(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、活性部の変位を阻害しないように活性部を保護することが可能であり、シンプルな構造で機械的強度を向上させることができる圧電駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、鋭意検討の結果、積層型圧電素子の素子本体において、最も脆弱な部分が、活性部における積層方向の中央部であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る圧電駆動装置は、
圧電体層と内部電極とが交互に積層してある活性部と、前記活性部の積層方向の両端に積層してある不活性部とを有する素子本体と、
前記素子本体の前記積層方向における一方の端面に接合される被駆動体と、
前記素子本体の前記積層方向における他方の端面に接合される固定部材と、
前記活性部の積層方向の中央部に位置する前記素子本体の外周を少なくとも被覆してある熱収縮チューブと、を有する。
【0011】
本発明の圧電駆動装置では、活性部の積層方向の中央部に位置する素子本体の外周を少なくとも熱収縮チューブで被覆してある。このように構成することで、活性部の積層方向の中央部に位置する素子本体を有効に保護することが可能になり、シンプルな構造で機械的強度を向上させることができる。また、熱収縮チューブは、塗布法やコーティング法で形成した保護膜とは異なり、素子本体の角部で膜厚が薄くなることもなく、周方向に沿って均一な厚みで素子本体を保護することができる。
【0012】
また、熱収縮チューブは、熱や光や電子線などのエネルギー(熱などのエネルギー)を加えることで収縮する樹脂チューブであり、収縮する前の状態では、素子本体の中央部を覆う位置に容易に取り付けることが可能であり、その後、熱などのエネルギーを加えることで、素子本体の中央部外周に容易に装着することができる。
【0013】
好ましくは、前記熱収縮チューブの内周面と前記素子本体との間には、隙間が形成してある。隙間を形成することで、素子本体における活性部の積層方向の変位を熱収縮チューブが阻害するおそれが少ない。また隙間が形成してあることで、熱収縮チューブに加わる外部衝撃が隙間の空間で吸収され、素子本体に伝達される衝撃が弱められ、素子本体の折れやクラックなどを有効に防止することができる。なお、内周面に接着層が形成されてない熱収縮チューブは、素子本体の外周面との間に隙間が生じやすい。
【0014】
前記素子本体は、2つの前記端面以外に、4つの角部で隣接する4つの側面を有しても良く、
好ましくは、収縮前の前記熱収縮チューブが筒形状であり、
収縮後の前記熱収縮チューブの内周面と前記素子本体の前記角部とが接触し、
収縮後の前記熱収縮チューブの内周面と前記素子本体の前記側面との間に隙間が形成してある。
【0015】
このように構成することで、素子本体における活性部の積層方向の変位を熱収縮チューブが阻害するおそれが少ない。また隙間が形成してあることで、熱収縮チューブに加わる外部衝撃が隙間の空間で吸収され、素子本体に伝達される衝撃が弱められ、素子本体の折れやクラックなどを有効に防止することができる。
【0016】
前記素子本体の対向する二つの側面には、それぞれ外部電極が形成してあり、前記外部電極が収縮後の前記熱収縮チューブにより覆われていてもよい。このように構成することで、外部電極が有効に保護され、外部電極のガス腐食などを防止することができる。
【0017】
前記取付面の近くで前記外部電極の外表面には、配線用リード部が電気的接続部を介して固定してあり、前記電気的接続部が、前記熱収縮チューブで覆われていてもよい。このように構成することで、電気的接続部での素子本体の強度も向上する。前記電気的接続部としては、ハンダおよび導電性接着剤のいずれかであってもよい。
【0018】
また、前記熱収縮チューブが、前記被駆動体と前記素子本体とを接合する樹脂部の少なくとも一部をも一体的に覆っていてもよい。このように構成することで、被駆動体と素子本体とを接合する部分の強度も向上する。
【0019】
前記熱収縮チューブが、前記被駆動体と前記素子本体とを接合する樹脂部と、前記被駆動体の一部とを一体的に覆っていてもよい。被駆動体と前記素子本体とを接合する樹脂部は、接着剤も兼ねており、一般的には耐湿性に弱いが、その部分を熱収縮チューブで覆うことで、耐湿性を向上させることができる。
【0020】
