(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5895973
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】導電端子
(51)【国際特許分類】
H01R 13/11 20060101AFI20160317BHJP
【FI】
H01R13/11 A
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-121698(P2014-121698)
(22)【出願日】2014年6月12日
(65)【公開番号】特開2016-1579(P2016-1579A)
(43)【公開日】2016年1月7日
【審査請求日】2014年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】第一精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 隆吉
(72)【発明者】
【氏名】安藤 賢弥
【審査官】
段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−247542(JP,A)
【文献】
特開2005−302573(JP,A)
【文献】
実開昭56−056178(JP,U)
【文献】
実開昭55−044513(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性のハウジングの内部に形成された筒状の端子収容空間に対し前記ハウジングの背面側から正面側に向かって挿入される導電端子であって、
挿入方向の先端側に設けられた筒状のサヤ部と、前記端子収容空間内に設けられたランスに係合させるため前記サヤ部の先端側に設けられた凸状のランス係合部と、を備え、
前記ランス係合部に、先端側から基端側に向かうにつれて前記サヤ部の軸心から離れる方向の勾配を有する傾斜部と、前記傾斜部の基端側から前記サヤ部の軸心に近づく方向に延びて前記サヤ部の天井壁に当接する当接部と、を設け、
前記挿入方向と平行な外力による前記ランス係合部の移動、変形を防止する第一補強手段を、前記サヤ部における前記ランス係合部の当接部の基端側に設け、
前記挿入方向と平行な外力による前記ランス係合部の移動、変形を防止する第二補強手段を、前記第一補強手段と前記第二補強手段との間に前記ランス係合部の当接部を挟持可能な位置に設け、
前記サヤ部を形成する前記板材の一部を前記挿入方向と平行に延出させた突片部に前記軸心と交差する方向を折り目とする曲げ部である前記ランス係合部を設け、
前記サヤ部を形成する前記板材の一部を前記挿入方向と交差する方向に延出させた複数の突片部に前記挿入方向と平行な方向を折り目とする曲げ部である前記第一補強手段及び前記第二補強手段を設けたことを特徴とする導電端子。
【請求項2】
前記端子収容空間の内周面の一部に接触させるため前記サヤ部の基端側に凸状の係止部を設け、
前記係止部に、前記基端側から前記先端側に向かうにつれて前記サヤ部の軸心から離れる方向の勾配を有する傾斜部と、前記傾斜部の先端側から前記サヤ部の軸心に近づく方向に延びて前記サヤ部の天井壁に当接する当接部を設け、
前記サヤ部を形成する前記板材の一部を前記挿入方向と平行に延出させた突片部に前記軸心と交差する方向を折り目とする曲げ部である前記係止部を設けた請求項1記載の導電端子。
【請求項3】
前記第一補強手段及び前記第二補強手段が前記サヤ部の外面に面接触する平板形状である請求項1記載の導電端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などに搭載される各種機器の電気的接続手段として使用される防水マットシールを備えた防水コネクタに用いられる導電端子に関する。
【背景技術】
【0002】
防水マットシールを備えた防水コネクタ及びそれに使用される導電端子については、従来、様々な技術が開発されているが、本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1に記載されている「端子金具及びコネクタ」などがある。
【0003】
図18,
図19に示すように、特許文献1記載の端子金具70は、金属板をプレス加工して形成されたものであり、略箱型の本体部71と、電線Wの端末部分に圧着接続されたバレル部72と、を備えている。本体部71は、先端が開口して形成され、ここに接続相手である雄端子金具(図示せず)が前方から挿入されて導通接続可能となっている。本体部71の下面側の側縁には、所定間隔をおいて下方へ、一対のスタビライザ73a,73bが設けられている。
