため、ステップS410へ移行する。
【0253】
ステップS410では、「TEMPに入っていない対象FPのピークのリテンション・タイムを補正」の処理が実行される。この処理では、TEMPに入っていない対象FPのピーク(補正が必要な対象FPのピーク)のリテンション・タイムは、
補正値 =
k1+(k2−k1)*(t0−t1)/(t2−t1)
k1:補正が必要な対象FPのピーク近傍で帰属された2つの基準FP側のピークのうちのリテンション・タイムが小さいピークのリテンション・タイム
k2:補正が必要な対象FPのピーク近傍で帰属された2つの基準FP側のピークのうちのリテンション・タイムが大きいピークのリテンション・タイム
t0:補正が必要な対象FPのピークのリテンション・タイム
t1:補正が必要な対象FPのピーク近傍で帰属された2つの対象FP側のピークのうちのリテンション・タイムが小さいピークのリテンション・タイム
t2:補正が必要な対象FPのピーク近傍で帰属された2つの対象FP側のピークのうちのリテンション・タイムが大きいピークのリテンション・タイム
として基準FPにおけるリテンション・タイムに補正し、ステップS411へ移行する。
【0254】
ステップS411では、「補正したリテンション・タイムとそのピークのピーク・データをTEMPに追加し、TEMPを更新」の処理が実行される。この処理では、S410で補正したTEMPに入っていない対象FPのピークのリテンション・タイムとTEMP中の基準FPのリテンション・タイムとを比較し、TEMP中の妥当な位置にTEMPに入っていない対象FPのピークの補正したリテンション・タイムならびにピーク・データを追加し、TEMPを更新し、S409へ移行する。対象FPの全ピークが追加されるまで、S409からS411の処理を繰り返す。
【0255】
ステップS412では、「TEMPを照合結果ファイルに出力」の処理が実行される。この処理では、基準FPの全ピークと対象FPの全ピークの対応関係を特定したTEMPを照合結果ファイルとして出力し、対象FP帰属処理3を終了する。
【0256】
図97に前記のように出力した照合結果ファイル例135を示す。
[S5:対象FP帰属処理4]
図83、
図84は、
図76ステップS5の「対象FP帰属処理4」の詳細を示すフローチャートである。この処理は、帰属の最終処理であり、
図76ステップS4で作成した照合結果ファイルをもとに対象FPの各ピークを基準群FPのピークに帰属する。なお、基準群FPは、前記のように全基準FP間でピークの対応関係を特定したFPであり、
図98の基準群FPデータ例137のように、基準群FPピーク番号と基準群リテンション・タイムとピーク高さとで構成されたデータである。
図2の基準群FP19で示すように各ピークは平均値(黒点)±標準偏差(縦線)で表すことができる。
【0257】
ステップS501では、「照合結果ファイルを読み込む」の処理が実行される。この処理では、
図82のS412で出力した照合結果ファイルを読み込み、ステップS502へ移行する。
【0258】
ステップS502では、「基準群FPを読み込む」の処理が実行される。この処理では、対象FPの各ピークの最終的な帰属相手である基準群FPを読み込み、ステップS503へ移行する。
【0259】
ステップS503では、「対象FPと基準群FPを統合し保存(TEMP)」の処理が実行される。この処理では、照合結果ファイルと基準群FPで共通に在する基準FPのピーク・データをもとに2つのファイルを統合し、その結果をTEMPとして保存し、ステップS504へ移行する。
【0260】
ステップS504では、「基準FPに対応するピークがない対象FPのピークのリテンション・タイムを補正」の処理が実行される。この処理では、照合結果ファイルで基準FPに対応するピークがない対象FPの全ピークのリテンション・タイムをS503で保存したTEMPのリテンション・タイムに補正し、ステップS505へ移行する。なお、リテンション・タイムの補正は、前記ステップS4の「対象FP帰属処理3」のステップS410と同様の方法で補正する。
【0261】
ステップS505では、「補正したリテンション・タイム(R1、R3)と対応するピーク・データ(P1)を順番に取得」の処理が実行される。この処理では、S504で補正したリテンション・タイムをR1ならびにR3として、対応するピークのピーク・データをP1として順番に取得し、ステップS506へ移行する。
【0262】
ステップS506では、「TEMPから対象FPの帰属候補ピークのリテンション・タイム(R2)と対応するピーク・データ(P2)を順番に取得」の処理が実行される。この処理では、S503で保存したTEMPから対象FPのピークが帰属されていないリテンション・タイムをR2として、対応するピーク・データをP2として順番に取得し、ステップS507へ移行する。
【0263】
ステップS507では、「|R1−R2|<閾値1?」の判断処理が実行される。この処理では、S505とS506で取得したR1とR2の差が閾値1より小さいか否かが判断される。小さい(YES)場合は、対象FPのリテンション・タイムがR1のピークと基準FPのリテンション・タイムがR2のピークが対応する可能性があると判断し、ステップS508へ移行する。R1とR2の差が閾値1以上(NO)の場合は、対応する可能性なしと判断し、ステップS512へ移行する。
【0264】
ステップS508では、「R1、R2に対応するUVスペクトルを取得(U1、U2)」の処理が実行される。この処理では、S507で対応する可能性ありと判断されたリテンション・タイムがR1とR2のピークに対応するUVスペクトルをそれぞれのFPから取得し、ステップS509へ移行する。
