(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、ケイ素及び/またはアルミを含有するフッ素含有排水を処理して、排水中に含まれるフッ素を高収率で純度の高いフッ化カルシウムとして製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ケイ素及び/またはアルミとフッ素を含有する排水から、ケイ酸化合物及び/またはアルミ化合物を分離し、当該ケイ酸化合物及び/またはアルミ化合物からフッ素を抽出する段階的なプロセスによって前期課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、ケイ素及び/またはアルミとフッ素を含有する排水に
(1)当該排水にアルカリ金属塩の少なくとも1種から選ばれる塩を添加してケイ素化合物を析出させた後固液分離する第1工程
(2)(1)で分離した固体に水酸化アルカリ水溶液及び/またはアンモニア水の少なくとも1種から選ばれる溶液を添加してケイ素化合物中のフッ素を溶解させた後固液分離する第2工程
(3)(1)(2)で分離した液にカルシウム化合物を添加してフッ化カルシウムを沈殿させ固液分離する第3工程
からなるフッ化カルシウムの製造方法である。
【0010】
この構成によると、第1工程においてアルカリ金属塩を添加することで排水中に含有するケイ素を不溶性のケイ素化合物に、アルミを不溶性のアルミ化合物として、ゲル化することなく析出させることができ、従来のアルカリ添加による方法と比較して容易に固液分離することが可能である。このため固液分離によって得られる分離液中のケイ素濃度およびアルミ濃度を大きく低下させることができる。つまり、当該分離液にカルシウム化合物を反応させた際(第3工程)に共存するケイ素分およびアルミ分が極めて少ないため、得られるフッ化カルシウムの純度は高くなる。
【0011】
第1工程で得られた固体は、第2工程で水酸化アルカリ溶液を添加することでケイ素化合物及びアルミ化合物に含有するフッ素分をフッ素イオンとして液中に抽出することができる。この抽出に際してもゲル化は生じにくいため抽出操作および固液分離操作に支障をきたさずに行うことが可能となる。第2工程で分離した液はケイ素分およびアルミ分をほとんど含まないため、カルシウム化合物を反応させる第3工程において得られるフッ化カルシウム純度が高くなる。これら一連の段階的反応によって、排水中に含まれるフッ素の大半をフッ化カルシウムとして回収することが可能となる。
【0012】
また、本発明において第1工程で添加するアルカリ金属塩が塩化物または硝酸塩であることが望まれる。
【0013】
これら化合物を使用することで、液中に硫酸イオンやリン酸イオン等の多価アニオンの増加をおさえ、第2工程でのフッ素の抽出を容易にするとともに第3工程でのフッ化カルシウム以外のカルシウム化合物の析出を抑えることが可能となる。ここで用いるアルカリ金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウムなどがあげられる。これらの化合物のうち塩化ナトリウムが入手の容易性および薬品コストの面から最も好ましい。
【0014】
また、本発明において第1工程で添加するアルカリ金属塩の量は、排水中に含まれるケイ素およびアルミニウムの合計に対してアルカリ金属として1モル当量以上であることが好ましく、さらには2モル当量以上が好ましい。
【0015】
添加するアルカリ金属塩がケイ素及びアルミニウムの合計に対してアルカリ金属として1モル当量より少ないと、排水中に含まれるケイ素化合物・アルミ化合物を固体として分離することが困難となるため、第2工程においてゲル生成等の操作性を低下させたり、第3工程で得られるフッ化カルシウムの純度を低下させる原因となる。さらには、プロセスをより効率的に実施するためには、2モル当量以上が望まれる。
