特許第5896119号(P5896119)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5896119
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】ヒドロゲルナノ粒子に基づく免疫測定
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20160317BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20160317BHJP
   G01N 1/04 20060101ALI20160317BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20160317BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
   G01N33/543 501H
   G01N33/543 521
   G01N1/00 101G
   G01N1/04 M
   B01J20/22 C
   B01J20/26 H
【請求項の数】21
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2011-525172(P2011-525172)
(86)(22)【出願日】2009年8月26日
(65)【公表番号】特表2012-501447(P2012-501447A)
(43)【公表日】2012年1月19日
(86)【国際出願番号】US2009055060
(87)【国際公開番号】WO2010025190
(87)【国際公開日】20100304
【審査請求日】2012年7月19日
(31)【優先権主張番号】61/091,935
(32)【優先日】2008年8月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511053090
【氏名又は名称】リオッタ,ランス,エー.
(73)【特許権者】
【識別番号】511053104
【氏名又は名称】ルチーニ,アレッサンドラ
(73)【特許権者】
【識別番号】511053115
【氏名又は名称】ペトリコイン,エマニュエル,エフ.
(73)【特許権者】
【識別番号】511053137
【氏名又は名称】エスピナ,ヴァージニア
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】リオッタ,ランス,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ルチーニ,アレッサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ペトリコイン,エマニュエル,エフ.
(72)【発明者】
【氏名】エスピナ,ヴァージニア
【審査官】 草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/038523(WO,A2)
【文献】 特開平10−185920(JP,A)
【文献】 LUCHINI ALESSANDRA,SMART HYDROGEL PARTICLES BIOMARKER HARVESTING ONE-STEP AFFINITY PURIFICATION SIZE EXCLUSION AND PROTECTION AGAINST DEGRADATION,NANO LETTERS [ONLINE],2008年 1月,V8 N1,P1-28,URL,http://www.ceresnano.com/images/report.pdf
【文献】 Nayak S, Lyon LA.,Ligand-functionalized core/shell microgels with permselective shells.,Angew Chem Int Ed Engl. ,2004年12月10日,Vol.43,No.48,Page.6706-6709
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)滲出マトリックスと多孔性マトリックスを有する免疫測定デバイスを提供すること;
2)被検体を含有する試料液体を、液体収集容器または多孔性基層に組み込まれたナノ粒子のゾーンと接触させること、但し該ナノ粒子は、i)1nm〜100mの範囲の粒径を有し、ii)試料液体の固定化用の該粒子内に親和性ベイトを内部的に含有し、iii)該親和性ベイトを封入するポリマー性マトリックスシェルを有する;
3)上記2)のステップでナノ粒子のゾーンと接触させた後の試料液体を、該滲出マトリックスから該多孔性のゾーン中へと通過させること
からなる、免疫測定用被検体の濃縮方法であって;
該滲出マトリックスは、該多孔性マトリックスへの該液体の進入地点で該ナノ粒子が捕捉され、捕捉されたナノ粒子を通って該液体の全容量が滲出するような、細孔径を有し;該ナノ粒子内に濃縮された被検体が次の分析デバイスへの放出のために封入することを特徴とする、方法。
【請求項2】
該ナノ粒子内に濃縮および隔離することにより被検体の分解を防止することからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該ナノ粒子から被検体を溶出させることからなる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
該ナノ粒子から溶出される被検体からなる溶出液が免疫測定の入口へと直接的に流入することからなる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
該ナノ粒子が、該試料液体内に沈殿することなく留まるに充分な浮揚性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該ナノ粒子が、該試料液体により80パーセント超が占められている開放型ポリマー性構造である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該ナノ粒子と該試料液体との混合物が、側方流動免疫測定デバイスにアプライされ;該側方流動免疫測定デバイス内で且つ該試料液体が通過する経路内にある、該ナノ粒子のゾーンに、該ナノ粒子が沈積され固定化されることからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
該ナノ粒子がポリマー性マトリックスシェルおよび内部コアからなり;該ポリマー性マトリックスシェルは、該被検体が該ポリマー性マトリックスシェルに進入することを可能にするが、該試料液体内にある他の化合物が該ポリマー性マトリックスシェルに進入することを防止する、細孔サイズを有し;該内部コアは、固定化された親和性リガンドを含有し、該親和性リガンドが、該被検体を認識するように形成されることからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
さらに、
(a)多孔性基層に捕捉されている該ナノ粒子を該側方流動免疫測定デバイスの部分として組み込むこと、
(b)該ナノ粒子が前記被検体を隔離した後に、該試料液体の流路を変更すること、
又は
(c)該ナノ粒子が1nm〜100nmの範囲の粒径にある場合において、該ナノ粒子を、異なる空隙を通って滲出することにより、該ナノ粒子の帯域内に流動させて捕捉させること
からなる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
該試料液体が生物学的供給源に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
該試料液体が非生物学的供給源に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記試料液体が通過する経路内の前記進入地点に捕捉されている前記粒子と、前記試料液体を接触させることにより、タンパク質、ペプチド、および核酸バイオマーカーを隔離、濃縮、および分解から保護することをさらに含み、前記粒子が、前記被検体は前記ポリマー性マトリックスシュルに進入することを可能するが、前記試料液体内にある他の化合物が前記ポリマー性マトリックスシェルに進入することを防止する細孔サイズを有するポリマー性マトリックスシェルである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記粒子が、前記試料液体中に存在する個々の種類の低分子量分子に特異的な複数の亜集団を含有する場合、前記捕捉されている粒子の集団を前記側方流動免疫測定デバイスに組み込むことをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記親和性ベイトを内部的に含有するナノ粒子が、被検体結合部分からなる、
請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記被検体を捕捉粒子内に捕捉することをさらに含み、前記捕捉粒子が、分子ふるい部分および被検体結合部分により形成されており、前記分子ふるい部分および前記被検体結合部分が、改変された多孔度の架橋区域を有し、前記分子ふるい部分が、前記被検体を前記捕捉粒子内に捕捉するために、物理的および化学的処理に応じて収縮および膨張するように構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記被検体結合部分が、化学的および静電気的に前記被検体に結合および隔離することが可能である少なくとも1つのタイプの部分である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記被検体結合部分が、カルボキシ基、アミン基、脂質、リンタンパク質、リン脂質、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、アクリル基、チオール基、アクリル酸、抗体、結合タンパク質、結合対、金属、キレート剤、核酸、アプタマー、酵素結合ポケット、レクチン、薬理学的作用剤、合成ペプチド、抗体断片、疎水性表面、および親水性表面のうちの組み合わせを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記被検体を前記被検体結合部分に結合させることをさらに含み、前記被検体が、有機分子、無機分子、ポリペプチド、炭水化物、核酸、および脂質のうちの組み合わせである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記分子ふるい部分が内部コアを封入する外側シェルであり、前記内部コアが、前記被検体結合部分で構成されている、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
免疫測定用被検体濃縮デバイスであって、該デバイスは
1)滲出マトリックスと多孔性マトリックス;
2)ナノ粒子からなる帯域、但し該ナノ粒子は、i)1nm〜100mの範囲の粒径を有し、ii)試料液体の固定化用の該粒子内に親和性ベイトを内部的に含有し、iii)該親和性ベイトを封入するポリマー性マトリックスシェルを有する;
からなり;
3)該滲出マトリックスは、該多孔性マトリックスへの該液体の進入地点で該ナノ粒子が捕捉され、捕捉されたナノ粒子を通って該液体の全容量が滲出するような、細孔径を有し;該ナノ粒子内に濃縮された被検体が次の分析デバイスへの放出のために封入する
ことを特徴とする、デバイス。
【請求項21】
免疫測定デバイスであって、該デバイスには請求項20に記載のデバイスが組み込まれてなることを特徴とする、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2008年8月26に出願された、「Hydrogel Nanoparticle based Immunoassay」と題する米国特許仮出願第61/091,935号に開示された発明を請求するものである。これにより優先権が請求される。これにより35USC§119(e)に基づく該米国仮出願の利益が請求され、これにより前述の出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、側方流動免疫測定(lateral flow immunoassay)またはイムノクロマトグラフィーストリップデバイスなどのポイントオブケア(point of care)免疫測定に、試料収集容器の一部としてまたは液体流動帯内に固定化されたヒドロゲルナノ粒子を組み込むことに関する。より具体的には、本発明は、被検体を分解から保護することに加えて、分子ふるい、標的被検体の隔離および濃縮が可能である回収ヒドロゲルナノ粒子の集団を含有する携帯用免疫測定デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
側方流動アッセイ(LFA)は、診断ツールとして15年を超えて順調に使用されてきた。LFAは、ポイントオブケア(POC)診断を提供するが、包括的な臨床検査室および特別に訓練された技術スタッフを必要としない。LFAデバイスは、一般的に、製造が安価であり、有効期間が長く、保管に求められる条件が最小限であると考えられている。LFA診断結果は、クロマトグラフィーストリップの目視検査、または分光光度計「測定」装置の使用のいずれかにより読み取られる。アッセイ結果の目視検査は、典型的には、はい/いいえ、または陽性/陰性という結果に制限される。
