特許第5896122号(P5896122)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5896122
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】稜線ならい方法および制御装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20160317BHJP
【FI】
   B25J13/08 Z
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-6833(P2012-6833)
(22)【出願日】2012年1月17日
(65)【公開番号】特開2013-146796(P2013-146796A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2014年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】林 浩一郎
【審査官】 臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−118277(JP,A)
【文献】 特開平08−118276(JP,A)
【文献】 特開平08−252785(JP,A)
【文献】 特開平05−233048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 3/00−13/08
B23Q 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の稜線に沿ってツールを移動させる稜線ならい方法であって、
稜線は、その接線方向が不連続的に変化する不連続変化点と、不連続変化点から互いに異なる方向に延びている第1稜線部分および第2稜線部分とを有し、
第1稜線部分と第2稜線部分と不連続変化点は、不連続変化点を底点とする凹形状、または、不連続変化点を頂点とする凸形状を形成し、
(A)ツールを第1稜線部分に押し付けた状態で、不連続変化点に向かってツールを移動させ、
(B)ツールが不連続変化点に至ったら、ツールの移動方向を、第2稜線部分に沿った方向に切り換え、
(C)ツールを第2稜線部分に押し付けた状態で、不連続変化点から離れる方向にツールを移動させ、
前記(A)では、予め定められた第1押し付け方向に、ツールを、第1稜線部分へ押し付け、前記(C)では、予め定められた第2押し付け方向に、ツールを、第2稜線部分へ押し付け、
前記(A)では、ツールの姿勢が第1姿勢条件を満たし、前記(C)では、ツールの姿勢が第2姿勢条件を満たすように、ツールの姿勢を調節し、
第1姿勢条件は、ツールと第1稜線部分との接触位置において、ツールの外面と接する仮想平面が、第1押し付け方向と直交することを規定し、第2姿勢条件は、ツールと第2稜線部分との接触位置において、ツールの外面と接する仮想平面が、第2押し付け方向と直交することを規定し、
ツールが、稜線上であって不連続変化点の近傍に位置する場合に、第1姿勢条件と第2姿勢条件の両方を満たすツールの姿勢を目標姿勢とし、
前記(A)において、ツールが不連続変化点に至るまでに、ツールの姿勢を目標姿勢にすることにより、ツールが不連続変化点に至った時に、ツールが目標姿勢になっているようにする、ことを特徴とする稜線ならい方法。
【請求項2】
前記ツールは、稜線を面取り加工する加工具であり、
第1押し付け方向は、第1稜線部分に対して予め定めた目標加工面に垂直な方向であり、
第2押し付け方向は、第2稜線部分に対して予め定めた目標加工面に垂直な方向である、ことを特徴とする請求項1に記載の稜線ならい方法。
【請求項3】
前記(A)の進行中に、ツールの姿勢を次第に変化させることにより、ツールが不連続変化点に至るまでに、ツールの姿勢を目標姿勢にする、ことを特徴とする請求項1または2に記載の稜線ならい方法。
【請求項4】
ロボットアームの先端部に取り付けられたツールを、対象物の稜線に沿って移動させるならい制御装置であって、
稜線は、その接線方向が不連続的に変化する不連続変化点と、不連続変化点から互いに異なる方向に延びている第1稜線部分および第2稜線部分とを有し、
第1稜線部分と第2稜線部分と不連続変化点は、不連続変化点を底点とする凹形状、または、不連続変化点を頂点とする凸形状を形成し、
ツールが稜線に押し付けられることにより、ツールに作用する反作用力を検出する力覚センサと、
稜線の形状に基づいて予め定められたツールの設定軌道を記憶する記憶部と、
ロボットアームを制御する制御部と、を有し、
制御部は、
(A)力覚センサの検出値と設定軌道に基づいて、ツールを、第1稜線部分に押し付けた状態で、不連続変化点に向かって移動させるようにロボットアームを制御し、