【0016】
さらに、本発明において第2工程で用いる水酸化アルカリ水溶液の量は反応液のpHによって調整することが望まれる。第2工程および第3工程のハンドリングおよびフッ素の回収率を考慮すると、反応液のpHを4以上11以下に調整することが好ましい。
【0017】
添加する水酸化アルカリ水溶液が少なく、反応液のpHが4より小さいと、ケイ素化合物・アルミ化合物に含まれるフッ素をフッ素イオンとして液中に抽出することが不十分となり、フッ化カルシウムの収量を低下させる要因となる。一方、添加する水酸化アルカリ水溶液が多く、反応液のpHが11より大きくなると、第3工程で生成されるフッ化カルシウム粒子が微細化され生産性を阻害するだけでなく、ケイ素あるいはアルミニウムを再溶解させることになり第3工程に用いた時にフッ化カルシウム中にケイ素あるいはアルミニウムを取り込むことになり純度の低下を及ぼす。
【0018】
本発明において、カルシウム化合物が水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウムからなる少なくともひとつから選ばれることが好ましい。
【0019】
また、本発明において、使用するカルシウム化合物の添加量は、第1工程および第2工程で得られた液中のフッ素の合計量に対して1モル当量以上さらに好ましくは2モル当量以上であることが望まれる。
【0020】
添加するカルシウム化合物の量が1モル当量より少ない場合、液に含まれるフッ素に対して十分なカルシウムが存在しないためフッ化カルシウムの収量が低下するとともに、反応液のpHが低いためプロセスに用いる機器についての制限が大きくなる。
【0021】
本構成によれば、フッ素との反応性が高く速やかにフッ化カルシウムが生成するとともに、安価な化合物であるため薬品コストを抑えることが可能となる。これらカルシウム化合物は、固体のまま直接添加することも可能であるが、水溶液あるいは懸濁液として添加してもかまわない。
【0022】
本発明が好適に用いられる排水としては、排水中の硫酸イオン濃度がフッ素イオン濃度に対して20%以下であり、リン酸イオン濃度がフッ素イオン濃度に対して5%以下であることがあげられる。
【0023】
この構成によると、第3工程で得られるフッ化カルシウムに硫酸カルシウムおよびリン酸カルシウムの共存を抑えることができ、さらにフッ化カルシウムの純度を上げることが可能になる。半導体製造プロセス、フラットパネルディスプレイ製造プロセスあるいは太陽電池製造プロセス等において、扱う物質の違いや工程の違いによって、フッ酸に添加する酸の種類が変化する。鉱酸の組み合わせで見ると、フッ酸−塩酸、フッ酸−硝酸、フッ酸−リン酸あるいはフッ酸−硫酸などが上げられる。これらの排水は混合して処理することが廃水処理の効率化から見て好ましいことではあるが、硫酸イオンおよびリン酸イオン濃度を上記範囲内で行うことが、生成するフッ化カルシウムの純度の面から好ましい。
【0024】
さらに本発明で好適に用いられる排水は、排水中のケイ素濃度が100ppm以上または、アルミ濃度が5ppm以上であることがあげられる。
【0025】
ケイ素濃度あるいはアルミ濃度が低い場合、ケイ素化合物あるいはアルミ化合物として分離しなくても排水に添加するカルシウム化合物の量を制御するだけで純度の高いフッ化カルシウムを得ることができる。このため本発明で用いる排水はケイ素濃度が100ppm以上、さらに好ましくは1000ppm以上であり、アルミ濃度が5ppm以上、さらに好ましくは50ppm以上であることが望ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明のフッ素を含有する排水からフッ化カルシウムの製造方法によれば、従来再利用が困難であったケイ素及び/またはアルミを含有するフッ素含有排水から純度の高いフッ化カルシウムを高収率で回収することができる。