【0004】
スタビライザ73a,73bは、金属板を折り曲げることで、その板厚の2枚分の厚みを有する平板状に形成されている。前方のスタビライザ73aの前端縁の基端側は本体部71の前端に一致しており、突出端側に向けて先細り形状をなすテーパ部75aが形成されている。後方のスタビライザ73bは、本体部71の前後方向の中央付近に設けられ、その後端縁には突出端側に向けて先細り形状をなすテーパ部75bが形成されている。
【0005】
また、両スタビライザ73a,73bの間に形成された凹状の部分はランス係合凹部77とされ、後述するように、ハウジング80のランス95の係止部92がランス係合凹部77に進入して係合可能とされている。一対のスタビライザ73a,73bは、端子金具70をハウジング80のキャビティ81内へ挿入する際に案内溝82,85に嵌められることによって挿入動作を案内するようになっている。
【0006】
合成樹脂製のハウジング80の内部には、後方から端子金具70を挿入するためのキャビティ81が設けられている。キャビティ81の下面側における側縁には、端子金具70のスタビライザ73a,73bが進入可能な案内溝82が凹んで形成されている。各キャビティ81の間には、格子状の隔壁83が設けられ、この隔壁83によって隣接するキャビティ81同士が仕切られている。キャビティ81の前端には前壁84が形成され、この前壁84には、接続相手である雄端子金具(図示せず)が進入可能な開口部90が設けられている。
【0007】
ハウジング80の後部には、全てのキャビティ81に連通するゴム栓装着孔87が設けられ、その奥側に一括型のゴム栓88が嵌められている。ゴム栓88は、所定の厚みを有し、且つ、ゴム栓装着孔87に緊密に嵌合可能な大きさの略長方形の断面形状をなすように形成されている。
【0008】
ゴム栓88の外周面には外側リップ89が周設され、ゴム栓88の内部には、ハウジング80の各キャビティ81と対応する位置ごとに、電線挿通孔91が開口されている。各電線装着孔91の内周面には、電線Wの外周面に弾縮しつつ密着可能な内側リップ91aが周設されている。
【0009】
また、ゴム栓88の後方に装着されるゴム栓押さえ93は合成樹脂製であって、ゴム栓挿着孔87の手前側の端部にほぼ緊密に嵌合される形状であり、各キャビティ81に対応する位置に端子金具70が挿通可能な窓孔94が格子状に形成されている。各窓孔94の内面には、下面側における側縁に、キャビティ81の案内溝82と対応する案内溝85が凹設され、端子金具70のスタビライザ73a,73bが進入可能となっている。
【0010】
ゴム栓押さえ93の上下端部から一対のアーム96が前方へ突設されており、アーム96に設けられたロック孔96aに、ハウジング80の外面に形成されたロック突起86が嵌め込まれることにより、ゴム栓押さえ93がゴム栓88の手前に取り付けられ、これによりゴム栓88の外れ止めが図られている。
【0011】
図18に示すように、端子金具70は、ハウジング80のキャビティ81に前後方向に挿入することにより、キャビティ81に設けられたランス95から突出する係止部92がランス係合凹部77に弾性的に係止して抜け止めされる。端子金具70のスタビライザ73a,73bは、挿入方向に対して直交する方向へ突設され、キャビティ81の内壁に形成された案内溝82に嵌まることにより、端子金具70の挿入動作を案内可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−198118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図18,
図19に示すように、特許文献1に記載されている端子金具70においては、端子の側部板を外側から内側に折り曲げてスタビライザ73a,73bが形成され、このスタビライザ73a,73bがハウジング80のランス95を受ける係止手段としての機能も有しているが、ハウジング80のキャビティ81に端子金具70を挿入したり、離脱させたりする際に、当該端子金具70のスタビライザ73a,73bの破断面がマットシール(ゴム栓88)の電線挿通孔91の内周面に引っ掛かり、マットシール(ゴム栓88)を損傷させる可能性が高い。なお、前記破断面とは、導電性の金属材料を導電端子形状に合わせて任意の形状に打ち抜き加工した際の切断面のことである。
