(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態では、表面実装型の圧電デバイスとして、水晶振動子に適用して説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る水晶振動子の断面図であり、
図2は、その底面図であり、
図3は、底面側から見た斜視図である。
【0028】
この実施形態の水晶振動子1は、
図1に示すように、電子部品素子であるATカット水晶からなる水晶振動片2と、この水晶振動片2を保持し、水晶振動片2を気密封止するパッケージ3とを備える。パッケージ3は、上部が開口した凹部を有し、水晶振動片2を収納保持するベース4と、ベース4に保持した水晶振動片2を気密封止する蓋5とを備えており、ベース4の開口部に蓋5が封止材6により接合されて、気密封止された内部空間20が形成される。この内部空間20に、水晶振動片2が、ベース4の電極パッド(図示せず)に導電性接着剤7などを用いて電気機械的に接合されている。
【0029】
ベース4は、アルミナ等のセラミック材料からなり、
図1に示すように、底部4aと、底部4aの外周に沿って上方に延出した堤部4bとから構成された箱状に成形されている。このベース4は、セラミックを複数層積層して上部が開口した凹状に一体焼成してなる。
【0030】
また、平面視が略矩形のベース4の外周の4つの角部には、
図2及び
図3に示すように、内方へ窪んだキャスタレーション8〜11が、ベース4の底面から上面にかけて形成されている。更に、前記キャスタレーション8と前記キャスタレーション11との間のベース4の側面、及び、前記キャスタレーション9と前記キャスタレーション10との間のベース4の側面には、内方へ窪んだ上下方向へ延びるキャスタレーション12, 13が形成されている。このキャスタレーション12,13は、平面視が略矩形のベース4の対向する短辺の中央部分に形成されている。
【0031】
上下に延びるキャスタレーション12 ,13の下部、すなわち、ベース4の底面寄りの部分には、
図3に示すように側面電極14,15(側面電極15は図示省略)がそれぞれ形成されている。
【0032】
この側面電極14,15は、ベース4の底面に形成された一対の端子電極16 ,17にそれぞれ電気的に接続されており、この端子電極16,17が、外部の回路基板に導電性接合材として、例えば、はんだを用いて接続される。その際に、側面電極14,15が形成されたキャスタレーション12,13へのはんだの這い上がりによって接続状態を、光学的検査等によって確認することができる。
【0033】
ベース4の底面の各端子電極16,17は、一対の対向する各一辺(短辺)に沿って、互いに対向するように対称に形成された、いわゆる、対向2端子となっている。一方の端子電極16は、一方の短辺の両側の2つの角部に対向する2つの面取り部16
1,16
2を有し、他方の端子電極17は、他方の短辺の両側の2つの角部に対向する2つの面取り部17
1.17
2を有する。各面取り部16
1,16
2;17
1.17
2は、各端子電極16,17の各角部を、傾斜面で面取りした平面状の面取り部16
1,16
2;17
1.17
2となっている。
【0034】
各端子電極16,17は、上記の側面電極14,15に連なるキャスタレーション部分及び前記面取り部16
1,16
2; 17
1.17
2を除いて平面視矩形である。各端子電極16,17の矩形の各短辺が、同じく平面視矩形のベース4の底面の長辺に対向し、各端子電極16,17の矩形の各長辺が、ベース4の底面の短辺に対向するように形成されている。
【0035】
各端子電極16,17上には、各端子電極16,17より僅かに平面積の小さくほぼ同形状、すなわち、平面視相似形状のバンプ16B,17Bがそれぞれ形成されている。各バンプ16B,17Bには、各端子電極16,17と同様に、ベース4の矩形の底面の4つの各角部にそれぞれ対向する面取り部16
1B,16
2B;17
