特許第5895975号(P5895975)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5895975
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】表面処理剤および含フッ素重合体
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/22 20060101AFI20160317BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
   C08F220/22
   C09K3/18 102
【請求項の数】14
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-124976(P2014-124976)
(22)【出願日】2014年6月18日
(65)【公開番号】特開2015-28149(P2015-28149A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2014年6月18日
(31)【優先権主張番号】特願2013-136869(P2013-136869)
(32)【優先日】2013年6月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100068526
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭生
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【弁理士】
【氏名又は名称】新免 勝利
(72)【発明者】
【氏名】上原 徹也
(72)【発明者】
【氏名】宮原 正弘
(72)【発明者】
【氏名】山本 育男
【審査官】 久保田 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−511574(JP,A)
【文献】 特開2009−108296(JP,A)
【文献】 特開2011−100930(JP,A)
【文献】 特開2007−017948(JP,A)
【文献】 特開2013−151651(JP,A)
【文献】 特許第5741751(JP,B2)
【文献】 特開2013−100496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 12/00− 34/04
C08L 1/00−101/14
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)式:
CH=C(−X)−C(=O)−Y−Z−Rf
[式中、Xは、塩素原子であり、
Yは、−O−または−NH−であり、
Zは、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。]
で示される含フッ素単量体から誘導された繰り返し単位、
(ii)式:
CH=CQ11−C(=O)−O−Q12
[式中、Q11は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Q12は、炭素数4〜30の環状炭化水素含有基である。]
で示される環状炭化水素基含有アクリレートエステル単量体から誘導された繰り返し単位、および
(iii)式:
CH=CQ21−C(=O)−O−Q22
[式中、Q21は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Q22は、炭素数8〜30の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基である。]
で示される脂肪族炭化水素基含有アクリレートエステル単量体から誘導された繰り返し単位を有する含フッ素重合体であって、
含フッ素重合体は、ケイ素含有単量体およびケイ素含有連鎖移動剤の両方の不存在下で重合することによって製造されている含フッ素重合体。
【請求項2】
含フッ素単量体(i)が、一般式:
CH2=C(−X)−C(=O)−Y−Z−Rf (1)
[式中、Xは、塩素原子であり;
Yは、−O−または−NH−であり;
Zは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜18の芳香族基または環状脂肪族基、
-CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または
-CH2CH(OZ1) CH2−基(但し、Z1は水素原子またはアセチル基である。)または
-(CH2)m−SO2−(CH2)n−基 または -(CH2)m−S−(CH2)n−基(但し、mは1〜10、nは0〜10、である)、
Rfは、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基である。]
で示される化合物である請求項1に記載の含フッ素重合体。
【請求項3】
含フッ素単量体(i)において、Rfの炭素数が6である請求項1または2に記載の含フッ素重合体。
【請求項4】
単量体(ii)および(iii)の一方または両方が、Q11およびQ21がメチル基であるメタクリレートエステルである請求項1〜3のいずれかに記載の含フッ素重合体。
【請求項5】
脂肪族炭化水素基含有アクリレートエステル単量体(iii)において、Q22が炭素数12〜30の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基である請求項1〜4のいずれかに記載の含フッ素重合体。
【請求項6】
含フッ素重合体が、さらに、
(iv)アミノ基含有単量体またはカルボン酸基含有単量体の一方または両方から誘導された繰り返し単位を有する請求項1〜5のいずれかに記載の含フッ素重合体。
【請求項7】
アミノ基含有単量体が、式:
【化1】

[式中、R11、R12、R21は、同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Y11は酸素原子又はNHであり、Zは炭素数1〜10の分岐または直鎖のアルキレン基である。R11とR12は互いに結合して隣接する窒素原子と共に環を形成してもよい。]
で示される化合物である請求項6に記載の含フッ素重合体。
【請求項8】
カルボン酸基含有単量体が、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、マレイン酸フマル酸、イタコン酸およびテトラコン酸からなる群から選択された少なくとも1種である請求項6に記載の含フッ素重合体。
【請求項9】
含フッ素重合体が、単量体(i)〜(iv)以外の別の単量体から誘導された繰り返し単位を有し、該別の単量体が、無水マレイン酸および無水イタコン酸からなる群から選択された少なくとも1種である請求項1〜8のいずれかに記載の含フッ素重合体。
【請求項10】
