特許第5895902号(P5895902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5895902-圧縮機 図000002
  • 特許5895902-圧縮機 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5895902
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/06 20060101AFI20160317BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20160317BHJP
   F04B 39/12 20060101ALI20160317BHJP
   F04C 29/04 20060101ALI20160317BHJP
   F04C 29/06 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
   F04B39/06 L
   F04B39/00 101W
   F04B39/00 101J
   F04B39/12 J
   F04C29/04 N
   F04C29/06 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-147236(P2013-147236)
(22)【出願日】2013年7月16日
(65)【公開番号】特開2015-21384(P2015-21384A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2014年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(72)【発明者】
【氏名】山田 一穂
(72)【発明者】
【氏名】横井 宏尚
(72)【発明者】
【氏名】曽和 真理
(72)【発明者】
【氏名】城丸 勝俊
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 文博
【審査官】 松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−108488(JP,A)
【文献】 特開平08−049682(JP,A)
【文献】 特開2003−184767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/06
F04B 39/00
F04B 39/12
F04C 29/04
F04C 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を吸入し吐出するための圧縮機構と、前記圧縮機構を収容するハウジングと、前記ハウジング内に回転可能に設けられた主回転シャフトとを備え、前記ハウジングには、前記圧縮機構によって圧縮された流体が吐出される吐出室が形成されている圧縮機において、
前記吐出室に設けられ、前記吐出室に吐出された前記流体を冷却し圧力変動を緩和する消音冷却器と、
前記吐出室に設けられ、前記消音冷却器に対して前記圧縮機構から前記吐出室への前記流体の流入口と反対の下流側に配置される分散壁とを備え、
前記分散壁は、前記主回転シャフトの軸心の径方向に、前記消音冷却器の一部のみと対向すると共に、前記分散壁と前記流入口との間に前記消音冷却器が介在した状態で前記流入口の少なくとも一部と対向するように配置される圧縮機。
【請求項2】
前記分散壁は、前記分散壁に対向する前記消音冷却器における前記流体の圧力を周囲における前記流体の圧力よりも高くするように、前記消音冷却器との間に間隙を有して配置される請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記吐出室を囲む壁部を有し、