【0004】
視覚的測定および測定器測定は、両方とも定性的または半定量的であり、低含有量バイオマーカーのレベルを定量的に評価するには感度が十分ではないと考えられている。また、POC使用するための現行のLFA設計は、免疫測定分析の前に複雑な生物学的液体を前処理することができないため、制限されている。これらの制限により、低含有量の被検体およびバイオマーカーに対するLFAの感度が低減され、同時に、低含有量バイオマーカーおよび他の低分子量化合物用のPOC診断デバイスとしてのLFAの有効性が最小化されている。
【0005】
POC免疫測定を診断デバイスとして使用する場合の主要な課題は、標準的実験室設備を使用せずに複雑な生物学的液体を処理する能力である。多くの場合、血液試料を前処理して血漿試料を提供するか、または血液試料から細胞を除去するためには、遠心機が必要とされる場合がある。コアシェルヒドロゲルナノ粒子を組み込んで分子ふるいおよび標的被検体隔離をすることは、この制限に対する独特な解決策を提供する。特異的なふるいおよび親和性特徴を有するように設計されたヒドロゲルナノ粒子は、分析の前に、標的被検体のフィルター、濃縮器、および分解から保護するものとして作用する。これらの機能は、バイオマーカーの発見および低含有量被検体用の診断アッセイにおける分析上の主要課題に取り組むための新規な解決策を提供する。
【0006】
LFAデバイスの別の主要課題は、特定の目的被検体に対するLFAの感度である。分析前に試料を前処理することができないことは、感度の不良、高バックグラウンド干渉、および試料の希釈に結びつく。ヒドロゲルナノ粒子を試料前処理の手段としてデバイスに組み込むことは、標的被検体のみを隔離および濃縮し、その後粒子から抽出して免疫測定を行うことにより、感度を著しく向上させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Liotta LA、Ferrari M、Petricoin E(2003年)Clinical proteomics:written in blood.Nature 425巻:905頁
【非特許文献2】Anderson NL、Anderson NG(2002年)The human plasma proteome:history,character,and diagnostic prospects.Mol Cell Proteomics 1巻:845〜867頁
【非特許文献3】Petricoin EF、Ardekani AM、Hitt BA、Levine PJ、Fusaro VAら、(2002年)Use of proteomic patterns in serum to identify ovarian cancer.Lancet 359巻:572〜577頁
【非特許文献4】Merrell K、Southwick K、Graves SW、Esplin MS、Lewis NEら、(2004年)Analysis of low abundance,low−molecular−weight serum proteins using mass spectrometry.J Biomol Tech 15巻:238〜248頁
【非特許文献5】Petricoin EF、Belluco C、Araujo RP、Liotta LA(2006年)The blood peptidome:a higher dimension of information content for cancer biomarker discovery.Nat Rev Cancer 6巻:961〜967頁
【非特許文献6】Lopez MF、Mikulskis A、Kuzdzal S、Bennett DA、Kelly Jら、(2005年)High−resolution serum proteomic profiling of Alzheimer disease samples reveals disease−specific,carrier−protein bound mass signatures.Clin Chem 51巻:1946〜1954頁
【非特許文献7】Zhou M、Lucas DA、Chan KC、Issaq HJ、Petricoin EF,3rdら、(2004年)An investigation into the human serum“interactome”.Electrophoresis 25巻:1289〜1298頁
【非特許文献8】Ayache S、Panelli M、Marincola FM、Stroncek DF(2006年)Effects of storage time and exogenous protease inhibitors on plasma protein levels.Am J Clin Pathol 126巻:174〜184頁
【非特許文献9】Luchini A、Geho DH、Bishop B、Tran D、Xia Cら、(2008年)Smart hydrogel particles:biomarker harvesting:one−step affinity purification,size exclusion,and protection against degradation.Nano Lett 8巻:350〜361頁
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【非特許文献23】Yu J、Ustach C、Kim HR(2003年)Platelet−derived growth factor signaling and human cancer.J Biochem Mol Biol 36巻:49〜59頁
【非特許文献24】Board R、Jayson GC(2005年)Platelet−derived growth factor receptor(PDGFR):a target for anticancer therapeutics.Drug Resist Updat 8巻:75〜83頁
【非特許文献25】Kabbinavar F、Hurwitz HI、Fehrenbacher L、Meropol NJ、Novotny WFら、(2003年)Phase II,randomized trial comparing bevacizumab plus fluorouracil(FU)/leucovorin(LV)with FU/LV alone in patients with metastatic colorectal cancer.J Clin Oncol 21巻:60〜65頁
【非特許文献26】McArthur GA、Demetri GD、van Oosterom A、Heinrich MC、Debiec−Rychter Mら、(2005年)Molecular and clinical analysis of locally advanced dermatofibrosarcoma protuberans treated with imatinib:Imatinib Target Exploration Consortium Study B2225.J Clin Oncol 23巻:866〜873頁
【非特許文献27】Mathew P、Thall PF、Jones D、Perez C、Bucana Cら、(2004年)Platelet−derived growth factor receptor inhibitor imatinib mesylate and docetaxel:a modular phase I trial in androgen independent prostate cancer.J Clin Oncol 22巻:3323〜3329頁
【非特許文献28】Kubo T、Piperdi S、Rosenblum J、Antonescu CR、Chen Wら、(2008年)Platelet−derived growth factor receptor as a prognostic marker and a therapeutic target for imatinib mesylate therapy in osteosarcoma.Cancer 112巻:2119〜2129頁
【非特許文献29】Kagami S、Kakinuma T、Saeki H、Tsunemi Y、Fujita Hら、(2005年)Increased serum CCL28 levels in patients with atopic dermatitis,psoriasis vulgaris and bullous pemphigoid.J Invest Dermatol 124巻:1088〜1090頁
【非特許文献30】Jahnz−Rozyk K、Targowski T、Glodzinska−Wyszogrodzka E、Plusa T(585 2003年)Cc−chemokine eotaxin as a marker of efficacy of specific immunotherapy in patients with intermittent IgE587 mediated allergic rhinoconjunctivitis.Allergy 58巻:595〜601頁
【非特許文献31】Robak E、Kulczycka L、Sysa−Jedrzejowska A、Wierzbowska A、Robak T(2007年)Circulating proangiogenic molecules PIGF、SDF−1 and sVCAM−1 in patients with systemic lupus erythematosus.Eur Cytokine Netw 18巻:181〜187頁
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【非特許文献34】Braude EA、Nachod FC(1955年)Determination of Organic Structures by Physical Methods.New York:Academic Press
【非特許文献35】Denizli A、Piskin E(2001年)Dye−ligand affinity systems.J Biochem Biophys Methods 49巻:391〜416頁
【非特許文献36】Sereikaite J、Bumelis VA(2006年)Examination of dye−protein interaction by gel−permeation chromatography.Biomed Chromatogr 20巻:195〜199頁
【非特許文献37】Fredolini C、Meani F、Reeder KA、Rucker S、Patanarut Aら、(2008年)Concentration and Preservation of Very Low Abundance Biomarkers in Urine,such as Human Growth Hormone(hGH),by Cibacron Blue F3G−A Loaded Hydrogel Particles.Nano Res 1巻:502〜518頁
【非特許文献38】Uekama K、Hirayama F、Arima H(2006年)Recent Aspect of Cyclodextrin−Based Drug Delivery System.J Inclusion Phenom Macrocyclic Chem 56巻:3〜8頁
【非特許文献39】Jin S、Lee Y、Kang H Methyl−β−cyclodextrin,a specific cholesterol−binding agent,inhibits melanogenesis in human melanocytes through activation of ERK.Arch Dermatol Res 8巻:451〜454頁
【非特許文献40】Cai W、Yao X、Shao X、Pan Z(2005年)Bimodal Complexations of Steroids with Cyclodextrins by a Flexible Docking Algorithm.J Inclusion Phenom Macrocyclic Chem 51巻:41〜51頁
【非特許文献41】Borst C、Holzgrabe U(2008年)Enantioseparation of dopa and related compounds by cyclodextrin−modified microemulsion electrokinetic chromatography.J Chromatogr A.
【非特許文献42】Dodziuk H(2006年)Cyclodextrins and Their Complexes:Chemistry,Analytical Methods,Applications.Hoboken:Wiley−VCH.