1B,17
2Bがそれぞれ形成されている。バンプ16B,17Bの各面取り部16
1B,16
2B;17
1B,17
2Bは、端子電極16,17の各面取り部16
1,16
2;17
1.17
2と同様に、平面状である。
【0036】
これらバンプ16B,17Bは、端子電極16,17のメタライズ上部に同材質のメタライズ(タングステン、モリブデン等)をほぼ同形状で積層して一体形成されている。
【0037】
また、これら端子電極16,17とバンプ16B,17Bは、これらのメタライズ材料がベース4と一体的に焼成され、当該メタライズ上部にニッケルメッキが形成され、その上部に金メッキが形成されて構成されている。
【0038】
各端子電極16,17は、キャスタレーション12,13に形成された側面電極14,15を介してベース4の
図1に示される内部空間20の上記電極パッド(図示せず)と電気的に接続されている。
【0039】
この電極パッドに対して、水晶振動片2の引出電極(図示せず)が、例えば導電性接着剤7により導電接合され、ベース4に水晶振動片2が保持されている。この水晶振動片2の表裏面には、図示しない一対の励振電極と上記引出電極が形成されている。
【0040】
ベース4を気密封止する蓋5は、板状のアルミナ等のセラミック材料からなり、ガラス等の封止材6を用いて封止される。蓋5は、ベース4と同様に平面視矩形であるが、若干小さい形状となっている。
【0041】
上記構成を有するベース4の内部空間20に水晶振動片2を収納保持し、蓋5にて水晶振動片2を密閉し、加熱炉による溶融接合などの手法により水晶振動片2の気密封止を行うことで水晶振動子、すなわち、電子部品用パッケージを用いた圧電デバイスの完成となる。
【0042】
完成品である水晶振動子は、例えば、ガラスエポキシ材からなる回路基板の電極パターンの上部に、はんだ等の導電性接合材を介して接合される。
【0043】
この実施形態では、はんだクラックの進展・進行を抑制して電子部品用パッケージと回路基板の搭載接合の信頼性を向上させるために、次にようにしている。
【0044】
電子部品用パッケージと回路基板との間の熱膨張係数差によって、パッケージと回路基板とを接合する導電性接合材であるはんだに対して応力が生じた場合、
図4に示すように、ベース4の底面の外周角部に近接する領域である最大応力箇所Smaxからはんだクラックが発生することが多く、継続して同様の応力による影響を受けることで発生したはんだクラックが、ベース4の底面の中心部の最小応力箇所Sminに向かって進展・進行する。そして最終的に端子電極16,17全体にはんだクラックが進行してパッケージと回路基板のはんだによる接合が剥離しまうことになる。
【0045】
このため、本実施形態では、ベース4の各角部に対向するように形成した端子電極16,17の面取り部16
1,16
2;17
1,17
2によって、回路基板と端子電極16,17とを接合するはんだ等の導電性接合材のクラックが、ベース底面の外周角部の最大応力箇所から発生して、ベース底面の中心部の最小応力箇所へ向かって進展・進行する際に、前記面取り部16
1,16
2;17
1,17
2によって、応力を効果的に分散させる共に、クラックの進行方向を屈曲させて、クラックの進展・進行を抑制するようにしている。
【0046】
一方、各端子電極16,17に連なる側面電極14,15が形成されたキャスタレーション12,13の開口サイズ、すなわち、その開口幅及び開口の深さは、可及的に大きい方が、端子電極6,7を、はんだ等の導電性接合材で回路基板に接続したときに、はんだの一部が、キャスタレーションの側面電極14,15に這い上がってフィレットを形成するので、接合強度を高めることができると共に、フィレット形状の光学的な検査が容易となるので好ましい。
【0047】
しかしながら、キャスタレーション12,13の開口サイズが大きくなると、キャスタレーション12,13に近接する上記の端子電極16,17の面取り部16
1,16
2;17
1,17