前記壁部は、前記流入口と反対側で前記消音冷却器に対向する部位に、制振材料により形成された壁部材を含む請求項1または2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記分散壁は、前記ハウジングが有する前記吐出室を囲む壁部と一体に形成される請求項1〜3のいずれか一項に記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車のように動力装置の稼働中の作動音が静音である車両に、圧縮機が搭載されている。このような車両では、圧縮機の吸気口側及び吐出口側から発生する様々な騒音が目立つようになり、車両の搭乗者を不快にさせるため、圧縮機から発生する騒音を低減する対策が検討されている。また、燃料電池自動車における燃料電池での発電のように、圧縮機での圧縮後の空気が利用される場合には、その効率化のために圧縮後の空気の冷却が必要になる。
【0003】
例えば、特許文献1には、圧縮した後に吐出する流体(空気)の消音機能及び冷却機能を備えた圧縮機が記載されている。この圧縮機は、吸入した空気を圧縮したのち吐出するための圧縮機構を収容するロータ室と、吐出された空気を冷却すると共に圧力変動を緩和するインタクーラコアを収容する消音冷却室とを含むように形成されたシリンダブロックを備えている。シリンダブロックは、消音冷却室をそれ自身で囲み、ロータ室をギヤハウジングと共に囲むように構成されている。ロータ室及び消音冷却室は、シリンダブロックに一体に形成された仕切壁によって仕切られ、仕切壁のギヤハウジング側に形成された吐出孔を介して互いに連通する。そして、圧縮機構で圧縮されて吐出孔から消音冷却室に吐出される吐出脈動を伴った圧縮空気は、インタクーラコアを通過し、その際に冷却されると共に、圧力変動が緩和されることで騒音を低減させて、消音冷却室から外部に吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−108488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1における圧縮機の構成の場合、吐出孔を通過した圧縮空気は、消音冷却室のインタクーラコアを通過する際に冷却されるが、吐出孔は仕切壁のギヤハウジング側に形成されており、圧縮空気がインタクーラコアの一部分のみしか通過せず、圧縮空気の冷却が十分にできないという問題がある。一方、吐出孔とインタクーラコアとの間隔を広くすれば、圧縮空気にインタクーラコアの全領域を通過させることも可能であるが、この場合、圧縮機の体格が極端に大きくなってしまう。
【0006】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、圧縮機の体格を大きくすること無く、吐出流体の冷却機能を向上させることができると共に、騒音の低減を図ることができる圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、この発明に係る圧縮機は、流体を吸入し吐出するための圧縮機構と、圧縮機構を収容するハウジングと、ハウジング内に回転可能に設けられた主回転シャフトとを備え、ハウジングには、圧縮機構によって圧縮された流体が吐出される吐出室が形成されている圧縮機において、吐出室に設けられ、吐出室に吐出された流体を冷却し圧力変動を緩和する消音冷却器と、吐出室に設けられ、消音冷却器に対して圧縮機構から吐出室への流体の流入口と反対の下流側に配置される分散壁とを備え、分散壁は、主回転シャフトの軸心の径方向に、消音冷却器の一部のみと対向すると共に、分散壁と流入口との間に消音冷却器が介在した状態で流入口の少なくとも一部と対向するように配置される。
【0008】
分散壁は、分散壁に対向する消音冷却器における流体の圧力を周囲における流体の圧力よりも高くするように、消音冷却器との間に間隙を有して配置されてもよい。
ハウジングは、吐出室を囲む壁部を有し、壁部は、流入口と反対側で消音冷却器に対向する部位に、制振材料により形成された壁部材を含んでもよい。
分散壁は、ハウジングが有する吐出室を囲む壁部と一体に形成されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る圧縮機によれば、圧縮機の体格を大きくすること無く、吐出流体の冷却機能を向上させることができると共に、騒音の低減を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の実施の形態に係る圧縮機の構成を示す模式的な断面側面図である。
図2図1のII−II線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。