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【非特許文献44】Kataoka K、Miyazaki H、Okano T、Sakurai Y(1994年)Sensitive Glucose−Induced Change of the Lower Critical Solution Temperature of Poly[N,N−(dimethylacrylamide)−co−3−(acrylamido)−phenylboronic acid] in Physiological Saline.Macromolecules 27巻:1061〜1062頁
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【非特許文献46】Mader HS、Wolfbeis OS(2008年)Boronic acid based probes for microdetermination of saccharides and glycosylated biomolecules.Mikrochim Acta 162巻:1〜34頁
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【非特許文献48】Zhang Y、Gao X、Hardcastle K、Wang B(2006年)Water−soluble fluorescent boronic acid compounds for saccharide sensing:substituent effects on their fluorescence properties.Chemistry 12巻:1377〜1384頁
【非特許文献49】Jones CD、Lyon LA(2000年)Synthesis and Characterization of Multiresponsive 631 Core− Shell Microgels.Macromolecules 33巻:8301〜8306頁
【非特許文献50】Couvreur P、Reddy LH、Mangenot S、Poupaert JH、Desmaele Dら、(2008年)Discovery of new hexagonal supramolecular nanostructures formed by squalenoylation of an anticancer nucleoside analogue.Small 4巻:247〜253頁
【非特許文献51】Cho EC、Kim JW、Fernandez−Nieves A、Weitz DA(2008年)Highly responsive hydrogel scaffolds formed by three−dimensional organization of microgel nanoparticles.Nano Lett 8巻:168〜172頁
【非特許文献52】Smith ER、Zurakowski D、Saad A、Scott RM、Moses MA(2008年)Urinary biomarkers predict brain tumor presence and response to therapy.Clinical cancer research 14巻:2378〜2386頁
【非特許文献53】Barratt J、Topham P(2007年)Urine proteomics:the present and future of measuring urinary protein components in disease.CMAJ 177巻:361〜368頁
【非特許文献54】Pecora R(1985年)Dynamic Light Scattering:Applications of Photo Correlation Spectroscopy:Springer.436頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来技術の側方流動免疫測定は、サンドイッチ型免疫測定が代表的であり、そこでは、抗体対の一方のメンバーが、金コロイド粒子または発色ビーズなどの視覚的タグまたはシグナル発生タグで標識されており、他方のメンバーの抗体が固相に結合されている。抗体対の標識されたメンバーおよび混合物と共にインキュベートされた被検体を、該対のうち固定化されている抗体メンバーを横切るように滲出させる。被検体が存在すれば、標識抗体と固定化抗体との間にサンドイッチが形成され、それにより固定化抗体の区域において検出可能なシグナルが生じることになる。本発明は、被検体親和性ベイト(bait)を含有する多孔性ヒドロゲルナノ粒子を、目的被検体の前処理および前濃縮および保存の手段として使用する手段を提供する。本発明は、ポイントオブケアの状況または屋外において、免疫測定の感度を向上させ、被検体を分解から保護する手段を提供する。1つの実施形態では、試料液体(例えば、尿または血液)中の被検体を、乾燥形態のナノ粒子を含有する収集チャンバーに導入する。ナノ粒子は試料中に分散され、標的被検体を直ちに隔離する。99パーセントを超える隔離効率が多種多様な被検体で達成された。隔離された被検体は、粒子内の親和性ベイトに固定化されるため、分解から独特に保護される。このように、大量試料容積中の被検体の総含有量を、低容積の粒子中に濃縮することができる。容積濃縮係数は、10〜100倍であり得る。本主題発明に基づくと、被検体を含有する試料液体をナノ粒子と接触させた後、粒子を含有する試料液体を、ニトロセルロース、酢酸セルロース、多孔性ガラス、ガラス繊維、または紙などの透過性多孔性マトリックスへと受動的に滲出させる。滲出物質の細孔径は、粒子が多孔性マトリックス内を移動しないように選択される。このステップの後、粒子は、多孔性マトリックスへの液体進入地点で捕捉され、試料液体の容積すべては、捕捉されたナノ粒子を通って滲出してしまっているだろう。この時点で、粒子内に捕捉された被検体は、親和性ベイトに結合しているため、開始試料溶液から完全に回収され、はるかに小さな容積中に濃縮され、分解から保護される。この時点で、収集された被検体は、今や小さな容積中で安定化されており、保管するかまたは出荷することができる。
【0009】
この時点で、使用者は、ナノ粒子内に存在する捕捉された被検体を測定または分析する準備ができており、ナノ粒子内から結合被検体を分離し、濃縮された被検体の分析デバイスへの溶出およびキャピラリー滲出を可能にする溶出緩衝液を導入する必要があるだけである。好ましい実施形態の1つでは、ナノ粒子の出口溶出液は、測定を完全させるために標準的サンドイッチ免疫測定の入口へと直接的に流入する。図1〜3に示されているように、側方流動アッセイデバイスは、それが2つの状態のうちの1つであり得るように構成される。状態1では、被検体を含有していた試料液体は不要物として先に滲出し、下流の免疫測定に寄与する。状態2では、溶出緩衝液が導入され、液体浸透経路が変更されて、溶出液がサンドイッチ免疫測定に進入することが可能になる。そのような状態の変化により、捕捉されたナノ粒子から被検体が出でくる地点で液体浸透経路が切替えられる。これは、図に示されているように、2つの滲出マトリックスストリップをそれらが接触に至るように屈曲させ、被検体が標識抗体と遭遇する免疫測定進入口へと流れを転進させることにより達成することができる。さらなる実施形態では、ナノ粒子は、被検体を含有する試料液体がナノ粒子を通って受動的にまたは能動的にろ過されて被検体のナノ粒子隔離が達成されるよう、粒子が開始試料溶液に懸濁される代りに滲出マトリックスにあらかじめ負荷されている。
【0010】
本発明の捕捉粒子は、a)分子ふるい部分、およびb)被検体結合部分を含むヒドロゲルナノ粒子であり、分子ふるい部分、被検体結合部分、またはその両方は、多孔度が改変された架橋区域をさらに含む。ナノ粒子は、標的被検体を回収、濃縮、および分解から保護するために使用される。
【0011】
1つの実施形態では、本発明は、ヒドロゲルナノ粒子を、液体収集容器または多孔性基層のいずれかに、マイクロ流体免疫測定デバイスの一部として組み込むことを記述する。ヒドロゲルナノ粒子は、タンパク質、ペプチド、もしくは核酸に基づくバイオマーカー、または他の低分子量被検体を隔離、濃縮、および分解から保護する手段として機能する。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、ヒドロゲルナノ粒子を免疫測定デバイスの流動帯内に固定化し得る方法について記述する。ヒドロゲルナノ粒子は、試料沈着用の多孔性マトリックスチャンバー内に含浸されていてもよい。試料液体(生物学的であってもよく、または非生物学的であってもよい)は、ヒドロゲルナノ粒子チャンバーを通過して所望の被検体をナノ粒子内に隔離し、不要な試料液体を先に滲出させることを可能にする。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、ヒドロゲル粒子を試料収集デバイス内に含有させ得る方法を記述する。試料収集デバイスに設置されたヒドロゲルナノ粒子は、分子サイズふるい、親和性被検体隔離、濃縮、および分解からの保護を可能にする。残りの試料液体は、収集デバイスから滲出して先に出ていき、要望の被検体は、抽出緩衝液を使用して免疫測定デバイスを通って輸送される。
【0014】
別の実施形態は、全血、ならびに尿、脳脊髄液、汗、唾液、乳頭吸引液、呼気凝縮液、気管支肺胞洗浄液、および羊水などの他の体液、ならびに環境水試料などの非生物学的液体中に存在する個々の種類の低分子量分子に特異的な複数の亜集団を含有する回収用ナノ粒子の集団を含有する側方流動免疫測定を記述する。複数の亜集団を含有するデバイスは、単一デバイス構成で、複数の被検体を同時に定量化する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1a】側方流動免疫測定デバイスにアプライする前に試料液体を前処理する収集デバイス(10)を使用して試料を収集する方法を示す図である。血液試料を指(20)から採取し、キャピラリースロットである試料収集デバイス(30)を既知量の血液で満たす。その後、試料を緩衝液(40)に分散させ、試料はそこでLFA用に前処理される。
