(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
芳香環と反応性ケイ素含有基とを有する化合物(A)と、グリシジル化合物(B)と、はしご型シルセスキオキサン構造を有する化合物(C)とを含有する、偏波保持光ファイバー用接着剤組成物。
前記化合物(A)が、エポキシ化合物(e)と、前記エポキシ化合物(e)が有するエポキシ基と反応する反応性基を有する化合物(f)とを反応させることで得られる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏波保持光ファイバー用接着剤組成物。
前記化合物(C)が、エポキシシラン、アミノシラン、ビニルシラン、メタクリルシラン、アクリルシランおよびメルカプトシランからなる群より選択される少なくとも1種のシランを縮合させることで得られる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の偏波保持光ファイバー用接着剤組成物。
前記化合物(A)の含有量と、前記グリシジル化合物(B)の含有量と、前記化合物(C)の含有量との合計(A+B+C)に対する、前記化合物(A)の含有量の割合(A/(A+B+C))が、20〜70質量%であり、
前記合計(A+B+C)に対する、前記グリシジル化合物(B)の含有量の割合(B/(A+B+C))が、20〜70質量%であり、
前記合計(A+B+C)に対する、前記化合物(C)の含有量の割合(C/(A+B+C))が、5〜40質量%である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の偏波保持光ファイバー用接着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の偏波保持光ファイバー用接着剤組成物について説明する。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、(メタ)アクリル基は、アクリル基またはメタクリル基を表す。
【0012】
[偏波保持光ファイバー用接着剤組成物]
本発明の偏波保持光ファイバー用接着剤組成物(以下、単に、本発明の組成物とも言う)は、芳香環と反応性ケイ素含有基とを有する化合物(A)と、グリシジル化合物(B)と、はしご型シルセスキオキサン構造を有する化合物(C)とを含有する。
本発明の組成物はこのような構成をとることにより、偏波保持光ファイバーのコネクターに用いた場合に高い消光比を示すものと考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
【0013】
上述のとおり本発明の組成物は芳香環と反応性ケイ素含有基とを有する化合物(A)とグリシジル化合物(B)とを含有するため、加熱などにより化合物(A)や化合物(B)が結合し、3次元架橋構造を形成する。ここで、上述のとおり本発明の組成物ははしご型シルセスキオキサン構造を有する化合物(C)を含有するため、はしご型シルセスキオキサンと架橋構造中の上記反応性ケイ素含有基に由来するケイ素含有構造との高い親和性により、比較的弾性率の低いはしご型シルセスキオキサン構造が架橋構造中に均一に配置された構造を有する接着層が形成されるものと考えられる。すなわち、本発明の組成物を用いて偏波保持光ファイバーとフェルールとを接着した場合、接着層とフェルールとの界面付近では強固な密着構造が形成されるのに対し、接着層の内部では比較的柔軟な構造が形成されるものと考えられる。
そのため、偏波保持光ファイバーに対して外部から応力が加えられたとしても、本発明の組成物から形成される接着層が上記応力を緩和し、偏波間のクロストークが抑えられるものと考えられる。すなわち、本発明の組成物から形成される接着層は偏波クロストークの発生を抑制するための良好な応力緩和層として機能するものと考えられる。結果、本発明の組成物を偏波保持光ファイバーのコネクターに用いた場合、高い消光比を示すものと考えられる。
このことは、後述する実施例および比較例が示すように、接着剤組成物がはしご型シルセスキオキサン構造を有する化合物(C)を含有しない場合(比較例)、はしご型シルセスキオキサン構造を有する化合物(C)を含有する場合(実施例)と比較して消光比が低いことからも推測される。
【0014】
以下、本発明の組成物に含有される各成分について詳述する。
【0015】
<芳香環と反応性ケイ素含有基とを有する化合物(A)>
本発明の組成物に含有される化合物(A)は、少なくとも1つの芳香環と少なくとも1つの反応性ケイ素含有基とを有する化合物であれば特に制限されない。
【0016】
上記芳香環としては特に制限されないが、炭素数6〜20の芳香環であることが好ましい。
芳香環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環(2個のフェニル基は任意の連結様式で連結してもよい)、ターフェニル環(3個のベンゼン環は任意の連結様式で連結してもよい)などが挙げられる。なかでも、ベンゼン環が好ましい。
【0017】
上記反応性ケイ素含有基は、ケイ素原子に結合した1〜3個の反応性基を有し、湿気や架橋剤等の存在下、必要に応じて触媒等を使用することにより反応を起こして架橋しうる基である。具体的には、例えば、ハロゲン化ケイ素含有基、水素化ケイ素含有基、加水分解性ケイ素含有基などが挙げられる。なかでも、加水分解性ケイ素含有基が好ましい。