(1)請求項1〜のいずれかに記載の含フッ素重合体、および
(2)有機溶媒
を含む表面処理剤組成物。
【請求項11】
撥水撥油剤または防汚剤である請求項10に記載の表面処理剤組成物。
【請求項12】
表面処理剤が有機溶媒の溶液である請求項10または1に記載の表面処理剤組成物。
【請求項13】
請求項10〜1のいずれかに記載の表面処理剤組成物で処理することからなる、基材を処理する方法。
【請求項14】
請求項10〜1のいずれかに記載の表面処理剤組成物を基材に適用することを含む、処理された基材の製法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理剤、特に撥水撥油剤、および表面処理剤の活性成分である含フッ素重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の含フッ素化合物が提案されている。含フッ素化合物には、耐熱性、耐酸化性、耐候性などの特性に優れているという利点がある。含フッ素化合物の自由エネルギーが低い、すなわち、付着し難いという特性を利用して、含フッ素化合物は、例えば、撥水撥油剤および防汚剤として使用されている。
【0003】
撥水撥油剤として使用できる含フッ素化合物として、フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートエステルを構成モノマーとする含フッ素重合体が挙げられる。表面処理剤の繊維への実用処理では、これまでの種々の研究結果からその表面特性として静的な接触角ではなく、動的接触角、特に後退接触角が重要であることを示している。すなわち、水の前進接触角はフルオロアルキル基の側鎖炭素数に依存しないが、水の後退接触角は、側鎖の炭素数8以上に比較して7以下では著しく小さくなることを示している。これと対応してX線解析は側鎖の炭素数が7以上では側鎖の結晶化が起こることを示している。実用的な撥水性が側鎖の結晶性と相関関係を有していること、および表面処理剤分子の運動性が実用性能発現の重要な要因であることが知られている(例えば、前川隆茂、ファインケミカル、Vol23, No.6, P12(1994))。上記理由により、側鎖の炭素数が7(特に6以下)以下と短いフルオロアルキル基をもつ(メタ)アクリレート系ポリマーでは側鎖の結晶性が低いためそのままでは実用性能を満足しない問題があった。
【0004】
WO2004/096939 A1は、含フッ素単量体、フッ素原子を含まない単量体、および必要により存在する架橋性単量体から形成されている含フッ素重合体を含んでなる表面処理剤を開示している。
WO2008/143093 A1は、含フッ素アクリレート単量体、ならびに環状炭化水素基を有する単量体または短鎖炭化水素基を有する単量体の一方または両方から形成されている含フッ素重合体を含んでなるメーソンリー処理剤を開示している。
【0005】
WO2006/121171 A1は、メルカプト官能性オルガノポリシロキサンおよび含フッ素単量体からなるフルオロシリコーン反応生成物を含んでなる表面処理剤を開示している。
WO2004/108855 A1は、含フッ素単量体から形成された含フッ素重合体を含んで成る表面処理剤であって、(a)含フッ素重合体がケイ素原子を有してなるか、および/または(b)表面処理剤が含フッ素重合体(第1重合体)および第1重合体と異なる第2重合体を含んでなり、この第2重合体がケイ素原子を有してなる含ケイ素重合体である表面処理剤を開示している。
【0006】
また、工業的に現在使用されている、有機溶媒の溶液である表面処理剤は、F(CF2)6CH2CH2OCOC(CH3)=CH2(C6SFMA)、イソボルニルメタクリレート、ステアリルメタクリレートから構成されていると推測される。
【0007】
これら先行技術文献に提案されている処理剤は、優れた撥水撥油性を与えないことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2004/096939 A1
【特許文献2】WO2008/143093 A1
【特許文献3】WO2006/121171 A1
【特許文献4】WO2004/108855 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、撥水撥油性が優れている表面処理剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
(i)式:
CH=C(−X)−C(=O)−Y−Z−Rf
[式中、Xは、ハロゲン原子、またはメチル基を除く一価の有機基であり、
Yは、−O−または−NH−であり、
Zは、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。]
で示される含フッ素単量体から誘導された繰り返し単位、
(ii)式:
CH=CQ11−C(=O)−O−Q12
[式中、Q11は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Q12は、炭素数4〜30の環状炭化水素含有基である。]
で示される環状炭化水素基含有アクリレートエステル単量体から誘導された繰り返し単位、および
(iii)式:
CH=CQ21−C(=O)−O−Q22
[式中、Q21は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Q22は、炭素数8〜30の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基である。]
で示される脂肪族炭化水素基含有アクリレートエステル単量体から誘導された繰り返し単位を有する含フッ素重合体
を提供する。
本発明は、(1)上記含フッ素重合体、および(2)液状媒体を含む表面処理剤をも提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の表面処理剤は、基材に優れた撥水撥油性を与える。優れた防汚性も与える。撥水撥油性および防汚性の耐久性にも優れる。
本発明の含フッ素重合体は、共重合性が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、含フッ素重合体(含フッ素共重合体)は、
(i)含フッ素単量体から誘導された繰り返し単位、
(ii)環状炭化水素基含有単量体から誘導された繰り返し単位、および
(iii)直鎖状または分岐状の炭化水素基含有単量体から誘導された繰り返し単位
を有する。
【0013】
本発明において、ケイ素含有化合物である単量体または連鎖移動剤の不存在下で重合を行うことが好ましい。本発明の重合体および処理剤は、ケイ素含有単量体またはケイ素含有連鎖移動剤を含まないことが好ましい。ケイ素含有化合物が存在すると撥油性が悪くなることがある。
【0014】
(i)含フッ素単量体
含フッ素単量体(i)は、式:
CH=C(−X)−C(=O)−Y−Z−Rf
[式中、Xは、ハロゲン原子、またはメチル基を除く一価の有機基であり、