得られたフッ化カルシウムは、フッ化水素製造における原料や光学材料向けの原料となるだけでなく、ステンレス鋼などの金属製造時の融剤やセメント製造時の融剤として蛍石の代替材料として使用することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明はケイ素及び/またはアルミとフッ素を含有する排水について、第1工程として、当該排水に塩化ナトリウムなどのアルカリ金属塩を添加してケイ素化合物を析出させた後固液分離を行う。次いで第2工程として、第1工程で得られた固体に水酸化ナトリウム水溶液などの水酸化アルカリ水溶液及び/またはアンモニア水を添加してケイ素化合物中のフッ素を溶解させた後固液分離を行う。さらに第3工程として、第1工程及び/または第2工程で分離した液に水酸化カルシウム水懸濁液等のカルシウム化合物を添加して固液分離しフッ化カルシウムを得る。
【0029】
(第1工程)
図2に示すように、第1工程においてはケイ素及び/またはアルミとフッ素を含有する排水を反応槽1に供給するとともに、塩化ナトリウム等のアルカリ金属塩の少なくとも1種から選ばれる塩を添加して攪拌機1aで排水の攪拌を行う。なお、アルカリ金属塩の添加はフッ素を含有する排水の供給より先でも後でも、また同時でもかまわない。この操作によって、排水中に含まれるケイ素は二酸化ケイ素およびフルオロケイ酸化合物として沈殿する。アルミは水酸化アルミおよびフルオロアルミン酸化合物として沈殿する。
反応液は固液分離装置1bで固体と液体に分離され、固体は第2工程へ液体は第3工程へ移送する。なお、固液分離装置としては一般的に使用されるものであれば特に制限を受けないが、反応液の性状にあわせて適宜選択することができる。また、固体の沈降性が優れるため静置沈降させて上澄みを引き抜く方法などのデカンテーション法を用いてもかまわない。
【0030】
(第2工程)
図3に示すように、第2工程では第1工程で得られた固体を反応槽2に供給するとともに、水酸化ナトリウム水溶液等の水酸化アルカリ水溶液及びアンモニア水の少なくとも1種から選ばれる溶液を添加して攪拌機2aで反応液の攪拌を行う。この反応では、生成するアルカリ金属フッ化物の溶解度や操作性・反応性を勘案して水を添加してもかまわない。反応おける終点の判断は反応液のpHを確認するなどの方法を用いることができ、反応終点としては例えばpH4以上好ましくは7以上を目安にすることができる。
この反応液は、固液分離装置2bで固体と液体に分離され、液体を第3工程へ移送する。ここで分離された固体は、そのままあるいはさらに安定化処理を施して産業廃棄物として処理することが可能である。固液分離装置としては一般的に使用されるものであれば特に制限を受けないが、液体成分のロスを少なく抑えるために、洗浄機能を付加してもかまわない。
【0031】
(第3工程)
図4に示すように、第3工程では第1工程で分離した液と第2工程で分離した液を反応槽3に供給するとともに、水酸化カルシウム等のカルシウム化合物を添加し攪拌機3aで攪拌を行う。なお、このカルシウム化合物は、固体のままでも、水溶液あるいは水懸濁液の状態で添加してもかまわない。第1工程および第2工程で得られた液は、それぞれフッ素を主として含有する液に調整されているため、カルシウム化合物の添加よって純度の高いフッ化カルシウムの沈殿を得ることができる。この反応は酸性領域、好ましくはpH4以下、さらに好ましくはpH3以下で行うことにより、生成するフッ化カルシウムの結晶を大きくできる。pH調整には反応槽3に塩酸・硝酸を添加することで可能となり、目的とするフッ化カルシウムの用途に応じて、配合割合や添加順を選択することができる。