2によるクラックの進展・進行を抑制することが十分にできなくなる。
【0048】
そこで、本件発明者は鋭意研究した結果、端子電極16,17の各面取り部16
1,16
2;17
1,17
2との関係で、キャスタレーション12,13の開口幅を規定することによって、クラックの進展・進行を十分抑制できることを見出した。
【0049】
すなわち、本件発明者は、面取り部によるはんだクラックの抑制を阻害しないようにキャスタレーションを形成するために、有限要素法を用いた構造解析である、はんだクラックシミュレーションを行い、キャスタレーション12,13の開口幅の違いによるはんだの歪差を検証し、キャスタレーション12,13の好ましい開口幅を求めた。
【0050】
このキャスタレーション12,13の開口幅は、端子電極16,17の各面取り部16
1,16
2;17
1,17
2との関係で規定するものであるので、先ず、
端子電極16,17の各面取り部16
1,16
2;17
1,17
2について説明する。
【0051】
図5は、端子電極16,17の各面取り部16
1,16
2;17
1,17
2を説明するためのベース4の底面図であり、この
図5では、一方の端子電極16のバンプ16Bの一方の面取り部16
1Bを代表的に示して説明する。
【0052】
バンプ16Bの面取り部16
1Bの面取り角度θは、次にように規定した。
【0053】
すなわち、端子電極16の内側端部の中心O1と、ベース4の底面の角部の頂点V1とを結ぶ直線L1に対する垂線であって、バンプ16Bの面取り部16
1Bを通る垂線を、バンプ用の基準線L2とする。端子電極16の内側端部の中心O1は、平面視が略矩形の端子電極16の対向する長辺の、ベース4の底面の中心Oに近接する側の長辺の中央点となっている。
【0054】
このバンプ用の基準線L2と、バンプ16Bの面取り部16
1Bの面取りした平面に沿った直線L3との為す角度θを、バンプ16Bの面取り部16
1Bの面取り角度とした。
【0055】
なお、
図5は、面取り角度θを明示するための図であって、
図5のバンプ16Bの面取り部16
1Bの実際の面取り角度θは、θ=0°である、すなわち、面取りした平面に沿う前記直線L3は、前記バンプ用の基準線L2に一致するのであるが、面取り角度θを明示するために、敢えて直線L3を、面取りした平面に対して傾斜した直線として示している。
【0056】
同様に、端子電極16の面取り部16
1の面取り角度θは、端子電極16の内側端部の中心O1と、ベース4の底面の角部の頂点V1とを結ぶ直線L1に対する垂線であって、端子電極の面取り部16
1を通る垂線を、基準線L8とし、この基準線L8と、端子電極の面取り部16
1の面取りした平面に沿った直線との為す角度θを、端子電極の面取り部16
1の面取り角度とする。
【0057】
なお、端子電極の面取り部16
1の面取り角度θを規定する基準線L8、及び、バンプ16Bの面取り部16
1Bの面取り角度θを規定する基準線L2は、いずれも、端子電極16の内側端部の中心O1と、ベース4の底面の角部の頂点V1とを結ぶ直線L1に対する垂線であって、互いに平行であり、端子電極16の面取り部16
1、及び、バンプ16Bの面取り部16
1Bをそれぞれ通る垂線である。各垂線L2,L8は、前記直線L1と、各面取り部16
1,16
1Bの面取りした平面に沿った各直線との交点を通る。
【0058】
本実施形態では、端子電極16,17の各面取り部16
1,16
2;17
1,17
2の面取り角度θは、θ=0°であり、また、バンプ16B,17Bの各取り部16
1B,16
2B;17
1B,17
2Bの面取り角度θもθ=0°である。
【0059】
次に、かかる端子電極16,17の各面取り部16
1,16
2;17
1,17
2に対して開口幅が規定されるキャスタレーション12,13について説明する。
【0060】
図6は、キャスタレーション12,13の開口幅を説明するためのベース4の底面図であり、ここでは、一方のキャスタレーション12に適用して説明するが、他方のキャスタレーション13も同様である。