図1b】基層に含浸されたナノ粒子を有する側方流動免疫測定デバイスの設計を示す図である。試料アプライ側には、2つの区画(50)があり、1つは前処理された試料を添加するためのものであり、1つは溶出液を添加するためのものである。ナノ粒子で含浸されているストリップ部分(60)も存在する。測定側には、抗体および金粒子を含有するストリップ部分(70)がある。サンドイッチアッセイを生成する別のセットの抗体を含有する部分(80)も存在する。この第2の抗体群の上には、測定窓(90)がある。
図2】基層に含浸されたナノ粒子を有する側方流動免疫測定デバイスの設計を示す図であり、固定されているヒドロゲルナノ粒子から標的被検体が溶出されるまで、LFAの試料アプライ部分は、測定部分と離れている(100)。試料は、試験ストリップ(110)に添加され、その後ストリップに含浸されているナノ粒子部分(120)を通って移動する。液体緩衝液および試料は、液体が端部(140)で吸収されるまでストリップ(130)を流動していく。第2のステップは、ナノ粒子と第1のセットの抗体との間の接触(150)がもたらされることを必要とする。接触がもたらされた後、粒子は溶出され(160)、標的被検体は測定ライン(170)へと移動していく。
図3】LFA試験ストリップに含浸される代りに初期試料と混合されているヒドロゲルナノ粒子を捕捉するための疎性網目部分(190)を有する側方流動免疫測定デバイスの設計を示す図である。ステップ1の略図では、試料は網目に隣接している容器(180)を介してストリップに導入され、緩衝液は、ストリップ(200)の長さを先に滲出していく。略図のステップ2では、溶出液は、ナノ粒子の上(210)に添加され、標的被検体は、測定窓(220)に向かってストリップを移動していく。
図4】コアシェル粒子(230)の略図を示す図である。ナノ粒子は、ベイトとして機能するNIPAm−AAcコア(270)で構成される。タンパク質溶液に粒子を添加した後(240)、バイオマーカーは、このベイトに誘引および捕捉される(250)。NIPAmシェル(260)は、ナノ粒子のふるい特性を増大させる。
図5】ナノ粒子の光散乱および原子間力顕微鏡による特徴付けを示す図である。(A) 室温では、コアは、サイズがおよそ360nmであるが、付加コア−シェル粒子は、pH4.5で700nmの直径を有する。コアおよびコアシェル粒子は、典型的な温度依存性挙動に従う。(B)MilliQ水中の粒子懸濁液(pH5.5、1μg/mL)を、室温、加湿雰囲気下で15分間、新しく劈開されたマイカ上に配置し、窒素下で乾燥した。ナノ粒子の原子間力顕微鏡(AFM)画像を取得した。粒子は、およそ800nmの直径を有しており、均一なサイズ分布を示す。粒子の高さについてのスケールバーは、168nmの最大高さを示す。AFM画像は乾燥状態下で取得されたため、粒子は、マイカ表面で乾燥することによりそれらの球形状から歪められている(平らにされている)。
図6】粒子と共にインキュベートされたPDGFのSDS−PAGE分析を示す図である。(A)レーン1)BSAおよびPDGFを含有する開始溶液(対照)、2)上清(外);3)粒子内容物(内)。粒子は、担体アルブミンからPDGFを取り除き、アルブミン自体を完全に排除する。(B)レーン1)PDGF、BSA、アプロチニン(MW6,500Da)、リゾチーム(MW14,400 673Da)、トリプシン阻害剤(MW21,500Da)、炭酸脱水酵素(MW31,000Da)、およびオバルブミン(MW45,000 675Da)を含有する開始溶液(対照)、2)上清(外);3)粒子内容物(内)。粒子は、低分子量タンパク質と一緒にPDGFを回収し、およそ20,000Daを超えるタンパク質を除外する。
図7】コアシェル粒子が、検出不能なPDGFの濃度を、ELISAアッセイの検出範囲に上昇させることを示す図である。(A)較正物質希釈液RD6−3(R&D Systems社、保存剤を有する動物血清)中18.92±4.313pg/mLの濃度のPDGF開始溶液、およびコア−シェル粒子から溶出されたPDGF(85.27±2.24pg/mL)のELISA測定値。(B)インキュベーション重複実験に使用された粒子の量に対してプロットされた、コア−シェル粒子溶出液中のPDGF濃度。(C)PDGF濃度対吸光度のELISA検量684線。検量線は、各PDGF較正物質濃度につき2回反復で生成された。
図8】コアシェル粒子が、非常に希釈されたPDGFの濃度を、ELISAアッセイにより測定したところ、およそ10倍(1000パーセント)増加させることを示す図である。(A)較正物質希釈液RD6−3(R&D Systems社、保存剤を有する動物血清)中63.69±1.448pg/mLの濃度のPDGF開始溶液、およびコア−シェル粒子から溶出されたPDGF(491.14±4.818pg/mL)のELISA測定値。(B)インキュベーション重複実験に使用された粒子の量に対してプロットされた、コア−シェル粒子溶出液中のPDGF濃度。694(C)PDGF濃度対吸光度のELISA検量線。検量線は、各PDGF較正物質濃度につき2回反復で生成された。
図9】コアシェル粒子が、ELISAアッセイにより測定したところ、血清中の未処理PDGFの濃度を増加させることを示す図である。(A)較正物質希釈液RD6−3(R&D Systems社、保存剤を有する動物血清)中170.91±4.66pg/mLの濃度の開始血清溶液、およびコア−シェル粒子から溶出されたPDGF(1743.43±11.06pg/mL)のELISA測定値。(B)インキュベーション重複実験に使用された粒子の量に対してプロットされた、コア−シェル粒子溶出液中のPDGF濃度。(C)PDGF濃度対吸光度のELISA検量線。検量線は、各PDGF較正物質濃度につき2回反復で生成された。
図10】粒子によるケモカイン取り込みを示すSDS PAGE分析を示す図である。コア−シェル粒子を、ウシ血清アルブミン(BSA)の存在下において、以下のケモカインと共にインキュベートした:粘膜関連上皮ケモカイン(MEC/CCL28)、ストロマ細胞由来因子−1ベータ(SDF−1β/CXCL12b)、およびエオタキシン−2(CCL24)。ケモカインおよびBSAの溶液は、レーン1、4、および7に示されている。粒子と共にインキュベーションした後、上清中に残存するケモカインはなく(S、レーン2、5、および8)、ケモカインはすべて粒子により捕捉された(P、レーン3、6、および9)。BSAは、粒子により完全に除外された。
図11】コア−シェル粒子が、捕捉されたPDGFをトリプシン分解から保護することを示す免疫ブロット分析を示す図である。(A)Sypro rubyによる全タンパク質染色、および(B)同一PVDF膜の抗PDGF抗体による免疫ブロット分析が示されている。レーン1)対照PDGF+BSA溶液;2)PDGF+BSAと共にインキュベートされた粒子の内容物(内);3)PDGF+BSAと共にインキュベートされた粒子の上清(外);4)BSA+PDGF+トリプシンと共にインキュベートされた粒子の内容物(内+トリプシン);5)BSA+PDGF+トリプシンと共にインキュベートされた粒子の上清(外+トリプシン);6)粒子なしで40分間インキュベートされたBSA+PDGF+トリプシン(+トリプシン40’);7))粒子なしで20分間インキュベートされたBSA+PDGF+トリプシン(+トリプシン20’);8))粒子なしで10分間インキュベートされたBSA+PDGF+トリプシン(+トリプシン10’);9))粒子なしで0 727分間インキュベートされたBSA+PDGF+トリプシン(+トリプシン0’)。
図12】コア−シェル粒子がケモカインを酵素分解から保護することを示すSDS PAGE分析を示す図である。コア−シェル粒子を、トリプシンの存在下において、以下のケモカインと共にインキュベートした:粘膜関連上皮ケモカイン(MEC/CCL28)、ストロマ細胞由来因子−1ベータ(SDF−1β/CXCL12b)、およびエオタキシン−2(CCL24)。ケモカインの溶液(対照)は、レーン1、4、および7に示されている。粒子と共にインキュベートされたケモカイン(レーン3、6、および9)は、トリプシン分解から保護されるが、粒子と共にインキュベートされなかったケモカイン(レーン2、5、および8)は、タンパク質分解性消化に感受性である。黒色ボックスは暗色ブロットを表し、斜線ボックスは画像の明色ブロットを表す。
図13】ヒト血清中にスパイクされたPDGFの回収を実証する免疫ブロット分析を示す図である。レーン1)ヒト血清+PDGF(5ng/μL):血清が粒子と共にインキュベートされない場合、PDGFは検出することができない;2)粒子上清(外);3)粒子内容物(内);4)ヒト血清+PDGF(2ng/μL):血清が粒子と共にインキュベートされない場合、PDGFは検出することができない;5)粒子上清(外);6)粒子内容物(内)。 黒色ボックスは暗色ブロットを表し、斜線ボックスは画像の明色ブロットを表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1aに示されているように、試料希釈液を含有する滴瓶バイアルの一体化部分である細棒の端部にあるキャピラリースロットにより、一定容積の試料を収集することができる。これは、当分野において、手掌採血で試料を収集し、再現性のある容積稀釈を実施するための手段である。希釈バイアルは、懸濁されている本発明のナノ粒子を含有することができる。溶液中にナノ粒子を含有する試料を漏斗状開口部が受容するように、滴瓶バイアル中の試料を該デバイスに導入し、被検体を含有するナノ粒子を、滲出進入口でろ過する。
【0017】
図1aに示されている方法が完了すると、前処理された試料は、図1bに示されているように、側方流動免疫測定デバイス内で二段階分析法にかけられる。免疫測定デバイスは、a)試料アプライ側、およびb)測定側を備えており、それらは互いにサンドイッチされる。試料アプライ側は、前処理された試料および溶出緩衝液が添加される一方の端部に2つの別々のスロットを含有し、該ストリップの反対側の端部に吸収パッドを含有するストリップである。2つの端部の間で、該スロットの一方の下方には、捕捉粒子を含浸させたストリップの区画がある。該デバイスの測定側は、a)標的被検体の1つのエピトープに誘引される抗体および金粒子を含有する捕捉粒子の下方にある区域、b)抗体の第1の区域とは異なる標的被検体のエピトープに誘引される抗体の区域、c)抗体の第2の区域付近の測定窓、およびd)吸収性パッドを備える。図1bに例示されている方法の第1のステップでは、前処理された試料が、第1のスロットに添加される。試料は、捕捉粒子の区域を通過して、ストリップの長さを移動していく。捕捉粒子は、試料から標的被検体を回収し、試料の残りは、端部の吸収性パッドに向かって先に滲出していく。第1のステップが完了すると、その時点で標的被検体を含有している捕捉粒子の区域の上方にある第2のスロットに、溶出緩衝液が直接添加される。被検体は、捕捉粒子から溶出され、第1のセットの抗体および金の粒子を含有している区域へと移動する。抗体は標的被検体に結合し、試料は抗体の第2の区域に向かってストリップを移動いていく。標的被検体は、抗体の第2の区域に結合し、2つのセットの抗体の間にサンドイッチされる。これが生じると、該デバイスの測定窓において色の変化が観察される。試料の残りは、端部の吸収性パッドに向かってストリップの長さを移動し続ける。