【0018】
上記ハロゲン化ケイ素含有基は、ケイ素原子に結合した1〜3個のハロゲン基を有し、具体的には、例えば、クロロジメチルシリル基、ジクロロメチルシリル基、トリクロロシリル基等が挙げられる。
上記水素化ケイ素含有基は、ケイ素原子に結合した1〜3個の水素原子を有し、具体的には、例えば、ヒドロジメチルシリル基、ジヒドロメチルシリル基、トリヒドロシリル基等が挙げられる。
【0019】
上記ハロゲン化ケイ素含有基は、例えば、上記水素化ケイ素含有基と脱ハロゲン化水素反応を起こして結合を形成し、架橋することができる。また、ハロゲン化ケイ素含有基は、グリニャール試薬とメタセシス反応を起こした後に脱ハロゲン化金属反応を起こしてケイ素−炭素結合を形成し、架橋することができる。また、ハロゲン化ケイ素含有基は、アルカリ金属またはマグネシウムを用いると、芳香族炭化水素、共役ジエン、芳香族アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステルまたはイミンと、還元的シリル化反応を起こしてケイ素−炭素結合を形成し、架橋することができる。
【0020】
上記水素化ケイ素含有基は、例えば、上記ハロゲン化ケイ素含有基と脱ハロゲン化水素反応を起こして結合を形成し、架橋することができる。また、水素化ケイ素含有基は、不飽和炭素結合を有する化合物とヒドロシリル化反応を起こしてケイ素−炭素結合を形成し、架橋することができる。
【0021】
上記加水分解性ケイ素含有基は、ケイ素原子に結合した1〜3個のヒドロキシ基および/または加水分解性基を有し、湿気や架橋剤の存在下、必要に応じて触媒等を使用することにより縮合反応を起こしてシロキサン結合を形成することにより架橋しうるケイ素含有基である。例えば、アルコキシシリル基、アルケニルオキシシリル基、アシロキシシリル基、アミノシリル基、アミノオキシシリル基、オキシムシリル基、アミドシリル基が挙げられる。具体的には、下記式で例示される、アルコキシシリル基、アルケニルオキシシリル基、アシロキシシリル基、アミノシリル基、アミノオキシシリル基、オキシムシリル基、アミドシリル基等が好適に用いられる。
【0023】
なかでも、取扱いが容易である点で、アルコキシシリル基が好ましい。
アルコキシシリル基のケイ素原子に結合するアルコキシ基は、特に限定されないが、原料の入手が容易なことからメトキシ基、エトキシ基またはプロポキシ基が好適に挙げられる。
アルコキシシリル基のケイ素原子に結合するアルコキシ基以外の基は、特に限定されず、例えば、水素原子またはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の炭素原子数が20以下である、アルキル基、アルケニル基もしくはアリールアルキル基が好適に挙げられる。
【0024】
(好適な態様)
上記化合物(A)は、エポキシ化合物(e)と、上記エポキシ化合物(e)が有するエポキシ基と反応する反応性基を有する化合物(f)とを反応させることで得られる化合物であることが好ましい。
【0025】
エポキシ化合物(e)は、少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物であれば特に制限されない。
エポキシ化合物(e)の具体例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ヘキサヒドロビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ピロカテコール、レゾルシノール、クレゾールノボラック、テトラブロモビスフェノールA、トリヒドロキシビフェニル、ビスレゾルシノール、ビスフェノールヘキサフルオロアセトン、テトラメチルビスフェノールF、ビキシレノール、ジヒドロキシナフタレン等の多価フェノールとエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテル型;グリセリン、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコールとエピクロルヒドリンとの反応によって得られるポリグリシジルエーテル型;p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテルエステル型;フタル酸、メチルフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラハイドロフタル酸、ヘキサハイドロフタル酸、エンドメチレンテトラハイドロフタル酸、エンドメチレンヘキサハイドロフタル酸、トリメリット酸、重合脂肪酸等のポリカルボン酸から誘導されるポリグリシジルエステル型;アミノフェノール、アミノアルキルフェノール等から誘導されるグリシジルアミノグリシジルエーテル型;アミノ安息香酸から誘導されるグリシジルアミノグリシジルエステル型;アニリン、トルイジン、トリブロムアニリン、キシリレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン等から誘導されるグリシジルアミン型;さらにエポキシ化ポリオレフィン、グリシジルヒダントイン、グリシジルアルキルヒダントイン、トリグリシジルシアヌレート等;ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル、スチレンオキサイド等のモノエポキシ化合物等が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を用いることができる。