【0061】
この実施形態では、ベース4の底面の一方の短辺の両端の角部にそれぞれ対向する端子電極16の各面取り部16
1,16
2の面取り方向に沿った延長線L6,L7が、前記短辺とそれぞれ交差する各交差点を、C1,C2としたきに、前記短辺の中央部分に形成するキャスタレーション12の開口幅W、すなわち、ベース4の側面におけるキャスタレーション12の幅Wが、両交差点C1,C2間内に収まるようにしている。上記延長線L6,L7は、面取り部16
1,16
2の面取りした各平面に沿った直線である。
【0062】
このようにキャスタレーション12を、端子電極16の面取り部16
1,16
2の面取り平面に沿った延長線L5,L6と前記短辺との両交差点C1,C2間に収まるように形成することによって、以下に説明するように、端子電極16,17の面取り部16
1,16
2;17
1,17
2によるクラックの進展・進行を抑制する効果を阻害することなく、必要なキャスタレーション12,13を形成することができる。
【0063】
すなわち、本件発明者は、面取り部によるはんだクラックの抑制を阻害しないキャスタレーションを形成するために、上記のように有限要素法を用いた構造解析である、はんだクラックシミュレーションを行い、キャスタレーション12,13の開口幅の違いによるはんだの歪差を検証し、キャスタレーション12,13の好ましい開口幅を求めた。
【0064】
図7は、このはんだクラックシミュレーションに用いたモデル全体を示す斜視図である。このシミュレーションモデルは、セラミックからなるベース4に、セラミックからなる蓋5が接合された電子部品用パッケージが、はんだ18を用いてガラスエポキシ基板19に実装されたものである。
【0065】
このシミュレーションモデルのサイズは、ベース4の底面のサイズが、3.2mm*2.5mmであり、端子電極16,17のサイズが、1.2mm*2.3mmであり、ガラスエポキシ基板19のサイズが、6.0mm*5.0mm*1.6mmである。
【0066】
有限要素法を用いた構造計算では、
図7に示すシミュレーションモデルの全体の1/4、すなわち、
図7の破線で示すように、1つの角部を含む1/4の対称部分を用いた。
図7の例では、1つの角部は、上記
図2のキャスタレーション11が形成された角部に対応する。
【0067】
荷重は、モデル全体に一様に+100℃を与えるものとし、+25℃を基準とした場合、+125℃となるときの条件を計算した。すなわち、このクラックシミュレーションでは、熱加重条件を、室温(25℃)を応力の出発点(応力フリー)とし、125℃まで熱加重をかけ、線形解析を実施した。
【0068】
1/4のシミュレーションモデルの拡大図である
図8に示す各構成材料、すなわち、端子電極16であるタングステン(W)、ベース4及び蓋5であるセラミック(Ceramics)、封止材6である封止ガラス(FlintGlass)、導電性接合材であるはんだ18、及び、ガラスエポキシ基板19であるFR−4の物性値は、下記表1の値を使用した。
【0070】
このはんだクラックシミュレーションでは、
図9(a)〜(c)に示すように、キャスタレーション12の開口幅Wを、W1、W2、W3と異ならせた3種類のキャスタレーション12a〜12cを有するシミュレーションモデルについて、上記と同様のはんだクラックシミュレーションを行った。
図9では、一方のキャスタレーション12について示しているが、他方のキャスタレーション13も同様である。開口幅W1、W2、W3は、開口幅W1が小さく(小)、開口幅W2が中程度(中)であり、開口幅W3が大きい(大)。
【0071】
図9(a),(b)に示される、開口幅W1,W2のキャスタレーション12a,12bは、いずれも開口幅W1,W2が、上記の両交差点C1,C2間にあるが、
図9に示される開口幅W3のキャスタレーション12cは、その開口幅W3が、上記の両交差点C1,C2間よりも大きくなっている。