【0018】
本発明の別の実施形態では、該デバイスの試料アプライ側および測定側は、図2に示されているように、最初は空隙により分離されている。この実施形態では、捕捉粒子の区域は、2つの区域を一緒に押し、つまみを回し、分離タブを引き抜き、該デバイスの試料アプライ層を膨潤させることにより、または2つの区域の接触をもたらす他の幾つかの手段により、溶出中に抗体の第1の区域に接触するに至る。
【0019】
本発明の別の実施形態では、捕捉粒子は、図3に示されているように、側方流動デバイスに含浸させるのではなく、試料に直接添加される。捕捉粒子が標的被検体を回収すると、その後、捕捉粒子を捕捉する疎性網目区画を有する該デバイスの試料部位に試料をアプライし、試料の残りが端部の吸収性パッドに向かって先に滲出していく際に、側方流動免疫測定の第1のステップが生じる。第2のステップには、図3に示されているように、捕捉粒子から標的被検体を抽出する疎性網目に抽出緩衝液を添加して、被検体が、該デバイスの測定側に含有されているサンドイッチアッセイを通って移動することを可能にさせることが伴う。
【0020】
したがって、本明細書に記述されている本発明の実施形態は、本発明の原理の応用の例示に過ぎないことが理解されるべきである。例示されている実施形態の詳細を本明細書で参照することは、本発明にとって不可欠であると見なされる特徴をそれら自体が列挙している特許請求の範囲を制限することを意図しない。
【実施例1】
【0021】
1.バイオマーカー測定における主要な問題は、血液中のマーカー候補の含有量(濃度)が非常に低いことであり、マーカー候補は、質量分析および従来の免疫測定の検出限界未満で存在する。初期段階の疾患では、患部組織は患者の組織容積の少しの割合を占めているだけであるため、そのような低含有量が予測されるだろう。初期段階の疾患検出は、一般的により良好な全体的患者予後を提供する。
【0022】
2.バイオマーカーの発見および測定の第2の主要な問題は、循環血漿タンパク質の90%を占める、アルブミンおよび免疫グロブリンなどの常在性タンパク質の圧倒的な含有量であり、それにより、希少バイオマーカーの単離が妨害および隠蔽される[6]。実際、低含有量バイオマーカーの大部分は、希少バイオマーカーと比較して10億倍の過剰量で存在するアルブミンなどの担体タンパク質と非共有結合で内因性に結合している[7]。
【0023】
バイオマーカー測定の第3の主要な課題は、低含有量バイオマーカーは、血液試料を患者から採取した直後から内因性および外因性プロテイナーゼにより急速に分解される傾向があるということである。バイオマーカー候補の分解は、血液の輸送および保管中にも生じ、著しい偽陽性および偽陰性の結果をもたらす[8]。
【0024】
ナノテクノロジーの分野は、バイオマーカー発見に対するこれら3つの根本的な生理学的障害に取り組むための新しい手法を提供する。最近、本発明者らは、これら3つの障害を溶液中で1ステップで克服する高機能ヒドロゲルコアシェルナノ粒子を設計した[9]。ヒドロゲル粒子は、環境的な引き金、例えば、温度、pH、イオン強度、または電場を適用した結果として膨潤および収縮することが可能である親水性ポリマーで構成されるサブマイクロメートルサイズの架橋粒子である[10〜14]。ヒドロゲル粒子は、生体適合性が高く、独特の生理化学的特性を有するため、生体医学およびバイオテクノロジーにおいて広範囲の応用を有する[15〜18]。
【0025】
ナノ粒子は、分子ふるいクロマトグラフィーおよび親和性クロマトグラフィーを溶液中で1ステップで同時に実施する[9]。粒子の親和性マトリックス内に捕捉および結合された分子は、外因性または内因性のプロテアーゼによる分解から保護される。この実行可能性研究は有望だったが[9]、そのようなヒドロゲル粒子技術が、臨床的に関連した、非常に不安定で、含有量が非常に低いバイオマーカーに応用可能であることを示し得るかどうかはこれから証明されなければならなかった。この課題に取り組むために、本発明者らは、新しい種類のコア−シェル粒子を生成し、モデルバイオマーカーである血小板由来増殖因子(PDGF)を特異的に捕捉するコアベイトを個別に作製した。現実世界の問題に対するヒドロゲル粒子の応用可能性を研究するために、非常に低濃度(3ng/mL)で血液中に存在し、半減期が短い(2分)ため[12]、PDGFを癌関連バイオマーカー分析の非常に困難なモデルとして選択した。PDGFは、細胞表面チロシンキナーゼ受容体を介してシグナル伝達するペプチド増殖因子のファミリーであり、成長、増殖、および分化を含む種々の細胞機能を刺激する。異なる遺伝子(染色体4、7、11、22)によりコードされた異なる4つのポリペプチド鎖(PDGF−A、−B、−C、および−D)が、記述されている[19、20]。PDGFは、腫瘍進行中の血管新生および腫瘍間質圧力レベルに役割を果たす[21〜23]。PDGFおよびその受容体を標的とするように設計された、いくつかの新しい治療薬が、現在、腫瘍学臨床で使用されている[24〜28]。PDGFは、このような治療診断価値(theranostic value)が知られているにも関わらず、この低分子量増殖因子の含有量が極端に低く、非常に不安定であるため、臨床において日常的におよび正確に測定することができない。PDGFの他に、CCL28、CCL24、およびCXCL12などの、含有量が非常に低く非常に不安定な一連の追加的なケモカインの隔離および分解からの保護を確認した。これらケモカインは、それぞれ44pg/mL[29]、103pg/mL[30]、および1.5ng/mL[31]の血清中濃度を有する。ケモカインの血中半減期は非常に短く、10分未満である[32]。ケモカインは、白血球の遊走を指図し、炎症応答を活性化し、腫瘍成長に寄与する小型サイトカインである。ケモカインは、3つの重要な機序:腫瘍関連血管新生の制御、宿主の腫瘍特異的免疫学的応答の活性化、および自己分泌様式での腫瘍細胞増殖の直接刺激により腫瘍挙動を調節する。これら機序はすべて有望な薬物標的である[33]。
【0026】
多孔性ラテックスへのベイト分子の組み込みは、ヒドロゲル粒子が溶液中の分子の取り込みを推進する際に、粒子との結合に向けて平衡状態をシフトさせ、捕捉された分子が分解から保護されることを保証する。ベイトは、化学部分を担持するモノマーの共重合により、または既に形成されたヒドロゲル粒子と共有結合している化学部分を負荷することにより導入することができる。
【0027】
a)タンパク質およびペプチド、b)代謝産物、c)脂質および脂肪酸、d)核酸、ならびにe)翻訳後修飾されたペプチド(例えば、グリコシル化およびリン酸化)などの多様な範囲のバイオマーカーに選択的に結合し濃縮するために、様々な種類のベイト化学を生成した。ベイト化学には、電荷に基づくベイト(アクリル酸、アリルアミンコモノマー)、トリアジン負荷染料(シバクロンブルー)、ベータ−シクロデキストリン、ボロン酸が含まれる。
【0028】
アクリル酸は、3.5を超えるpH値で脱プロトン化され、したがって、正荷電ポリペプチドおよびタンパク質を標的とする負電荷を担持する。アリルアミン(pK=9.69[34])は、正味負電荷を有するポリペプチドおよびタンパク質に対するベイトとして作用する。荷電粒子に対するポリペプチドの親和性は、担体タンパク質に対するポリペプチドの親和性より高いことが証明されており、タンパク質の等電点および粒子の解離定数の値に依存する[9]。荷電粒子141の回収および濃縮特性は、溶液のpHおよびイオン強度に依存する。
【0029】
代替的ベイト戦略は、NIPAmに基づく粒子にトリアジン由来の繊維染料(シバクロンブルー F3G−A、プロシオンレッド H8BN)を負荷することである[35]。染料は、低価格であり、分子認識が高度に特異的であるため、親和性クロマトグラフィーで使用されてきた[36]。本発明者らは、シバクロンブルー染料を負荷したヒドロゲル粒子の合成に成功し、それらが、小型タンパク質およびホルモンを尿から効果的に取り込むことを実証した[37]。
【0030】
加えて、シクロデキストリンをヒドロゲル粒子に結合させた。シクロデキストリンは、親油性内部空洞および親水性外側表面を有する環式グルコースオリゴ糖であり、疎水性ゲスト分子と相互作用して非共有結合による複合体を形成可能であり、薬物送達の媒介体として広範に使用されている[38]。シクロデキストリンは、コレステロール[39]、ステロイド[40]、DOPA[41]に結合することが示されている。好適なサイズおよび好ましくは疎水性の特徴を有するゲスト分子を誘引および安定化する力は、水素結合、ファンデルワールス相互作用、静電的相互作用であると考えられている[42]。
【0031】
さらに、本発明者らは、標的生体分子のジオール基と複合体を形成することが知られているボロン酸基を含有する粒子を設計した。ボロン酸イオンは、ヌクレオチド、RNA、糖化タンパク質、および糖酵素の選択的単離に関与する親和性クロマトグラフィー応用に使用されている[43〜48]。
【0032】
コア−シェル構造では、ベイト含有区域は、多孔性シェルにより覆われている。コア−シェルヒドロゲル粒子は、コアおよびシェルの特性を別々に個別調製することができるため、特に有益である。薬物送達に使用される多くのコア−シェル粒子系では、その目的の応用に必要とされる特性を有するようにコアが設計される[12、49〜51]。その後、別々にシェルが加えられて、コアが取り囲まれ遮蔽される。シェルの厚さを改変して、透過性または多孔度を変更することができる。
【0033】