【0026】
エポキシ化合物(e)は、芳香族エポキシ化合物またはエポキシシラン化合物であることが好ましく、芳香族エポキシ化合物であることがより好ましい。
上記芳香族エポキシ化合物は、少なくとも1つの芳香環を有するエポキシ化合物であれば特に制限されない。芳香環の具体例および好適な態様は、上述した化合物(A)が有する芳香環と同じである。
【0027】
上記化合物(f)は、上記エポキシ化合物(e)が有するエポキシ基と反応する反応性基を少なくとも1つ有する化合物であれば特に制限されない。
上記エポキシ化合物(e)が有するエポキシ基と反応する反応性基の具体例としては、アミノ基、イミノ基、ウレイド基、メルカプト基、酸無水物基等が挙げられる。
【0028】
上記化合物(f)の具体例としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルエチルジエトキシシラン、ビストリメトキシシリルプロピルアミン、ビストリエトキシシリルプロピルアミン、ビスメトキシジメトキシシリルプロピルアミン、ビスエトキシジエトキシシリルプロピルアミン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルエチルジエトキシシラン、3,3−ジメチル−4−アミノブチルトリメトキシシラン、3,3−ジメチル−4−アミノブチルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン化合物;(N−シクロヘキシルアミノメチル)メチルジエトキシシラン、(N−シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン、(N−フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン、(N−フェニルアミノメチル)トリメチルオキシシラン、下記式(1)で表される化合物および下記式(2)で表されるN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のイミノシラン化合物;
【0030】
γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン等のウレイドシラン化合物;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプトシラン化合物等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
上記化合物(f)は、アミノ基(−NH
2)またはイミノ基(=NH、−NH−)を有する化合物であることが好ましい。なかでも、イミノシラン化合物または芳香族アミン化合物であることが好ましく、イミノシラン化合物であることがより好ましい。
上記イミノシラン化合物は、イミノ基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。イミノシラン化合物の具体例は上述のとおりである。
【0032】
上記化合物(f)がアミノ基またはイミノ基を有する場合、エポキシ化合物(e)が有するエポキシ基に対する、上記化合物(f)が有するアミノ基またはイミノ基中の活性水素の当量数(アミノ基とイミノの両方を有する場合はアミノ基とイミノ基の合計の当量数)は、0.1〜1.0当量であることが好ましく、より高い消光比を示す理由から、0.6当量以下であることがより好ましい。
【0033】
<グリシジル化合物(B)>
本発明の組成物に含有されるグリシジル化合物(B)は、少なくとも1つのグリシジル基を有する化合物であれば特に制限されない。
グリシジル化合物(B)の具体例としては、上述したエポキシ化合物(e)の具体例のうち、少なくとも1つのグリシジル基を有する化合物が挙げられる。なかでも、グリシジルアミノグリシジルエーテル型が好ましい。
【0034】
グリシジル化合物(B)は反応性ケイ素含有基を有さないのが好ましい。
【0035】
<はしご型シルセスキオキサン構造を有する化合物(C)>
本発明の組成物に含有される化合物(C)は、少なくとも1部にはしご型シルセスキオキサン構造(ラダー型シルセスキオキサン構造)を有するものであれば特に制限されない。ここで、はしご型シルセスキオキサン構造とは、はしご状骨格を有するシルセスキオキサン構造である。また、シルセスキオキサン構造とは、RSiO
1.5(R:水素原子または置換基)の繰り返し単位からなる構造である。
化合物(C)は、一部にランダム型やかご型のシルセスキオキサン構造を有してもよい。
【0036】
化合物(C)は、はしご型シルセスキオキサンであることが好ましく、なかでも、下記式(C)で表される構造単位を有する化合物であることが好ましい。
【0038】
上記式(C)中、R
Cは、水素原子または置換基を表す。複数あるR
Cは、同一であっても、異なってもよい。
上記置換基は1価の置換基であれば特に制限されないが、具体例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アミノ基、メルカプト基、アシル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、シリル基、ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基、(メタ)アクリル基含有基およびエポキシ基含有基などが挙げられる。なかでも、エポキシ基含有基(好ましくはグリシジル基(−CH