(B)力覚センサの検出値に基づいて、ツールが不連続変化点に至ったと判断したら、ツールの移動方向を、第2稜線部分に沿った方向に切り換えるようにロボットアームを制御し、
(C)これにより、次いで、力覚センサの検出値と設定軌道に基づいて、第2稜線部分にツールを押し付けた状態で、不連続変化点から離れる方向にツールを移動させるようにロボットアームを制御し、
制御部は、前記(A)では、予め定められた第1押し付け方向にツールを第1稜線部分へ押し付け、前記(C)では、予め定められた第2押し付け方向にツールを第2稜線部分へ押し付けるようにロボットアームを制御し、
制御部は、前記(A)では、ツールの姿勢が第1姿勢条件を満たし、前記(C)では、ツールの姿勢が第2姿勢条件を満たすように、ロボットアームを制御し、
第1姿勢条件は、ツールと第1稜線部分との接触位置において、ツールの外面と接する仮想平面が、第1押し付け方向と直交することを規定し、第2姿勢条件は、ツールと第2稜線部分との接触位置において、ツールの外面と接する仮想平面が、第2押し付け方向と直交することを規定し、
ツールが、稜線上であって不連続変化点の近傍に位置する場合に、第1姿勢条件と第2姿勢条件の両方を満たすツールの姿勢を目標姿勢とし、
前記(A)において、不連続変化点にツールが至るまでに、制御部は、ツールの姿勢が目標姿勢になるようにロボットアームを制御することにより、ツールが不連続変化点に至った時に、ツールが目標姿勢になっているようにする、ことを特徴とするならい制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の稜線の加工や形状計測において、対象物の稜線に沿ってツールを移動させる稜線ならい方法および制御装置に関する。特に、本発明は、その接線方向が不連続変化点で不連続的に変化する稜線に対するならい方法と制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ならい制御により、対象物の稜線に対する加工や形状計測を行うことができる。稜線に対する加工では、対象物の稜線に沿ってツールを移動させることにより、この稜線に対して面取り加工やバリ取り加工をする。稜線に対する形状計測では、対象物の稜線に沿ってツールを移動させることにより、ツールの移動軌跡を求め、この移動軌跡に基づいて稜線の形状を求める。
【0003】
以下において、ならい制御の例として、対象物の稜線に対して加工をする場合について説明する。
【0004】
図1は、従来のならい制御を説明する図である。図1において、対象物(被加工物)1の稜線2は、その接線方向が不連続的に変化する不連続変化点2cと、不連続変化点2cから互いに異なる方向に延びている第1稜線部分2aおよび第2稜線部分2bとを有する。
【0005】
従来のならい制御は、次のように行われていた。
図1(A)のように、加工用のツール5を第1稜線部分2aに押し付けた状態で、第1稜線部分2aに沿って、不連続変化点2cに向けてツール5を移動させる。これにより、第1稜線部分2aを加工する。
ツール5が不連続変化点2cに至ったら、ツール5の姿勢を変化させる。これにより、ツール5を第2稜線部分2bに押し付けた状態にする。
この状態で、図1(B)のように、第2稜線部分2bに沿って、不連続変化点2cから離れる方向にツール5を移動させる。これにより、第2稜線部分2bを加工する。
【0006】
上述の加工は、ロボットアームを用いて行われる。ツール5をロボットアームの先端部に取り付ける。このロボットアームの動作を制御することにより、上述のようにツール5の移動や、対象物1へのツール5の押し付けや、ツール5の姿勢変更などを行わせる。
【0007】
このようなロボットアームの制御において、位置制御と力制御を、互いに直交する方向に分離して行っている。この制御を、以下、ハイブリッド制御という。ハイブリッド制御において、位置制御は、ロボットアームの先端部を、稜線2の接線方向に移動させる制御であり、力制御は、ロボットアームの先端部(ツール5)を対象物1に押し付ける制御である。位置制御による制御方向は、稜線2の接線方向であり、力制御による制御方向は、稜線2の接線方向と直交する方向である。
【0008】
なお、ロボットアームを用いた加工や形状計測は、例えば、下記の特許文献1、2に記載されている。
特許文献1では、ロボットアームの先端部にツールを取り付け、ツールを被加工物に押し付けた状態で、被加工物の表面に沿ってツールを移動させることにより、被加工物の加工または形状計測を行っている。
特許文献2では、ロボットアームの先端部にツールを取り付け、対象物の表面にならってツールを移動させることにより、対象物の形状を計測している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2852828号