【0072】
次に、シミュレーション結果について説明する。
【0073】
はんだクラックは、はんだ部に加わる歪変動に大きな影響を受けるため、はんだの最大主歪みに注目した。最大主歪みは、膨張方向に最大になるテンソル6成分を座標回転して合成した値である。
【0074】
図10(a)〜(c)は、
図9(a)〜(c)に示す3種類のキャスタレーション12a〜12cを有するシミュレーションモデルについてのはんだ部分の最大主歪みのコンター図(等高線図)である。
【0075】
この
図10(a)〜(c)は、上記
図7,8の1/4のシミュレーションモデルのはんだ部分のみを示すものであり、このはんだ部分は、端子電極16、バンプ16B、面取り部16
2にそれぞれ対応する形状部分16´,16B´,16
2´を有すると共に、キャスタレーション12a,12b,12cの部分に対応してはんだフィレット12a´,12b´,12c´が上方へ延びている。
【0076】
図10(c)の円形の枠で示すように、キャスタレーション12cの開口幅が大きいために、端子電極16の面取り角度θに沿った面取り部16
2が小さくなって、応力を十分に分散させることがてきず、主歪みが大きくなっている。
【0077】
図11は、端子電極16の長辺方向であるY座標方向に沿ったはんだの主歪みのコンター図であり、端子電極16の短辺方向(X座標方向)の角部をA点とし、前記長辺方向(Y座標方向)の角部をB点としている。
【0078】
このA−B間の主歪みの値をプロットすると、
図12に示すようになる。
【0079】
図12に示されるように、開口幅W3が、上記の両交差点C1,C2間よりも大きいキャスタレーション12cは、開口幅W1,W2が両交差点C1,C2間にあるキャスタレーション12a,bに比べて、主歪みが、A−B間の中間点からB点に近接するにつれて大幅に大きくなっていることが分かる。
【0080】
本実施形態では、上記
図6に示すように、ベース4の両側面のキャスタレーション12,13を、その開口幅Wが、端子電極16,17の面取り部16
1,16
2;17
1,17
2の面取り方向に沿った延長線がベース4の底面の短辺とそれぞれ交差する両交差点間内にそれぞれ収まるように形成している、具体的には、開口幅Wを、上記
図9(b)に示す開口幅W2としているので、端子電極16,17の面取り部16
1,16
2;17
1,17
2が、クラックの進展・進行を抑制するのを阻害することなく、キャスタレーション12,13を形成することができる。また、端子電極16,17の面取り部16
1,16
2;17
1,17
2と共に、クラックの進展・進行を抑制するバンプ16B,17Bの各取り部16
1B,16
2B;17
1B,17
2Bに対しても悪影響を及ぼすことがない。
【0081】
一方、開口幅が、前記両交差点間内に収まるように形成されるベース4の側面のキャスタレーション12,13には、端子電極16,17に連なる側面電極14,15が形成されるので、端子電極16,17を、はんだ等の導電性接合材で回路基板に接続したときに、はんだの一部が、キャスタレーション12,13の側面電極14,15に這い上がってフィレットを形成するので、接合強度を高めることができると共に、フィレット形状の光学的な検査等が容易となる。
【0082】
以上は、端子電極16,17の各面取り部16
1,16
2;17
1,17
2の面取り角度θ、及び、バンプ16B,17Bの各取り部16
1B,16
2B;17
1B,17
2Bの面取り角度θが、上記のようにいずれもθ=0°であった。
【0083】
本件発明者は、はんだクラックを抑制する上で、効果的な面取り角度θを把握するために、上記のはんだクラックシミュレーションにおいて、面取り角度θを変更したシミュレーションも実施した。
【0084】
すなわち、上記
図5に示される端子電極16,17の各面取り部16
1,16
2;17
1,17
2の面取り角度θ、及び、バンプ16B,17Bの各取り部16
1B,16