Yは、−O−または−NH−であり、
Zは、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。]
で示される。
【0015】
Zは、例えば、炭素数1〜20の直鎖アルキレン基または分枝状アルキレン基、例えば、式−(CH−(式中、xは1〜10である。)で示される基、あるいは、式−SON(R)R−または式−CON(R)Rで示される基(式中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基であり、Rは、炭素数1〜10の直鎖アルキレン基または分枝状アルキレン基である。)、あるいは、式−CHCH(OR)CH−(式中、Rは、水素原子、または、炭素数1〜10のアシル基(例えば、ホルミルまたはアセチルなど)を表す。)で示される基、あるいは、式−Ar−CH−(式中、Arは、置換基を必要により有するアリーレン基である。)で示される基、-(CH2)m−SO2−(CH2)n−基 または -(CH2)m−S−(CH2)n−基(但し、mは1〜10、nは0〜10、である)であってよい。Xの具体例は、Cl、Br、I、F、CN、CFである。Xは、塩素原子であることが好ましい。
【0016】
含フッ素単量体(i)は、一般式:
CH2=C(−X)−C(=O)−Y−Z−Rf (I)
[式中、Xは、炭素数2〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であり;
Yは、−O−または−NH−であり;
Zは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜18の芳香族基または環状脂肪族基、
-CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または
-CH2CH(OZ1) CH2−基(但し、Z1は水素原子またはアセチル基である。)または
-(CH2)m−SO2−(CH2)n−基または -(CH2)m−S−(CH2)n−基(但し、mは1〜10、nは0〜10、である)、
Rfは、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基である。]
で示されるアクリレートエステルまたはアクリルアミドであることが好ましい。
【0017】
上記式(I)において、Rf基が、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。Rf基の炭素数は、1〜20、例えば1〜6、特に4〜6、特別に6であることが好ましい。Rf基の例は、−CF3、−CF2CF3、−CF2CF2CF3、−CF(CF3) 2、−CF2CF2CF2CF3、−CF2CF(CF3)2、−C(CF)3、−(CF2)4CF3、−(CF2)2CF(CF3)2、−CF2C(CF3)3、−CF(CF3)CF2CF2CF3、−(CF2)5CF3、−(CF2)3CF(CF3)2、−(CF2)4CF(CF3)2、−C817等である。
【0018】
Zは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜18の芳香族基または環状脂肪族基、
-CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または
-CH2CH(OZ1) CH2−基(但し、Z1は水素原子またはアセチル基である。)または
-(CH2)m−SO2−(CH2)n−基 または -(CH2)m−S−(CH2)n−基(但し、mは1〜10、nは0〜10、である)であることが好ましい。脂肪族基は、アルキレン基(特に炭素数は1〜4、例えば1または2である。)であることが好ましい。芳香族基または環状脂肪族基は、置換または非置換であってよい。S 基または SO2基はRf基に直接に結合していてよい。
【0019】
含フッ素単量体(i)の具体例としては、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−C6H4−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)4−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2N(−CH3) SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2N(−C2H5) SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−CH2CH(−OH) CH2−Rf
【0020】
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−CH2CH(−OCOCH3) CH2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0021】
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0022】
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0023】
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH2)3−Rf
【0024】
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
【0025】
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
[上記式中、Rfは、炭素数1〜6のフルオロアルキル基である。]
【0026】
(ii)環状炭化水素基を有する単量体
環状炭化水素基含有アクリレートエステル単量体(ii)は、
式:
CH=CQ11−C(=O)−O−Q12
[式中、Q11は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Q12は、炭素数4〜30の環状炭化水素含有基である。]
で示される。
【0027】
環状炭化水素基含有アクリレートエステル単量体(ii)は、フルオロアルキル基を有しない。環状炭化水素基含有アクリレートエステル単量体(ii)は、フッ素原子を含有してもよいが、フッ素原子を含有しないことが好ましい。
【0028】
Q11は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基またはハロゲン原子であることが好ましい。Q11は、メチル基であることが特に好ましい。