【特許文献2】特開平4−122546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、ツール5が稜線2に沿って移動する過程において、不連続変化点2cで、ツール5に対して移動方向変更と姿勢変更との両方を行うと、ツール5の連続的な位置変化に対して、ツール5の移動方向と姿勢の両方が不連続的に変化する。その結果、ツール5の動作が不安定になる。特に、ツール5が先端部に取り付けられたロボットアームに対して、位置と力のハイブリッド制御を行う場合には、ロボットアームの位置制御の方向と力制御の方向の両方が不連続的に変化するので、ツール5の動作が不安定になる。
【0011】
そこで、本発明の目的は、対象物の稜線に対するならい制御で、稜線が、接線方向の不連続変化点と、不連続変化点から互いに異なる方向に延びている第1稜線部分および第2稜線部分とを有する場合に、ツールが、第1稜線部分から不連続変化点に至った時に、ツールの動作を安定させつつ、第2稜線部分に沿って、ツールを速やかに移動させることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明によると、対象物の稜線に沿ってツールを移動させる稜線ならい方法であって、
稜線は、その接線方向が不連続的に変化する不連続変化点と、不連続変化点から互いに異なる方向に延びている第1稜線部分および第2稜線部分とを有し、
第1稜線部分と第2稜線部分と不連続変化点は、不連続変化点を底点とする凹形状、または、不連続変化点を頂点とする凸形状を形成し、
(A)ツールを第1稜線部分に押し付けた状態で、不連続変化点に向かってツールを移動させ、
(B)ツールが不連続変化点に至ったら、ツールの移動方向を、第2稜線部分に沿った方向に切り換え、
(C)ツールを第2稜線部分に押し付けた状態で、不連続変化点から離れる方向にツールを移動させ、
前記(A)では、予め定められた第1押し付け方向に、ツールを、第1稜線部分へ押し付け、前記(C)では、予め定められた第2押し付け方向に、ツールを、第2稜線部分へ押し付け、
前記(A)では、ツールの姿勢が第1姿勢条件を満たし、前記(C)では、ツールの姿勢が第2姿勢条件を満たすように、ツールの姿勢を調節し、
第1姿勢条件は、ツールと第1稜線部分との接触位置において、ツールの外面と接する仮想平面が、第1押し付け方向と直交することを規定し、第2姿勢条件は、ツールと第2稜線部分との接触位置において、ツールの外面と接する仮想平面が、第2押し付け方向と直交することを規定し、
ツールが、稜線上であって不連続変化点の近傍に位置する場合に、第1姿勢条件と第2姿勢条件の両方を満たすツールの姿勢を目標姿勢とし、
前記(A)において、ツールが不連続変化点に至るまでに、ツールの姿勢を目標姿勢にすることにより、ツールが不連続変化点に至った時に、ツールが目標姿勢になっているようにする、ことを特徴とする稜線ならい方法が提供される。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によると、前記ツールは、稜線を面取り加工する加工具であり、
第1押し付け方向は、第1稜線部分に対して予め定めた目標加工面に垂直な方向であり、
第2押し付け方向は、第2稜線部分に対して予め定めた目標加工面に垂直な方向である。
【0014】
また、本発明の好ましい実施形態によると、前記(A)の進行中に、ツールの姿勢を次第に変化させることにより、ツールが不連続変化点に至るまでに、ツールの姿勢を目標姿勢にする。
【0015】
また、上記目的を達成するため、本発明によると、ロボットアームの先端部に取り付けられたツールを、対象物の稜線に沿って移動させるならい制御装置であって、
稜線は、その接線方向が不連続的に変化する不連続変化点と、不連続変化点から互いに異なる方向に延びている第1稜線部分および第2稜線部分とを有し、
第1稜線部分と第2稜線部分と不連続変化点は、不連続変化点を底点とする凹形状、または、不連続変化点を頂点とする凸形状を形成し、
ツールが稜線に押し付けられることにより、ツールに作用する反作用力を検出する力覚センサと、
稜線の形状に基づいて予め定められたツールの設定軌道を記憶する記憶部と、
ロボットアームを制御する制御部と、を有し、
制御部は、
(A)力覚センサの検出値と設定軌道に基づいて、ツールを、第1稜線部分に押し付けた状態で、不連続変化点に向かって移動させるようにロボットアームを制御し、
(B)力覚センサの検出値に基づいて、ツールが不連続変化点に至ったと判断したら、ツールの移動方向を、第2稜線部分に沿った方向に切り換えるようにロボットアームを制御し、
(C)これにより、次いで、力覚センサの検出値と設定軌道に基づいて、第2稜線部分にツールを押し付けた状態で、不連続変化点から離れる方向にツールを移動させるようにロボットアームを制御し、
制御部は、前記(A)では、予め定められた第1押し付け方向にツールを第1稜線部分へ押し付け、前記(C)では、予め定められた第2押し付け方向にツールを第2稜線部分へ押し付けるようにロボットアームを制御し、