また、被駆動体がシャフトと、そのシャフトに沿って移動自在に保持されるレンズ保持枠などの移動部材である場合に、接着剤を兼ねている樹脂部を熱収縮チューブにより覆い、さらにシャフトの一部も覆うことで、移動部材が樹脂部に接触することが無くなる。そのため、移動部材に接着剤からなる樹脂部が付着して接着剤の成分の一部がシャフトの表面に付着することを有効に防止することができる。なお、シャフトの表面に接着剤の成分の一部が付着すると、シャフトから移動部材に加わる振動の伝達が変化し、正確な移動部材の移動制御が困難になるおそれがある。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0023】
第1実施形態
図1は、本発明の一実施形態に係る圧電駆動装置10を利用したレンズ駆動装置60を示す概念図である。レンズ駆動装置60は、圧電駆動装置10の他に、シャフト44に対して移動自在に係合された移動部材56と、素子本体20に電圧を印加する駆動回路58とを有している。移動部材56はレンズを保持しており、移動部材56およびこれに保持されるレンズは、シャフト44の軸芯(Z軸)に沿って、シャフト44に対して相対移動することができる。
【0024】
圧電駆動装置10は、積層型圧電素子で構成される素子本体20と、錘(固定部材の一例)42と、シャフト(被駆動体の一例)44と有する。また、圧電駆動装置10は、素子本体20と駆動回路58とを電気的に接続する配線部32や、配線部32を第1および第2外部電極28a,28bに接続する電気的接続部30をさらに有する。電気的接続部30は、たとえばハンダまたは導電性接着剤などで構成される。
【0025】
素子本体20は、駆動回路58によって電圧を印加されて変形する。これに伴い、素子本体20に接続されたシャフト44は、Z軸方向に往復運動(振動)する。駆動回路58が出力する電圧波形は特に限定されないが、駆動回路58は、たとえばノコギリ波形の電圧波形を出力することにより、圧電駆動装置10の変形量およびこれに伴うシャフト44の変位量を越える移動量を、移動部材56に発生させることができる。
【0026】
なお、本実施形態では、圧電駆動装置10をレンズ駆動装置60に適用した態様を例に挙げて説明を行うが、圧電駆動装置10を適用する装置としてはこれに限定されず、圧電駆動装置10は、その他の駆動装置等にも適用することができる。
【0027】
図1および
図3に示すように、圧電駆動装置10の素子本体20は、略角柱状(本実施形態では四角柱)の外観形状を有しており、圧電体層26と、第1および第2内部電極27a,27bと、第1および第2外部電極28a,28bとを有する。なお、素子本体20の外観形状は、角柱状に限定されず、円柱状、楕円柱状その他の形状であってもかまわない。
【0028】
素子本体20の内部において、第1内部電極27aおよび第2内部電極27bは、圧電体層26を挟んで交互に積層されている。第1外部電極28aと第2外部電極28bは、素子本体20の面のうち、積層方向(Z軸方向)に沿って延在する側面に形成されている。
図3に示すように、第1外部電極28aは、積層方向に沿って延在する第1側面25aに形成されており、第2外部電極28bは、第1側面25aとはX軸方向の反対方向を向く第2側面25bに形成されている。
【0029】
第1内部電極27aは、第1外部電極28aに電気的に接続されており、第2内部電極27bは、第2外部電極28bに電気的に接続されている。また、素子本体20の側面のうち、第1および第2外部電極28a,28bが形成されていない第3側面25cおよび第4側面25d(Y軸方向に対向する)には、マイグレーションを防止するための樹脂層が予め形成されていても良い。
【0030】
なお、図面において、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に垂直であり、Z軸が素子本体20の積層方向およびシャフトの軸方向に一致し、X軸が、第1外部電極28aと第2外部電極28bとの対向方向に一致する。
【0031】
第1内部電極27aおよび第2内部電極27bを構成する導電材としては、たとえば、Ag、Pd、Au、Pt等の貴金属およびこれらの合金(Ag−Pdなど)、あるいはCu、Ni等の卑金属およびこれらの合金などが挙げられるが、特に限定されない。第1外部電極28aおよび第2外部電極28bを構成する導電材料も特に限定されず、内部電極を構成する導電材と同様の材料を用いることができる。なお、第1外部電極28aおよび第2外部電極28bの最外表面には、上記各種金属のメッキ層やスパッタ層が形成してあってもよい。