【0265】
ステップS509では、「UVスペクトルの一致度を算出(UV_Sim)」の処理が実行される。この処理では、S508で取得したUVスペクトルU1及びU2からステップS3の「対象FP帰属処理2」のステップS306と同様な方法でUV_Simを算出し、ステップS510へ移行する。なお、UV_Simの詳細な計算フローは
図86のサブルーチン2で別途説明する。
【0266】
ステップS510では、「UV_Sim<閾値2?」の判断処理が実行される。この処理では、S509で算出したUV_Simが閾値2より小さいか否かが判断される。小さい(YES)場合は、UVスペクトルがU1のピークとU2のピークが対応していると判断し、ステップS511へ移行する。UV_Simが閾値2以上(NO)の場合は、対応していないと判断し、ステップS507へ移行する。
【0267】
ステップS511では、「R3 ← R2、閾値2 ← UV_Sim」の処理が実行される。この処理では、S510で対応すると判断したリテンション・タイムがR3(つまり、R1)を対応相手のリテンション・タイムであるR2に更新したのち、閾値2をUV_Simの値に更新し、S507に移行する。
【0268】
ステップS512では、「全ての帰属候補ピークのリテンション・タイムを比較終了?」の判断処理が実行される。この処理では、R1と全ての帰属候補ピークのリテンション・タイムの比較が終了したか否かが判断され、終了している(YES)場合は、ステップS513へ移行する。終了していない(NO)場合は、ステップS507へ移行する。
【0269】
ステップS513では、「R1、R3とP1ならびに閾値2を保存(TEMP2)」の処理が実行される。この処理では、S510で対応すると判断したリテンション・タイム(R1)と対応相手のリテンション・タイム(R2)に更新したR3と対応するピーク(P1)ならびに現時点の閾値2を保存(TEMP2)し、S507に移行する。
【0270】
ステップS514では、「全ての非対応ピークのリテンション・タイムを比較終了?」の判断処理が実行される。この処理では、全ての非対応ピークのリテンション・タイムで帰属候補ピークのリテンション・タイムとの比較が終了したか否かが判断される。終了している(YES)場合は、全ての非対応ピークの帰属処理が終了したと判断し、ステップS516へ移行する。終了していない(NO)場合は、未処理の非対応ピークが残っていると判断し、ステップS515へ移行する。
【0271】
ステップS515では、「閾値2 ← 初期値」の処理が実行される。この処理では、S511でUV_Simに更新されている閾値2を初期値に戻し、ステップS505へ移行する。
【0272】
ステップS516では、「TEMP2にR3の値が同じピークが存在する?」の判断処理が実行される。この処理では、TEMP中の同じピークに複数の非対応ピークが帰属されているか否かが判断される。同じピークに帰属された非対応ピークが存在する(YES)場合は、ステップS517へ移行する。存在しない(NO)場合は、ステップS518へ移行する。
【0273】
ステップS517では、「R3の値が同じピークの閾値2を比較し、値が大きいピークのR3を元の値(R1)に戻す」の処理が実行される。この処理では、TEMP2中のR3の値が同じピークの閾値2を比較し、値が大きいピークのR3の値を元の値(つまり、R1)に戻し、ステップS518へ移行する。
【0274】
ステップS518では、「TEMPにTEMP2のピークを追加(TEMPのリテンション・タイムとR3が一致したピークのみ)」の処理が実行される。この処理では、TEMPのリテンション・タイムとR3が一致したピークのみTEMPにR3に対応するピークを追加し、ステップS519へ移行する。R3がTEMPのリテンション・タイムと一致しないピークは、基準群FPに帰属相手となるピークが存在しないため、追加しない。
【0275】
ステップS519では、「TEMP中の対象FPのピークを出力(ピーク特徴量ファイル)」の処理が実行される。この処理では、基準群FP137に帰属された対象FPのピーク・データをピーク・データ特徴量ファイルとして出力し、対象FP帰属処理4を終了する。
【0276】
図99に前記のように出力するピーク・データ特徴量のファイル例139を示す。
【0277】
[サブルーチン1]
図85は、
図80の「基準FP選定処理」における「サブルーチン1」の詳細を示すフローチャートである。この処理は、FP間(例えば、対象FPと基準FP)のリテンション・タイム・出現パターンの一致度を計算する。
【0278】
ステップS1001では、「x←R1、y←R2」の処理が実行される。この処理では、
図80のS202とS206で取得したR1及びR2をそれぞれxとyに代入し、ステップS1002へ移行する。
【0279】
ステップS1002では、「x、yのデータ数を取得(a,b)」の処理が実行される。この処理では、x、yのデータ数をそれぞれa、bとして取得し、ステップS1003へ移行する。
【0280】
ステップS1003では、xのリテンション・タイムを順番に呼び出すためのカウンタの初期値としてiに1を代入(i←1)し、ステップS1004へ移行する。
【0281】
ステップS1004では、「xi番目のリテンション・タイムからの全距離を取得(f)」の処理が実行される。この処理では、xi番目のリテンション・タイムとそれ以降の全リテンション・タイム間距離をfとして取得し、ステップS1005へ移行する。
【0282】
ステップS1005では、yのリテンション・タイムを順番に呼び出すためのカウンタの初期値としてjに1を代入(j←1)し、ステップS1006へ移行する。