【0014】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、防水コネクタのハウジングへの挿入が容易で、挿入時にマットシールを傷つけ難く、挿入・離脱方向の外力による変形も発生し難い導電端子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の導電端子は、板材に曲げ加工を施して形成され、絶縁性のハウジングの内部に形成された筒状の端子収容空間に対し前記ハウジングの背面側から正面側に向かって挿入される導電端子であって、
挿入方向の先端側に設けられた筒状のサヤ部と、前記端子収容空間内に設けられたランスに係合させるため前記サヤ部の先端側に設けられた凸状のランス係合部と、を備え、
前記ランス係合部に、前記先端側から基端側に向かうにつれて前記サヤ部の軸心から離れる方向の勾配を有する傾斜部と、前記傾斜部の基端側から前記サヤ部の軸心に近づく方向に延びて前記サヤ部の天井壁に当接する当接部と、を設け、
前記サヤ部を形成する前記板材の一部を前記挿入方向と平行に延出させた突片部に前記軸心と交差する方向を折り目とする曲げ加工を施して前記ランス係合部を形成したことを特徴とする。ここで、前記先端側とは当該導電端子の挿入方向の前方側をいい、前記基端側とは当該導電端子の挿入方向の後方側をいう(以下、同様とする。)。
【0016】
本発明の導電端子においては、サヤ部の先端側に設けられた凸状のランス係合部に、先端側から基端側に向かうにつれてサヤ部の軸心から離れる方向の勾配を有する傾斜部を設けたことにより、防水コネクタのハウジング内部の筒状の端子収容空間に対し、当該ハウジングの背面側から正面側に向かって導電端子を挿入する際に、前記傾斜部が楔機能を発揮するので、ハウジングへの挿入が容易であり、挿入時にマットシールを傷つけ難い。
【0017】
また、前記ランス係合部に、前記傾斜部と、前記傾斜部から前記サヤ部の軸心に近づく方向に延びて前記サヤ部の天井壁に当接する当接部と、を設け、前記サヤ部を形成する前記板材の一部を前記挿入方向と平行に延出させた突片部に前記軸心と交差する方向を折り目とする曲げ加工を施して前記ランス係合部を形成したことにより、前記サヤ部と前記ランス係合部とが一体化され剛性が増大するため、ハウジング内部の端子収容空間に挿入された後の導電端子に、挿入・離脱方向の外力が加わったときの前記ランス係合部の変形も発生し難い。
【0018】
ここで、前記挿入方向と平行な外力による前記ランス係合部の移動、変形を防止する第一補強手段を前記サヤ部における前記ランス係合部の当接部の基端側に設けることが望ましい。
【0019】
また、前記挿入方向と平行な外力による前記ランス係合部の移動、変形を防止する第二補強手段を、前記第一補強手段と前記第二補強手段との間に前記ランス係合部の当接部を挟持可能な位置に設けることが望ましい。
【0020】
さらに、前記端子収容空間の内周面の一部に接触させるため前記サヤ部の基端側に凸状の係止部を設け、
前記係止部に、前記基端側から前記先端側に向かうにつれて前記サヤ部の軸心から離れる方向の勾配を有する傾斜部と、前記傾斜部の先端側から前記サヤ部の軸心に近づく方向に延びて前記サヤ部の天井壁に当接する当接部を設け、
前記サヤ部を形成する前記板材の一部を前記挿入方向と平行に延出させた突片部に前記軸心と交差する方向を折り目とする曲げ加工を施して前記係止部を形成することが望ましい。
【0021】
一方、前記サヤ部を形成する前記板材の一部を前記挿入方向と交差する方向に延出させた複数の突片部に前記挿入方向と平行な方向を折り目とする曲げ加工を施して前記第一補強手段及び前記第二補強手段を形成することができる。
【0022】
この場合、前記第一補強手段及び前記第二補強手段が前記サヤ部の外面に面接触する平板形状であることが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、防水コネクタのハウジングへの挿入が容易で、挿入時にマットシールを傷つけ難く、挿入後に挿入・離脱方向の外力が加わったときの変形も発生し難い導電端子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態である導電端子をハウジングに挿入する状態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態である導電端子をハウジングに挿入する状態を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態である導電端子をハウジングに挿入した状態を示す断面図である。
【
図6】