【0032】
また、圧電体層26の材質は、圧電効果あるいは逆圧電効果を示す材料であれば、特に制限されず、たとえば、PbZr
x Ti
1−x O
3 、BaTiO
3 などが挙げられる。また、特性向上等のための成分が含有されていてもよく、その含有量は、所望の特性に応じて適宜決定すればよい。
【0033】
図1および
図2Aに示すように、圧電駆動装置10では、素子本体20の積層方向における一方の端面である第1端面22に対して対向するように、錘42の第1取付面42aが配置されている。第1端面22と第1取付面42aとは、第1樹脂部52aによって連結されており、素子本体20と錘42は、第1樹脂部52aによって相互に固定されている。
【0034】
第1外部電極28aには、電気的接続部30を介して、配線部32が接続されている。なお、第1外部電極28aとは反対側の側面に形成されている第2外部電極28bにも、第1外部電極28aと同様に、電気的接続部30を介して配線部32が接続されている。
【0035】
配線部32の先端を第1外部電極28aに固定している電気的接続部30は、第1外部電極28aが形成されている第1側面25aのうち、どの位置に配置されていても良い。本実施形態に係る圧電駆動装置10では、電気的接続部30は、素子本体20の積層方向の中央より錘42に近接する側に設けられている。また、
図4に示すように、電気的接続部30は、第1外部電極28aと確実に接合するために、第1外部電極28aが形成されている第1側面25aのうち、積層方向に垂直なY軸方向の中央部付近に設けられている。
【0036】
電気的接続部30は、配線部32の先端部付近および第1外部電極28aの表面に接触しており、配線部32の先端部と第1外部電極28aとを、電気的かつ物理的に接続している。なお、電気的接続部30によって被覆されている配線部32の先端部付近は、線皮(絶縁被覆)が除去されて芯線が露出している。
【0037】
また、
図1および
図2Aに示すように、素子本体20の積層方向における他方の端面である第2端面24には、上側第1樹脂部52bを介してシャフト44が接続されている。シャフト44の第2取付面44aは、素子本体20の第2端面24に対向するように配置されており、上側第1樹脂部52bは、第2端面24と第2取付面44aとを連結する。上側第1樹脂部52bは、下側第1樹脂部52aと同じ樹脂で構成されることが好ましいが、必ずしも同一である必要はない。
【0038】
圧電駆動装置10において、素子本体20に取り付けられる各部材の材質は特に限定されないが、たとえばシャフト44は、移動部材56を好適に支持できるように、SUS等の金属材料等によって構成することができる。また、錘42は、シャフト44に変位を与えるための慣性体として好適に機能するように、タングステン等の比較的比重の大きい金属材料等を含むことが好ましいが、錘42の材質は特に限定されない。
【0039】
配線部32としては、銅等の導電材料によって構成される芯線と、芯線を被覆する被覆膜を有するリード線等を用いることができるが、特に限定されない。また、配線部32の芯線は、単線であっても良く、撚り線であっても良い。電気的接続部30も、電気用等に用いられるはんだの材質であれば、特に限定されない。
【0040】
本実施形態では、
図2Aに示すように、素子本体20は、圧電体層26と内部電極27a,27bとが交互に積層してある活性部26aと、活性部26aの積層方向の両端に積層してある第1および第2不活性部26b1,26b2とを有する。各不活性部26b1,26b2は、内部電極27a,27bが双方共に存在しない絶縁体層として定義され、不活性部26b1,26b2を構成する絶縁体層は、活性部26aを構成する圧電体層26と同じ材質で構成されることが好ましいが、必ずしも同じ材質で構成する必要はない。
【0041】
活性部26aのZ軸方向長さZ0は、圧電体層26の厚みや内部電極27a,27bの数などに応じて決定され、特に限定されない。Z軸方向の下側に位置する第1不活性部26b1のZ軸方向の長さZ1は、特に限定されず、活性部26aと下側の第1不活性部26b1との第1界面26c1に位置する最外層の内部電極27aまたは27bを保護するために十分な不活性部26b1の厚みとなるように決定される。Z軸方向の上側に位置する第2不活性部26b2のZ軸方向の長さZ2は、特に限定されず、活性部26aと第2不活性部26b2との第2界面26c2に位置する最外層の内部電極27aまたは27bを保護するために十分な第2不活性部26b2の厚みとなるように決定される。長さZ1,Z2は、同じでも異なっていても良い。