2B;17
1B,17
2Bの面取り角度θを、
図13(a)〜(f)に示すように、時計方向と反時計方向とに5°ずつそれぞれ変更し、最大15°までについて、シミュレーションを実施した。この
図13では、端子電極16の面取り部16
1及びバンプ16Bの面取り部16
1Bを代表的に示しているが、他の面取り部も同様である。
【0085】
なお、キャスタレーション12,13の開口幅Wについては、上記
図9(b)に示す「中」の開口幅W2として、シミュレーションを実施した。
【0086】
次に、シミュレーション結果について説明する。
【0087】
図14は、はんだ部分の最大主歪のコンター図(等高線図)である。この
図14に示すように、このはんだ部分は、端子電極16、バンプ16B、面取り部16
2にそれぞれ対応する形状部分16´,16B´,16
2´を有すると共に、キャスタレーション12の部分に対応してはんだフィレット12´が上方へ延びている。
【0088】
面取り角度θを上記のように変更したときの主歪みを、次のようにして評価した。
【0089】
すなわち、上記の面取り角度θ毎に、
図15に示すように、端子電極16の短辺方向であるX座標方向に沿った主歪みを、はんだの前記短辺方向の角部のA点を基準のX座標「0」として、ラインL4に示すように、A点を含むその両側の複数の点について算出した。
【0090】
同様に、上記の面取り角度θ毎に、
図16に示すように、端子電極16の長辺方向であるY座標方向に沿った主歪みを、はんだの前記長辺方向の角部のB点を基準のY座標「0」として、ラインL5で示すように、B点を含むその両側の複数の点について算出した。
【0091】
図17に、面取り角度θ=0°(基準)、+10°、+15°、−10°、−15°の各場合における、X座標方向に沿った主歪みの変化を示す。この
図17において、横軸(X座標)は、
図15のA点を基準のX座標「0」とし、ラインL4に沿う位置を示し、縦軸は、X座標方向に沿った主歪みを示す。また、
図18に、面取り角度θ=0°(基準)、+10°、+15°、−10°、−15°の各場合における、Y座標方向に沿った主歪の変化を示す。この
図18において、横軸(Y座標)は、
図16のB点を基準のY座標「0」とし、ラインL5に沿う位置を示し、縦軸は、Y座標方向に沿った主歪みを示す。
【0092】
図17に示すように、X座標方向に沿った主歪みは、基準のX座標であるA点の近傍が比較的大きく、また、
図18に示すように、Y座標方向に沿った主歪みは、基準のY座標であるB点の近傍が比較的大きい。
【0093】
そこで、上記の面取り角度θ毎に、基準のA点及びB点の近傍である、−0.05〜+0.05の範囲におけるX座標方向及びY座標方向に沿った主歪の各平均値をそれぞれ算出した。
【0094】
図19に、各面取り角度θ=−15°、−10°、−5°、0°、5°、10°、15°のA点近傍のX座標方向に沿った主歪みの平均値、及び、B点近傍のY座標方向に沿った主歪みの平均値を示す。
【0095】
この
図19の各面取り角度θにおいて、A点近傍のX座標方向に沿った主歪みの平均値、及び、B点近傍のY座標方向に沿った主歪みの平均値の内、主歪みが大きい方を抽出してプロットしたのが
図20である。
【0096】
図20に示されるように、面取り角度θ=0°に近づくにつれて主歪みの平均値が小さくなるとことが分かる。主歪みを小さくしてはんだクラックを抑制するためには、面取り角度θは、±10°以内が好ましく、更に見好ましくは、面取り角度θは、±5°以内である。
【0097】
なお、ベース4の角部に対向するように形成した端子電極16,17及びバンプ16B,17Bの面取り部として、上記のような平面状の面取り部以外の、
図21(a),(b)に示すように、外方へ膨らんだ丸面(R形状)の面取り部16
1−R,16
1B−R、あるいは、内方へ窪んだ逆丸面(逆R形状)の面取り部16
1−R´,16
1B−R´についてもシミュレーションを行ったが、上記の平面状の面取り部に比べて、いずれも主歪みが大きくなることが確認された。