【0283】
ステップS1006では、「yj番目のリテンション・タイムからの全距離を取得(g)」の処理が実行される。この処理では、yj番目のリテンション・タイムとそれ以降の全リテンション・タイム間距離をgとして取得し、ステップS1007へ移行する。
【0284】
ステップS1007では「”|fの各リテンション・タイム間距離−gの各リテンション・タイム間距離|<閾値”の条件を満たしたデータ数を取得(m)」の処理が実行される。この処理では、S1004及びS1006で取得したリテンション・タイム間距離fとgを総当りで比較し、”|fの各リテンション・タイム間距離−gの各リテンション・タイム間距離|<閾値”の条件を満たしたデータ数をmとして取得し、ステップS1008へ移行する。
【0285】
ステップS1008では、「fとgのリテンション・タイム・出現パターンの一致度を算出(RP
fg)」の処理が実行される。この処理では、S1002で取得したa、bとS1007で取得したmからRP
fgを、
RP
fg = (1−(m/(a+b−m)))×(a−m+1)
として算出し、ステップS1009へ移行する。
【0286】
ステップS1009では、「RP
fgを保存(RP_all)」の処理が実行される。この処理では、S1008で算出した一致度をRP_allに保存し、ステップS1010へ移行する。
【0287】
ステップS1010では、「jの更新(j←j+1)」の処理が実行される。この処理では、yの処理を次のリテンション・タイムへ移行するためjの更新としてjにj+1を代入し、ステップS1011へ移行する。
【0288】
ステップS1011では、「yの全リテンション・タイムで処理終了?」の判断処理が実行される。この処理では、yの全てのリテンション・タイムの処理が終了したか否かが判断される。終了している(YES)場合は、yの全リテンション・タイムの処理が終了したと判断し、ステップS1012へ移行する。終了していない(NO)場合は、y中に未処理のリテンション・タイムが残っていると判断し、ステップS1006へ移行する。つまり、S1006〜S1011までの処理はyの全てのリテンション・タイムが処理されるまで繰り返す。
【0289】
ステップS1012では、「iの更新(i←i+1)」の処理が実行される。この処理では、xの処理を次のリテンション・タイムへ移行するためiの更新としてiにi+1を代入し、ステップS1013へ移行する。
【0290】
ステップS1013では、「xの全リテンション・タイムで処理終了?」の判断処理が実行される。この処理では、xの全てのリテンション・タイムの処理が終了したか否かが判断される。終了している(YES)場合は、xの全リテンション・タイムの処理が終了したと判断し、ステップS1014へ移行する。終了していない(NO)場合は、x中に未処理のリテンション・タイムが残っていると判断し、ステップS1004へ移行する。つまり、S1004〜S1013までの処理はxの全てのリテンション・タイムが処理されるまで繰り返す。
【0291】
ステップS1014では、「RP_allから最小値を取得(RP_min)」の処理が実行される。この処理では、対象FPと基準FPとのリテンション・タイム・出現パターンの全組み合わせでのRPが保存されたRP_all中の最小値を、RP_minとして取得し、そのRP_minを
図80のS207に渡し、リテンション・タイム・出現パターンの一致度計算処理を終了する。
[サブルーチン2]
図86は、
図81の「対象FP帰属処理2」における「サブルーチン2」の詳細を示すフローチャートである。この処理は、UVスペクトルの一致度を計算する。
【0292】
ステップS2001では、「x←U1、y←U2、z←0」の処理が実行される。この処理では、
図81のS302とS304で取得したUVスペクトルU1及びU2をそれぞれxとyに代入し、さらにUVスペクトル間の距離の二乗和(z)の初期値として0を代入し、ステップS2002へ移行する。
【0293】
ステップS2002では、「xデータ数を取得(a)」の処理が実行される。この処理では、xのデータ数をaとして取得し、ステップS2003へ移行する。
【0294】
ステップS2003では、「i←1」の処理が実行される。この処理では、UVスペクトルU1及びU2を構成する各検出波長における吸光度をx及びyから順番に呼び出すための初期値としてiに1を代入し、ステップS2004へ移行する。
【0295】
ステップS2004では、「xi番目のデータを取得(b)」の処理が実行される。この処理では、UVスペクトルU1を代入したxのi番目の吸光度データをbとして取得し、ステップS2005へ移行する。
【0296】
ステップS2005では、「yi番目のデータを取得(c)」の処理が実行される。この処理では、UVスペクトルU2を代入したyのi番目の吸光度データをcとして取得し、ステップS2006へ移行する。
【0297】
ステップS2006では、「UVスペクトル間距離(d)とUVスペクトル間距離の二乗和(z)を算出」の処理が実行される。この処理では、UVスペクトル間距離dとUVスペクトル間距離の二乗和zを、
d = b−c
z = z+d
2
として算出し、ステップS2007へ移行する。
【0298】
ステップS2007では、「iの更新(i←i+1)」の処理が実行される。この処理では、iの更新としてiにi+1を代入し、ステップS2008へ移行する。
【0299】