【0042】
本実施形態では、錘42の取付面42aと素子本体20の端面22とを接着するための下側第1樹脂部52aが、取付面42aから第1界面26c1に対応する素子本体20の外側面25a〜25dまでを覆っている。特に本実施形態では、
図2Aに示すように、電気的接続部30は、下側の第1不活性部26b1のZ軸方向長さZ1の範囲内に位置し、下側第1樹脂部52aは、電気的接続部30の外周も覆うようになっている。
【0043】
下側第1樹脂部52aは、下側の第1不活性部26b1から第1界面26c1を含めたZ軸方向の範囲内位置で、外部電極28a,28bの外側も覆っている。さらに、下側第1樹脂部52aは、
図2Aに示す第1不活性部26b1から第1界面26c1を含めたZ軸方向の範囲内位置で、
図5に示す素子本体20の第3側面25cおよび第3側面25dの下方部も一体的に連続して覆っている。
【0044】
また、本実施形態では、
図2Aに示すように、シャフト44の取付面44aと素子本体20の端面24とを接着するための上側第1樹脂部52bが、取付面44aから第2界面26c2に対応する素子本体20の外側面25a〜25dまでを覆っている。
【0045】
上側第1樹脂部52bは、上側の第2不活性部26b2から第2界面26c2を含めたZ軸方向の範囲内位置で、外部電極28a,28bの外側も覆っている。さらに、上側第1樹脂部52bは、
図2に示す第2不活性部26b2から第2界面26c2を含めたZ軸方向の範囲内位置で、
図3に示す素子本体20の第3側面25cおよび第3側面25dの上方部も一体的に連続して覆っている。
【0046】
さらに本実施形態では、
図2Aに示すように、活性部26aの積層方向(Z軸方向)の中央部に位置する素子本体20の外周を熱収縮チューブ53が被覆してある。本実施形態では、熱収縮チューブ53は、第1樹脂部52aおよび52bとは重複しない範囲で、活性部26aの積層方向(Z軸方向)の中央部に位置する素子本体20(外部電極28a,28b含む)の外周を覆っている。
【0047】
熱収縮チューブ53は、熱や光や電子線などのエネルギーを加えることで収縮する樹脂チューブであり、たとえばポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、FEP、PFA、シリコーン、PEEK材などの樹脂で構成される。熱収縮チューブ53は、単層で構成されても良く、複層で構成されても良い。また、熱収縮チューブ53の内周面には、接着層が形成されていても良いが、本実施形態では、接着層が形成されていないことが好ましい。
【0048】
以下に、
図3〜
図5を用いて、圧電駆動装置10の製造方法の一例を説明する。
【0049】
圧電駆動装置10の製造方法では、まず、
図3に示すような素子本体20を準備する。素子本体20の製造工程では、まず、焼成後に第1内部電極27aおよび第2内部電極27bとなる所定パターンの内部電極ペースト膜が形成されたグリーンシートと、内部電極ペースト膜を持たないグリーンシートとを、用意する。
【0050】
グリーンシートは、たとえば以下のような方法で作製される。まず、圧電体層26を構成する材料の原料を含む仮焼粉末にバインダを加えてスラリー化する。次に、スラリーをドクターブレード法またはスクリーン印刷法等の手段によってシート化し、その後に乾燥させて、内部電極ペースト膜を持たないグリーンシートを得る。さらに、上述した導電材を含む内部電極ペーストを、印刷法等の手段により、グリーンシートの上に塗布することで、所定パターンの内部電極ペースト膜が形成されたグリーンシートが得られる。なお、圧電体層26を構成する材料の原料には、不可避的不純物が含まれていてもよい。
【0051】
各グリーンシートを準備した後、準備したグリーンシートを重ね合わせ、圧力を加えて圧着し、乾燥工程等の必要な工程を経た後、切断し、積層体を得る。
【0052】
次に、得られた積層体を所定条件で焼成して焼結体を得た後、焼結体における第1側面25aおよび第2側面25bに相当する部分に第1外部電極28aおよび第2外部電極28bを形成し、この電極に直流電圧を印加して圧電体層26の分極処理を行う。その後、分極処理後の短冊状焼結体を個々の素子本体に切断し、
図3に示すような素子本体20を得る。なお、得られた素子本体20にバレル研磨を行って、角部および稜線部をR面加工してもよい。
【0053】
次に、