制御部は、前記(A)では、ツールの姿勢が第1姿勢条件を満たし、前記(C)では、ツールの姿勢が第2姿勢条件を満たすように、ロボットアームを制御し、
第1姿勢条件は、ツールと第1稜線部分との接触位置において、ツールの外面と接する仮想平面が、第1押し付け方向と直交することを規定し、第2姿勢条件は、ツールと第2稜線部分との接触位置において、ツールの外面と接する仮想平面が、第2押し付け方向と直交することを規定し、
ツールが、稜線上であって不連続変化点の近傍に位置する場合に、第1姿勢条件と第2姿勢条件の両方を満たすツールの姿勢を目標姿勢とし、
前記(A)において、不連続変化点にツールが至るまでに、制御部は、ツールの姿勢が目標姿勢になるようにロボットアームを制御することにより、ツールが不連続変化点に至った時に、ツールが目標姿勢になっているようにする、ことを特徴とするならい制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
上述した本発明によると、ツールが不連続変化点に至るまでに、ツールの姿勢を目標姿勢にする。この目標姿勢は、ツールが不連続変化点の近傍に位置する時に、第1稜線部分にも第2稜線部分にも、それぞれ、予め定められた第1押し付け方向と第2押し付け方向にツールを押し付けることができる姿勢である。従って、ツールが、第1稜線部分から不連続変化点に至った時に、ツールの姿勢を変えることなく、ツールの移動方向を第2稜線部分に沿った方向に切り換えることができる。
よって、ツールが、第1稜線部分から不連続変化点に至った時に、ツールの動作を安定させつつ、第2稜線部分に沿って、ツールを速やかに移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】従来における稜線ならい方法の説明図である。
図2】本発明の実施形態によるならい制御装置を示す。
図3】本発明の実施形態による稜線ならい方法を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態による稜線ならい方法の説明図である。
図5】円筒形のツールの目標姿勢を定める方法の説明図である。
図6】各時点のツールの姿勢を示す。
図7】凸形状を有する稜線に対するならい方法の説明図である。
図8】本発明の変更例2におけるツールの目標姿勢を定める方法の説明図である。
図9】円錐形のツールの目標姿勢を定める方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0019】
図2は、本発明の実施形態によるならい制御装置10を示す。ならい制御装置10は、ロボットアーム3の先端部に取り付けられたツール5を、対象物1の稜線2に沿って移動させる装置である。後述する図4に示すように、稜線2は、稜線2上の位置の連続的な変化に対してその接線方向が不連続的に変化する不連続変化点2cと、不連続変化点2cから互いに異なる方向に延びている第1稜線部分2aおよび第2稜線部分2bとを有する。
【0020】
ロボットアーム3の先端部には、ツール5と力覚センサ7が設けられている。
【0021】
ツール5は、ロボットアーム3の先端部に設けられたスピンドルモータ4により、ツール5の軸回りに回転駆動される。本実施形態では、ツール5は、円筒形の砥石である。
【0022】
力覚センサ7は、対象物(被加工物)1からツール5に作用する力を検出する。本実施形態では、力覚センサ7は、ツール5が対象物1に押し付けられたことにより、ツール5に作用する反作用力を検出する。すなわち、力覚センサ7は、対象物1へのツール5の押し付け力を検出する。また、力覚センサ7は、複数の検出方向において、ツール5に作用する力を互いに区別して検出することができる。例えば、複数の検出方向は、ロボットアーム3の先端部に固定された3次元座標系で表される方向であってよい。
【0023】
ならい制御装置10は、ロボットアーム3の動作を制御する。ならい制御装置10は、上述の力覚センサ7と、記憶部8と、制御部9とを有する。
【0024】
記憶部8は、ツール5の設定軌道を記憶している。設定軌道は、対象物1の稜線2の形状に基づいて予め定められたものである。すなわち、設定軌道は、対象物1の既知の形状(例えばCADデータ)に基づいて予め定められたものである。代わりに、設定軌道は、ならい動作により求めてもよい。ならい動作では、第1稜線部分2aと第2稜線部分2bにツール5を接触させながら、第1稜線部分2aと第2稜線部分2bに沿ってツール5を移動させ、この時のツール5の移動軌跡を得る。この移動軌跡に基づいて、設定軌道を求める。
【0025】
制御部9は、記憶部8に記憶されている設定軌道と、力覚センサ7から入力される力の検出値とに基づいて、ロボットアーム3の先端部(ツール5)が、予め定められた押し付け力で稜線2に押し付けられた状態で、稜線2に沿って移動するように、ロボットアーム3の動作を制御する。