実施の形態
まず、この発明の実施の形態に係る圧縮機101の構成を説明する。なお、以下の実施の形態において、圧縮機101として、車両に搭載され且つ吐出脈動が大きいルーツ式のエアコンプレッサを使用した場合の例について説明する。
【0012】
図1を参照すると、圧縮機101は、流体として空気を圧縮する一対の三葉式のロータ1によって構成される圧縮機構10aを内部に有する圧縮機構部10と、ロータ1を回転駆動するための電動式モータ30aを内部に有する駆動機構部30と、圧縮機構部10及び駆動機構部30の間に設けられてモータ30aの回転駆動力をロータ1に伝達するギヤ機構20aを内部に有するギヤ機構部20とを備えている。圧縮機構部10、ギヤ機構部20及び駆動機構部30は、ボルト等を使用して一体に連結されている。なお、三葉式のロータ1は、径方向外側への3つの突出部をもつ断面形状を有している。
圧縮機構部10は、一対のロータ1を収容するロータ室2aと連通孔2gを通じてロータ室2aに連通する吐出室2bとを内部に有する圧縮機ハウジング2を備えている。圧縮機ハウジング2は、アルミニウム合金で作製されている。ここで、連通孔2gは、流入口を構成している。
【0013】
連通孔2gは、圧縮機ハウジング2と一体に形成されてロータ室2aと吐出室2bとを仕切る隔壁2eを貫通して形成されている。圧縮機ハウジング2において、ロータ室2aは、ギヤ機構部20側に向かって開口する開口部2a1を有している。吐出室2bは、略直方体状の形状を有し、さらに、ロータ室2aの開口部2a1に対して垂直な方向に向かって開口し且つ隔壁2e及び連通孔2gと対向する開口部2b1を有している。なお、連通孔2gは、隔壁2eにおける開口部2a1側に位置している。
さらに、圧縮機ハウジング2における開口部2a1と反対側の側壁2cには、吐出室2bの内部を圧縮機ハウジング2の外部に連通する吐出ポート2fが形成されている。なお、側壁2cには、外部をロータ室2aに連通する図示しない吸入ポートも形成されている。
【0014】
また、圧縮機構部10は、ロータ室2aの開口部2a1を塞ぐようにして、圧縮機構部10のギヤ機構部20側全体を覆う板状のエンドプレート3を有している。エンドプレート3は、アルミニウム合金で作製されている。
エンドプレート3によって塞がれたロータ室2a内には、2つのロータ1が紙面上で奥行き方向に向かって並べられて配置されている。各ロータ1は、筒状部1bと、筒状部1bの外周部分から径方向外側に放射状に突出すると共に筒状部1bの中心軸に沿って延在する3つの畝状の突出部1aとを一体に有して構成されている。そして、各ロータ1は、その中心軸を側壁2cからエンドプレート3に向かう方向に延在させるようにして配置されている。
さらに、各ロータ1は、その2つの突出部1aの間に他方のロータ1の1つの突出部1aが嵌まり込むようにして配置されている。そして、ロータ室2a内では、各ロータ1の2つの突出部1aの間とロータ室2aの内周面2a2とによって囲まれる圧縮空間1cが形成される。
【0015】
また、紙面上で手前側に位置する筒状のロータ1には、中心軸に沿ってロータ1を貫通する主回転シャフト4が挿入されている。主回転シャフト4は、貫通しているロータ1と嵌合しており、このロータ1と一体に回転する。さらに、主回転シャフト4は、エンドプレート3、ギヤ機構部20のギヤハウジング21を貫通して、駆動機構部30のモータハウジング31内に延びている。そして、主回転シャフト4は、圧縮機ハウジング2に設けられた軸受5、エンドプレート3に設けられた軸受6、及びモータハウジング31に設けられた軸受34によって回転自在に支持されている。
ここで、ロータ1及び主回転シャフト4は、圧縮機構10aを構成している。
【0016】
主回転シャフト4は、モータ30aを構成する回転子32の回転シャフトを兼ねており、内部に永久磁石を含む回転子32が主回転シャフト4の周面に一体に回転するように取り付けられている。さらに、モータハウジング31の内表面には、巻線が巻回された固定子33が取り付けられている。そして、巻線に交流電力が印加されると、巻線が発生する回転磁界と永久磁石が発生する磁界との作用によって回転子32が主回転シャフト4と共に回転する。
ここで、回転子32、固定子33及び主回転シャフト4は、モータ30aを構成している。