2−A、A:エポキシ基)含有基、より好ましくはグリシドキシ基(−O−B、B:グリシジル基)含有基)であることが好ましい。
【0039】
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
上記ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基のヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子などが挙げられる。
上記ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基などが挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。上記脂肪族炭化水素基の具体例としては、直鎖状または分岐状のアルキル基(特に、炭素数1〜30)、直鎖状または分岐状のアルケニル基(特に、炭素数2〜30)、直鎖状または分岐状のアルキニル基(特に、炭素数2〜30)などが挙げられる。
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、アリール基、ナフチル基などが挙げられる。上記アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基などの炭素数6〜18のアリール基などが挙げられる。
【0040】
上記式(C)中のR
Cは、下記式(X)で表される基であることが好ましい。
【0042】
上記式(X)中、R
xは、エポキシ基、グリシジル基、アミノ基、ビニル基、(メタ)アクリル基またはメルカプト基を表す。
【0043】
上記式(X)中、L
1は、単結合または2価の有機基を表す。
2価の有機基としては、2価の脂肪族炭化水素基(例えば、アルキレン基。好ましくは炭素数1〜8)、2価の芳香族炭化水素基(例えば、アリーレン基。好ましくは炭素数6〜12)、−O−、−S−、−SO
2−、−NR−(R:炭化水素基)、−SiR
1R
2−(R
1およびR
2:炭化水素基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、またはこれらを組み合わせた基(例えば、アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基など)などが挙げられる。なかでも、アルキレン基、−O−、−S−、−NR−またはこれらを組み合わせた基が好ましい。
上記式(X)中、*は結合位置を表す。
【0044】
化合物(C)中の上記式(C)で表される構造単位の割合は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることが好ましい。
【0045】
化合物(C)は、エポキシシラン、アミノシラン、ビニルシラン、メタクリルシラン、アクリルシランおよびメルカプトシランからなる群より選択される少なくとも1種のシランを縮合させることで得られる化合物であることが好ましい。
なかでも、下記式(3)で表されるシランを縮合させることで得られる化合物であることがより好ましい。
【0047】
上記式(3)中のXの定義、具体例および好適な態様は、上述した式(X)で表される基と同じである。
【0048】
上記式(3)中、R
31は、加水分解性基を表す。
上記加水分解性基は特に制限されないが、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、アルコキシ基であることが好ましい。加水分解性基がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素数は、1〜16であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。炭素数1〜4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
【0049】
上述した化合物(A)の含有量と、上述したグリシジル化合物(B)の含有量と、上述した化合物(C)の含有量との合計(A+B+C)に対する、化合物(A)の含有量の割合(A/(A+B+C))は、20〜70質量%であることが好ましく、40〜60質量%であることがより好ましい。
上記合計(A+B+C)に対する、グリシジル化合物(B)の含有量の割合(B/(A+B+C))は、20〜70質量%であることが好ましく、30〜50質量%であることがより好ましい。
上記合計(A+B+C)に対する、化合物(C)の含有量の割合(C/(A+B+C))は、5〜40質量%であることが好ましく、6〜30質量%であることがより好ましく、18質量%以下であることがさらに好ましく、12質量%以下であることが特に好ましい。