【0026】
ロボットアーム3は、例えば、垂直多関節型の6自由度アームであるが、その先端部が、対象物1の稜線2に沿って移動できる自由度と可動範囲を有している装置であればどのような構成でもよい。この場合、ロボットアーム3の形態は、直交座標型、スカラ型など、どのような形態であってもよい。
【0027】
図3図4に基づいて、本発明の実施形態による稜線ならい方法を説明する。
【0028】
図3は、本発明の実施形態による稜線ならい方法を示すフローチャートである。図4は、本発明の実施形態による稜線ならい方法の説明図であり、(A)は、対象物1の斜視図であり、(B)は、稜線2に対する目標加工面6を示す斜視図であり、(C)は、(B)のC−C線断面図であり、(D)は、(B)のD−D線断面図である。
【0029】
この稜線ならい方法では、その接線方向が不連続的に変化する稜線2に沿ってツール5を移動させる。この時、対象物1は一定位置に固定されている。本実施形態では、第1稜線部分2aと、第2稜線部分2bと、不連続変化点2cとは、不連続変化点2cを底点とする凹形状を形成する。
本実施形態では、ツール5は、面取り加工具である。すなわち、第1稜線部分2aと第2稜線部分2bに対して、ツール5で面取り加工する。第1稜線部分2aと第2稜線部分2bの各々は、対象物1における隣接する2つの面の交わり部分(線分)であって、不連続変化点2cから線状に延びている。なお、第1稜線部分2aと第2稜線部分2bは、図4(A)の例のように直線状に延びていてもよいし、曲線状に延びていてもよい。また、第1稜線部分2aと第2稜線部分2bは、ツール5により加工(面取り加工またはバリ取り加工)された状態のものと、ツール5により加工(面取り加工またはバリ取り加工)される前の状態のものとの両方を含む概念である。
【0030】
稜線ならい方法は、ステップS1〜S4を有する。
【0031】
ステップS1において、制御部9は、力覚センサ7の検出値と設定軌道に基づいて、第1稜線部分2aにツール5を押し付けた状態で、不連続変化点2cに向かってツール5を移動させるようにロボットアーム3を制御する。本実施形態では、これにより、第1稜線部分2aが面取り加工されて、第1稜線部分2aに対して目標加工面6(図4(B)を参照)が形成される。
このステップS1では、制御部9は、位置と力のハイブリッド制御により、ツール5を設定力で第1稜線部分2aに押し付けながら、ツール5が第1稜線部分2aに沿って移動するようにロボットアーム3を制御する。なお、設定力は、記憶部8に記憶されている。
【0032】
ステップS2は、ステップS1の進行中に行われる。ステップS2において、制御部9は、力覚センサ7の検出値に基づいて、ツール5が不連続変化点2cに至ったかどうかを判断する。ツール5が不連続変化点2cに至ると、ツール5が第2稜線部分2bに当たる。これによる反作用力がツール5に作用するので、この反作用力を力覚センサ7で検出する。この反作用力(新たな反作用力という)を力覚センサ7が検出する方向は、第1稜線部分2aからの反作用力を力覚センサ7が検出する方向と異なる。このように異なる検出方向において新たな反作用力が検出されたことに基づいて、制御部9は、ツール5が不連続変化点2cに至ったと判断する。これにより、対象物1の設置位置や設定軌道などに誤差があっても、ツール5が不連続変化点2cに至ったことを正確に判断できる。なお、本実施形態において、ツール5が不連続変化点2cに至ったとは、ツール5が、第2稜線部分2bに当たったことを意味する。
【0033】
ステップS2の判断が、「はい」となったら、ステップS3へ進み、そうでない場合には、ステップS1を行いながら、ステップS2の判断を繰り返す。
【0034】
ステップS3において、ツール5の移動方向を、第1稜線部分2aに沿った方向から、第2稜線部分2bに沿った方向に切り換えるようにロボットアーム3を制御する。この時、好ましくは、制御部9は、設定軌道(特に、第2稜線部分2bに対応する部分)を平行移動させることにより、ツール5の現在の位置を、設定軌道(特に、第2稜線部分2bに対応する部分)に一致させる。この場合、以降において、平行移動させた設定軌道に基づいて、ロボットアーム3の制御が行われる。これにより、制御部9が、ロボットアーム3に対して出力する動作指令値が不連続的に変化することを防止する。ここで、動作指令値は、ロボットアーム3の先端部の位置を指定するものである。
ステップS3を終えたら、ステップS4に進む。
【0035】
ステップS4において、制御部9は、力覚センサ7の検出値と設定軌道に基づいて、第2稜線部分2bにツール5を押し付けた状態で、不連続変化点2cから離れる方向にツール5を移動させるようにロボットアーム3を制御する。本実施形態では、これにより、第2稜線部分2bが面取り加工されて、第1稜線部分2aに対して目標加工面6(図4(B)を参照)が形成される。