図4中の矢線A方向から見た導電端子の側面図である。
【
図8】
図4に示す導電端子の曲げ加工工程を示す斜視図である。
【
図9】
図4に示す導電端子の曲げ加工工程を示す斜視図である。
【
図10】
図4に示す導電端子の曲げ加工工程を示す正面図である。
【
図13】
図11中の矢線C方向から見たハウジングの側面図である。
【
図14】本発明の実施形態である導電端子をハウジングに挿入して形成された防水コネクタを示す側面図である。
【
図15】
図1に示す導電端子を
図13に示すハウジングのマットシールカバーに挿入する直前の状態を示す側面図である。
【
図18】従来の端子金具及びコネクタハウジングを示す分解断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、
図1〜
図17に基づいて本発明の実施形態である導電端子100について説明する。
図1〜
図7に示すように、導電端子100は、導電性の金属材料を導電端子100の形状に合わせて任意の形状に打ち抜き加工して形成した板材99(
図8〜
図10参照)に曲げ加工を施して形成され、絶縁性のハウジング50の内部に形成された筒状の端子収容空間51に対し、ハウジング50の背面側から正面側に向かって(矢線X方向に向かって)挿入される導電性部材である。ハウジング50内の複数の端子収容空間51の全てに対し、それぞれ導電端子100を挿入することにより、
図14に示すような防水コネクタ200が形成される。
【0026】
図1〜
図3及び
図11〜
図13に示すように、ハウジング50の内部には、複数の端子収容空間51が隔壁部53を挟んで対称をなすようにして、高さ方向Hに2段、幅方向Wに12列配列され、これらの端子収容空間51の周りを包囲するように形成された周壁部54とハウジング50の外壁部55との間に、防水コネクタ200に接続される相手側コネクタのハウジング(図示せず)の一部を収容するための空隙部56が形成されている。なお、端子収容空間51の配列個数や配列形態は、これに限定するものではない。
【0027】
周壁部54の基端側の周囲にはフロントシール57が装着され、ハウジング50の正面側の周壁部54にはフロントホルダ58が装着されている。フロントホルダ58はハウジング50の前後方向Lにスライド可能であり、その正面壁58aには、複数の開口部58bが複数の端子収容空間51と同位相をなすように開設されている。正面壁58aの背面側には、ハウジング50の背面側に向かって突出部58cが形成されている。突出部58cは、フロントホルダ58の前後方向Lのスライド移動に伴い、隔壁部53の正面に開設された係合穴59に進入、離脱する。
【0028】
また、ランス52より基端側の隔壁部53の両面及び端子収容空間51の一部を幅方向Wに横断するようにリテーナ60が配置されている。後述するように、リテーナ60はハウジング50の一方の側面(右側面)から他方の側面(左側面)に向かって幅方向Wに挿入、離脱可能となっている。
【0029】
さらに、ハウジング50の背面側には防水マットシール61及びマットシールカバー62が装着されている。防水マットシール61及びマットシールカバー62には、それぞれ複数の貫通孔61a,62aが、複数の端子収容空間51と同位相をなすように開設されている。
【0030】
図4〜
図7に示すように、導電端子100は、当該導電端子100の挿入方向(矢線X方向)の先端側に設けられた四角筒状のサヤ部10と、
図2に示すハウジング50の内部の端子収容空間51内に設けられたランス52に係合させるためサヤ部10の先端側に設けられた凸状のランス係合部11と、端子収容空間51の内周面の一部に接触させるためサヤ部10の基端側に設けられた凸状の係止部12と、を備えている。
【0031】
ランス係合部11には、サヤ部10の先端側から基端側に向かうにつれてサヤ部10の軸心10cから離れる方向の勾配を有する面状の傾斜部11aと、傾斜部11aの基端側からサヤ部10の軸心10cに近づく方向に延びてサヤ部10の天井壁10aに当接する平板状の当接部11bと、が設けられている。
【0032】
係止部12には、サヤ部10の基端側から先端側に向かうにつれてサヤ部10の軸心10cから離れる方向の勾配を有する面状の傾斜部12aと、傾斜部12aの先端側からサヤ部10の軸心10cに近づく方向に延びてサヤ部10の天井壁10aに当接する当接部12bと、が設けられている。
【0033】