Q12は、鎖状基(例えば、直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基)を有していてよい環状炭化水素基である。環状炭化水素基としては、飽和または不飽和である、単環基、多環基、橋かけ環基などが挙げられる。環状炭化水素基は、不飽和であることが好ましい。環状炭化水素基の炭素数は、4〜30であり、6〜20であることが好ましい。環状炭化水素基としては、炭素数4〜20、特に5〜12の環状脂肪族基、炭素数6〜20の芳香族基、炭素数7〜20の芳香脂肪族基が挙げられる。環状炭化水素基の炭素数は、15以下、例えば12以下であることが特に好ましい。環状炭化水素基は、不飽和の環状脂肪族基であることが好ましい。環状炭化水素基の具体例は、シクロヘキシル基、t−ブチルシクロヘキシル基、ベンジル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基である。
【0029】
環状炭化水素基含有アクリレートエステル単量体の具体例としては、
シクロヘキシルアクリレート、t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート;および
シクロヘキシルメタクリレート、t−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート
等が挙げられる。
環状炭化水素基含有アクリレートエステル単量体が存在することにより、含フッ素重合体が与える撥水性および撥油性が高くなる。
【0030】
(iii)直鎖状または分岐状の炭化水素基を有する単量体
脂肪族炭化水素基含有アクリレートエステル単量体(iii)は式:
CH=CQ21−C(=O)−O−Q22
[式中、Q21は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Q22は、炭素数8〜30の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基である。]
で示される。
【0031】
直鎖状または分岐状炭化水素基含有単量体(iii)は、フルオロアルキル基を有しない。直鎖状または分岐状炭化水素基含有単量体(iii)は、フッ素原子を含有してもよいが、フッ素原子を含有しないことが好ましい。
Q21は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基またはハロゲン原子であることが好ましい。Q21は、メチル基であることが特に好ましい。
Q22は、直鎖状または分岐状の炭化水素基である。直鎖状または分岐状の炭化水素基は、特に直鎖状の炭化水素基であってよい。直鎖状または分岐状の炭化水素基は、炭素数が8〜30であってよく、例えば12〜28、特に18〜26であることが好ましい。直鎖状または分岐状の炭化水素基は、一般に飽和の脂肪族炭化水素基、特にアルキル基であることが好ましい。
【0032】
単量体(iii)は、アルキル基を有する(メタ)アクリレートエステル、特にアルキル(メタ)アクリレートエステルであってよい。アルキル基の炭素原子の数は8〜30であってよく、例えば、12〜28、特に18〜26であってよい。例えば、直鎖状または分岐状の炭化水素基を有する単量体は、式:
CH=CACOOA
[式中、Aは、水素原子、メチル基、または、フッ素原子以外のハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子)であり、
は、C2n+1(n=8〜30、特に12〜28)によって表されるアルキル基である。]
で示されるアクリレートであってよい。
【0033】
単量体(iii)の特に好ましい具体例は、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートである。
直鎖状または分岐状炭化水素基含有単量体が存在することにより、含フッ素重合体の溶解性が高くなり、および含フッ素重合体が与える撥水性および撥油性が高くなる。
【0034】
撥水撥油性が高くなるので、単量体(ii)および(iii)の一方または両方が、Q11およびQ21がメチル基であるメタクリレートエステルであることが好ましい。単量体(ii)および(iii)の両方がメタクリレートエステルであることが特に好ましい。
【0035】
(iv)アミノ基含有単量体またはカルボン酸基含有単量体
単量体として、(iv)アミノ基含有単量体およびカルボン酸基含有単量体の一方または両方を使用してもよい。
【0036】
アミノ基含有単量体の例は、式:


[式中、R11、R12、R21は、同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Y11は酸素原子又はNHであり、Zは炭素数1〜10の分岐または直鎖のアルキレン基である。R11とR12は互いに結合して隣接する窒素原子と共に環を形成してもよい。]
で示されるものである。
重合体は、アミノ基を含むため、例えばプロトン酸により塩を形成すると、水に溶解したときに解離してカチオン性を呈する。
【0037】
11、R12、R21は、それぞれ、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)を示す。R21は好ましくは水素原子又はメチル基である。R11とR12が互いに結合して隣接する窒素原子とともに環を形成する際、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を介してR11とR12とが結合してもよい。R11とR12が互いに結合して隣接する窒素原子とともに形成する環としては、例えば、アジリジン環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環などが挙げられる。
Zであるアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜21(好ましくは炭素数1〜4)のアルキレン基が挙げられる。
【0038】
アミノ基含有単量体の具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどの化学式(II)においてY11が酸素原子である化合物;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどの化学式(II)においてY11がNHである化合物などが挙げられる。
【0039】
カルボン酸基含有単量体を単量体として使用してもよい。カルボン酸基含有単量体の例は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸およびテトラコン酸である。撥水撥油性が高くなるので、処理基材が綿繊維を含む場合には、アミノ基含有単量体およびカルボン酸基含有単量体の一方または両方、特にカルボン酸基含有単量体を使用することが好ましい。
【0040】
(v)他の単量体
単量体(i)〜(iv)以外の他の単量体(v)、例えば、非フッ素非架橋性単量体を使用しても良い。
他の単量体の例には、例えば、エチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、およびビニルアルキルエーテルが含まれる。他の単量体はこれらの例に限定されない。