このステップS4では、ステップS1と同様に、制御部9は、位置と力のハイブリッド制御により、ツール5を設定力で第2稜線部分2bに押し付けながら、ツール5が第2稜線部分2bに沿って移動するようにロボットアーム3を制御する。
【0036】
本実施形態のステップS1、S4で、第1稜線部分2aに対して面取り加工することにより形成される目標加工面6を、図4(B)(C)(D)において破線で示している。目標加工面6は、予め定められており、目標加工面6を表す加工面データは、記憶部8に記憶されている。加工面データは、例えば、目標加工面6と設定軌道との位置および向きの関係(例えば、なす角度を含む)であってよい。制御部9は、ステップS1またはS4において、設定軌道と加工面データに基づいて、ツール5の位置と向きを制御する。これにより、対象物1に目標加工面6を形成することができる。
【0037】
本実施形態のステップS1、S4は、ツール5をその軸回りに回転させながら行われる。なお、ステップS1の開始からステップS4の終了まで、ツール5を、その軸回りに回転させた状態に維持してよい。
【0038】
また、ステップS1、S4において、制御部9は、ロボットアーム3の先端部(すなわち、ツール5)を移動させる位置制御と、ロボットアーム3の先端部を対象物1に押し付ける力制御とを、互いに異なる方向に分離して行う。
【0039】
以下において、ツール5の姿勢について説明する。
【0040】
制御部9は、ステップS1では、予め定められた第1押し付け方向にツール5を第1稜線部分2aへ押し付け、ステップS4では、予め定められた第2押し付け方向にツール5を第2稜線部分2bへ押し付けるようにロボットアーム3を制御する。
【0041】
制御部9は、ステップS1では、ツール5の姿勢が第1姿勢条件を満たし、ステップS4では、ツール5の姿勢が第2姿勢条件を満たすように、ロボットアーム3を制御する。第1姿勢条件は、ツール5と第1稜線部分2aとの接触位置において、ツール5の外面と接する仮想平面が、第1押し付け方向と直交することを規定し、第2姿勢条件は、ツール5と第2稜線部分2bとの接触位置において、ツール5の外面と接する仮想平面が、第2押し付け方向と直交することを規定する。
【0042】
ツール5が、稜線2上であって不連続変化点2cの近傍に位置する場合に、第1姿勢条件と第2姿勢条件の両方を満たすツール5の姿勢を目標姿勢とする。ここで、不連続変化点2cの近傍とは、ステップS1において、ツール5が、第1稜線部分2aに最後に接する位置と、ステップS4の開始時に、ツール5が、第2稜線部分2bに接する位置とを意味する。
【0043】
制御部9は、ステップS1において、遅くともツール5が不連続変化点2cに至るまでに、記憶されている目標姿勢をツール5がとるようにロボットアーム3を制御する。これにより、ツール5が不連続変化点2cに至った時に、ツール5が目標姿勢になっているようにする。
【0044】
なお、本願において、ツール5の姿勢とは、3次元の静止座標系から見た姿勢(すなわち、ツール5の軸の向き)をいう。この静止座標系に、対象物1が固定されている。また、この座標系に対してロボットアーム3が動作する。
【0045】
ツール5が、円筒形の砥石であり、その側面で対象物1を加工する場合には、第1姿勢条件は、次の式(1)で表され、第2姿勢条件は、次の式(2)で表される。

u・z=0 ・・・(1)

v・z=0 ・・・(2)

ここで、式(1)(2)の各記号を、図5に基づいて説明する。図5(A)は、図4(A)と同様の斜視図である。図5(B)は、図5(A)のB−B線矢視図である。
uは、ステップS1でツール5を第1稜線部分2aに押し付ける第1押し付け方向を示すベクトルである。zは、ツール5の軸方向を示すベクトルである。・は、2つのベクトルの内積を示す。vは、ステップS4でツール5を第2稜線部分2bに押し付ける第2押し付け方向を示すベクトルである。なお、押し付け方向を示すベクトルu,vは、予め定められた目標加工面6に垂直な方向である。
【0046】
ツール5が不連続変化点2cに至った時のツール5の目標姿勢は、式(1)(2)を同時に満たすzの方向により表される。
【0047】
ステップS1〜S4において、式(1)(2)により求めた、不連続変化点2cに対する目標姿勢と、ツール5の設定軌道とに基づいて、ロボットアーム3の動作を制御する。これにより、ステップS1〜S4のようにツール5が動作する。
【0048】
一方、ツール5が不連続変化点2c以外の第1稜線部分2aまたは第2稜線部分2bに位置する時におけるツール5の姿勢は、一意に定まらないので、第1姿勢条件または第2姿勢条件を満たす範囲で、自由に定められる。
【0049】
ツール5の姿勢は、ステップS1、S4において、例えば、以下のように制御されてよい。