上記合計(A+B+C)に対する、化合物(A)の含有量の割合(A/(A+B+C))が20〜70質量%であり、上記合計(A+B+C)に対する、グリシジル化合物(B)の含有量の割合(B/(A+B+C))が20〜70質量%であり、上記合計(A+B+C)に対する、化合物(C)の含有量の割合(C/(A+B+C))が5〜40質量%であることが好ましい。なかでも、上記合計(A+B+C)に対する、化合物(A)の含有量の割合(A/(A+B+C))が40〜60質量%であり、上記合計(A+B+C)に対する、グリシジル化合物(B)の含有量の割合(B/(A+B+C))が30〜50質量%であり、上記合計(A+B+C)に対する、化合物(C)の含有量の割合(C/(A+B+C))が6〜30質量%であることがより好ましい。
【0050】
<任意成分>
本発明の組成物は、その効果や目的を損なわない範囲でさらに添加剤を含有することができる。
上記添加剤としては、例えば、硬化剤、充填剤、反応遅延剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、接着付与剤、帯電防止剤、上記(A)〜(C)以外のシランカップリング剤などが挙げられる。
本発明の組成物は、より高い消光比を示す理由から、上記(A)〜(C)以外のシランカップリング剤を含有するのが好ましい。
【0051】
(イミダゾール化合物(D))
本発明の組成物は、イミダゾール化合物(D)を含有するのが好ましい。イミダゾール化合物(D)は、主に硬化剤として機能する。
イミダゾール化合物(D)は、イミダゾールまたはイミダゾール化合物(例えば、イミダゾール誘導体)であれば特に制限されない。
【0052】
イミダゾール化合物(D)は、下記式(4)で表される化合物であることが好ましい。
【0054】
上記式(4)中、R
41〜R
43は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。置換基の定義、具体例および好適な態様は、上述した式(C)中のR
Cと同じである。R
43はアルキル基(好ましくは、炭素数1〜30)であることが好ましい。
【0055】
<本発明の組成物の製造方法>
本発明の組成物の製造方法は特に制限されず、例えば、上述した各成分を、従来公知の装置を用いて、均質に混合する方法などが挙げられる。なお、本発明の組成物がイミダゾール化合物などの硬化剤を含有する場合は、硬化剤以外の成分を先に混合し、その後、硬化剤を混合するのが好ましい。
【0056】
<本発明の組成物の硬化方法>
本発明の組成物の硬化方法は特に限定されず、例えば、100〜200℃で10分〜5時間加熱する方法などが挙げられる。
【0057】
<用途>
本発明の組成物は高い消光比を示すため、光ファイバー用接着剤組成物として有用である。また、上述のとおり、偏波保持光ファイバーのコネクターに用いた場合に高い消光比を示すため、偏波保持光ファイバー用接着剤組成物として特に有用である。
【0058】
[コネクター]
本発明の組成物を使用した製造したコネクターの一実施態様について図面を参照して説明する。
図1に、本発明の組成物を使用して製造したコネクターの一実施態様の断面図を表す。
コネクター10は、コア部2とクラッド部3と応力付与部(図示せず)とポリマー被覆層4とを有する偏波保持光ファイバー1の端部のポリマー被覆層を除去し、ポリマー被覆層を除去した部分に上述した本発明の組成物を塗布してからフランジ8に固定されているフェルール7の空洞部に挿入、加熱することで、接着層6(本発明の組成物の硬化物)を介して光ファイバー1とフェルール7とを接着させたものである。
なお、偏光保持光ファイバーは特に制限されず、その具体例としてはPANDAファイバー、楕円ジャケットファイバー、ボウタイファイバーなどが挙げられる。なかでも、PANDAファイバーであることが好ましい。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
<化合物(A)の合成>
下記第1表に示す各成分を、同表に示す組成(質量部)で混合し、不活性ガス雰囲気下、120℃で8時間撹拌を行って、芳香環と反応性ケイ素含有基とを有する化合物(A)である化合物A1、A2、A3、A4、A5およびA6を得た。
【0061】
【表1】
【0062】
第1表中の各成分は以下のとおりである。
・エポキシ化合物e1:エポトートYDF−128(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、東都化成社製)(以下構造)
【化7】
・エポキシ化合物e2:エポトートYDF−170(ビスフェノールFジグリシジルエーテル、東都化成社製)(以下構造)
【化8】
・エポキシ化合物e3:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(A−187、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)(以下構造)
【化9】
・イミノシラン化合物f1:Alink−15(N−エチル−3−アミノイソブチルトリメトキシシラン、東レ・ダウコーニング社製)(以下構造)
【化10】
・アミン化合物f2:メチレンジアニリン(MDA、関東化学社製)(以下構造)
【化11】
【0063】
第1表中、当量数は、エポキシ化合物e1〜e3が有するエポキシ基に対する、イミノシラン化合物f1またはアミン化合物f2が有するアミノ基またはイミノ基中の活性水素の当量数(当量)を表す。
【0064】
なお、1分子のエポキシ化合物e1と1分子のイミノシラン化合物f1が反応した場合、以下の化合物が得られる。
【0065】
【化12】
【0066】
また、1分子のエポキシ化合物e2と1分子のイミノシラン化合物f1が反応した場合、以下の化合物が得られる。