本研究において、本発明者らは、溶液中でタンパク質に対する親和性結合を実施するために、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAm)−アクリル酸(AAc)コアが、電荷に基づくベイトを含有し、NIPAmシェルが、コアを取り囲んでおり、シェルの多孔度を透過するのには大きすぎる溶液相のタンパク質を除外するためのふるいとして作用するコア−シェル粒子を合成した(図4)。NIPAmに基づく粒子は、それらの多孔性構造により、明確な分子サイズカットオフで大型分子を除外する。多孔性の度合いは、モノマーに関しては、架橋剤N,N’メチレンビスアクリルアミド(BIS)の割合を変更することにより調整することができる。同時に、粒子は、ポリペプチドおよび他の低分子がポリマーマトリクスを透過し、希少タンパク質バイオマーカーの濃縮を可能にするのにも好ましい条件を供給する大量の水を吸収することができる[14]。
【0034】
本発明者らは、3つの独立実験系を使用して、この新粒子が、以下を達成することができるかどうかを試験した:a)全血清を含む、高含有量タンパク質の複雑な混合液内にある溶液相PDGFおよびケモカイン分子をすべて迅速に回収すること、b)アルブミンなどの高含有量タンパク質を完全に除去し、捕捉したPDGFおよびケモカインを、開始容積のほんの一部だった低容積中に放出すること。この濃縮ステップは、検出可能なマーカーレベルを低容積で増大させる能力を示し、これは、免疫測定プラットフォームまたは質量分析法などの測定系への入力に必要とされ、およびc)捕捉されたPDGFおよびケモカインを、高濃度で導入される外因性分解酵素による分解から保護すること。本研究のために使用した3つの独立した実験手法は、1)臨床等級のELISA免疫測定、2)開始溶液、上清、および粒子内容物のゲル電気泳動、その後の免疫ブロット、ならびに3)粒子捕捉溶出物と比較した、開始溶液の質量分析であった。
【0035】
本研究の目的は、理論的な想定通りにバイオマーカーを濃縮および保存するコア−シェル粒子の能力を調査することであった。
【0036】
結果
粒子合成および特徴付け
本研究で使用される粒子構造の場合、NIPAmシェルは、親和性ベイト部分を含有するNIPAm/AAcコアを取り囲んでいる。NIPAmシェルのふるい能力は、存在する可能性があり、低含有量で低分子量の目的分子標的と、コアの親和性ベイトに対する結合を競合することができるより大型の分子から、コアおよびその親和性ベイト基を遮蔽する。コアおよびコア−シェル粒子のサイズを比較するために、光散乱による特徴付けを、粒子に対して合成中およびプロセスの終了時に実施した。25℃およびpH4.5でのコア直径は、364.7±4.3nmであり、同じ条件におけるコア−シェル粒子の直径は、699.4±6.2nmである(図5A)。これは、シェルの厚さが約170nmであることを示唆する。ヒドロゲルを含有するAAcの特徴的挙動に従って、コアおよびコア−シェル粒子のサイズは両方とも、温度の上昇およびpHの低下に従って減少した(図5A)。粒子を、原子間力顕微鏡(AFM)によりさらに特徴付けた。AFMの粒子画像(図5B)は、サイズの均一性を確認し、AFMによる粒子直径の測定値は、光散乱で測定されたものと一致した。粒子濃度は、凍結乾燥された粒子を計量することにより取得したところ、10mg/mLであり、1ミリリットル当たりの粒子数は2億3000万個であった。
【0037】
コア−シェル粒子によるPDGFの分子ふるいおよび濃縮
ヒト血小板由来増殖因子(PDGF、MW14,500Da)を、PDGFと結合する担体タンパク質としてウシ血清アルブミン(BSA、MW66,000Da)を含有する溶液にスパイクし、PDGF−BSA溶液に添加されたコア−シェルヒドロゲルナノ粒子は、BSAと粒子との結合が検出されないことにより立証される分子ふるいとして作用し、粒子は、BSAを完全に除外し、溶液相PDGFをすべて完全に隔離した(図6A)。これは、ベイトに対するPDGF親和性が、担体BSAの親和性より高かったことを示唆する。コア−シェル粒子の分子ふるい特性をさらに評価するために、PDGF、BSA、アプロチニン(MW6,500Da)、リゾチーム(MW14,400Da)、トリプシン阻害剤(MW 218 21,500Da)、炭酸脱水酵素(MW31,000Da)、およびオバルブミン(MW45,000Da)を含有する溶液を使用した。粒子によるタンパク質の取り込みを、SDS PAGEにより評価した。コア−シェル粒子は、21,500Da未満の重量を有する低分子量タンパク質を効果的に捕捉および濃縮したが、高分子量を有するタンパク質は粒子から除外されたままであった(図6B)。
【0038】
コア−シェルヒドロゲルナノ粒子による溶液中PDGFの濃縮
本発明者らは、濃度がELISAの検出閾値未満である希釈PDGF試料を濃縮するナノ粒子能力を検討し、PDGFの濃度が粒子隔離により増加されて、ELISAによりPDGFが測定可能になるかどうかを決定した。
【0039】
図6Aで示されているように、以前は検出不能だったレベルのPDGFを粒子から回収し、ELISAにより75〜102pg/mLの範囲の濃度で定量化することに成功した。図7Aに報告されている開始溶液中のPDGF濃度の値(18.92±4.313pg/mL)は、ELISA免疫測定の線形範囲未満(最低検出可能PDGF用量=30pg/mL)であり、光学密度の使用により評価し、232検量線から推定した。製造業者の説明書によると、この最低検出可能用量は、20回のゼロ標準物質重複測定の平均光学密度値に、標準偏差を2倍にした値を加え、対応する濃度を計算することにより決定された。このように、コア−シェル粒子を、ELISAでは検出不能な濃度のPDGF溶液と共にインキュベートし、回収し、アッセイの検出限界より高いレベルにPDGFを濃縮した。予想通り、PDGF溶液が非常に希薄だった場合でも、最低限の量の粒子で飽和が到達された(図7B)。この手順の品質を評価するために、PDGF ELISAアッセイの検量線を生成した(図7C)。同様の実験を、より濃縮されたPDGF溶液で実施した。開始溶液中のPDGF濃度は、63.69(±1.448)pg/mLであったが、粒子から回収したPDGF濃度は、452.81(±4.818)pg/mLであり、約700%の濃縮係数をもたらした(図8A)。PDGF溶液を、様々な容積の粒子と共にインキュベートし、粒子の容積が200μlだった場合に、飽和が達成されたことを実証した(4600万個の粒子、1:5容積/容積の粒子:PDGF溶液比、図8B)。PDGF ELISAアッセイの検量線を繰り返した(図8C)。
【0040】
ヒト血清由来の未処理PDGFを隔離、濃縮、および保存するコアシェル粒子の能力を試験するために、さらなる実験を実施した。本発明者らは、血清由来の未処理PDGFの飽和および完全な枯渇に達するのに必要な粒子量に対する過剰量干渉タンパク質の影響を検討した。血清を、トリスHCl 50mM pH7で1:10に希釈し、増加する量の粒子と共にインキュベートした(200、500、1000、および1500μL)。開始血清溶液中のPDGF値は、170.92±4.66pg/mLであると測定されたが、粒子から回収されたPDGF濃度は、1743.43±11.06pg/mLであり、約10倍(1000パーセント)の濃縮係数をもたらした(図9A)。1000μLの値で飽和が達成された(2億3000万個の粒子、1:1容積/容積の粒子:血清溶液、図9B)。血清中のPDGF開始濃度が図8の溶液中PDGF濃度より高いという事実を考慮して、本発明者らは、大量のタンパク質含有量を有する血清が開始試料中に存在しても、試料を枯渇させるために必要とされる粒子量は2倍未満であると結論付けることができ、したがって大量の血清タンパク質が存在する場合でさえも、粒子の結合能は非常に高いことを確認した。これらの研究で使用されたPDGF ELISAアッセイの検量線が示されている(図9C)。
【0041】
コア−シェル粒子による溶液中ケモカインの濃縮
図10には、血清学的バイオマーカーの他の関連モデル、つまりBSAと混合された粘膜関連上皮ケモカイン(MEC/CCL28、12,300Da)、ストロマ細胞由来因子−1ベータ(SDF−1β/CXCL12b、8,500Da)、およびエオタキシン−2(CCL24、8,800Da)と共にインキュベートされたコアシェルアクリル酸官能化粒子のSDS PAGE分析が示されている。ケモカインは、粒子により溶液から完全に除去され、捕捉され、および濃縮されたが、BSAは完全に除外されていた。
【0042】
コア−シェル粒子による酵素分解からのPDGFの保護
内因性および外因性プロテアーゼによるバイオマーカーの分解は、バイオマーカーの性能バイアスの主な要因であり、バイオマーカー候補の発見および測定を妨害する。免疫ブロット分析を使用して、酵素分解からPDGFを保護する粒子の能力を評価した。粒子の非存在下において、PDGFに対するトリプシン作用は10分後には明らかであり、14,000〜17,000DaのPDGFバンドがほとんど検出不能であることにより示されるように(図11Aおよび図11Bのレーン6〜8)、1時間後にはほとんど完了した。著しく対照的に、トリプシンおよびコア−シェル粒子と共にインキュベートされたPDGFは、染色強度が減少せず断片化されていなかった単一種のバンドを生成し、粒子がタンパク質分解からPDGFを保護することに成功したことを示唆した(図11Aおよび図11Bのレーン4)。トリプシンなしでPDGFが負荷された粒子のPDGFバンド(図11Aおよび図11Bのレーン2)は、PDGFおよびトリプシンが負荷された粒子のPDGFバンド(図11Aおよび図11Bのレーン4)と同一であり、PDGFタンパク質が酵素分解により失われなかったことをさらに示唆した。
【0043】
コア−シェル粒子による酵素分解からのケモカインの保護
SDS−PAGE分析を使用して、モデルとして選択されたケモカインを酵素分解から保護する粒子の能力を評価した。図12に示されているように、トリプシンは、粒子による隔離がない場合、各種類のケモカインを急速に分解した(図12、レーン2、5、8)。著しく対照的に、トリプシンおよび粒子と共にインキュベートされたケモカインは(図12、レーン3、6、9)、断片化されていなかった単一種のバンドを生成し、粒子がタンパク質分解からバイオマーカーを保存することに成功したことを示唆した。
【0044】
コア−シェル粒子は、ヒト血清にスパイクされたPDGFを濃縮および保存する