図4に示すように、素子本体20に対して、配線部32を接続する。その際、まず、配線部32の先端部の被覆を除去して芯線を露出させ、次に第1および第2外部電極28a,28bの所定位置および芯線に対して予備はんだを行い、最後に配線部32と外部電極28a,28bの予備はんだを接触させた状態で溶融させることにより、電気的接続部30を形成することができる。なお、電気的接続部30は、ハンダに代えて、導電性接着剤で形成しても良い。
【0054】
次に、電気的接続部30を備える素子本体20の第1端面22を、第1樹脂部52aとなる熱硬化性接着剤52が塗布された錘42の第1取付面42aに押し付けた後に加熱し、
図2に示すような第1樹脂部52aを形成する。この場合、錘42の第1取付面42aに塗布される熱硬化性接着剤52の量は、単に第1端面22と第1取付面42aとを固定するために必要とされる量ではなく、硬化後に形成される第1樹脂部52aが電気的接続部30を被覆できるように、且つ
図2に示す第1界面26c1の位置まで盛り上がるように調整される。
【0055】
また、同様な熱硬化性接着剤52を用いて、
図2Aに示すように、素子本体20の第2端面24には、シャフト44の第2取付面44aを固定し、第1端面22と同様に、第2端面24と第2取付面44aを連結する第1樹脂層52bを形成する。第1樹脂層52bを構成する接着剤の量は、単に第2端面24と第2取付面44aとを固定するために必要とされる量ではなく、硬化後に形成される第1樹脂部52bが第2界面26c2の位置まで垂れ下がるように調整される。
【0056】
その後に、熱収縮チューブ53を、
図2Aに示す位置に取り付ける。そのためには、収縮前の筒形状の熱収縮チューブ53の内部に、シャフト44を通し、チューブ53の内側に素子本体20が位置する
図2Aに示す位置で、チューブ53に熱などを加えて半径方向にチューブ53を収縮させれば良い。なお、収縮前の熱収縮チューブ53は、角部を持たない筒状、たとえば円筒形状または楕円筒形状などの丸みを帯びた筒状を有している。
【0057】
熱収縮チューブ53に熱エネルギーなどを加えて収縮させると、
図2Bに示すように、少なくとも素子本体20の4つの角部がチューブ53の内周に密着することになる。素子本体20における4つの側面と熱収縮チューブ53の内周面との間には、多少の隙間54が生じることがあるが、問題は無い。むしろ、Z軸方向に変位する活性部26aの動きを阻害しないため、都合が良い。
【0058】
また隙間54が形成してあることで、熱収縮チューブ53に加わる外部衝撃が隙間53の空間で吸収され、素子本体10に伝達される衝撃が弱められ、素子本体10の折れやクラックなどを有効に防止することができる。なお、内周面に接着層が形成されてない熱収縮チューブ53は、素子本体10の外周面との間に隙間54が生じやすい。
【0059】
熱収縮チューブ53は、塗布またはコーティング法などにより形成される樹脂部に比較して、厚く均一に形成することができる。たとえば塗布またはコーティング法などにより形成される樹脂部の厚みは、数十μmであるのに対して、熱収縮チューブ53aのみは、100〜500μm以上に厚くすることができる。特に熱収縮チューブ53では、
図2Bに示すように、素子本体20の角部においても、その厚みが薄くなることはない。塗布またはコーティング法などにより形成される樹脂部では、素子本体20の角部において、さらに厚みが薄くなるという課題がある。
【0060】
本実施形態では、素子本体20の角部においても、熱収縮チューブ53の厚みが薄くなることはないことから、素子本体20の機械的強度(たとえば抗折強度)をさらに向上させることができ、折れにくくなり、さらに耐久性が向上する。なお、本実施形態では、単一の熱収縮チューブ53を用いたが、複数の熱収縮チューブ53を複層重ねて使用しても良い。その場合には、さらに素子本体20の機械的強度(たとえば抗折強度)を向上させることができ、折れにくくなり、さらに耐久性が向上する。
【0061】
すなわち本実施形態では、活性部26aの積層方向の中央部に位置する素子本体20を有効に保護することが可能になり、シンプルな構造で機械的強度を向上させることができる。
【0062】
また、熱収縮チューブ53は、熱や光や電子線などのエネルギー(熱などのエネルギー)を加えることで収縮する樹脂チューブであり、収縮する前の状態では、素子本体10のZ軸方向中央部を覆う位置に容易に取り付けることが可能であり、その後、熱などのエネルギーを加えることで、素子本体10の中央部外周に容易に装着することができる。