ステップS2008では、「xの全データで処理終了?」の判断処理が実行される。この処理では、xとyの全てのデータの処理が終了したか否かが判断される。終了している(YES)場合は、xとyの全データの処理が終了したと判断し、ステップS2009へ移行する。終了していない(NO)場合は、xとyに未処理のデータが残っていると判断し、ステップS2004へ移行する。つまり、S2004〜S2008までの処理はxとyの全ての吸光度データが処理されるまで繰り返す。
【0300】
ステップS2009では、「xとyのUVスペクトルの一致度を計算(UV_Sim)」の処理が実行される。この処理では、UV_Simを、前記UVスペクトル間距離の二乗和zとxのデータ数aから、
UV_Sim = √(z/a)
として算出し、このUV_Simを
図81のステップS306に渡し、UVスペクトルの一致度計算処理を終了する。
[サブルーチン3]
図87は、
図81の「対象FP帰属処理2」における「サブルーチン3」の詳細を示すフローチャートである。この処理は、ピーク・パターンの一致度を計算する。
【0301】
ステップS3001では、「ピーク・パターン構成候補数(m)とピーク・パターン構成ピーク数(n)を設定」の処理が実行される。この処理では、ピーク・パターンを網羅的に作成するための設定として、ピーク・パターン構成候補数(m)とピーク・パターン構成ピーク数(n)をそれぞれ設定し、ステップS3002へ移行する。
【0302】
ステップS3002では、「x←対象FP名、r1←R1、p1←P1、y←基準FP名、r2←R2、p2←P2」の処理が実行される。この処理では、処理に必要とする対象FP及び基準FPのファイル名ならびに
図81のS302とS304で取得したリテンション・タイム及びピーク・データをそれぞれx、r1、p1とy、r2、p2に代入し、ステップS3003へ移行する。
【0303】
ステップS3003では、「xの全リテンション・タイムを取得(a)」の処理が実行される。この処理では、S3002でxに代入した名前のファイル(対象FP)を読み込み、そのファイルの全リテンション・タイムをaとして取得し、ステップS3004へ移行する。
【0304】
ステップS3004では、「yの全リテンション・タイムを取得(b)」の処理が実行される。この処理では、S3002でyに代入した名前のファイル(基準FP)を読み込み、そのファイルの全リテンション・タイムをbとして取得し、ステップS3005へ移行する。
【0305】
ステップS3005では、「aからr1のピーク・パターン構成候補ピークm本のリテンション・タイム(cm)及びピーク・データ(dm)を取得」の処理が実行される。この処理では、aから帰属対象ピークのリテンション・タイムであるr1のピーク・パターン構成候補ピークm本のリテンション・タイムをcm、ピーク・データをdmとしてそれぞれ取得し、ステップS3006へ移行する。なお、ピーク・パターン構成候補ピークm本は、r1とリテンション・タイムが近いm本である。
【0306】
ステップS3006では、「bからr2のピーク・パターン構成候補ピークm本のリテンション・タイム(em)及びピーク・データ(fm)を取得」の処理が実行される。この処理では、bから帰属候補ピークのリテンション・タイムであるr2のピーク・パターン構成候補ピークm本のリテンション・タイムをem、ピーク・データをfmとしてそれぞれ取得し、ステップS3007へ移行する。なお、ピーク・パターン構成候補ピークm本は、r2とリテンション・タイムが近いm本である。
【0307】
ステップS3007では、「cm、dmをリテンション・タイム順(昇順)に並べる」の処理が実行される。この処理では、S3005で取得したcmとdmをリテンション・タイムが昇順になるように並び替え、ステップS3008へ移行する。
【0308】
ステップS3008では、「em、fmをリテンション・タイム順(昇順)に並べる」の処理が実行される。この処理では、S3006で取得したemとfmをリテンション・タイムが昇順になるように並び替え、ステップS3009へ移行する。
【0309】
ステップS3009では、「cm、dmからピーク・パターン構成ピークn本のリテンション・タイム(cn)及びピーク・データ(dn)を順番に取得」の処理が実行される。この処理では、ピーク・パターン構成候補ピークm本のcm及びdmからピーク・パターン構成ピークn本のリテンション・タイムをcn、ピーク・データをdnとして順番に取得し、ステップS3010へ移行する。
【0310】
ステップS3010では、「em、fmからピーク・パターン構成ピークn本のリテンション・タイム(en)及びピーク・データ(fn)を順番に取得」の処理が実行される。この処理では、ピーク・パターン構成候補ピークm本のem及びfmからピーク・パターン構成ピークn本のリテンション・タイムをen、ピーク・データをfnとして順番に取得し、ステップS3011へ移行する。
【0311】
ステップS3011では、「ピーク・パターンの一致度を計算(P_Sim)」の処理が実行される。この処理では、これまでに取得した帰属対象ピークのr1とp1及びそのピーク・パターン構成ピークn本のcnとdn、ならびに帰属候補ピークのr2とp2及びそのピーク・パターン構成ピークn本のenとfnから、ピーク・パターンの一致度(P_Sim)を、n=4の場合を例とすると、
図64中のように
P_Sim= (|p1−p2|+1)×(|(r1−(r2+d)|+1)
+(|dn1−fn1|+1)×(|(cn1−r1)−(en1−r2)|+1)
+(|dn2−fn2|+1)×(|(cn2−r1)−(en2−r2)|+1)
+(|dn3−fn3|+1)×(|(cn3−r1)−(en3−r2)|+1)
+(|dn4−fn4|+1)×(|(cn4−r1)−(en4−r2)|+1)
として算出し、ステップS3012へ移行する。
【0312】