【0041】
他の単量体は、(フッ素原子を有しないことが好ましい)ハロゲン化オレフィンであってよい。
ハロゲン化オレフィンは、1〜10の塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換されている炭素数2〜20のオレフィンであることが好ましい。ハロゲン化オレフィンは、炭素数2〜20の塩素化オレフィン、特に1〜5の塩素原子を有する炭素数2〜5のオレフィンであることが好ましい。ハロゲン化オレフィンの好ましい具体例は、ハロゲン化ビニル、例えば塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、例えば塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、ヨウ化ビニリデンである。本発明において、ロールへのポリマー付着が生じ得る(ガムアップ性が悪くなり得る)ので、ハロゲン化オレフィンを使用しないことが好ましい。
【0042】
他の単量体は、非フッ素架橋性単量体であってよい。非フッ素架橋性単量体は、フッ素原子を含まない単量体である。非フッ素架橋性単量体は、少なくとも2つの反応性基および/またはオレフィン性炭素−炭素二重結合を有し、フッ素を含有しない化合物であってよい。非フッ素架橋性単量体は、少なくとも2つのオレフィン性炭素−炭素二重結合を有する化合物、あるいは少なくとも1つのオレフィン性炭素−炭素二重結合および少なくとも1つの反応性基を有する化合物であってよい。反応性基の例は、ヒドロキシル基、エポキシ基、クロロメチル基、ブロックイソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、などである。
【0043】
非フッ素架橋性単量体は、反応性基を有するモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレートまたはモノ(メタ)アクリルアミドであってよい。あるいは、非フッ素架橋性単量体は、ジ(メタ)アクリレートであってよい。
非フッ素架橋性単量体の1つの例は、ヒドロキシル基を有するビニル単量体である。
非フッ素架橋性単量体としては、例えば、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、モノクロロ酢酸ビニル、メタクリル酸ビニル、グリシジル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどが例示されるが、これらに限定されるものでない。
非フッ素架橋性単量体が存在することにより、重合体が与える洗濯耐久性が高くなる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートまたはメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリルアミド」とは、アクリルアミドまたはメタクリルアミドを意味する。
【0044】
単量体(i)〜(v)のそれぞれは、単独であってよく、あるいは2種以上の混合物であってもよい
含フッ素重合体において、含フッ素単量体(i)100重量部に対して、
環状炭化水素基含有アクリレートエステル単量体(ii)の量が1〜1000重量部、例えば10〜500重量部、特に15〜300重量部、特別に20〜100重量部、
脂肪族炭化水素基含有アクリレートエステル単量体(iii)の量が1〜1000重量部、例えば10〜500重量部、特に15〜300重量部、特別に20〜100重量部、
アミノ基含有単量体およびカルボン酸基含有単量体(iv)の量が0〜500重量部、例えば1〜100重量部、特に2〜50重量部、特別に3〜30重量部、
他の単量体(v)の量が0〜800重量部、例えば1〜500重量部、特に5〜200重量部であってよい。
【0045】
含フッ素重合体の数平均分子量(Mn)は、一般に、1000〜1000000、例えば3000〜500000、特に5000〜200000であってよい。含フッ素重合体の数平均分子量(Mn)は、一般に、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定する。
【0046】
本発明において、単量体を重合させ、含フッ素重合体が媒体に分散または溶解した含フッ素組成物を得る。
本発明において単量体(i)〜(iii)を使用する。単量体(iv)および(v)の一方または両方を使用してもよい。
含フッ素重合体は、(i)〜(iii)から誘導された繰り返し単位、および必要により単量体(iv)および(v)の少なくとも1つから誘導された繰り返し単位を有する。含フッ素重合体は、(i)〜(iii)から誘導された繰り返し単位のみからなっていてもよい。
【0047】
単量体(i)は、主に撥水撥油性能を向上させるために用いられ、
単量体(ii)は、主に撥水性能を向上させるために用いられ、
単量体(iii)は、主に撥油性能を向上させるため用いられ、
単量体(iv)は、主に撥水性能を向上させるために用いられ、
単量体(v)は、主に撥水撥油性能を向上させるために用いられる。
【0048】
単量体(i)としては、F(CF2)6CH2CH2OCOC(Cl)=CH2
単量体(ii)としては、ベンジルメタクリレート、
単量体(iii)としては、ステアリルメタクリレートおよび/またはベヘニルメタクリレート
単量体(iv)としては、無水マレイン酸および/またはジエチルアミノエチルメタクリレート、
がより好ましい。
【0049】
本発明における含フッ素重合体は通常の重合方法の何れでも製造でき、また重合反応の条件も任意に選択できる。このような重合方法として、溶液重合、懸濁重合、乳化重合が挙げられる。溶液重合が好ましい。
含フッ素重合体の有機溶媒溶液を得る方法は限定されない。例えば、水中での乳化重合により含フッ素重合体を製造した後に、水を除去して、有機溶媒を加えて、含フッ素重合体の有機溶媒溶液を得ることができる。
【0050】
溶液重合では、重合開始剤の存在下で、単量体を有機溶媒に溶解させ、窒素置換後、30〜120℃の範囲で1〜10時間、加熱撹拌する方法が採用される。重合開始剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどが挙げられる。重合開始剤は単量体100重量部に対して、0.01〜20重量部、例えば0.1〜10重量部の範囲で用いられる。
【0051】
有機溶媒は、単量体に不活性でこれらを溶解するものであり、例えば、エステル(例えば、炭素数2〜30のエステル、具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、炭素数2〜30のケトン、具体的には、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン)、アルコール(例えば、炭素数1〜30のアルコール、具体的には、イソプロピルアルコール)であってよい。有機溶媒の具体例としては、アセトン、クロロホルム、HCHC225、イソプロピルアルコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、テトラクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタンなどが挙げられる。有機溶媒は単量体の合計100重量部に対して、10〜2000重量部、例えば、50〜1000重量部の範囲で用いられる。