【0063】
また本実施形態では、
図2Bに示すように、素子本体20の対向する二つの側面には、それぞれ外部電極28a,28bが形成してあり、外部電極28a,28bが収縮後の熱収縮チューブ53により覆われている。このように構成することで、外部電極28a,28bが有効に保護され、外部電極28a,28bのガス腐食などを防止することができる。
【0064】
なお、上述の説明では、素子本体20と、これに接続される連結部材としての錘42およびシャフト44を接続する接着剤として、熱硬化性接着剤を用いたが、圧電駆動装置の製造に用いる接着剤はこれに限定されない。
【0065】
本実施形態の圧電駆動装置10では、
図2に示すように、活性部26aと不活性部26b1,26bとの界面26c1,26c2に対応する位置で、素子本体20の外側面25a〜25dが第1樹脂部52a,52bで覆われている。そのため、界面26c1,26c2に対応する位置でも、素子本体10の機械的強度(たとえば抗折強度)を向上させることができ、折れにくくなっており、耐久性が向上している。
【0066】
また、第1樹脂部52a,52bは、素子本体10と連結部材としての錘42またはシャフト44とを連結する機能を兼ねているため、本実施形態に係る圧電駆動装置10はシンプルな構造を有しており、製造が容易であり、優れた信頼性を有する。
【0067】
さらに、第1樹脂部52aは第1外部電極28aから隆起した電気的接続部30を覆っているため、素子本体20と錘42とを引き離す力が働いた場合には、電気的接続部30が、第1樹脂部52aと素子本体20との接続を維持するためのアンカーとして作用する。したがって、圧電駆動装置10は、素子本体20と錘42との接合に関する信頼性が高く、良好な耐久性を奏する。さらに、第1樹脂部52aは、電気的接続部30を覆っているため、電気的接続部30と第1外部電極28aとの接合界面や、電気的接続部30と配線部32との接合界面を保護および補強する作用を奏する。したがって、圧電駆動装置10は、配線部32と第1および第2外部電極28a,28bとの接合に関しても、信頼性が高い。
【0068】
なお、第1樹脂部52aは、電気的接続部30から露出した配線部32の少なくとも一部を被覆していれば良い。配線部32の先端部付近は、はんだ付けのために芯線を覆う被覆が除去されており、また、残された被覆も、はんだ付けの際の熱により損傷を受けている場合がある。しかし、第1樹脂部52aが電気的接続部30に近接する配線部32の一部を被覆することにより、配線部32の芯線が直接に錘42等に接触するのを確実に防止し、短絡等の問題を確実に防止することができる。
【0069】
第2実施形態
図6Aに示すように、本実施形態の圧電駆動装置10aでは、熱収縮チューブ53が、シャフト44と素子本体20とを接合する第1樹脂部52bの少なくとも一部をも一体的に覆っている。すなわち、本実施形態では、第1樹脂部52a,52bの端縁と素子本体20の外側面との境界が熱収縮チューブ53で覆われることになり、第1樹脂部52a,52bの端縁が素子本体20の外側面から剥がれることを防止することができる。また、熱収縮チューブ53は、活性部26aに対応する素子本体20の外側面も一体的に覆っているため、耐湿性も向上する。
【0070】
なお、本実施形態で、第1樹脂部52a,52bの弾性率を、熱収縮チューブ53の弾性率よりも大きくすることで、次に示す作用効果がある。すなわち、素子本体20の活性部26aでは、内部電極27a,27bに印加される電圧により素子本体20にZ軸方向の動きが生じるが、非活性部26b1,26b2では動きは生じない。そこで、熱収縮チューブ53の弾性率を低く設定することで、活性部26aの動きに熱収縮チューブ53が追随しやすくなり、熱収縮チューブ53の耐久性が向上する。
【0071】
また、非活性部26b1,26b2に位置する第1樹脂部52a,52bは、素子本体20と錘42またはシャフト44とを連結する機能を兼ねているため、熱収縮チューブ53に比較して硬い方が、これらを強固に連結することができる。また、非活性部26b1,26b2自体は動かないので、第1樹脂部52a,52bが硬くても問題が無い。
【0072】
さらにまた本実施形態では、取付面42aの近くで外部電極28a,28bの外表面には、配線用リード部としての配線部32の先端が電気的接続部30を介して固定してあり、電気的接続部30が、第1樹脂部52aおよび熱収縮チューブ53で二重に覆われるように構成しても良い。このように構成することで、電気的接続部30での素子本体の強度も向上する。