ステップS3012では、「P_Simを保存(P_Sim_all)」の処理が実行される。この処理では、S3011で算出されたP_Simを順次P_Sim_allに保存し、ステップS3013へ移行する。
【0313】
ステップS3013では、「em中のm本からn本を取り出す全組み合わせ終了?」の判断処理が実行される。この処理では、帰属候補ピークのピーク・パターン構成候補ピークm本からピーク・パターン構成ピークn本を取り出す全組み合わせで処理が終了したか否かが判断される。終了した(YES)場合は、帰属候補ピークにおいて、網羅的なピーク・パターンの作成とそのパターンにおける一致度の計算が終了したと判断し、ステップS3014へ移行する。終了していない(NO)場合は、m本からn本を取り出す組み合わせが終了していないと判断し、ステップS3010へ移行する。つまり、S3010〜S3013までの処理はm本からn本を取り出す全組み合わせで処理が終了するまで繰り返す。
【0314】
ステップS3014では、「cm中のm本からn本を取り出す全組み合わせ終了?」の判断処理が実行される。この処理では、帰属対象ピークのピーク・パターン構成候補ピークm本からピーク・パターン構成ピークn本を取り出す全組み合わせで処理が終了したか否かが判断される。終了した(YES)場合は、帰属対象ピークにおいて、網羅的なピーク・パターンの作成とそのパターンにおける一致度の計算が終了したと判断し、ステップS3015へ移行する。終了していない(NO)場合は、m本からn本を取り出す組み合わせが終了していないと判断し、ステップS3009へ移行する。つまり、S3009〜S3014までの処理はm本からn本を取り出す全組み合わせで処理が終了するまで繰り返す。
【0315】
ステップS3015では、「P_Sim_allから最小値を取得(P_Sim_min)」の処理が実行される。この処理では、S3012で保存したP_Sim_allの最小値をP_Sim_minとして取得し、このP_Sim_minを
図81のステップS307に渡し、ピーク・パターンの一致度計算処理を終了する。
[基準群FPの作成]
対象FP特徴量データを基準FP特徴量データと比較するための基準FP特徴量ファイルは、
図88〜
図91のように作成される。
【0316】
図88は、基準FP特徴量統合ファイルを作成するためのフローチャートであり、基準FP作成部のFP作成機能と、基準FPピーク帰属部の基準FPピーク帰属機能と、基準FP帰属結果統合部の基準FP帰属結果統合機能と、基準FPピーク特徴量作成部の基準FPピーク特徴量作成機能とをコンピュータに実現させる。
【0317】
基準FP作成機能は、ステップS10001で実現される。基準FPピーク帰属機能は、ステップS10002、S10003、S10004で実現される。基準FP帰属結果統合機能は、ステップS10005で実現される。基準FPピーク特徴量作成機能は、ステップS10006で実現される。
【0318】
S10001〜S10004は、
図76の対象FP特徴量統合ファイルの作成に係るS1〜S4に対応している。
【0319】
ステップS10001は、3Dクロマト及び特定の検出波長におけるピーク情報を入力データとして「FP作成処理」が実行される。
【0320】
3Dクロマト及びピーク・データ共に、評価基準となる複数の評価基準薬剤(基準漢方薬)ごとに備えられている。
【0321】
ステップS10001では、コンピュータの基準FP作成部が機能し、3Dクロマト及びピーク情報から基準FPが対象FP17(
図2)と同様に作成され、基準FPのデータがファイルとして出力される。
【0322】
ステップS10002は、ステップS10001で出力した全基準FPを入力として、「基準FP帰属処理1」が実行される。
【0323】
ステップS10002では、コンピュータの基準FPピーク帰属部が機能し、全基準FPを対象とし、選択した組み合わせ且つ順番で帰属スコアを算出するために全基準FPから組み合わせを選択してステップS10003へ移行する。
【0324】
ステップS10003は、選択した基準FPの組み合わせを入力とし、「基準FP帰属処理2」が実行される。
【0325】
ステップS10003では、ステップS2で選定した基準FPの組み合わせの全ピークで、
図23〜
図61のように網羅的にピーク・パターンを作成し、次にそれらピーク・パターンの一致度(
図63または
図64のP_Sim)を算出する。また、選定した基準FPの組み合わせのピーク間でUVスペクトルの一致度(
図66のUV_Sim)を算出する。さらにこれら2つの一致度から帰属候補ピークの一致度(
図67のSCORE)を算出する。その算出結果は、判定結果ファイル(
図95の判定結果ファイル例129参照)として出力される。
【0326】
ステップS10004は、ステップS10003で出力した判定結果ファイルを入力とし、「基準FP帰属処理3」が実行される。
【0327】
ステップS10004では、選定した基準FPの組み合わせ間で、帰属候補ピークの一致度(SCORE)をもとに選定した基準FPの組み合わせ間で対応するピークを特定する。その結果は、基準FPごとに基準FP帰属データとして出力される。
【0328】
ステップS10005は、ステップS10004で出力した全基準FP帰属データを入力とし、「基準FP帰属結果統合処理」が実行される。
【0329】