なお、第2工程の液に関しては、pHが中性付近になっているため生成するフッ化カルシウムの粒子が細かく固液分離することが難しくなる恐れがある。このため、第1工程の液を加えることで液性状を酸性にし、得られるフッ化カルシウムの分離性を高めるなどの手法をとることができる。その際、第1工程の液で得られた液にカルシウム化合物を反応させたものを種晶とし、第2工程の液を添加することで、結晶成長を促すことができるといったメリットがある。
反応液は固液分離装置3bで固体と液体に分離され、液体については溶解物質の安定化処理等を別途行うことで産業廃棄物として処理できる。分離された固体は必要に応じて洗浄を行いフッ化カルシウムとする。得られたフッ化カルシウムは用途に応じて造粒や形状付与を行い乾燥される。
【0032】
以下実施例で本発明をより具体的に説明する。なお本発明は以下の実施例の記載によって限定されるものではない。
【実施例】
【0033】
(参考例1)
フッ化水素酸、リン酸、硫酸、塩酸、アルミニウム及び二酸化ケイ素の試薬をそれぞれ混合して水で希釈することで表1に示す模擬排水1を10kg作成した。
【表1】
【実施例1】
【0034】
第1工程
ポリエチレン容器に参考例1で作成した模擬排水1を500gとり、そこに塩化ナトリウム18.2gを添加してマグネチックスターラーで30分攪拌して反応させた。反応液をろ過して[分離液1−1]479.4gと[分離固体1−1]36.9gを得た。
第2工程
ポリエチレン容器に、第1工程で得た[分離固体1−1]36.9gに水640.0gを加えた後、24%水酸化ナトリウム水溶液を84.9g添加してマグネチックスターラーで30分攪拌した。その後ろ過を行い、[分離液1−2]725.3gを得た。
第3工程
ポリエチレン容器で第1工程で得られた[分離液1−1]479.4gと第2工程で得た[分離液1−2]725.3gを混合し、そこに11.2%の水酸化カルシウム水懸濁液を680.0g添加し、マグネチックスターラーで1時間攪拌した。その後、反応液のpHが7.5になるように24%水酸化ナトリウム水溶液を添加した後ろ過を行い、その後水洗を行った後乾燥し[フッ化カルシウム1]73.7gを得た。
第1工程および第2工程における分離液の元素量を表2に、得られた[フッ化カルシウム1]の成分量を表3に示す。
なお、反応プロセスに特段の問題は発生せず、ゲル化・ろ過不良等の問題なく実施することができた。
【表2】
【表3】
【0035】
(比較例1)
ポリエチレン容器に参考例1で作成した模擬排水1を500gとり、そこに11.2%の水酸化カルシウム水懸濁液を1210g投入しマグネチックスターラーで30分撹拌を行って反応させた。その後反応液のろ過を行い、水洗した後乾燥したところ[比較フッ化カルシウム1]118.9gが得られた。
得られた[比較フッ化カルシウム1]の分析結果を表5に示す。
【0036】
(比較例2)
ポリエチレン容器に参考例1で作成した模擬排水1を500gとり、そこに希釈水1250gおよび24%の水酸化ナトリウム水溶液を526g投入しマグネチックスターラーで30分撹拌を行って反応させた。その後反応液をろ過して[比較分離液2−1]を2216g得た。
[比較分離液2−1]をポリエチレン容器に500gとり、そこに11.2%の水酸化カルシウム水懸濁液を125g投入しマグネチックスターラーで30分撹拌を行って反応させた。その反応液のろ過を検討したところ、ろ液の濁りやろ紙の目詰まりが発生して分離することが不可能であった。このため遠心分離によって固液分離を行い、得られた固形分は水洗の後乾燥したところ[比較フッ化カルシウム2]75.9gが得られた。
得られた[比較分離液2−1]および[比較フッ化カルシウム2]の分析結果を表4および表5に示す。
【実施例2】
【0037】
第1工程
ポリエチレン容器に参考例1で作成した模擬排水1を500gとり、そこに硝酸カリウム31.5gを添加してマグネチックスターラーで30分攪拌して反応させた。反応液をろ過して[分離液2−1]481.0gと[分離固体2−1]48.5gを得た。