PDGFの血漿中半減期が非常に短い(2分)ことは、分析上の主要な課題である。免疫ブロットおよび質量分析を使用して、ヒト血清にスパイクされたPDGFを回収、濃縮、および保存するコア−シェル粒子の効率を研究した。免疫ブロットを使用して、正しい分子量の完全タンパク質が存在することにより、PDGFの保存を検証した。50μL等量のコア−シェル粒子を、50mMトリスHCl pH7で1:25に希釈されたヒト血清中にスパイクされた50μLのPDGF溶液(5ng/mLまたは2ng/mLの濃度)と共に、室温で1時間インキュベートした。粒子は、上清(図13、レーン2および5)、および同時に、2つの異なる濃度で血清中にスパイクされた濃縮PDGF(図13、レーン3およびレーン6)に残っていた高分子量タンパク質を除外した。上記のELISAで示されているように、開始溶液中のPDGFは検出不能であった(図13、レーン1および4)。粒子は、PDGF分子の質量または含有量に検出可能な変化をもたらさずに、非常に複雑な血清溶液内のPDGF濃度を、免疫ブロットの検出限界を十分に超える濃度に増加させた。
【0045】
物質および方法
本研究で使用された血清は、IRB認可の血清収集プロトコール(プロトコール番号 GMU HSRB#6081)に基づき、インフォームドコンセントに基づいて取得し、データは、HIPAA、およびヘルシンキ宣言で表明された原則に従って匿名で分析した。
【0046】
コア−シェルヒドロゲル粒子の合成:粒子は、NIPAm(Sigma−Aldrich社)およびBIS(Sigma−Aldrich社)を使用して、沈殿重合により合成した[49]。AAc(Sigma−Aldrich社)をNIPAm粒子に組み込み、ペプチドおよび低分子を親和性捕捉するための、電荷に基づく親和性部分ベイトを準備した[9]。
【0047】
(NIPAm/AAc)コア:NIPAm(0.184g)、BIS(0.0055g)、およびAAc(48.4μL)を、30mLのHOに溶解し、その後0.2μmフィルターを通過させた。溶液を、15分間室温で中程度の撹拌速度で窒素を用いてパージし、その後70℃に加熱した。1mL HO中の過硫酸アンモニウム(APS、Sigma−Aldrich社、0.0099g)を溶液に添加して、重合を開始させた。10分後、シェル溶液を添加した。
【0048】
(NIPAm)シェル:シェル溶液を、0.736gのNIPAmおよび0.120gのBISを10mlの水に溶解することにより調製した。溶液を、0.2μmのフィルターに通し、15分間室温で中程度の撹拌速度で窒素を用いてパージした。APS注入から10分後、シェル溶液を反応コア溶液に添加した。反応物を窒素下で3時間70℃で維持し、その後終夜冷却した。粒子を洗浄して未反応モノマーを除去し、その後16.1rcf、25℃で、15分間遠心分離した。上清を破棄し、粒子を1mlの水に再懸濁した。
【0049】
粒子の特徴付け:粒子の濃度は、凍結乾燥された粒子を計量することにより評価した。粒子は、フローサイトメトリーで計数した。
【0050】
温度およびpHに対する粒子サイズの依存性は、光子相関分光法(サブミクロン粒子サイズ分析器、Beckman Coulter社)により決定した。溶液のpHは、KClのバックグラウンド電解質溶液を有する適量のNaOH、HClを添加することにより制御した。200秒の積分時間を使用して3回の測定で平均値を計算し、各セットの測定前に溶液を10分間熱平衡化させた。その後、測定値をストークス−アインシュタインの関係により粒子サイズに変換した[54]。NSCRIPTOR(商標)DPN(登録商標)システム(Nanolnk社)を使用して、原子間力顕微鏡(AFM)により、粒子をさらに特徴付けた。MilliQ水中の粒子懸濁液(pH5.5、1μg/mL)を、室温、加湿雰囲気下で15分間、新しく劈開されたマイカ上に配置し、測定前に窒素下で乾燥した。画像は、300kHzの典型的な共振周波数および10nm未満の半径を有するシリコンチップを使用して、ACモード下で取得した。
【0051】
粒子のインキュベーション:以下を含有する50μLの溶液と共に、50μLのコア−シェル粒子をインキュベートした:
50mMトリスHCl pH7中の0.02mg/mL PDGF、0.2mg/mL BSA、
PDGF、BSA、アプロチニン(MW6,500Da)、リゾチーム(MW14,400Da)、トリプシン阻害剤(MW21,500Da)、炭酸脱水酵素(MW31,000Da)、およびオバルブミン(MW45,000
419Da);これらの各々は、0.05mg/mLの濃度で、50mMトリス pH7に溶解されていた。
粘膜関連上皮ケモカイン(MEC/CCL28、Antigenix America社)、ストロマ細胞由来因子−1ベータ(SDF−1β/CXCL12b、Antigenix America社)、およびエオタキシン−2−(CCL24、Antigenix America社);これらの各々は、0.02mg/mLの濃度であり、BSA(0.2mg/mL)と混合されており、50mMトリス pH7に溶解されていた。
【0052】
インキュベーションは、室温で30分間継続させた。インキュベーション後、試料を、16.1rcf、25℃で7分間遠心分離し、上清を保存した。その後、粒子を1mLの水中に再懸濁し、16.1rcf、25℃で7分間遠心分離した。遠心分離および洗浄を3回繰り返した。
【0053】
捕捉された被検体の粒子溶出:SDS−PAGEまたは免疫ブロット分析を実施した際、粒子をゲルに直接負荷した。ELISAおよび質量分析を実施した際、洗浄した粒子を、溶出緩衝液(60%アセトニトリル−2%酢酸)と共に30分間インキュベートし、その後25℃、16,1rcfで7分間遠心分離した。溶出液を保存し、第2の溶出ステップを実施し、溶出液を同じバイアルに保存した。その後、Speed Vac(ThermoFisher社)で試料を乾燥し、ELISAまたは質量分析で分析した。
【0054】
SDS−PAGE分析:粒子インキュベーションに由来する粒子および上清を、18%トリスグリシンゲル(Invitrogen Corporation社)に負荷した。粒子はゲルのスタッキング区域に留まったが、捕捉されたタンパク質はすべて粒子から電気泳動され、ゲルで分離された。タンパク質は、銀染色により検出した。
【0055】
酵素分解分析:50mMトリスHCl pH7中のPDGF−BSA(Cell Signaling Technology社)溶液(0.11mg/mL総タンパク質)を、37℃で様々な期間(0、10、20、および40分間)の間、1:100重量/重量のタンパク質:プロテアーゼ比率で、トリプシン(Promega Corporation社)と共にインキュベートして、分解パターンを経時的に研究した。コア−シェル粒子を、PDGF−BSA(0.11mg/mL総タンパク質)およびトリプシン(0.0011mg/mL)を含有する50mMトリスHCl pH7溶液中、1時間37℃でインキュベートした。
【0056】
0.02mg/mLの濃度で50mMトリスHCl pH7に溶解された以下のケモカイン、MEC/CCL28、SDF−1β/CXCL12b、CCL24の各々を、1:50重量/重量のタンパク質:プロテアーゼ比率のトリプシンと共に、およびコア−シェル粒子と共に、37℃で40分間別々にインキュベートした。
【0057】
免疫ブロット分析:タンパク質を、上記のように18%トリス−グリシンゲルで1−Dゲル電気泳動により分離し、その後Immobilion PVDF膜(Millipore社)に移し取った。販売業者の説明書に従って、SYPRO Ruby染色(MolecularProbes社)で膜を染色した。タンパク質ブロットは、Kodak社製4000MM使用して画像化した。その後、膜を、0.2%I−Block(Applied Biosystems社/Tropix社)および0.1%ツイーン20(Sigma−Aldrich社)で補完されたPBSと共に室温で1時間インキュベートし、その後PDGF−BBに対する抗体と共に、継続して撹拌しながら4℃で終夜インキュベートした。0.2%I−Block(重量/容積)および0.1%ツイーン20で補完されたPBSで洗浄した後、特異的西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗IgG二次抗体および高感度化学ルミネセンス装置(Supersignal West Dura、ThermoFisher Scientific社)を使用することにより、免疫応答性を明らかにした。
【0058】
ELISA分析:粒子を、較正物質希釈液RD6−3で希釈された1mLのPDGF−BB標準物質(R&D System社)と共にインキュベートした。インキュベーション時間、洗浄、および溶出は、以前に記述されているように実施した。Speed Vacで乾燥した溶出物を、100μLの水に再懸濁して穏やかにボルテックスし、その後製造業者の説明書に従って、ヒトPDGF−BBのELISAを実施した。各測定は重複して実施し、分析した試料セットの各々について個別の検量線を生成した。このキットの検出限界(20pg/mL)未満のPDGF溶液の1mL等量を、様々な数の粒子(50、100、200、および500μl)と共に30分間インキュベートした。タンパク質を、60%アセトニトリルおよび2%酢酸を用いてその後2回溶出ステップを行うことにより、洗浄された粒子から溶出した。ELISA測定は、100μLの容積で実施した。
【0059】
未処理血清PDGFのELISA測定を使用して、血清に導入された一連の粒子濃度ごとに、粒子捕捉収率を判断した。50mMトリスHCl pHで1:10に希釈された1000μL等量の血清を、量を増加させた粒子(200、500、1000、および1500μL)と共に、室温で30分間インキュベートした。以前に記述されているように粒子を洗浄し、100μLの溶出緩衝液(60%アセトニトリル−2%酢酸)と共に10分間インキュベートし、その後遠心分離した(25℃、16.1rcfで7分間)。粒子溶出液を凍結乾燥し、較正物質希釈液RD6−3、R&D Systems社製に再懸濁した。血清溶液は、較正物質希釈液で希釈した。ELISA測定は、100μLの容積で実施した。
【0060】
質量分析:以下の溶液を、コア−シェル粒子と共にインキュベートした:
複雑なタンパク質混合物でスパイクされたPDGF:50mMトリスHCl pH7中に6.7μg/mL BSA(ThermoFisher Scientific社、MW66,000)、6.7μg/mLアプロチニン(Sigma−Aldrich社、MW6,500Da)、6.7μg/mLリゾチーム(Sigma−Aldrich社、MW14,400Da)、6.7μg/mLトリプシン阻害剤(Invitrogen Corporation社、MW21,500Da)、6.7μg/mL炭酸脱水酵素(Sigma−Aldrich社、MW31,000Da)、および6.7μg/mLオバルブミン(Sigma−Aldrich社、MW45,000Da)を含有するタンパク質混合物を、40μg/482mLの総タンパク質濃度で使用した。PDGFを以下の濃度で添加した:670ng/mL、67ng/mL、6.7ng/mL、0.67ng/mL。その結果、PDGFと総タンパク質との比率は、それぞれ1:60、1:600、1:6,000、および1:60,000だった。1.5mL等量の溶液を、100μLのコア−シェル粒子と共にインキュベートした。タンパク質を、60%アセトニトリルおよび2%酢酸を用いて100μLの容積に溶出し、溶出液をSpeed Vac(Thermo社)で乾燥し、ナノ逆相液体クロマトグラフィー質量分析(RPLC−MS/MS)で分析した。溶液および溶出液の両方から100μL等量を分析し、したがって同じ容積を維持した。
ヒト血清:200Lの健常ドナー血清を、100Lのコア−シェル粒子を有する50mMトリスHCl緩衝液、pH7で1:3に希釈した。粒子を10%アセトニトリル、0.5×PBS緩衝液で洗浄し、60%アセトニトリル、2%酢酸で溶出した。試料をSpeed Vac(Thermo社)で乾燥し、nanoRPLC−MS/MSで分析した。
【0061】
粒子からの溶出液を、nanoRPLC−MS/MSで分析した。Speed Vacで乾燥したタンパク質を8M尿素中に再構成し、10mM DTTで還元し、50mMヨードアセトアミドでアルキル化し、トリプシンにより終夜37℃で消化した。トリプシンペプチドを、Zip−Tip(Millipore社)でさらに精製し、線形イオントラップ質量分析計(LTQ、Orbitrap)を使用して、LC−MS/MSにより分析した。試料注入後、カラムを移動相A(0.4%酢酸)で5分間洗浄し、250ナノリットル/分、30分間で0%移動相B(0.4%酢酸、80%アセトニトリル)から50%移動相Bへの線形濃度勾配を使用してペプチドを溶出し、その後さらに5分間、移動相Bを100%にした。LTQ質量分析計は、35%の正規化衝突エネルギーを使用する衝突誘起解離(CID)用に5つの最も豊富な分子イオンが動的に選択された5つのMS/MSスキャンが、各完全MSスキャン後に行われるデータ依存モードで操作された。タンデム質量スペクトルを、トリプシン切断の制約を使用して、SEQUESTデータベースに対して探索した。検索結果に以下のフィルターを適用することにより、高信頼度のペプチド同定が取得された:1+の場合、相互相関スコア(XCorr)は1.9以上、2+の場合は2.2以上、3+の場合は3.5以上、ランダム同定の最大確率は0.01。
【0062】
総タンパク質に対して1:60、1:600、および1:6,000の比率でPDGFを含有する溶液の質量分析により、ヒトPDGFに属する13、6、および1つのペプチドがそれぞれ同定されたが、コア−シェル粒子からの溶出液は、それぞれ33、15、および5つのペプチドを含有していた。総タンパク質に対して1:60,000のPDGF比率では、PDGFペプチドは、トリプシン消化後の原溶液中に質量分析では検出されなかったが(0.67ng/mLのPDGF濃度)、粒子からの溶出液からは、PDGFトリプシンペプチドの明瞭な質量分析計検出スペクトルが得られた。したがって、コア−シェル粒子は、質量分析計の既知検出レベル内にPDGFが存在していた場合、質量分析により溶液から同定されるペプチドの数を増加させた。加えて、このバイオマーカーが1ml当たり1ナノグラム未満に希釈され、非常に大量のタンパク質により隠蔽された場合、コア−シェル粒子は、PDGFを濃縮し、質量分析の検出範囲へその濃度を上昇させることができた。
【0063】
生理学的媒体中のPDGFを濃縮および保存し、同時に、隔離された任意のタンパク質を同定する粒子の能力をさらに評価するために、PDGF(5ng/μLの濃度の)を、50mMトリスHCl pH7で1:25に希釈されたヒト血清にスパイクし、50μlのコア−シェル粒子と共に1時間インキュベートした。タンパク質を溶出し、乾燥し、nanoRPLC−MS/MSで分析した。表S1に示されているように、PDGFを回収し、質量分析計分析により高ペプチドヒット範囲(high peptide hit coverage)で明白に同定した。多数の希少な低分子量タンパク質が、コア−シェル粒子により捕捉されたタンパク質の混合物内で同定された。加えて、コア−シェル粒子をヒト血清と共にインキュベートし、粒子から溶出されたタンパク質をnanoRPLC−MS/MSで分析した。非常に低い含有量(約1ng/mL)で血液中に存在する未処理PDGFに属するペプチドを同定した。
【0064】
これらのデータは、血清から既知のバイオマーカーを回収および保存するためのコア−シェル粒子の使用を支持するものであり、バイオマーカーの濃度、および現行のバイオマーカーの測定および発見技術の有効感度を劇的に増加させる方法を提供する。
【0065】
全体として、本発明は、内部親和性ベイトを含有する1nm〜100μmのサイズ範囲の粒子による一体型の被検体濃縮および単離ステップを含み、a)被検体を含有する試料液体を、被検体を認識する親和性ベイトを封入する開放型ポリマー性網目構造で構成されるナノ粒子の帯域と接触させ、b)被検体を、粒子内部で濃縮、隔離、および分解から保護し、c)標識リガンドまたは抗体により認識されるように被検体を放出させる免疫測定系またはデバイスである。免疫測定デバイスでは、粒子は被検体含有試料液体に懸濁されており、懸濁された粒子は浮揚性であり、溶液中に留まり重力により沈殿せず、粒子は開放型ポリマー性構造であり、粒子が懸濁されている溶質が粒子の80%超を占める。また、免疫測定デバイスでは、粒子および試料液体の混合物がデバイスにアプライされ、側方流動免疫測定デバイス内にある流体経路内の帯域に粒子が配置および固定化されている。
【0066】
本発明は、被検体捕捉粒子を含むポイントオブケアの免疫測定デバイスでもあり、そのような粒子は、固定化された親和性リガンドを含有するポリマー性マトリックスシェルおよび内部コアを含み、ポリマー性マトリックスは、ある条件下で被検体がポリマー性マトリックスに進入することを可能にするが、混合物に由来する他の化合物をポリマー性マトリックスへの進入から除外する細孔サイズを有し、親和性リガンドは、目的の被検体を認識し、捕捉粒子は、側方流動免疫測定デバイスの一部として多孔性基層に組み込まれている。粒子が目的の被検体を隔離した後、液体試料の流路を変更することができる。被検体捕捉粒子を分離するための方法は、試料中に存在する細胞由来の標的被検体を含有しており、捕捉粒子は、異なる多孔度を通って免疫測定帯内を滲出により流動し、粒子は、1〜1000ナノメートルのサイズ範囲である。試料は、全血、または尿、脳脊髄液、汗、唾液、乳頭吸引液、もしくは羊水などの別の体液;非生物学的液体;環境試料、農業試料、もしくは食品試料である。また、本発明は、捕捉粒子から標的バイオマーカーを分離し、そこでは抽出緩衝液を使用して、隔離されたバイオマーカーを捕捉粒子から取り除く。試料は、全血、または尿、脳脊髄液、汗、唾液、乳頭吸引液、もしくは羊水などの別の体液;非生物学的液体;環境試料、農業試料、もしくは食品試料である。
【0067】
タンパク質、ペプチド、または核酸バイオマーカーを隔離、濃縮、および分解から保護するための方法は、a)ある条件下で被検体がポリマー性マトリックスに進入することを可能にするが、混合物に由来する他の化合物をポリマー性マトリックスへの進入から除外する細孔サイズを有するポリマー性マトリックス、およびb)内部の固定化された親和性ベイトを含む捕捉粒子を混合物と接触させることであり、試料中に存在する個々の種類の低分子量分子に対して特異的な複数の亜集団を含有する捕捉粒子の集団が、側方流動免疫測定デバイス内に組み込まれている。被検体を前濃縮および保存する本発明の手段も作用しており、そこでは、a)被検体が、被検体に対する親和性ベイトを含有するヒドロゲル粒子の存在下の液体溶液中に存在し、粒子は、溶液中に留まり重力により沈殿しないのに十分なほどの小さなサイズおよび浮揚性であり、b)高い割合の被検体が粒子内に隔離され、c)バルク枯渇液体容積は多孔性マトリックス内で先に滲出していく。本発明の捕捉粒子は、a)分子ふるい部分、およびb)被検体結合部分を含み、分子ふるい部分、被検体結合部分、またはその両方は、多孔度が改変された架橋区域をさらに含み、ふるい部分は、物理的および/または化学的処理に応じて、捕捉粒子内に被検体を捕捉するように収縮および/または膨張する。被検体結合部分は、化学的または静電気的に被検体に結合または隔離することが可能である少なくとも1つのタイプの部分を含む。被検体結合部分は、カルボキシ基、アミン基、脂質、リンタンパク質、リン脂質、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、アクリル基、チオール基、アクリル酸、抗体、結合タンパク質、結合対、金属、キレート剤、核酸、アプタマー、酵素結合ポケット、レクチン、薬理学的作用剤、合成ペプチド、抗体断片、疎水性表面、親水性表面、およびそれらの任意の誘導体またはそれらの組み合わせを含む。被検体は、被検体結合部分に結合し、被検体は、有機分子、無機分子、ポリペプチド、炭水化物、核酸、脂質、それらの誘導体、またはそれらの任意の組み合わせを含む。分子ふるい部分は、内部コアを封入する外側シェルであり、内部コアは、被検体結合部分を含んでいる。分子ふるい部分、被検体結合部分、またはその両方は、ポリアクリルアミド、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、N−アルキル置換ポリアクリルアミド、ポリ(N−ビニルアルキルアミド)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(ベンジルグルタメート)、ポリ(2−エチルアクリル酸)、ポリ(4−ビニルピリジン)、それらの誘導体、またはそれらの任意の組み合わせを含む。架橋区域は、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート、またはそれらの任意の組み合わせを含む。分子ふるい部分、被検体結合体部分、またはその両方は、ヒドロゲルを含む。捕捉粒子は、物理的または化学的処理に曝されると、結合または隔離されている被検体を放出し、物理的または化学的処理は、電荷、静水圧、pH変化、温度変化、酸性作用剤、塩基性作用剤、UV、超音波、X線、またはそれらの組み合わせに曝されることを含む。
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