【0017】
また、紙面上で奥行き側に位置するロータ1には、このロータ1を中心軸に沿って貫通する図示しない従回転シャフトが挿入されている。従回転シャフトは、貫通しているロータ1と一体に回転するように嵌合しており、エンドプレート3を貫通してギヤハウジング21内に延びている。さらに、従回転シャフトは、ギヤハウジング21内において、複数のギヤからなるギヤ機構20aを介して、主回転シャフト4とギヤ係合している。よって、モータ30aによって主回転シャフト4が回転駆動されると、主回転シャフト4の回転がギヤ機構20aを介して従回転シャフトに伝達され、従回転シャフトが主回転シャフト4と反対方向に回転する。これより、2つのロータ1は互いに逆方向に回転する。
【0018】
2つのロータ1が互いに逆方向に回転することによって、2つのロータ1とロータ室2aの内周面2a2との間に形成される空間内に、図示しない吸入ポートを介して空気が吸入され、さらに、この空間内の空気は、回転することによって各ロータ1が内周面2a2との間に形成する圧縮空間1c内に分離されて閉じ込められる。各圧縮空間1cは、各ロータ1と共にロータ1の周囲を回転移動して連通孔2gの近傍で再び合流し、合流した圧縮空間1c内の空気は、さらに回転することで互いに接近する2つのロータ1の突出部1aによって圧縮を受け、加圧された状態で連通孔2gを通って吐出室2bに吐出される。
【0019】
また、圧縮機ハウジング2において、隔壁2eに対向する吐出室2bの開口部2b1は、消音部材40によって外側から塞がれている。消音部材40は、ボルト41によって圧縮機ハウジング2の側壁2c、2d、2h及び2i(図2参照)に固定されている。なお、圧縮機ハウジング2では、側壁2cの高さが側壁2dの高さよりも高くなっている。このため、消音部材40によって塞がれた吐出室2bでは、側壁2d側よりも側壁2c側での高さ(厚み)が大きくなっている。ここで、消音部材40は、壁部材を構成している。
【0020】
消音部材40は、積層された板状の部材によって形成されており、板状部材からなる消音部材40は、吐出室2b内において隔壁2eに向かって卵殻状のシェル形状を呈して窪んでいる。消音部材40は、シェル形状を有することによって、吐出室2b内からの空気等の脈動から受ける力に対する剛性を高めている。さらに、消音部材40を形成する板状部材は、制振性を有する材料によって形成されている。制振性を有する材料には、金属板の間に樹脂を挟んだ制振鋼板若しくは貼付型積層板等の拘束型制振材、金属板に樹脂を貼り付ける、塗布する若しくは吹き付けた非拘束型制振材、又は、金属自体に振動吸収能力をもつ制振合金を使用することができる。なお、制振合金には、片状黒鉛鋳鉄等の複合構造型、サイレンタロイ(Fe−Cr−Al)等の強磁性型(内部摩擦によるもの)、マグネシウム合金等の転移型、Mn−Cu合金等の相晶変形型の合金を使用することができる。さらに、制振性を有する材料は、その損失係数(η)が10−2以上の特性を有している。
【0021】
また、吐出室2b内において、吐出ポート2fと連通孔2gとの間に介在するようにして、水冷式のインタクーラコア50が設けられている。インタクーラコア50は、内部に冷却水が流れる冷却管及び冷却管に取り付けられたフィンによって構成されている。フィンは、冷却管同士の間に形成される流体の流路に対して突出させて設けられ、流体の流路を多数の流路51に区分している。そして、フィンは、流路51を流れる流体と冷却管との伝熱面積を増大させ、互いの熱交換効率を向上させている。ここで、インタクーラコア50は、消音冷却器を構成している。
【0022】
さらに、インタクーラコア50は、消音部材40と隔壁2eとの間において隔壁2eと平行に延在しており、吐出室2bを隔壁2e側と消音部材40側との2つの空間に区画している。このため、連通孔2gから吐出室2b内に吐出された空気は、インタクーラコア50を必ず通過した後、吐出ポート2fから外部に吐出される。このとき、インタクーラコア50内の各流路51の延在方向は、隔壁2eに垂直な方向となっており、連通孔2gの延在方向と平行になっている。
【0023】
また、吐出室2b内において、消音部材40とインタクーラコア50との間となるインタクーラコア50の下流側に分散壁2d1が突出している。