第2工程
ポリエチレン容器に、第1工程で得た[分離固体2−1]48.5gに24%水酸化カリウム水溶液を136.6g添加してマグネチックスターラーで30分攪拌した。その後ろ過を行い、[分離液2−2]144.1gを得た。
第3工程
ポリエチレン容器で第1工程で得られた[分離液2−1]481.0gと第2工程で得た[分離液2−2]144.1gを混合し、そこに11.2%の水酸化カルシウム水懸濁液を680.0g添加し、マグネチックスターラーで1時間攪拌した。その後、反応液のpHが4.0になるように24%水酸化ナトリウム水溶液を添加した後ろ過を行い、その後水洗を行った後乾燥し[フッ化カルシウム2]76.2gを得た。
第1工程および第2工程における分離液の元素量を表4に、得られた[フッ化カルシウム2]の成分量を表5に示す。
なお、反応プロセスの操作性については実施例1とほぼ同等であり、ゲル化・ろ過不良等の問題なく実施することができた。
【実施例3】
【0038】
第1工程
ポリエチレン容器に参考例1で作成した模擬排水1を500gとり、そこに塩化ナトリウム7.8gを添加してマグネチックスターラーで30分攪拌して反応させた。反応液をろ過して[分離液3−1]489.4gと[分離固体3−1]16.4gを得た。
第2工程
ポリエチレン容器に、第1工程で得た[分離固体3−1]16.4gに水300.0gを加えた後、24%水酸化ナトリウム水溶液を38.2g添加してマグネチックスターラーで30分攪拌した。その後ろ過を行い、[分離液3−2]338.0gを得た。
第3工程
ポリエチレン容器で第1工程で得られた[分離液3−1]489.4gと第2工程で得た[分離液3−2]338.0gを混合し、そこに11.2%の水酸化カルシウム水懸濁液を684.0g添加し、マグネチックスターラーで1時間攪拌した。その後、反応液のpHが8.7になるように24%水酸化ナトリウム水溶液を添加した後ろ過を行い、その後水洗を行った後乾燥し[フッ化カルシウム3]76.6gを得た。
第1工程および第2工程における分離液の元素量を表4に、得られた[フッ化カルシウム3]の成分量を表5に示す。
なお、反応プロセスの操作性については実施例1とほぼ同等であり、ゲル化・ろ過不良等の問題なく実施することができた。
【0039】
(比較例3)
第1工程
ポリエチレン容器に参考例1で作成した模擬排水1を500gとり、そこに塩化ナトリウム4.7gを添加してマグネチックスターラーで30分攪拌して反応させた。反応液をろ過して[比較分離液3−1]494.9gと[比較分離固体3−1]7.8gを得た。
第2工程
ポリエチレン容器に、第1工程で得た[比較分離固体3−1]7.8gに水140gを加えた後、24%水酸化ナトリウム水溶液を18.2g添加してマグネチックスターラーで30分攪拌した。その後ろ過を行い、[比較分離液3−2]158.0gを得た。
第3工程
ポリエチレン容器で第1工程で得られた[比較分離液3−1]494.9gと第2工程で得た[比較分離液3−2]158.0gを混合し、そこに11.2%の水酸化カルシウム水懸濁液を686.0g添加し、マグネチックスターラーで1時間攪拌した。その後、反応液のpHが7.5になるように24%水酸化ナトリウム水溶液を添加した後ろ過を行い、その後水洗を行った後乾燥し[比較フッ化カルシウム3]71.0gを得た。
第1工程および第2工程における分離液の元素量を表4に、得られた[比較フッ化カルシウム3]の成分量を表5に示す。
反応プロセスの操作性については、第1工程および第3工程は実施例1とほぼ同等で、ゲル化・ろ過不良等の問題なく実施することができたが、第2工程においてはゲル状物の発生が見られろ過性が極めて悪かった。
【実施例4】
【0040】