【0073】
第2実施形態におけるその他の構成は第1実施形態に係る圧電駆動装置10と同様であり、同様な作用効果を奏する。
【0074】
第3実施形態
図6Bに示す実施形態に係る圧電駆動装置10bは、第1実施形態に係る圧電駆動装置10の変形例、または第2実施形態に係る圧電駆動装置10aの変形例である。本実施形態では、熱収縮チューブ53が、シャフト44と素子本体20とを接合する上側第1樹脂部52bを完全に覆うと共に、チューブ上端部53aがシャフト44のZ軸方向の下端部を覆うようになっている。
【0075】
上側第1樹脂部52bは、シャフト44と素子本体20とを接合する接着剤を兼ねており、一般的には耐湿性に弱いが、その部分を熱収縮チューブ53の上端部53aで覆うことで、耐湿性を向上させることができる。
【0076】
また、本実施形態では、接着剤を兼ねている上側第1樹脂部52bを熱収縮チューブ53の上端部53aにより覆い、さらにシャフト44の下端部も覆うことで、
図1に示す移動部材56が
図6Bに示す上側第1樹脂部52bに接触することが無くなる。そのため、移動部材56に接着剤からなる樹脂部が付着して接着剤の成分の一部がシャフトの表面に付着することを有効に防止することができる。なお、シャフト44の表面に接着剤の成分の一部が付着すると、シャフト44から移動部材56に加わる振動の伝達が変化し、正確な移動部材56の移動制御が困難になるおそれがある。
【0077】
また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、熱収縮チューブ53は、下側第1樹脂部52aの外側を覆っていない。ただし、熱収縮チューブ53は、第2実施形態と同様に、第1界面26c1に対応する位置で、素子本体20の外側面25a〜25dを覆っている下側第1樹脂部52aの外表面を覆っても良い。あるいは、熱収縮チューブ53は、電気的接続部30に対応する位置で、下側第1樹脂部の外表面を覆っていても良い。
【0078】
第3実施形態におけるその他の構成は第1実施形態に係る圧電駆動装置10または第2実施形態に係る圧電駆動装置10aと同様であり、同様な作用効果を奏する。
【0079】
第4実施形態
図6Cに示す実施形態に係る圧電駆動装置10cは、
図1〜
図5に示す第1実施形態に係る圧電駆動装置10aの変形例である。本実施形態では、第1実施形態とは異なり、上側第1樹脂部52bが第2界面26c2に対応する素子本体20の外側面25a〜25dを覆っていない。その代わりに、熱収縮チューブ53の上端部が、第2界面26c2に対応する素子本体20の外側面25a〜25dを覆っている。熱収縮チューブ53の中央部は素子本体20における活性部26aの中央付近を覆っており、その下端部は、第1樹脂部52aにて覆われていない素子本体20の外側面25a〜25dを覆っている。
【0080】
第4実施形態におけるその他の構成は第1〜第3実施形態に係る圧電駆動装置10,10a,10bと同様であり、同様な作用効果を奏する。たとえば第4実施形態においても、
図6Aに示すように、熱収縮チューブ53の下端部で、第1界面26c1に対応する素子本体20の外側面25a〜25dを覆ってもよいし、電気的接続部30が位置する下側第1樹脂部52aの外周面を覆うようにしても良い。さらに、第4実施形態においても、
図6Bに示すように、熱収縮チューブ53の上端部でシャフト44の下端部を一体に覆っても良い。
【0081】
第5実施形態
図6Dに示すように、第5実施形態に係る圧電駆動装置10dでは、配線部32と外部電極28a,28bとを接続する電気的接続部30が、第2端面24の近くに位置する第2不活性部26b2に対応する外部電極28a,28bの外表面に形成してある。上側第1樹脂部52bは、電気的接続部30の周囲を覆うと共に、取付面44aから第2界面26c2に対応する素子本体20の外側面25a〜25dまでを覆っている。もちろん、外部電極28a,28bが存在する場合には、その外側も上側第1樹脂部52bが覆っている。
【0082】
さらに本実施形態では、錘42の取付面42aと素子本体20の端面22とを接着するための下側第1樹脂部52aが、取付面42aから第1界面26c1に対応する素子本体20の外側面25a〜25dまでを覆っている。もちろん、外部電極28a,28bが存在する場合には、その外側も下側第1樹脂部52bが覆っている。
【0083】
さらに本実施形態では、第1界面26c1および第2