分散壁2d1は、圧縮機ハウジング2の壁部である側壁2dから吐出室2b内に突出している。つまり、分散壁2d1は、側壁2dと一体に形成されており、それによりその剛性が高くなっている。
さらに、分散壁2d1は、インタクーラコア50の近傍において、インタクーラコア50から僅かな間隙Gをあけてインタクーラコア50と平行に延在している。
【0024】
図2をあわせて参照すると、分散壁2d1は、インタクーラコア50の一部のみを覆うようにして設けられている。さらに、分散壁2d1は、連通孔2g及びインタクーラコア50内の流路51の延在方向に沿って、すなわち連通孔2gからの空気の吐出方向D(図1参照)に沿ってみたとき、連通孔2gにおける吐出室2b側の開口部2g1に対向し且つ開口部2g1を少なくとも覆い且つ方向Dに垂直に延在している。
なお、連通孔2gの延在方向と流路51の延在方向とが異なる場合、分散壁2d1は、連通孔2gの開口部2g1に一方の開口部が対向している流路51における反対側の開口部に対向するように設けられ、これらの流路51に沿ってみたとき、これら流路51の開口部全体を少なくとも覆い且つ流路51の延在方向に垂直に延在するのが好ましい。
【0025】
次に、この発明の実施の形態に係る圧縮機101の動作を説明する。
図1を参照すると、圧縮機101において、モータ30aの固定子33に交流電力が印加されると、回転子32が主回転シャフト4と共に回転し、それにより、ギヤ機構20aを介して図示しない従回転シャフトが回転させられ、圧縮機構10aの2つのロータ1が互いに逆の回転方向で回転駆動される。
【0026】
2つのロータ1が回転することによって、圧縮機ハウジング2のロータ室2a内には、外部から空気が吸入されて2つのロータ1が形成する2つの圧縮空間1c内に閉じ込められ、さらに、連通孔2gの近傍で2つの圧縮空間1c内の空気が再び合流する共に2つのロータ1の突出部1aによって圧縮され、連通孔2gを通って吐出室2b内に吐出される。吐出される空気は、2つの圧縮空間1cが合流すると共に合流した圧縮空間1cが連通孔2gに連通する際に脈動を生じ、脈動を伴った状態で連通孔2gから吐出される。
【0027】
吐出された脈動を伴う空気の多くは、連通孔2gの延在方向に沿った吐出方向Dに沿って流れ、インタクーラコア50を通過した後、分散壁2d1に衝突してその向きを変える。しかしながら、分散壁2d1とインタクーラコア50との間隙Gが狭いため、インタクーラコア50を通過した空気の全てが、この間隙Gから円滑に流出することはできない。このため、インタクーラコア50における分散壁2d1と連通孔2gとの間及びその近傍となる流路51内では周囲の流路51内よりも空気の圧力が高くなるので、連通孔2gから吐出された空気は、インタクーラコア50と隔壁2eとの間をより圧力の低い領域に向かって流れた後、インタクーラコア50に流入するようになる。なお、流路51内の空気の圧力は、分散壁2d1と連通孔2gとの間で最も高く、その周囲に遠ざかるに従って低くなるため、連通孔2gからの吐出空気は、インタクーラコア50と隔壁2eとの間において、連通孔2gから離れた領域までにわたって分散して流れる。
【0028】
その結果、連通孔2gからの吐出空気において、より圧力の低い側壁2c側並びに側壁2cに隣接する側壁2h及び2i(図2参照)側に流れた後にインタクーラコア50に流入する空気の割合が高くなるため、連通孔2gからの吐出空気は、インタクーラコア50全体にわたって分散して流入する。つまり、分散壁2d1は、その上流側に高圧領域を形成することによって、連通孔2gからの吐出空気を分散させる一様な流れを発生させ(空気を整流し)、インタクーラコア50に流速を低下させた状態で流入させる。
【0029】
これにより、吐出空気は、インタクーラコア50内を流速を低下させた状態で流れると共に、インタクーラコア50全体にわたって分散されることで、インタクーラコア50内を流れる冷却水と効果的に熱交換を行って冷却される。さらに、吐出空気は、インタクーラコア50内の多数の流路51内に分岐して流れる過程で整流されて圧力変動が緩和され、吐出脈動を低減する。
上述のように、連通孔2gからの吐出空気は、インタクーラコア50全体にわたって分散されて流速を低下させると共に整流された状態で流れるため、インタクーラコア50において効果的に冷却作用を受けると共に吐出脈動の低減作用を受ける。