【0052】
乳化重合では、重合開始剤および乳化剤の存在下で、単量体を水中に乳化させ、窒素置換後、50〜80℃の範囲で1〜10時間、撹拌して重合させる方法が採用される。重合開始剤は、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t−ブチルパーベンゾエート、1−ヒドロキシシクロヘキシルヒドロ過酸化物、3−カルボキシプロピオニル過酸化物、過酸化アセチル、アゾビスイソブチルアミジン−二塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性のものやアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどの油溶性のものが用いられる。重合開始剤は単量体100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲で用いられる。
【0053】
放置安定性の優れた重合体水分散液を得るためには、高圧ホモジナイザーや超音波ホモジナイザーのような強力な破砕エネルギーを付与できる乳化装置を用いて、単量体を水中に微粒子化して重合することが望ましい。また、乳化剤としてはアニオン性、カチオン性あるいはノニオン性の各種乳化剤を用いることができ、単量体100重量部に対して、0.5〜20重量部の範囲で用いられる。アニオン性および/またはノニオン性および/またはカチオン性の乳化剤を使用することが好ましい。単量体が完全に相溶しない場合は、これら単量体に充分に相溶させるような相溶化剤、例えば、水溶性有機溶媒や低分子量の単量体を添加することが好ましい。相溶化剤の添加により、乳化性および共重合性を向上させることが可能である。
【0054】
水溶性有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エタノールなどが挙げられ、水100重量部に対して、1〜50重量部、例えば10〜40重量部の範囲で用いてよい。また、低分子量の単量体としては、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートなどが挙げられ、単量体の総量100重量部に対して、1〜50重量部、例えば10〜40重量部の範囲で用いてよい。
【0055】
重合においては、連鎖移動剤(ケイ素含有化合物以外の連鎖移動剤)を使用してもよい。連鎖移動剤の使用量に応じて、含フッ素重合体の分子量を変化させることができる。連鎖移動剤の例は、ラウリルメルカプタン、チオグリコール、チオグリセロールなどのメルカプタン基含有化合物(特に、(例えば炭素数1〜30の)アルキルメルカプタン)、次亜リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどの無機塩などである。連鎖移動剤の使用量は、単量体の総量100重量部に対して、0.01〜10重量部、例えば0.1〜5重量部の範囲で用いてよい。
【0056】
本発明の含フッ素組成物は、溶液、エマルション(特に、水性分散液)またはエアゾールの形態であることが好ましい。含フッ素組成物は、含フッ素重合体(表面処理剤の活性成分)および媒体(特に、液状媒体、例えば、有機溶媒および/または水)を含んでなる。媒体の量は、例えば、含フッ素組成物に対して、5〜99.9重量%、特に10〜80重量%であってよい。
含フッ素組成物において、含フッ素重合体の濃度は、0.01〜95重量%、例えば5〜50重量%であってよい。
【0057】
本発明の含フッ素組成物は、従来既知の方法により被処理物に適用することができる。通常、該含フッ素組成物を有機溶媒または水に分散して希釈して、浸漬塗布、スプレー塗布、泡塗布などのような既知の方法により、被処理物の表面に付着させ、乾燥する方法が採られる。また、必要ならば、適当な架橋剤と共に適用し、キュアリングを行ってもよい。さらに、本発明の含フッ素組成物に、防虫剤、柔軟剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、塗料定着剤、防シワ剤などを添加して併用することも可能である。基材と接触させる処理液における含フッ素重合体の濃度は0.01〜10重量%(特に、浸漬塗布の場合)、例えば0.05〜10重量%であってよい。
【0058】
本発明の含フッ素組成物(例えば、撥水撥油剤)で処理される被処理物としては、繊維製品、石材、フィルター(例えば、静電フィルター)、防塵マスク、燃料電池の部品(例えば、ガス拡散電極およびガス拡散支持体)、ガラス、紙、木、皮革、毛皮、石綿、レンガ、セメント、金属および酸化物、窯業製品、プラスチック、塗面、およびプラスターなどを挙げることができる。繊維製品としては種々の例を挙げることができる。例えば、綿、麻、羊毛、絹などの動植物性天然繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどの合成繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維などの無機繊維、あるいはこれらの混合繊維が挙げられる。
【0059】
繊維製品は、繊維、布等の形態のいずれであってもよい。
本発明の含フッ素組成物は、内部離型剤あるいは外部離型剤としても使用できる。
【0060】
含フッ素重合体は、繊維製品を液体で処理するために知られている方法のいずれかによって繊維状基材(例えば、繊維製品など)に適用することができる。繊維製品が布であるときには、布を溶液に浸してよく、あるいは、布に溶液を付着または噴霧してよい。処理された繊維製品は、撥油性を発現させるために、乾燥され、好ましくは、例えば、100℃〜200℃で加熱される。
【0061】
あるいは、含フッ素重合体はクリーニング法によって繊維製品に適用してよく、例えば、洗濯適用またはドライクリーニング法などにおいて繊維製品に適用してよい。
【0062】
処理される繊維製品は、典型的には、布であり、これには、織物、編物および不織布、衣料品形態の布およびカーペットが含まれるが、繊維または糸または中間繊維製品(例えば、スライバーまたは粗糸など)であってもよい。繊維製品材料は、天然繊維(例えば、綿または羊毛など)、化学繊維(例えば、ビスコースレーヨンまたはレオセルなど)、または、合成繊維(例えば、ポリエステル、ポリアミドまたはアクリル繊維など)であってよく、あるいは、繊維の混合物(例えば、天然繊維および合成繊維の混合物など)であってよい。本発明の製造重合体は、セルロース系繊維(例えば、綿またはレーヨンなど)を疎油性および撥油性にすることにおいて特に効果的である。また、本発明の方法は一般に、繊維製品を疎水性および撥水性にする。