サヤ部10におけるランス係合部11の当接部11bの基端側には、導電端子100の挿入方向(矢線X方向)と平行な外力によるランス係合部11の移動、変形を防止する第一補強手段21が設けられている。また、サヤ部10における先端側には、挿入方向(矢線X方向)と平行な外力によるランス係合部11の移動、変形を防止する第二補強手段22がランス係合部11とサヤ部10の天井壁10aとの間に設けられている。具体的には、ランス係合部11の当接部11bを第一補強手段21と第二補強手段22の間に挟持可能な位置に第二補強手段22が配置されている。
【0034】
さらに、サヤ部10における基端側には、挿入方向(矢線X方向)と平行な外力による係止部12の移動、変形を防止する第三補強手段23が係止部12とサヤ部10の天井壁10aとの間に設けられている。具体的には、係止部12の当接部12bを第一補強手段21と第三補強
手段23の間に挟持可能な位置に第三補強
手段23が配置されている。第一補強手段21、第二補強手段22及び第三補強手段23はサヤ部10の外面(天井壁10aの外面)に面接触する平板形状をなしている。
【0035】
導電端子100の基端側には芯線圧着部13が設けられ、電気信号を通すためのケーブル14の絶縁被覆から露出させた芯線(図示せず)を芯線圧着部13にて圧着固定することにより、ケーブル14と導電端子100とが電気的に接続される。
【0036】
図8〜
図9に示すように、導電端子100のランス係合部11は、サヤ部10を形成する板材99の一部を挿入方向Xと平行に延出させた突片部11xに、サヤ部10の軸心10cと交差する方向を折り目とする曲げ加工を施すことによって形成されている。
【0037】
また、導電端子100の係止部12は、サヤ部10を形成する板材99の一部を挿入方向Xと平行に延出させた突片部12xに軸心10cと交差する方向を折り目とする曲げ加工を施すことによって形成されている。
【0038】
さらに、第一補強手段21、第二補強手段22及び第三補強手段23は、サヤ部10を形成する板材99の一部を挿入方向Xと交差する方向に延出させた複数の突片部21x,22x,23xに挿入方向Xと平行な方向を折り目とする曲げ加工を施すことによって形成されている。
【0039】
ここで、
図1〜
図3及び
図12〜
図17に基づいて、防水コネクタ200の組み立て工程について説明する。
図1,
図2に示すように、フロントホルダ58が正面側に引き出された状態にあるハウジング50に対し、その背面側から正面側に向かって導電端子100を挿入する。具体的には、ハウジング50の背面側のマットシールカバー62に開設されている貫通孔62a内に導電端子100の先端側を差し込み、そのまま挿入方向Xに沿って押し込むと、導電端子100のサヤ部10がマットシールカバー62の貫通孔62a、防水マットシール61の貫通孔61aを通過して、ハウジング50の端子収容空間51内に収容される。このとき、ハウジング50内のランス52が、ランス係合部11と係止部12との間に嵌り込んだ状態となる。
【0040】
導電端子100の四角筒形状をしたサヤ部10には凸状のランス係合部11が設けられているため、
図16,
図17に示すように、導電端子100の正面視形状は凸形状をなしている。また、マットシールカバー62の貫通孔62aの開口端形状は導電端子100の正面視形状に相似し、これより僅かに大きな凸形状に形成されている。従って、
図16,
図17中に記載された4つの導電端子100のうちの最も左側に位置する導電端子100を除く、3つの導電端子100のように、マットシールカバー62の貫通孔62aに対する導電端子100の挿入姿勢が、サヤ部10の軸心10cの周りに回転する方向にズレているときは、導電端子100を貫通孔62aに挿入することができない。このため、導電端子100の挿入姿勢の不良を未然に防止することができる。
【0041】
前述した挿入作業により、ハウジング50の端子収容空間51の全てに導電端子100が収容された後、フロントホルダ58をハウジング50の背面側に向かって押し込むと、フロントホルダ58の突出部58cが隔壁部53の係合穴59内に挿入されるので、ランス52は、導電端子100のサヤ部10から離れないように保持される。この場合、いずれかの導電端子100が中途挿入状態にあると、ランス係合部11によってランス52が係合穴59側に変位したままの状態となり、フロントホルダ58が所定位置まで押し込むことができないので、中途挿入(挿入不良)を検知することができる。
【0042】
フロントホルダ58を所定位置まで押し込んだ後、
図13に示すように、ハウジング50の右側面から左側面に向かってリテーナ60を差し込むと、
図3に示すように、複数の導電端子100が係止され、