【0030】
このため、インタクーラコア50と分散壁2d1との間の間隙Gの幅は、分散壁2d1と連通孔2gとの間において吐出空気の圧力を上昇させ、それによりインタクーラコア50全体に吐出空気を分散させるようなものであることが好ましい。また、インタクーラコア50と分散壁2d1との間に間隙Gがない場合は、分散壁2d1に対向するインタクーラコア50内の流路51に空気が流れない部位が生じて、インタクーラコア50の利用に無駄が生じる。一方、間隙Gの幅が広くなり過ぎると、インタクーラコア50を通過した吐出空気が分散壁2d1と衝突する前に拡散してしまい、分散壁2d1と連通孔2gとの間において圧力が上昇しないため、連通孔2gから吐出された空気は、分散、整流されず、連通孔2gに対向する流路51及びその周辺の流路51に集中して流入するようになり、インタクーラコア50の利用に無駄が生じる。
【0031】
また、インタクーラコア50を通過した空気は、消音部材40に向かって流れて衝突した後にその向きを変え、吐出ポート2fから吐出室2bの外部に流出する。このとき、制振性を有する材料で形成されている消音部材40は、衝突する空気の脈動(振動)を吸収し、空気を消音する。なお、吐出室2b内では、消音部材40と隔壁2eとの距離が、側壁2cから側壁2dにわたって変化しているため、消音部材40によって吸収される空気の周波数帯域が広くなっている。さらに、消音部材40は、シェル形状を有していて剛性が高くなっているため、自身の振動を抑制することができ、さらに制振性のある材料特性を有することによって、消音部材40を介した振動の放射を抑える。
従って、吐出室2b内では、吐出空気は、インタクーラコア50及び消音部材40によってその脈動(振動)の低減を受けると共に、インタクーラコア50によって冷却される。
【0032】
このように、この発明に係る圧縮機101は、空気を吸入し吐出するための圧縮機構10aと、圧縮機構10aを収容する圧縮機ハウジング2とを備え、圧縮機ハウジング2には、圧縮機構10aによって圧縮された空気が吐出される吐出室2bが形成されている。圧縮機101は、吐出室2bに設けられ且つ吐出室2bに吐出された空気を冷却し圧力変動を緩和するインタクーラコア50と、吐出室2bに設けられ且つインタクーラコア50に対して圧縮機構10aから吐出室2bへの連通孔2gと反対の下流側に配置される分散壁2d1とを備える。分散壁2d1は、インタクーラコア50の一部のみと対向すると共に、連通孔2gの少なくとも一部と対向するように配置される。
【0033】
このとき、連通孔2gから吐出室2b内に吐出された空気の多くは、一旦、インタクーラコア50を通過して、連通孔2gに対向する分散壁2d1に向かって流れ、分散壁2d1と衝突する。これにより、連通孔2gと分散壁2d1との間のインタクーラコア50の流路51内の圧力が高くなるため、連通孔2gから吐出される空気は、より圧力が低い連通孔2gの周囲に向かって流れた後にインタクーラコア50に流入する割合を増加させ、広い領域にわたってインタクーラコア50に流入するようになる。さらに、インタクーラコア50の広い領域を流通することによって、吐出空気は、効果的に冷却されると共に振動(脈動)を効果的に低減する。よって、圧縮機101は、吐出空気を効果的に冷却すると共に、吐出空気による騒音を効果的に低減することを可能にする。さらに、吐出空気が上述のような挙動をすることから、連通孔2gとインタクーラコア50との間隔を広くする必要がないため、圧縮機101の小型化も可能になる。
【0034】
また、圧縮機101において、分散壁2d1は、分散壁2d1に対向するインタクーラコア50における空気の圧力を周囲における空気の圧力よりも高くするように、インタクーラコア50との間に間隙Gを有して配置される。このとき、分散壁2d1に対向するインタクーラコア50の流路51を流れた吐出空気は、間隙Gから吐出室2b内に流出する。これにより、分散壁2d1に対向する流路51を吐出空気の冷却及び振動低減に利用することができる。さらに、流路51内及びその下流では、分散壁2d1に対向する領域で圧力が最も高くなり、分散壁2d1から遠ざかるに従って圧力が低下する。