【0067】
【化13】
【0068】
また、1分子のエポキシ化合物e3と1分子のアミン化合物f2とが反応した場合、以下の化合物が得られる。
【0069】
【化14】
【0070】
<化合物C1の合成>
ナスフラスコに3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン23.36g、トルエン100ml、水50ml、トリエチルアミン1gを入れ、50℃で17時間攪拌した。反応溶液を飽和食塩水で水洗、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮することで目的物であるはしご型シルセスキオキサン(混合物)を16.10g得た。得られたはしご型シルセスキオキサン(混合物)は種々の有機溶剤に可溶な無色の粘性液体であった。得られたはしご型シルセスキオキサン(混合物)を化合物C1とする。
【0071】
化合物C1について、GPC法によりはしご型シルセスキオキサンの含有量を求めたところ、60質量%であった。具体的には以下のとおり求めた。
まず、化合物C1についてGPCを測定した。
図2にGPCチャートを示す。また、以下に、GPCの各ピークの分子量(PPG(ポリプロピレングリコール)換算値)および面積値を示す。GPCの各ピーク(ピーク1〜3)を分取し、同定したところ、ピーク1がはしご型シルセスキオキサンに由来するピークであった。ピーク1〜3の合計の面積(100)に対するピーク1の面積(60)の割合から、化合物C1中のはしご型シルセスキオキサンの含有量(質量%)を求めた。
【0072】
(GPC測定条件)
・カラムオーブン:TOSOH CO−8020
・オンラインデガッサ:TOSOH SD−8022
・送液ポンプ:TOSOH DP−8020
・オートサンプラ:TOSOH AS−8020
・展開溶媒:THF
・検出器:RI検出器
【0073】
【表2】
【0074】
<接着剤組成物の調製>
下記第2表に示すA液の各成分を、同表に示す組成(質量部)で混合し、撹拌機を用いて撹拌した。次いで、同表に示すB液の各成分を加え、撹拌機を用いて撹拌し、実施例および比較例の接着剤組成物を調製した。
なお、化合物C1について、上段の値は、はしご型シルセスキオキサン(混合物)の量(質量部)であり、下段の値(カッコ内の値)は、はしご型シルセスキオキサン(混合物)に含まれるはしご型シルセスキオキサンの正味の量(質量部)である。
【0075】
<消光比の評価>
調製した接着剤組成物を用いて
図1の形態のSC型コネクターを製造した。なお、接着層の形成は以下のとおり行った。すなわち、コア部とクラッド部と応力付与部とポリマー被覆層とを有するシングルモードのPANDA型偏波保持光ファイバーの端部を長さ2cmにわたってポリマー被覆層を除去し、ポリマー被覆層を除去した部分に、調製した各接着剤組成物を塗布した。次いで、接着剤組成物が塗布された光ファイバーをプラグの端部からジルコニア製フェルールの空洞部に挿入し、130℃で3時間加熱して硬化させることで接着層を形成した。
【0076】
得られたSC型コネクターについて、JIS C6840:2006に準じ、消光比(dB)を測定した。結果を第2表に示す。
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
第2表中の各成分は以下のとおりである。
・化合物A1:上述のとおり合成した化合物A1
・化合物A2:上述のとおり合成した化合物A2
・化合物A3:上述のとおり合成した化合物A3
・化合物A4:上述のとおり合成した化合物A4
・化合物A5:上述のとおり合成した化合物A5
・化合物A6:上述のとおり合成した化合物A6
・グリシジル化合物B1:MY−0510(トリグリシジル−p−アミノフェノール、ハンツマン・アドバンス・マテリアル社製)(以下構造)
【化15】
・シランカップリング剤:A187(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)(以下構造)
【化16】
・化合物C1:上述のとおり合成した化合物C1
・イミダゾ―ルシラン:IM−1000(JX日鉱日石金属社製)
【化17】
・触媒:TPT−100(テトラプロポキシチタン、日本曹達社製)
・水
・イミダゾール化合物D1:1B2MZ(1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、四国化成社製)(以下構造。Meはメチル基、Bzはベンジル基を表す。)
【化18】
【0080】
第2表から分かるように、はしご型シルセスキオキサン構造を有する化合物(C)を含有しない比較例1および2の接着剤組成物を使用した場合よりも、はしご型シルセスキオキサン構造を有する化合物(C)を含有する実施例1〜12の接着剤組成物を使用した場合の方が、高い消光比を示した。
実施例1と4との対比から、エポキシ化合物(e)が有するエポキシ基に対する、アミノ基またはイミノ基中の活性水素の当量数が0.6当量以下である実施例1の方が、より高い消光比を示した。同様に、実施例2と5との対比、実施例3と6との対比、実施例7と10との対比、実施例8と11との対比、実施例9と12との対比から、エポキシ化合物(e)が有するエポキシ基に対する、アミノ基またはイミノ基中の活性水素の当量数が0.6当量以下である実施例2、3、7、8および9の方が、より高い消光比を示した。