【0063】
あるいは、繊維状基材は皮革であってよい。製造重合体を、皮革を疎水性および疎油性にするために、皮革加工の様々な段階で、例えば、皮革の湿潤加工の期間中に、または、皮革の仕上げの期間中に、水溶液または水性乳化物から皮革に適用してよい。
あるいは、繊維状基材は紙であってもよい。製造重合体を、予め形成した紙に適用してよく、または、製紙の様々な段階で、例えば、紙の乾燥期間中に適用してもよい。
【0064】
「処理」とは、処理剤を、浸漬、噴霧、塗布などにより被処理物に適用することを意味する。処理により、処理剤の有効成分である含フッ素重合体が被処理物の内部に浸透するおよび/または被処理物の表面に付着する。
【0065】
本発明の処理剤(処理剤組成物)は、分散液であってよいが、溶液であることが好ましい。含フッ素重合体が溶媒(特に、有機溶媒)に溶解した溶液であることが好ましい。溶媒は、有機溶媒、特に、1気圧において引火点が0〜200℃(特に21℃以上70℃未満)である有機溶媒(1種の有機溶媒、または2種以上の有機溶媒の混合物)であってよい。有機溶媒は、エステル(例えば、炭素数2〜30のエステル、具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、炭素数2〜30のケトン、具体的には、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン)、アルコール(例えば、炭素数1〜30のアルコール、具体的には、イソプロピルアルコール)であることが好ましい。
本発明の処理剤は、繊維製品、石材、皮革製品に好適に使用でき、撥水撥油性を付与する。処理剤は、例えば、スプレーとして、基材に適用できる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下において、部または%または比は、特記しない限り、重量部または重量%または重量比を表す。
試験の手順は次のとおりである。
【0067】
シャワー撥水性試験
シャワー撥水性試験をJIS−L−1092に従って行った。シャワー撥水性試験は(下記に記載されている表1に示されるように)撥水性No.によって表された。
体積が少なくとも250mlであるガラス漏斗、および、250mlの水を25秒間〜30秒間にわたって噴霧することができるスプレーノズルを使用する。試験布を固定するフレームは、直径が15cmの金属製である。サイズが約20cmx20cmである3枚の試験布を準備し、試験布をフレームに固定して試験布にしわがないようにする。噴霧の中心を試験布の中心に置く。室温の水(250mL)をガラス漏斗に入れ、試験布に(25秒〜30秒の時間にわたって)噴霧する。フレームを台から取り外し、フレームの一方の端をつかんで水を噴霧した面を下側にし、フレームを実験台等に軽くぶつけて過剰な水滴を落とす。続いてフレームを180°回転させ、同じ手順を繰り返した後、試験布表面を観察し表1の撥水性No.に従って評価する。評価結果を3回の測定の平均から得る。
評価結果が90以上の場合は○、80の場合は△、70以下の場合は×として最終評価とした。
【0068】
【表1】
【0069】
撥油性試験
撥油性はAATCC−TM118によって下記表2に示す試験溶液を試験布上、2箇所に数滴たらし、30秒後の浸透状態を観察し、浸漬を示さない試験溶液が与える撥油性の最高点を撥油性とする。
評価結果が4以上の場合は○、2または3の場合は△、1以下の場合は×として最終評価とした。
【0070】
【表2】
【0071】
重量平均分子量の測定
含フッ素共重合体の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により求めたものである(ポリスチレン換算)。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおいて、Shodex GPC−104(SHOWA DENKO K.K.製)を使用した。カラムとしては、Shodex LF−604を2本、Shodex KF−601を2本、Shodex KF−600RLを2本、Shodex KF−600RHを2本接続したものを使用した。検出器としては、UV(Shodex UV−41、254nm)検出器を使用した。標準物質としては、標準ポリスチレン(Shodex STANDARD Sシリーズ)を使用した。
分析サンプルは、含フッ素共重合体をテトラヒドロフランに溶解させ、0.5重量%の溶液とし、0.5μmのフィルタに通したものとした。重量平均分子量を測定する際は、カラムを40℃で保持し、溶離液としては、テトラヒドロフランを用い、流速を0.6mL/分とし、分析サンプル50μLを注入した。
【0072】
合成例1
撹拌装置、温度計、還流冷却器、滴下漏斗、窒素流入口および加熱装置を備えた容積1Lの反応器を準備し、溶媒の酢酸ブチルを233部添加した。続いて、撹拌下、F(CF2)6CH2CH2OCOC(Cl)=CH2(「C6SFClA」と称する。)60部、ベンジルメタクリレート(BzMA)22部、ステアリルメタクリレート(StMA)13部および無水マレイン酸(MA)5部からなるモノマー(モノマー合計100部)に、開始剤の過ピバリン酸−t−ブチル3部をこの順に添加し、この混合物を60℃の窒素雰囲気下で12時間混合撹拌して共重合を行なった。次にこの反応混合物を室温まで冷却し、含フッ素共重合体溶液(S1)を得た。この溶液の固形分濃度は30重量%であった。含フッ素共重合体の単量体組成は、仕込み単量体組成にほぼ一致した。含フッ素共重合体の重量平均分子量は、34000であった。
【0073】
合成例2
F(CF2)6CH2CH2OCOC(Cl)=CH2(C6SFClA)55部、ベンジルメタクリレート(BzMA)30部、ステアリルメタクリレート(StMA)13部および無水マレイン酸(MA)2部からなるモノマー(モノマー合計100部)に、開始剤の過ピバリン酸−t−ブチル3部をこの順に添加する以外は、合成例1と同様に共重合および後処理を行なって、含フッ素共重合体溶液(S2)を得た。含フッ素共重合体の単量体組成は、仕込み単量体組成にほぼ一致した。
【0074】
合成例3
F(CF2)6CH2CH2OCOC(Cl)=CH2(C6FClA)60部、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)22部、ステアリルメタクリレート(StMA)16部および無水マレイン酸(MA)2部からなるモノマー(モノマー合計100部)に、開始剤の過ピバリン酸−t−ブチル3部をこの順に添加する以外は、合成例1と同様に共重合および後処理を行なって、含フッ素共重合体溶液(S3)を得た。含フッ素共重合体の単量体組成は、仕込み単量体組成にほぼ一致した。
【0075】
合成例4