実施例1で示す第3工程について11.2%の水酸化カルシウム水懸濁液617.7gの代わりに、15%塩化カルシウム水溶液1000.0gを用いた以外は、実施例1と同様の方法を用いて[フッ化カルシウム4]72.0gを得た。
第3工程の操作性については実施例1とほぼ同等であり、ろ過不良等の問題なく実施することができた。
得られた[フッ化カルシウム4]の分析結果を表5に示す。
【実施例5】
【0041】
実施例1で示す第2工程および第3工程について次のように変更した。
第2工程
ポリエチレン容器に、第1工程で得た[分離固体1−1]36.9gに水160gを加えた後、25%アンモニア水を71.4g添加してマグネチックスターラーで30分攪拌した。その後ろ過を行い、[分離液5−2]241.1gを得た。
第3工程
ポリエチレン容器で第1工程で得られた[分離液1−1]479.4gと第2工程で得た[分離液5−2]241.1gを混合し、そこに11.2%の水酸化カルシウム水懸濁液を514.0g添加し、マグネチックスターラーで1時間攪拌した。その後、反応液のpHが6.8になるように24%水酸化ナトリウム水溶液を添加した後ろ過を行い、その後水洗を行った後乾燥し[フッ化カルシウム5]72.1gを得た。
第2工程における分離液の元素量を表4に、得られた[フッ化カルシウム5]の成分量を表5に示す。
第2工程および第3工程の操作性については実施例1とほぼ同等であり、ゲル化・ろ過不良等の問題なく実施することができた。
【実施例6】
【0042】
実施例1で示す第2工程および第3工程について次のように変更した。
第2工程
ポリエチレン容器に、第1工程で得た[分離固体1−1]36.9gに水640gを加えた後、24%水酸化ナトリウム水溶液を101.8g添加してマグネチックスターラーで30分攪拌した。その後ろ過を行い、[分離液6−2]760.5gを得た。
第3工程
ポリエチレン容器で第1工程で得られた[分離液1−1]479.4gと第2工程で得た[分離液6−2]760.5gを混合し、そこに11.2%の水酸化カルシウム水懸濁液を803.2g添加し、マグネチックスターラーで1時間攪拌した。その後、反応液のpHが7.3になるように24%水酸化ナトリウム水溶液を添加した後ろ過を行い、その後水洗を行った後乾燥し[フッ化カルシウム6]77.7gを得た。
第2工程における分離液の元素量を表4に、得られた[フッ化カルシウム6]の成分量を表5に示す。
第2工程の操作性は実施例1とほぼ同等で、ゲル化・ろ過不良等の問題なく実施することができたが、第3工程においてはろ過に時間が必要であった。
【表4】
【表5】
【0043】
(参考例2)
フッ化水素酸、リン酸、硫酸、塩酸、アルミニウム及び二酸化ケイ素の試薬をそれぞれ混合して水で希釈することで表6に示す模擬排水2を10kg作成した。
【表6】
【実施例7】
【0044】
第1工程
ポリエチレン容器に参考例2で作成した模擬排水2を500gとり、そこに塩化ナトリウム79.2gを添加してマグネチックスターラーで30分攪拌して反応させた。反応液をろ過して[分離液7−1]471.1gと[分離固体7−1]106.0gを得た。
第2工程
ポリエチレン容器に、第1工程で得た[分離固体7−1]106.0gに水1900gを加えた後、24%水酸化ナトリウム水溶液を233.6g添加してマグネチックスターラーで30分攪拌した。その後ろ過を行い、[分離液7−2]2135.3gを得た。
第3工程
ポリエチレン容器で第1工程で得られた[分離液7−1]471.1gと第2工程で得た[分離液7−2]2135.3gを混合し、そこに11.2%の水酸化カルシウム水懸濁液を932.1g添加し、マグネチックスターラーで1時間攪拌した。その後、反応液のpHが9.0になるように25%塩酸を添加した後ろ過を行い、その後水洗を行った後乾燥し[フッ化カルシウム7]89.6gを得た。
第1工程および第2工程における分離液の元素量を表7に、得られた[フッ化カルシウム7]の成分量を表8に示す。