界面26c2に対応する位置で、素子本体20の外側面25a〜25dを覆っている第1樹脂部52a,52bの外表面を熱収縮チューブ53が覆っている。熱収縮チューブ53は、活性部26aに対応する素子本体20の外側面25a〜25dも一体的に覆っている。本実施形態では、電気的接続部30に対応する上側第1樹脂部52bの外表面までは熱収縮チューブ53で覆われていない。
【0084】
第5実施形態におけるその他の構成は第1〜第4実施形態に係る圧電駆動装置10,10a〜10cと同様であり、同様な作用効果を奏する。
【0085】
第6実施形態
図6Eに示すように、第6実施形態に係る圧電駆動装置10eは、前述した第5実施形態の変形例であり、本実施形態では、電気的接続部30に対応する上側第1樹脂部52bの外表面までも熱収縮チューブ53で覆われている。
【0086】
第6実施形態におけるその他の構成は第1〜第5実施形態に係る圧電駆動装置10,10a〜10dと同様であり、同様な作用効果を奏する。たとえば第6実施形態において、
図6Bに示す実施形態と同様に、熱収縮チューブ53の上端部で、シャフト44の下端部を一体的に覆うように構成しても良い。
【0087】
第7実施形態
図6Fに示す第7実施形態に係る圧電駆動装置10fは、
図6Dに示す第5実施形態に係る圧電駆動装置10dの変形例である。本実施形態では、第5実施形態とは異なり、活性部26aのZ軸方向の中央部付近で配線用リード部32が外部電極28a,28bの外表面に電気的接続部30を介して固定してある。そして電気的接続部30が、第1樹脂部52a,52bを介することなく、熱収縮チューブ53で覆われている。このように構成することで、電気的接続部30での素子本体20の強度も向上する。
【0088】
第7実施形態におけるその他の構成は第1〜第6実施形態に係る圧電駆動装置10,10a〜10eと同様であり、同様な作用効果を奏する。たとえば第7実施形態においても、
図6Bに示す実施形態と同様に、熱収縮チューブ53の上端部でシャフト44の下端部を一体に覆っても良い。
【0089】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0090】
たとえば、外部電極28a,28bの表面に形成される電気的接続部30の配置は、図示する実施形態に限定されず、圧電駆動装置10を適用する装置に応じて変更することができる。また、上述した実施形態では、素子本体20のZ軸方向の両側に部材を連結してあるが、いずれか一方のみに、素子本体により駆動される部材を連結しても良い。
【実施例】
【0091】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0092】
実施例1
図7は、本発明の一実施例に係る圧電駆動装置10を表す概念図である。
図7に示す圧電駆動装置10は、シャフト44の外径が異なる以外は、
図1〜
図5を用いて説明した第1実施形態に係る圧電駆動装置と同じ構成の圧電駆動装置10である。この実施例に係る圧電駆動装置10に用いた素子本体20の寸法は、1.0mm×1.0mm×1.5mmである。
【0093】
参考例に係る圧電駆動装置10gは、熱収縮チューブ53を有さない点のみで実施例に係る圧電駆動装置10と異なる。参考例におけるその他の構成は、圧電駆動装置10と同様である。
【0094】
図7に示すように、圧電駆動装置10および圧電駆動装置10gに対して、シャフト44を固定した状態で、素子本体20の第1端面に固定した錘42の所定位置で、素子本体20の積層方向(Z軸)とは垂直方向(Y軸)の力f1を加え、素子本体20が中央部付近で破断した時の力f1(強度)を測定した。実施例に係る圧電駆動装置10と参考例に係る圧電駆動装置10gの各13サンプルを用いて行った測定結果を、
図8に示す。
【0095】
図8の横軸は、サンプルの強度(素子本体20が略中央部で破断した時の力f1)を表しており、縦軸は度数を表している。実施例に係る圧電駆動装置10の強度の分布は、参考例に係る圧電駆動装置10gの強度の分布に対して、図の右側に移動しており、実施例に係る圧電駆動装置10がより高い強度を有していることが分かる。
【0096】
図1に示すようなレンズ駆動装置60に圧電駆動装置10を採用する場合、圧電駆動装置10には、移動部材56を支える強度および耐久性が求められる。そのため、比較的脆い圧電材料を含む素子本体20の破断を防止し、抗折強度を上昇させた実施例に係る圧電駆動装置10は、レンズ駆動装置60の駆動装置として、特に好適に用いることができる。