ステップS10005では、コンピュータの基準FP帰属結果統合部が機能し、基準FPピーク帰属部で特定した各基準FPのピーク対応関係を参照し、全基準FP帰属データを統合して基準FP対応表を作成し、ステップS10006へ移行する。ステップS10006では、コンピュータの基準FPピーク特徴量作成部が機能し、基準FP帰属結果統合部で作成された基準FP対応表を基に全基準FPによるピーク特徴量(基準群FP)を作成する。この基準FPピーク特徴量作成部での処理は、基準FP対応表の各ピーク(列)で統計量(最大値、最小値、中央値、平均値、etc)を算出し、その情報を基にピーク(列)を選定する。選定したピーク(列)は、基準群FP(
図98の基準群FP例137参照)として出力される。
[S10005:基準FP対応表の作成]
図89、90は、ステップS10005の「基準FP帰属結果統合処理(基準FP対応表の作成)」の詳細を示すフローチャートである。
【0330】
ステップS10101では、「帰属順番1番の帰属データを統合データとして読み込む」の処理が実行される。この処理では、S10004で1番目に帰属処理しピークの対応関係を特定した基準FP帰属データを統合データとして読み込み、ステップS10102へ移行する。
【0331】
ステップS10102では、「帰属データ2番目以降を順番に読み込む」の処理が実行される。この処理では、まずS10004で2番目に帰属処理しピークの対応関係を特定した基準FP帰属データを統合データのとして読み込み、ステップS10103へ移行する。
【0332】
ステップS10103では、「統合データと帰属データを共通するピーク・データで統合」の処理が実行される。この処理では、統合データと帰属データで共通に存在する基準FPのピーク・データをもとに2つのファイルを統合し、その結果で統合データを更新し、ステップS10104へ移行する。
【0333】
ステップS10104では、「帰属データ中の全てのピークを統合データに追加?」の判断処理が実行される。この処理では、帰属データの全てのピークが統合データに追加されたか否かが判断される。追加された(YES)場合は、ステップS10105へ移行する。追加されていないピーク(欠落ピーク)がある(NO)場合は、この欠落ピークを統合データに追加処理するため、ステップS10107へ移行する。尚、欠落ピークの統合データへの追加処理(S10107−S10120)は、前記S5(対象FP帰属処理4)におけるステップS504−S517と同様の処理が行われる。
【0334】
ステップS10121では、「統合データにTEMP2のデータを追加(全てのリテンション・タイムとピーク)」の処理が実行される。この処理では、TEMP2の全てのリテンション・タイム(R3)とピーク(P1)を統合データの該当箇所に追加し、ステップS10122へ移行する。
【0335】
ステップS10122では、「閾値2 ← 初期値、TEMP2内のデータを全て削除」の処理が実行される。この処理では、UV_Simに更新されている閾値2を初期値に戻し、全欠落ピークのリテンション・タイムやピークなどのデータが入ったTEMP2から全てのデータを削除し、ステップS10104へ戻る。
【0336】
ステップS10104から移行するステップS10105では、「全ての帰属データの処理終了?」の判断処理が実行される。この処理では、全基準データの処理が終了したか否かが判断される。処理が終了(YES)の場合は、全帰属データの統合結果である基準FP対応表を出力するため、ステップS10106へ移行する。全ての処理が終了していない(NO)の場合は、ステップS10102へ戻り、残りの帰属データを順次処理する。
【0337】
ステップS10106では、「統合データを出力(基準FP対応表)」の処理が実行される。この処理では、全帰属データを統合した結果を基準FP対応表として出力し、基準FP対応表の作成処理を終了する。
[S10006:ピーク特徴量化処理]
図91、は、
図88ステップS10006の「ピーク特徴量化処理(基準群FPの作成)」の詳細を示すフローチャートである。
【0338】
ステップS10201では、「基準FP対応表を読み込む」の処理が実行される。この処理では、S10005で作成した基準FP対応表を読み込み、ステップS10202へ移行する。
【0339】
ステップS10202では、「各ピーク(列)で統計量を算出」の処理が実行される。この処理では、基準FP対応表の各ピーク(列)で統計量(最大値、最小値、中央値、平均値、分散、標準偏差、存在数、存在率)を算出し、ステップS10203へ移行する。
【0340】
ステップS10203では、「算出した統計量を参考にピーク(列)を選定」の処理が実行される。この処理では、S10102で算出した統計量を参考にピークを選定し、ステップS10204へ移行する。
【0341】
ステップS10204では、「選定したピーク(列)を出力(基準群FP)」の処理が実行される。この処理では、統計量によりピーク(列)の選定結果を基準群FPとして出力し、基準群FPの作成処理を終了する。
【0342】
図98に前記のように出力する基準FP対応表例137を示す。
[実施例1の効果]
本発明実施例1では、評価対象となる多成分薬剤の3Dクロマト15から特定の波長、例えば203nmで検出されたピークとそのピークのリテンション・タイム、ならびにそのピークのUVスペクトルで構成する対象FP17を作成するFP作成工程113と、対象FP17のピーク帰属に適した基準FPを複数の基準FPから選定する基準FP選定工程115と、対象FPと選定された基準FPのピークそれぞれに対し、例えば時間軸方向前後の少なくとも一方に存在する2本のピークを含めた3本のピークで構成されるピーク・パターンを作成するピーク・パターン作成工程117と、前記ピーク・パターン及びピークのUVスペクトルを比較し対応するピークを特定するピーク帰属工程119と、帰属したピークと複数の基準FPのピークを例えばMT法により比較評価する評価工程121とを備えた。