【0050】
ステップS1の進行中に、ツール5が不連続変化点2cに至るまでの間に、ツール5の姿勢を次第に変化させることにより、ツール5の姿勢を目標姿勢にする。すなわち、ツール5の移動方向を、第1稜線部分2aに沿った方向から第2稜線部分2bに沿った方向に切り換える時に、ツール5の軸が、上述の式(1)(2)の両方を満たすベクトルzの方向を向くようにする。これにより、ステップS3において、ツール5の移動方向を切り換える時に、ツール5の姿勢が一定の目標姿勢に保たれるようにする。また、ステップS4の進行中に、ツール5の姿勢を目標姿勢から次第に変化させる。
【0051】
このようなツール5の姿勢変化を、図6に基づいて説明する。図6は、図4(A)のVI−VI線矢視図である。図6において、破線は、各時点のツール5を示す。
【0052】
ステップS1の開始時からステップS1の途中(第1期間という)まで、円筒形のツール5の姿勢は、上述の第1姿勢条件を満たし、かつ、ツール5の軸が第1稜線部分2aの接線と直交するように定められているのがよい(この接線は、ツール5の位置におけ接線である)。このように定められた姿勢(第1姿勢という)は記憶部8に記憶されている。
この場合、ステップS1において、制御部9は、第1期間においては、ツール5の姿勢が、記憶されている第1姿勢になるようにロボットアーム3を制御する。第1期間以降において、ステップS1の進行中に、制御部9は、ツール5の姿勢を次第に変化させることにより、ツール5が不連続変化点2cに至る時にツール5の姿勢が目標姿勢になっているようにロボットアーム3を制御する。
【0053】
ステップS4の途中以降(第2期間という)において、円筒形のツール5の姿勢は、上述の第2姿勢条件を満たし、かつ、ツール5の軸が第2稜線部分2bの接線と直交するように定められているのがよい(この接線は、ツール5の位置における接線である)。このように定められた姿勢(第2姿勢という)は記憶部8に記憶されている。
この場合、ステップS4の進行中に、制御部9は、ステップS4の開始時点から第2期間の開始時点までの間に、制御部9は、ツール5の姿勢を次第に変化させることにより、第2期間の開始時点以降において、ツール5の姿勢が第2姿勢になるようにロボットアーム3を制御する。
【0054】
上述した実施形態によると、以下の効果が得られる。
【0055】
ツール5が、第1稜線部分2aから不連続変化点2cに至った時に、ツール5の姿勢を変えることなく、ツール5の移動方向を第2稜線部分2bに沿った方向に切り換えることができる。よって、ツール5が、第1稜線部分2aから不連続変化点2cに至った時に、ツール5の動作を安定させつつ、第2稜線部分2bに沿って、ツール5を速やかに移動させることができる。
【0056】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、以下の変更例1〜3のうち、複数の変更例を任意に組み合わせて採用してもよいし、または、変更例1〜3のいずれかを採用してもよい。この場合、以下で説明しない点は、上述と同じであってよい。
【0057】
(変更例1)
上述の実施形態では、第1稜線部分2aと第2稜線部分2bと不連続変化点2cとは、凹形状を形成していたが、本発明によると、図7に示すように、不連続変化点2cを頂点とする凸形状を形成してもよい。この場合、以下で説明する点以外は、上述と同じであり、上述の説明が、そのまま、この変更例1に当てはまる。
【0058】
ステップS2は、次のように行われる。
ステップS1の進行中において、ツール5が、第1稜線部分2aに押し付けられることにより、力覚センサ7は、上述のように、ツール5に作用する反作用力を検出する。
これに対し、ツール5が不連続変化点2cを通過した直後では、ツール5が第1稜線部分2aの仮想延長線上に移動することにより、ツール5が対象物1から離れる。その結果、力覚センサ7は、上述の反作用力を検出しなくなる。このように、力覚センサ7により上述の反作用力が検出されなくなることに基づいて、制御部9は、ツール5が不連続変化点2cに至ったと判断する。
【0059】
ステップS2の判断が、「はい」となったら、ステップS3において、制御部9は、ツール5の姿勢を一定の目標姿勢に保ちながら、ツール5の移動方向を、第1稜線部分2aに沿った方向から、第2稜線部分2bに沿った方向に切り換えるようにロボットアーム3を制御する。
【0060】
また、ステップS3において、制御部9は、ツール5を、第2稜線部分2bの加工開始点に位置決めする。加工開始点は、不連続変化点2cに近傍にある第2稜線部分2b上の点であってよい。その後、ステップS4において、ツール5が第2稜線部分2bに押し付けられるのがよい。
【0061】
なお、この変更例1において、ツール5が不連続変化点2cに至ったとは、ツール5が、第1稜線部分2a(対象物1)から離れて、力覚センサ7が、第1稜線部分2aからツール5に作用する反作用力を検出しなくなったことを意味する。