図14に示す防水コネクタ200が完成する。なお、いずれかの導電端子100が中途挿入状態にあると、リテーナ60の先端がサヤ部10や係止部12と当接してしまい、リテーナ60を所定位置まで差し込むことができないので、中途挿入(挿入不良)を検知することができる。
【0043】
本実施形態の導電端子100においては、サヤ部10の先端側に設けられた凸状のランス係合部11に、先端側から基端側に向かうにつれてサヤ部10の軸心10cから離れる方向の勾配を有する傾斜部11aを設けている。このため、防水コネクタ200のハウジング50内の四角筒状の端子収容空間51に対し、当該ハウジング50の背面側のマットシールカバー62の貫通孔61a及び防水マットシール61の貫通孔61aを通過して導電端子100を挿入する際に、傾斜部11aが楔機能を発揮するので、ハウジングへの挿入が容易であり、挿入時の防水マットシール61の損傷も防止することができる。
【0044】
また、ランス係合部11に、傾斜部11aと、傾斜部11aからサヤ部10の軸心10cに近づく方向に延びてサヤ部10の天井壁10aに当接する当接部11bと、を設け、サヤ部10を形成する板材99の一部を挿入方向Xと平行に延出させた突片部11xに軸心10cと交差する方向を折り目とする曲げ加工を施してランス係合部11を形成したことにより、サヤ部10とランス係合部11とが一体化され剛性が増大するため、ハウジング50内の端子収容空間51に挿入された後の導電端子100に、挿入方向Xと平行な外力が加わったときのランス係合部11の変形を防止することができる。
【0045】
同様に、係止部12に、傾斜部12aと、傾斜部12aからサヤ部10の軸心10cに近づく方向に延びてサヤ部10の天井壁10aに当接する当接部12bと、を設け、サヤ部10を形成する板材99の一部を挿入方向Xと平行に延出させた突片部12xに軸心10cと交差する方向を折り目とする曲げ加工を施して係止部12を形成したことにより、サヤ部10と係止部12とが一体化され剛性が増大するため、ハウジング50内の端子収容空間51に挿入された後の導電端子100に、挿入方向Xと平行な外力が加わったときの係止部12の変形を防止することができる。また、前記構成としたことにより、導電端子100の上下方向(挿入方向Xと交差する方向)のガタつきを防止することができる。
【0046】
さらに、導電端子100においては、ランス係合部11の当接部11bを第一補強手段21と第二補強手段22との間に挟持するとともに、係止部12の当接部12bを第二補強手段22と第三補強手段23との間に挟持しているため、導電端子100の挿入方向Xと平行な外力によるランス係合部11及び係止部12の移動、変形を有効に防止することができる。
【0047】
図8,
図9に示すように、第一補強手段21、第二補強手段22及び第三補強手段23はサヤ部10を形成する板材99の一部を挿入方向と交差する方向に延出させた複数の突片部21x,22x,23xに挿入方向Xと平行な方向を折り目とする曲げ加工を施して形成することができるので、製造工程の煩雑化を回避することができる。
【0048】
また、第一補強手段21、第二補強手段22及び第三補強手段23はサヤ部10の外面(天井壁10aの外面)に面接触する平板形状であるため、導電端子100の肥大化を回避しつつ、優れた補強作用を発揮する。
【0049】
なお、
図1〜
図17に基づいて説明した導電端子100は本発明の一例を示すものであり、本発明の導電端子は前述した導電端子100に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の導電端子は、各種機器の電気接続に使用される防水コネクタなどの構成部材として、電子・電気機器産業や自動車産業などの各種産業分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 サヤ部
10a 天井壁
10c 軸心
11 ランス係合部
11a,12a 傾斜部
11b,12b 当接部
11x,12x,21x,22x,23x 突片部
12 係止部
13 芯線圧着部
14 ケーブル
21 第一補強手段
22 第二補強手段
23 第三補強手段
50 ハウジング
51 端子収容空間
52 ランス
53 隔壁部
54 周壁部
55 外壁部
56 空隙部
57 フロントシール
58 フロントホルダ
58a 正面壁
58b 開口部
58c 突出部
59 係合穴
60 リテーナ
61 防水マットシール
61a,62a 貫通孔
62 マットシールカバー
99 板材
100 導電端子
200 防水コネクタ