なお、反応プロセスの操作性については実施例1とほぼ同等であり、ゲル化・ろ過不良等の問題なく実施することができた。
【実施例8】
【0045】
実施例7で示す第3工程について11.2%の水酸化カルシウム水懸濁液932.1gの代わりに、粉末炭酸カルシウム120.0gを用いた以外は、実施例7と同様の方法を用いて[フッ化カルシウム8]81.1gを得た。
第3工程の操作性については実施例1とほぼ同等であり、ろ過不良等の問題なく実施することができた。
得られた[フッ化カルシウム8]の分析結果を表8に示す
【表7】
【表8】
【0046】
(参考例3および4)
参考例1において使用するシリカ・アルミニウムの量をそれぞれ変更し、模擬排水3および4を作成した。模擬排水3および4の組成を表6に示す
【表9】
【実施例9】
【0047】
第1工程
ポリエチレン容器に参考例3で作成した模擬排水3を500gとり、そこに塩化ナトリウム30.7gを添加してマグネチックスターラーで30分攪拌して反応させた。反応液をろ過して[分離液9−1]461.4gと[分離固体9−1]67.4gを得た。
第2工程
ポリエチレン容器に、第1工程で得た[分離固体9−1]67.4gに水1150gを加えた後、24%水酸化ナトリウム水溶液を154.7g添加してマグネチックスターラーで30分攪拌した。その後ろ過を行い、[分離液9−2]1306.3gを得た。
第3工程
ポリエチレン容器で第1工程で得られた[分離液9−1]461.4gと第2工程で得た[分離液9−2]1306.3gを混合し、そこに11.2%の水酸化カルシウム水懸濁液を670g添加し、マグネチックスターラーで1時間攪拌した。その後、反応液のpHが6.6になるように24%水酸化ナトリウム水溶液を添加した後ろ過を行い、その後水洗を行った後乾燥し[フッ化カルシウム9]72.0gを得た。
第1工程および第2工程における分離液の元素量を表10に、得られた[フッ化カルシウム9]の成分量を表11に示す。
なお、反応プロセスの操作性については実施例1とほぼ同等であり、ゲル化・ろ過不良等の問題なく実施することができた。
【0048】
(比較例4)
ポリエチレン容器に参考例3で作成した模擬排水3を500gとり、そこに希釈水1250gおよび24%の水酸化ナトリウム水溶液を526g投入しマグネチックスターラーで30分撹拌を行って反応させたところ、液中に透明なゲルが生成し固液分離操作ができない状態になり固体を分離することができなかった。
【実施例10】
【0049】
第1工程
ポリエチレン容器に参考例4で作成した模擬排水4を500gとり、そこに塩化ナトリウム35.5gを添加してマグネチックスターラーで30分攪拌して反応させた。反応液をろ過して[分離液10−1]465.8gと[分離固体10−1]67.7gを得た。
第2工程
ポリエチレン容器に、第1工程で得た[分離固体10−1]67.7gに水1150gを加えた後、24%水酸化ナトリウム水溶液を135.8g添加してマグネチックスターラーで30分攪拌した。その後ろ過を行い、[分離液10−2]1282.7gを得た。
第3工程
ポリエチレン容器で第1工程で得られた[分離液10−1]465.8gと第2工程で得た[分離液10−2]1282.7gを混合し、そこに11.2%の水酸化カルシウム水懸濁液を670.0g添加し、マグネチックスターラーで1時間攪拌した。その後、反応液のpHが7.9になるように24%水酸化ナトリウム水溶液を添加した後ろ過を行い、その後水洗を行った後乾燥し[フッ化カルシウム10]73.6gを得た。
第1工程および第2工程における分離液の元素量を表10に、得られた[フッ化カルシウム10]の成分量を表11に示す。
なお、反応プロセスの操作性については実施例1とほぼ同等であり、ゲル化・ろ過不良等の問題なく実施することができた。
【表10】
【表11】