【0343】
評価対象となる多成分薬剤の3Dクロマト15をこれら5工程(113、115、117、119、121)で処理することで、評価対象薬剤の品質評価の精度及び効率をより向上させることができる。
【0344】
FP作成工程113で作成された対象FP17は、3Dクロマト15と同様に三次元の情報(ピーク、リテンション・タイム及びUVスペクトル)で構成している。そのため、その薬剤特有の情報をそのまま継承したデータである。それにも係らず、データ容量は約1/70に圧縮されているため、3Dクロマト15に比較して、処理すべき情報量を大幅に減少させることができ処理速度を速めることができる。
【0345】
FP作成工程113は、検出波長の異なる複数のFPを合成したFPを作成する。これにより、1つの波長で全ての成分を検出できない成分が組み合わさった多成分薬剤であっても、複数の検出波長のFPを合成することで、全ての成分を含んだ品質評価が可能となる。
【0346】
FP作成工程113は、3Dクロマトで検出された全ピークを含んだFPを作成する。このため、多成分薬剤である漢方薬の品質評価に適している。
【0347】
基準FP選定工程115では、対象FPの帰属に適した基準FPをFP間のリテンション・タイム・出現パターンを比較し、パターンの一致度が良い基準FP選定する。これにより、ピーク帰属処理工程119において、パターンが類似したFP間で帰属処理ができるため、精度の高い帰属が可能となる。
【0348】
ピーク・パターン作成工程117では、帰属対象ピーク及び帰属候補ピークそれぞれで複数の周辺ピークを使って網羅的にピーク・パターンを作成する。これにより、対象FPと基準FPでFP全体のパターンが多少異なっていても、ピーク帰属処理工程119で精度の高い帰属が可能となる。
【0349】
ピーク帰属工程119では、ピーク・パターン作成工程117で作成されたピーク・パターンの一致度に加え、帰属対象ピークと帰属候補ピークのUVスペクトルの一致度も加味して、帰属すべきピークを特定している。そのため、精度の高い帰属が可能となる。
【0350】
ピーク帰属工程119では、対象FPの全ピークを基準FPのピークへ一斉帰属する。そのため、効率のよい帰属処理が可能となる。
【0351】
評価工程121では、多次元データである多成分で構成されたFPをMT法でMD値として1次元に集約し、複数の評価対象ロットを簡単に比較評価する。このため、複数の成分で構成される多成分系薬剤の評価に適している。
【0352】
本発明実施例の多成分薬剤の評価プログラムは、各機能をコンピュータに実現させ、評価の精度及び効率をより向上させることができる。
【0353】
本発明実施例の多成分薬剤の評価装置は、各部3、5、7、9、11を作用させ、評価の精度及び効率をより向上させることができる。
[ピーク・パターンの一致度計算(P_Sim)の変形例]
図63、
図64、
図87でのピーク・パターンの一致度計算(P_Sim)は、FPをピーク高さで作成した上記実施例の場合について適用し、比較対象のピーク高さの差に基づいて計算した。
【0354】
一方、本発明のFP作成方法、FP作成プログラム、FP作成装置、及びFPにおける評価対象のクロマトから検出されたピークについては、上記のようにシグナル強度(高さ)の極大値を意味する場合と、シグナル強度の面積値(ピーク面積)を高さで表現したものを意味する場合の何れも含めることができる。
【0355】
この場合、FPをピーク面積で作成するときも、面積値を高さで表現してFPを作成するため、FPとしては上記実施例のピーク高さで作成する場合と同様の表現となる。このため、FPをピーク高さで作成した場合と同様の上記実施例の処理により同様に評価することができる。
【0356】
但し、FPをピーク面積で作成したときは、比較対象のピーク値の差が大きくなるため、比に基づいた計算とし、取り扱いを容易とするのが適している。
【0357】
以下に、比に基づいて計算するピーク・パターンの一致度(P_Sim)を、n=2、
n=4の場合を例として示す。
n=2の場合
P_Sim= (p1/p2
♯1)×(|(r1−(r2+d)|+1)
+(dn1/fn1
♯1)×(|(cn1−r1)−(en1−r2)|+1)
+(dn2/fn2
♯1)×(|(cn2−r1)−(en2−r2)|+1)
n=4の場合
P_Sim= (p1/p2
♯1)×(|(r1−(r2+d)|+1)
+(dn1/fn1
♯1)×(|(cn1−r1)−(en1−r2)|+1)
+(dn2/fn2
♯1)×(|(cn2−r1)−(en2−r2)|+1)
+(dn3/fn3
♯1)×(|(cn3−r1)−(en3−r2)|+1)
+(dn4/fn4
♯1)×(|(cn4−r1)−(en4−r2)|+1)
ここに、
#1は、比較対象の2つの値の比(大きい値/小さい値) であることを示している。
【0358】
なお、FPをピーク高さで作成した場合にも、比に基づいてピーク・パターンの一致度(P_Sim)を計算することができ、FPをピーク面積で作成した場合にも、上記ピーク高さの差同様に、ピーク面積値の差に基づいてピーク・パターンの一致度(P_Sim)を得ることができる。
[サブルーチン2の変形例]
図100は、
図86に代えて適用するサブルーチン2の変形例に係り、
図81の「対象FP帰属処理2」における「サブルーチン2」の変形例の詳細を示すフローチャートである。この変形例に係る処理により、UVスペクトルの一致度を計算する。
【0359】
本サブルーチン2の変形例では、