【0098】
このように、ベース4の底面の端子電極16,17及びバンプ16B,17Bの面取り部16
1,16
2;17
1,17
2;16
1B,16
2B;17
1B,17
2Bの面取り角度θを、±10°以内、好ましくは、±5°以内とすることによって、回路基板と端子電極16,17とを接合するはんだ等の導電性接合材のクラックが、ベース底面の外周角部の最大応力箇所から発生して、ベース底面の中心部の最小応力箇所へ向かって進展・進行する際に、前記面取り部16
1,16
2;17
1,17
2;16
1B,16
2B;17
1B,17
2Bによって、応力を効果的に分散させることができると共に、クラックの進行方向を屈曲させることができるので、クラックの進展・進行を抑制することができる。
【0099】
上記実施形態では、ベース4の側面に形成されたキャスタレーション12,13の開口サイズは、上下方向同じであったけれども、本発明の他の実施形態として、キャスタレーション12,13の開口サイズを、上下方向で異ならせてもよい。
【0100】
図22(a),(b)は、キャスタレーション12,13の上部の開口サイズを、下部の開口サイズに比べて小さくした実施形態のベース底面の斜視図及びキャスタレーション12部分の拡大図である。なお、
図22では、一方のキャスタレーション12のみを示しているが、他方のキャスタレーション13も同様である。
【0101】
図22(b)に示すように、キャスタレーション12は、その上部12
2が、側面電極14が形成された下部12
1に比べて、開口サイズ、すなわち、開口幅及び開口深さが小さくなっている。
【0102】
この実施形態では、キャスタレーション12の上部12
2は、下部12
1に比べて、開口幅、及び、開口深さのいずれも小さくなっている。なお、開口幅または開口深さのいずれか一方のみを小さくしてもよい。
【0103】
ベース4は、上記のようにセラミック層が複数層積層されて構成されるが、キャスタレーション12の開口サイズが小さい上部12
2は、前記複数層の少なくとも最上層を含み、下部12
1は、残余の層となっている。
【0104】
ベース4の上部には、
図1に示すように、蓋5が接合されて気密に封止されるのであるが、この実施形態では、ベース4の側面に形成されるキャスタレーション12,13は、上部における開口サイズが小さいので、その分、封止面積が大きくなり、封止強度を高めることができる。
【0105】
一方、ベース4の側面に形成されるキャスタレーション12,13の下部、すなわち、側面電極14,15が形成されている部分は、キャスタレーション12,13の開口サイズが大きいので、導電性接合材であるはんだによる電気的な接続を確実、強固に行うことができる。
【0106】
なお、開口サイズが大きいキャスタレーション12,13の下部におかいても、キャスタレーションの開口幅は、上記のように、端子電極16,17の各面取り部の面取り方向に沿った延長線と、ベース4の底面の短辺との両交差点間内に収まるようにしている。
【0107】
上記実施形態では、端子電極16,17の面取り部16
1,16
2;17
1,17
2の面取り角度θと、バンプ16B,17Bの面取り部16
1B,16
2B;17
1B
,17
2Bの面取り角度θは、互いに等しかったけれども、互いの面取り角度θを異ならせてもよい。この場合、キャスタレーション12,13の開口幅は、上記実施形態と同様に、端子電極16,17の面取り部16
1,16
2;17
1,17
2によって規定すればよい。
【0108】
また、端子電極16,17上のバンプ16B,17Bは、省略してもよい。
【0109】
上記実施形態では、水晶振動子に適用して説明したけれども、本発明は、水晶振動子に限らず、例えば、水晶フィルタや水晶発振器、その他の表面実装型の電子部品に適用できるものである。
【0110】
上記実施形態では、パッケージ3は、蓋5を備えていたが、本発明では、蓋5を省略してもよい。