よって、吐出空気を、インタクーラコア50に流入する前に、連通孔2gから離れる方向に効果的に分散させることが可能になり、インタクーラコア50全体にわたって流入させることができる。この場合、吐出空気は、分散することによって流速を低下させてインタクーラコア50の流路51に流入するため、流路51内を円滑に流れることができる。これにより、インタクーラコア50による吐出空気の圧力損失を低減することができる。さらに、圧縮機101が高回転で吐出流量が多い場合でも、吐出空気は、インタクーラコア50の全体で効果的に振動低減作用及び冷却作用を受けて、その振動を低減すると共に温度を低下させることができる。
【0035】
また、圧縮機101において、圧縮機ハウジング2は、吐出室2bを囲む壁部を有し、壁部は、連通孔2gと反対側でインタクーラコア50に対向する部位に、制振材料により形成された消音部材40を含む。これにより、インタクーラコア50を通過後の吐出空気の振動を消音部材40によって低減することができ、騒音をさらに低減することが可能になる。
また、圧縮機101において、分散壁2d1は、圧縮機ハウジング2が有する吐出室2bを囲む側壁2dと一体に形成される。これにより、分散壁2d1の剛性が向上し、吐出空気が衝突することで分散壁2d1自体が振動することによる騒音を低減することができる。
【0036】
また、実施の形態の圧縮機101では、シェル形状をした消音部材40を設けていたが、消音部材40は、一方向にのみ湾曲するかまぼこ状であってもよい。この場合も、消音部材40の剛性が高くなり、消音部材40からの音の放射が低減される。或いは、消音部材40は、平板状でもよい。この場合、消音部材40は、その材料特性の作用によって吐出空気の振動を低減することができる。
また、実施の形態の圧縮機101では、圧縮機ハウジング2に別部材の消音部材40を設けていたが、消音部材40を設けずにこの部位の壁部自体をシェル形状にしてもよい。この場合、壁部の剛性が向上するため、この壁部からの音の放射が低減される。
【0037】
また、実施の形態の圧縮機101では、分散壁2d1は、圧縮機ハウジング2と一体に形成されていたが、これに限定されるものでなく、別体で設けられてもよい。又は、分散壁は、消音部材40と一体に同一材料で形成されてもよい。これにより、分散壁自体が、これに衝突する吐出空気の振動を低減することができる。
また、実施の形態の圧縮機101において、吐出室2bには、水冷式のインタクーラコア50が設けられていたが、これに限定されるものでなく、空冷式のインタクーラコアが設けられてもよい。
【0038】
また、実施の形態の圧縮機101では、インタクーラコア50と分散壁2d1との間に間隙Gが設けられていたが、インタクーラコア50と分散壁2d1との間に間隙Gが設けられていなくてもよい。この場合、分散壁2d1に対抗するインタクーラコア50内の流路51を有効活用することができなくなるが、分散壁2d1に対向していない部分のインタクーラコア50を利用できるようになる。従って、インタクーラコア50において、分散壁2d1が対向していない部分が、分散壁2d1が対向している部分よりも多い場合には効果がある。
また、実施の形態の圧縮機101では、分散壁2d1は、インタクーラコア50内の空気の流路51を介して連通孔2gに対向し且つ流路51を介して連通孔2gを全て覆うように配置されていたが、これに限定されるものでなく、分散壁2d1は、連通孔2gの少なくとも一部を覆っていればよい。この場合も、吐出空気が分散壁2d1に衝突するため、インタクーラコア50の広い領域にわたって分散した吐出空気が流入する。
【0039】
また、実施の形態において、圧縮機101は、ルーツ式のエアコンプレッサとしていたが、これに限定されるものでなく、スクリュー式又はターボ式の圧縮機等の吐出脈動を発生する圧縮機を適用することができる。さらに、圧縮機101は、エアコンプレッサに限定されるものでなく、スーパーチャージャや冷媒等のその他の流体を圧縮して吐出するものでもよい。
【符号の説明】
【0040】
2 圧縮機ハウジング、2b 吐出室、2d 側壁(壁部)、2d1 分散壁、2g 連通孔(流入口)、4 主回転シャフト、10a 圧縮機構、40 消音部材(壁部材)、50 インタクーラコア(消音冷却器)、101 圧縮機、G 間隙。
図1
図2