F(CF2)6CH2CH2OCOC(Cl)=CH2(C6FClA)60部、イソボルニルメタクリレート(IBMA)22部、ステアリルメタクリレート(StMA)16部および無水マレイン酸(MA)2部からなるモノマー(モノマー合計100部)に、開始剤の過ピバリン酸−t−ブチル3部をこの順に添加する以外は、合成例1と同様に共重合および後処理を行なって、含フッ素共重合体溶液(S4)を得た。含フッ素共重合体の単量体組成は、仕込み単量体組成にほぼ一致した。
【0076】
合成例5
F(CF2)6CH2CH2OCOC(Cl)=CH2(C6FClA)60部、ベンジルメタクリレート(BzMA)22部、ラウリルメタクリレート(LMA)13部および無水マレイン酸(MA)5部からなるモノマー(モノマー合計100部)に、開始剤の過ピバリン酸−t−ブチル3部をこの順に添加する以外は、合成例1と同様に共重合および後処理を行なって、含フッ素共重合体溶液(S5)を得た。含フッ素共重合体の単量体組成は、仕込み単量体組成にほぼ一致した。
【0077】
合成例6
F(CF2)6CH2CH2OCOC(Cl)=CH2(C6FClA)60部、ベンジルメタクリレート(BzMA)22部、ベヘニルメタクリレート(BeMA)13部および無水マレイン酸(MA)2部からなるモノマー(モノマー合計100部)に、開始剤の過ピバリン酸−t−ブチル3部をこの順に添加する以外は、合成例1と同様に共重合および後処理を行なって、含フッ素共重合体溶液(S6)を得た。含フッ素共重合体の単量体組成は、仕込み単量体組成にほぼ一致した。
【0078】
合成例7
F(CF2)6CH2CH2OCOC(Cl)=CH2(C6FClA)60部、ベンジルメタクリレート(BzMA)22部、ステアリルメタクリレート(StMA)13部およびジエチルアミノエチルメタクリレート(DEAEMA)5部からなるモノマー(モノマー合計100部)に、開始剤の過ピバリン酸−t−ブチル3部をこの順に添加する以外は、合成例1と同様に共重合および後処理を行なって、含フッ素共重合体溶液(S7)を得た。含フッ素共重合体の単量体組成は、仕込み単量体組成にほぼ一致した。
【0079】
合成例8
撹拌装置、温度計、還流冷却器、滴下漏斗、窒素流入口および加熱装置を備えた容積1Lの反応器を用意し、溶媒の酢酸ブチルを233部添加した。続いて、撹拌下、F(CF2)6CH2CH2OCOC(CH3)=CH2(「C6SFMA」と称する。)60部、イソボルニルメタクリレート(IBMA)25部およびステアリルメタクリレート(StMA)12部からなるモノマー(モノマー合計100部)に、開始剤の過ピバリン酸−t−ブチル3部をこの順に添加し、この混合物を60℃の窒素雰囲気下で12時間混合撹拌して共重合を行なった。次にこの反応混合物を室温まで冷却し、含フッ素共重合体溶液(R1)を得た。この溶液の固形分濃度は30重量%であった。含フッ素共重合体の単量体組成は、仕込み単量体組成にほぼ一致した。含フッ素共重合体の重量平均分子量は、36000であった。
【0080】
合成例9
F(CF2)6CH2CH2OCOC(Cl)=CH2(C6FClA)60部、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)35部および無水マレイン酸(MA)5部からなるモノマー(モノマー合計100部)に、開始剤の過ピバリン酸−t−ブチル3部をこの順に添加する以外は、合成例8と同様に共重合および後処理を行なって、含フッ素共重合体溶液(R2)を得た。含フッ素共重合体の単量体組成は、仕込み単量体組成にほぼ一致した。
【0081】
合成例10
F(CF2)6CH2CH2OCOC(Cl)=CH2(C6FClA)60部、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)22部、メチルメタクリレート(MMA)16部および無水マレイン酸(MA)2部からなるモノマー(モノマー合計100部)に、開始剤の過ピバリン酸−t−ブチル3部をこの順に添加する以外は、合成例8と同様に共重合および後処理を行なって、含フッ素共重合体溶液(R3)を得た。含フッ素共重合体の単量体組成は、仕込み単量体組成にほぼ一致した。
【0082】
合成例11
F(CF2)6CH2CH2OCOC(Cl)=CH2(C6FClA)60部、ステアリルメタクリレート(StMA)38部および無水マレイン酸(MA)2部からなるモノマー(モノマー合計100部)に、開始剤の過ピバリン酸−t−ブチル3部をこの順に添加する以外は、合成例8と同様に共重合および後処理を行なって、含フッ素共重合体溶液(R4)を得た。含フッ素共重合体の単量体組成は、仕込み単量体組成にほぼ一致した。
【0083】
調製例1
合成例1で得られた含フッ素共重合体溶液(S1)の12gに酢酸ブチルを288g添加して希釈し、固形分濃度1.2wt%である溶媒分散液(SD1)を得た。
【0084】
調製例2〜7
合成例2〜7で得られた含フッ素共重合体溶液(S2〜S7)について、調製例1と同様に酢酸ブチルを用いて希釈し、固形分濃度1.2wt%である溶媒分散液(SD2〜SD7)をそれぞれ得た。
【0085】
比較調製例1
合成例8で得られた含フッ素共重合体溶液(R1)について、調製例1と同様に酢酸ブチルを用いて希釈し、固形分濃度1.2wt%である溶媒分散液(RD1)を得た。
【0086】
比較調製例2〜4
合成例9〜11で得られた含フッ素共重合体溶液(R2〜R4)について、調製例1と同様に酢酸ブチルを用いて希釈し、固形分濃度1.2wt%である溶媒分散液(RD2〜RD4)を得た。
【0087】
実施例1
調製例1〜7(合成例1〜7)及び比較調製例1〜4(合成例8〜11)で得られた溶媒分散液を用いて試験布を作製し、撥水性および撥油性を評価した。
溶媒分散液(SD1)300gが入ったポリビンの中へポリエステル布またはコットン布を投入して密閉した後ポリビンを10秒間上下に振り、布に溶媒分散液を充分浸漬させる。ポリビンから取り出した布は、遠心脱水機を使って1000rpm、1分間処理して余分な溶媒を除去する。その後ドラフト内で24時間室温乾燥して試験布を作製した。この試験布で撥水性試験および撥油性試験を行った。性能評価結果を表3に示す。
【0088】
実施例2〜7
実施例1における含フッ素共重合体溶媒分散液のSD1に代えて、調製例2〜7で得られた含フッ素共重合体の溶媒分散液SD2〜SD7をそれぞれ用いる他は、実施例1と同様に実験を行った。得られた試験布の性能評価結果を表3に示す。
【0089】
比較例1〜4
実施例1における含フッ素共重合体溶媒分散液のSD1に代えて、比較調製例1〜4で得られた含フッ素共重合体溶媒分散液RD1〜RD4をそれぞれ用いる他は、実施例1と同様に実験を行った。得られた試験布の性能評価結果を表3に示す
【0090】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の処理剤は、繊維製品などの基材に対して好適に使用でき、基材に優れた撥水撥油性を付与する。