【0062】
(変更例2)
ツール5は、上述の実施形態では、稜線2に対して面取り加工をする加工具であったが、稜線2に対してバリ取り加工をするバリ取り加工具であってもよい。代わりに、ツール5は、稜線2の形状を計測するために、稜線2に接しながら稜線2に沿って移動する形状計測具であってもよい。なお、形状計測具が、稜線2に接しながら稜線2に沿って移動させられることにより、形状計測具が移動した軌跡に基づいて、稜線2の形状を求めることができる。
【0063】
このように、ツール5が、バリ取り加工具または形状計測具である場合における押し付け方向を、図8に基づいて説明する。
【0064】
図8(A)は、対象物1を示す斜視図であり、図8(B)は、図8(A)のB−B線断面図であり、図8(C)は、図8(A)のC−C線断面図である。なお、図8の例では、第1稜線部分2aと第2稜線部分2bは線分であり、対象物1の面1a,1b,1c,1dは平面である。
【0065】
第1稜線部分2aにツール5を押しつける第1押し付け方向は、第1稜線部分2aとツール5との接点を含み第1稜線部分2aと直交する第1基準平面(この例では、図8(B)の紙面)において、第1接平面(以下で定義する)と第2接平面(以下で定義する)とに囲まれる領域を通り、かつ、第1稜線部分2aを通る直線L1の方向である。ここで、第1接平面は、第1基準平面において、第1稜線部分2aに限りなく近い対象物1の面1a上の点で面1aに接する平面であり(図8(B)の例では、この平面は面1aに一致する)、第2接平面は、第1基準平面において、第1稜線部分2aに限りなく近い対象物1の面1b上の点で面1bに接する平面である(図8(B)の例では、この平面は面1bに一致する)。
【0066】
上述した直線L1の方向を、ツール5を第1稜線部分2aに押し付ける方向として予め定めておく。好ましくは、直線L1と第1接平面とのなす角度は、第1接平面と第2接平面とのなす角度(図8(B)のθ1)の半分である。なお、直線L1は、第1稜線部分2aと直交する。
【0067】
同様に、第2稜線部分2bにツール5を押しつける第2押し付け方向は、第2稜線部分2bとツール5との接点を含み第2稜線部分2bと直交する第2基準平面(この例では、図8(C)の紙面)において、第3接平面(以下で定義する)と第4接平面(以下で定義する)とに囲まれる領域を通り、かつ、第2稜線部分2bを通る直線L2の方向である。ここで、第3接平面は、第2基準平面において、第2稜線部分2bに限りなく近い対象物1の面1c上の点で面1cに接する平面であり(図8(C)の例では、この平面は面1cに一致する)、第4接平面は、第2基準平面において、第2稜線部分2bに限りなく近い対象物1の面1d上の点で面1dに接する平面である(図8(B)の例では、この平面は面1dに一致する)。
【0068】
上述した直線L2の方向を、ツール5を第2稜線部分2bに押し付ける方向として予め定めておく。好ましくは、直線L2と第3接平面とのなす角度は、第3接平面と第4接平面とのなす角度(図8(C)のθ2)の半分である。なお、直線L2は、第2稜線部分2bと直交する。
【0069】
従って、式(1)において、第1押し付け方向を示すuは、直線L1の方向であり、式(2)において、第2押し付け方向を示すvは、直線L2の方向である。
【0070】
(変更例3)
上述の実施形態、変更例1または変更例2において、ツール5が、円錐形であり、その側面が稜線2に接している状態で、稜線2に沿って移動する場合には、上述の第1姿勢条件は、次の式(3)で表され、第2姿勢条件は、次の式(4)で表される。

u・z=sin(α/2) ・・・(3)

v・z=sin(α/2) ・・・(4)

ここで、式(3)(4)の各記号を、図9に基づいて説明する。図9(A)は、図4(A)と同様の斜視図である。図9(B)は、図9(A)のB−B線矢視図である。
uは、ステップS1でツール5を第1稜線部分2aに押し付ける第1押し付け方向を示す単位ベクトルである。zは、ツール5の軸方向を示す単位ベクトルである。・は、2つのベクトルの内積を示し、vは、ステップS4でツール5を第1稜線部分2aに押し付ける第2押し付け方向を示す単位ベクトルである。α/2は、円錐形のツール5の軸と当該円錐の母線とのなす角度(°)である。
目標姿勢は、式(3)(4)を同時に満たすzの方向により表される。
【符号の説明】
【0071】
1 対象物(被加工物)、1a,1b,1c,1d 対象物の面、2 稜線、2a 第1稜線部分、2b 第2稜線部分、2c 不連続変化点、3 ロボットアーム、4 スピンドルモータ、5 ツール(加工具)、6 目標加工面、7 力覚センサ、8 記憶部、9 制御部、10 ならい制御装置
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