図86のサブルーチン2でのRMSDにUVパターンの移動平均の傾き情報(DNS)を加味する処理ができるようにした。DNSは、後述の式で表わされ、UVパターンにおける移動平均値の移動傾きを2つのパターンで比較した時の傾き符号( +/− )の不一致数として定義される。すなわち、DNSは、UVパターンの極大、極小値の位置の一致具合を評価する値である。
【0360】
このDNSの情報を前記RMSDに加味することで、UVスペクトルの波形の一致度をより正確に算出することができる。
【0361】
図100の変形例に係るサブルーチン2において、ステップS2001〜S2008までは、
図86のサブルーチン2とほぼ同一である。但し、ステップS2001では、区間1←w1、区間2←w2の初期設定が追加して行われ、後述する移動平均、移動傾きの計算の区間に用いられる。
【0362】
本変形例のサブルーチン2では、DNS加味のためにステップS2010〜S2013を追加し、ステップS2009AでDNSを加味した一致度の計算を可能とした。
【0363】
ステップS2010では、「DNSを加味する?」の判断処理が実行され、DNSを加味すると判断されたときは(YES)、ステップS2011へ移行し、DNSを加味しないと判断されたときは(NO)、ステップS2009Aへ移行する。DNSを加味するか否かの起因は、例えば初期の設定による。例えば、FPを、ピーク面積で作成したときはDNS加味、FPをピーク高さで作成したときは、DNS非加味に設定する。
【0364】
但し、FPをピーク高さで作成した上記実施例の場合にも、DNSを加味する処理でUVパターン一致度を計算することができ、FPをピーク面積で作成した場合にも、DNSを加味しない上記実施例の処理でUVパターン一致度を計算することができる。
【0365】
ステップS2011では、「区間1(w1)でxとyの移動平均を計算」の処理が実行され、区間1(w1)における移動平均が求められる。区間1(w1)は、UVデータの波長に関する区間であり、ステップS2001の初期設定においてw1=3であれば区間1(3)となり、3個の波長におけるUV強度の平均が求められる。具体的には
図101の図表で後述する。
【0366】
ステップS2012では、「区間2(w2)でxとyの移動傾きを計算」の処理が実行され、区間2(w2)における移動傾きが求められる。区間2(w2)は、ステップS2011で求めた移動平均に関する区間であり、ステップS2001の初期設定においてw2=3であれば区間2(3)となり、ステップS2011で計算した移動平均に基づき、3個の移動平均に渡る傾きの(±)が求められる。具体的には
図101の図表で後述する。
【0367】
ステップS2013では、「xとyの移動傾きの符号の不一致数を算出(DNS)」の処理が実行され、ステップS2012で計算された移動傾きから傾きの(±)の一致数が計算される。移動傾きの+は、
図66において右肩上がりを表し、移動傾きの−は、同右肩下がりを表す。
【0368】
ステップS2013からステップS2009Aへ移行すると、このステップS2009Aの処理においてDNSを加味した一致度の計算が行われる。
【0369】
ステップS2009Aでは、「xとyのUVスペクトルの一致度を計算(UV_Sim)」の処理が実行され、DNSを加味した一致度の計算では、UV_Simを、前記UVスペクトル間距離の二乗和zとxのデータ数aとDNSとから、
UV_Sim = √(z/a)×1.1
DNS
として算出し、このUV_Simを
図81のステップS306に渡し、UVスペクトルの一致度計算処理を終了する。
【0370】
なお、ステップS2010からステップS2009Aへ移行した場合の処理は、
図86のステップS2009と同一である。
【0371】
図101は、移動平均及び移動傾きの計算例を示す図表である。
【0372】
図101の上段は、UVデータ例、中段は、移動平均の計算例、下段は、移動傾きの計算例を示す。UVデータ例は、具体的な数値に代え、UV強度をa1〜a7で表記している。例えば、220nmのUV強度がa1、221nmのUV強度がa2等となる。移動平均の計算例及び移動傾きの計算例も具体的数値に代え、UV強度a1〜a7を使用している。
【0373】
移動平均は、区間1(w1=3)を例とし、ステップS2012(
図100)において、区間(a1、a2、a3)、区間(a2、a3、a4)、・・・毎に計算した値としてm1、m2、・・・が計算される。移動傾きも区間2(3)を例とし、ステップS2013(
図100)において、区間(m1、m2、m3)、区間(m2、m3、m4)、・・・毎に計算した値としてs1、・・・が計算される。例えば、移動平均の差m3−m1が移動傾きとなり、その(±)を取り出す。
【0374】
こうして、FPをピーク面積で作成したときは、基準群FPへの帰属処理ならびに基準FP帰属結果統合処理において、DNSを加味した処理でUVパターン一致度を計算することができる。この計算により、
図66で示す対応する2点の距離(dis)がピーク高さで作成したFPに比較して大きくなっても、取り扱いを容易とし、UVパターン一致度を正確に計算することができる。
[その他]
本発明実施例は、多成分薬剤として漢方薬の評価について適用したが、その他の多成分物質の評価にも適用することができる。
【0375】
上記実施例のFPは、3Dクロマト上での全ピークを対象としたが、細かいデータ、例えば3Dクロマト上でピーク面積が5%未満のピークを除いてFPを作成することもできる。
【0376】
上記実施例のFPは、ピーク高さに基づいて作成し、
図70〜
図74の評価を得たが、ピーク面積に基づいてFPを作成した場合についても、ピーク高さに基づいて作成した上記実施例同様の手順によりMT法によりMD値を求め、
図70〜
図74と同様に評価を得ることができる。